PandoraPartyProject

シナリオ詳細

墓荒らし

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 それは最早男の日常だった。
 彼女の好きだった花を今日も贈る、はずだった。
 けれど。
「これは、どういうことだ?」
 昨日も来た筈のそこは、何かが暴れたかのように荒れていた。
 実態を調べようと足を出す。

 カラカラ、カラカラ。

 ぴた、とその音に足が止まった。
 この先に、墓場に踏み入れてはいけない。
 頭の中で警鐘が鳴っていた。

 カラカラ、カラカラ。

 これは一体何の音だろう。
 笑いにしては不気味な音。
「……ひっ」
 男の喉から引き攣った音がなった。
 地面が盛り上がり、何かが這い出して来る。
 それが完全に出てくる前に男は踵を返して逃げ出した。


「それでは今回の依頼について、お話しますね」
 『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3p000003)はイレギュラーズ達を見渡した。
 依頼人はとある男だった。
 彼はただの村人で、村の中で仲の良かった少女と恋仲になり、そして結婚した。
 普通で、幸せだった。
 けれども数年前、その妻が他界した。
 先天性の病だった。先が長くない事は男も、妻自身もわかっていた。
「その男が悲しみのあまり、何か……?」
「してないのです」
「じゃあその妻がモンスターに化けて」
「ないのです。今回の依頼の場所に、そのお墓があるってだけなのです」
 ちょっと気が逸りすぎですよ、と苦笑するユリーカ。
 けれど、その表情はすぐに引き締まった。
「お墓で、アンデッドたちが暴れているのです」
 何が原因なのかはわからない。けれど、今回の依頼でそこは言及されていない。
「お墓をこれ以上壊されるわけにはいかない、そのためにアンデッド達を退治してほしいとのことなのです」
 生きる者への実害はまだない。けれど、突然アンデッド達が蔓延ったことで墓守は逃げ出し、墓石は壊されている。墓場からアンデッド達が出る気配はないが、出てくるのは恐らく時間の問題だ。
「骨の鳴る、不気味な音がするから出現はわかりやすいのです。詳しい事はこちらにまとめました。よろしくお願いしますね」


 カラカラ、カラカラ。
 骨が鳴る。

 カラカラ、カラカラ。
 笑い声のように。

 カラカラ、カラカラ。
 その音が聞こえたら――気をつけて。

GMコメント

●目的
 アンデッドの討伐

●情報確度
 A。想定外の事態は起こらない。

●敵情報
○犬型アンデッド×5
 高さ30cm程度の犬型アンデッド。骨のみの姿。

・噛みつく
 骨の牙による攻撃。単体至近攻撃。
 
○人型アンデッド×4
 成人男性ほどの大きさの人型アンデッド。骨のみの姿。
 反応は遅いが、見た目に反し防御と体力に優れる。

・しがみつく
 体全体を使ってしがみつく。単体至近攻撃。BS呪縛付与、BS付与時に人型アンデッドも同じ効果を得る。
・打つ
 骨の腕で対象を打つ。単体至近攻撃。

○狼型アンデッド×1
 高さ3mほどの大きな狼型アンデッド。
 腐った肉が付いており、異臭を放っている。
 回避と攻撃に強い。
 目撃情報はあるが、実際は他アンデッドが半数倒されるまでは出現しない。(PL情報)

・噛みつく
 牙による攻撃。単体至近攻撃。
・薙ぐ
 腐った肉のついた尻尾を振り回し、対象を打つ範囲攻撃。クリーンヒット以上で10m後方へ飛ばされる。

○アンデッドは共通して以下の特徴が挙げられる。
・動くたびにカラカラと骨の鳴る音がする。
・出現前に上記の鳴る音がする。
・墓場から出る事はない。

●場所
 リプレイでは墓場入口からスタート。時間帯は昼。
 そこそこ広いが墓守は既に逃げており無人。
 墓石はところどころ破壊されているものの、戦う場合に支障はない。

●ご挨拶
 お目にかかれまして幸いです。愁です。
 ホラーは苦手です。なんでこんなシナリオ出したんだって言われそうですが、雰囲気だけは好きだからです。退廃的なものとか好みです。
 ご縁がございましたらよろしくお願い致します。

  • 墓荒らし完了
  • GM名
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年03月14日 22時00分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

シエラ・バレスティ(p3p000604)
バレスティ流剣士
イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
流星の少女
トリーネ=セイントバード(p3p000957)
飛んだにわとり
七鳥・天十里(p3p001668)
真白 純白(p3p001691)
特異運命座標
セシリア・アーデット(p3p002242)
治癒士
ミニュイ・ラ・シュエット(p3p002537)
救いの翼
XIII(p3p002594)
ewige Liebe

リプレイ

●死した者の辿りつく先
 薄曇りの中、弱い日差しが墓石を照らす。
 アンデッド達が暴れたと思しき痕により、すっかり寂れた雰囲気を漂わせる静かな墓所。その入り口で真白な姿がふるりと体を震わせた。
(負の力に満ちあふれている……気がする……)
 恐ろしい所! と震えの止まらない『聖なるトリ』トリーネ=セイントバード(p3p000957)。その隣で『輝きのシリウス・グリーン』シエラ バレスティ(p3p000604)が苦笑を漏らす。
「『夜の肝試しツアー!?』……だったら、まだ良かったんだけど」
 残念ながら、相手は本物だ。不幸中の幸いは時刻が昼であることだろうか。
「これが夜だったら泣きたくなったわね……」

 なんにせよ、アンデッド達には出てきてもらわないと始まらない。

 イレギュラーズ達は墓地の中へ足を踏み入れた。
「……ふむ。戦場としては問題ないでしょう」
 日中で視界も悪くなく、無人で広さもある。
 『ewige Liebe』XIII(p3p002594)が墓地の中を見回して冷静にそう判断する。
「アンデッド……アンデッド、かあ」
 七鳥・天十里(p3p001668)が考えるように小首を傾げる。
「今はまだ墓地から出てきてないけど、外に出て来て被害が出る前に何とかしないとだね!」
 皆が寝ている大切な場所。これ以上騒がしくして皆の眠りを妨げたらいけない。
 天十里の呟きに『治癒士』セシリア・アーデット(p3p002242)が気合十分というように声をかけるが、そうだねと返事をした天十里はといえば。
(スカスカした体相手だと、弾打ち込むの面倒そうだ……)
 被害だとか、そう言ったことはあまり考えていなかった。
 ユリーカの情報によれば、出現するアンデッドは骨のみの姿。大きな骨の部分を狙って鉛弾を打ち込んでやらねばならない。

 …………ラ………

 ほんの僅かなそれを聞いたのは『応報の翼』ミニュイ・ラ・シュエット(p3p002537)だった。
「音が、聞こえる」
 え? と一同がミニュイを一斉に見て、それから耳をすませる。
 けれどまだ聞こえない。ミニュイがその音を捉えるのは、僅かな音さえ聞き逃さない聴力を持つが故。

 ……カ……ラ………

 少しずつ大きくなるその音に、ちらほらと声が上がる。
 ミニュイはつい、と指である箇所を指し示した。──先頭を行くトリーネの、歩いたすぐ後ろを。
「……ほら、あなたのすぐ後ろ」
「こけーっ!?」
 あなた、と指名されたトリーネはばさばさと翼をはためかせる。けれどすぐ、はっとしたように指差された地面を見つめた。
「あ、でもお日さま大丈夫なら、もしかして健康的なゾンビさんなんじゃ……?」
 思っているほど怖くないかもしれない。
 そんな期待を胸に待ってみる。

 ……ラ、カラカラ。
 もこもこもこ。

「あ、何かでてき……」
 ひょこ、と出てきたのは白く、硬そうな。
「……いやああああ! ほねえぇぇぇ!!」
 静かだった墓地にトリーネの悲鳴が響く。距離をとるべく4本指の足で走るトリーネの代わりにシエラが正面に立ち、大型の盾を構えた。
「出てくる前に~……叩くべし!」
 地面から出ようとしていたアンデッドは、シエラのシールドバッシュによって地面に押し戻される。
「あとそっちと、あそこと……そこからも」
 エコーロケーションと超聴力を併用するミニュイのいち早い伝達に、イレギュラーズ達はそれぞれの戦いやすい位置へ散らばった。
 いくらかもしないうちに他のイレギュラーズ達にも聞こえてくる。

 カラカラ。カラカラ。
 カラカラカラカラ。

 不気味な大合唱。膨れ上がる地面。
 次第にぼこりぼこりと姿を現すアンデッド達。
 それらの様子を見ていたミニュイは、ふと瞳を眇めた。
「未練に突き動かされて蘇った……という感じはしないね」
 強い思いが死を凌駕しアンデッドとなったのなら、その情念を見てみたくあったのだが。
「それでも、死者による墓荒らし……笑えねえ話だ」
 『特異運命座標』真白 純白(p3p001691)が眉根を寄せる。
 本来は死者が安らかに眠るべきであろう場所。それを阻むのが同じ死者だなんて。
「始めましょう。神がそれを望まれるのだから」
 『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)はチャキ、と剣を構えた。

●不協和音に囲まれて
「出て来たね! 土の中へハウスしなさいワンちゃん達!! じゃないとこのシエラ・バレスティが相手になるよ!!」
 シールドバッシュをやめたシエラが防御の体勢を築きながらアンデッド達に宣戦布告する。犬型アンデッドだけでなく人型アンデッドまで一斉にシエラの方を振り向き、逆にびくりとシエラが肩を竦ませる。
「こ、これ皆こっち来ちゃうんじゃ」
 予感的中。明らかに敵対する反応に群がろうとするアンデッド達。
 しかし人型アンデッドの1体に銃弾が当たり、その動きが止まる。
「人型はお任せください」
 墓石の影。XIIIが淡々と告げ、次へと照準を定める。
 次いでミニュイと天十里の射撃攻撃が人型の注意をシエラから逸らしていった。
「ありがとう皆!」
 シエラは盾で犬型アンデッドを引き付けながら叫ぶ。
「私の盾殴りは超強力だよ! おりゃあぁぁ!!」
 シールドバッシュを繰り出すシエラ。しかし犬型アンデッドは横に跳んで回避し、その腕に噛みつく。
 顔を歪めたシエラは腕をぶんと振ってアンデッドを振り払い、地面を転がった敵へ攻撃へ転じた。
 ゴス、と固いものが当たる手ごたえに小さく笑みを浮かべる。
 しかし他のアンデッド達が黙ってそれを見ているわけもなく、シエラへ噛みつこうと飛びかかっていった。

(まるでホラー映画だな)
 墓場を徘徊する人骨達。
 後衛へ進ませまいと人型アンデッドの目の前に立った純白は、ふとそんなことを思った。
 ゾンビに噛まれると自分もゾンビになる、なんていうのと同じ位ありがちな展開だ。
 トリーネの遠術が目の前にアンデッドに襲い掛かり、純白もすらりと刀を抜く。
「アタシがもう一度眠らせてやるよ」
 遠術を避けた人型アンデッドへ剣を叩きこむ純白。その追撃にアンデッドも躱しきれず、頭蓋骨で受け止めるが──。
(……固い)
 微かに刃が入ったかどうか。
 歯を噛みしめた純白は、その後のアンデッドの動きに目を見開いた。
 刀の刃を頭蓋骨で受け止めたまま。アンデッドは純白の体へしがみついたのである。
「離、れ……ろっ」
 体を大きく振ってみるが、思いのほかその力は強い。
 離れた所から小さな悲鳴。視線をやると、イーリンも同じ状態であった。
 さらに視線を滑らせれば、重ねて拘束しようとでもいうのか。人型アンデッド達が純白とイーリンに近づいてくる。
 不意に、弾かれるようにアンデッドの体がイーリンから離れた。彼女の後ろから「こけーっ!」と勇ましい声。
「トリーネ、ありがとう!」
「いいのよ頑張って! そしてこっちに寄らせないで!」
 否、勇ましいというよりは切実な声だった。
 次いで純白からもアンデッドが離れる。その隙に蹴り技を繰り出すと、弱い部位に入ったようでカランと崩れ落ちた。
 アンデッドが立ち上がる前に視線だけを向けると、純白にキュアイービルをかけたセシリアがシエラの方へ向かうのが見える。流石に1人に任せてしまうのはバランスが悪かっただろうか。
 立ち上がったアンデッドへ天十里の攻撃が向かった。それを受けて数歩下がったアンデッドは、まず目の前に立ちはだかる純白を倒そうと再び向かってくる。
 向こうへ加勢に行くとしても、まずは人型アンデッドをどうにかせねばならない。
 純白は再び刀を構えた。

(どちらも苦戦気味、ですか)
 墓石の影に身を隠し、標準を後方にいるアンデッドへ定めるXIII。
 撃ち狙い、次へ素早く標準を定め、また撃つ。その速度は他者より明らかに早い。だが精度としてはまだまだか。
 先ほどは外した部位を再び狙い、引き金を引く。鉛の弾丸は今度こそ外さず人型アンデッドへ。
 何度も狙い撃っていたおかげか、ようやく動きを止める。
 次の標的へと視線を動かしたXIIIは、隠れていた墓石に何かがぶつかった衝撃を感じた。
「バレスティさん」
「いったたぁ……」
 既に満身創痍、といった状態だ。向かってくる犬型アンデッドは2体。
 あちらを狙うべきか。優先順位を変えぬべきか。思考するXIIIの脇でシエラが起き上がる。
「大丈夫、まだまだいけるよっ」
 崩れ落ちそうになる足を叱咤し、剣を構えるシエラ。
 向かっていくシエラにセシリアが治癒魔術を施すのを見て、XIIIは武器の照準を人型アンデッドへ戻した。
 ──その時。

 カラカラ、カラカラ。

 新たな不協和音。
 人型アンデッドを倒したイーリンが辺りを見回す。
「……狼型アンデッド」
 目撃情報はあった。けれど、まだ姿を現していないアンデッド。
 程なくして臭ってくる異臭に思わず口元を塞ぐ。
 ぼこぼこと地面を隆起させて出てきた狼型アンデッドは、着いた土を払うかのように尻尾を振った。
「目標選定! 火線を集めて!」
 すかさず声を上げたのはイーリンだ。その言葉にXIIIの銃弾とミニュイの硬化した羽根が狼型アンデッドへ跳ぶ。続いたのは人型アンデッドを倒しきった純白とイーリン。
「よーしいけ! そこよ! 骨に天誅を下すのよー!」
 ばっさばっさと翼をはためかせながら、トリーネが応援する。
 1つ1つの攻撃ならまだしも、追撃が重なれば重なるほど回避が難しいのは必然。
 狼型アンデッドはXIIIとミニュイの攻撃は躱したものの、純白とイーリンの攻撃をくらって飛び退った。
 唸り声の代わりにカラカラと音を立てる狼型アンデッドは腐肉のついた足で地を駆け──ミニュイの方へ。
 その間に立ちはだかろうとするも、誰もが間に合わない。
「っ……」
 ミニュイが目を見開き防御の姿勢を取る前に、その腕へ牙が食い込む。
 それをきはがそうと攻撃を加えたのは天十里だ。窪んだ眼窩がそちらを見た気がした瞬間、その牙がミニュイから離れる。
 そして敵が天十里の方へ向かおうとした瞬間、その前を剣が凪いだ。
「それ以上、腐臭を撒き散らしながら動かないでもらえるかしら」
 イーリンだ。
 足止めをくらったアンデッドは辺りを見回す。人型アンデッドは既に倒されてしまっている。
「みんなお待たせ! ワンちゃんを倒して来たよ! 勇者は遅れてやってくるのです!」
 更に新たな加勢、シエラ。再び既に満身創痍と近い状態だが、彼女は犬型アンデッドを確かに倒しきった。
 あとは狼型アンデッドのみ。
 シエラが盾を構え、その陰でトリーネがミニュイに治癒魔術を施す。
 1番最初に攻撃に打って出たのは、やはりXIIIだ。自らの得意とする距離まで移動し、武器を構える。
 精密射撃をくらってそちらを向いた狼型アンデッドへ、イーリンの毒撃が繰り出された。
「毒は本当は外道なんだけれど。相手が外法のたぐいなら許されるわね?」
 攻撃をくらったアンデッドは、しかし毒のかかった様子はない。
 アンデッドが大きく尻尾を振り回す。
 分散していたとはいえ、相手はこの1体のみ。必然的に寄っていた純白とイーリン、盾ごとシエラが吹き飛ばされる。
 シエラは墓石に体を強く叩きつけられ、元々限界が来ていたのかそのまま意識を手放す。
 吹き飛ばされ固く目を瞑っていた純白は、抱き留められてはっと目を開いた。
「キャッチ! ……なんてね」
 受け止めた天十里が純白へ小さくウインク。そこへトリーネがちょこちょこと駆けてくる。
「大丈夫? もうちょっとよ!」
 治癒魔術をかけてもらい、すぐさま純白は狼型アンデッドの前へ立ちはだかる。
 吹き飛ばされたイーリンの方へはセシリアの向かう姿。
 XIIIとミニュイの精密射撃、天十里の攻撃が徐々に狼型アンデッドを弱めていく。
 明らかに敵の劣勢であった。
 尻尾を振り回しても、吹き飛ばされた者の代わりにブロックやマークをする相手がいるのだ。後衛まで攻撃が届かず、アンデッドへの攻撃が止むことがない。セシリアとトリーネが回復役を受け持ち、何よりセシリアは回復が遅れる事のないよう瞑想で備えている。
 そして。
「望んで蘇ったのでないなら、もう眠るといいよ」
 ミニュイの一撃により、とうとう狼型アンデッドは倒れ伏した。

●静けさが戻りて
「防腐措置、一応してみたよー」
 狼アンデッドの骸の傍にいた天十里がセシリアの方を振り向く。
 既に腐った臭いを発してはいたが、やらないよりはやってみた方がいいだろうとエンバーミングを施したのだ。
 割れて倒れた墓石の一部を起こしていたセシリアが顔を上げ、笑顔を見せる。
「ありがとう! 皆、休めるといいね」
「またアンデッドが湧いてきちゃうかもしれないし、墓場も綺麗にしてあげないと」
「周りが散らかっていてもゆっくり休めないだろうしね」
 天十里もセシリアに加わって一緒に墓石を起こし始める。
 単純に見えがちだが墓石は意外と重たく、そして起こしてみれば墓地もまあまあ綺麗に見える気がして。
 せっせと作業が進む傍ら、先ほど目を覚ましたシエラがすぅ……と息を吸い込んだ。
「悪い子はどこだー!」
 静けさを取り戻した墓地にシエラの叫び声が響く。しかし応えはなく、動くものもなく。ついでに傷に響いて痛い。シエラは小さく肩を落とした。
 ネクロマンサーが操っているかと思ったのだが、とっくに逃げてしまった後だろうか。
「恐らく逃げた後でしょうね」
 イーリンはシエラと同じ考えを持っていたようで、小さく肩を叩く。
「あとでローレットに報告しましょう。今回は誰かが操っていた可能性が高いし、あなたは大事にした方がいいわ」
 事前に調べていた情報が、イーリンのギフト《インスピレーション》によって1つ先の情報を導き出す。
 元々このアンデッド達の多くは行くあてのない浮浪者や野良犬達の骸であったと考えられる。
 これまで同じような被害はなかったそうだから、自然発生とも考えにくい。今回は故意に起こされた事件ともいうべきだろう。
 犯人やその意図は掴めないが、この依頼においてそれらの情報を得ることは必須でない。
 ローレットに報告をし、判断を任せるとしよう。
「アンデッド達の骸は、適当に塚を立てましょうか。あそこなんてどうかしら」
 イーリンが視線を向けたのは墓地の奥、まだ墓の立っていない場所だ。
 トリーネが小さな鶏冠をぴょこんと上下させる。
「いいと思うわ。元々ここで埋まっていた人達なら、元に戻してあげたいけれど……」
 トリーネは恐々と骨を──アンデッドだったものを見遣る。
 多少の差はあれど、どれが埋まっていた骨でどれが埋まっていなかった骨かなんて区別は不可能だ。
 誰からともなしに全部塚に埋めてしまおうという結論に至った。
 そうして出来上がった塚を見て、イーリンが祈りの言葉を捧げる。
「魂に平穏と、次代への縁があらんことを」

 小さく風が吹き、雲が押し流され。
 塚とイレギュラーズ達へ暖かい光が差した。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

シエラ・バレスティ(p3p000604)[重傷]
バレスティ流剣士

あとがき

 アンデッド討伐、お疲れさまでした。
 1人で多くのアンデッドと奮闘した貴女に称号を。

 またご縁がございましたら、よろしくお願い致します。

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