シナリオ詳細
<青海のバッカニア>いざゆけモビーディック艦隊
オープニング
●海をゆけ、きっと世界は無限なはずだから
「ようローレット! またお前らと仕事できるたぁな、カンドーもんだぜ!
聞いたかよ女王の大号令! 俺たちの世代でついに外洋に出れるかもしらねえんだぜ? ッカー! 興奮するよなぁー!」
オーバーなアクションで語る彼こそ『船上街モビーディック』のメカニック。名を、ジャッキという。
船上街モビーディックとはその名の通り船の上に建設された街だ。
巨大な船タワーシップを中心に大小様々な船が連結され大海原に浮かび、農業や漁業その他による自給自足を実現している。
彼らの主な産業はサルベージ業であり、海を西へ東へ移動しながら海底に沈んだ古代遺産を引き上げている。
そんな彼らにとって『未知の海』は宝の山だ。
女王の大号令に対するリアクションも、(ジャッキのこれはオーバーな例だとしても)皆にたようなものなのだろう。
「そんなわけで俺ことジャッキさまも外洋遠征への露払いに参陣しようってハラなのさ。
海洋の海を俺ほど知り尽くしてる男もいねーからなあ! アッハッハ!! ――あ痛ッ!?」
モンキーレンチを握って高笑いするジャッキを、ツナギを着た赤髪の女性が後ろからチョップで殴り倒した。
「うちのバカが悪いね。こいつの妄言は聞き流してやって。
アタシはスパナ。こいつと同じメカニックだよ。
こいつら大号令ではしゃいじゃってさ、自分らもモンスター退治に行くんだってきかないんだよ。
けどアタシらの専門はあくまでサルベージだからね、以前みたいな艦隊戦闘をやるにゃあよその力を借りなきゃダメってわけさ」
かつてローレットは、今回のようにお宝目当てに人と小型船をかき集めたモビーディック艦隊(?)に協力する形で艦隊指揮をとったことがあった。
当時の敵は大量の幽霊船艦隊だったが……。
「幽霊船の次はゾンビ船さ。全く男どもはこれだから……」
●紅海のアナタトイ
外洋遠征とて今すぐできるわけじゃあない。
『絶望の青』に挑むにはまず『絶望の青』にまでたどり着かねばならず、至るまでの間に戦力を消耗してしまっては意味がない。
ゆえに、正義の露払いたちが参上するわけだ。
「今回ウチらが相手にするのは、『紅海のアナタトイ』っつー……なんていうのかね、船に乗ったモンスターたちさ」
スパナが広げたスケッチには、奇妙な珊瑚に侵食されたディープシーの船乗りたちが描かれていた。
「こいつらは死体と船に寄生するモンスターでね。珊瑚で補填した船で水底から上がってきては通り掛かる船を襲うのさ。
幸い、海底のことならウチらはプロだ。急浮上による奇襲なんてさせないよ。きっちり距離をとった状態で、フラットに戦いに入れる手筈を整えてみせる。
だからアンタらローレットはウチらの自称モビーディック艦隊とやらを指揮して欲しいのさ。
連中、数はいるけどこういう戦いにゃ慣れてないからね。『信頼できる象徴』ってのが必要なのさ」
信頼できる象徴。つまりは各船のリーダーだ。
リーダーに指揮能力があればあるに越したことはないが、ここで必要とされているのはローレットのイレギュラーズであるということ。つまりは奇跡への信頼なのだ。
今の自分に自身を持って、船に乗り込もう!
「海底探査隊の報告だと船の数は一緒くらいってハナシだ。
頭数もだいたい一緒。
あとはこっちの勢い次第だね」
「おうよ! 勢いの良さなら全世界の誰にも負けねえぜ!!!! 俺らとアンタが力を合わせりゃ最強だ! アッハッハッハハ――痛ぇ!?」
- <青海のバッカニア>いざゆけモビーディック艦隊完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2019年11月30日 22時30分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●船を出すときは、歌え
――ひだり みぎ ひだり みぎ
――うえ した うえ した
――潮目を読もう。
――それさえできれば、あとはもう寝ていればいいのさ。
『海淵の呼び声』カタラァナ=コン=モスカ(p3p004390)の歌が聞こえる。
海種たちだけで構成された小型船のチームは、『紅海のアナタトイ』が出現するという海域に向けて船を進めていた。
いや、彼女たちだけではない。合計八隻の小型船による『モビーディック艦隊』が陣形を組んで進んでいる。
なぜならば、この先に現れる『紅海のアナタトイ』とはこれまで無数の船を沈めては取り込み、その規模を拡大させてきた『モンスターの艦隊』であるからに他ならない。
「よーし、みんな! ボク達で一隻沈めるからね!」
船員に活力を飛ばしながら、『えいえいおー!』といって肉球ハンドを振り上げてみせる『雷精』ソア(p3p007025)。それに応えて拳や武器を振り上げる船乗りたち。
元々サルベージ業を主産業としていたモビーディックの民。彼女のパワフルな戦い方についてこれる屈強な船乗りは豊富であった。そのうちから気の合うメンバーを集めたのがこのチームである。
「アタナトイ……不死者とでも言うべきかしら。死んでなお海に漕ぎ出ようとする心意気はともかく、迷惑なものよね。もう一度海の底に沈めてやりましょう」
通信交換手(ファミリアーやハイテレパスなどの混合により遠隔通信手段をもった者)を多く乗せた船で、『斜陽』ルチア・アフラニア(p3p006865)は腕組みをした。
トントンと自分の腕を指でたたく。
彼女が元いた紀元前472年ローマといえば、ペルシア戦争から約二十年ほどあとの時代である。ペルシア戦争当時アケメネス朝ペルシア帝国の率いた不死隊(アナタトイ)はその名とは意味が若干異なり、他民族からなる大量の兵員による津波のような猛攻と、誰かが倒れてもすぐに代わりが前進するさまからその名がついたとされる。
「まあ、でも、珊瑚の怪物が死体に寄生するって意味では、『いくらでも交換がきく』兵士と呼べるのかしら」
「寄生するモンスター、珊瑚が本体なのかな?
なんにせよ興味深い生態だね。珊瑚の部分を剥ぎ取ってサンプルとして持ち帰りたい。
まあ、余裕があればの話だが……」
船の司令席に座り、双眼鏡を手に取る『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラ(p3p002101)。
操縦手一名とヒーラー二名、残るメンバーはすべて近接戦闘要員でかためた船である。
一方でその前を走るのは『自称未来人』ヨハナ・ゲールマン・ハラタ(p3p000638)の率いる小型船。
「野郎どもの皆さんヨハナがキャプテンです! なぜならこれはヨハナの船ですので!」
「「イエスキャプテーン!」」
酒瓶振りかざしてゲラゲラ笑う男たち。
ヨハナはいいぞいいぞーといって拳を振り上げた。
操舵手のボブを筆頭に、射撃を得意とする兵士が大半をしめるチームである。
できることなら敵陣に突っ込んで敵を自分の船ごと爆破したかったが……。
「スパナさんスパナさん。やっぱだめですか?」
「派手に吹き飛ばしたいって気持ちはわかるけどね」
スパナはカラカラと笑いながら工具で自分の肩をたたいた。
「そんだけの爆発物があるなら飛行爆撃でもしてるって話さ。まあ、そういうもんは作ったそばから『不在証明』をくらうのがオチなんだろうがね」
「残念ですねえ。『汚え花火大作戦』、楽しそうだったのに」
「ま、逆に船がそうそう沈まないように改造はしておいたから気を落とすんじゃないよ。この世の中、結局は自分のカラダで勝負しなきゃならないもんさ」
漁船を部分改造した(というよりほぼ転用した)船の先頭に立って、桐神 きり(p3p007718)は近づく海域の様子を眺めていた。
「死体と船に寄生するモンスター、船乗りにとっては正に悪夢そのものみたいな存在ですね。
下手を打ったら私たちも無事モンスターの仲間入り、と。
ま、そんな事には万に一つもなりませんけどね!」
振り返ると、ライフルを担いだ傭兵風の男や魔術師といった多様な面々がピッと指をあげて応えた。
『か弱い私を守れる、腕の立つ人大募集!』といって集めたらがっつり男らしい人々が集まってきたらしい。
「なんかこれ……オープンチャットで集めた即席パーティーでクエストチャレンジしてるみたいでワクワクしますね!」
「くえ……なに……?」
「ゲームの話ですよ、ゲームの!」
さて、メンバー集めといえば面白いことになったのが『堕天使ハ舞イ降リタ』ニーニア・リーカー(p3p002058)のチームである。
「海洋での船上戦は何回か経験してるけど、艦隊戦闘は初めてだなぁ。
ここは船員の皆の力も借りて頑張らないとね! よろしくねみんな!」
「まっかせて!」
ニーニアと同じくスカイウェザーのみで構成されたチームだが、共通点はそこだけではない。
モビーディック船上街はその立地上『郵便配達員』の重要性が高く、各船を飛行によって行き来し大量の手紙を一日に何度も動かす係が存在していた。
そんなわけで、今回のチームは『飛行郵便配達員チーム』である。
「海風のなかを上手に飛んだり、針の穴を通すように郵便物を投げるのなんてお手の物なんだから。このテク、活かしていくわよ!」
ビッと親指を立てて笑う配達員。背が高く赤い翼をもった黒人男性だが、どうやら心は乙女であるらしい。名前はモジラという。
船員には似たものどうしが集まることが、どうやらあるらしい。
『Punch Rapper』伊達 千尋(p3p007569)のチームも、そんな要素でできていた。
「よォし! オメーらは今から『悠久-UQ-』のメンバーだ! 俺達は――『悠久-UQ-』は絶対ェ仲間を見捨てねえ!」
「「応ッ!!」」
ぱっと見エモーショナルな男性ダンスチームみたいな連中が、キレキレの動きで拳を掲げた。
その中心となったのがジャッキである。
「俺ぁよ、ぜってービッグなドリームを掴むって決めてんだよ。頼むぜ兄弟、えぇ!?」
「任せなジャッキ! おめーも今日から『悠久-UQ-』切り込み隊だぜ」
太陽をバックにガッと拳を打ち合わせる二人。
「船はモーターをいじってブッコミ仕様にしてある。一緒に伝説作ろうぜ!」
「おう!」
「そんじゃあ行くぜ!」
ジャッキは船にくっつけた音楽再生端末(ラジカセ)のスイッチを押すと、エモいダンスミュージックを大音量で流し始めた。
●アナタトイと希望の船団
赤く染まった海の底から次々と珊瑚まみれの船が浮き上がってくる。
それぞれ魔術武装した無数の死体た乗船し、寄生した珊瑚状のモンスターによっで不気味に動作していた。
そこへ、大音量のミュージックを流しながら突撃していく千尋の船。
「思い出すなぁ。あるヤクザに俺らの地元が襲われたときは6人ぐらいで大立ち回りしたモンだぜ……俺も20人くらいはブッ倒したかな……」
「さすがだぜ千尋サン! 先陣きってくれよォ!」
「えっ」
「俺たちの手本だぜ!」
「えっ、あー、ふーん」
千尋は左右非対称に眉をゆがめた後、拳を突き出すようにして走り出した。
「よっしゃ行くぜ! 俺のマジな特攻みとけやァ!」
「「ウオオオオ!!」」
横一列の陣形を組みじわじわと接近してくる敵船団。
その中央へと突っ込み、正面からぶつかる千尋の船。船首像を破壊しながらごりごりと船体を削り合わせつつ、千尋は助走をつけて船の手すりを飛び越えた。
「オラァ『悠久-UQ-』のちひグオオオオオオオオオオ!?」
手すりに足をひっかけて頭からいった。
ごろごろと転がる千尋。
身構えた敵集団の中央へ仰向けに寝転がり。
「やっぱ俺、船もダメだわ」
「どうしちまったんだよ千尋サァン!!」
ただ言いたいだけの台詞を言いながら突っ込んでくる船員たち。
その一方で、ヨハナたちも同じ船に自船をぶつけて挟み込むと、千尋と同じ敵集団めがけて飛び込んでいった。
トランスミッションギアによる連続攻撃を狙って殴りかかるヨハナ。その援護のために射撃を開始する船員たち。
一方でほかの船は千尋たちを無視してずんずんと後続の船めがけて突撃を仕掛けていた。
「こっちに狙いを定めてきたわね。敵戦力を分散、各個で戦闘を開始!」
ルチアは船を動かし、すぐそばにいたソアの船とともに近づく船団中央へと接近。
ゼフィラおよびカタラァナの船は右舷側、きり及びニーニアの船は左舷側に展開し、それぞれの船を引きつけるように攻撃を開始した。
敵船団はそのうちルチアとソアの船めがけて四隻分の戦力を集中。
それを中央突破からの反転による各個撃破作戦とみたルチアは、自船Concordiaを操作して魔力の追い風を起こした。
「回復魔法で援護するわ。突っ込んで!」
「りょーかーい!」
ソアたちは船を加速し近づく敵船の一部へと体当たりを仕掛けた。
かかる衝撃をそのまま味方につけ、助走をつけてジャンプ。
ソアをはじめとする船員たちは雷の魔法やスタンロッドを用いてアナタトイの戦士たちへと殴りかかった。
アナタトイの戦士たちは対抗するように剣や魔力銃を抜き、ソアたちへと反撃を開始。両側面からぶつけるようにして挟み込んできた二隻の船が同じ船へと飛び込み、ソアたちを取り囲んでいく。
「囲まれちゃってる! 助けなきゃ!」
ニーニアがハイテレパスで伝達すると、ゼフィラたちがそれに応えた。
『攻撃を仕掛けて注意をそらす手もあるが……それだとかなり効果が薄いだろう。攻撃を受けたからといってその対象へ優先的に反撃しなければならない理由がないからな。それより、船にぶつけるなどして船そのものの進行を阻むのが確実だ。こちら側の二隻は私たちでなんとかする。そっちの一隻は頼むぞ』
「おっけー! みんな聞いた!?」
ニーニア船ときり船は左側の一隻に自分の船をぶつけるよう進路をとり、ゼフィラとカタラァナ船は右側の二隻にそれぞれの船をぶつける形で中央への合流を阻む作戦に出た。
「飛び込め」
砲撃を受けながらも船そのものを叩きつけ、アナタトイの船に体当たりをしかけるゼフィラ。
「新作の出来映えを試すいい機会だな」
乗り込んできた敵兵を相手に、ゼフィラはダークムーン作用をおこす薬瓶を甲板へと叩きつけ、魔術煙の拡散を引き起こした。
剣をぶつけ合って混戦状態になる敵と味方。
一方で、カタラァナの船もまた敵船と激突。流れ込んでくる敵を相手に応戦を開始していた。
「右舷船団、交戦を開始。こっちもいきましょう!」
きりが左目をつぶるとAR視野に半透明なコマンドウィンドウが展開。手をかざすことで『Magic Cannon』のアイコンをタップすると、オーブから投影される形で空中に出現した半透明な大砲を装備した。
「砲撃開始!」
「「砲撃開始!!」」
同じ船にのる仲間たちが一斉に砲撃を開始。
弧を描き飛んでいく砲弾がアナタトイの戦士たちに命中。
しかしアナタトイの戦士たちはカーブを描いてソアやルチアたちの船を狙って進んでいた。
「そうは――させない!」
助走をつけ、甲板を蹴るニーニアたち。
素早く中に浮び風をとらえると、アナタトイの船めがけて一直線に先行突撃を仕掛けた。
着地に先んじて改造保冷ボックスを投擲するニーニア。
周りの飛行郵便配達員たちも爆発物を内包した小包を投擲。船に爆撃を仕掛けていく。
追って、仲間の操縦したニーニアの船がアナタトイの船へと激突し進行を無理矢理に阻んだ。
飛行戦闘を継続するのは不利だ。甲板に着地し、ニーニアはフォトンメールをナイフのように構えた。手のひらサイズのメール配達ドローンが無数に空へ舞い上がり、ばちばちとスタンガンの電流を発して見せた。
「さあ、始めるよ!」
●船体の削れる音
船を捨て、海を泳ぐことでカタラァナの船へと乗り込んでいくヨハナたち。
縄ばしごを素早くよじ登り、船を用いて追ってくるアナタトイの戦士たちへと――ヨハナとスパナは同時に振り返った。
「船員の消耗が激しくなってきたねぇ。アタシは命張るような案件とは思えないけど、あんたはどうする、ヨハナ」
「そこは同感です! 命あっての物種ですしね! カタラァナさん! 船員をつれて撤退を頼みます! 追ってくる船の砲撃に気をつけて!」
カタラァナはヨハナの呼びかけに応じて船を加速。
追ってくる二隻のアナタトイ船から逃げ始めた。
引き離すまでは時間がかかる。無数の魔術砲弾がヨハナたちへと降り注いだ。
「じつはヨハナ、土壇場には強いんですよ!」
スパナたちをかばって砲撃を浴び、あえてぼろぼろになるヨハナ。さらなる砲撃に対して目を光らせ、魔術障壁を工夫して魔術砲弾を次々に打ち払った。
回復支援をはかるカタラァナとともに、追いかける船を少しずつだが引き離していく。
その一方で、複数の船に囲まれ突入を受けていたソア船と、一隻ぶつけられて混戦状態になったルチア船。
「みんな! まだいける!? あの船まで泳いで!」
ソアは傷ついて倒れた仲間を担ぐと、一緒に海へと飛び込んだ。
それを追いかけようと次々に飛び込んでくるアナタトイの戦士たち。
ソアは生み出した雷撃を海水ごしに発射して一人一人撃退していくと、ほかの仲間たちを先に逃がすべく塞がった。
「何してるの。撤退するわよ!」
船に乗り込んできたアナタトイの戦士たちを手すりから蹴落とすようにして、ルチアはソアにロープを投げた。
ロープにつかまり、船に引っ張られる形で雷電を乱射するソア。迫る無数の魔術砲撃。
ルチアは撤退してきた船員たちに回復を行うと、残る船にさらなる砲撃を浴びながらも海域からの撤退を進めていった。
状況は芳しくない。
味方の船は四チームほど撤退を始め、『紅海のアナタトイ』は追撃を始めている。
一方でこちらはアナタトイの船を二隻分まで撃滅。、追撃にかかろうとしているアナタトイの船へ割り込む形で味方の撤退支援を行うことになった。
「『全員死ぬまで戦え』とは言わないか。まあ、妥当な判断だ」
ゼフィラは船を滑り込ませながらもメルトヴァイスを起動。ブースターシールドを特殊な形で構えると、突っ込んでくる敵船めがけて勢いよく飛び出した。
手すりを飛び越え、海をまたぎ、敵船の甲板へと転がりながら着地。
「しばらく私の実験に付き合ってもらう」
ゼフィラは拳から飛び出すようにして現れた大きな毒針をアナタトイに突き刺した。
続いて飛び込んできた船員たちが、アナタトイとの戦闘に突入。
その様子を見て、ニーニアは仲間たちへと振り返った。
「モジラちゃん、船は任せていい!? 僕たちは仲間の支援に行く!」
「任せて頂戴! アンタ、死ぬんじゃないわよ!」
ニーニアの船の操縦レバーを握り、撤退にむけて加速を始めるモジラ。
一方のニーニアは攻撃ドローンを引き連れて飛翔すると、仲間たちと編隊を組んでアナタトイの船へと突っ込んでいった。
「みんなが逃げる隙を作るよ! 砲撃開始!」
はしる船の横から次々と矢文を発射する仲間たち。ニーニアの命令を受けた攻撃ドローンがアナタトイの戦士たちに張り付き、次々とスタンガンの電気ショックを浴びせていく。
「おっと、こういう場面になるとはね」
「皆さん、トドメの【必殺】攻撃は任せます!」
きりはコマンドウィンドウから威嚇術を選択すると、半透明なハンドガンを装備。敵船に飛び込みながら乱射していく。
そうしている内に味方の船は次々と撤退を完了。
残るは自分たちが逃げ切るのみだ。
「リーダー!」
「同じミスは二度しねえのが俺ってやつよ。多分な!」
手すりを華麗に飛び越え、アナタトイの顔面を蹴り抜く千尋。
「乱戦は地元で慣れっこなんだよォ!」
足払いで敵を転倒させると、素早く立ち上がって相手の顔面を踏み抜いた。
「おっしゃ次は……お?」
振り返る……と、アナタトイの戦士たちが次々と海へと飛び込んでいく。
どうやら一定の数が倒され、そしてこちらの船の大半が撤退したことで戦闘の必要なしとみて自分たちも撤退を始めたようだ。
「全滅させるにゃ至らなかったが、だいぶヤベえダメージを与えられたみたいだな。
でもってなにより……全員生きて帰る! これがサイコーよ! 帰るぜジャッキ、野郎ども!」
「「オーケーリーダー!」」
音楽を大音量で鳴らし、千尋の船が夕焼けをバックにはしっていく。
『紅海のアナタトイ』の完全撃滅には至らなかったものの、相当なダメージを与えたとして今回の作戦は終了。
船員たちはみな無事にモビーディックへと帰って行った。
敵を倒し、味方が生きている。いまはこれが、何よりも『よいこと』だった。
成否
失敗
MVP
状態異常
あとがき
――mission failed
海域で邪魔になるモンスター『紅海のアナタトイ』を一定数撃破したことで、残る作戦権を海洋海軍に移譲。その後無事に『紅海のアナタトイ』の完全撃滅が完了したそうです。
海軍の掃討作戦においてひとりも死傷者が出なかったことは、はじめにローレット&モビーディック艦隊が大きなダメージを与えていたからだとされています。
GMコメント
●重要な備考
<青海のバッカニア>ではイレギュラーズ個人毎に特別な『海洋王国事業貢献値』をカウントします。
この貢献値は参加関連シナリオの結果、キャラクターの活躍等により変動し、高い数字を持つキャラクターは外洋進出時に役割を受ける場合がある、優先シナリオが設定される可能性がある等、特別な結果を受ける可能性があります。『海洋王国事業貢献値』の状況は特設ページで公開されます。
■艦隊を指揮し、現れた『紅海のアナタトイ』を撃滅すること
こちらと同数の船と乗員による艦隊との艦隊戦闘です。
■船の指揮
8隻ある船にPCが一人ずつが乗り込み乗員の指揮を取ります。
乗組員は8~10人程度で、それぞれ指揮官の作戦やスタイルにあわせる形で装備や傾向が編成されます。
端的にいうと、プレイングに『こういう傾向のメンバーで編成したいです』と書けばOKです。(極端なステータス指定にはちょっと応えられないかもです)
船はモビーディック船団のものが用意されていますが、自前の『小型船』やギルドショップアイテム船があるならぜひそれを使いましょう。いい結果が出しやすくなります。
敵のステータス傾向はHP高めEXFやや高め、攻撃手段は主に『砲撃をしながら船を近づけて相手船に一斉に乗り込み近接戦闘でカタをつける』です。作戦の参考にしてみてください。
■船上の戦い
船の上はあまり広くありません。全長で大体20m程度と考えてください。なので同じ船に乗っている状態で使える攻撃手段がレンジ0~2に限られるでしょう。
また、わざと船を攻撃してもまあまあ沈まないものとします。
船の運転には誰かがあたる必要がありますが、運転しながらの戦闘も多少はできるものとします。
・参考シナリオ
船上街モビーディック
https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/1179
≪船上街モビーディック≫幽霊島の秘宝
https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/1393
≪船上街モビーディック≫アイランド・ダンジョン
https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/1715
■■■アドリブ度■■■
ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用ください。
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