シナリオ詳細
貴方色の六花を探して
オープニング
●森の魔法使いと森の女王
家の前に置かれた椅子に座って温かな紅茶を楽しんでいた森の魔法使いは、空から降る白い物に顔をあげた。
ひらり、ひらり、小さく冷たい、冬の欠片。
「初雪……」
温かな紅茶の温もりに、冬の欠片はすっと溶けて消えていく。
「そろそろ森の女王に挨拶に行かないと……」
数日もすれば、本格的に雪が降り始める。その前に森の奥にある大樹に、森の女王に挨拶に行かなければいけない。
冬になれば森は静寂の眠りに就く。その眠りを妨げないように、森を守るのが森の魔法使いの役目。
「今年はウサギたちがいるから、フェリクスについて来てもらうのは厳しいよねぇ……」
例年なら弟子のフェリクスに同行して貰うが、今年の秋から家に居ついた13羽のウサギの事を考えると、フェリクスはウサギたちと留守番して貰うのが良いだろう。
「うーん……」
一人で行くのは自分でも不安だし、フェリクスも許してくれないだろう。
「一緒に行ってくれる人を探さないと駄目かなぁ」
すっかり冷えた紅茶を飲み干すと、その冷たさに体が震えた。
●魔法使いの護衛
「魔法使いさんが、護衛って言うか一緒に森の奥まで行ってくれる人を探してるんだって」
フェリーチェが手に取った本は、前にも一度案内された世界。
森の魔法使いシルバと、その弟子フェリクス。それから角の生えたもふもふウサギたちがいる世界の本。
どうやら今回は、シルバが森の奥に行く際の同行者を探しているようだ。
目的地までは半日もかからない。用事自体は短時間で終わるので、一日で行って帰ってこれる。ただ、魔法使いは運動神経が皆無な上に、気になる物を見つけると簡単に心奪われてしまう癖があるから、寄り道しないように引っ張って行って欲しい。
護衛と言うより、寄り道しないように監視役じゃないかと誰かが呟く。
「目的地は森の女王と呼ばれる大樹。魔法使いさんの用が済んだら、女王の枝に積もった雪の結晶を探して持って行っていいんだって」
森の女王の枝に積もった雪の中、女王の力で色を変える結晶が現れる。
どんな色、どんな形の結晶が見るかるかはわからない。だけどそれは森の女王が目覚めるまで溶けない結晶。
大切な人の色の結晶を探しても良いし、好きな色の結晶を探しても良い。
「この世界に持って来ることは出来ないけど、魔法使いさんが預かってくれるからこの冬の間なら、いつでも見に行けるよ」
一冬の間溶けない六花。
貴方が気になる色を探してみるのはどうだろう。
- 貴方色の六花を探して完了
- NM名ゆーき
- 種別ライブノベル
- 難易度-
- 冒険終了日時2019年11月24日 22時45分
- 参加人数4/4人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 4 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(4人)
リプレイ
●女王と六花
ほぅ。と吐いた息が白く色づいて消える。
(初めての……世界でのお仕事。一度違う世界に来たとは言え、また違った世界に足を踏み入れるのは不思議な感覚やねぇ)
淡い白に色づく世界を見て、『暁月夜』蜻蛉(p3p002599)が静かに再び息を吐く。
「あったかい格好して来て良かった」
蜻蛉はいつもの和装とは違って、しっかり厚手の洋装。首に巻いたマフラーがあたたかい。
あたたかいと言えば『差し伸べる翼』ノースポール(p3p004381)もだ。明るい茶色系で纏めたコーディネートは、お洒落で胸元の花と手袋のシマエナガの顔が可愛らしい。
「蜻蛉さんのマフラーあったかそう」
「おおきに。ポーちゃんのふわふわコートもあったかそうやねぇ」
のんびり話をしていると、不意に勢いよくドアが開き、森の魔法使いシルバとその弟子フェリキス、そして冬毛でもふ度の増したウサギたちが姿を見せた。
「待たせてごめんね!」
「お待たせしました」
慌てるシルバとぺこりと頭を下げるフェリキスを見て、『死力の聖剣』リゲル=アークライト(p3p000442)は小さく笑う。
「また会えたね、シルバにフェリクス。今回もよろしくな!」
「リゲルが一緒で心強いよ。そちらのお嬢さんたちは初めまして。僕はシルバ。今回は女王の元まで宜しくね」
「はい。初めまして。みんな頼もしいから今日は安心してお仕事して下さいね」
代表して蜻蛉が挨拶すると、早速女王の元へと向かうのだった。
『月光』ロゼット=テイ(p3p004150)は初めての雪を楽しんでいた。
「この者砂漠で生まれ育った故に、雪を見るのも触れるのも初めて」
砂漠も夜になれば氷点下まで下がるが、同じ寒さでもさらさらとした砂と、ふわふわしゃりしゃりとした雪では手触りが大分異なる。両手をぐるぐる回してその違いを楽しんでいると、ロゼットの白い毛並みと真逆の、艶やかな黒い尻尾が動くのを目に捕らえた。
「シルバさん、寄り道は、お仕事してから!」
ふらふらと別の道に行きそうになっていたシルバを、蜻蛉の尻尾がポンポン叩く。
「ご、ごめん。見慣れない草があったからつい……」
「つい寄り道しちゃう気持ちはわかります。道中って気になる物がいっぱいですもんね!」
楽しそうに笑うノースポールに、シルバが「そうなんだよ!」と相づちを打つ。寄り道を我慢しているのはどうやらシルバだけではないようだ。
寄り道だけでなく、万が一のことを考えて武装を隠し持っていたリゲルが剣を握ることもなく、一行は目的地へとたどり着く。それは大人二十人でも囲めないほど大きな木。この森の女王。
「……これが……女王さん……。雪が積もって、きらきらして綺麗なこと……。こないに綺麗なの初めて見るわ」
大樹を見上げれば思わずため息も出る。だけど蜻蛉の猫耳はピンっと立っていて、初めて見る光景に、これから見つけ出す、まだ見た事のない景色に胸を踊らせているのが分かった。
そうしている間にシルバが女王の幹に触れていた。
「女王よ。今年も冬がやって来た。古の契約の元、眠りに就く貴女に代わり、貴女が目覚めるまで私が森の平穏を守ろう」
シルバの言葉に、女王の枝葉が微かに揺れる。
「大丈夫。彼らはフェリキスの代わりに私をここまで連れてきてくれた護衛。お礼に、六花を渡しても?」
再び枝葉が揺れ、シルバの前に緑の六花――雪の結晶が落ちて来る。
シルバはそれを落とさないように受け取ると、持って来ていた小瓶に入れる。小瓶の中で、六花が落ちきらずにふわりと舞う。
「綺麗……」
きらきらと微かに輝く緑色の六花を見て、ノースポールが感嘆のため息を漏らす。
「この者も綺麗と思う」
ロゼットもシルバの持つ六花をじっと見ている。
シルバは一人だけ六花を持っているのが申し訳なくなって、小瓶を取り出すと全員に渡す。
「女王の許可は貰えたから、好きな所を探して気に入った六花を見つけてね」
六花は女王の許しでありお礼。乱暴に扱うことは許されないけど、気に入った物を複数持って帰るのは問題ないと言う。
「有難うございます女王様」
女王の眠りを邪魔しないように、けれど敬意を持って短くお礼を言うと、リゲルは早速六花を探し始めた。
リゲルが探すのは、妻のポテトと、娘のノーラに似合う六花。
どんな六花が良いかと考え、思い浮かぶのは繊細で、花のような、見ていて優しくなれる六花。色は彼女の瞳の色のような綺麗な金色だろうか。
ノーラに似合う六花は、紫がかった銀色で、可愛らしい形でキラキラ輝いていそうだ。
そんなことを考えていると、白い世界の中に控え目に煌めく金を見つける。触れると崩れそうな、繊細で優しい色合いの金の六花。
そっと小瓶の中に落とせば、小瓶の中できらきらと優しく輝く。
「綺麗だな」
見ていると不思議と優しい気持ちになって、自然と微笑んでいた。
だけどリゲルが探しているのはこれだけじゃない。探したい六花はまだまだ沢山。
「フェリーチェは白くてふわふわした結晶かな。俺の結晶は、剣のように格好良いものがいいな!」
お目当ての六花を探して、リゲルは女王の枝を歩いて行く。
「不思議……こんな雪の結晶初めて」
地上に近い場所で目に付いた六花をそっと観察しているのは蜻蛉。
枝葉に積もっている大半は普通の雪なのに、時々色も大きさも、結晶の形も違う六花が混じっている。シルバ曰く「女王の力で変質している」とのこと。
戯れで触れると普通の雪は熱で溶ける。だけど六花は冷たいだけで溶けることはない。
「意地悪やねぇ」
溶けないけど刺すように冷たい。
そのことにくすくす笑うと、ふと欲しい六花が思い浮かぶ。
(夏空の下……光を受けて、キラキラ光る海色のような蒼い結晶……)
それは少し意地悪で、優しい、蜻蛉の心を掴んで離さない彼の色。
欲しい六花が明確になったなら、後はそれを探すだけ。
身軽に枝から枝へと移動して、やっと見つけた彼色の六花。その隣には、蜻蛉のような優しい黒い六花。
「一緒に並んで、つがいやろか? なんや恥ずかしいけど、うちの所に来てくれて、おおきに」
小さく笑って小瓶に入れると、赤い紐で彩る。
一つは自分の分だけど、もう一つはあの日、海を一緒に眺めた彼に渡したい。
柄じゃないって受け取ってくれないかもしれないけど、その時はどうやって受け取って貰おうか。
考えるだけでわくわくと胸が弾むんだ。
「六花とは、不思議なもの」
女王の根本で全身雪塗れになっているロゼットは、溶けることなく手元に残っている六花を見ていた。
普通の雪はもうとっくに溶けて消えたのに、真っ白な六花は変わることなくロゼットの手の中。
「雪の結晶も不思議な物。六角形の不思議な形。自然とこうなるのは、まさしく自然の神秘」
誰かが形作ったわけでもなく、自然と綺麗で、複雑な形になる雪の結晶。砂漠では見られないそれに、ロゼッタが夢中になるのは当然かも知れない。
こんな小さな、だけど不思議に満ちた物が空から降って来ると思うと本当に不思議で、ロゼットは思わず空を見上げて考える。
「雪は混沌でも場所によっては降るのかな。幻想にも降る?」
ラサでは見たことのない、雪が降るという光景。幻想にも雪が降るなら楽しみだと、ふさふさの尻尾が揺れた。
「帰りは雪だるまなるもの作りたい。でもその前に、この者、六花を小瓶に入れねば」
溶けないけれど、ひんやり冷たい六花。小瓶に入れればきらきらふわふわ、見る人を虜にする静謐な輝き。
下の方で探している三人と違って、飛べるノースポールは上の方で六花を探していた。
ゆっくりと羽ばたきながら、きらきらと輝く小さな六花たちに目を輝かせる。
「わぁっ、小さくて可愛い! こっちのは繊細で綺麗♪ こんなに沢山のバリエーションの雪の結晶を見るのは、初めてかも!」
うきうきとしながら様々な六花を見ていたノースポールが見つけたのは、エメラルドグリーンの六花。今は光が当たっているので淡く見えるけど、影を作れば深く見える青緑色。
形は華奢で繊細で、けれども不思議と力強くも見える不思議な形。普段はふわふわと可愛いけど、いざという時は頼りになって格好良い、ルチアーノの瞳のような、綺麗な結晶。
思わず魅入ってしまったノースポールは頬を紅潮させる。
「……うんっ。これがいい! これにしよう!」
壊してしなわないよう、そっと小瓶に入れて大事に抱きしめる。
「私の色の六花ないかな……」
見つけたら、一緒に並べて置くのだ。きっと綺麗で幸せになれる。
●思いを込めて
帰りはあまり遅くならない程度に寄り道をしたり遊んだりしながら帰って来た一行。
シルバは手に葉っぱを持っているし、ロゼットはミニゆきだるまを持っている。
「六花と一緒にこれも預かって欲しい」
ぱたぱたとしっぽを揺らすロゼットを見て、フェリキスは無言でシルバをねめつける。六花は女王の力で溶けないが、普通の雪で作ったゆきだるまは暖かくなれば溶けてしまう。
「出来るだけ、長く持つようにします」
それでも楽しそうなロゼットを悲しませることが出来なくて、フェリキスはミニゆきだるまを受け取った。
「それじゃぁ、六花はここで預かっておくよー。いつでも遊びに、じゃなかった。見に来てね」
それぞれ思い思いの理由で選んだ色とりどりの六花。
「どれも綺麗ですね」
「ポーちゃんのは、ルーク君とポーちゃん色で可愛いわ」
「蜻蛉さんのは大人な色合いで素敵です!」
「この者、どの六花も綺麗と思う」
思いを込めて、選んで、探して。
その思いの分だけきらきら輝いている。
「それじゃぁ六花はお願いします。また家族と遊びに来ますね!」
「私も婚約者と見に来ます!」
リゲルとノースポールが大きく手を振り、蜻蛉もそっと彼を連れてきたいと呟く。
それぞれの思いが籠った六花は、小瓶の中できらきら煌めている。
成否
成功
状態異常
なし
NMコメント
冬の始まりに、雪の結晶探しに行きませんか?
●目的
・お気に入りの雪の結晶を見つける。
シルバの護衛は気持ち程度で問題ありません。メインは雪の結晶探しです。
●雪の結晶
どんな色、どんな形の雪の結晶が見つかるかは皆さん次第。
どんな雪の結晶を見つけたいか教えてください。
恋人や大切な人の分も欲しいという方は、複数持って帰れるので気に入るのを探してください。
持ち帰り用の小瓶はシルバが用意しています。
●その他
弟子やもふもふウサギはお留守番なので登場しません。多分。
どんな雪の結晶が見つかるか、楽しみにお待ちしています。
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