PandoraPartyProject

シナリオ詳細

急募:妹の生モノ同人誌を共に滅ぼしてくれる人

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●しふぉりぃの本
「この書物を描いたのは誰だぁ!!!!!」
 ある日、領民の誰にも見せたことのない形相でローレットに怒鳴り込んできた騎士は、幻想貴族アルテロンド家の当主、リシャール・リオネル・アルテロンドその人であった。
 普段のきっちりとした袴姿のこの男を一目見たならば、たとえ幻想貴族事情に詳しくない者であっても、その厳格そうな佇まいの中に、腐敗の最中にある幻想には珍しい自制と、領民に対する責務を第一にする貴族の姿を見て取ることだろう。
 だが今日の彼は、まるで怒りで我を忘れたかの如くであった。
「確かに、騎士としての誇りを貫く上で、心無い者らに謂れのない言説にて貶められることは少なくないが、それらはむしろ名誉でさえもある。……しかし、この書物に関してはその限りではない……これは我がアルテロンド家と領民らの名誉を毀損する、看過し難い愚弄であると断じる他はない!」

 その本は……リシャールの可愛い末の妹シフォリィ(p3p000174)を題材にした、いわゆる『生モノ同人誌』というやつだった。しかも18禁のやべーやつ。目に入れても痛くないほど可愛い末の妹が、オタクどもの卑劣な妄想の道具にされている――それを知ったリシャールの心中は、はたしていかばかりであっただろうか?
 ゆえに斯様な邪悪な書物など、この世から全て抹消されねばならなかった。必ずやこの本の作者を探し出し、著した報いを受けさせるのだ!
 だがリシャールはワビとサビに関してこそ免許皆伝なれど、モエ業界には造詣のない男であった。妹さえ可愛ければただそれでいい。故にこうしてローレットを頼り、特異運命座標らが彼らの卑劣を暴き、何らかの方法で報いを代行してくれることを願う……だがその時!

「ご安心くださいませアルテロンド卿! 彼奴らの販売ルートでしたら、このわたくしが掴んでおりますわ!」
 バンと扉を開けてその場に現れたのは、『俗物シスター』シスター・テレジア(p3n000102)! 彼女はどこからか『同人誌を委託販売する店』の情報を入手したらしく、無辜なる混沌各地に散るチェーンの在り処を事細かに記したメモを机に叩きつけたのである。
「作者ひとりを叩いたところで、第二第三の作者が現れるだけですわ! ですのでまずは流通経路を大々的に叩き潰してやることで、たとえ冗談のつもりであったとしても卿の名誉を貶めることがいかに許されざることであるのか、人々に広く知らしめるのですわ!」
「ふむ、流石は信頼すべきローレットだ。では、私はこの練達本店とやらを検めることとしよう。特異運命座標の諸君には、是非とも各国の支店をお願いしたい」
 右手をすっと差し出す貴族。
(安心するがいい妹よ。お前につく悪い虫は、この兄がアルテロンドに伝わる無手武術『表千家流サドー』の粋を尽くして、全て葬り去ってやろう……)
 同じく右手を返す情報屋。
(ふ……これでわたくしのぱんつのレギュラーアクセとしてのレアリティと売り上げを脅かす、にっくき同人誌どもを駆逐できますわ……)
 かくして両者は固く握手を交わし……またわけわからん依頼がローレットのコルクボードに増えたのだった。

GMコメント

 そんなわけでるうでございます。
 皆様それぞれ別の支店に単独で向かい、同人誌流通経路を壊滅させてやってください!(※建前)

●注意事項①
 この依頼は『悪属性依頼』です。
 成功した場合、襲撃した支店の所在国にかかわらず『幻想』における名声がマイナスされます。また、失敗した場合の名声値の減少は0となります……と言いたいところですが、それだけではないちょっと複雑な事情があるので是非とも最後までご確認ください。

●注意事項②
 この依頼は『姫騎士属性依頼』でもあります。
 皆様が店を襲撃しようとすると、どこからかオークみたいなオタク男女どもが阻止のため無限に沸いてくるので、リシャールほどの使い手でもなければ「やっぱり勝てなかったよぉ」って結果になると思います。
 じゃあどうやって依頼成功するの? って思った人は、次の『成功条件』の項目をご覧ください。

●成功条件
 アルテロンド家が同人誌に対して毅然とした態度を望んでいることを、無辜なる混沌各地に知らしめること。襲撃の成否問わず。
 つまり自分が誰の名代としてやって来て、どのような理由で何を断罪しているのかを皆様がちゃんと名乗れれば成功です。

●その他
 万が一支店を襲撃して勝利した人がいた場合、ローレットのショップや闇市から自分の同人誌等を取り除くことができる……かもしれません。何を取り除きたいかプレイングに明記しておいてください。
 一方で敗北した場合、負け方次第では襲撃した支店のある国での名声値がプラスされる可能性があります。依頼成功による名声マイナスも起こらないかもしれません。
 どういう負け方をすればそうなるのかは……お察しください。ちなみにPandora Party Projectは全年齢向けゲームです!

  • 急募:妹の生モノ同人誌を共に滅ぼしてくれる人完了
  • GM名るう
  • 種別通常(悪)
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2019年11月28日 22時45分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)
白銀の戦乙女
夜乃 幻(p3p000824)
『幻狼』夢幻の奇術師
冬葵 D 悠凪(p3p000885)
氷晶の盾
シズカ・ポルミーシャ・スヴェトリャカ(p3p000996)
悪食の魔女
ラルフ・ザン・ネセサリー(p3p004095)
我が為に
新田 寛治(p3p005073)
ファンドマネージャ
茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)
音呂木の蛇巫女
中野 麻衣(p3p007753)
秒速の女騎士

リプレイ

●背徳の街
 どうにも里帰りした気分になれない理由を探して、『氷晶の盾』冬葵 D 悠凪(p3p000885)は辺りを見回してみた。
 いやまあそんなことしなくても、原因は明々白々ではあるのだけれど。
 天義のとある教会に隣接する建物は、あからさまに場違いな“壁画”で彩られている。写実性をすっかりかなぐり捨てたアニメ調の絵。景観やら何やらを全力でどこかにぶん投げた建物は教会より多くの訪問者たちで満ちて見え、その様子からはこの街にひそかに蔓延る不正義の香りがどことなく窺い知られるところ。
 だが意を決し、悠凪は練達製硝子の扉を押したのだった。
 すると場違いな女騎士様の登場に、ある者は慌て、またある者は「なんだ、三次か」とでも言いたげに書棚に再び目を落とす。これは明白なる不正義の兆しであろう……ならば聞け! 悠凪の正義の宣告を!
「シフォリィさんとも少しだけ交流のあった身として、忠告しておきますよー。アルテロンド家はこれを認めてませんよー、ダメですよー非公式ですよー」
「「「うおおおお! 本物の女騎士様だああああ!!!」」」
 ……いきなり態度を変えて叫びはじめたオーク似の男らは、さっぱり悠凪の警告なんて聞いていなかった。むしろ「しふぉりぃの知人だってよ!」「薄い本が厚くなるな!」などと勝手に盛り上がり、異様な熱気にて彼女を面食らわせる。
 ぞくりとした予感が彼女の背筋を冷やした。もしも彼女が下手なことをすれば、きっとシフオリィと同じ目に遭わされてしまう! 絶体絶命の彼女には、はたして切り抜ける術などあるのだろうか? 誰かこの店に集まる不正義人どもに、ガツンと言ってやれる者はいないのだろうか!?

 そんな時……店内の奥まった一角で、まるで内臓をひっくり返したような悲鳴が上がったのだった。
「ななな何で御座いましょうかこれは……一体、どなたが複製していると言うのです……!」
 すっかり顔を真っ青にした『『幻狼』夢幻の奇術師』夜乃 幻(p3p000824)の視線の先には山積みの、『1/1聖夜乃幻のぱんつ』とかいう一見区切りの判らない商品名の小箱!
 ……ああうん。たぶん〔{聖(夜乃 幻)}のぱんつ〕っていう単語の結合順序だろうね。というのも箱の小窓から除く中身は、間違いなくかつて幻がぱんつ怪盗に盗まれて、いつの間にか闇市に流通しはじめたソレだから。
 何コレ。というかいつの間に聖人認定されたの幻。
「説明しよう! 天義では今日もどこかで雨後の筍のようにローカル聖人認定が行なわれ誰も全聖人の名前なんて把握してないのをいいことに、こういったセンシティブな商品に勝手に『聖』と冠しておくことで関所での検閲を『聖遺物なら仕方ない』で押し通す……うーん幻のぱんつZzz」
 誰も頼んでいない解説を滔々と始めた近くの男が、唐突に眠りに落ちるかのように昏倒した。逞しすぎる彼の妄想力は幻の奇術と相乗効果を発揮して、きっと幻のぱんつとあーんなことやこーんなことをする夢の中に彼を囚えてしまったのだろう……その具体的な内容こそ幻には想像だにつかないが、彼女が夢の中でおぞましき辱めを受けていることだけは疑いようもない!
「皆様、もし自分や家族、友人が18禁同人誌に描かれていたら、どう思われるでしょう?
 もし自分や自分の家族、友人のパンツが市場に出回っていたら、どう思われるでしょう?」
 説きながら自らのぱんつ(とされるもの)を片っ端から燃やしてゆく幻の凶行は、誰にも止めることなど不可能だった。店員も客たちも次々に彼女に殺到し……片っ端から夢の中へと囚われてゆく。
「ぐぅ……多勢に無勢の悠凪本……」
「むにゃ……拘束リョナ幻本……」
 確かに、幻は勝利したはずだった。だがはたして……それは真に勝利と言えるのだろうか?
 その問いに答えを返せる者なんて、どこにもいないに違いなかった。

●海洋流通本部にて
「!?」
 何か底知れぬ悪寒を感じて、『悪食の魔女』シズカ・ポルミーシャ・スヴェトリャカ(p3p000996)は体を震わせた。
「どうしました? “あの”アルテロンド家の方」
 メイド服を着、使用人のひとりとして海洋首都リッツパークの流通本部を訪れたシズカに対し、店員たちの応対はどことなく優しさを帯びている。そりゃあ仕方ない……だって銀髪クールメイドさんなんだもん。
 ……ともあれ。
 こほん、とひとつ咳払いして何でもない風を装うと、改めて件の本の販売差し止めを要求するシズカ。
「とにかく“あの本”に描かれている内容は、実在の人物を辱め、アルテロンド家の名を貶めるものです。同人誌を出すこと、それ自体に問題はありませんが――あなたたちがあの本を取り扱い頒布するということは、アルテロンド家の名を貶める行為に加担しているということに他ならないことをご理解ください。これは提案――いえ、“通達”です」
 しかし……対する店員たちは平然としたままで、口々にこんな言葉を漏らしただけだ。
「それがどんなものであれ、需要があるなら供給するのが我々海洋人ですからなぁ」
「相手が海洋貴族やらアーベントロート家なら我々も命が惜しいですが、ここはむしろ名が広まったと思っていただくのではいけませんか?」
 ああ、とても残念な回答だった。シズカとて、決して力で解決したいわけじゃない……けれど、アルテロンド家を想うのならば、どうやら手段はひとつであるらしい!
「邪悪を斬り裂く翠緑の風! 魔法戦士シズカ、参ります!」
 風がシズカを取り巻いて、全身を輝く光で包む。少女(少なくとも外見は)の胸元から指先・足先に向けて衣装が変わり、魔法のグローブが手の甲を覆い、麻酔煙霧(アネスティーズィー・ニーベル)が広がり不埒者らを麻痺させる!
「うわあああ! 同人誌コーナーで暴れてる奴がいるぞ!」
「誰か止めろ……いやむしろ俺が止める! 魔法少女たんぺろぺろするのぉぉ!!!」
 次々と広がってゆく屍(死んでない)の山を越え、ヤバげな人々の波がシズカへと押し寄せていった。一人ひとりの力は雑魚同然だとしても、物量が全てを越えてゆく。
「例え敗北し、この身が弄ばれようと――正義の刃は、折れません……!」
 そんなシズカの声は掻き消され、うねりの中へと消えてゆき――。

●ぱんつ解釈戦争
「――あの暢気な海洋相手でも勝てないのに、鉄帝で襲撃してクリアするとか難易度ヤミトメアでしょ! 私は平和的に行くわ平和的にね」
 誰へともなく吼えた後、『戦神』茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)はびゅーんと飛んでいってどんがらがっしゃーんと着地した。同人誌コーナーはクレーターに呑み込まれ、全てが瓦礫と化している……問:平和的 is 何? 答え:初手のインパクトで敵の戦意を喪失させること。
 だがそれが秋奈流の肉体言語だと言うのなら、同じく肉体言語で返すのが鉄帝の流儀であった……しかし。
「貴様……よくも俺たちの同人誌を滅茶苦茶にしたなパーンチ!」
「いい? 解釈の違いってやつを断罪してやるから聞きなさいギル♂パーンツ!」
 なんかヤバい秋奈の攻撃が、哀れな鉄帝国民を再起不能に変えた。秋奈の勝利の雄叫びは、獣のごとく辺りに満ちる!
「あなたたち! 奏ちゃんの本を書く時には、ぱんつは描写しないでね! ぶっちゃけリク文が滑っただけなんだけど、だからちゃんと水着のおイラも下をはいてないようにしてくれたたぢたんはえらいの。ちょうえらい!」
「そういうメタなこと言うのはやめろぉ!」
 さっきのとは別の誰かが殴りかかっていった。けれども……すーはー……リュミエのぱんつを存分に吸引した秋奈の二刀は、あっさりとそれを躱して峰打ちに処す!
「とにかく……その代わりなんでか私がぱんつキャラになったけど、あの娘のぱんつを描写してる薄い本があったら焚書よ焚書! 解釈の違いで荒れるってよくあるやつだから! 最新アニメのキャラは設定も見て描けってやつよ! あぁあと、クローンのカナデちゃんもはいてない設定だと捗るわね!! 私が!!!」

 その後リュミエのぱんつを吸引だけでは飽き足らずもぐもぐし終え、満足そうに立ち去っていった秋奈の後ろ姿を、鉄帝のマッチョなオタク連中は、圧倒されたままただ見送るほかできなかった……ぱんつは秋奈で奏ははいてない、その区別を脳裏に刻み込まされながら。ところでアルテロンド家の話どこいった。

●食らえ、触手パワー!
 そんな先輩たちの戦いぶりを『自称騎士見習い』中野 麻衣(p3p007753)がもし目にしたとすれば、彼女は力強く拳を握って、やっぱり自分の目指すべきは立派な騎士――すなわち『朝を呼ぶ剱』シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)であると誓っただろう。召喚前には想像するのが精一杯だった、自身が主人公らしくある姿。一転それが混沌肯定『レベル1』により、困っている誰かを救う力を――騎士の力を手に入れたのだ!
「幻想貴族アルテロンド家の当主、リシャール・リオネル・アルテロンド様の名代として、アルテロンド家と領民らの名誉を毀損する、看過し難い愚弄であるシフォリィ様の生モノ同人誌を断罪し撃滅すべく参上したっす!!」
 傭兵の戦太鼓もかくやという大声に反応してぞろぞろと現れたのは、いかにもそーいうのが大好きそうなキモいおっさんたち(※20代)だった。だけれど、怖気づく必要なんてない……だって麻衣にはこの鎧――なんかよくわからないけどカッコいい触手を生やせる寄生生物がいるんだものほぉぉぉん!?!?
「ち、違うっす……触手攻撃するのはあっちっすひゃぁぁぁん!?」
 突然お胸に絡みついてきた触手に驚き艶かしい声を上げる麻衣が騎士らしく振舞わんとするならば、こんな程度で負けられない! けれども……自分の力では耐えきれそうにない。だから、きもちよくなる薬×5でドーピング!
「負けても屈しはしないっす! カースドのお薬なんてこわくないっすよ!!」

 その後、彼女が「まら、しょくそーきひまいびやくにおちゅ、にゃんてうしゅいほんにははやいっしゅよぉぉ」とお目目ぐるぐるして倒れるまでは約1秒間であったと目撃者は語る……頑張れ麻衣! これを耐えれば君はきっと成長できるぞ特に揉まれたお胸とかね!!

●深緑の闇
 その頃――麻衣があれほど敬愛していたシフォリィは、まさに窮地の只中にあった。
「げへへお嬢ちゃん……俺たちを何だと思っているんだい?」
「ザントマンの手の奴らが幻想種の女どもを攫っていく間、止める勇気もなく皆があーんなことやこーんなことされる妄想をして過ごしてたのが俺たちだぜ? さあ、もう一度名乗ってみろよ……何の販売を停止してほしいのか、タイトルがはっきりと聞こえるようになぁ!」
 じりじりと狭まってゆく男たちの輪の中央で、頬を赤く染めたシフォリィが身を捩る。
「私の名はシフォリィ・シリア・アルテロンド! 我が兄にしてアルテロンド家現当主、リシャール・リオネル・アルテロンドの名代として、その……『シフォリィとアルテミアがゆりんゆりんする本』の販売中止を求めます!!」
 おお~(ぱちぱちぱち)。何故だか響く拍手と感嘆の声。そのことがシフォリィを惨めな気持ちにし、それがまた男たちの下劣な欲情に火をくべる!
「うおお! 新しいネタが降りてきたぞぉ!」
「お願いです……新作は是非ともアルテロンド家に献本させて下さい!」
「これ以上私がえっちな人みたいな本をお兄様に見せないで下さい!!!」
 顔を真っ赤に染めたシフォリィは、かくなる上はと剣を抜き、決死の突撃を企ててみせた。たとえいつの間にかギャラリーが増えていようとも、彼女とて立派な特異運命座標。この程度の敵に遅れなど取るつもりなんてない!
「私は姫騎士じゃないですけれど、貴方達には決して屈しません!」
 自らを奮い立たせる決意とともに突く剣は――しかし襲う羞恥に切っ先がぶれた。それがいい。ギャラリーどもはその繊細な機微を求めて、囲んでいた輪を中央に向けて一気に崩す!
「くっころなんてしませんからぁ……!」
 そんなシフォリィの声は喧騒に呑まれ、いつしか聞こえなくなっていった。はたして、彼女が無事であったのかは――おそらく神のみぞ知ることであろう。

●唾棄すべき悪その1
 おお、なんということでしょう! 特異運命座標らはシフォリィのえっちな同人誌の流通をストップさせようと各地に乗り込んだにもかかわらず、逆にえっちな同人誌が続々と増えてしまうとは!
 だが、ひとつの同人誌ジャンルが巨大化することが、そのジャンルに携わる者たち全てを幸せにするとは限らないものだ。その証拠に今宵、幻想のとある街角の部屋に集まって、何やらひそひそと相談をする者たちがいる。
「アルテロンド家が本格的にシフォリィ本の規制に乗り出したって話は聞いてるか……?」
「仕方あるまい。ジャンルが巨大化すればするほど、一般の目につきやすくなるものだ……」
「もはやこれまで……我々も、新規ジャンルに鞍替えする時が――」

「――お待ち下さい、サークルの方々」
 その時唐突に開かれた扉に一同が目を向けたなら、四角い眼鏡だけが輝くシルエットが廊下に立っていた。
「何者だ!?」
「ここの住所は奥付にも載せていないはず……アルテロンド家の手の工作員か!?」
 メンバーたちはざわめき合ったが、シルエットはくいと眼鏡を動かしてみせる。それから送付前の同人誌を1冊、無造作に手に取って……淡々と、しかし興味深そうに言葉を紡ぐ!
「確かに――私はアルテロンド家から対処の依頼を受けております。ですが勘違いなさらないでいただきたい……私が流通ストップを依頼されたのは、『この同人誌』でしかございません」
 そこで男は、流れるような所作で名刺を取り出した。
「私、PPP, Ltd.の『ファンドマネージャ』新田 寛治(p3p005073)と申します……是非とも貴サークルの同人誌について、弊社に出版権をご設定いただきたい。出版元が変わり、さらに本人同意済みの弊社出版物との合本という形になれば、摘発対象外であると言えるでしょう」
 同意してませんからぁ! 空の彼方でそんな悲鳴が聞こえたような気がしたが、幻聴なので誰も気になどしなかった。両者はすぐさま契約条件の確認に入り、互いに幾つかの質問を交わした後で、固く両手を握り合う。
「では、仮刷り版で問題がなければ、ショップへの販売停止連絡と新刊案内もこちらでしておきましょう――」

●唾棄すべき悪その2
 ――そんな屁理屈がはたして本当に通用するのかは、流水のように滑らかな武術にて並み居るオタクどもをばったばったと薙ぎ倒すリシャールの、鬼神のごとき姿を見て判断してもらうことにしようか。いかに相手が運動不足のひ弱な人間ばかりといえども、怒りに駆られて押し寄せる彼らを片っ端から無力化しながら、妹が破廉恥な姿を披露する同人誌を棚ごと素手で破壊する……その様は、どこか人間離れした殺戮機械をも思わせる。
「くそっ……売上を回収しに来ただけなのに、今日はなんて酷い日だ……」
 顔面を蒼白にした男の姿が、店の片隅に身を潜めて肩を震わせていた。その肩に――不意に触れた大きな手。ひっ、と彼が小さな悲鳴を上げたのも、この状況では致し方のないことだろう。だが――。
「安心したまえ。私は諸君に、ひとつの提案をしに来たのだよ」
 『ゲーム上手』ラルフ・ザン・ネセサリー(p3p004095)の何か企んでいそうな下種い笑みは、恐怖のどん底に陥った哀れな同人絵師には神々しい微笑みにも見えた。
「そう……シフォリィ君は、美しく気高い、確りとした模範的騎士なのだ」
 まるで聖人のようにラルフは語る。
 美しさ、そして清廉さ。そういった部分のモデルとして妹が使われる分には、リシャールもさぞかし満足することだろう。
 だとしても、そうでない部分を彼女に含めようと思うなら、シフォリィとアルテロンドの名誉を守るため、創作者としての線引きはしなくてはならない。
「そこで……破廉恥なキャラクター性を付与したければ、彼女をモデルにした、架空のキャラクターだということにすれば如何かな? つまり――。
 ――シフォリィ・シリア・アルテロンドという名でさえなければいいのだよ」
「妹を連想させる時点で許可できんわ!!」
 あまりにド正論なお叱りの言葉とともに、表千家流のオテマエのひとつ――殺人貫き手がラルフのこめかみを襲った。だがそれを上半身を反らして躱すと、いかにも心外そうにラルフは返す。
「世の中、あれは駄目、これは駄目、と締め出すのは容易い。しかし……時には度量と寛容さを見せるのも、御家のために、ひいては特異運命座標として活躍する妹君の後押しになると私は思うのだがね?」
 ああ言えばこう言うとはこのことだった。なるほどアルテロンドの今の繁栄は、その寛大さゆえに得た部分も少なからぬことやも知れない。んだけど……。

 こんなバーサーカー化した拗らせシスコン男にそんな理性的説得をしても、逆効果になる以外ないだろ!!!!

「ふむ……どうやら今回の戦争は、もうしばらく私を楽しませてくれるらしい」
 捨て台詞とともにとっとと逃げ出したラルフの後方で……同人誌販売店の練達本店は、ついに建物ごと崩壊を迎えたのだった。

成否

成功

MVP

中野 麻衣(p3p007753)
秒速の女騎士

状態異常

新田 寛治(p3p005073)[重傷]
ファンドマネージャ
中野 麻衣(p3p007753)[重傷]
秒速の女騎士

あとがき

 えーと。なんだかカオスなことになったので、とりあえず結論だけまとめておきますね:

●勝った
・リシャール・リオネル・アルテロンド

●勝ったのに負けた
・夜乃 幻(p3p000824)
・冬葵 D 悠凪(p3p000885)

●負けた
・シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)
・シズカ・ポルミーシャ・スヴェトリャカ(p3p000996)

●大敗北
・中野 麻衣(p3p007753)

●この後依頼人に闇討ちされる
・新田 寛治(p3p005073)

●強引ぐマイウェイ
・茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)
・ラルフ・ザン・ネセサリー(p3p004095)

 ……文字数足りねえ。

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