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シナリオ詳細

冬を進む足は彼方へ向かい

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ふしぎな人たちにあった。
 たおれていたわたしをたすけてくれた人たち。
 ゆきやまをおりるわたしをみまもってくれた人たち。
 ふりかえったらきえてしまった人たち。
 まるで手のひらにふったゆきがとけるようだった。
「てんにめします、われらのちちよ」
 祈る。さがしものが見つかりますようにと。あの人たちにまた会えるようにと。
 そして願わくば――


 氷のように冷ややかで、青い装丁のハードカバーを指先でくるくると回しながら『境界案内人』トゥールは貴方たちを迎え
た。
「やーぁ。この物語(ライブノベル)を知っているかい?」
 カストルから借りた物なんだけどねぃ、といたずらっぽく笑う彼はその物語を開く。
 物語の世界は、一年中雪に覆われた世界――その名を『アスタリク』と言う。
 灰色の雲が空を覆うことが殆どの世界で、ある少女が捜し者をしようとしている。
 もとは雪山に宝物(おかあさん)を探しに出掛けた少女の物語。風前の灯と思われた少女の命は、特異運命座標の介入により救われた。
「でも、それだけではこの物語はおわらない。なにより彼女自身が納得しきれていないからねぃ」
 最終的な目標は『少女が納得する終わりを迎える』こと。
 今回はその第一段階だと言う。
「今回は……そうだねぃ、『ユキラクダ』を探してもらおう」
 ユキラクダ? 誰かが首を捻った。
「そう、ユキラクダ。雪で覆われた砂丘を渡り歩く動物さ」
 ――太陽が真上に昇る頃、ユキラクダを見つければ願い事が叶う。
 あの世界ではある種の伝説となっているらしい。
 ユキラクダを見つければきっと、願い事が叶う。おかあさんに会えるかもしれない。
 少女のさがしものはおかあさん捜しから一旦、ユキラクダ探しになったようだ。
 こういった占いに似た物を信じるのは、どこの世界の女性にも共通するところなのだろう。
 幸いにも特異運命座標が行く日はちょうど晴れのようで、ユキラクダ探しにはうってつけだとトゥールは言った。
「さぁ、行っておいで。運命を変えられる者たち」
 これは大切な者へ至るための、大切な序章。

NMコメント

 皆様ごきげんよう。ノベルマスターの樹志岐です。
 なにかをすると願いが叶う。とかいう都市伝説や言い伝えは結構一杯ありますよね。
 今回はそんな、おまじないを探す物語です。

【目標】
 ユキラクダを見つける
(見つけるだけでオーケーです。捕縛する必要はありません)

【出来ること】
 雪原をくまなく探す、情報を集める、ライブノベルの世界の住人に協力を要請する……、
 ユキラクダを探すための行動でしたら殆どなんでも出来ます。
 捜索に有効なスキルを持っていると探しやすくなるかもしれません。

【ユキラクダ】
 雪の砂漠をゆったりと移動してくらすラクダです。
 伝説上の生物ではなく、この世界に実在する生物でありますが、滅多にお目にかかれません。
 そのため、『ユキラクダを見つければ願い事が叶う』という言い伝えが広まっています。

【少女】
 名前をミハルといいます。
 孤児院で生活しており、おかあさんに会いたいとある雪の日に孤児院を飛び出し生死の境をさ迷うこととなりました。
 その際、不思議な人たち(イレギュラーズ)に助けられています。

【その他】
 このライブノベルは、『冬を進む足は凍てついて』の続編となります。
 前作を読まなくとも楽しんでいただけると思います。  

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしています。

  • 冬を進む足は彼方へ向かい完了
  • NM名樹志岐
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2019年12月17日 22時15分
  • 参加人数4/4人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

ウェール=ナイトボート(p3p000561)
永炎勇狼
アウローラ=エレットローネ(p3p007207)
電子の海の精霊
メリー・フローラ・アベル(p3p007440)
虚無堕ち魔法少女
紅楼夢・紫月(p3p007611)
呪刀持ちの唄歌い

リプレイ

 ――それは、日の光を反射する雪と同じような白い毛並みであった。
 太陽の光が作り出す影のおかげでようやくそれと雪原との境界が認識できるほど同じ色。
 まっしろなカンバスにまっしろな絵具を落としたような白。
 少女はただ、言葉を失っていたが、長い時間を経てようやく、こう呟いた。
「こんなにきれいなものが、あったんだ……」

●雪の砂漠を渡るモノ
 さて、再び少女と会い見えることになろうとは。
 そんなことを思いながら『守護する獣』ウェール=ナイトボート(p3p000561)は少女の手を引いている。
 異世界人(よそもの)だけよりもミハルを連れて行った方が警戒もされにくいだろうし、情報も集まるだろう。
 実際、ミハルは街の人たちに顔が知れているようで、様々な年代の男性にも、女性にも声をかけられていた。
「やぁ、ミハルちゃん。……その人は?」
「えっと……ふしぎなおじさん!」
 やや説明が足りない節が見られるが。
 仕方ない、ここは大人の出番だ。
「この子を以前助けたことがある者だ。この子がユキラクダを見たいと言っていたので同行している」
 些か不審な目で見ていた群衆だったが、ミハルがこくこくと首を振り肯定をしているのを見て顔を見合わせた。
 するとその中から『あぁ!』と合点のいったような声が聞こえる。
「吹雪の日にミハルちゃんを保護してくれたひとたちか! その節は世話になったね」
 周囲から「アザラシおばさん」と声が上がる。なるほど、確かに脂肪を蓄えたアザラシのような体格のいい初老の女性であった。
 一人が心当たりを口にするとそこ彼処から同じように、覚えがあるような声が上がった。
「うんうん、こういうのは地道な努力が物をいうモンやねぇ」
 やや離れたところから『呪刀持ちの唄歌い』紅楼夢・紫月(p3p007611)はくつくつと笑う。
『前回』があったことをウェールやトゥールから聞かされていた彼女はこうなることをなんとなく解っていたのだろう。
 一度繋がった縁から横の繋がりが出来ていき、それはいつの間にか大きな絆となって、そうやって人は支えあって生きてきた。そういって人々が歩んできた歴史はどこの世界でも同じなのだ。
「ほいで……お兄さん方はユキラクダのこと、何か知らん?」
 こてり、と紫月が首を傾げる。その姿はどこか幼い少女ようで、それでいて女性としての魅力を秘めた雰囲気を纏い、街の人々の心を一瞬にして掴む。
「ユキラクダ……ユキラクダな! そういえばニックじいさんが見たとかいってなかったっけ?」
「そういうのに詳しいのは本屋のばあちゃんだろ。ちょっと聞いてくる!」
「ユキラクダの生態を調べているメガネがいたよな。あいつ最近部屋に籠りっきりだからひっぱり出してこようぜ!」
 瞬く間に賑やかしくなった街に、三人は互いに顔を見合わせ笑いあった。


「よーし! じゃあ張り切って探すわよ!」
「おー!」
「お、おー」
 拳を天に突き上げる形で意気込む『躾のなってないワガママ娘』メリー・フローラ・アベル(p3p007440)と『電子の海の精霊』アウローラ=エレットローネ(p3p007207)の様子を見て、ミハルも見よう見まねで手を振り上げる。
 街で聞いた情報から、このあたりの雪原でそれらしい影を見かけるという。
 それも一度や二度ではなく、複数回の目撃情報も寄せられたのだからここはユキラクダの縄張りなのだろう。
 メリーとアウローラ、それからウェールはそれぞれ街のユキラクダ研究家からもらったユキラクダの生態に関する資料と、この辺り一体の地図を手にしている。
「……さすがにここから見える範囲にはいない、か」
 手をかざし、遠くを見渡すように一帯を眺めるウェールは短く息を吐いた。
 雪が積もる場所では晴れている時の方が寒さを感じやすくなる。
 この世界出身ミハルは平気そうな顔をしているが、自分達は気を付けなければ凍傷になるかもしれない。
 少女のために持ってきたホットミルクに、自分が世話になる未来を想像して首を横に振った。

「うーん、どこまでいっても真っ白ねー」
 ほうきに特別なおまじないをかけ、ファミリアーとともに上空から探すメリー。
 見渡す限り白、白、白。日の光を反射して輝く白。
 直視したら目が焼けてしまいそうだ。
(ゴーグルを持ってきてよかった……)
 ほんの少しずれたゴーグルの位置を直しながら、心底そう思った。

 木の一本も生えていない雪原で探し物をするなど、砂漠に落とされた砂金の一粒を探すのに等しいのではなかろうかとアウローラは思った。
(……まぁアウローラちゃんってそんな経験はしたことないんだけどね!)
 けれど、どうしても会いたい人がいて。
 そのために眉唾物なおまじないに手を出したくなる気持ちはとてもよくわかる。
 だって、たぶん、きっと。
 ――わたしもきっと同じことをするだろうから。

「羊のような、アヒルのような……ともかく不思議な声なぁ」
 もう一人。上空から目と『耳』でそれを捜索する紫月。
 誰に語り掛けるわけでもなく、あめ玉を口の中で転がすように呟くのは目的の音。
 ユキラクダは羊のような鳴き方で、アヒルのような声色で鳴くらしい。
 想像しにくいが、兎に角こんな雪原の中で鳴き声を上げるような希有な生き物など中々いないだろう。
 ――視覚を遮断し、耳を澄ましてその声を探す。
 風によって雪が巻き上げられる音。雪原を跳び跳ねるウサギの足音。遠くの方で聞こえる仲間達の騒がしい声。
 本当は少しだけ。賑やかな仲間の元で何をするわけでもなく過ごしたいけれど、頬を撫でる凛とした風は思考を冷静に保ってくれる。
 太陽が真上に昇るまで時間が残されていない。明日からはまた雪が続くと誰かが言っていた。
(あぁもう、なんで……)
 せめて、たった一言。
 この小さな少女の為に姿を現してほしいのに。

 そんな時だった。
『ブメエェェェェ……』
 多分、ここにいる誰もが初めて聞いただろう声が雪原に響いた。

●ハリーハリーアップ!
「大丈夫? 落っこちないでね!」
 ミハルはいま、宙にいる。
 メリーの空飛ぶ盾に腰を下ろし、声の聞こえた方角へと急行していた。
 最初はほうきに跨がっていたが、長時間の飛行でだんだんまたがっているところが痛くなってきたらしい。女の子だものね。
「だ、大丈夫……わわっ」
「おっと、間一髪!」
 宙を浮かぶ盾は安定しているように見えてバランスを取るのが難しいようで、すこしよろけたところをアウローラが支えた。
「メリー、急ぎたいのもわかるけどこれだとミハルが落っこちちゃうよ」
「う、……わ、わかったわよぅ」
 依頼人ポジションである彼女を落として怪我をさせてしまったら元も子もない。
 やや速度を落としつつ、少女が落ちないようにバランスをとりつつ。
 急げ急げ。待って、行かないで。その姿をわたし達に見せて。

●未だ見ぬ春へ
 そして物語は冒頭に至る。
 地上に降り立ったイレギュラーズとミハルと、ユキラクダは僅か10メートルほどまで距離を縮めていた。
 太陽がユキラクダのコブとコブの間に覗き見えて、逆光のお陰でその長い睫毛と黒々とした瞳がしっかりと確認できる。
 一番体の大きなウェールよりもやや大きいラクダは、小さなミハルにしたらとても巨大な生物に見えただろう。
 じぃ、とこちらをみるラクダはやがてゆっくりとした動作で彼女らと反対の方向、太陽に向かって動き出す。
「あ、」
 いってしまう。わたしをおいていってしまう。
 その背中が、ずっとずっと昔にわたしを孤児院に預けた誰かの背中と重なって見えた。
「また……!」
 少女は駆け出し声を上げる。ユキラクダはその声に歩みを一瞬止めた。
「また、遭えるよね?」
 動物に人の言葉はどこまで伝わるか判らない。
 けれど少女の問いにそれは低く鳴いて答えた。
『大丈夫、逢えるさ。きみの大切なものに』
 その声はまるでそんな風に語りかけたような気がした。

●ページの外側
 少女の願いを聞き届けた4人の『不思議な人』
 彼らは遠くない将来、また少女と見えることとなる。
 ――少女に忍び寄る黒い手に、今は未だ誰も気づいていない。

成否

成功

状態異常

なし

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