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シナリオ詳細

バラックとその住人の救出を

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ゼシュテル鉄帝国は強者の輝く国だ。
 戦いに勝利し、生き残った者こそが栄光をつかむことができる。
 だが、その一方で、弱き者が無視されたことで生み出された影もあった。
 その影こそ、スチールスラムである。

 ゼシュテル鉄帝国の首都スチールグラードが抱えるスラム問題。
 ラド・バウを始めとする闘技場やそれを中心とした都市開発により正常化をはかっているが、スラム住民が立ち退かないという根本的問題を解決できずにいる。
 そんな中、鉄帝将校ショッケンは強引かつ悪辣な手段でスラムの立ち退き計画の実行を始めた。
 スラムにおいて、弱者救済を図っていた慈善教団クラースナヤ・ズヴェズダーがそれに抵抗。
 小規模かつ散発的なトラブルが頻発し、軍や地上げ屋への対抗手段としてローレットに依頼が舞い込む事態となっていたのだった。


 ゼシュテル鉄帝首都。
 そこで新たな動きは起こっており、ローレットへと依頼が舞い込んでいる。
「今度は、鉄帝から大量に依頼が舞い込んできてる。難儀なこった」
 『海賊淑女』オリヴィア・ミラン(p3n000011)は小さく首を振る。

 依頼者は、クラースナヤ・ズヴェズダー。鉄帝の人民平等化を目指す宗教団体だ。
「スチームスラムの住民を助けてほしい。それが今回の依頼だ」
 力こそ全てという鉄帝において、軍主導で進められているニュータウン開発計画。
 首都に広がるスラムの住民を立ち逃がせ、新闘技場など様々な施設を建設することで正常化をはかるというものだ。
 一見すれば、景観と合わせ、住人達の環境が良くなりそうな都市計画。
 だが、現状は悪徳軍人ショッケン、悪徳商人ハイエナによって、悪用されてしまっている。
「奴らは強引な手法でスラムの家々を破壊し、モンスターすら放って立ち退きしている外道だよ」
 そのくせして、悪人が根城とする場所はノータッチで、彼らに対価まで支払って地上げ屋としてスラムの建物破壊を進めさせている。
 今回、30人ほどが身を寄せ合って暮らすバラックを、寄せ集めのごろつき達に破壊をさせようとしているようだ。
 これもショッケン、ハイエナ両名が仕掛けたことに間違いない。
「鉄帝において、力無い者が何をされても構わない。それはスラムの住民もわかっているはずだ。……だが、時期が悪すぎたね」
 季節は冬だ。一度に30人もの人を受け入れる場所など、そう簡単に見つかるはずもない。
 仮に、どんな形であれ、バラックを破壊されれば、彼らにこの冬を越すことは叶わないだろう。
 この状況を、クラースナヤ・ズヴェズダーは見過ごせず、救出にとローレットに依頼してきたというわけだ。
「バラックは壁を背に、幅50m、奥行き40mの大きさだ。高さは1mから5mとまちまちだね」
 粗末なその建物は、住民達が手直しに手直しを加えて維持されている。
 ちょっとでも攻撃を受ければ、それだけで崩壊しかねない。
 保護結界があれば、流れ弾、飛び火などは問題なくしのげるが、相手はバラックを本気で破壊にきている。
「だから、一瞬でも相手に攻撃させる隙を与えたら最後だよ」
 その上、こちらの攻撃手段もある程度制限される。オリヴィアが難儀だと言ったのは、こうした事情からだ。
 それでも、バラックの破壊を食い止められそうなのは、ローレットしかいないのが実状。どうにかして、この場の住民達を守ってあげたい。
「無事、地上げ屋どもを追い返したら、スラムの人達に温かいものを差し出してやりな」
 その日暮らしで、満足に食事もできていない人も多いだろう。炊き出しでもして、彼らに明日を生きる活力を与えてあげたい。
「色々考えることも多い依頼だけど、頼んだよ」
 最後にオリヴィアはそう告げ、依頼の完遂を、そして、スラムの人々の居場所の防衛をイレギュラーズ達へと託すのである。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様、こんにちは。なちゅいです。
 鉄帝のスラムに住む人々の居場所を守っていただくよう願います。

●目的
 地上げ屋の討伐。

●敵……地上げ屋
 いずれも、鉄騎種(オールドワン)です。
 バラックの住人を合わせて襲ってくる為、注意が必要です。

○ごろつきリーダー・バルドゥル
 20代男性。地上げ屋が雇ったごろつきのリーダーです。
 右腕が機械となっており、1mほどある大斧を武器とし、強力な一撃を叩きつけてきます。

・大木割り……(A)物至単・ブレイク
・なぎ払い……(A)物近列・流血
・挑発する……(A)神中域・怒り

○サブリーダー・エッダ
 20代女性、内臓を機械としており、重火器をいくつか持っており、部下に貸し出しております。

・火炎放射……(A)神近貫・業炎
・煙幕弾……(A)神中範・暗闇
・ロケット砲……(A)物遠単・炎獄・崩れ・溜1

○手下……10人
 10代後半から20代の男性達。
 力をひけらかすごろつきどもです。
 さほど体を鍛えている様子はありませんが、鈍器や重火器を使ってきます。

●NPC
 バラックの住人達。老若男女30名ほど。
 いずれも鉄騎種ですが、力なくスラムに追いやられた人達です。戦う能力はありません。

●状況
 鉄帝内のスラム某所にあるバラックに身を寄せ合って暮らす人々を、地上げ屋が強引に退去させようとしています。
 地上げ屋がバラックを破壊することを防ぎつつ、彼らの撃退を願います。

 事後は、彼らの為に何か温かいものを差し上げていただければ幸いです。

●情報確度
A。想定外の事態(オープニングとこの補足情報に記されていない事)は絶対に起きません。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • バラックとその住人の救出を完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年12月20日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

シグルーン・ジネヴィラ・エランティア(p3p000945)
混沌の娘
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク
ニル=エルサリス(p3p002400)
ヒィロ=エヒト(p3p002503)
瑠璃の刃
グリムペイン・ダカタール(p3p002887)
わるいおおかみさん
美咲・マクスウェル(p3p005192)
玻璃の瞳
ひつぎ(p3p007249)
ラブアンドピース
桐神 きり(p3p007718)

リプレイ


 鉄帝首都に広がるスラム街。
 そこに、ローレットのイレギュラーズ達が足を踏み込む。
「ぶはははっ、力技なのは鉄帝らしいが、流石にやり方にも限度ってもんがあるよなぁ」
 今回の要件を思い出し、黒豚系オークの旅人、『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)は豪快に笑う。
「鉄帝は地上げ屋でも、何でも力さえあれば~ってお国柄なんだお」
 そこで、長い銀の髪を大きなリボンで後頭部を縛り、ポニーテールとしたニル=エルサリス(p3p002400)が諭すように口を出す。
 彼女は今回の地上げ屋をのした後で炊き出しをすると聞いて、事前にこれでもかと肉や野菜など食材を購入していた。
 ものすごく嵩張るニルの荷物に、仲間や周囲の人々の注目を浴びていた。
「筋トレになりそうだし、こまけーこたぁええんだお」
「慈善事業も大変だねえ」
 狼の獣種のような風貌をした旅人、『わるいおおかみさん』グリムペイン・ダカタール(p3p002887)が息をつく。
「さてさて、如何するかな」
 肉片を作る事は得意だが、石のスープを出すわけにはいかないと彼は言う。
 なお、石のスープとは某世界ポルトガルの民話。協力を集める為の呼び水の意味もあり、その名を持つスープも存在する。
「蛙に蝸牛に子犬の尻尾、砂糖にスパイス。そして、素敵なものばかり。君等はそうゆうもので出来ている」
 敢えてこのマザーグースの童謡を口ずさんだのを見ると、ここは女性陣に任せようとダカタールは考えたのかもしれない。
 それはそれとして、色黒で金と青の独特な髪を持つ『自称カオスシード』シグルーン(p3p000945)も今回の地上げ屋のやり方には難色を示していて。
「弱い者虐めは好きじゃないな」
 例え、弱肉強食が世の原理だとしても、気持ちいいとは思えない。
 シグルーンはそんな本音を漏らして。
「そう思うのは……シグが弱者だからかな?」
「力なき正義に意味はない。鉄帝においてそれは当然のこと」
 赤い髪黒地に青い瞳の『ラブアンドピース』ひつぎ(p3p007249)は鉄帝人として一言呟き、そしてひつぎ本人として続ける。
「身に染みているけれど……、鉄帝のそういうところが嫌いですね」
 今回、そういった力で攻め来る連中から、スラムのバラックに住む住民を守るのが今回の依頼だ。
「何かを守りながらの戦いっていうのは苦手ですねー……」
 茶髪に青と赤のオッドアイの桐神 きり(p3p007718)は正直に胸を内を語る。
 長いアホ毛とふさふさ耳と尻尾を持つ狐の獣種、『心だって強さに』ヒィロ=エヒト(p3p002503)にとって、都市開発はわからないが、強者絶対という鉄帝のあり方はわかる。
「それでも、スラムよりもヒドい外道の悪臭は、ボクでもわかるよ」
 虹色の虹彩を持つ黒髪女性、『見敵必殺』美咲・マクスウェル(p3p005192)は鉄帝の国策やごろつきの考えなど、色々と思うこともあったようだが、1つ嘆息して。
「加減とか面倒になってくるね」
「……それじゃ始めよっか、大掃除!」
 ヒィロはそんな美咲を優しくなだめつつも、意気込みを見せる。
 そこを何とかするのがデキる奴だと、きりもまた気合を入れて。
「何とか頑張ってみましょうじゃありませんか!」
 そうして、メンバー達は目的のバラック前へとたどり着いたのである。


 地上げ屋の来訪までは時間がない。
 イレギュラーズ達は手早く行動を開始する。
「住人の皆さん、このままバラック内に避難を願います」
「危険だから、外には出ないで頂戴」
 きり、美咲がバラックの人々に告げると、彼らは戸惑いながらも身を潜める。すでに、地上げ屋の立ち退き要求は幾度かあっていたのだろう。
 戦闘の余波によるバラックの破壊を防ぐべく、シグルーンやゴリョウが保護結界を張っていると。
「そろそろ、のたれ死にする腹ぁ決まったか?」
 下卑た笑いを浮かべ、バラックへと近づいてくる集団。
 地上げ屋に雇われたごろつき達は斧や重火器を担いでおり、バラックを破壊する気満々といった様子だ。
 ダカタールは背後から聞こえる悲鳴を聞きながら、リーダーと思しき男へと声をかける。
「いやあ、悪いね。君達が仕事な様に、私達も仕事なのだ。今回の読者はやけに此処の保護に熱心でな」
「んだぁ、てめぇらは……?」
 すると、大斧を機械の腕で担いだリーダー、バルドゥルが眉を動かす。
「此処は鉄帝。君達と、私達。勝った方の道理が通るというという事にしないかい?」
「バラックの存続を賭けて決闘しましょう!」
 ダカタールに合わせ、きりも正々堂々、力で決着をつけるのがスマートだと身構える。
 ニルもバラック内の脇へと荷物を置いてから、ごろつき達へと告げる。
「寒空の中、放りだされそな子達を放っておくのが夢見わり~って理由で妨害したとしても、地上げ屋より力があるっちゅ~とこみせりゃ、ウチ達が正義っちゅーわけだぬ?」
「まさか、こんなか弱い女の子との戦いから逃げて、反撃もしてこない建物潰して、終わりじゃないですよねー?」
 ニルに合わせてきりも相手を煽ると、サブリーダーの女性、エッダが呆れたように言い放つ。
「要はアタシ達の邪魔をするってわけだろ?」
 彼女が背中に担いでいた重火器を手にすると、手下どもも様々な重火器を構えてこちらへと向けてきた。
「全く、読み飛ばしすぎじゃあないのかい?」
 説得不可能と判断したダカタールは、さっさと三枚卸しにすべきと戦闘態勢をとる。
 足元に狐火を灯すヒィロはふわりと浮き上がり、前に出ていく。
 逆に、ひつぎはバラックの手前まで下がっていた。
(俺は壁。聳え立つ最後の砦)
 バラックを……守るべきものを背にし、向かい来るごろつきを1歩たりとも立ち入らせぬ為、彼は立ちはだかる。
「弱者なりの戦い方を魅せてあげる」
 シグルーンもそうごろつき達へと言い放ち、敵へと駆け出すのである。


 イレギュラーズ達は出来る限りバラックへと被害がないよう、ごろつき達を引付けようと立ち回る。
 最も多くの敵を引きつけていたのは、ヒィロだ。
 敵陣へと飛び込んだ彼女は戦いの開始と共に、抑え切れない闘志を漲らせて。
「決して退かないし、屈しない。絶対バラックの人達には近づけさせない!」
 そうして、ヒィロは手下へと溢れ出る勇気と迸る闘志をぶつけ、さらに敵を引き付ける。
「調子のんな、ゴラァ!」
「バラバラにしてやんぜ!」
 そいつらはハンマーやバズーカ砲を使い、攻撃を仕掛けてくる。
 可能な限り、敵を密集させようと引き付けるヒィロに合わせ、ダカタールが進み出る。
「グリムペイン・ダカタールだ。君はどんな物語を紡ぐのかな」
 手下のみ気を引くように名乗りを上げたダカタールは、金属バットやバルカン砲を手にする手下の攻撃を引きつける。
 そして、彼は手元に出現させた打ち出の小槌を振り、敵の頭上から不可避の岩や氷を叩きつけていった。
 きりもまた率先して殴打、射撃と手段を問わず襲ってくる敵を纏めて捉えて。
「私に出来るのは、単純にパワーでぶん殴る事だけです!」
 徒手空拳で構えを取るきりは複数の敵を捉え、悪意と殺傷力を持って呪力を纏わせた拳を一気に叩き込んでいく。
 複数の人間が入り混じる戦場だ。きりは仲間を巻き込まないようにと注意していたようだ。
 近づいてくるリーダー、バルドゥルにはゴリョウが当たる。
「よう旦那、ちょいと俺と喧嘩しようぜ!」
 想定とは違った部分もあるが、それでも直接相手ができることに変わりはない。
「ああ、遠慮なくこいつをぶつけてやらぁ!」
 機械となった右腕を、バルドゥルは渾身の力でゴリョウへと振り降ろしてくる。
「ぶはははッ、良い威力だ! だが、俺を倒すにゃまだ足りねぇな!」
 しかし、その一撃を受け止めたゴリョウはノーモーションで敵を吹き飛ばす。
「うおおおっ!」
 ゴリョウは敵を追いかけ、さらに注意を引く。
「やんじゃねぇか、豚野郎がよ……!」
 睨みつけてくるバルドゥルはゴリョウを獲物と見定め、今度は大斧を横薙ぎに振るってきたのだった。
 仲間が手下に向かってくれていることもあり、シグルーンはサブリーダー、エッダへと向かう。
「吹っ飛んじまいな!」
 不敵に笑う彼女はロケット砲を飛ばしてきた。
 シグルーンは防御集中してそれを受け止めてから、相手を煽るべく言葉をかける。
「シグ1人すら倒せないような人が、大義を為せるとは思えないな」
「その綺麗な肌、火傷まみれにしてやるよ!」
 直接、火炎放射を食らわせようと近づくエッダを抑えるべく、シグルーンはしっかりとマークに当たっていく。

 仲間達が引付けた手下を、前線のニルは纏めて狙う。
「人数が多くて、邪魔くせーんだお」
 ただでさえ、ごろつき達は重い鈍器や重火器を使い、群がるように攻めてくる。
 それだけに、小柄なニルには敵の集団が壁のように感じられたのだろう。
 近場に仲間がいないことを確認し、ニルは大きく息を吸い込んで。
「ぽこちゃかしてやるんだぬ」
 至近距離からニルは直接喝を叩き込むと、衝撃を受けた敵は怯みながらも武器を握り直す。
「舐めやがって……!」
 それでも、前線を抜けてこようとしてきた敵は、後方の美咲が青い衝撃波で吹き飛ばす。
 彼女はさらに、仲間が纏めてくれている敵を見定める。
 特に、美咲は連れであるヒィロを頼りとし、攻撃のタイミングをはかっていた。
 敵を引き付け、最も多くの手下から攻撃を受け続けるヒィロには、バラックを背にするひつぎが癒しに当たる。
「守り抜くこと、攻撃をしないこと、それが俺の矜持だから」
 仲間が万全に戦うことができるように。
 ひつぎは簡易治癒魔術と聖なる光を使い分け、仲間達に癒しを振りまく。
 そうした回復支援を受けながらも、手下を引き付け続けるヒィロは多くの敵が集まったタイミング、最も信頼する美咲へと呼び掛ける。
「美咲さん、今だよ!」
 絆での連携を受け、美咲は自らの腐食結界『ラヴィアンローズ』を展開する。
 ヒィロもその結界が敵だけを屠ることを知っており、彼女を信頼して自ら囮を買って出ていたのだ。
 悪意と悦楽の死滅結界に包まれ、手下はぱたり、ぱたりと地面を這っていくのだった。


 手下が減る中、ゴリョウ、シグルーンはごろつきのリーダー、サブリーダーの猛攻に耐え続ける。
 ゴリョウは金眸でバルドゥルを睨みつけ、タイマンに持ち込んで相手を抑える。その際、しっかりと銃旋棍で相手に反撃を叩き込むことも忘れない。
「ふふっ、そんなのではこの先、通用しないよ」
 シグルーンもエッダの火炎放射やロケット砲を避け、あるいは直接受け止めながらも、相手を煽り続ける。
「それとも、それを考えることができないほど、頭の出来が悪いのかな? ……かわいそうに」
 ただ、シグルーンは言葉の中に本心も垣間見せる。
 狭い世界しか知らず、ごろつき達はこうしたヤクザまがいの子としかできないのだと哀れみを見せていたのだ。
(優しさに触れていたのなら、広い世界を見れたなら、きっと変わったのだろうし)
 だが、優しさだけで今の彼らは救えない。
「ヒャハアー、ぶっ壊してやんぜぇ!」
 手下やエッダがメンバーをすり抜け、バラックへと向かう。
 仲間の回復に当たっていたひつぎはそれらの抑えに当たり、行く手を阻むべく立ち塞がる。
「攻撃はしない。肉壁上等」
 能力的には十分壁役として適任のひつぎだが、その心構えは敵の勢いにのまれてしまう。
「遠慮なくやっちまいな!」
 エッダの指示で散弾やバルカン砲を浴びせかける手下達。
 直後、エッダもロケット砲を浴びせかけると、壁として身構えていたひつぎも耐えられず、その場で崩れ落ちてしまう。
 さらに攻め込もうとした手下から美咲がバラックを庇う。
 ニルが鉄拳制裁で殴り倒し、ダカタールは生み出した刹那の疑似生命をけしかけて卒倒させ、きりが紅い衝撃波を浴びせた敵を気絶させて、侵攻を食い止める。
 そうして、バルドゥル、エッダだけとなったところで、美咲がごろつき達へと降伏を促す。
「戦力差、わかるよね? わかったら帰れ」
 だが、それで降伏するような連中ではなく。
「ざけんな!」
「大人しくやられちまいな!」
 大声を上げ、自らの力を誇示しようとする2人。
「そんなこと、させない!」
 すると、シグルーンが簡易封印をエッダへと施し、所持する重火器を一時的に使えぬようにしてしまう。
 手下がいなくなったことで、イレギュラーズの攻撃は2人に集まり、エッダはすぐに肩で息をし始める。
「せこい戦いするじゃないか……!」
「いやいや、私か弱いですからしょうがないですね!」
 きりがエッダにも呪力を伴った手刀の斬撃でエッダへと切りかかり、その場へと倒してしまった。
 ただ、バルドゥルはさすがにタフな体を持っており、なかなか倒れはしない。
「こちとら、鉄帝民だ。生半可な強さで生きていけるか!」
「ぶはははッ、やるじゃねぇか!」
 ゴリョウも反撃態勢を崩さず、勢いで相手の命を奪わぬようにと金の双眸で睨み続ける。
 ゴリョウが気を引いていることもあり、リーダーは近距離からの大斧の振り下ろし、広範囲のなぎ払いを繰り返す。
 そいつへ、ダカタールは生み出した虚無の剣で切りかかり、ニルは肉体である左腕に関節技を極めていく。
 剛勇剛毅なる士魂の如き咆哮を上げ、ヒィロがバルドゥルの意識を引き付けて。
「美咲さん、最強の鉄槌を!」
 応じた美咲は淡々と殺意を込めた七色の魔眼による視線を向け、バルドゥルを苛んで。
「お、のれ……」
 魔眼を注視し、抵抗していたバルドゥルだったが、ついには意識を失い、重い音を立てて地面に倒れていったのだった。


 地上げ屋を撃退したローレット勢は、バラックの方を振り返る。
 イレギュラーズ一行の働きもあり、なんとか被害を食い止めることができたようだ。
「本当ありがとうございます……」
「なんとか、冬を越すことができそうです」
 感謝の言葉を口にするスラムの住民達だが、皆ボロを纏っており、ひどく寒そうだ。
 そんな彼らは満足に食事もとれていないだろうと、一行は住民達の為に炊き出しを行うこととなる。
 ニルが購入した食材、用意した米を合わせ、ゴリョウが踏むと唸る。
「豚汁におにぎりというガッツリ系王道コンビや、雑炊みてぇな温かいメニューも悪くねぇ」
「小麦粉もあるから、汁物は水団にしてもいいよね」
 気分を変えつつ相槌を打つ美咲はかなりの量を作る必要があると考え、ヒィロやゴリョウにも量産を頼む。
「任せて、美咲さん!」
「下拵えは俺がやろう」
「ウチも簡単なのを手伝おうかぬ」
 あんまり料理は得意ではないからと、応じたニルも助力を申し出ると美咲がこくりと頷いて。
「手隙な人は食器の用意とか頼めるかな?」
「足りない食材があれば、買ってこよう」
 すると、ダカタールが美咲へと告げる。
 どうやら、ファイトマネーなる名目で、地上げ屋からちょちょいとお金を拝借していたらしい。
 配膳に関しては、きりがメインで頑張ってくれる。
「可愛いですか? ありがとうございます!」
 住民達に持ち上げられ、気を良くしたきりは豚汁を大盛で振舞っていた。
「んー、炊き出し。どうしよう」
 シグルーンも手伝いは行うのだが、住民達が使う水が汚れているのが気になっていた。
 そこで、シグルーンは自らの血を入れた小瓶を住民へとこっそり渡す。
「これは魔法の薬。1滴で20L分くらいの汚い液体も綺麗な飲める水に変えられる」
 その血には、彼女のギフト『生命の雫』の力が込められている。
 試しに、雨水の溜まったバケツへと1滴たらし、綺麗な飲み水を住民達へと渡す。
「間違っても、そのまま飲んだりしたらダメだよ?」
 シグルーンが差し出した綺麗な飲み水に子供達は興味を示し、美味しそうに口にしていた。
 さらに、ひつぎも炊き出しの手伝いと並行し、住民達に怪我がなかったかと手当てに当たる。
 メンタル的なケアは専門ではないものの、話し相手になっていたひつぎは、身を震わす住民の姿が気になって。
「住人が寒い冬を越せるように、毛布等の防寒用品の支給ができればいいんですが……」
 ローレットに提案しようと考えるひつぎ。
 なお、後日聞いた話では、依頼者である人民平等化を目指す宗教団体クラースナヤ・ズヴェズダーであれば、そうした支援も行ってくれるかもしれないとのことだった。

 その間にも、美咲を中心として作る豚汁や水団は完成し、おにぎりもかなりの数ができていて。
「腹を満たして、明日への活力にしてくれ!」
 ゴリョウが差し出すと、住民達は列を作ってそれらを手に取る。
「食べ物と一緒に、心の温もりも取り戻してほしい」
 ヒィロも豚汁を器に注ぎ、住民に差し出す。
 おにぎりと合わせ、汁物を口にする住民達の幸せそうな顔を目にして、語気に力を強めて。
「辛さに負けちゃダメだよ。諦めない心は、絶対自分の強さになるから」
 スラム出のボクが言うから間違いないと、ヒィロが太鼓判を押すと、住民達も美味しそうに炊き出しの食事を食べながら、力強く頷くのだった。

成否

成功

MVP

美咲・マクスウェル(p3p005192)
玻璃の瞳

状態異常

なし

あとがき

リプレイ、公開です。
MVPは最も多くの敵を倒し、炊き出しでも指揮を執っていたあなたへ。
今回はご参加、ありがとうございました!

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