PandoraPartyProject

シナリオ詳細

モチスライムを狩って食べよう

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●白銀の雪の上で蠢くスライム
 幻想北部、ドレヴィング平野。広々とした平原は、降り積もった雪により一面の銀世界と化している。
 ふと、雪原がもぞもぞと動いた。いや、雪が動いたのではない。雪の上を、白くて丸い生物がのそのそと這うように進んでいるのだ。よくよく見れば、そこかしこで白く丸い生物が蠢いているのがわかるだろう。
 この白くて丸い生物の名は、モチスライム。餅のような白くて丸い姿とその食感から、そう名付けられたスライムである。その大きさは様々であるが、成体は直径三メートル以上になる。
 食感――そう、このスライムは食べることが出来る。獲れたてのモチスライムは、搗きたての餅のような食感と味がすると言う。そのためか、ドレヴィング周辺では季節限定の珍味として知られていた。
 なお、これは余談ではあるが、老人がモチスライムを食べている時に喉に詰まらせて死亡する事故が毎年発生するのは、餅と同様であったりする。それでも、季節の楽しみだとしてモチスライムを食べる老人が多いのも、やはり餅と同様であった。

●モチスライムを狩ろう
「お餅を食べに――んんっ、ゴホン! モチスライム狩りに参加してくれる方はいませんか?」
 危うく本音を漏らしかけ、咳払いで取り繕ってから、『真昼のランタン』羽田羅 勘蔵(p3n000126)はイレギュラーズ達の中から依頼に参加する者を募った。
「モチスライム?」
「雪が降り積もったときに現われるスライムで、餅のような姿と味をしてることからそう呼ばれているそうです。今年も雪が降ったのでドレヴィング平野に出てきたとかで、今年食べる分――大体四十匹前後――を狩って来て欲しいという依頼が、ドレヴィングの街から来ています」
 モチスライムは敵に体当たりを仕掛けてきたりすることはあるが、基本的に動きが鈍く、大人しい性質のため狩るのは難しくない。ただ、狩り方次第では風味を損ねたり食べられなくなってしまったりするので、注意する必要がある。
「あと、資源保護の関係で、多めに狩っても五十匹までで留めて下さい。特に幼体は十匹を超えないようにお願いしますとのことです」
 なお、イレギュラーズがモチスライムを狩って来れば、その労を労うためにささやかながらモチスライム料理のパーティーが開かれる予定だ。
「モチスライム料理のパーティー、楽しみですね♪」
 もう本音を隠す気がなくなったのか、楽しみで楽しみで仕方ないと言わんばかりの、満面の笑みで勘蔵が言った。

GMコメント

 本年もどうぞよろしくお願いいたします。緑城雄山です。
 今回はちょっと遅れましたがお正月ネタとして、お餅のようなスライムを狩って食べるシナリオをお送りします。

●成功条件
 モチスライムを40匹前後狩ってくる(最大50匹。幼体はそのうち10匹まで)

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●モチスライム
 白く丸い餅のような姿と味のスライムです。
 成体が直径約3メートル以上、幼体が直径1メートルぐらいあります。
 獲れたての成体は搗きたての餅のような食感と味が、幼体はわらび餅のような食感と味がします。食感の違いから幼体も人気ですが、資源保護の観点から狩猟には厳しい制限がかかっています。
 OPでも触れたとおり、基本的に動きが鈍く、大人しい性質のため狩るのは難しくありません。攻撃手段は体当たり(物至単)したりのしかかったり(物至範)です。

●狩り方について(禁止BS)
 モチスライムに以下のBSを与えて狩ると、その影響で身が変質したり食べられなくなってしまったりします。
 モチスライムを狩る際には、以下のBSを与えるスキルは使わないようにお願いします。
 【毒】【猛毒】【致死毒】
 【火炎】【業火】【炎獄】
 【凍結】【氷結】【氷漬】
 【痺れ】【ショック】【感電】
 【窒息】【苦悩】【懊悩】
 【麻痺】【呪縛】【石化】

●ドレヴィング平野
 降り積もり雪によって、一面の雪原となっています。
 しかし今回のシナリオはEASYであり、モチスライムも動きが鈍いため、特に対策を行わなくても足場による悪影響や判定へのペナルティーはないものとします。

●モチスライム料理のパーティー
 餅料理と同じ要領で、思いつく限りの料理を楽しむことが出来ます。
 餅料理で基本的な、砂糖醤油とか海苔とか黄粉とか、あるいは中に入れる餡子などは用意されています。雑煮などの準備もされています。
 もし何か独特の料理を作りたいようでしたら、モチスライム以外の材料を持参する旨と作り方をプレイングに明記しておいて下さい(作り方はそれが載っているURLでも構いません)。

●描写予定
 狩りに行く前(主に心情とか):実際のモチスライム狩り:モチスライム料理のパーティーを、大体1:1:1+αくらい(皆様のプレイングによって変動します)で描写する予定です。
 プレイングの中にどれかの場面に関する行動や台詞がない場合、その場面での描写が非常に寂しくなってしまうかと思われますので、プレイング作成の際にはそれぞれの場面の行動や台詞をバランスよく書いておいて頂けると、大変有り難いです。

●同行NPC
・羽田羅 勘蔵(p3n000126)
 ただし、皆さんがモチスライムを狩りに行っている間はモチスライム料理のパーティーの準備を手伝っており、モチスライム料理のパーティーの間は一心不乱にモチスライム料理を食べているため、基本的に描写されることはありません。

 それでは、皆様のご参加をお待ちしております。

  • モチスライムを狩って食べよう完了
  • GM名緑城雄山
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2020年01月27日 22時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

日向 葵(p3p000366)
紅眼のエースストライカー
マルベート・トゥールーズ(p3p000736)
饗宴の悪魔
ヨハン=レーム(p3p001117)
おチビの理解者
ユーリエ・シュトラール(p3p001160)
優愛の吸血種
ダグラス・クルーバー(p3p002506)
自由騎士
パーシャ・トラフキン(p3p006384)
召剣士
sack rat(p3p007873)
アスタ・ラ・ビスタ(p3p007893)
星の砂を望む

サポートNPC一覧(1人)

羽田羅 勘蔵(p3n000126)
真昼のランタン

リプレイ

●モチスライム狩りに臨むイレギュラーズ達
「こんにちは! 早速ですが、モチスライムについていろいろ教えて下さい!」
 快活な笑顔を浮かべながら、ネズミ耳の少女sack rat(p3p007873)は、モチスライムについてドレヴィングの街の住人達に尋ねる。今回が初めての依頼と言うこともあってか、意欲的なのが周りからもはっきりと見て取れた。
「あら、こんな可愛い子もモチスライムを狩ってきてくれるのね。よろしくね、お嬢ちゃん」
 住人達は笑顔を返しつつ、sackの問いに次々と答えていく。
 まずモチスライムの生態だが、確かなのは年に一度か二度、雪が降り積もった時に現われてきれいな雪を食べていくことであり、それ以上の詳しいことはわかってはいないと言う。
 食べ頃の個体の見分け方については、ドレヴィングの住人達は個体の見分けについては無頓着であった。何しろ、全体が雪のような白一色なのであるのに加えて、個体による味の差はほとんど無いと言う。
 可食部は全部であり、捌き方と言うようなものはなく、適当に好きな大きさに切り分けて料理に用いるだけだという。
「なるほど。聞けば聞くほど、面白い生き物だ。モチの味がすると言うその身……食べるのが楽しみだね」
 住人達の話すモチスライムの情報を、『饗宴の悪魔』マルベート・トゥールーズ(p3p000736)は興味深そうに聞いている。食に貪欲な美食家であり、特に可愛らしい生き物の肉に目が無いマルベートは、ますますモチスライムの身への期待に胸を膨らませていった。
「今までに様々な食材を食してきたと自負しておりますが、さすがに食べられるスライムは初めてな故、吾輩もワクワクしておりますぞ!」
 食を人生の楽しみとする『自由騎士』ダグラス・クルーバー(p3p002506)も、マルベートに負けず劣らず、モチスライムを食べるのが楽しみで仕方ないという風である。
「しかもスライムでありながら、モチの味に近いとか。モチは昔、吾輩が居た世界の東方の国で食べたことがありますが、何とも不思議な食感だった記憶がありますぞ。スライムが食べられるだけでも驚きですが、それを郷土の食材にしてしまうとは、いやはや、世界は広いですな」
 感心した様子で、うんうんと頷くダグラス。
(モチスライムっスか……むしろ、生きてるモチを食うと考えればいけるか?)
 やっぱ新年はモチ食わねぇと始まらねぇ、とばかりに依頼に参加した『紅眼のエースストライカー』日向 葵(p3p000366)は、マルベートやダグラスとは違って、「スライムを食う」ことにやや逡巡を覚えていた。だが、最終的にはギリギリセーフ、と言う結論に至る。
(僕は『モチ』と言うのは知らないけれど……きっと、おいしいものなんだろう)
 他のイレギュラーズやドレヴィングの住人達の様子から、『葬列』アスタ・ラ・ビスタ(p3p007893)はそう考えた。生命維持に食事を必要としない秘宝種であるが故に、食事を楽しんだことがないアスタであるが、今回の依頼で食べ方を教わって『モチ』と言うものを楽しむつもりでいた。

 イレギュラーズ達はドレヴィングの街を出て、ドレヴィング平原に到着する。目の前には、一面にの銀世界。その上を、モチスライム達がのそのそと動き回っていた。
「わあ……一面の深い青の上を、たくさんのやや薄い青が動いてます。この平原一杯に、モチスライムがいるみたいですよ!」
 久しぶりの依頼と言うことで張り切っている『愛の吸血鬼』ユーリエ・シュトラール(p3p001160)が、感嘆の声を上げる。ギフトで吸血鬼となっているユーリエは、蝙蝠を喚んで上空から偵察させつつ、.温度視覚でモチスライム達の姿を確認していた。
「正直、あまり悪さもしていないスライムさんを傷つけるのは躊躇っちゃうんですが……」
 暴れているモンスターを退治するというわけでもなく、食べるためとは言え一方的にモチスライムを狩ることに、『召剣士』パーシャ・トラフキン(p3p006384) はやや抵抗を覚えて独り言ちる。「ううん、これもお仕事。大丈夫です、頑張ります! お願い、皆を守ってね──召剣、ウルサ・マヨル」
 だが、パーシャはすぐに意を決すると、一組の双剣『ウルサ・マヨル』を召喚して両手に取った。
(お仕事が初めてのアスタさんとsackさんは、先輩としてしっかりリードしてあげましょう! 実戦訓練として感覚をつかめるようにお手伝いです!)
 『私掠船イレギュラーズ号』ヨハン=レーム(p3p001117)は、世話好きな性格とチームの盾たらんとする性分から、新人イレギュラーズ達をサポートしようと意欲を燃やす 。
「アスタさん、sackさん。僕が護りますから、近くにいて下さいね」
「ありがとう、わかった」
「はい、ありがとうございます」
 モチスライム達を前にして、ヨハンがアスタとsackに告げる。二人は礼を述べつつ、ヨハンの側に寄っていった。

●いざ、モチスライム狩り!
「モチスライム討伐!幼体数に気を付けつつ……とつげきー!!」
 ヨハンの『我に続け』が、狩りの口火を切る。『戦場の花』のエスプリの効果も加わり、モチスライム狩りに臨むイレギュラーズ達の心を奮い立たせた。
「まずは先制っス、生きてたらトドメ頼むわ!」
 葵は、血のように鮮やかな真紅の蝙蝠の姿をしたエネルギー弾を、三十メートル先のモチスライム目がけて放つ。不意を衝かれたモチスライム達はバットバーストの直撃を受け、三体がくたり、と力を失って雪面に垂れた。
 続いて、ユーリエが後方から闇の霧を放ち、イレギュラーズ付近のモチスライムに付きまとわせる。モチスライム達は闇の霧を振り払うことが出来ずに、三体が仕留められた。
「ふふっ。こういう戦い方はスマートではないけれど、餅つきみたいで楽しいね?」
 マルベートは槍の刃を使わずに、手近なモチスライムをぼこぼこと打撃で殴っていく。殴られながらも、モチスライムは何とかマルベートから逃れようとする。
「まいーん!」
 だが、マルベートの攻撃を受けてなお生きているのを見たsackが、逃走を許さずに追い打ちをかける。ノービスソードを深々とモチスライムに突き立てると、くてり、とモチスライムは力を失ってその場に垂れた。
「遥か北に輝く奇跡の剣よ、今此処に──召剣、セプテントリオン!」
 パーシャは『七星剣・セプテントリオン』を召喚し、遠くのモチスライムに向けて撃つ。『七星剣・セプテントリオン』はターゲットのモチスライムに深々と突き刺さって仕留める。
「行きますぞ! ふんっ!」
 気合一閃、ダグラスは目前のモチスライムを四体巻き込むようにして、リッターブリッツを放つ。両手剣から繰り出される雷のような突きは、直線上の衝撃を走らせ、モチスライム達を貫いていった。
「こんにちは、モチスライム。僕は『葬列』、処刑人として作られたオートマタ。ええと、君はモチスライムだけど……処刑『人』が相手になってもいいのかな」
 逡巡するかのような言葉とは裏腹に、アスタは手近なモチスライムを一刀のもとに両断する。
(寝起き初めての戦いだけど、体は案外覚えてるもんだ……それにしても、これを食べる……食べるんだ? 人間ってのはすごいな)
 眠りから覚める前とそれほど変わらず身体が動くことに満足する一方で、アスタはこのモチスライムを人間が食べると言うことに、驚き混じりの感心を抱いていた。

 モチスライム狩りは、驚くほど順調に進んだ。急に仲間が倒されパニックに陥ったモチスライム達は、その大半が応戦よりも逃亡を選んだからである。もっとも、モチスライム達の動きは鈍い上に、任務として狩りを行っているイレギュラーズ達がそれを許すはずもない。モチスライム四十八体、うち幼体六体が狩られるまで、狩りは続いた。
 イレギュラーズ達の被害は、反撃を受けそうになったアスタを庇ったヨハンが体当たりを受けただけであり、それもすぐさまパーシャのヒールオーダーでほぼ快癒した。

(モチスライムさん達、ごめんね。ありがとう――)
 ドレヴィングの街へと運ばれていくモチスライム達に、パーシャは内心で命を奪ったことへの謝罪と、自分達の糧になってくれる事への感謝を呟いた。

●モチスライム料理パーティー!
 ドレヴィングの街に運ばれたモチスライム達は、次々と適当な大きさに切り分けられていく。大半は保管されたが、一部はイレギュラーズ達の労を労うために饗された。モチスライム料理パーティーの始まりである。
 イレギュラーズ達も、ドレヴィングの住人達も、思い思いの食べ方でモチスライムを食べていく。一方でモチスライム料理を創る側は、次々と舞い込むリクエストにてんやわんやとなっていた。
「私はお餅食べたことないので、私のぶんも残しておいて下さいね……!」
 他のイレギュラーズに釘を刺しつつ、パーシャは料理スキルとコックのサブクラスを活用して、次々とモチスライム料理を創っていく。
「はい、ユーリエ先輩」
「ありがとう、パーシャさん」
 ユーリエが、パーシャからモチスライム料理の皿を受け取る。お湯でふやかして柔らかくしたモチスライムの身に、黄粉や砂糖をまぶしたものだ。
「美味しいお餅が食べられる……! 頑張った甲斐ありましたね~! はい、どうぞ。アスタさん」
「ありがとう。これが黄粉? 不思議な匂いだな……それに、なんだかぱさぱさだ。これは、どうやって食べたらいいんだ?」
「お餅は喉に詰まりやすいですから、よく噛んでゆっくり食べないと、ですよ」
 ユーリエはアスタにも黄粉をまぶしたモチスライムの身を渡す。不思議そうにしながら食べ方を尋ねるアスタに、ユーリエは食べ方をレクチャーする。
「もぐもぐ……うん、美味しいんだな」
 ポーカーフェイスにより表情がほとんど変わっていないため、見た目からはわかりにくいが、アスタは口の中で黄粉と砂糖が柔らかいモチスライムの身に包まれて渾然一体となるのを堪能していた。
 そんなアスタを微笑ましく見つめつつ、ユーリエはヨハンの店で購入した鉄帝弁当を広げる。ボリューム感満点の鉄帝弁当をおかずのようにしながら、ユーリエはモチスライムの味を楽しむのだった。

(待て、まだだ、まだっス……)
 モチスライムの味付けにバター醤油を選んだ葵は、目の前の皿に集中して『その時』を待つ。その様子は、高名な食通もかくやと言わんばかりの鬼気迫る様子だったと、後にドレヴィングの住人ラリー・ギャは語っている。
「……今だ!」
 バターが溶けきって醤油と絡んでいく至高の一瞬を、葵は見逃さない。『その時』は来たとばかりにモチスライムの身をバター醤油に手早く浸し、裏返して再度バター醤油に浸す。そして、一気に口の中に頬張った。
「あー、めっちゃうめぇ! まさか混沌に来てからでも食えるとは思ってなかったっスわー!」
 バターのコクと醤油の香りが、モチスライムの身と一体になって葵の口内に広がる。その味わいは、混沌に来る前に味わっていた餅そのもの。久々の餅の味を、葵は至福の表情で満喫していた。

「これが、僕の答えです!」
 皿に砂糖をドバドバと盛り、その上から醤油をドボドボと注ぎ、混ぜ合わせる。出来上がった砂糖醤油にモチスライムの身をしっかりと浸して、奪った命のせめてもの供養とばかりに、ヨハンはモチスライムを味わっていった。
 砂糖醤油の甘辛さをモチスライムの身が受け止めて、尖った味わいを丁度いい塩梅へと導いていく。『答え』としてヨハンが選んだのが、この味であった。
「あっ! アスタさん、あーん!」
「……? あーん……んむ、これも美味しいな」
 近くにアスタがいるのを見つけたヨハンは、砂糖醤油に浸したモチスライムの身を分けて食べさせる。やはり表情からはわかりにくいが、アスタは黄粉と砂糖醤油による味の違いを楽しんでいた。
(……食事は娯楽だって聞いて居たけれど、本当だな。いろんな味を、ちょこちょこ食べてみたくなる)

「ふふ。皆、楽しそうだね」
 思い思いにモチスライムを楽しむ仲間達の姿を見やりつつ、マルベートはチーズを乗せたモチスライムの切り身を炙る。丁度よく火が通ったところでもちっと一口囓り、ワインも一口。すると、口内でチーズのコクとワインの香りに、モチスライムの微かな甘みと柔らかくも弾力のある食感が円舞曲を踊る。
「――あぁ、至福のマリアージュだ! 狩りとはこうでなくてはね!」
 陶然として、口内の円舞曲を堪能するマルベート。その様子に、ダグラスとsackが興味を抱いた。
「美味そうですな。吾輩も頂きますぞ!」
「まいーん♪」
「どうぞ、遠慮無くこのマリアージュを味わってくれ。sackには、これだね」
 マルベートは、チーズを乗せたモチスライムの切り身をさらに炙り、ダグラスとsackに渡していく。そして、ダグラスにはワインを、sackには未成年と言うことで同じ味のするブドウジュースを渡した。
「お疲れ様。乾杯!」
「乾杯ですぞ!」
「かんぱーい♪」
 グラスを掲げてから、三人はチーズとワイン(一名はワイン味のブドウジュース)とモチスライムのマリアージュを堪能していく。
「そう言えば、ダグラスは生のモチスライムをつまんでいたけど、如何だった?」
 食も進んだところで、マルベートが尋ねる。鮮度の良い野菜は美味しい、鮮度の良い魚も美味しいと言うわけで、では鮮度の良いスライムはどうかと、ダグラスはモチスライムの生食に挑戦していたのだ。
「狩りたては柔らかくて美味かったですな。ただ、鮮度落ちが早いのかそれが長くは保たなかったのが残念なところですぞ」
 それが、ダグラスの結論だった。
「ふむ……こちらはまだぷるぷるなんだけどね。不思議なものだ」
 ダグラスの話を聞いて、マルベートが取り出したのは、幼体の切り身を乗せた皿。こと、とマルベートが皿を置くと、白い身がぷるん、と微かに震えた。
「おお、デザートでありますな!」
「まいーん♪」
 興味津々と言った様子で、三人は幼体のみを口にする。ぷるんとした食感とほんのりとした微かな甘みが、口内に伝わっていく。噛んでみると、成体のような弾力のあるもちもちとした柔らかさはなく、ほとんど抵抗を感じない。
 幼体の身を噛み砕くのもそこそこに、ごくり、と飲み込んでいく。すると、つるりと滑るように、幼体の身は喉の下へと落ちていった。物珍しい食感に、黄粉や黒蜜
「成程。これは、十体を超えて狩るなと厳しく言われるはずですぞ!」
 依頼での注意を、ダグラスは思い起こした。いくらでも食べられそうなだけに、欲望のままに幼体を狩ってはモチスライムの減少や絶滅を引き起こすと言う話が、ダグラスには強く理解出来た。

「お料理の幅が広くて、お餅って凄いですね……!」
 ドレヴィングの住人達のリクエストするモチスライム料理を作りながら、パーシャは他にもモチスライム料理を作っていた。
 黄粉を塗す代わりにチョコやココアパウダーを振りかけたもの、濃く味付けした肉をモチスライムの身に巻き込んでチーズと一緒に焼いたもの。特に後者は濃い味を好む男連中に好評で、次々と「俺にも作ってくれ!」とリクエストされるほどになった。
「オレもそれ、一つ貰っていいっスか?」
「はい、どうぞ。葵さん」
「ありがとうッス。他には、どんなの作ってるんスか? 異世界のモチ事情、少し気になるんスよ」
「そうですね……」
 葵はモチスライム料理をもらうついでに、パーシャに尋ねる。基本的には、ドレヴィングのモチスライム料理文化は、葵の知る餅料理の文化とは大きく変わらなかった。洋風の世界である混沌に和風の料理文化があることに葵は一瞬疑問を感じたが、「まぁ、きっと混沌だからッスね」で片付けることにした。

 食べる。食べる。食べる。
 このパーティーでのsackの食べっぷりを、後にドレヴィングの住人コーン・ローリはこう語った。
「最初は、こんな可愛い子もイレギュラーズなのかとちょっと気になって見てたんですよ。そうしたら、いろんなモチスライム料理を一通り食べきった上に、さらにアレンジしていろいろ食ってるじゃないですか。成体一体分は食べたんじゃないですかね」
 直径三メートルはある成体一体分はさすがに大袈裟にしても、ドレヴィングの住人達にそう思わせるほどにsackはモチスライム料理を食べていた。
「まいーん♪」
 中に餡子を詰めたモチスライムの身に、黄粉と砂糖をまぶして頬張り、嬉しそうに食べる。モチスライムの中と外からの違った甘みが、混然となって混ざり合った。
「まいーん……」
 雑煮に醤油を注いだ結果、哀しそうな小声で食べる。丁度いい塩梅に味付けられた雑煮に追加の醤油は、味を塩辛く尖らせるだけだった。
 パーティーが終わるまで、sackはそんな調子でアレンジしたモチスライム料理を食べ続けたのだった。

(――初めての仕事で、たのしいを感じられてよかった。もっともっと、美味しいを一杯味わって生きたいなあ)
 ドレヴィングからの帰途、アスタはモチスライム料理パーティーと、そこで味わった様々な料理のことを振り返る。アスタの胸中に生まれたその想いは、これからイレギュラーズとして様々な経験をしていく中で、きっとアスタを幸せな未来に導いていくだろう――。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 この度は、シナリオへのご参加、どうもありがとうございました。
 また、リプレイの返却が遅くなってしまって、大変申し訳ございませんでした。何日もお待たせしてしまったこと、慎んでお詫び申し上げます。
 今回が初めての依頼というアスタさんやsackさんは特にそうなのですが、その他の皆様にとっても、このリプレイがキャラクター達の人生の良き1ページとなりましたら幸いです。

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