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シナリオ詳細

ゴリドル・プリズン大脱走!

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●かくて創生の根は腐り落ちた

 かつて芸能界には4匹のゴリラがあった。
 ゴリラはやがてアイドルとなり、混迷を極めていた世界に歌と希望を与え、
 人々は訪れた安息の日々を享受した。

――その先に破滅が待っているとも知らずに。

『――では、次のニュースです。国民的アイドルグループ《ライハ48》の第一回・選抜総選挙の日取りと会場が決定しました!』
 冷たい雨が独房を叩きつける嵐の日、ノイズ混じりのラジオからMCの明るい声が響く。

 かつて4人の特異運命座標が名付け親となり、プロデュースしたアイドルユニット《ライハ48》は、
 今やこの世界では知らぬ者はいないほどの巨大なアイドルグループとなっていた。
 不動の人気を誇る初期メンバーを筆頭に、1期生、2期生とメンバーは急速に増え、
 候補生や‟支店ユニット”と呼ばれる地方の派生ユニットを合わせると、その数は600を越えるほど。

 その全てが見た目はゴリラ・頭脳はアイドルの乙女達である。
……表向きは。

「ウホ。ウホホウホ」

 おかしい、と独房の主は考える。
《ライハ48》の生みの親であるプロデューサー、ジョーク・グッドマン氏はとある事故をきっかけに意識を失ったまま、今もなお病院のベッドの上で眠り続けているという。
 ただでさえ風が吹けば容易く倒れてしまいそうだった弱小事務所が、唯一の舵取りを失ったにも関わらず‟たった数か月”でこうも簡単に息を吹き返すだろうか?

 もしもこれが、悪しき者達の陰謀によるものならば。

「……ウホ」

 確かめなければならない――《ライハ48》の初期メンバー、ゴリドル・カレンの名にかけて。
 両手を戒める鎖を掴み、彼女は決意を新たに独房で吠えた。

●囚われの歌姫
「脱獄不可能と言われる監獄。その最深部に囚われた歌姫を救い出すなんて――嗚呼、考えるだけで鳥肌がおさまりませんわぁ」

『境界案内人』ロベリア・カーネイジはぞくぞくと己の二の腕をかき抱いた。
 招集された特異運命座標の反応は様々だったが、次の話をしようとする頃には、悦に浸った表情が真顔に戻る。
「無論、ただ無茶をして来いとは言いません。あなた方が監獄に捕らえられて虐げられる姿を見るのも興奮しますが、
 この図書館で働く限り、私はあなた方の協力者。ですのであちらの世界に飛ぶ際に、ひとつだけ力を授けましょう」

――BANG★

 右手で銃のハンドサインを作り、ウィンクと共に特異運命座標の方に撃つしぐさをするロベリア。

「アイドルが支配する世界なら、アイドルらしい戦い方を。
 あなた達の《神対応》が、屍の山を築くのです」

NMコメント

 今日も貴方の旅路に乾杯! ノベルマスターの芳董(ほうとう)です。
 難攻不落、脱獄不可能なんて言われたら、攻略したくなっちゃいませんか?

※Attention※
 このシナリオはLN『ゴリラをプロデュース。』の続編となりますが、
 読まなくてもお楽しみ戴ける内容となっております。
https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/2111

●目的
 難攻不落の監獄『バナナトラズ』から囚われの歌姫を救い出し、全員で脱出する事。

●世界『偶像創生-アイドルヘヴン-』
 現代日本とほぼ変わらない世界です。違う所といえば、
 どんな服装や外見の異世界の人間も驚かずにすんなり受け入れてしまう事と、
《プロデューサー検定》で資格を得たプロデューサーが、無から偶像を作り上げる能力を持っている事くらいです。

 今回みなさんに潜入して戴くのは絶海の孤島にある監獄『バナナトラズ』
 厳重なセキュリティをかいくぐり、時には強行突破しながら最深部のカレンを救い出しましょう。

・バナナトラズ外周
 海です。スタート時はロベリアが手配したボートで漕ぎ着けたところからはじまります。

・Aブロック
 監獄の中で最も警備が薄い場所ですが、そこかしこに監視カメラがあります。

・Bブロック
 Aブロックの更に奥にあるフロア。厳重なセキュリティチェックがあり、来訪者が不審な人物でないか署名が求められます。

・Cブロック
 Bブロックの更に奥にあるフロア。恐るべき殺戮アンドロイドが徘徊しています。侵入者や脱獄者を見かけると、手に持っているビームソードで斬りつけてきます。

・最深部
 Cブロックを突破した先にある収監施設。今回の救出対象カレンが、檻の中で鎖をつけられ拘束されています。

●登場人物
 ゴリドル・カレン(通称:カレン)
 アイドルを生業としているゴリラ。通称ゴリドル。
 人気アイドルグループ《ライハ48》の初期メンバー。プロデューサーを血祭りに上げた罪で収監され、異様に長い刑期にも不満を言わず服役していたが、《ライハ48》の異変に気付いて脱獄を決意した。
 アイドルなのでちゃんと人語は通じるらしい。歯並びを活かしたアイドルスマイルに定評がある。

『境界案内人』ロベリア・カーネイジ
 今回の異世界へ特異運命座標を導いた案内人。呼ばれれば顔を出しますが、大したサポートは出来ません。

●その他
 今回の異世界訪問では、ロベリアが特異運命座標に以下の能力を付与しています。
《神対応で敵を倒す能力》
 ウィンクひとつで敵が吹き飛び、サインをもらった者は恍惚として倒れ、甘い言葉を囁けば誰もが昇天するという――。
 アイドルらしい「ファンサ」をする事で、尊みを感じたもの達を無力化できます。人も物も、いろいろ通用するので試してみてください。

 それでは、よろしくお願い致します!

  • ゴリドル・プリズン大脱走!完了
  • NM名芳董
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2019年11月24日 22時45分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

セティア・レイス(p3p002263)
妖精騎士
カレン・クルーツォ(p3p002272)
夜明けの蝶
ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)
氷雪の歌姫
綺羅々 殺(p3p007786)
あくきつね

リプレイ

●舞い降りた4人の女神達
 荒波の中でも、その砦は不動だった。堅城のごとくそびえ立つ大監獄『バナナトラズ』。
 難攻不落と恐れられたその砦に挑む者は誰もいない。
――この場に集う、特異運命座標を除いては。
「広大な海、ええ、ここが――彼女のいる場所なのね!」
『蝶かげろい』カレン・クルーツォ(p3p002272) はごくりと唾をのむ。緊張はしていても、その表情は朗らかだ。以前この世界を訪れた時にプロデュースしたアイドルのピンチ。その原因を作ったのは自分かもしれない。
「責任を感じてないわけではないわ。でもね、ありのままの貴女を受け容れたい気持ちは変わらないもの!」
「カレンさん(ゴリラ)も、カレンさん(人類)もわるくないっておもう。
 カレンさん(ゴリラ)は、《ライハ48》は、人類とゴリラの未来を明るくするアイドルだから」
 共にアイドルを助けた事のある『妖精騎士』セティア・レイス(p3p002263)がサングラス越しに目を合わせる。ニット帽も目深に被り、彼女はお忍びアイドルスタイルで監獄へと潜入していた。
「アイドルを脱出不可監獄に収監するなんて……意外と脱出してくるのを期待しているのかもー?」
 隣で呑気に話す『氷雪の歌姫』ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108) はというと、サイン会用の準備中。こちらはフードをかぶった地味ーな格好。イベントスタッフのような服装だ。
「皆すごいわね! 踏み込む前から隠し切れないアイドルオーラ……しかも殺さんなんか、最初から全力よ!」
 カレンに褒められ『九尾の狐』綺羅々 殺(p3p007786) は、その場でくるんと回ってみせた。
 和ゴスの魔法少女アイドル風の可愛い衣装が多くの目を惹きつける。
「な、何だあの美しい集団は!」
 侵入者に気付いた警備員が、老いも若きもばったばったと尊みの果てに倒れ伏した。
「どういう事だ、こんなの――」
「普通じゃない? この世界でそれを言うのかえ?」
 胸を押さえて悶絶する警備員に流し目をくれてトドメを刺し、殺はその屍を踏み越える。

 いざ、歌姫の待つ場所へ!

●神対応は止まらない
『バナナトラズ』第三監視室。警備員の最終処理場なんて蔑称がついた仕事部屋だ。脱獄を試みる囚人がおらず、昇進の機会がないのだから。
「異常なーし」
 膝の上にドーナツが入ったバケットを抱え、警備員は気だるげに点検を終えた。
 次はどれを食べようか漁っていると、無線のコールが邪魔をする。
『こちら第一監視室。場内に侵入者! だめだ、カメラを見ては――はぅッ』
『第二監視室も被害甚大! ッ……指さし、だ……と……』
 次々と途絶える通信。慌てて彼もコンソールへと指を滑らせたが、

『"Karen=Kruco"……っと。こうかしら?』

 顔 が い い ! !

 監視カメラのレンズにサインを書く美女の無垢な顔に、胸を射貫かれ意識が途絶えた。
「しかし、レンズ越しだと倒せたのか分からぬのぅ。見てる奴にテキトーに効果があるとよいのじゃが」
 別のレンズを相手する殺は、絶妙なアングルを即座に見抜き胸チラからの可憐なウィンクを食らわせる。そのファンサで第一監視室が壊滅したと気づかずに。
 2人共ただカメラ越しに神対応を振りまいているだけではない。カメラの数や位置を把握し、最も見られている場所を探り続けていたのだ。場所が分かれば、それはすぐさま残りの2人へ知らせられた。
「――聴いて」
 最も視線が集まる場所で、セティアはクールに宣言する。お忍び衣装とスタッフの服が豪快に脱ぎ捨てられ、どこからか流れるBGM。ゲリラライブは熱狂の渦を巻き起こし、監獄中に歌と希望を広げゆく!

「――ウホ」

 歌が聞こえる。魂を奮わせるような熱い歌が。
 
(どうかこの声が、歌が、アイドルとしてのカレンさまにも届きますように。
 きっと更に奮起してくださるはずですわー)
 周囲の視線を浴びながら、煌びやかな衣装でメリルナートは踊り舞う。軽やかなターンの瞬間にチラリと覗く生足は、そこから先が見えるようで見えない最強の絶対領域!
 悶絶する警備員の合間をぬって、4人は次のブロックへと走り抜けた。

「あ、看守さんですか?いつもお疲れさまです!」
 セキュリティチェックで署名を求められると、カレンはそれに笑顔で応じる。
「今日はプリズン☆散歩って番組で来ました。良ければ鍵頂いていいですか!?
 わ~、私、牢獄とか初めてです!」
 サインの受け取りを待つ間もファンを楽しませるよう、明るいトークを交えるのは彼女なりの気遣いだ。
「ずるいぞ、看守ばっかいい思いして!」
 彼女達の歌声と侵入の噂は、すでに獄中に知れ渡っていた。鉄柵ごしに手を伸ばす不埒なファンにも、メルリナートは等しく優しさを振りまいている。
「お好きなところに一筆したためますわー」
 サイン会をするだろうと準備していた彼女は実に正しかった。サインを書いてもらう場所に困った人へ、用意していた色紙が活躍したのだ。
「これでよい、のですよねー?」
 上目遣いと共に、きわどい衣装の隙間から零れ落ちる胸元のチラリズム。文字通りパンチの効いたファンサービスに粗暴な囚人もたじたじだ。
 少し離れた場所では、殺とセティアが別の檻に神対応を見せている。恥ずかしがってサインをねだれない囚人のため、気分をほぐしてやろうと殺が落書きを手渡したところだ。
「あーはいはい、ごりら、ごりらなのじゃー」
「殺さんの絵、奥深い」
「そういうセティアはどうなのじゃ?」
「わたしはサイン書いたよ」
 どうぞと手渡した瞬間、囚人が膝をついて泣き崩れる。理由を聞けば、推しているアイドルと名前もサインも同じなのだとか。それもその筈――彼が応援しているアイドルは、セティアがこの世界で育てた、アイドルのセティア(ゴリラ)だったのだ!
「あの子、ちゃんと誰かの希望になれてるんだ」
 一生懸命教えた側として、これほど嬉しい事はない。幸せを噛みしめるセティアの背後に、ゆらりと大きな影が落ちる――。
「――!」
 ころん。
 反応が早かったのは殺だった。人影とセティアの間に割り込むように転がり込み、頬杖をついてあざとく小首を傾げてみせる。襲撃者はバンッ! と爆発を起こし、煙を立ててショートした。
「殺戮アンドロイドのいるブロックまで進めたみたい。皆さん、気を付けて!
――あ、カレンです。《ライハ48》ではないですけど、よろしくエメスドライブ☆」
 どんなに可愛く語尾をあげても放たれたのは神秘術のガチなやつ。蝶が現れ幻惑し、アンドロイドの回路を焼きる。隣でセティアも握手しながら応戦するが、襲い来る数に大慌てだ。
「握手しきれない! ユゥリアリアさん、いまのうちにお願い!」
 声に応じて軽やかに、メリルナートは踏み込んだ。敵が振り下ろすビームソードを躱しながら――その挙動のひとつさえも演舞に上手く混ぜ込んで、魅惑のステップで優雅に誘う。
「ファンとアイドルが同じ舞台を共有という一体感、きっとアンドロイドにも届くと思いますわー」
 たとえ踊る動きが無くたって、手を添えリズムを合わせてやれば、きっと回路に――彼らの心へ届く筈だ。たどたどしくもビームソードをサイリウム代わりに降りはじめた新たなファンに、
「大丈夫ですわ、踊れなくてもわたくしサポートいたしますー」
 と彼女は女神の微笑みを返した。

……いける。
 盛り上がりを前にして、セティアの脳にひとつの可能性が閃いた。
「どうしたの? セティアさん」
「カレンさん。今ならカレン(ゴリラ)に届くかも。わたしたちの思い」

●覚醒の歌姫
 声が聞こえる。
 さっきよりも近くに、心揺さぶる歌声と、呼応するファンの声援が。

 最深部に囚われた歌姫――カレンの前に蝶の翅がはためいた。
 刹那、牢獄にいた筈の彼女は別の場所に立っている。眼前には光の海。サイリウムを振る観客たちの大きな波と、足元には広いステージ。
"カレン。貴方が『バナナトラズ』で考えていたことを教えて?"
 どこからか優しく降り注ぐ声に、ゴリドル・カレンはハッとした。忘れるはずもない。それは名付け親にして、全ての始まりを教えてくれたプロデューサー。
"何かの陰謀が渦巻くというのならばカレンPとして貴女を支えるわ。
 ええ、推しを応援するのがプロデューサーだもの!"
 ステージには、いつの間にかセティアが立っていた。まるで今まで前座に一曲歌いきったかのように、観客へ向けて両手をハートに可愛いポーズをキメている。
「歌って、カレン(ゴリラ)。この世界――任せたから」
 手を振りながら退場するセティアの耳打ちに、ゾクリとゴリラの野太い腕が大きく震えた。
 皆が見てる。客席にはかつてのアイドル仲間達と、寝込んでいたはずの生みの親、ジョーク・グッドマン。誰もが期待を持って見上げ、今かと歌うのを待っていた。

――そうか。これは私の"あったかもしれない未来"。《ライハ48》のメンバーとして、ライブステージに立った時の。

「……ウホ」
 許されるのだろうか、歌っても。
 罪を犯したこの私が《ライハ48》のために、歌と踊りで立ち上がってもいいのだろうか。
 胸に手を当てるゴリラの前に、見知らぬ女性がふわりと立った。
「カレンさま。
 貴方には待っている人たちがいて、貴方もそれを望んでいる。
 ならば迷うことはないのではありませんかー?」

 嗚呼、この声だ。私をずっと勇気づけていた歌声は!

「ウホホホッ! ウホ――!!」

 その日『バナナトラズ』はアイドルライブで壊滅した。
 4人の美女と1匹のゴリラの神対応に、牢獄の檻は崩れ去ったのだ。

 時を同じくして、とある病室。
「……私は、いったい?」
 何か幸せなライブを見ていたような。
 不思議な感覚に陥りながら、ジョーク・グッドマンが目を覚ました。
 闇に染まりかけた世界に、一筋の希望が差し込んでゆく――。

成否

成功

状態異常

なし

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