シナリオ詳細
<青海のバッカニア>REC:伝説観測者
オープニング
●Nightmare
『それ』は突然に現れる。
『それ』は理不尽を体現したかのような存在だ。
『それ』に慈悲は無く、『それ』は常に容赦がない。
どんな歴戦の船乗りであろうと、屈強な海の男であろうと『それ』の前に例外はない。
女だてらに海賊として名を馳せた『ウィーク』のヨナは「真っ平御免だ」と吐き捨てて。海軍ひとかどの重鎮たるゼニガタ大佐も苦虫を噛み潰したような顔になる。
だから――『それ』を語る事はこの海の禁忌であるとされる。
『それ』はこの世の理に縛られぬ埒外の存在やも知れない。
気まぐれにして大いなる造物主(クリエイター)が生み出した何の意味も無い『災害』なのかも知れなかったし、何かを為す為に産み落とされた『神意』であるのかも知れない。
何れにせよ――神出鬼没たる『それ』の動向を掴む事は神ならぬ人の業には遠く届かず、まさに未だ遥かなる外洋を征服するに至らない人類の未踏領域が如しであろう。
故にこの日。イレギュラーズが広大なる青海のバッカニアとしてこの仕事に臨む事になったのも、恐らくは強固なる鎖によって絡め取られた運命の配剤だったに違いない。
●くろくてはねのはえたかわいくてむがいなねこたん
「……この平和な海にそんな存在が……」
ゴクリ、と息を呑んだイレギュラーズは粟立つ肌と武者震いを禁じ得なかった。
依頼人から話を聞いた限り、この仕事は間違いなく――そう、間違いなく命賭けのものとなる。歴戦の海の勇者達を震え上がらせた『それ』と相対せよというのだから――それは当然の出来事であった。
「オーダーは『それ』を倒す事か?」
「いや、それは多分無理だね。
『それ』は概念であり、現象のようなものだともされる。
一度発現したが最後、『それ』は目的を達するまではそこに留まり続けるんだ」
「……倒すのは不可能なのに、俺達に出来る事がある?」
「うん、君達にしか出来ない仕事だよ」
イレギュラーズは人の悪い顔をして勿体をつけた眼鏡の大男に「詳しく説明を」と促した。
「さっき言った通り『それ』は目的を達成するまでは消滅しない。
だけど、目的が果たされたなら――嘘のように消えてしまうの。
つまり、君達は他所の被害が出ないように『それ』の元へ赴き、消滅へのフラグを回収すればいい」
「……禁忌だから仕方ないのかも知れないが、当を得ない。
分かり易く説明して貰えると助かる。重大な事件なら尚更だ」
苦笑したイレギュラーズは男に念を押す。もし海洋王国の近海にそんな重大事が起きているならばとても捨て置ける話ではない。即刻の対処が必要なのは明白だった。
男はこの時――酷く意地悪い笑みを浮かべ、待ってましたと口を開く。
「じゃあ。ええと、『それ』の名は――えっちっち」
「おい!」
「消滅フラグは本人(?)が一通りやらかして満足する事」
「こら!!」
「尚、参加メンバーが男だけだった場合、その戦闘力は冠位七罪に匹敵する」
「まてや!!!」
「女の子は水着を着ていくと有利なボーナスを受ける。男はどうでもいいや。
あと、十三歳未満の女の子にはとても紳士的に接するから安心だよ」
「生き餌じゃねえか!!!!」
「兎に角――君達にしか出来ない仕事だ。宜しく頼む。書きたいし」
――生き餌じゃねえか!!!!!
- <青海のバッカニア>REC:伝説観測者完了
- GM名YAMIDEITEI
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2019年12月08日 20時55分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●多分悲惨だけど仕様です
頬を撫でる潮風に混ざるのは不安か、それとも期待か。
これより始まる嵐の一時を予感させるように――船上の八人は武者震い(?)を禁じ得なかった。
海洋に棲む伝説――『災厄的概念』とさえ称される『それ』は歴戦のイレギュラーズが相対する相手の中でも極めて危険であり、極めて異質であると称さない訳にはいかないだろう。
『それ』は突然に現れる。
『それ』は理不尽を体現したかのような存在だ。
『それ』に慈悲は無く、『それ』は常に容赦がない。
どんな歴戦の船乗りであろうと、屈強な海の男であろうと『それ』の前に例外はない――
だが、イレギュラーズに退く選択肢は無い。
男でも女でもやらねばならぬ時はある。薄らにやついて、或いは真顔で。この煉獄に可愛い子供達を放り込んだ鬼畜共の為にも、やみにもやらねばならぬ時はあるのだよ。
「男のロマンが具現化したような魔物……倒すのつらいぜ……」
一枠一番、『彷徨う駿馬』奥州 一悟(p3p000194)。男は消毒じゃと言わんばかりに開幕で海中にブン投げられる事がほぼ確定している彼は、事もあろうに女もののビキニとパレオを身に着けていた。
「青い果実のような少年のみずみずしい肌を堪能しやがれってな!」
何故か勝ち誇る彼を見る仲間達の目は恐らく割合生温かい。かの暗殺令嬢をコンセプトに男の娘を展開した彼は「これならラッキースケベに巻き込まれたりしないかな?」等と供述しているが、違いの分かる男は多分雑味を許さない。と言うかそんなの羨ましいから駄目。彼は真冬に寒中水泳をキメた挙句、陸では暗殺令嬢に詰められる事が確定している。
ボコボコのボコである。パンドラの貯蔵は十分だな?
「確定未来酷くない!?」
酷くない。
「いや、もうちょっと例えば……こう、活躍!」
しない。
二枠二番、『闇之雲』武器商人(p3p001107)。
一悟に続いてのっけから不安になる二人が連続するが、武器商人は言わずと知れた『不明』である。
「今回はシリアスだね心得た。こんな事もあろうかと……」
武器商人が都合良く懐からカメラを取り出したのは本作タイトルに対してのきめ細やかな忖度そのものである。
「女は生き餌で男はぶん殴られる、なら不明(アタシ)が撮らずに誰がこの光景を残すんだい?」
口元をふ、と緩めた武器商人はかく語りき。
「概念、現象は観測されてこそ意味を得る。そういった意味では我(アタシ)とキミはとても近しいモノだし、それ故に我(アタシ)はキミを観測し広める事を是としている。とりあえずなんとなく難しそうなこと言っておいたしシリアスだね。間違いない」
オーケー、そのロジックでいく事にしようじゃないか。
三枠三番、『箱入りですもの』リースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)。
……
「なんか……騙された、ような気もしますけれど……」
……………た。
「でも現実に起きている問題である以上、捨ておく訳にも行きませんし……」
……………………きた。
「なんとか、出来るだけの事はしてみましょうか……って……」
きた! 神じゃん! 金髪えうふ! お嬢様!!! 隠れきょにう!!!1!
いつぞやの同人誌ではよくも騙しやがったな! この手で! 今日こそは! 本懐!
泣いたり笑ったり出来なくなる位すりすりしてやる!
その非力を制圧して鈍感を敏感に変えてやる!(※弱点)
おい、そこのファンド! わかってんな!
「!? !? Σ」
~大変お見苦しい映像が流れた事をお詫びいたします~
……四枠四番、『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラ(p3p002101)。
「いやぁ、伝説の生物をこの目で見れるとは心が踊るね!
海洋の事業の事もあるし、未知との遭遇なんて最高じゃないか!
ふふ、この時期に水着を着る羽目になって正直風邪でもひきそうだが……
それも気にならない位、気分が良いな!」
僕はね、フェミニンな女の子も好きだが、ゼフィラ君のようにクールで知的で『女子が前面に出ない』タイプをめたくそにするのも大好きなんだ。
ほら、彼女あまり自分が被害に遭うと思ってない顔をしているだろう?
或いはその衝撃は想定内というか、必要コストと割り切っている節があるじゃないか。
僕はね、そういう女の子を(以下略削除)。
続きましては五枠五番、『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)。
「えぇと、お酒を飲んでいて気付いたら参加しまぁす、って……
手を挙げていたんだけど……なんなのよぉ、これ!」
酒は呑んでも呑まれるな、全く人生の教訓を体現してくれる彼女は言う事ないですね?
元来酔っ払いとはエロいもんなのです。頬を染め、前後不覚になる酩酊がへっちくない訳ないでしょう?
その癖、彼女はアレですから。そんな風で意外と女の子で、しかも可愛い彼氏とか居ますからね。
可愛い彼氏とか書くとアレですが、まぁ僕もあの時は騙されまして……
おっと脱線しました。アーリアさんの話でしたね。
そう、アーリアさんは大体何しても大丈夫でしょう。酷い目に合わせてやる。
だって挿絵のRC用意してくれたそうですし(これにはやみもにっこり)。
六枠六番、『氷雪の歌姫』ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)。
「海洋王国っぽいですわよねー。いろいろな意味でー」
彼女がワンパン入れた海洋王国への熱い風評被害はさて置いて。
(耳にしたことが無かった訳ではありませんでしたが……
父の死霊術で呼ばれた魂魄にもそんな話はありましたか……?)
呆れながらも思案を進め、最終的には。
(ええ、仕方ありません。可愛そうな存在のために一肌脱いであげるのも……
……まぁ、貞操的な意味では大丈夫みたいですし)
「仕方ないなあ」に落ち着くユゥリアリアの諦念系包容力はほら、タゲのバリエーションを加えるには最良で、一人くらい「あらあらまあまあ」系が居ると尚更いいだろ? 分かってる。
七枠七番、『湖賊』湖宝 卵丸(p3p006737)。
「う、海の平和を守る為、えっちっちに帰って貰うんだぞ!」
虚勢を張る彼は何故か一悟と同じくきちんとおにゃのこの水着を着込んでいる。
一悟と違ってちっとも邪にあらず、
「らっ、卵丸別に恥ずかしくなんか、無いんだからなっ!!」
等とのたまってしまい、あまつさえ「女の子だけを酷い目に遭わせる訳にはいかない!」なんて頑張ってしまう彼は全く男の子で、あとそれから……
……
……………いや、今は言うまい。
兎に角、唇を噛んで己が境遇に耐える彼は妙に可愛らしくさえ見えるのだ。
八枠八番、『氷結』Erstine・Winstein(p3p007325)。
「が、概念?? ……わ、私……大丈夫……かしら……」
僕は思うのだ。何故彼女は同人誌を作ってしまうのか。
何故彼女は的にされるって分かっていながら。結果的に詰められまくるって分かっていながらこんな所にやって来てしまうのか。ドMでしょ、そこそこドMでしょ。
「な、なんの事だか分からないのだけど……!」
いや、確かに旅の恥はかき捨てだ。何処かの修道ガールもアイドル全開でカラオケした。それはそれで尊い。何の問題も無い。だけどそれが漏れない保証はあるのか?
例えばあの方の所に……ああ、そうですね。確か尊敬だから問題ないっすね。
「尊敬だけど、やめて!!!」
え? やめない。
以上、パドックより八人の出走者の紹介でした。
被害者の人となり分かってた方が燃えるでしょ?
●空に一悟が打ち上がる
「食わず嫌いはダメだぞ! 男女差別はよくない。
さあ、怖がらずに…新しい世界の扉をひら………あ゛ー!!」
空に風物詩、汚ぇ花火が打ち上がり。
――小生にも救い難い愚者だな。
彼は頭の中で強烈な自分ディスを聞くのでありました。
さあ、始まりました。超絶理不尽劇場えっちっち。
REC:伝説観測者とか外面のステルス適当にキメておりますが、これはパッと見のタイトルから内容を類推させない為のおためごかしであり、今日我々が頬を紅潮させる美女達の“結果”にコミットするのは――いやさ、しなければならないのは明々白々。このリプレイに艶やかにして美麗なるSASIEを人数分狙うのは神ならぬやみに約束されたマニフェストとすら思う次第なのでありますよ。
えーと、あらすじ。
「いえいえ、わたくし見られることに然程抵抗はございませんが。
さりとて、衆目に痴態を晒す趣味はございませんのでー」
ユゥリアリアさんの発言が余りにももっともなので、人払いとか適当にやってたらスライムでました。
これから皆やられます。おわり。
「ヒヒ、同じ怪異同士仲良くやろうじゃないか。撮影の方は任せておきなよ」
二枠二番、温かな友情を育んでくれるのは武器商人。
では、的にしましょう三枠三番。
「!?」
昔の少年漫画誌みたいに!? とあとΣが似合うリースリットたそ。
思う存分すりすりすりすりいっときましょう!
リースリットちゃん(Before)
(巨大なスライム……戦って倒すのが無理という前提と聞きましたが――)
船上という戦場を水着に包まれたしなやかなシルエットが踊る。緋炎を宿す魔晶の剣を手にした剣士は彼我の絶対的な戦力差を理解しながらも果敢に敵に立ち向かっていた。
(消滅するには、確か一通りやらかして満足……でしたか。
何かしてくるのを好きにさせる……そして私達がそれに耐えればいい、という事でしょうか?)
うんうん。
「ならば、ここは耐えるのみ!
何をしてくる心算なのかは解りませんけど……さあ、受けて立ちましょう
何でもお好きなようになさってください。何をしてきたとしても――耐え抜いてみせますっ!」
うわあ、罪業! 無知シチュ入れてきたよ、このひと。
リースリットちゃん(After)
「……ひゃっ……」
素肌を冷たくぬるりとした感触が這う度。
水着の間に液体状の何かが滑り込む度に。
「ん、くっ……ぁ……や、やめ……」
リースリットは聞いた事もない自分の声を聞く事になっていた。
領民に宝石のようだと称されたその抜けるような白い肌に朱色が差している。
肌を粟立たせるのは間違いなく不快感であり、寒空に浮かぶ汗は困惑を理由にしたものだ。
しかし……
(こ、こんなの……)
……知らない。知る訳がない。
箱入りのお嬢様は絡み付き、堕落を誘う蜜の味を何も知らない。
怖気立つ鋭敏な刺激が苦痛と紙一重の別のものでもある事を理解していない。
「っ、……あ、っぁ、や、やぁ――」
長い耳が苛烈な刺激にぴくぴくと動き、背を逸らした彼女の瞳の色は濡れている。
あ、そろそろやめときましょう。全年齢抜けかねませんし!
「~~~~~ッ!」
ゼフィラさん(Before)
「スライムらしいが、さてどうなるかな?
ま、普通に戦っても勝ち目はないようだし……
色々な手段を、例えばそう――逆に調教して言うことを聞かせてみるとか?」
魔砲を放ち、不敵に笑うゼフィラは転んでもただでは起きない研究者だ。
(サンプルとしてスライムの一部でも採取できないものか?
実に興味深い検体なのは間違いないし――)
こうなってしまえば、もう多少の被害は仕方ない。
それより何より知的好奇心を満たす方だ、と才媛はやはり手強いものだ。
ゼフィラさん(After)
「……ちょ、や、っ……そん、な……っ、まって……」
……と、まぁ前フリなんて裏切る為にあるようなもんである。
第一才媛だとか不敵だとか多少の被害は仕方ないとかそんなのどう見てもただのフラグだ。
あまつさえ古文書に『こちらの反応など、大部分の描写はお任せします。割と何でもOK』とかあれば、そりゃ当然さあ。食えない女子が大好きな俺が可愛いゼフィラさんv決めるのは当たり前じゃん? 小学生でもわかってる。
「……わ、訳のわからないことを……」
さて、どうなるかなと笑った彼女はこうなった。
実験だ何だはゼフィラさんで遂行されるし、むしろ彼女がアドベンチャーだ。
「……んぁ……っ……」
粘性の液体が彼女の形の良い頤を滑り落ちた。
ナイトメアパーティはこれからだぜ!
アーリアさん(Before)
「あぁ、早速一悟くんが悲惨なことに……これ、やるしかないのよねぇ?」
やや引き気味のアーリアお姉さん。
酔っ払って依頼を受けて気付いたら死地にいたお姉さん。
「ぬるぬるめかぶも、にゅるにゅるのもずくも好きだけどぉ……
汗でべたべたになりながらビールを飲むのも大好きだけどぉ……」
その美貌を何時にない困った色に染めながら、迫り来る敵に月雫ヴァイオレットをお見舞いする!
「でも、これはきらい」
上手なウィンクから流し目を一つ、アーリアさんは今日もよゆう。
でも飛沫がとんで顔に掛かれば「ぺっぺっ」と吐き出した彼女の顔は><。になる。
「あ、あれ? あらあらあら? なんだかからだが……」
アーリアさん(After)
「このふわふわして、あついのは……おさけねぇ?」
ぐでんぐでんのふわっふわ。
成る程、このスライムの陶酔は彼女の良く知る――アーリアの愛する酩酊にさえ良く似ていた。
寒空の下なのに肌は汗ばみ、動悸は高まり過ぎる程に高まっている。
その瞳をとろんと溶かした彼女は我が身を断続的に襲う些か強すぎる刺激にさえ、既に抵抗する気持ち自体を失っていた。
「……っ、そう、ん……そんな、感じで……」
それは彼女の愛するお酒であり、彼女の愛する温泉場のマッサージのようである。
声を出さずにいられない、漏らさずにいられない心地良い刺激はまさに誘惑。
(こんなのみでぃーくんに見られたら!
でも彼ならあえて報告書を目の前で読み上げたり、うっかり映像があったら家飲みの時一緒に見ましょうってそれを見せてくるかも? それで、どうだったのか言わされて、困った人ですねって……それであんなことやこんなことを……)
刺激に軽く妄想までキメてしまえばアーリアの背筋を悪い瘧が舐め上げる。
目の前に揺れるスライムが大好きなお酒にも見えてきて、茫洋とした彼女の濡れた唇が薄く開いて……あ、この辺でやめときます!
ユゥリアリアさん(True)
羽織ったパーカーを放り、するりとホットパンツを脱ぎ捨てる様はまるで羽化。
「ン……あらあら、そんなに、がっついて……」
火照った褐色の肌に痕を這わせるスライムの粘性が生々しい。
未だ余裕めいた唇から漏れる吐息は熱を帯び、同時に嗜めるようであるのは彼女(ユゥリアリア)が彼女であるが故か。Beforeを飛ばしてAfterスタートした彼女は伊達ではなく、
「っ、もう! 仕方ありませんねぇ……
一応貴族の出ですもの、閨房での技術はそれなりに教えは受けておりましてー」
貴族の子女は案外そういうの得意! というファンタジーは是か非か。
視線をあっちに逸らせば顔を真っ赤にしたリースリットたん(※貴族の子女)がすりすりされている訳だが、それはそれとして。初心でも逆でもドキがムネムネ、ワクがユメユメは間違いない。
大多数の読者と俺の期待通り、両手を広げてむしろそれを招き入れるような有様は煮詰まってきた煉獄に新たな変化を加えるものであり、これもこれで良いのでありました。
「ん、ぁ……そう、そうよ。順番に……」
拒まず容れてくれるとあらば、さしもの俺じゃないやスライムも紳士的に。
いやさ、そういうタイプから余裕を奪い倒すのも浪漫なのだが、それは次やった時に検討する事にいたします。
「よしよし」
今は触手(?)を撫でる彼女の優しさに溺れていたいの。
Erstine(Mach)
知的生命体には多くの場合、本能とも言える防衛意識が備わっている。
特に高度に発展した霊長の万物、人間とそれに類する存在は時に脆弱な己を補う為に、実に多くの知慧を獲得し、活かしてきた筈だ。
「攻撃が……効か、ない? そんな……ぅ、嘘……ぇ、に、逃げなきゃ……っ!」
即ち、三十六計逃げるに然ず。
逃げる判断が早かったErstineはこれまで辛うじてそれに捕まっていない。
しかし、甲板を縦横無尽に襲うスライムに既にErstineは軽く泣きそうになっていた。
(あ、あのぬるぬる……ぇ、と、とても気持ち悪いのだけれど……っ!?)
あっちを見てもこっちを見ても既に何人もがとっつかまり、一悟は海に浮いている。
「あー、いい感じだねぇ。ヒヒ、こりゃあ喜ぶ御仁も多そうさ!」
「武器商人さん!」
頼りのEXF100は怪異と同盟でも結んでいるのか何にも頼りにならないし。
「大丈夫、大丈夫。きっと綺麗に撮っとくからねぇ!」
「だいじょうぶじゃ、ないっ!」
貴方折角のEXF100を使いなさいよ出番でしょ! と思って見た所で、むしろ今後の禍根になりそうだし。
阿鼻叫喚の地獄の中、Erstineは早晩それがどうしようもない存在である事を理解した。
戦力云々の話では無く『世界がそれを望んでいない』。或いは破滅の神託と同じように――個の意志を圧倒し、上回る、結末への修正力が歴戦の仲間達を悉く面白おかしいへっちの波に攫っていた。
(こ、このままじゃ……!
でも、捕まってる方々を見るにこれは……っ……やっぱり捕まる訳には……っ!)
そう思ったErstineの視界一杯にスライムの極彩色が広がっていた。
息を呑んだ彼女は刹那囚われ、細い手足は戒めを受け、忖度しなかった彼女がお守り代わりに身に着けた『赤犬兵装』はあっという間に脱がされていた。
「ゃ、やだ――!」
思わず上げてしまった少女らしい――素の声は肌を晒した事によるものか。
それとも装備を取り上げられたからだろうか?
(この変なの、気持ち悪い……やだ……っ……
そ、それに何これ……触れた瞬間、あつ、い……気、が……っ)
全身にねとねとべたべた絡み付くスライムに唇をきつく噛みしめるErstine。
それの攻め手はまるで止まず、決壊したように表情を崩した彼女は遂にボロボロと泣き出してしまう。
「っ、ひっく……うぅ……早く、お願い。離して……うぅ、助けて……ディ……ク、さ、ま……」
……あ、ごめん。罪悪感よりぐっとくる。サドでごめん……ほんと……
●地獄とこれから
「……うわぁ」
眼前で広がる文字通り『どうしようもない光景』に卵丸はごくりと息を呑んだ。
一悟が瞬殺されたオープニング、何故か撮影を続けている武器商人、仲間の女の子達のくらくらするような声、姿の数々に少年の頭はもう煙を噴きそうだった。
「卵丸、何も見てない、見てないんだぞ!」
顔を真っ赤にしてぎゅっと目を瞑り、必死で虚空に言い訳をするも広がるは阿鼻叫喚。
助けようとしなかった訳ではない、しかし相手は余りに強大で。いや、それ以前に。
(ところでどうして卵丸は狙われてないんだ?)
話に聞けばえっちっちは男には激烈厳しい。それは空でサムズアップする一悟を見れば分かる事だ。自分は彼と同じように何故かビキニを着てここにいるのに、一体どうして?
「……え?」
そう考えた卵丸がそっと目を開けると目の前のスライムの一部(触手のように幾つも枝分かれしているのだ!)があろう事か『審議中』の札を掲げているではないか。
「……ちょ、どういう……卵丸、男! 男なんだからなっ!」
いや、分かってるってか。わざわざDBでも確認してきたんだけど、卵丸きゅんなら意外といけるかなあとか思って、ていうか武器商人たそも安全圏ーみたいな顔してるけど、何とかならないかなーとか思ってさ!
「……へ? 我(アタシ)も? ヒヒ、つくづく酔狂な御仁だねえ!」
焦る卵丸と満更でもない武器商人。
うーん、と悩むスライムがぶわさっと追加で触手を広げたのはこの一瞬の後の話。
「おやおや、積極的だねぇ!」
「いーやーだー!?」
――後に奥州一悟はこう語る。
「いや、どうせ出落ちみたいに終始雑に扱われる事は分かってたんだ。
でも、男としては『いいもの』見れたんじゃないかなーって」
そう、確かに伝説は観測されたのだ。
美少女、美女に不明に少年。お残しなく皆スタッフが美味しく頂きました。ごちそうさま。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
ふう、すごいしとうだった。
MVPはスッキリヴェンジで。
重傷は物理と精神ごちゃまぜです。
折角なので色々投げておきますね。
シナリオ、お疲れ様でした。
GMコメント
YAMIDEITEIっす。
大変な事件が起きました。
以下詳細。
●依頼達成条件
・えっちっちの消滅(何処かへ居なくなればOK)
●えっちっち
概念であり現象であり災害であり神意であるとされる海スライム。
今回は巨大なスライムの姿で現れますが、本当の姿がそれであるとは限りません。
海の男・女はそれぞれ違う理由でこれを禁忌と考えており、男はたまに役得とか役損だったりするのですがまあいいや。兎に角、近海に出現してしまった以上、対処するしかない存在です。
いちおー、これとたたかうのがいらいのもくてきです。
えっちっちの特徴は以下。
・男に対しての攻撃力が百倍になり、しかも最初の章で手早く殺る気で来ます。
・(外見が)若く綺麗なおねーちゃんが大好きです。
・十二歳以下の少女には倫理的、紳士的に行動します。
・女子のみ直接触れると心拍数が上がり、気分がどきどきして、身体が熱くなります。せりふ……が、んっ……ひらがなっぽくなり……きれ、ぎれだったりっ……といきまじりだったり……ちいさな『っ』とかさんてんりーだがたよ、うされたりするようになります……っ、ぁ……
・女子は出来たら水着を着てきて下さい。男は好きにしていいです。
・尚、不幸な事に参加者の全てが男性PCだった場合、えっちっちの戦闘能力は冠位七罪に匹敵するので、いいから滅びよ。
・気が済んだらどっかに行きます。済まないと行ってくれないので重要な依頼です。
以下攻撃方法等詳細。
・ぬるぬる
・べたべた
・にゅるにゅる
・ほしょく
・EX 冬でもビキニが見たくてやみ2019~KAIYO~
●ロケーション
近海での事件なので船上で戦います。
つまり逃げ場はありませんね、イレギュラーズ。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
●Danger!
当シナリオにはパンドラ残量に拠らず社会的に死亡判定が有り得たり、そこそこ愉快なトラウマを負ったり(女子)、そこそこ理不尽な暴力を受けたり(男子)する場合があります。
全年齢ですし、粗雑極まりない(多分)男子の扱いも含め、面白おかしく草生やせるリプレイを書く所存ですが、今回はその辺仕様と言わざるを得ないので、予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。
はあ! シリアス過ぎて困ってしまいます!
以上、宜しければご参加下さいませませ。
●重要な備考
<青海のバッカニア>ではイレギュラーズ個人毎に特別な『海洋王国事業貢献値』をカウントします。
この貢献値は参加関連シナリオの結果、キャラクターの活躍等により変動し、高い数字を持つキャラクターは外洋進出時に役割を受ける場合がある、優先シナリオが設定される可能性がある等、特別な結果を受ける可能性があります。『海洋王国事業貢献値』の状況は特設ページで公開されます。
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