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シナリオ詳細

<第三次グレイス・ヌレ海戦>紅き月を沈めよ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●風雲急を告げる
 発動された『海洋王国大号令』。今度こそは新天地を手に入れるのだと、海洋の者達は士気高く活動を続けていた。遥かなる外洋、『絶望の青』を今度こそ乗り越え、その先に広がる新天地に一番乗りを果たすため、国民達はかつてないほどに団結していた。

 しかし、そんな彼らの隙をじっと窺い続けている勢力が存在した。一つは峻厳かつ貧しい風土によって、慢性的な富の不足に喘ぎ続けているゼシュテル鉄帝国である。彼らもまたその状況を打破して真の強国となるべく、作戦の利益を掠め取ろうとしていたのである。
 またもう一つ、海洋王国付近で活動を続けていた海賊連合も再び海洋海軍の喉元に噛り付こうとしていた。後背地の安定を企図した激しい掃討作戦によって打撃を受けていた彼らであったが、鉄帝国の進撃に乗じたのか、ならず者達が珍しく団結してキャラック船やらキャラベル船やら次々に繰り出してきたのである。

 いよいよ外洋へ繰り出そうという時に出鼻を挫かれるなどあってはならない。海洋はローレットにも大々的に依頼し、これをグレイス・ヌレにて迎え撃ったのである。二度の大海戦で海洋王国を守り抜き、『海の結界』とも称えられた海域で。

●頼もしい新提督
 君達は一隻のガリオット船に乗り込み、海の中を突き進んでいた。艦を率いるのは、最近海洋に招聘されたばかりの高名な船乗りである。彼はトリコーンハットを目深に被り、彼方に掲げられた黒に赤い丸が描かれた海賊旗を見上げる。
「あの船が我々の標的だ。『ブラッドムーン海賊団』、普段はあの船のみで活動しているようだが、今日は他の海賊とも手を組んだようだな」
 敵の船は他の海洋船団に狙いを定めている。
「船長の名前はアンドレアス。それほど求心力は無いらしく、最近では荒くれ共の寄り合い所帯の様相を呈していたようだ。こうなると船長を絞め上げたところで敵の降伏には寄与しないだろう。若干面倒だが、各個撃破、あるいは捕縛を目指す他ない」
 船長は腰に提げたカトラスの柄に手を這わせる。にわかに風が強まり、ガリオット船の帆が大きく膨らんだ。
「これより一気に接近する。我々は操船に集中する故、海賊の捕縛は君達に任せたい。よろしいかな」
 君達は頷く。それを見届けた船長は、一気にカトラスを抜き放った。その瞬間、突風が吹き抜け、一気にガリオット船を加速し海賊船へと迫っていく。マストの上から海を見下ろしていた男は、突撃を仕掛けてきた船を見て叫ぶ。
「右から来るぞ!」
「あん?」
 船首に立っていたアンドレアスは、右を振り向く。海洋の旗を掲げた船が、既に目前へと迫っていた。
「うおあああっ!? 迎撃! 迎撃! 奴らを好きにさせるな!」
 彼も喇叭銃を抜き放つと、慌てて舷側へと駆けだした。

GMコメント

●目標
 海賊船を沈黙させろ

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●ロケーション
 昼。海上及び船上で戦闘を行います。
 船のタイプは敵味方ともにガリオット船です。キャラベル船よりは大きく、ガレオン船よりは小さいです。
 甲板は二層構造で、舷窓が幾つか空いています。
 襲撃に慌てた海賊達は一斉に上部甲板へ上がって来ています
 大海に落ちた場合にはなるべく早期の復帰をお勧めします。海中には凶暴な海獣も存在しています。
 飛行技術があると便利かもしれません。

●敵
☆アンドレアス
 ブラッドムーン海賊団を率いる男。と言っても彼が本当の船長であるとは余り思われていないようです。しかし荒くれ共をねじ伏せるだけの力はあるので注意して事へ当たりましょう。単細胞なのでその辺りはうまく利用したいところです。
・攻撃方法
→鉄砲
 喇叭銃です。面で攻撃してくるため躱しにくいです。
→曲刀
 近接攻撃です。
→ロープ
 投げ縄によって攻撃してきます。その手捌きは正確で、油断すると縛り上げられてしまうでしょう。


☆海賊×20
 船長の地位を掠め取る機会を今か今かと待ち構えている海賊達です。船長と思考回路は似たようなものです。
・攻撃方法
→鉄砲
 喇叭銃です。面で攻撃してくるため躱しにくいです。
→曲刀
 乗り込んできたイレギュラーズに対して振るってきます。特筆すべきポイントはありません。

●TIPS
 船長の優れた操船技術により背後は安泰です。安心して敵船へ乗り込みましょう。


影絵です。帆船の海戦は調べてみるといろいろ面白かったりするものですね。という事でよろしくお願いします。

  • <第三次グレイス・ヌレ海戦>紅き月を沈めよ完了
  • GM名影絵 企鵝
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年01月02日 22時45分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (8人)

日向 葵(p3p000366)
紅眼のエースストライカー
藤野 蛍(p3p003861)
二人でひとつ
桜咲 珠緒(p3p004426)
二人でひとつ
無限乃 愛(p3p004443)
魔法少女インフィニティハートC
アリーシャ=エルミナール(p3p006281)
雷霆騎士・砂牙
水瀬 冬佳(p3p006383)
転輪禊祓
ルチア・アフラニア(p3p006865)
「Concordia」船長
桐生 楪(p3p007157)
喪いしもの

リプレイ

●下卑た口を黙らせろ
 二隻の船は、互いの出方を窺うように円弧を描く。血の臭いを感じ取った海獣達が、水中から顔を覗かせている。船縁に立った海賊達が、銃やら剣やら振り上げて威嚇してくる。
「なるほど。これは絵に描いたような荒くれ者達ですね」
 水瀬 冬佳(p3p006383)は額に手を翳して敵の様子を窺っていた。奇しくも居合わせたメンバーは美少女ばかり。敵は猥雑な言葉を声高に吼えていた。
「全く下品ですね……」
 清らな巫女にとっては聞き慣れない響きだ。溜め息を洩らした彼女は、透き通った氷の刃を振るった。青い光が閃き、海賊の群れへと襲い掛かる。彼らは慌てて船縁から飛び退いた。冬佳は隣のアリーシャ=エルミナール(p3p006281)をちらりと見遣る。
「今ですよ」
「ええ。では手早く行きましょう。長引いて冷静になられると不利ですからね」
 鎧を纏ったアリーシャは、マストから吊るされた一本のロープを手に取る。船と船がギリギリまで近づいた瞬間を見計らい、彼女は一気に敵の船へ飛び移った。堂々と乗り込んできた女騎士を子分に囲ませ、船長はずかずかと歩み寄っていく。
「何しに来た?」
「交渉に来たのだ」
「交渉だと?」
 アリーシャは赤い鞘から剣を抜き放ち、目の前の床に突き立てた。
「この船は既に逃げられん。いま降伏して残りの海賊の捕縛に協力すれば、罪一等を減ずる用意がある。大人しく投降し、我らに協力せよ」
 朗々と言い放つが、海賊達はじりじりと間合いを詰めるばかりである。船長はカトラスを抜いて叫んだ。
「女を這いつくばらせる趣味はあっても、女の前に這いつくばる趣味はねえな!」
 一斉に襲い掛かってくる男達。アリーシャは素早く兜を被った。スリットの奥で眼が爛々と輝く。
「否か。ならばその首は柱に吊るされるのがお似合いだ」
 黒い大剣へと変わった刃を、アリーシャは力任せに振り抜く。海賊達は咄嗟に飛び退いた。その一瞬の隙を突いて、ピンクの魔法少女が甲板へと突っ込んだ。周囲に放たれたオーラが眩く光り、海賊達をのけぞらせる。三点着地を決めた無限乃 愛(p3p004443)は、杖を振り被った。
『波濤に群がる悪を沈める愛と正義の海光! 魔法少女インフィニティハート、ここに見参!』
 突然現れた装飾過多な魔法少女に海賊達は思わずたじろぐ。その間に彼女は杖を振り上げ、その宝玉に稲妻を纏わせる。
「……さて、行きましょうか」
 愛は目の前の一人に向かって杖を翳す。ハート形の火花が弾け、輝いたピンク色の閃光が目の前の海賊を船縁まで弾き飛ばした。
「太陽の如き愛と正義の威光の前に、血濡れの月は沈む時間です」
「くそっ、ガキ共が舐めてんじゃねえ! 掛かれお前ら!」
 船長が曲刀を振り上げて吼える。男達は一斉に喇叭銃で弾丸をばら撒き、曲刀を振るってアリーシャ達に切りかかる。数だけは多いが、そのチームワークはめちゃくちゃだ。鎧や障壁に罅を入れられながらも、二人は黙々と攻撃を捌いている。
「何考えてるかはわかんねぇけど、どうせ良くねぇ事考えてるだろうし、さっさとシメるしかないっスね」
 日向 葵(p3p000366)は揺れる船の上でも軽やかにリフティングを続けていた。敵の陣容をじっと窺い、敵の様子を窺う。喇叭銃を撃ち終え、鉛玉をじゃらじゃら銃口に流し込んでいる一人に狙いを定めると、銀のサッカーボールを高々と蹴り上げた。
「よーし、集中っ! 数が多くたって、落ち着いてやりゃ何とでもなるっスよ!」
 葵はジャンピングボレーを放つ。銀のボールはコウモリ型のオーラを纏い、男の背中で冷気の爆発を引き起こした。
「ぎゃあっ!」
 背中を霜付かせた男が仰け反る。船外からの攻撃に、思わず海賊達が身構えた。その瞬間を見逃さず、藤野 蛍(p3p003861)は桜吹雪を纏わせながら海賊の群れへと突っ込んでいった。
「さ、ボク達ローレットが来たからには、泣く子も黙る海賊だって泣かせちゃうんだからね!」
 狂い咲く桜の幻影が、海賊の群れを断ち割るように襲い掛かる。
「このままお仲間と一緒に海に散るか、手土産持参で投降して陸に帰るか、よーく考える事をお勧めするわ!」
 揚々と言い放つと、蛍は剣と盾を手に海賊の群れのど真ん中へと飛び込んだ。海賊達は咄嗟に喇叭銃を彼女へ向ける。蛍は剣を担いで首を傾げた。
「ふうん? 仲間を仲間とも思ってないから、味方を銃弾に巻き込んだってどうでもいいのね?」
 盾を正面に構えつつ、そのまま船長へ流し目を送る。
「手下は替えが利く消耗品だから、まとめて撃ってしまえってこと?」
「うるせえ! 早くそいつを黙らせろ!」
 曲刀を振り上げて船長が叫ぶ。蛍も刃や盾からページを散らせて幻惑し、海賊を自らへと引き寄せた。船尾の隅へと降り立った桜咲 珠緒(p3p004426)は、鼻息荒くしている海賊達を見下ろしながら、蛍に桜色の光を当てる。
「珠緒の大切なお友達にそのような目を向けるなんて」
 軽蔑の視線を向けながら、彼女は呟く。タクトを振るいながら、船の様子を隅から隅まで見渡した。
「いつ地位を奪われてもおかしくないとは、荒くれの方々らしい船ですね。この戦いの後は、果たしてどなたが船長なのやら」
 甲板に次々海賊達が飛び出してくる。敵の密度がかなり高くなっていたが、それでもアリーシャ達は軽やかな立ち回りで振り回される曲刀を躱し、受け止め、斬り払う。だが、どうしても生傷は出来ていく。ルチア・アフラニア(p3p006865)はこっそりと船の影へと乗り込み、そんな戦場をつぶさに観察していた。
「全員が全員の隙を窺っているから成立する組織なんてね。何とか瓦解させる手はないのかしら?」
 彼女は呟き、アリーシャに向かって光を放つ。鎧の奥に刻まれていた青痣が、一つ一つ癒えていく。
「まだまだ海賊達も元気そうね。足元を掬われないように気を付けて」
「ええ、気を付けるわ」
 桐生 楪(p3p007157)はルチアの隣にふわりと降り立つ。漂う潮臭さ汗臭さに混じる、錆と血の臭い。既に心臓が震えていた。
「いよいよ実践……初めての戦闘行為」
 彼女は元々戦争とは無縁な世界の大学4年生、就活先も内定してひとまずは順調な人生を送れそうな矢先に、この混沌たる世界に飛ばされてきてしまった。目の前で当たり前のように始まった命の取り合いに、思わず足が竦みそうになる。
「……いけない」
 両手で頬を叩き、彼女は眼を見開く。この世界で起きている事、思った事、結果。全てを目に焼き付けなければならない。そうすれば、きっとジャーナリストとしての道にも近づけるはず。彼女はそう言い聞かせ、腰の拳銃を抜き放った。
「私が皆さんの補助をさせていただきます。若輩者故御迷惑をおかけしてしまうかもしれませんが、よろしくお願いします!」
 彼女の存在に気付いた海賊が振り返る。咄嗟に拳銃を向けた彼女は、銃口から青い衝撃波を放ち、敵を甲板へと叩きつけた。

●俺たちゃ海賊
 イレギュラーズが乗り込んだ混乱で、海賊達の眼はすっかり船の中に集中していた。海洋の提督は嵐のカトラスを振るい、一気に船を海賊船の側まで寄せる。
「さて、飛んで火に入る夏の虫に致しましょうか」
 冬佳は海賊の群れの中へ素早く割り込んでいき、祓の舞を踊るように氷の刀を振るった。周囲に満ちた潮気が凍り付き、舞い散る白鷺の羽根と化して周囲の海賊達を次々に切り裂く。反撃する暇も与えず、冬佳はすぐさま千早の袖を翻して氷の結界をさらに広げる。
「近づけるものなら、近づいてみてください」
 たじろぐ海賊達。蛍は再び桜の吹雪を舞い散らせ、その視線を無理矢理自分へと掻き集める。
「さあさあ、投降するなら早くしなさい! 間に合わなくなっても知らないわよ!」
 蛍が叫んだ時、いきなり帆を張るロープが一本弾けた。帆が大きく翻り、船が僅かに揺れる。彼女の使う鼠が、容赦なくロープを噛み切ったのである。
「ほら、このままじゃみんな沈んじゃうわよ?」
「くそっ……」
 少女や乙女たちの激しい攻勢に、思わず船長は歯噛みする。その瞬間、向かいの船から一直線に飛んできた無回転シュートが鋭く船長の頬に突き刺さった。甲板に倒れ込んだ船長をよそに、ボールは高々と舞い上がって再び葵の手へと吸い込まれていく。
「オイオイ、まさかこんなボールに打ち負かされる程度のモノなんスかアンタ? マジでダッセぇ以外のナニモノでもねぇな!」
 海を挟んで船長を囃し立てる葵。船長は荒々しく吼えて立ち上がると、そばの投げ縄を拾い上げて力任せに振り回す。
「この野郎! さっきからいい気になりやがって!」
 分銅付きのロープは、葵に向かって一直線に飛んでいく。咄嗟に躱そうとしたが、ロープは葵の太ももを絡め取り、そのまま力任せに海賊船へと引っ張り込んだ。
「うおっ……と」
 葵は咄嗟に手刀でロープを断ち切りながら、何とか海賊船の甲板に降り立つ。船長は剣を振り上げると、海賊達に向かって叫んだ。
「こんな女やガキに良いように言われていていいのか! お前らも海賊なんだろうがよ! 死ぬ気でやれ!」
 船長は再びロープを振り回し、前衛に立っていたアイーシャに投げつける。彼女は咄嗟にロープを切り払ったが、そこへ海賊達が殺到した。海賊達はカトラスを次々に振り回し、至近距離で喇叭銃をぶちかます。鉛玉で鎧が凹み、更に分厚いカトラスの一撃が、骨身にまで衝撃を染み渡らせる。一瞬意識が飛びかけたが、彼女はいつでもどこでも騎士なのだ。歯を食い縛って踏みとどまり、力任せに突きを放って目の前の海賊達を纏めて薙ぎ倒す。
「数に頼るばかりでは、この私に膝をつかせることは出来んぞ。貴様達こそ、今後の為に疾く降りたまえ」
「そうよ。早く投降したらどう?」
 アリーシャの背後から、楪もまた銃を構えて引き金を引く。お手本通りに構え、近くの海賊を狙って青い衝撃波を打ち込む。アリーシャの反撃に怯んでいた海賊は、その一撃を喰らって吹っ飛び、甲板に叩きつけられる。そんな敵を見つめ、彼女は何とか言葉を絞り出す。
「斬られたり、撃たれたりしたら痛いでしょう? 諦めてお縄について、法の裁きを受け……」
 しかし、そこで彼女は口ごもり、一瞬引き金を引く手が止まってしまった。その隙に、船長はマストにロープを引っかけ彼女の目の前まで一足飛びに飛んでくる。
「お前、まだこっちに来て間もないだろ?」
 咄嗟に楪は銃を構える。船長は咄嗟に銃を払い除け、自らの喇叭銃を押し付けた。
「海賊の掟なんざ一つだ。やるか、やられるか、それだけなんだよ」
 銃声が轟き、全身を撃ち抜かれた楪は、思わずその場に倒れ込む。
「く……」
 今まで感じた事のない痛みが全身を苛む。これがかつての世界で戦火に晒されていた者達の苦しみなのだと、彼女は思い知った。しかし、此処で目を閉ざしたら全ておしまいだ。彼女は混沌の力を頼りに起き上がり、銃を構えた。
「そうね。……私はまだまだこの世界じゃ未熟者よ。でも、私はこの世界で生き抜いてみせる……!」
 銃声が轟く。不意を突かれた船長は、勢いよく吹き飛ばされた。群れる海賊にぶち当たり、隊列が僅かに乱れる。その隙に珠緒は天使の歌声を海に響かせ、神秘の力で仲間達を癒していく。
「敵の反撃が激しくなっています。ここが踏ん張りどころですよ」
 さらに彼女がタクトを振ると、魔法陣が次々に浮かび上がり、彼女の周囲に船の見取り図や敵の位置情報を次々に映し出す。更に彼女が魔法陣を一つつつくと、魔法陣が光を放ち、海賊達の身体に桜色から紅色まで、色とりどりの輝きが纏わりついた。
「それぞれの負傷度合いに応じて装飾に重み付けをしています。参考にしてください」
「ありがとう! みんな、一気に押し返すわよ!」
 蛍は盾を構え直し、気合を入れて海賊達を引き寄せる。わざと甲板まで近づき、敵の波を何とか抑え込む。アリーシャは大剣を担ぎ、敵の背後から一気に押し込みにかかる。
「数の不利を補うには……!」
 彼女はいきなり一人の男の脇を抱え上げると、そのまま足払いを掛けて船の外へと投げ出した。不意を突かれた男は、あっさり海の底へと放り出された。愛も素早く杖を振るい、敵に向かってピンクの雷を放って船縁の外へと吹っ飛ばす。
「たとえ私は落ちたとしても、過酷耐性とジェットパックにより余裕をもって復帰できますが、海賊はそうではない。この差こそが愛なのです。わかりますか?」
「わかんねーよ!」
 早口で愛を強弁する彼女に、思わず海賊達は叫ぶ。戦意をみなぎらせる彼女から逃れるように、海賊達が数人、後方に控えるルチアの方へ走り出した。彼女は周囲に魔法陣を広げて、アリーシャや楪を集中的に癒し続けている。
「こいつ……! さっきから好きなようにやりやがって……!」
 男は唸ると、ルチアへ素早く切りかかっていく。彼女は小さく溜め息を吐くと、素早く身を翻してカトラスを払い除け、そのまま男の脇腹へ体当たりを喰らわせた。不意打ちにバランスを崩した男は、そのままバランスを崩して海へと落ちていった。
「たしかに私は非力かもしれないけど、不意を打って海に落とすくらいなら出来るから」
 溜め息交じりに呟くと、彼女は船長と対峙している愛に向かって光を放つ。いつでも全力で戦い続ける愛に、最後の必殺技を放つための魔力を分け与える。
「さ、後はよろしく」
「いいでしょう。私の新たなる愛の形、魅せてあげましょう」
 愛は自信たっぷりに言い放つと、マジカルステッキの先に巨大なハートを纏わせる。その瞬間、彼女の周りの仲間達を次々にピンクのバリアが包み込む。
「マジカルキャノン――type.D!」
 刹那、ピンク色の光の奔流が溢れ、甲板の真ん中に立つ船長に直撃した。情けない叫びをあげながら、船長は船室へと叩きつけられる。茫然となる海賊達を、愛はぐるりと見渡した。
「さて……次は貴方達の番ですが、いかがでしょうか?」
 イレギュラーズの放つ威圧感。思わず海賊達は尻込みした。
「お、おれは……」
「何だてめえ、女に頭下げんのかよ、この腰抜けが!」
「じゃあお前行けよ!」
「くそっ!」
 結局彼らは互いにどつき合いながら押し寄せる。愛は再び武器を構えた。
「商船を襲うのみならず仲間内でも争うとは、いよいよ愛無き無法者へと堕してしまったようですね。いいでしょう。そのような手合いこそ、愛の力が覿面に効くのです」

 自暴自棄になった海賊達を迎え撃つイレギュラーズ。いうまでもなく、彼らは間もなく海に放り出され、甲板の上に叩きのめされ降参する事になったのであった。

●計画は進む
 甲板に火が放たれ、海賊船は海の藻屑と化す。死ぬ寸前まで痛めつけられた船長やそれよりはマシな船員達は、数珠繋ぎにされてマストの周囲に縛り上げられていた。海へ沈んだ奴は既に海獣のエサである。アリーシャはそんな海賊達を横目に、船長へ尋ねた。
「あなた達は大事ありませんか?」
「ああ、特段問題はない。許容範囲内だ」
 船長は頷く。そばに怪我をした船員が座り込んでいたが、それでも腕を少し切ったくらいである。ルチアは包帯を薬液に浸し、船員の傷を手当てする。
「これでいいかな。しばらく滲みると思うけど我慢してね」
「ああ、すまない」
「ついでに俺達も手当てしてくれよ……」
 ボロボロの海賊達がぼそぼそと呟く。もちろんルチアはその言葉には取り合わない。代わりに愛が彼らの目の前にやってきて、仁王立ちしながら語り始める。
「その痛みは愛を知らず、我欲に従って生き続けた事の報いです。今しばらくはその痛みに苛まれながら、愛を知るために祈り続けるといいでしょう。そもそも――」
 夢中で話し続ける愛を前に、海賊達はうんざりとうなだれた。
「誰か、こいつを止めてくれ……」
 サッカーボールを右手で弄びながら、葵は愛と海賊のやり取りを見つめていた。もちろん止める気はない。
「ま、荒くれ者達が力でまとまったところで、マトモなチームワークなんて出来る訳ないんすよね」
「いくら人数を集めても、信じ合う心と強い絆が無かったら、人というのは脆いものなのかもしれないわね」
 葵に相槌を打ち、蛍は隣の珠緒にちらりと眼を向ける。大切な想い人は、彼女を見て柔らかに微笑んでいた。
「……珠緒さん、今回も皆を支えてくれてありがとう」
「こちらこそ。珠緒は身体が弱いので、行えることは全て補助にすぎませんが。それでも信じ、受け容れてくださる蛍さんや、お仲間の力があれば……劣勢の状況も跳ね返していけることでしょう」

 楪は仲間達から数歩離れ、遠巻きで彼らの様子を眺めていた。初めての戦いを何とか乗り越えた彼女は、殆ど頭が真っ白だ。撃たれた痛みは忘れ、とりとめのない事を考えてしまう。
「この世界の法律は、どうなっているのかしら。裁判や、懲役は……」
「もちろん、それぞれの土地にはそれぞれの土地の法があります。明文化された法から、不文律まで色々と。裁判はあったりなかったり、懲役よりもむしろ追放とか、鞭打ちのような即時的な罰が多いですね」
 同じく日本からこの世界へ送り出された冬佳はさらりと応える。帰る術を見出せず彼女も恋人と共に戸惑った事はあったが、今ではそれなりに順応している。
「ひとまずこの戦いは乗り切りましたが……この先は一体どうなるのでしょうか……」



 つづく

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

影絵企鵝です。この度はご参加ありがとうございました。
一応こちらの用意していた答えは舷窓から忍び込んで中から奇襲、でした。でも海に落とすのはずっと効果的ですね。参りました。

ではまた、ご縁がありましたら。

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