PandoraPartyProject

シナリオ詳細

老婆の薬

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●とある裏通りにて
 古びた看板だけが目印の小さな酒場は、なかなかの賑わいを見せていた。
 不意に両開きの扉が開き、千鳥足の男が店から出てくる。男はふらふらと十数歩ほど道を行き、怪しげなカウンターのある場所で足を止めた。
 銅貨数枚をカウンターにどんと置き、男は言う。
「バアさん、いつものくれよ!」
「おい酔っ払い、ここでの礼儀を忘れたのかい?」
 その言葉は、カウンターからぬっと顔を出した老婆のものだ。その手は素早く銅貨を掴み、顔には得意気な笑みを浮かべている。
「ババア、もしくはクソババアと呼びな!」
 次の瞬間、カウンターには緑色の小さな薬瓶が置かれた。
「ああ、そうだったな。悪い悪い、クソババア」
 男はすぐに薬瓶を開け、一気に飲み干す。
「あー、飲み過ぎた時にはババアの薬だよな! 二日酔いにならないなんて最高だぜ。なあババア、この薬の材料は何なんだ?」
「ふん、具体的には言えんがね。材料なら西の森で調達してるよ。でもそろそろ在庫が無くなってきたからね、明後日から数日は店を閉めて材料調達に行くんだ。知り合いの酔っ払いがいるんならそのことを伝えておくんだね」
 鼻を鳴らす老婆に、男は真剣な顔で近寄った。
「おいおい、西の森には最近ゴブリンが現れるって話だぜ。一人じゃ危ねえよ。どうしても行くっていうなら……そうだな、ローレットに頼んだらどうだい? バアさんの薬が無かったら、安心して深酒が出来ないじゃねえかよ」
「……ったく、これだから酔っ払いは……」
「いや、でも、ゴブリンが相手とはいえ、バアさん一人じゃ流石に」
「アタシのことはババア、もしくはクソババアと呼びな! 明日はローレットに行くからね、そこから何日か店は開かないよ! 酒場の知り合いにも伝えといてくれ!」

●酒場にて
「美味しい酒はいいね。――飲み過ぎない限りは」
 悪戯っぽく笑って、『黒猫の』ショウ・ブラックキャット(p3n000005)はグラスに揺れる琥珀色の液体を口に含んだ。
「早速だけど、仕事の話といこうか。二日酔いによく効く薬を作っている老婆からの依頼なんだけど――薬の材料を調達していた森に最近ゴブリンが出るっていうんで、護衛と薬草採取の手伝いを頼みたいんだって」
 森に到着したら、すぐにゴブリンが姿を現す。その数、4体。全員が棍棒を手にしており、頭部を狙った一撃を仕掛けてくるほか、棍棒をぶん回して複数人にダメージを与えとするらしい。
「厄介な点といえば、このゴブリンは『弱い者を率先して狙う』性質があるということかな。まず間違いなく老婆を狙ってくるだろうから、どうやって彼女の身を守るかを考えた方がいいかもね。で、ゴブリンの退治が終わったら、薬草の採取だ」
 老婆が採取したい薬草は、葉が大きく裂けており、その裏は黄色い産毛が生えているという特徴をもっている。群生はしていないものの珍しいわけではなく、少し探せば難なく見つかる程度だそうだ。
「あとは……そうだな、老婆はちょっと気難しいところがあるみたいでね。『おばあちゃん』なんて呼ぼうものなら大声で怒鳴られるだろうから、そこも気をつけた方がいいかな? 以上、それじゃ頼んだよ」
 と、ショウはグラスを揺らして残る氷を鳴らした。

GMコメント

●GMより
雨音瑛です。
今回は、薬草の採取とゴブリン退治をお願いします。
以下、補足情報です。

●情報確度
Aです。想定外の事態は絶対に起きません。

●成功条件
15以上の薬草を発見して老婆に渡すこと

●失敗条件
老婆の死亡

●老婆について
70歳くらいの老婆。白い髪をひっつめて黒いローブをまとったその姿は、さながら魔女。
「ババア」または「クソババア」以外の名称でと呼ぶと「ババア、もしくはクソババアと呼びな!」ともれなく言われますが、照れ隠しの模様。

●薬草採取について
葉の裏が黄色になっている、ヨモギのような見た目をしています。
採取数は、キャラクターごとに1D6でGMが判定します。
ギフト・スキルの使用、プレイングでの工夫により発見できた薬草の数が増えます。

●敵情報
ゴブリン×4
棍棒を装備。弱そうな老婆を優先敵に狙ってきます。

頭部を殴る 物至単+暗闇
棍棒ぶんまわし 物近列

●森について
何の変哲もない、普通の森です。木やら茂みやらがあります。

●その他
リプレイは、西の森に到着したところから始まります。
キャラクターの口調がわかりやすいように書いていただけると助かります。

  • 老婆の薬完了
  • GM名雨音瑛
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年03月14日 20時50分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ルーティエ・ルリム(p3p000467)
ブルーヘイズ
ウィリアム・M・アステリズム(p3p001243)
想星紡ぎ
叶羽・塁(p3p001263)
此花咲哉
ゲンリー(p3p001310)
鋼鉄の谷の
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
神巫 聖夜(p3p002789)
オリーブ・ローレル(p3p004352)
鋼鉄の冒険者
穂波 九十九(p3p004811)

リプレイ

●老婆とともに
 木々や茂みが、ゆるやかに揺れている。
 この森のどこかにゴブリンがいて、訪れた者を襲う。
 この森のどこかに薬草があって、依頼人の老婆が欲している。
 それを意識し、 穂波 九十九(p3p004811)は両の手を挙げ、気合いを入れる。
「うーーっし! やるぞー!」
 そのまま頬を叩き、もういっちょ気合いを。
「人助けしてお金ももらえるなんて、素敵な仕事ですわねっ。よーし、頑張りますわよー!」
 と、『祈る暴走特急』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)もやる気十分。
「アンタたち、よろしく頼んだよ!」
「パワフルな婆さん……もといババアさんだな」
 『ブルーヘイズ』ルーティエ・ルリム(p3p000467)は、肩をすくめて老婆の前を歩く。
 ルーティエの隣を行く『鋼鉄の谷の』ゲンリー(p3p001310)は、そういえば、と振り返ってに老婆を見遣った。
「ババアの薬の効用は中々のものらしいの。行きつけの酒場にババアの薬を置いておいたら、喜ぶ奴は多そうじゃわい」
「ふん、欲しかったらそっちからくるんだね。アタシの薬はね、よそで販売するつもりはないんだ」
 そんな老婆の言葉を聞きつつ、ヴァレーリヤは主に足跡を探りながら前を歩く。
 九十九、ヴァレーリヤ、ルーティエ、ゲンリーのすぐ後ろには、老婆と『始祖』神巫 聖夜(p3p002789)。聖夜は老婆を気に掛けながらも周囲を視て、ゴブリンの襲撃に備える。さらには、ゴブリン遭遇時の自身の動きも常にイメージして。
 老婆の視線を感じれば、迷わず笑顔を向け、ぺこりと礼を。
「此度はクーソォ・ババーァ様の護衛と薬草採取のお手伝いをさせて頂きます。不束者ですが宜しくお願い申しますね♪」
 予想外の呼び方に、老婆は一瞬言葉に詰まった。だが咳払いをし、すぐに目を見開く。
「ババア、もしくはクソババアと呼びな! そんな名前はペットにでもつけるんだね!」
 そっぽを向く老婆であるが、何せ聖夜の身長はかなりのもの。聖夜に見下ろされ、老婆は仕方なしに正面を見て歩く。
 その2人の後ろをついて歩くのは、『此花咲哉』叶羽・塁(p3p001263)、『星を追う者』ウィリアム・M・アステリズム(p3p001243)、『特異運命座標』オリーブ・ローレル(p3p004352)の3人だ。
 つまり、イレギュラーズは老婆を挟み込む形で森を進んでいるのだ。
 酒場での話を思い返しつつ老婆の言葉を聞いていると、大分慕われているだろうことがわかる。
 呼び名に関してこそめんどくさいこだわりがあるようだが、話は判るし、気遣いも出来るのだ。
(何かあったらそりゃ悲しまれるだろうな……ちゃんと守ってやらないと、な。俺達で)
 元気に呼び方を強制する老婆を見遣り、ウィリアムは周囲を警戒する。
 老婆に近づいて護衛するように歩くオリーブは、頭部をしっかり隠す兜ごしに問いかける。
「おばあさん、歩く速度は大丈夫ですか? 早すぎませんか?」
「なんだい、ほとんど全員に言わないといかんのかい? ババア、もしくはクソババアと呼びなって言ってるだろう!」
 言われ、オリーブは揺れる。
 基本的に丁寧な口調を心がけるオリーブにとって、老婆を「ババア」などと呼ぶのはいかがなものか。しかし老婆は依頼人、依頼人の要望は叶えた方がいい。
 さらに揺れる。いや、希望する呼び方で呼んでも呼ばなくても、おそらく報酬は変わらないであろう。
 悩みに悩み、オリーブは着地点を見つけた。
「……わかりました、ババアさん」
「まったく、アンタたちは……酔っ払いだってもっと素直にアタシのことをババアって呼ぶよ」
 大きく溜息をつく老婆。
「おう、分かった! バーさん!」
 だから、と声を張り上げる老婆の前で、ゲンリーが立ち止まった。
「待て」
 ぴたりと止まってなお聞こえるのは、茂みの揺れる音と足音だ。
 足音は複数。さらに、揺れる場所が徐々に近づいてくる。
 聖夜とオリーブはいっそう老婆に寄り添い、一撃に備える。
 イレギュラーズは視線を交わし、武器を構えた。

●ゴブリンとともに
 ゴブリンは、正面から来た。茂みから飛び上がり、棍棒を手に迫る。
 真っ先に動いたのは、幸いなことに聖夜だった。すぐに老婆の手を引き、後方へと移動する。念のためにと『赤い糸』で老婆と自身を繋いで。
「し、しっかりやるんだよ!」
 ゴブリンの出現に驚く老婆は、それでもイレギュラーズに呼びかける。
「当然だ。仕事だからな」
 視線はゴブリンに向けたまま、ウィリアムは魔力を増幅し遠距離術式を発動した。
 同じ個体へ、オリーブも迫る。振りかぶったクレイモアの一撃は回避されてしまうが、向こうも何やら尋常ではない気迫は感じ取ったようで、鳴き声を上げながら顔を見合わせている。
「お婆さんの方は神巫さんに任せて大丈夫でしょうか」
「はい、お任せください♪」
 返答を聞くが早いか、塁が束ねるは死者の怨念。一条が、ゴブリンへと放たれる。
 やがてゴブリンの1体が飛び出し、棍棒を振るう。広範囲にわたる攻撃を受けたうちの一人、九十九は楽しそうに笑った。
「お! やんのかこんにゃろー!」
 そのまま名乗り口上を上げ、1体をマークする。
 続いてルーティエも名乗り口上を上げる。が、次いで口から出る言葉は。
「ひゃあ! ゴブリンさん達が出てきちゃいましたぁ! ひえぇ……誰か助けてください〜!」
 といった、えらくひ弱な少女を演じるものであった。ゴブリンは老婆とルーティエを見比べている。
「ようやるのう」
 呵々と笑い、ゲンリーは1体のゴブリンをブロックした。
「ギャギャ!?」
 ゴブリンは後退できぬ状況に苛立ちを覚えつつ、棍棒を振り回す。
「何のこれしき、ですわ!」
 痛みを覚えつつ、ヴァレーリヤは戦槌をゴブリンへと振り下ろした。手応えを感じて誇らしげな表情を浮かべ、戦槌を引き戻す。
 怒りを付与されたゴブリン2体は、それぞれルーティエと九十九の頭部へと殴りかかる。
 マークやブロック、怒りの付与で、ひとまず老婆に被害が及ぶことはなさそうだ。
 手番が来るたびに聖夜は老婆を連れて距離を取り、前衛の者はさらに怒りやマーク、ブロックでゴブリンを引きつける。
 そうこうしているうちにゴブリンと老婆の距離は、十分。それでも念のためと、聖夜は老婆のそばを離れない。
 つまり、ゴブリンと戦闘するイレギュラーズは7人、ということだ。
「怪我するのは嫌いだから早めにやっちまってくれよなー」
 防御に回りながら、引きつけ役を担うルーティエは耐える。
 とはいえ、戦闘は想像以上に長引いていた。
 優先して攻撃する個体について共有していなかったことが徒となっていたのだ。確かにゴブリンはあまり強いとはいえない個体だが、それでも戦術次第では不利になり得る相手である。
 苦戦しつつも、オリーブが振るった剣で何とか2体目のゴブリンが倒れる。
「よし、あと半分ですね」
「でも、このまま続行するのには体力が不安ですわね。大丈夫、回復ならちゃーんと覚えていてよっ!」
 治癒魔術を詠唱し、ヴァレーリヤはルーティエを回復する。
 塁は次の攻撃のために、瞑想を。
 ゴブリンたちはルーティエと九十九の頭部を、それぞれ殴りつける。
「……っ!?」
 想定以上のダメージが、九十九を襲う。そこで九十九の体力が尽きてしまったのは、積極的にゴブリンの攻撃を受けていたことも大きい。
「お主、大丈夫か!」
 膝を突く九十九を気に掛けながらも、ゲンリーは鋭くゴブリンへと踏み込む。戦斧を振るってゴブリンに一撃を与えれば、軽く浮いて地に落ちた個体はそのまま動かなくなった。
「九十九、状況はどうだ」
 回復が間に合わなかったことを悔やみつつ、ウィリアムは残る1体のゴブリンを杖で殴りつけた。
 1人が老婆を連れて後退したことで、老婆の安全は確かに確保できた。しかしその分、戦力が足りなくなったことは否めない。
 さらに一人が欠けた状態になるのは、九十九が望むところではない。
 だから九十九は、パンドラを使用した。すぐに身体に力が戻るのが、わかる。
「……大丈夫だ、まだ戦える!」
 変わらず快活な笑みを浮かべ、仲間とともに最後のゴブリンへと立ち向かう。
「冒険に危険はつきものだからな! 大丈夫。どんな壁だって、仲間と一緒なら乗り越えられる!」
 自身を鼓舞するように言った言葉は、仲間にも届いているだろうか。笑みを崩さず、九十九は再び前衛としてゴブリンに立ち向かう。
 最後の1体とはなっているが、このままの陣形で続行すれば消耗が大きくるだろう。そう踏んだ塁は素早く進み出て、近距離術式を放った。
「このまま一気に攻め入りましょう」
「おっ、そうだな!」
 九十九はマークを崩さず、ナイフでゴブリンを斬りつける。ゲンリーによる全力の攻撃も、ゴブリンを怯ませる。
 防御に集中するルーティエにゴブリンが攻撃を仕掛けると、すぐにヴァレーリヤが彼女をヒールする。続けざまに、オリーブも斬り込んでゆく。
 そんなイレギュラーズの猛攻を、老婆は遠くから眺め、時には拳を振り上げて応援していた。
「よし、その調子だ! 一気にやっちまうんだよ!」
「……わかってるよ、婆さん」
 呼び方を訂正する声が聞こえ、ウィリアムは小さく笑う。素直になればもっと薬の人気も出そうだと思ったものの、それは口にはせず。
 術式を発動し、ゴブリンへと撃ち込んだ。
 ゴブリンは強かに体を打ち付け、そのまま動かなくなる。
「ゴブリン討伐、完了ですわね!」
 ヴァレーリヤは涼の拳を握りしめ、快哉を叫んだ。
 聖夜の隣にいる老婆には、当然、傷ひとつない。安堵の息を吐くオリーブに対して、老婆は声を張り上げる。
「全員生きてて何よりだよ! さ、次は薬草探しだよ。説明するから、こっちに来な!」
 老婆に促され、イレギュラーズは1箇所に集まった。

●薬草とともに
 老婆は咳払いし、イレギュラーズを見渡した。
「集める薬草は、葉の裏が黄色になっているやつだ、間違えるんじゃないよ。生えやすいのは、木の根元だね。アタシが普段採取してるのは……そうだね、あのあたりだ。でもまだそんなに生えてきてないだろうから、今回は別のところを探しておくれ」
 老婆の説明が終わると、九十九はふらふらと森の中へ入って行った。
「裏が黄色っぽいヨモギみてぇなやつなー」
 落ちていた木の枝を拾い、葉をめくってゆく。
「あ、これ美味そうだなー」
 木の根元にはキノコや木の実も多い。しかし探すのはこちらではない、九十九はすぐに葉を枝でめくる作業に戻る。
 幸運に恵まれやすくなるギフト『ラ・パルカ』が効力を発揮したのか、目的の葉はすぐに見つかった。しかし念には念をと、ゲンリーに背負われている老婆へと駆け寄る。
「お! これとかそうなんじゃねーか? おーいバーさーーん!」
「だきゃらっ! ……だから! アタシのことはババアかクソババアでいいって言ったろう!」
「分かったって、バーさん! それよりさ、これで合ってるか?」
 と、九十九は先ほど採取した薬草を老婆に見せる。
「合ってるよ。この調子で集めるんだね。ジジイ、あんたはこの辺で探すんだよ。あの辺りの木に、きっとあるからね」
「小うるさいババアだと思っていたが、ここまで近くにいるとさらに小うるさいの……」
 溜息ひとつ、ゲンリーは言われた場所へ向かう。長柄の鎌で葉をめくれば、黄色いことがわかる。そのまま刈り取り、口の大きな袋へと入れた。
 すると次はあっちだのこっちだの、無傷な老婆の指示は相も変わらずやかましい。
「クソババア、元気ですわね! こっちにも結構ありましてよ!」
 手を振り、ヴァレーリヤは老婆に告げる。
「ずっと探してると腰を痛めるからね、適度に休憩しながら探すんだよ!」
「なるほど、それも一理ありますね」
 うなずき、塁は視線を落とす。すると、また誰かがババアかクソババア以外の呼び方で呼んだのだろう、老婆の罵声が聞こえてくる。
「本当に、元気なお婆さんですね」
 仲間が最初からババア、もしくはクソババアと呼ぶのだったら問題だと思っていた塁であったが、ほとんどがそんな呼び方をせず、安心していた。
 照れ隠しから来る怒鳴り声は、きっとやりとり自体も楽しんでいるのだろう。実際、老婆を見れば、ゲンリーに背負われながら「ババアもしくはクソババア」以外の呼び方で呼ぶ者を怒鳴りつけてはいるものの、表情はいきいきしている。
 それを確認して、塁は薬草を探すことに集中する。
 オリーブは、地道に薬草を探す。特に有用なスキルとギフトは持ち合わせていないからと、森に生える木の根元、そこに生える草を丹念に調べてゆく。
 ちまちました作業が好きではないというルーティエは槍の石突きで葉をひっくり返しながら探していた。
「なんせ商人とかからスリの方が早……いやなんでもない」
 咳払いをし、木の根元に生える草の葉をちょいちょいひっくり返してゆくルーティエ。見つけ次第近寄り、すぐに採取する。
 時間制限があるわけではないのだ、彼女もまた地道に探すつもりである。
「木の根元に生えやすい、か……そうなると、ファーマシー知識を使うまでもなさそうだな」
 つぶやき、ウィリアムは木の根元を調べてゆく。葉の感触は、存外柔らかい。めくれば、裏側は黄色。これだな、とつぶやいて葉をいくつか取る。
 直感とギフトによる触手を併用し、聖夜も採取に努める。
「ふふふ♪ お婆様を慕う酒場の殿方達の為にもちゃんと薬草を持って帰らないといけませんよね?」
 薬草を探す仲間とはなるべく距離を置いて、手広く探してゆく算段だ。

 そうして採取した薬草の数は、塁、ウィリアム、九十九が6、ゲンリーと聖夜が4、ルーティエ、オリーブ、ヴァレーリヤが3であった。
 規定以上の採取数となって、老婆は満足そうだ。
「長生きしろよーババアさん。そんで贔屓にな」
 老婆の手に薬草を乗せ、ルーティエが告げる。
「ふん、あんたも無茶しすぎるんじゃないよ」
 ルーティエがゴブリンとの戦闘で受けた傷を、老婆は痛ましそうに見遣った
「ところで……気になっていたことがあるんですけれど。クーソォ・ババーァ様のお名前を聞いても宜しいでしょうか?」
 問われ、老婆は聖夜を見上げる。
「……教えたら、ババアもしくはクソババアと呼ぶんだろうね?」
「お名前次第ですね」
 即答する聖夜に肩をすくめつつ、老婆は短く言い切る。
「ふん、それじゃちっとは期待してみようか。……アタシはね、バーバラっていうんだ」
 聖夜の反応を待たず、老婆は続ける。
「だから、ババア、もしくはクソババアで十分なんだよ!」
「はい、クーソォ・ババーァ様♪」
 聖夜の言葉に、老婆は大きく溜息をついた。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

ゴブリン退治と薬草採取、おつかれさまでした。
ババアの店にはまた薬が並ぶことでしょう。

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