PandoraPartyProject

シナリオ詳細

野良犬のプライド

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●偉そうな奴の靴をなめて生きるのか? それとも靴ごと噛みちぎるか?
 転がる廃材。あがる黒煙。並ぶスチールコンテナハウスの列。
 その中央にはしる名ばかりのストリートを、黒服の男たちが歩いてくる。
 まるで日常を飲み込む波のように、平和をそぎ取る炎のように。
 彼らのひとりが路肩にたつたき火用のドラム缶を蹴倒せば、あふれた灰が泥水にとけてしみた。
 彼らのひとりがつばを吐き捨てれば、コンテナハウスの内側で震える女が幼子を引き寄せて抱いた。
 対するは。
 路上の中央。黒服たちにまるでかなうとは思えない小規模な集団が、道を阻むように立っている。
 赤いジャージに赤い和柄のジャケットを羽織った彼らのうち、先頭に立つハリネズミめいた黒髪の男。
 ヒューグと『あなた』に名乗った彼は、目を見開いてあなたを見た。
「どうだよ、地獄めいた祭りだろ」
 あえての徒手空拳。
「一人残らずぶっ飛ばす」
 両腕をぶら下げるように、しかし今にも相手の喉笛を食いちぎりそうな顔をして、彼は数歩前に出た。
 それでも、黒服の一団は足を止めない。
 先頭を歩く黒服にサングラスの男は、ガムを噛みながらにやりと笑った。
 両手は未だズボンのポケットの中。
 彼の名はキリングという。
「負け犬ともが、仲良くお友達を連れてきたってか?」
「「ンだとテメェ!」」
 恰幅のいい二人組の赤服たちが飛び出し、キリングへと突撃。二人同時に殴りかかる。
 丸太のような腕が、相手の顔面をスイカのように粉砕せんと繰り出された――その瞬間。
 まるでナイフが走ったかのように空気が裂け、二人は顔に横一文字の傷をつくって血を吹き上げた。
 もしあなたにそれなりの動体視力があったなら、動きを見切ることができただろう。
 キリングが素早い回し蹴りを放ち、二人同時に『斬り付けた』ことが。
 直後、巻き起こった風圧によって赤服の男たちが吹き飛ばされ、ドラム缶やコンテナの壁に激突していく。
 キリングは両手をポケットに入れたまま。まだガムを噛んで笑っている。
「雑魚に用はねえ。来いよ。――全員街ごと、ぶっ潰す!」
 走り出す黒服の男たち。
 走り出す赤服の男たち。
 正面から激突する二つのチーム。
 拳が、交差する。

●クーロン会とヒューグ一家
 話の始まりまで遡らねばなるまい。
 時は現代。ラサと深緑を巡る奴隷騒動にカタがつき、練達では奇怪なラジオ事件が新聞を賑わせ、海洋では大号令に浮き足立つそのさなかのこと。
 鉄帝の帝都スチールグラードではある大きなトラブルが勃発していた。

「よう、負け犬ども」
 廃墟の教会を改造した建物前に、黒服の男キリングが歩み寄る。
 神聖な教会であったはずのそこはカラフルなペイントや旗がたち、それぞれ『ヒューグ一家』を示すマークとロゴが描かれている。
「軍にコカされて流れ着くのが廃墟ン中か。おめーらにはお似合いだな?」
「「あぁ?」」
 正面扉の左右に立っていた恰幅のいい赤服の男たちが、顔をしかめてゆっくりと前に出る。
 それ以上建物に近づくなという威圧だが。
 しかしキリングは立ち止まることはない。
 ついにお互いの身体がぶつかるかというところまできて、やっと三人が立ち止まった。
 キリングの後ろについていた十人あまりの黒服たちがぴくりと動くが、キリングは片手をかざしてそれを止めた。
「話は聞いてるよな。このガラクタを片付けて消えるか、俺たちに下るか、さっさと決めろ」

 スチールグラードの内部に存在するいわゆる『掃き溜め』。俗にいうスラム街。
 強さこそが尊ばれる鉄帝というセカイの中で、戦いに負けた者、勝ち残る機会を失った者、差別や略奪によって全てを奪われた者たちが、何も持たずに集まってきて自然とできたのがこの街である。
 そんな『名も無き廃墟の街』に、ある開発計画が持ちがあった。
 スチールスラム開発計画。
 それは、スラム街を一掃し、新闘技場建設を主軸とした都市開発によって治安の正常化と住民雇用の活性化を図ろうという国家連携事業である。
 この事業には鉄帝軍の将校をはじめ多くの商人や建築業者といった様々な力ある富裕層が一丸となり今まさに取り組んでいる最中なのだが……。

「おめーらゴミどもがいつまでも掃き溜め(スラム)に居座るせいで仕事が進まねえんだよ。俺らの下につきゃあ甘い汁すわせてやるつってんだろ」
 サングラスを外し、左右非対称に笑うキリング。
「軍に負けて飼い犬になったあんたらみたいにか」
「俺らはヒューグさんのためにしか戦わねえんだわ」
 スラムに出回る質の悪いたばこに火をつけ、咥えてみせる二人の男。
「アンダスタン?」
「ははっ」
 たばこを取り上げ、ゆっくりと素手で握りつぶしてみせるキリング。
「最後の勧誘なんだがなぁ。この際あんな負け犬捨てて――」
「負け犬がなんだって?」
 扉が開き、たばこを咥えた男がゆっくりと歩み出てきた。
 振り返ってつぶやく赤服たち。
「ヒューグさん……」
「何度来ても同じだ馬鹿野郎。偉そーな軍人どもの靴を舐めるくらいなら、地獄で泥ぉすすってたほうがマシなんだよ。
 それとも俺の靴も舐めてくれんのか? 上手によぉ、ほら」
 ヒューグは下駄で泥水を踏みつけると、にっこりと笑ってかざして見せた。
 ぴくりと片頬をけいれんさせるキリング。
「警告はしたからな……」
 手の中に握りしめたたばこを捨て、きびすを返す。
 そして小声で、部下たちにこう告げた。
「――翌朝だ。潰すぞ」

 一方でヒューグもにこやかに手を振り、小声で低くつぶやいた。
「――翌朝に来るぞ。使えるヘータイかき集めろ」

●かくして風前の
「やあ、こんなところまで来てもらってごめんね。次の依頼の舞台はここ、スチールスラムだよ」
 ショウは笑って、スラム街の大通りに立っていた。
「依頼主はヒューガ一家。スラム街で結成されたチームだね。
 そして依頼内容はクーロン会の撃退。
 クーロン会っていうのは、スラム出身のチーム『クーロン』が軍の『汚れ仕事担当』として雇われた部隊さ。ま、軍はこのチームとの関与を否定してるし、証拠らしい証拠もないけどね。
 彼らは都市開発計画に先立って、スラム立ち退き作業の邪魔になるヒューガ一家を潰してしまいたいらしい。
 ヒューガ一家はもちろんそれに抵抗するけど、軍をバックに統合併合を重ねたクーロン会の規模はずっと大きいからね、兵隊をかき集めても足止めが精一杯ってところなんだ。
 だから、対抗戦力として『ローレット』が雇われた。
 もうすぐ始まるはずだよ。俺は巻き込まれないように退散するけど……報告を聞きに戻ってこれる状態になってるとうれしいな。それじゃ、後は頼んだよ」

GMコメント

■成功条件
・成功条件:クーロン会の撃退
・オプションA:クーロン会のメンバーが半数以上残った状態で撤退させる
・オプションB:クーロン会のメンバーを全滅させた状態で撤退させる
・オプションC:ヒューガ一家のメンバーが半数以上壊滅した状態で、クーロン会を撤退させる。
・オプションD:ヒューガの生存
・オプションE:キリングの生存

 成功条件さえ満たしていれば、オプションのどれをどう満たしてもかまいません。
 どこを着地点としたいかは、あらかじめ参加者同士で相談しておくとよいでしょう。
 (着地点が決まるととるべき作戦も定まってきます。相談が進みやすくなるのでおすすめです)

■シチュエーションデータと味方NPC
 クーロン会とヒューガ一家の抗争に加わり、集団に交じって戦います。
 両チームの一般構成員はあまり戦闘力が高くないため、互いにぶつかり合って拮抗状態を作っています。
 皆さんはその中を駆け抜け、クーロン会の一般構成員を蹴散らしながら上位構成員へと戦いを挑むことになるでしょう。
 プレイングのパート構成としては【前半】と【後半】にわけられますので、それぞれ説明していきます。

・【前半】一般構成員と蹴散らして駆け抜けるパート
 周りでヒューガ一家が戦うなか、クーロン会の構成員をなぎ払いながら突き進みます。
 多少敵味方が混じり合っているので範囲攻撃がしづらいですが、時折混ぜ込んでいくと爽快に駆け抜けられます。
 もっというと、いかに勢いよく敵陣に突っ込めるかをこだわってみてもいいかもしれません。

・【後半】上位構成員と戦うパート
 上位構成員はそれぞれチームを束ねられる(ないしは束ねていた)程度には高い戦闘力を持ちます。
 仲間と協力し、連携しながら戦いましょう。
 ですが『〇〇から順に各個撃破』といった作戦をとっていると戦力差からヒューガ一家がみるみる壊滅していきます。
 目安としては、『ヒューガ一家を見殺しにするなら各個撃破(比較的楽)』『ヒューガ一家を守りつつ戦うなら分散(やや大変)』となります。
 上位構成員はそれぞれ個性的な戦闘スタイルをもつので、得意な相手(または競り合ってみたい相手)を選んでぶつかっていくのもよいでしょう。

■エネミーデータ
●クーロン会一般構成員
 黒服に徒手空拳という共通点をもつチーム。
 扱いとしては素手系の武器を装備した兵隊と考えてください。
 基本的に殴る蹴るの格闘で戦いますが、その辺にあるものを飛ばしたり魔力を弾丸にして放ったりといった戦い方も可能です。
 数がとにかく沢山いるので、そこが一番厄介なポイントになるでしょう。

●キリングと上位構成員
 クーロン会の中でも上位の戦闘力をもつメンバーです。
 彼らはクーロン会統合の折に吸収されたいくつかのチームのヘッドでした。
 数名ほどおり、彼らを倒せるかどうかがこの勝負の鍵になります。

・キリング
 クーロン会を束ねるだけの個人戦闘力を持つ男。
 蹴り技が得意で、【反】能力や高い反応速度、それに依存した高威力攻撃をもつ。

・エグザム
 跳躍力とアクロバット運動を生かしたテクニカルな戦いが得意。
 ステータスバランスが全体的によく、【防無】攻撃もあわせて基本的に隙が無い。

・スカーレット
 氷と炎の魔法を使い分けるマジックアタッカー。
 魔法を帯びた手刀から繰り出す攻撃は命中精度が高く、【業炎】や【氷結】をはじめ呪縛などの厄介なBSを的確に打ち込んでくる。

・ティーガー
 指弾の名手で地下闘技場ではスナイプハンドの異名で知られた。
 高威力一撃必殺系の攻撃を得意とし、並の敵であれば瞬殺できてしまう。

・クロウ
 高いEXFと底地力系のパッシブスキルにより恐ろしい踏ん張りの強さを見せるゾンビファイター。
 何度殴られても立ち上がるガッツの強さでのし上がったタイプ。メンタルの強さはほぼ無敵。

・スイッチ
 高い知能と格闘能力を併せ持ち、戦い続けるほど力を増す加速系ファイター。
 序盤は高威力高コストな魔力射撃を連発しながら部下に自分をかばわせ、部下やエネルギーが尽きてきたら増強されたパワーで直接殴りかかるという戦闘スタイルが特徴。

  • 野良犬のプライド完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年12月19日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

アリシア・アンジェ・ネイリヴォーム(p3p000669)
黒焔纏いし朱煌剣
咲花・百合子(p3p001385)
白百合清楚殺戮拳
ロゼット=テイ(p3p004150)
月光
斉賀・京司(p3p004491)
雪中花蝶
レイリ―=シュタイン(p3p007270)
ヴァイスドラッヘ
回言 世界(p3p007315)
貧乏籤
伊達 千尋(p3p007569)
Go To HeLL!
ギンコ・キュービ(p3p007811)
銀狐

リプレイ

●モリブデン抗争
 スラムの立ち退きをめぐって衝突するクーロン会とヒューグ一家。
 黒と赤の軍勢がストリートで向かい合う。
 赤い軍勢を率いる中には、『背を護りたい者』レイリ―=シュタイン(p3p007270)の姿があった。
 レイリーは両手をあえて徒手状態にすると、拳にエネルギーフィールドをまとい始めた。
「さぁ、喧嘩だ! さぁ、抗争だ!
 虐げられた者達が戦うなら私も立ち上がろう!
 さぁ、戦おう!このまま負けられないプライドは私にもある」
「っしゃあ! 喧嘩だ喧嘩!」
 ぴょんと飛び跳ねてみせる『銀狐』ギンコ・キュービ(p3p007811)。
「くぅー! 燃えてきたぜ!
 おい! オレ達が助っ人に入ってるんだ、大船に乗ったつもりで構えてな!」
 振り向いて叫ぶギンコに、ヒューグ一家の男たちは拳を上げた叫びで応えた。
「ヒュー、いいねえ」
 『Punch Rapper』伊達 千尋(p3p007569)はハンドポケットで歩きながら、活気を肌に感じていた。
「スラムでチームとヤクザのケンカか……いいねェ、元いた世界を思い出す。
 おいヒューグ、俺は『悠久-UQ-』の伊達ってんだ。
 つるむってガラじゃあねえんだろうが、祭りには参加させて貰うぜ」
「……」
 ヒューグは口の片端と目元だけで笑うと、赤い羽織を風になびかせた。
「ま、そうだな」
「鶏口牛後というやつであるなぁ」
 立ち止まる『白百合清楚殺戮拳』咲花・百合子(p3p001385)。
 周囲の面々も、そしてクーロン会の面々も立ち止まる。
 それぞれの強者が向かい合い、たがいの顔つきを眺め合った。
「よい、人に頼った強さというのは吾も好むところではない。
 吾の力、ヒューグー家の為に振るわせていただこう」
 百合子が乙女立ちをし、かかとを打ち付けたその瞬間。
 舗装のあらい土の道路がはぜるようにクレーター状にえぐれていく。
 炎のごとく吹き上がる点描の美少女力に、『へっぽこ砂サーファー』ロゼット=テイ(p3p004150)が『おお』と声を上げた。
「しかし……負け犬のプライド、ねえ。
 この者もそういうのは嫌いじゃないよ。そういうのは」
 ロゼットは遠いラサの土地を思い返した。
 純粋にそのガッツには敬意を払い、多少の無理をしてでも援助したい……といった気持ちを、胸の中につよく燃やした。
「あっちもこっちも、血気盛んねぇ」
 どんな味がするのかしら。と、『黒焔纏いし朱煌剣』アリシア・アンジェ・ネイリヴォーム(p3p000669)は自分の尖った歯を舌先でなめた。
「それにしても、たいへんな現場に来てしまったな」
 体力には自信がないんだが、と言いながら『雪中花蝶』斉賀・京司(p3p004491)はバイクへとまたがった。
「……少し、ギャングに私怨じみた想いがあってな。
 まあ、基本は目立たないやう回復支援だ。気負わないよ」
 一方でアリシアはウィングシューズのかかとをトントンとたたいて魔法の翼を展開し、魔力を込めた剣を抜く。
 そんな彼女たちを横目に、『付与の魔術師』回言 世界(p3p007315)はやれやれといった様子で頭をかいた。
「鉄帝の開発計画……何か色々きな臭い感じだが、まあ何でもいいさ。俺はいつも通りやることをやるだけだ」
 クーロン会が、ヒューグ一家が、そしてイレギュラーズがそれぞれ同時に歩き出す。
 歩みは早まり、やがて駆ける早さとなって、互いの切り込み部隊がぶつかり合う。

●生涯 One Time 一瞬 One Life
「行くぞテメーーーーーらァァァ!!」
 顔面から食らいつくかのごとく身を乗り出し、走り出す千尋。
 横たわるドラム缶を踏み台にして跳躍。
 一斉に突撃してくるクーロン会の黒服戦闘員たちに乱暴な跳び蹴りを繰り出した。
「オォラァァ! どきやがれボケカスコラァ!!」
 蹴倒された戦闘員に殴りをいれつつ立ち上がると、横から繰り出されるパンチを顔面でうけて倒れ……ると思いきや上半身だけで受け止め、相手の腕を掴んで膝蹴りのカウンターを入れた。
「白百合清楚殺戮拳――平素の型、乙女走り」
 肩に掛かる長い髪をさらりと払い、頭をゆるやかに振りながら歩き出す百合子。
 外観上は背筋を伸ばした美少女が点描や花の香りをまとって歩くようにしか見えないが、突如ギュウンと空圧をねじる音をたてて四十メートル弱の空間を高速移動。戦闘員たちの間を抜けていく。まるでダンプカーでも突っ込んでいったかのように戦闘員たちが吹き飛んでいった。
「吾が通るぞ! ――道を開けよ!」
「たとえ立ち塞がっても、こじ開けるけど……!」
 前のめりの姿勢で突撃したアリシアが転がったドラム缶を同じく踏み台にして跳躍。
 抜刀によって高く振り上げた剣に魔力を圧縮。剣自体を高圧縮された雷雲と同じ状態にかえると、戦闘員めがけて叩きつける。
 ゴウンという雷鳴とともに紫電が天空へはねる。
 と同時に、アリシアは懐からオーダーカードをドロー。
「コールよ、レナ!」
 召喚された戦乙女が限定顕現。白刃によって大地に炎の波を引き起こした。
 そうしてできた物理的な隙。ロゼットはアストラークゲッシュのカードをマジックディスクにセット。簡易飛行魔術を身にまとうと、バラックハウスの屋根へと飛び乗った。
 トタン屋根を走り抜けながら精霊術を行使。ロゼットのオーダーにこたえた精霊が眼下の戦闘員たちへ飛んでいき熱砂の嵐を引き起こす。
「喧嘩のセオリーは頭をつぶすことだぜ!
 雑兵よか束ねてるリーダー格をさっさと潰すぞ!
 こっちの連中はヒューグ一家に任せた! オレは突っ込む!」
 ギンコは袖の間から鉄爪をはやすと、鳥のように両腕を広げて黒服集団へと飛び込んだ。
 最初の一人を蹴り倒し、今度は低くかがんで群衆の中をするすると駆け抜けていく。
 その間際に爪による斬り付けをいき、爪に塗り込められた毒によって戦闘員たちを崩していった。
「あいつらを止めろ」
 ガムを噛みながら顎で支持するキリング。
 後ろに控えていた軍勢も追加され、ギンコたちへと襲いかかる……が。
「私はヒューガー家が助っ人、臆病な魔術師。斉賀だ。
 ゆえに轢かれたくなければ退け。加減はできないからな!」
 黒塗りのバイクをウィリーさせた京司が魔術砲撃を連発させながら突っ込んでいった。
 咄嗟に飛び退く戦闘員たち。飛び退かぬ者も魔術砲撃によって吹き飛ばされていく。
 横から合流するように騎馬ムーンリットナイトにまたがって現れるレイリー。
 ムーンリットナイトの首をトンとたたいて馬を加速させる。
「頼むぞ――。私はレイリー=シュタイン! さぁ、私を止められる者はいるか!」
 レイリーは騎馬ごと覆い尽くすような巨大なエネルギーフィールドを手甲から展開させると、押し止めようとする戦闘員たちを撥ねつつ駆け抜けていく。
 エンジン音と蹄の音が重なり、クーリーン会のリーダーと旧ヘッドたちの列の向こうに陽光が光る。
 前傾姿勢をとるレイリー。
「突っ込むぞ」
「世界君、仲間をお願いできるかい」
 京司に言われ、後部座席に同乗していた世界がめがねのブリッジに人差し指を当てた。
「飛び降りろって? まあいい、そっちは任せるとしよう」
 ぴょんとバイクから転げ落ちた世界は地面を一度だけ転がると、すぐさま脚をついて自分についた勢いのまま走り始める。
 白衣の裾をなびかせながら、神子饗宴を発動。
 横一列に並び身構えるクーロン会ヘッドチーム。
 吹き抜ける暴風が砂煙をあげ、世界が通り抜けたと同時に低い姿勢で走る千尋やギンコが、清楚に麗しく跳躍する百合子が、トタン屋根から飛ぶロゼットやアリシアが、一斉に現れた。その中に混じって疾走するヒューグ。
 対比。対抗。両軍主力、激突。

●魂を叫べ
 ウィングシューズを空中で停止。
 宙返りの機動をかけアリシアの急降下斬撃。
 帝都西区ギャングチーム旧BLACK JACKALS代表、エグザム。雷鳴とともに襲うアリシアの斬撃を跳躍と拳によって迎撃した。
「俺に空中機動は意味ねえぜ!」
 轟音と衝撃で弾き飛ばされるアリシア。が、空中でウィングシューズを起動してブレーキ。トタン屋根を足場にして再び跳躍すると剣に流す魔力を変質。鮮血のごときオーラが波打ち、追撃の跳び蹴りを仕掛けてくるエグザムめがけてスイング。
「私に空中機動は意味ないわ、なんてね」
 今度はじかれるのはエグザムの方だ。
 きれた街灯の柱を蹴って跳ね返ってくるエグザムへ、アリシアはさらなる斬撃を繰り出そうと跳躍――するその下をくぐり抜けて奔るロゼット。
 逆手に構えた両手のダガーが炎をまとい、まっすぐ突っ込んでくる相手の手刀と激突。互いを炎が突き抜けて波を作った。
 帝都西区ギャングチーム旧零極連合代表、スカーレットの手刀である。
 もう一方の凍気をまとった手刀を飛び退くことでかわすロゼット。
 まとったローブが揺らめき、ロゼットは目を細めた。
「生半可な剣は通じないとみた」
 一度ダガーを鞘に収めると、再びスカーレットめがけて突撃。
「二度同じ技は通じない」
 炎の手刀で迎撃しにかかるスカーレット――を、ロゼットの非物質化したダガーナイフが透過。スカーレットの生命力を直接切り裂いていく。
「――!?」
「この者を一芸披露の傭兵と思わないことだ」

 吹き飛び、雨のように降り注ぐ戦闘員たち。
 自らに落ちる戦闘員を打ち払うと、帝都西区ギャングチーム旧ミスフィッツ男子高校番長、スイッチは『雨の中心』を凝視した。
 いや、『台風の目』とでも言うべきだろうか。
 麗しの乙女が清楚な全力疾走によって大地をえぐり、大気を穿って突撃してくる。
「心が弾む……オマエ、メタ女の乙女ってやつか?」
「似て非なる者也」
 百合子は美少女力を解放。
 背景全てを虹と花畑に変えると清楚なる正拳突きを繰り出した。
 パチンと指を鳴らすスイッチ。
 両サイドから飛びかかる舎弟たちのドロップキックが襲う――が、百合子は素早く美少女ターンをかけて左右へ掌底と肘を入れ舎弟たちを吹き飛ばしなおかつさらなるターンでスイッチの顔面へヒールキックを繰り出していた。
「準備できずに攻撃食らうってどんな気分であろうか?
 でも、このくらいの方が生きてるって感じせぬ?」
「ハッ……」
 顔面に靴底を食らったスイッチは笑い、そして百合子の足首を掴んで振り上げた。
「心が弾むぜ!」
 人が変わったように叫ぶと、スイッチの背景が屍とカラスのそれに強制変化。漢力を噴出させて百合子を地面に叩きつけた。
「咲花さん! ヒールだ!」
 スイッチの周囲をぐるぐると回るようにバイクで走り続ける京司がメガ・ヒールを放射。
「頼んだ、咲花さん! 噂の拳を魅せておくれ!」
「承知!」
 大地にすさまじく美少女立ち。
 衝撃に吹き上がる砂と小石と廃材の破片。
 ギンコはその中をジグザグに駆け抜けながら鉄爪を光らせた。
「あんたがクロウか! こいつぁ挨拶がわりだ!」
 跳躍。回転。毒を塗った爪による斬撃が帝都西区チーム旧プリズンキングダム獄長クロウは両腕を広げ胸で受けた。
「ハハハハ! ゴッドオブクロウと呼べ! ハハァァツ!」
 ダメージをまるで喜ぶように引きうけると、ギンコの顔面を掴んでスロー。
 民家の壁に叩きつけると跳び蹴りを繰り出した。
 壁を突き破り、二人まとめて屋内へ突入。
 転がるギンコを掴むと、クロウは激しく跳躍しきりもみ回転をかけた。
 が、対するギンコは回転に対して強引に逆回転の勢いをかけて反転。地面に叩きつける寸前に入れ替わってクロウをトタンの地面に叩きつけた。
 その真横を騎馬状態で駆け抜けるレイリー。
 突き抜けて出た大通りでは帝都西区チーム旧ラッキーウェスタン代表ティーガーが両手にパチンコ玉をセットした指弾の姿勢をとっていた。
「さぁ、私の愛馬の速さと私の硬さとお前の指弾の威力と早さ、勝負だ!」
「望むところだ『完全被甲弾騎士(フルメタルナイト)』ォ」
 指弾の『連射』を浴びせてくるティーガー。フルシールドによって真正面から突っ込むレイリー。
 接触の寸前に横っ飛びに回避したティーガーはムーンリットナイトの足下めがけて指弾を発射。
 それを察したレイリーは素早く騎馬から飛び降り、足下にシールドをはってガード。
 さらなる連射をしかけるティーガーめがけて突撃していく。
「「オラァ!」」
 走るレイリーたちのすぐ上。トタン屋根を走って跳躍する千尋とヒューグ。その下から姿を現し、神子饗宴のかけ直しをはかる世界。
「キリングはクーロン会のトップだ。三人がかりでいくとしよう」
 ミリアドハーモニクスをセットし、千尋たちに連続で放射していく。
 回復援護を受けた千尋たちはキリングめがけて跳び蹴りを繰り出す……が、キリングは高い跳躍によってタイミングをズラすと二人をまとめて空中回し蹴りでたたき落とした。
「ぐお!?」
 地面に打ち付けられる千尋たち。おって着地した隙だらけのキリングの背中めがけて反撃のパンチを繰り出そうと走るも……。
「読めてるぜ」
「ヤベエ乗せられ――」
 ブレーキをかけようとしたがもう遅い。
 後ろ回し蹴りが直撃し、千尋は派手に吹き飛んだ。
 それをキャッチしようとして一緒に飛ばされるヒューグ。
「こんな奴にやられっぱなしになってんじゃねえよ」
「ウルセー」
 立ち上がり、砂をはらいおとす千尋。
 そこへ、猛烈なスピードでキリングが突撃。腹めがけた蹴りが直撃。
 が、しかし。千尋は飛ばされない。しっかりと足首を掴み、スネめがけて拳を振り上げた。
「骨を断たせて肉を斬るってヤツだぜ」
「俺が乗せられるたぁ――て、逆だ!」

 殴り飛ばされて転がるヒューグ一家の一員レフコン。
 顔につくった横一文字の傷を押さえつつ振り返ると……。
「クーロン一家の連中がひいていくぞ」
「マジか」
 相方らしきライコンが彼を引っ張り上げ、目を細める。
 多少やられたらしいが、しっかりとクーロン会を撃退したイレギュラーズたちがそこにはいた。
 ヒューグと拳を打ち合わせる千尋。
「また祭りやるんなら俺呼べよ。特別にタダで手伝ってやる」
「ガラじゃねえわ。ただ……テメェが困ったら一回だけ手伝ってやるよ。特別にな」
 BLACK JACKALS、零極連合、ミスフィッツ男子高校旧、プリズンキングダム、ラッキーウェスタン、クーロン――六つのギャングチームが吸収合併された大規模チームクーロン会。彼らを撃退したことでスラムは新たな盛り上がりを見せはじめた。
 それが、どんな未来を呼ぶことになるのか……いまはまだ、わからない。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 スラム地区を襲う大規模抗争が一時の終戦を見せました。
 しかし退却していったクーロン会がこのまま引き下がるとはおもえません。
 潰されたメンツを取り戻すため、実質的な上部存在である鉄帝軍の『何者か』からの命令を完遂するため、きっと再び仕掛けてくるでしょう。

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