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シナリオ詳細

<第三次グレイス・ヌレ海戦>ひとり舞台のファッション・ショー

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●憧れの人
 ”Erstine様”を知ってる?
 知ってる? 本当に? うん、すっごくかっこいいよね!
 イレギュラーズで、雑誌のモデルもしてるの!

 どこからか流れ着いた、『ザ・ラサビジョン』。
 擦り切れるまで、何度も何度も読んだっけ。
 海辺に落ちていたのに、雑誌の状態はとってもきれいだった。神様が私にくれた贈り物なのかな、なーんって思ったくらい。中でも私の目を引いたのは……。表紙のErstine様!
 初めてみた時は、名前はまだ知らなかったけれど、一目見てびびっときた。ああ、この人は……とっても素敵な人だって。
 Erstine様はね、小柄なのに、とても大人っぽいの。
 髪を一つに結い上げて、高い位置でポニーテールにして……振り返って、ポーズを作った、彼女の大人っぽさったら!

 私はErstine様に夢中になって、髪を伸ばしていた。いつか。いつか同じ風になれないかなって。無理なのはわかってる。でもね? ちょっとだけ、モデルとして隣を歩く自分を夢想したり……。
 なんて……。
 そんなことを考えもした。

●水の底
 他人事みたいな、下品な笑い声がこだました。
 ここは海賊の船の中。
 私と何人かの仲間は海賊に捕らわれて水槽の中にいた。身を縮めて、せまいせまい水槽の中で縮こまっている。
 ここは、まるで檻の中。息苦しい。品定めするような男たちの視線も、何もかも嫌だ。
「おい、返事しろよ、なあ。なんか芸はないのかぁ!?」
 1人が笑って、水槽にジョッキを叩きつけた。
 破片が降り注ぐ。
 痛い。殴られた体がずきずき痛んだ。
「大丈夫?」
「運が悪かったね」
「みんな、逃げられた、かな?」
 どうしてあの時。
 どうしてあの時、抵抗しようと思ったんだろう。
 抵抗なんて、立派なものじゃないけれど。
 海賊に襲われて私は叫んだ。仲間に知らせて、仲間を逃がした。つもりだった。けれど、私は捕まった。報復措置はひどいものだった。傷は、耐えられる。でも……。
 海賊の頭は下品な笑い声をあげる。
 イレギュラーズだったら。Erstine様だったら。
 なんとかできたのかな。
「おい! 返事は? なんだ? もう狂ったか?」
 水槽がどん。と揺れた。
「テメェのせいで、一人しか捕まんなかったじぇねぇかよ!」
 ひとり?
 私たち……いや、私は自嘲した。もう、ここには私一人しかいない。
 ガラスに映った私だけ。
 私は私に話していたのかな?
「どうして……」
 私は膝を抱える。
「……私なんて散々。怖い人達に捕まってこんな目に遭ってるし、もう家に帰れないのかな……うぅっ……どうしたら良かったのかな……どうしたらErstine様みたいに……なれたのかな……Erstine様みたいに……なれたら良かったのに……」
 飛沫の言葉だけが泡になって、水上へと逃れていった。
 ああ、水底から声がする。
 ずるい。
 ずるい。
 Erstine様は、ずるいよ。

 きゃあきゃあわあわあ。
 きゃあきゃあわあわあ。
 どこかに揺られる音につられて。
 湧き上がってきたのは哄笑だった。

●準備はいいかい?
「ダーク・スレート・ブルーの空……。モスグレイの海。こんな日は何かが起こる……そんな気がしてならないわ。ごめんなさい、依頼の話ね」
『色彩の魔女』プルー・ビビットカラー(p3n000004)は翼を畳み、空を見上げた。
「今回のオーダーは、海賊の討伐。海賊艦隊くずれの一隻を、マリンブルーへと沈めることよ。いいえ、彼らはベビーブルー。あなたたちの敵ではないわ。これは難しい依頼ではないはずだけれど……準備は、いつでも完璧にね」


 プルーの懸念の通りだった。
 イレギュラーズたちが海賊船を見つけた、その時。
 あたりは、突如として吹雪に閉ざされた。
 海賊船はその場に凍り付き、海賊たちは一人も生きてはいない。
「ねえ」
 誰かの呼び声が、聞こえる。
「私に会いに来て」

GMコメント

布川です。
HARD依頼です。みなさま、お気をつけて!!!

●Danger!
 当シナリオにはパンドラ残量に拠らない死亡判定が有り得ます。
 予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。
(これ自体が不測の事態です)

●目標
 魔種レアータ・バハルの攻撃を退け、撤退する。
 撃破まで至るのは相当に困難です。弱らせ、吹雪が弱まった隙に撤退しましょう。
 退けての撤退がかなわなかった場合、海洋の友軍が助けに来てくれるので全滅&全員死亡とはさすがになりませんが、レアータの予想外の吹雪の影響で海洋王国友軍が打撃を受けることでしょう。そうなれば失敗です。

●あらすじ
 イレギュラーズたちは依頼により、海賊艦隊くずれの一隻と交戦するはずだったが、海賊船は凍り付き、辺りは吹雪に閉ざされていた。
 奴隷として囚われていた海種、レアータ・バハルが魔種となったためである。
 吹雪に阻まれ、撤退も難しい。なんとかしてレアータを攻撃し、吹雪が弱まった隙に逃げ出そう。

●場所
 海賊船、ホール。
 略奪品にあふれた豪華な一室。巨大な水槽の破片の上に、氷の衣装をまとったレアータ・バハルが待っている。

●レアータ・バハル
外見年齢は18歳。リュウグウノツカイの海種。
雑誌モデル、とくにErstineに憧れる少女。
その「Erstine様」への憧れも、今や歪んだものとなっている。

攻撃手段も防御手段も無限に生成される氷。
イレギュラーズの武器や攻撃など、「美しい」「強い」「こうなりたい」と思うものをやみくもに、いびつに模倣する。
 氷でできたキャットウォークを歩く。ポーズを決める。
 堂々と、姿勢よく、武器を振るいたい。しかし、弱るにつれて動きはぎくしゃくとしたものとなる。
「Erstine様……私の憧れなの。あんなに小柄なのにかっこよくて綺麗で……イレギュラーズの傍らモデルまでしてるなんて……凄いでしょ?」

●その他
・海賊はすべて氷の彫像となり、死亡しています。

●重要な備考
<第三次グレイス・ヌレ海戦>ではイレギュラーズ個人毎に特別な『海洋王国事業貢献値』を追加カウントします。
 この貢献値は参加関連シナリオの結果、キャラクターの活躍等により変動し、高い数字を持つキャラクターは外洋進出時に役割を受ける場合がある、優先シナリオが設定される可能性がある等、特別な結果を受ける可能性があります。『海洋王国事業貢献値』の状況は特設ページで公開されます。
 尚、『海洋王国事業貢献値』のシナリオ追加は今回が最後となります。(別途クエスト・海洋名声ボーナスの最終加算があります)

  • <第三次グレイス・ヌレ海戦>ひとり舞台のファッション・ショー完了
  • GM名布川
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2020年01月02日 22時45分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (8人)

エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)
波濤の盾
デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)
共にあれ
夜乃 幻(p3p000824)
『幻狼』夢幻の奇術師
アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)
舞蝶刃
アルテミア・フィルティス(p3p001981)
プロメテウスの恋焔
ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)
氷雪の歌姫
エルス・ティーネ(p3p007325)
竜首狩り
フレイ・イング・ラーセン(p3p007598)
Immortalizer

リプレイ

●開幕
「これは一体……?」
「凄い吹雪……突然どうしたと言うの……?!」
『氷雪の歌姫』ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)と『氷結』Erstine・Winstein(p3p007325)は足を止める。
 凍てつく空気。あたりは吹雪だ。ただならぬ存在がそこにいるのが肌で分かる。
「ほぅ、一瞬で吹雪を起こし、船ごと凍らせたか。レアータというのは凄まじい能力を持っているな」
『天戒の楔』フレイ・イング・ラーセン(p3p007598)はオッドアイの双眸を細める。
「なんて強力な吹雪……相変わらずレアータはどこで見かけても脅威ね……」
 Erstineの吐息は白く凍る。
「何やらエルスティーネをご指名のようだが……」
「会いに来てほしい、とは穏やかではありませんわねー」
 メリルナートは油断なく、奥へといざなうように続く道を見つめていた。
「どうして私、なのかしら……」

「情報屋の勘は凄いわね……。忠告に従って準備をしておいて正解だったわ」
『舞蝶刃』アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)はふう、と息をついた。
「それでも不意のレアータ、環境も悪い。……討伐は困難。ここは撤退だけ考えましょう」
「うむ。レアータを弱らせ、吹雪が弱まった隙に、無理をせず撤退を優先するのじゃ」
『大いなる者』デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)もまた、海洋王国の名門クラーク家の名前を背負うだけの判断力はある。
「じゃが、ちと寒い。着こんでおくか……」
「まったく、酷い吹雪で御座いますね」
 夜乃 幻(p3p000824)はゆるやかにシルクハットに積もる雪をほろい、被りなおして一礼をした。いつのまにやら、手の平には聖鳥の目覚ましがあった。聖鳥は一声元気に鳴いて、夢のように溶けていった。
「さあ、確かめに参りましょう」
 一行は誘われるように、凍り付いた道を進みだした。
 きらきらと輝く船内は、どこもかしこも凍り付いている。
「救助依頼だったはずが無茶苦茶な状況になってるようだな」
『海抜ゼロメートル地帯』エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)は目の前のつららを思い切り砕いた。奥に進むにつれて、冷気はどんどん強くなる。
「レアータを放置するわけにはいかんが準備が足りない、撤退のために可能な限り尽力しよう」
「そういや、これはレアータになったばかりか。もう少し俺達が早くこの海賊達を拘束していればこうはならなかったと思うと歯痒いものだな」
 フレイの言葉に、『Righteous Blade』アルテミア・フィルティス(p3p001981)は目を伏せた。
「私達の到着がもっと早ければ彼女が“反転”する事はなかったかもしれない……そう考えずにはいられないわ……」
 救おうとしても、零れ落ちるものは無数にある。しかし、イレギュラーズたちは前を向く。
「……悔やんでいても仕方がない、今は現状をどうにか切り抜ける事を優先よ」

●邂逅
 レアータの攻撃は、アルテミアを捕らえた。
 しかし、それはシャドウイグジスタンスによって生じた影だった。
「なぜここに居るの」
 アルテミアは問う。
「何をしようとしているの」
「私は、美しいものが好きなだけなの。Erstine様……Erstine様……!」
 レアータはうっとりとした表情になる。話にならないことは分かっていた。
 アンナは輝の水晶剣を掲げた。
 神子饗宴。己を犠牲に、味方を後押しする技だ。紡がれる英雄叙事詩は、イレギュラーズたちを勇気づける。
(吹雪も凄かったけれど、他の能力にも警戒しておかなきゃ)
 Erstineは注意深く動向を見守る。
 蒼薔薇とそれに留まった青い蝶。幻はくるりとステッキを回す。奇術『夢幻泡影』は願望を映し出す。
 レアータはうっとりとあたりを見回した。ステージを歩く自分の姿。そして、ああ……! スポットライト。同じようなステッキが形成されている。
「物真似ですか? しかし……」
 幻は、素早く動く。まるで質量がないかの如く、優雅に空中をたゆたう。
「僕が研ぎ澄ました美しい高EXA高命中までは真似できないでしょう?」
 レアータの武器は呆気もなく砕け散る。
 そして幻は目の前にいた。
「私、私は……」
 レアータは動きを止めた。
 Erstineが、いた。
 終焉の氷結を構えて、その意志の強い瞳で。こちらを見つめている。
 剣魔双撃。格闘を囮に注意をひいて、本命である魔術をぶつける攻撃だ。
 はじめて、見た。美しい攻撃だった。続けて、攻撃を変える。構えを変えての外三光。腕が痺れた。
 ああ、なんて美しい!
 それは、理想の姿だった。
「ああ、Erstine様!」
 渇望にかられる。鏡のように写し取る。同じように剣技を飛ばす。一撃目は痺れた。
 こんなのではだめだ。もっと、……もっと。
「こっちだ」
 攻撃は中断させられる。吹雪の底から、氷の弾丸が飛んできた。
 エイヴァンが戦線に躍り出た。メチェーリ・スナリアート。レアータの氷のつぶてを、白熊の巨体はなんともしない。しっかりとレアータをマークし、牆壁【銷波熊】をどかりと地面に打ち付けた。
「くっ……」
 エイヴァンはライトフォースにより防備を固め、やってみろ、というように盾を持ち上げた。
 なんて、固いの。
 強い。……強い。
 この強さが欲しい。
 稚拙な氷の弾丸がエイヴァンを襲う。エイヴァンの傷は、即座にアンナのミリアドハーモニクスによって癒やされる。
「ありがたい」
 そして、レアータにはそれがない。レアータは狂ったように笑い声をあげた。

●強さ
 メリルナートは、おそらくは回復の役回りだろう……。
 レアータは読み違えた。だから、注意を払っていなかった。傷口を氷で覆い、止血することに専念しようとした。
 それが間違いだった。
 メリルナートは、ためらいなく血を流した。自らの血を媒介にして氷の槍を形成する。
 風を切る音。突き立った槍が、その力を解放すべく華ひらく。氷の結晶が、ちらちらと辺りに舞った。
 終奏の艶華。
 美しい。美しい。美しかった。
 イレギュラーズたちは、突入の前に、どう立ち回るかを練り直し共有していた。
「氷系の技は厄介だな」
「Erstineを狙ってくるかもしれないな。壁は任せてくれ」
 打ち合わせの通り、エイヴァンとフレイは前衛で双璧となっていた。
「フォローは、任せて」
 アンナが仲間の傷を絶え間なく癒やす。
 遠距離からの幻とデイジーの攻撃。アルテミアとErstineが道を切り開く。
 そして、メリルナートは。
「本来は連携を取るためにやっていたことですが、今回の敵が真似をしてくることを思えば、やっておいたよかったですわねー」
 攻撃だ。
「意思疎通は集団戦の基本じゃのう」
 デイジーが頷く。遠くから攻撃をほとばしらせるデイジーを、レアータはなかなかとらえることができない。
(まぁ不測の事態は気を付ける以外やれることがない)
 フレイは冷静に、攻撃を受け止める。傷だらけの身体は、今まで幾度となく仲間を救ってきたのだろう。
 レアータは隙を見て後衛に攻撃を躍らせるが、デイジーはなんなくひらりとかわした。
「ぐっ……」
 レアータは一人だ。
「よそ見しないことね」
 アルテミアのノクターナルミザレアが、氷よりもいっそう輝いた。マナスティール。相手の魔力を我が物とする奪魔の刃。
 レアータは悲鳴を上げ、遠く、遠く、恍惚の中へと落ちていった。
 あの声が響く。
 姦しい、深海からの声が響く。
 気が付けば、レアータは叫ぶようにして笑っていた。
 フレイの黎黒封纏が、レアータの攻撃を受け止めた。キャッスルオーダー。息は凍るが、フレイはそれをものともしない。足場が悪いとみるや、空中へと戦場を変える。重心をずらし、攻撃の威力を殺す。
 レアータに、いびつな翼が生えた。
「俺の真似か?」
 フレイは皮肉気な表情を浮かべた。
 フレイの両親は、『白翼の一族』と『白き枝族』。フレイは、黒翼であるために両一族から疎まれた。
「素敵」
 何倍も大きい翼。
「じゃが、この船内ではな」
 デイジーは悪戯っぽく笑い、リトルリトル写本から誘う青き月を喚びだした。レアータは夢へ。夢へと引きずり込まれていく。
 幻想的な舞台だった。

●熱狂
「真似してご覧なさいな」
 幻は圧倒的に早い。動きは掴みどころのない霧のよう。美しい。美しい。あれが欲しい。息をのみ姿を変えようとするが、追いつかない。
『花蝶風月』により、めくるめく過去の姿を見た。そこにあったのは、Erstineの姿。
「おや」
 幻は首を僅かに傾げた。
「ラサビジョンには僕も載っているんですが、僕の美しさを理解して頂けないなんて残念です」
 再び幻が氷の鏡面にいくつもの姿を映し出す。
 レアータも、氷を作り出そうとした。しかし、アルテミアの業火剣乱から、青き炎がほとばしる。荒々しくも鮮烈な剣舞が、氷の牙城を切り裂いてゆく。
 幻は2度目の構えをやめ、下がった。
 レアータは叫ぶ。
(海賊を氷像にした強力な攻撃は……あれかしら?)
 アルテミアはレアータの出方を窺った。
 鏡のように無数の炎をまとう、無数の武器がイレギュラーズたちに向けられている。
「此方の攻撃を模倣してくるのは厄介だけれど、それは所詮付け焼き刃の真似事でしかない」
 アルテミアは笑う。
「そんな付け焼き刃の真似事で、私の炎舞を再現したと思わない事ね!!」
 何よりもアルテミアの炎が勝る。青がより、鮮烈に燃え広がる。アーリーデイズで魔力を活性化させ、全力の業火剣乱。ニセモノの姿にひびが入る。
 さらにErstineの剣魔双撃により、翼が断ち切られた。
 レアータは絶叫する。
「効いておるようじゃのう」
 予めやっていたファミリア―が外を見張っている。吹雪は、弱まった。レアータは、苦しんでいる。
「いけますかー?」
 メリルナートの眼前で氷がはじけた。難なくいなす。
「わたくしある程度耐性がございますので、あちらを優先でお願いしますー。手は足りますかー?」
「やるわ」
 アンナの返事を聞いて、メリルナートはナッシングネスを走らせた。虚無のオーラがレアータを包み込む。
 アンナは戦場をふわりと横切ると、ブレイクフィアーを仲間へと授けた。続けて、素早くエイヴァンにミリアドハーモニクスを。癒やしの力を。
「行け!」
「任せてくれ」
 エイヴァンとフレイが立っている。
 エイヴァンは吠えた。フレイの傷はイモータリティによって塞がる。
 おぼろげに浮かび上がった模倣の月に、デイジーはにやりと笑った。
「妾の術はそればかりじゃないぞ?」
 顕現させたのは、蝕む赤き月。不吉の象徴たる赤き月。

●美しさ、舞台、頂点
「素敵……素敵だわ……」
 Erstineは血意変換により、戦う力を取り戻す。美しかった。その姿勢は、どこまでもまっすぐで。きれいなものだった。
「美しいモノがお好きなので御座いますか。趣味が合いますね」
 数拍おいて、幻の花蝶風月がレアータに襲い掛かった。
「ですが、美しいということは自らを磨かねば得られないモノなので御座います。只の模倣で手に入れられるモノは只の虚構なのです」
 ぱちりと指を鳴らす。
「虚構という夢の中で貴女は孤独な儘ずっと踊っていて下さい。僕達は前に進み、研鑽を積んでずっと美しくなってみせますから」
 何度も、舞うように。移ろいゆく攻撃。緻密に編まれた幻想の檻。
 レアータは絶叫した。
「確実に効いているわ。押し続ければ好機は生まれるはずよ」
 アンナは仲間を鼓舞し、絶え間なくミリアドハーモニクスを分け与えた。回復。防御。シビアな戦いだ。少しでもリズムが狂えば、死が待っている。
「よし……」
 エイヴァンが姿勢を変えた。
 ヴィエルナシチ・ザミルザーニイ。恐ろしく気温を奪い去り、すべてを集めて一撃を食らわせる。レアータは苦しそうにうめいた。いくら真似をしても、この温度は、出せない。
 そして、それは囮だった。布石を巨体で隠すための。
「行け!」
 Erstineの氷旋。zawbieat aljalid。切り裂いた一撃。終焉の氷結から繰り出される零度。
「あ……ガ!」
 凍り付く。真似をしようとした。
 届かない。あの人には届かない。
 アルテミアの業火剣乱が、レアータの鎧を剥いでゆく。
「憧れを抱く事は悪い事ではないけれど、貴女のそれは真似事でしかない。真似しか出来ない貴女は、なにものでも無いわ」
 破れかぶれに、槍を作り出す。メリルナートの技だ。メリルナートはそれにこたえるように、同じ動きをした。
 終奏の艶華が砕け散る。立っていたのはメリルナートだった。突き抜けた槍は、レアータに深々と突き刺さっていた。
(どうして、同じにならないの……?)
 絶叫がこだました。
「後ろへ!」
 フレイが庇う。仲間を庇う。つららのように、模倣しそこなった鋭い氷が降り注いだ。移すのは、二つの月。おぼろげな月。
 なりたい、あなたに。
 あなたたちに。
「強く美しい妾にもっと釘付けになるが良い」
 デイジーは見本を見せた。よりはっきりと、浮かび上がる月。
 ほんものの、月。

●ラスト・デモストレーション
 レアータの攻撃が苛烈になった。なりふり構わぬものだ。しかし、隙は大きい。レアータは一撃、また一撃と、もはや模倣になっていない攻撃を振るう。
「だめ!」
 アンナがデイジーを庇った。メリルナートが、即座に回復にと回る。
「行きますかー?」
 メリルナートはちらりとデイジーを見る。デイジーは頷いた。
「うむ、そろそろ奥の手かのう……」
 デイジーは不敵に笑みを浮かべる。
『一斉攻撃を仕掛ける!』
 デイジーがびしりと宣言した。
(ああ、神様!)
 レアータは歓喜に打ち震えた。この技を耐えきって、そうしたら、勝利だ。
 勝利が待っている。
 アーリーデイズを帯びたアルテミアが息を吸う。来る。あの技が来る。レアータは構える。身を焼き焦がすような熱い炎……。
 放たれた業火剣乱は、壁をぶち破った。
「……!?」
 幻がステッキを空に掲げる。薄い立方体が、レアータを覆う。
 幻の胡蝶の夢だ。
 幻想が砕け散るのは、一瞬。だが隙はできた。エイヴァンが仲間を支え、大穴から外へ出る。
「逃がさない! 逃がさないぃ!」
 猛攻をフレイが受け止める。
「……問題ない。先へ!」
「まかせた」
 フレイならば、大丈夫だ。殿を務められるだけの力がある。エイヴァンは先に道を切り開く方を選んだ。
「ではな」
 デイジーはファミリア―と合流するとすたこらと逃げる。
「私はこちらの道を。それでは、また後ほど」
 沈みかけ、浸水しかけている船の道の前で幻は消えた。幻を追おうとする氷は、水面で途切れる。
 吹雪が晴れたのは、ほんのつかの間。だが、イレギュラーズたちは逃げ切った。
 最後に戻ってきたフレイを、アンナが回復させる。
「ああ、大丈夫だ」
「用意しておいて正解だったな!」
 エイヴァンの砕氷戦艦「はくよう」は、吹雪の中でも健気に主人を待っていた。
「たとえ凍りにくいとはいっても、海面が凍っていないという保証はないからな。元の船はもう無理だ。行くぞ!」
 エイヴァンが舵を切る。みしみしと音を立て、吹雪を抜けた。
 振り返れば、戻れないほどの猛吹雪に覆われている。
 脱出が少しでも遅れていれば……。
「彼女はまだ当分、ああして憧れ傷つき苦しむことになるのでしょうね。今のわたくし達ではどうにもできないのが、歯痒いですわー……」
 メリルナートはふうと息をついた。
「今は逃げることしか出来ないなんて……私ももっと力をつけないと、ね」
 Erstineは武器を握りしめた。
「……何があったのか想像はつく。きっとこの子は悪くないのでしょう。次こそ、解放してあげるから」
 アンナは決意する。
「でも、彼女はどうして……」
 ふわりと、幻の袖から何かが出てきた。
「これはラサビジョン……かなり読まれたもの、かしら」
「そのようです」
「! 彼女は……」
 雑誌には、メモ書きがはさみこまれている。びっしりと書き込まれている。決して雑誌は汚さぬように、添える形で。もうボロボロになった本だったが、どれだけ大切にしていたか分かる。
「大事にしてたんだな」
 エイヴァンがふと漏らした。
「いつか、Erstine様みたいに、なりたい!」
 少女らしい丸い文字。雪のつぶてが文末をにじませる。
(イレギュラーズに……憧れていた……その中でも特に……私なんかに……)
 Erstineは、終焉の氷結を握りしめた。
「……次に会う事があれば……『助け』なくてはいけない、わね……」
 この本は、レアータのものだ。それを見ることができるかどうかは怪しいが、残していくことになった。
 Erstineは小さなメモ書きを握りしめて、目を伏せた。
 魔種を助ける方法は……。一つしかない。

成否

成功

MVP

デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)
共にあれ

状態異常

アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701) [重傷]
舞蝶刃
フレイ・イング・ラーセン(p3p007598) [重傷]
Immortalizer

あとがき

レアータ戦、全員生還で見事帰還です!
vs魔種戦ということで、かなり強くしたつもりだったのですが、立ち回り、作戦ともに見事でございました。
お疲れ様でした。
イレギュラーズたちは傷を癒し、次の戦いに備えるのでしょう。気が向いたら、また会いに来てくださいね!

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