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シナリオ詳細

<サイバー陰陽京>不夜城の侵入者

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●八紘という世界
 血で血を洗う第三次世界大戦は、人類が国家同士で行なった、最後の戦争だと言えるだろう。先の大戦は既存の政府組織全てを破壊して、世界をただ一人の『帝』の下へと統一させた。
 御簾の向こうのその人物は、類稀なる霊力を以って、八紘の泰平を神々に願い奉る。しかし、人々の欲望は飽くなきかな……復興した電子と陰陽の力にて平和を約束された地においてさえ、人々はさらなる富を求め、繰り広げる争いが終わることはない――。

●仕事(ビズ)
 ひとひらの揚羽蝶が本の隙間よりはためき出でて、艶やかな袖の上に留まった。境界案内人がそれを見つめ、何やら会話するように頷くと……蝶は、まるで役割を終えたとでも言うように、黄緑色の電子の粒へと還ってゆく。
「ようこそ、おいで下さいましたどすえ」
 着崩した着物姿で微笑みを浮かべ、坂東イントネーション混じりのピジン京言葉で迎えた境界案内人、オハナが示すのは、サイバー陰陽小説『ネオホーゲン』シリーズの舞台世界、『八紘』だった。
「八紘は帝さんの統治の下、情報技術と陰陽術が発展した世界どすえ。けれども、きな臭い話には事欠きませんでなぁ……『ねずみ』が3匹ほど、さる大企業の本社ビルに侵入しようとしてはりますのや」
 オハナは語る。それを撃退することが、花街・イースト祇園の遊女にしてフィクサーでもある彼女からの依頼なのだ、と。
 生死問わず。企業情報専門の怪盗である彼らが狙うのは兵器転用も可能な新技術のデータだといい、見過ごせば世界が戦火に包まれぬとも限らない。
 だとすれば、できれば盗みの依頼者も突き止めたいところだが……相手もプロだから簡単には口を割ったりはせぬだろう。まあ、それならそれで、幾らでも調べようがある。

 兎に角、賽は投げられた。
 八紘世界を揺るがすやもしれぬ蠢動の兆しを挫くことができるのは……恐らくは、君たちだけなのだ。

NMコメント

 サイバー陰陽小説『ネオホーゲン』の世界へようこそ。椎野です。
 『八紘』は、『キョート』と呼ばれる国家が地球上の全てを統治するサイバーパンク世界です。舞台となる『洛外』地区の上空には陰陽術に守られた空中都市『洛中』が浮かび、地上には無数の企業アーコロジーが林立する……そんな中で人々は、金と権力にしがみつきながら生きているのです。

●今回の舞台
 そんな洛外地区に居を構える巨大企業『モトモリ・コーポレーション』の本社アーコロジー内の一室です。
 怪盗らに人質に取られぬよう、夜、巨大メインフレームの鎮座する室内には皆様しかいません……多少の物損は許容範囲内ですので、多数並ぶ作業デスクの死角を利用して侵入者を迎え撃って下さい!
 なお、室内には自動レーザー銃座が複数ありますが、それらには皆様のバイタルサインが登録されており、皆様を攻撃することはありません……誰かにハッキングされない限り。

●怪盗団
 メインフレームにデータ吸い出し用チップを接続する担当の物理工作員、彼を魔術サポートする霊能者、警備システムの掌握とメインフレームでのデータ探索を担当するハッカーの3名チームです。

・物理工作員
 全身に違法サイバネティクスを埋め込んだ、鬼と呼ばれる好戦的な種族の戦闘サイボーグです。高い反応と機動力による一撃離脱を得意とします。

・霊能者
 幽体離脱して物理工作員に同行し、テレパシーによる指示や支援術を使用します。物質を透過し、透視に似た感覚を持っています。物理攻撃無効。

・ハッカー
 電脳空間上に陣取り、遠扇型の電脳攻撃で各種装置を狙います。目的の部屋までのシステムは全て掌握済みです。
 電脳戦関連のルールは以下も参照。

●本ライブノベルの特殊ルール
 データは通常のルールに従い解釈されます。
 ただし皆様は、自身が『電脳体である』として、物理空間ではなく電脳空間上に存在することもできます。その場合、皆様のデータは電脳戦用アバターとしてのものだということになります(物理存在としてのデータがどうなっているのかは、ご自由に決めて構いません)。
 ハッカーの行動を阻止しようと思ったら、誰かが電脳体になって戦う必要があります。

  • <サイバー陰陽京>不夜城の侵入者完了
  • NM名椎野 宗一郎
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年01月13日 22時15分
  • 参加人数4/4人
  • 相談8日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

サンディ・カルタ(p3p000438)
金庫破り
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
リコシェット(p3p007871)
跳兎

リプレイ

●迎撃
 天井の監視カメラがぐるぐると動き、部屋の中全てを睨め付けた。近くにいたネズミが驚いて、ラックの上を駆け回る。
 来た……『跳兎』リコシェット(p3p007871)の男勝りな眼光が、手早くレーザー銃座群の動きを確認した。問題はない……今のところは入口扉を向いたまま、来たるべき侵入者に備えて息を潜めている。
『物理2、電脳1』
 短い暗号化通信が奪い取った社内回線の上を駆けたのが、『凡才の付与術師』回言 世界(p3p007315)には手に取るように解った。電脳体となった彼から見れば、同じく電脳体のハッカーの行動は、何もかもが筒抜けだ……同時に敵からも、こちらの動きは見えている筈ではあるが。
(中々厄介な相手のようだが、要するにコソ泥さ)
 世界が思考したのと同時、敵ハッカーは入口扉の鍵を掌握し、ついにそれを開け放った! レーザー銃座が赤白い光条を放つ……が、それらは全身の至るところを機械化した鬼へと到達する前に、波打つ空間に阻まれ威力を殺ぎ落とされる。
「今のが陰陽術か。これほどの術を使える高度な幽体離脱とは、中々に面白くなりそうだ」
 仁王立つ鬼を追い越すように部屋に入ってきた十二単姿の霊体を一瞥し、『五行絶影』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)は興味深そうに2本の尾を動かしてみせた。
『ほう、猫又かえ』
 直接の思考転送で感嘆の声を上げた霊能者。だが……それに対する汰磨羈の返答は、既に練り上げの済んでいた厄狩の力!

 斬り上げた陰陽二極の霊気は互いを喰らい合い、その余波で空間ごと抉り切りながら鬼へと進んでいった。鬼のサイバーウェアが軋みを上げて、生身との間から血が垂れる。が……鬼は寧ろそれでこそ戦い甲斐があると狂喜して、物理的時空と切り離された霊体に至っては涼しい顔だ!
『驚かせ居って! ……然し、此の場で唯一の物理肉体が破壊されては難儀じゃの。あの銃座の数も厄介じゃ』
 霊能者が忌々しげに悪態を吐けば、ハッカーの電脳体は世界の前で、銃座のコントロール奪取用プログラムをばら撒き始めた。だが……残念ながら世界の得意技は、そういった単純な攻撃に対する搦め手だ。
「こちらだって、罠くらいは用意している」
 世界が小さく囁いたのと同時、攻撃を逆に辿るプログラムが発動し、敵の電脳体を侵していった。もしも対処を誤れば……敵は次第に電脳体を維持できなくなって、最後には強制ログアウトを強いられることだろう。

 電脳面での支援が期待できなくなったと知った鬼は、兎に角、自らの任務を手っ取り早く終わらせる道を選んだようだった。リコシェットからの小銃の連射が全身を抉る。遠くからの正確な射撃の前には、どれだけ素早く動いたところで容易くは逃れられぬだろう……が、その裏を返したならば、彼女には完全に行動不能にする以外、鬼を止められなどせぬということだ!
(莫迦め――)
 作戦成功を確信した鬼だったがその時――余裕ぶっていた霊体の表情が不意にさっと変わって、鬼に警告を飛ばしたのだった。

●防衛
 が――その警告が鬼に届くことはなく、鬼はまるで幽霊でも見たかのように目を丸くして、自らの身に起こった事態を傍観させられていた。チップを差し込もうとした腕は自然なまでの動きで見事に逸らされ、何もない宙を切っている。
「こいつ……どこから現れた? おい!? 物理は2人だけじゃなかったのか!」
 仲間に声を荒げた鬼に返ってきたのは、困惑したようなハッカーの返信だけだった。霊能者の“声”は聞こえない……改めて視線を“幽霊”へと落としたならば、鬼の腕の下に潜り込み、にやっとやんちゃそうな笑みを浮かべてみせた『アニキ!』サンディ・カルタ(p3p000438)が、まる降伏でも勧告するかのような口ぶりで種明かしをしてみせる。
「俺はカメラに映らない特異体質の持ち主でね……お蔭で、電脳空間上では『存在しねー』のさ。ついでに、俺の近くじゃテレパシーも届かないぜ? つまり……このメインフレームを狙う限りは、お前は誰の支援も受けられないまま俺と戦うことになるってワケだ! 悪いな、随分理詰めで攻城したみたいだが、最後がこんな“理不尽”な相手でさ」
 鬼は一度はそこから退いたが、それで何かが好転するわけじゃないことは明らかだった。リコシェットはまるで親の敵のように執拗に鬼を狙い続けてくるし、汰磨羈が手の中に宿す炎は闘気――すなわち彼女自身の精神力をそのまま炎の形を取らせたものであるがため、本来は決して侵すことのできぬはずの霊能者の霊体さえをも燃やす。ハッカーは……恐らくは、侵入者達の中で最も悲惨な目に遭っていただろう。凄まじい勢いで電脳体を削ってゆく世界のワームは、ハッカーの自己修復プログラムさえエラー終了させる。まずはとワームを強制終了させても、すぐさま次のワームを世界は放つのだ。

 攻撃役から無力化しようと思っても、多数ある銃座まで相手取らねばならぬと思えば、我が身が保つかどうかも定かではなかった。だから任務成功のためには斃される前に攻めるしかないと、鬼は覚悟を決める。
 だが、覚悟なら……リコシェットだって負けるつもりなんてなかった。正直、こんな練達みたいな技術のことなんて解りはしない。けれども依頼内容に嘘がないのなら……この依頼に失敗したならば、誰かが他者を武力で蹂躙するのだ。孤児院育ちの彼女にとって、子供達がそれに巻き込まれることだけは見過ごし難い。それが、例え『ネオホーゲン』という本の中の話なのだとしても。
 そんな彼女の銃弾が、鬼――見知らぬ種族ではあるが、オーガの一種だと思えば理解も容易かった――の全身を穿つ。霊能者が重ねて治癒術を彼にかけるが……それで治せるのはレーザー分だけで精一杯だ。
『早う、其のチップをメインフレームに差し込んで賜れ! そなたを支えて居る間、妾は此の炎を振り払うて居る暇も無い……』
 そんな霊能者の呼び掛けは、未だサンディに阻まれ届かぬままだった。一方で彼女が焦れば焦るほど、汰磨羈に勝利を確信させるだけ。
「ふむ……これが通用するか。ならばたっぷりとお見舞いしてやろう」
 戦えば戦うほどに、汰磨羈は今や戻る術の断たれた、自らの出身世界を思い出していた。魔導と陰陽の違いこそあれど、神秘と高度科学の融合した世界――見知った世界で戦うのは楽しい。それにこの霊能者……よく見れば、随分と可愛がってやりたい娘じゃないか。

●撃退&追跡
 霊能者がぞくりと妖しいものを感じ取ったのと同時、鬼は幾度めかになる決死のチップ挿入を企てて、同じ回数だけサンディの妨害により腕を捻られていた。
「結局のところ、狙われる場所は1点だけなんだ。それさえ耐えれば――俺の勝ちだろう?」
 力任せの挿入動作は攻撃も兼ねていて、サンディとて決して無傷とは言い難い。それでも蜂の巣の鬼と比べれば……まだまだ、笑みを浮かべる余裕も健在だ。

 そんな中、1通の通信が鬼の電脳へと送信された。
『電脳側の戦線を維持できない。撤退する』
 遂にハッカーが世界の攻勢に音を上げて、依頼の遂行を断念したらしい。つまり、このまま戦闘を続ければ、鬼はハッカーの掌握から解放された警備システムに阻まれて、脱出の道を断たれることを意味するだろう。
 そうと解れば彼とてプロだった。帰り道を妨げられる前に大きく跳躍し、世界がシステムを復旧するよりも早く部屋から廊下、廊下から窓の外へと身を躍らせる。此度の依頼失敗は荒事屋としての彼らの評判を落とすだろうが、それでも命を失うよりは、幾分マシな結果なのだ……が。

『悪いけれど、依頼主の特定に繋がる情報くらいは、落としていって貰わないとな』
 慌てて撤退してゆくハッカーの痕跡を、世界は決して逃さなかった。幾つもの違法プロキシを経由して身元を偽装してこそいるが、今度は世界が攻撃を仕掛ける番だ。
「手伝おう。生憎、この手の技術には慣れていてね」
 汰磨羈のサポートが世界を後押しすれば、世界がハッカーの今のアジトに辿り着くのは時間の問題だった。
『このコンピューター内の通信記録は丸ごと貰っていこう。コソ泥に依頼なんてしたのが誰か、少しでも手掛かりがあると嬉しいというのが依頼人の意向だからね……』

●動乱の予兆
 全てが過ぎた翌朝の空は、雲ひとつない晴れ模様だった。朝食は報酬ついでに渡された『モトモリ・コーポレーション』本社内パスポートによって、京料理はもちろんのことフランス料理から中華料理まで好きな店で取る権利を得たが、やはり無辜なる混沌出身のリコシェットとしては、何もかもが人工物に覆われたアーコロジー内よりも、外の日差しのほうが馴染み深い。
 尤もその“外の光景”は、直方体やフラスコ型の建物ばかりだし空気もどことなく煙った匂いだしと、練達以上に無機的ではあるのだが。もしかしたらリコシェットにとって最も馴染み深かった光景は……アーコロジーとアーコロジーの狭間に広がる、薄汚れた低層建造物ばかりのスラム地区のものであったかもしれない。

 そんなスラムの一角では、遥か上空に浮かぶ空中都市『洛中』のやり方に反発する者たちによる、反政府デモのシュプレヒコールが響いていた。
 4人の来訪者たちは確かに、八紘世界を脅かす陰謀の一端を打ち砕いてみせた……けれどもこの世界に密かにわだかまる悪意は、未だ諦めようとは思っていないのかもしれなかった。

成否

成功

状態異常

なし

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