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シナリオ詳細

<青海のバッカニア>瓶詰めの肉を求めて

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●よろしくそうろう
 新天地を目指すという、海洋王国の見果てぬ夢。幾度となく失敗したこの試み、失敗した理由はいくつかあるが、分かりやすい理由の一つに、食糧難があった。幾らす優れた漁師であっても、乗組員のための食糧を毎日釣り続けることは不可能だ。一日二日は釣れない日は必ずある。それが積み重なると、いつか倉庫が空になり、国へ泣きながら取って返す羽目になるのだ。

「と、いうわけで、皆さんには最近海洋の近海に出現した海獣を狩猟してきてほしいのです」
 ユリーカ・ユリカ(p3n000003)は広げた海図に印を付ける。
「作戦に万全を期すために、今回は過去の作戦の時に準備された以上の食糧を用意する予定らしいのです。海獣の肉を瓶の中で煮詰めてそのまま酢漬けに……いわゆるピクルスを沢山準備したい! そのためにはたくさんお肉が必要! とのことなのです」
 君達のテーブルには海獣のピクルスで作ったサラダが並んでいた。口に運ぶと、キツイ酸味が口に広がる。好みが分かれる味だ。どんどん食べ進めてしまった者もいるだろうし、もっといい保存食がある、そう思った者もいるだろう。
「そして、今回出現が確認された海獣はとても大きくて、ついでに凶暴なところがあるのです。船が沈められないように気を付けながら、なるべく傷をつけないように狩猟してきてほしい、というのが今回のご要望なのです」

「上手く狩れたら少しお肉を分けてくれるらしいのですよ。ぜひ頑張ってくださいね」

●海より響く咆哮
 帆の大きい快速のキャラベル船に乗り込み、君達は深蒼の海原へと漕ぎ出す。水平線の彼方には、既に首長の海獣がその首を突き出して、船をじっと見据えていた。
「来るぞ! うっかり落ちないように気を付けろよ!」
 船乗りが叫びながら帆を引き、舵輪を大きく回す。海獣は牙を剥き出して吼え、その身をくねらせながら一気に押し寄せてくる。かっと口を開き、強烈な水圧の水鉄砲を口から吐き出して来た。船首に喰らった船は大きく仰け反り、君達は足下を掬われ甲板の上を転がる。船乗りは慣れたようにあちこち掴まって踏みとどまり、てきぱきと態勢を立て直した。
「見たか。あの海獣はとにかくあの水鉄砲を吐いてこっちを揺さぶってくる。まあそれ自体は怖い事じゃねえが、その隙に近づいて船端に噛みついたりして来やがる」
 言うや間もなく、船の側面に向かって海獣が突っ込んできた。船長は鋭く叫ぶ。
「撃て!」
 船端に結び付けられた大砲を放つ。爆音が響き渡り、怯んだ海獣は咄嗟に海へと潜り込んだ。
「これはこけおどしだ。一応弾も持ってきてるが……あんまり中身を傷つけると肉がマズくなるからな……だが、あんまりお前らがもたもたしてたら撃たなきゃならなくなる。天下のイレギュラーズなら、上手いこと仕留めてくれよ!」
 間合いを取った海獣が再び海から顔を突き出す。君達は一斉に武器を構えると、海の獣を狩るために動き出した。

GMコメント

 影絵企鵝です。バッカニアにも顔を出させていただきます。この度はよろしくお願いします。
 という事で。

●目標
 シーダイバーの狩猟

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●ロケーション
 昼。海上及び船上で戦闘を行います。
 船のタイプはキャラベル船。船上で大立ち回りをするには少し心もとないサイズです。
 大海に落ちた場合にはなるべく早期の復帰をお勧めします。
 飛行技術があると便利かもしれません。

●敵
☆シーダイバー×2
 海洋に原生する魔獣です。キャラベルサイズの船には積極的に襲い掛かり、その口から放つ水鉄砲で船を転覆させ、溺れている船員を捕食します。船が転覆すればたとえイレギュラーズとはいえ戦闘が困難になってしまいます。なるべく船に近づけないようにしましょう。

・攻撃方法
→水鉄砲
 口から猛烈な水圧の水鉄砲を放ちます。直接のダメージは大きくありませんが、船が大きく揺れて足元が掬われます。転ぶとそのターンはまともに行動できないでしょう。
→ぶん回し
 前脚後脚の爪で船板を攻撃します。船を破壊するほか、直接喰らうとただではすみません。
→噛みつき
 噛みついてきます。避けましょう。

●TIPS(PL情報)
 シーダイバーは一匹は最初から、二匹目はしばらく経ってから出現します。手早い処理が必要です。
 討伐自体は難しくありませんが、あまり適当に倒すと怒られてしまいます。

●重要な備考
<青海のバッカニア>ではイレギュラーズ個人毎に特別な『海洋王国事業貢献値』をカウントします。
 この貢献値は参加関連シナリオの結果、キャラクターの活躍等により変動し、高い数字を持つキャラクターは外洋進出時に役割を受ける場合がある、優先シナリオが設定される可能性がある等、特別な結果を受ける可能性があります。『海洋王国事業貢献値』の状況は特設ページで公開されます。

  • <青海のバッカニア>瓶詰めの肉を求めて完了
  • GM名影絵 企鵝
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年12月04日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

レイヴン・ミスト・ポルードイ(p3p000066)
騎兵隊一番翼
ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)
Lumière Stellaire
アラン・アークライト(p3p000365)
太陽の勇者
リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣
アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)
無限円舞
シラス(p3p004421)
超える者
リナリナ(p3p006258)
ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)
私の航海誌

リプレイ

●首長の海獣
 両手両足の水掻きを器用に使い、巨体で海を掻き分けながら海獣が船へと一気に押し寄せてくる。その口から放たれた大量の水が、船を左右に揺すぶった。レイヴン・ミスト・ポルードイ(p3p000066)は咄嗟に空へと飛び上がり、上空から敵の長い首をじっと見つめる。
(いつぞやに『船喰い』とかいうタコ魔獣を討伐したこともあったかな。……その時の討伐経験を少しでも役立てられればいいのだけれど)
 黒翼を広げたレイヴンは、海獣の頭上高く目掛けて飛び上がった。ニンジンのピクルスをポリポリ食べながら、ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)はそんな彼の背中を見上げる。
(貴族様達はもうちょっと酸っぱい方が好んで食べられるのですけどね……)
 呑気に腹ごしらえしていた彼女だったが、戦う準備も欠かしていない。瓶を甲板の隅に転がすと、両手を胸の前で合わせる。手元で光が集まり、治癒のエネルギーへと転換されていく。
「皆さんが傷ついた時にはわたしが治癒します。背後の心配はいらないですよ」
「おー! 突撃! 突撃!」
 大剣を振り上げて叫ぶリナリナ。しかしすぐにそばの男が遮った。
「待て待て。あんなデカい奴にそれは無謀ってもんだ。なるべく近づけないように処理してくれや」
「とつげき……はなしぃ?」
 ぽかんとした顔で振り返るリナリナ。男はしかめっ面で頷いた。
「ああ。アイツを狩れても、肝心の船がぼろぼろになっちゃあ港まで持ち帰れないだろ?」
「あぅあぅ、確かにそれダメ! 絶対ダメ! 船で近づく、良くない! 良くないゾッ!」
「おう、だから頼むわ」
「おー!」
 リナリナは素早く飛び出し、何処から取り出した肉をハンマー投げのようにぶんぶん回して空へと放り投げた。高々と宙を舞った肉の塊は、船の眼前まで近づいてきた海獣の頭上に直撃する。鈍い音と共に肉が飛び散った。海獣は顔をしかめて吼える。ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)は咄嗟に身構えて咆哮の音圧を往なした。
「こんなに大きな怪物を、なるべく傷つけないように狩猟しろなんて……なかなか無茶苦茶を言いますよねぇ」
 海獣は長い首をもたげ、じろりとウィズィを見下ろす。彼女は鞘から鋭いナイフを抜き放つと、右手に持って構えた。左手は指先をこめかみに当て、神経を研ぎ澄ませていく。
「まあでも、シーダイバーのピクルス、私は結構、お酒に合う感じで嫌いじゃなかったので、手早く行きますか!」
 シーダイバーが首を振り上げた瞬間、ウィズィはナイフを握った手を振り抜く。
「コーラヴラヴ! 私のクソでっかい感情のナイフ、当たって砕けろ!」
 深紅の光が放たれ、ナイフの形に変化し海獣の胸元に直撃した。海獣の鱗が焼け付き、得も言われぬ生臭さが辺りに立ちこめる。海獣も呻き、その場で大きく仰け反った。その隙に、帆を張った小型船が海獣の側へと接近していく。リゲル=アークライト(p3p000442)は銀の剣と青白い刀を抜き放ち、まるで敵へ見せつけるように刃を振り回す。
「海の狩猟者よ! 獲物はここだ! 食えるものなら食ってみるがいい!」
 刃を擦らせると、飛び散った小さな火種が無数の火球となって海獣へ直撃した。海獣は唸ると、鋭い腕を振るって小型船を叩き潰そうとする。咄嗟にリゲルは身を乗り出し、交差させた刃で海獣の爪を受け止めた。
「さあ来い! こっちだ!」
 海獣が爪を引いた隙に、リゲルは帆を引いて船首を転回する。見開いた眼でリゲルを睨み、海獣は彼を追いかけようとする。アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)はすかさず船から飛び出し、宙を駆けるように飛び回る。
「さあ、今度はこっちよ」
 左腕に纏わす布の中から、アンナは水晶の剣を抜き放つ。その刃に炎を纏わせた彼女は、空を踏み込み海獣の額を突く。放たれた炎が炸裂し、鱗が抉れて獣は呻いた。急に首を振り回したから、彼女は避けきれずに頭突きをもらってしまう。体勢を崩した彼女は、身を捻りながら何とかリゲルの小型船に降り立つ。
「やっぱり楽な仕事ではなさそうね。私達の食生活に関わってくる以上、他人事ではいられないけど……」
 小型船はキャラベル船と並行するように海を滑る。追い縋ってくる海獣を見上げ、ウィズィは叫ぶ。
「さあ来ましたよ! 此処から後退攻撃開始です!」
「ああ任せな。あのデカブツ、刺し身にしてやるぜ」
 マストと腰をロープで結んだシラス(p3p004421)は、その手に魔法拳銃を取って構える。射程ギリギリだが、的はデカいから当てられない事は無い。迷わず引き金を引いて、海獣に封印術式を叩き込んだ。黒い影が網のように広がり、海獣の口元を締め上げる。口から吐き損なった海水がだらだらと溢れ出し、海獣は苦しげに呻いた。その首を捩って、小船やキャラベルの船端を殴りつけてきた。船が再び揺らぎ、シラスは思わずその場でたたらを踏む。
「あっぶねえ。イキのいい奴だな、ったく。アンタも頼むぜ!」
 シラスはアラン・アークライト(p3p000365)の方を見遣る。彼は何処か不機嫌そうに肩を揺らすと、大剣を担いでずんずんと船端へと歩み寄って立つ。大剣の腹には牙や骨、目や口が浮き出ている。柄の牙が僅かに食い込み、アランから生命力を吸い取っていく。
「ったく、最近は海上での依頼ばっかだぜ、クソが……海は嫌いな方じゃねェけど、ここまで来やがると波の音も潮の匂いも嫌になってくる」
 ぶつぶつと管を巻きながら、彼は大剣を担ぐ。刃に深紅の光が輝いた。『燦然たる救済の光』と呼ばれる術も、彼にかかれば暴力的な一閃と化す。
「おらァ! 死ねやクソ害獣がァァ!」
 力任せに振り抜かれた一閃は、鋭く空を裂いて海獣の首筋を裂く。黒い体液がどろりと溢れた。
「めんどくせぇけど仕事は仕事だ。ぶちのめす……!」
 アランは顔を顰めると、更にもう一撃を海獣の首根っこ狙って振り下ろす。防戦一方の海獣だったが、封印が僅かに緩んだ隙を突いて、水平線を縦に切り裂く水鉄砲を放った。レイヴンは身を捻ってひらりと躱すと、レイヴンは弓を取って弦を引く。その手の内で光の矢が構築された。
「どうにも見た目が竜そっくりで居心地悪いけれど、お前はただの爬虫類だろう。ならば遠慮はしないよ」
 ふわりと海獣の側頭部に陣取り、魔力の塊を放つ。狙うは首根っこの心臓部。魔力の塊を叩き込んだ。アランが開いた傷口から魔力が沁み込んでいき、海獣は苦しげに呻いて身動ぎする。溢れた血が海の中へと流れ込んでいく。アランとシラスは船端に立ち、一斉に胸元の傷口目掛けて攻撃を叩き込んだ。それでも海獣は四つ足で海を掻いて突き進み、右腕で小船を踏みつけにして、その首でキャラベルを殴りつけてくる。リゲルとウィズィがそれぞれ船縁に立ってその一撃を受け止めた。
「るらー!」
 そんな仲間達の横で、リナリナも地道な投擲攻撃を続ける。投擲は巨大な獲物を狩る時の必須スキル。彼女の狙いに狂いはなかった。足下に転がっていた空き瓶を手に取り、彼女は海獣へ投げつけようとする。
「……ん?」
 しかしその時、何だか妙な感じがした。狩りはこれで終わらない。そんな気がしたのである。レイヴンもちらりと海面を見遣る。水底から巨大な影が近づいてきていた。
「新手が居るぞ。気を付けろ!」
 レイヴンが叫ぶや否や、小船をそっくり返すような勢いで新たな海獣が姿を現した。口をがっと開き、激しい勢いの水鉄砲を放つ。船側に直撃し、船は再びぐらりと揺れた。リナリナは目を丸くする。
「二匹目のイバイバ! ピンチ! ピンチ!」
 彼女は一声叫ぶと、ジェットパックを背負う。二匹目がいきなり出てきたらどうするか。手負いの方をさっさと仕留める。そう決めていたのである。
「るら~!」
 その頭に向かって不可視の斬撃を叩き込むと、そのまま喉元へ飛びついた。
「自分が噛まれないと思ったら大間違いだゾッ!」
 リナリナは海獣の喉元に噛り付く。海獣は呻き、腕を伸ばしてリナリナの引き剥がそうと何度も爪で切り裂く。普通の少女なら死んでいる所だが、リナリナはマンモの肉で育った強い娘だ。混沌の力で傷をなかったことにしながら、海獣の首を噛み千切った。大量の血が驟雨のように溢れ、海獣はぐったりとその場に崩れた。ぷかりと浮かぶその背に立ったリナリナに、ココロは素早く手元に溜め込んだ賦活の光を放つ。
「大丈夫ですか?」
「おー、やったゾ! ついでにもう一匹だなッ!」
 ココロは頷くと、小船の方へと眼を向ける。潜水からの強襲を受けた小船の二人は、今まさにピンチに陥っていた。

●スマートに狩れ!
 深海から伸びあがった海竜は、船を砕かんと両腕を振るう。リゲルは刃を構えて敵の爪を受け止めるが、また別の爪が襲い掛かった。
「くっ……」
 アンナは船へと滑るように舞い降り、布をきつく張り詰めて敵の突撃を受け止める。しかしその体格差は如何ともしがたい。アンナもリゲルも吹っ飛ばされ、そのまま海中へと放り出された。アンナは傷に塩水が沁みるのを感じながら、歯を食い縛って再び空へと舞い上がる。
「全く、堪ったものじゃありませんわね……」
 リゲルもまた海の中へ沈んでいく。意識は朦朧としていたが、それでも歯を食い縛り、胸元のロザリオへ手を翳す。混沌の力を身に浸し、その身のあちこちに刻まれた生傷を癒していく。
(妻が帰りを待っているんだ。流石にこんなところで沈んではいられない……!)
 水中を蹴り、一気に水面へと顔を出す。ココロはそんな彼の姿を目に捉えると、素早く水中へと飛び込んだ。海獣が暴れて揺れる海面をモノともせず、彼女はリゲルを引き揚げ小船の上へと押し戻す。リゲルはむせ返りながら、彼女の放つ癒しの光をその身に受けた。
「すまない。気を張ってはいたけど、流石に攻撃を受け過ぎたみたいだ」
「……大丈夫です。このまま獲物を仕留めてしまいましょう」
「ああ、そうだね」
 リゲルは頷くと、船端を蹴って飛び上がる。空中を素早く駆け回りながら、海獣の首筋目掛けて鋭く刃を振り抜いた。獣が首を引いてその一撃を躱そうとしたところには、既にアンナが待ち構えていた。
「せめて、この苦労に見合う美味しさであってほしいものね……!」
 アンナは風のように剣を突き出す。海獣の目元に刺突は直撃し、深紅の炎が爆ぜ散った。片眼を潰された海獣は苦しげに呻いて首を振り回し、そのまま海水を辺り一面に撒き散らそうとする。
「そうはさせっかよ!」
 シラスは船尾に立って海獣へ狙いを定め、再び封印の一射を放つ。今度は喉元に影の網が巻きついて、海獣が溜め込んだ海水を喉元で堰き止めてしまった。獣が喉を詰まらせ呻いている隙に、更にシラスは手首に巻いていた黒い腕輪をナイフに変えて素早く目の前に魔法陣を描く。
「こいつは効くぜ! 喰らいな!」
 高らかな叫びと共に、自分の拳で魔法陣を撃ち抜く。放たれた黒い弾丸が、獣の頭をさらに打ち抜いた。
「いいゾッ! リナリナ、ちょっと頑張りすぎた。だから応援に回るゾッ! 無理良くない!」
 リナリナは死んだ獣の首をもやいで船の縁に結び付けると、そのまま背中に乗って再びどこからか肉を取り出す。ぶんぶんと肉を振り回した彼女は、そのまま天から投げ下ろすように投げつけた。見た目は柔らかい肉でも、高高度から直撃すればそれなりに痛い。獲物は眼を剥いて呻いた。敵の反撃が鈍った隙に、レイヴンは呼び出した碧玉の召喚獣から魔力の補完を受ける。
「ありがとう。……さて。皆が頭を狙うなら、ワタシも頭を狙っておくべきかな」
 召喚獣の頭を撫でたレイヴンは、再び召喚獣の頭へ弓で狙いを定める。召喚獣は唸りながら長い首を振り回した。彼は一際大きく羽ばたいて高度を上げ、獣の一撃をひらりと躱しながらその脳天に狙いを定める。
「特に恨みは無いが、ワタシ達の為に狩らせてもらうよ……!」
 放った魔法の矢が直撃する。海獣は仰け反り、暴れながらずるずるとキャラベルの方へと迫っていく。ウィズィはあっと息を呑む。
「何だってこっちに近づいてくるのよ! とっとと大人しくしなさいよ!」
 再び彼女はナイフを手に取り、その切っ先から放った光を兎のような姿へ変えて海獣へ打ち込む。しかし、満身創痍の海獣には効き目が無く、そのまま船へのしかかろうとしてきた。既に一匹の海獣を仕留めた後では、快速のキャラベル船でも躱すのはままならない。
「こいつはマズいぞ! バランス崩して転覆しかねない!」
「仕方ないですね!」
 ナイフを順手に持ち替えたウィズィは、そばに立っていたココロに軽く目配せし、空高くからのしかかってきた獣の頭目掛けてナイフを突き出す。
「近寄るな、ってのぉ!」
 渾身の一撃で、僅かに海獣の頭が跳ねる。その隙にココロが踏み込み、全身のばねを使って鋭い裏拳を叩きつけた。衝撃を受けた獣の頭がポンと跳ねる。アランは大剣を担いで飛び出し、船縁を蹴って宙を舞う。
「こいつで、トドメだァッ!」
 異形の刃を獣の首筋に叩きつける。火花と閃光が走り、体液がどっと噴き出した。

 獣の頭がどっと甲板に転がり、首から大量の血を垂れ流した獣はそのままだらりと海の中へと沈もうとする。アランはウィズィから投げ渡されたロープを素早く手に取り、海獣の背中へと飛び移る。
「ったく、手間取らせやがって……おい、こんなもんでどうだ!」
 首をきつく縛り上げて船と結び付け、アランは船乗りに向かって手を振る。男は拳を突き上げた。
「おう、問題ねえ。まさか二頭も獲れるとは思ってなかったが……まあゆっくり帰ろうや!」

 船乗りは叫ぶと、再びキャラベルの帆を大きく張る。今日は大漁、キャラベルの旗も誇らしげに輝いていた。

●食料を確保
 レイヴン達の力を借りつつ、キャラベル戦は二頭の海獣を曳航してようやく港へと帰ってきた。木製の水揚げクレーンが綱を引っ張り、海獣を陸へと揚げる。レイヴンは真っ先に港へ降り立ち、そんな光景をじっと見守っていた。
「こうしてみると、少し傷が多くなったかね……」
 水夫は顔を顰めて頷く。
「一頭目はなぁ。内臓がダメになってると臭いが肉に移ってまともな漬物にならなくなるんだよな。捌いてみない事には分からんが……まあ、きれいに狩ろうとしてたら二頭目にやられてたかもしれんから、結果的には正解の選択だったろうがな」
「ふむ……とすると、またもう少し食材集めが必要になるかな……」
「でも今度はもう少し穏やかな海で釣りだけする事にしたいわね。あんな獲物を相手にするのはしばらく御免被るわ……」
 アンナは着替えたスカートをひらひらさせて呟く。行きに着ていた服はすっかり海水に濡れてしまったのだ。
「きちんと手入れしないと、潮でぼろぼろになってしまいますわ。はあ……」

 一方、船から降りたウィズィとココロは瓶詰めピクルスを作っている工場へ繰り出していた。タダでさえ夏の陽気な日差しが年がら年中照っているような気候だが、工場は常に鍋がぐらぐらしているから湯気が満ちて大変な事になっている。ウィズィは汗を拭って嘆息する。
「熱いですね、ここ……」
「適当なもの作って後悔するのは俺らだからな。キツくでもここに妥協は出来ねえよ」
「ピクルスは一体どう作ってるのです? よかったら教えてくれません?」
 ウィズィが尋ねると、男は肩を竦めた。
「特に工夫はねえな。肉も野菜も適当に切り分けて酢に漬けるんだ。そいつを瓶に詰め込んでコルクで蓋して、そのまま鍋で煮込むんだ。こうすれば腹痛の毒が消えて長持ちするんだとよ」
「せっかくなら、もっと酸っぱくしてもよいのではないでしょうか」
 ココロはぽつんとした口調で注文する。
「悪いな。ここで働き始めてからこの作り方しかしてねえんだ。味の調整はどうしたらいいかわからんのよ」
「ふむん……」

 二人がそんなやり取りをしている間に、水揚げされた海獣はどんどん捌かれていく。若干潰れ気味の肉を切り出した男は、アランやリゲルにそれを差し出す。
「こいつはくれてやる。このへんは漬物にしてもダメだからな。そっちで食ってくれや」
「おう。任務の礼として貰っとくぜ」
「ありがとう。いただくよ」
 アランは箱詰めにされた肉をリゲルと一緒に港の広場まで運ぶ。既にシラスとリナリナがかまどを仕立て、火の準備を整えていた。アランは肉をまな板に投げ出すと、ナイフでさっさと切り分けていく。
「海ん生き物はシンプルに塩焼きだ! 燃えろクソがァ!」
 そのまま木の串に突き立てると、どんどん網の上に並べていく。リゲルはそんな光景を見て肩を竦める。
「シンプルもシンプルって感じだね……」
 シラスは何処から仕入れてきたのか、岩塩を小刀で削って海獣の肉へまぶしていく。
「まあ、小細工なしで素材の味だけを楽しめるってんなら、悪くないんじゃないか?」
 焼いている間に肉から脂が滴り始める。目を輝かせたリナリナは、早速肉を取って口に放り込んだ。
「おー、良く焼けていて美味いゾ!」
「散々苦労したんだ。ちょっとぐらい分け前に与かれねえとな!」
 アランはにやりと笑うと、海獣の肉にかぶりつく。さっぱりとした脂の味が口の中に広がった。



 かくして、無事に海獣は討伐され、海洋は近海の無事を確保しつつ大量の食糧を手に入れたのであった。

 おわり

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

お世話になっております、影絵企鵝です。この度はご参加ありがとうございました。

というわけで、おおよそ無事に漁獲達成です。今回の肉も保存食に加工され、次々船に積まれていくことになるでしょう。

ではまた、ご縁がありましたら。

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