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シナリオ詳細

<YcarnationS>泥の番兵
<YcarnationS>泥の番兵

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 砂の都――。
 伝説に歌われし悪徳の都。
 人の命を弄ぶことによって栄えた、ラサのソドムとゴモラ。
 今は砂の底に埋もれしその場所に、八人の傭兵が偵察に訪れていた。
 ディルク派によるオラクル派攻撃の最中、突如現れたカノンと呼ばれる魔種。そのカノンの本拠地とされる場所がここ、砂の都跡地である。
 その遺跡と化した廃墟の中を、傭兵たちが進む。
「囚われた幻想種たちは確かにいた。だが――」
 一人の傭兵が声をあげた。傭兵たちは、囚われた幻想種たちの救出のための事前調査を行っていた。内部を調査し、未だ『グリムルート』……狂気の首輪をつけられていない者たちが存在することを確認した傭兵たちは、その脱出ルートを確立するため、さらなる調査を続行していたのだ。
「重要なのは、脱出ルートだ。ある程度の一般兵なら俺たちで散らせるが、魔種や大型のモンスタークラスが出てきたら、正直誰かを守りながらはキツイぜ」
 男の言葉に、一人の少女――ジェシカ・ランバートが頷いた。
「わかってる。幻想種の子たちは心配だけど、無茶はできないわ」
 無茶な行軍は、自分たちの身を危うくする……以前の戦いで、ジェシカはそれを痛いほど理解していた。
 身を引くことは、弱さではない。むしろ、自身の力の程を理解することが、真の強さへとつながる、そうジェシカは理解している。
「ランバートの嬢ちゃん!」
 別の傭兵が声をあげるのへ、ジェシカは視線を向けた。男が、遺跡の影から、先を覗き見ていた。ジェシカが行って、そこを覗いてみれば、砂の底から、二つの泥の塊がはい出てきて、溶けた人型のような形をとった。
「泥の、ゴーレム……?」
 ジェシカが呟く。そう、それは二体の、泥のゴーレムである。
「どうする?」
 傭兵の女が尋ねた。今ここで戦闘になったとして、二体のゴーレムを無事に捌けるか。
「……一度撤退。増援を連れて、出直しましょ」
 ジェシカは頭を振って、仲間たちに告げた。それは合理的な判断だと言えただろう。傭兵達は頷くと、一路砂の都より脱出した。


「というわけで……幻想種の子たちの救出ルートを作るためにも、泥のゴーレムを倒さないといけないの」
 ジェシカは、集まったイレギュラーズ達へと、告げた。
 ザントマン事件は、次なる展開を見せ始めた。オラクル派の壊滅により収束するかと思われた事態は、魔種カノンの出現により一変。
 グリムルートを利用し、多くの幻想種たちを連れ去ったカノンは、砂の都にて何らかの動きを見せる。
 結果、事態はディルク派、残オラクル派、カノン一派の三つ巴の様相を呈していたのである。
 とはいえ、そこに被害を受ける幻想種たちがいることに間違いはない。
 カノン一派に連れ去られた幻想種たちの救出のため、ルートを開拓していた傭兵たちは、そこで二体の、巨大な泥のゴーレムと遭遇したのだという。
「私たちだけじゃ、とてもじゃないけど手におえない。そこで、皆にも手伝ってもらいたくてね」
 この泥のゴーレムを撃破できれば、幻想種たちの救出ルートは確固たるものとなるだろう。逆を言えば、この泥のゴーレムを撃破できなければ、幻想種たちの救出は難しいという事だ。
「一応、私たち傭兵チームで一体、あなた達イレギュラーズで一体……って言うつもりなんだけど、私たちより、あなた達の方がずっと強い。だから、こっちは、あなた達が二体同時に戦う事にならないように、一体を足止めする、位の役目が精いっぱいだと思う」
 二体同時に戦うとなれば、イレギュラーズ達にとっても些か辛い戦いになるだろう。一対一に持ち込めれば、充分以上に勝機はある。
 一体目のゴーレムを速やかに倒し、消耗した二体目のゴーレムを、傭兵たちと共に撃退する。これが今回の作戦の、大まかな流れとなる。
「以上、こんな所かな? それじゃあ、手伝ってくれるよね?」
 ジェシカはそう言って、イレギュラーズ達に笑いかけた。

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 傭兵たちと協力し、泥のゴーレムを撃破しましょう。

●成功条件
 二体の泥のゴーレムの撃破。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●状況
 砂の都にて、二体の泥のゴーレムが確認されました。
 この泥のゴーレムは、幻想種たちの救出ルート上に存在するため、このゴーレムを撃破しなければ、幻想種たちを救出することができません。
 そこで、皆さんには、傭兵たちと協力し、このゴーレムを撃退してもらいます。
 敵のゴーレムは強力で、同時に二体戦うとなると、苦しい戦いとなるかもしれません。
 しかし、傭兵たちが一体を引き付け、足止めしてくれます。
 傭兵たちが壊滅する前に一体目のゴーレムを倒し、そのまま傭兵たちと合流し、残る二体目のゴーレムを倒す、というのが作戦プランになります。
 作戦決行時刻は昼。周囲には砂漠と廃墟のみが広がっています。

●エネミーデータ
 泥のゴーレム ×2
 特徴:
 砂漠の底を流れる地下水脈、その周辺の泥から生まれたゴーレムです。
 反応やEXAは最低ですが、生命力と攻撃力は非常に高いです。
 近距離~中距離をカバーする物理攻撃が主な攻撃手段。また、『泥沼』『乱れ』を付与するスキルや、弱いながらも自己回復能力も持っています。

●味方NPC
 ジェシカ・ランバート
 特徴:
 ニーニア・リーカー(p3p002058)さんの関係者。
 身軽な軽装ファイター。手にした槍が主な攻撃手段です。
 戦闘開始と同時に、仲間の傭兵と共に一体の泥のゴーレムを引き付けてくれます。
 充分時間稼ぎをしてくれますが、あまり時間をかけ過ぎると戦闘不能に陥るかもしれません。

 傭兵たち ×7
 特徴:
 ラサの傭兵たち。ジェシカと共に、もう一体のゴーレムを受け持ってくれます。
 前衛、後衛バランスよく配置されています。充分時間を稼いでくれますが、あまり時間がかかりすぎると、戦闘不能に陥る可能性があります。

 以上となります。
 それでは、皆様のご参加をお待ちしております。

  • <YcarnationS>泥の番兵完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年11月04日 22時40分
  • 参加人数 8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

鶫 四音(p3p000375)
カーマインの抱擁
ニーニア・リーカー(p3p002058)
堕天使ハ舞イ降リタ
矢都花 リリー(p3p006541)
壺焼きにすると美味そう
ルチア・アフラニア(p3p006865)
斜陽
ドロシー・エメラルド(p3p007375)
正義を愛する騎士
ウィリアム・ウォーラム(p3p007502)
軍医
メイ=ルゥ(p3p007582)
羊飼い
銀星 啓(p3p007687)
超常研究家

リプレイ

●泥はかたどる
 ――砂の都。
 悪徳に栄え、そして滅びたその地へ、イレギュラーズ達は足を踏み入れた。
 広大なその遺跡は、かつての繁栄を確かに思わせた。だが、その繁栄は多くの奴隷たちという商品に成り立っており、当時はさておき、今の価値観から考えてみれば、滅んでしかるべき地であったのかもしれない。
 かつての家屋は、今は散漫な壁となってあたりに散らばり、しかしその様は迷路のように侵入者の行く手を阻む。
 同行していた傭兵たちの手引きにより、イレギュラーズ達は一定のルートを進行していた。それは、現在砂の都にとらわれている幻想種たちを救出するためのルートであった。目的地へ、可能な限り最短を突っ切るルートである。
 道程は順調――だが、目的地まであとわずか、と言った所で、傭兵たちは足を止めた。
「……此処よ」
 声をあげたのは、傭兵たちのリーダー的存在である、ジェシカ・ランバートである。
 やや開けた、瓦礫により円形にかたどられた其処は、さながらコロッセオを思わせる。
「了解。確認するよ」
 『堕天使ハ舞イ降リタ』ニーニア・リーカー(p3p002058)は、頷いて、瓦礫の影からコロッセオへと視線をやった。
 果たしてそこには、二つの巨大な泥の塊があった。いや、よく見ればそれは、かろうじて人型をしている。流れ出る泥の腕をずりずりと振って、末広がりの泥の足がずるずると歩みを刻む。
 刻まれているデフォルメされた顔は、どこか可愛らしさすら覚えた――だが、彼ら泥のゴーレムだ。この場を守り、侵入者を容赦なく攻撃する、泥の番人であるのだ。
「ちいっ、マジででけーな……!」
 『軍医』ウィリアム・ウォーラム(p3p007502)が思わず声をあげた。その全長は、数メートルに達するだろう。図体ばかりがでかい……とはいえ、その図体に見合った強敵でありそうなことは、見てみればわかる。
「ふわぁ……やっぱり都会は凄いのですよ! 泥のゴーレムさん、初めて見ました」
 感心した様子でそう言うのは、『先手必勝』メイ=ルゥ(p3p007582)である。廃墟と化したこの地が都会であるのかは疑問が残るが、メイの故郷から見てみれば、この場所も充分都会に位置するのだろう。
「見事だ。……素晴らしい。あれほどのゴーレムを、水源も露出しないこの場所で使役するとは」
 メイとは違った方向での感嘆の声をあげる『超常研究家』銀星 啓(p3p007687)。アレだけのゴーレムを使役し、維持するには、相応の技術が必要となるだろう。
「で……見立てとしては、どう?」
 ジェシカが尋ねるのへ、頷いたのはニーニアだ。
「うん。一斉にかかられると、苦戦したかもね。協力して各個撃破……ジェスちゃんの判断は正解だよ」
 うんうん、と感心したように、ニーニアは何度も頷いた。
「ジェスちゃんが突っ走らなくて、僕は嬉しいよ……成長したねぇ」
 からかい半分に、ニーニアは温かな視線をジェシカへと向けた。当のジェシカは顔を赤くして、声をあげる。
「ちょ……い、今はそう言うこと言ってる場合じゃないでしょ!?」
「ははっ……あんまり弄ってやりなさんな」
 傭兵の男が一人――彼は副官的な立ち位置である――笑いながら、声をかけた。その笑いには嘲笑の色はなく、微笑ましいものを見る様相である。
「予定通り、一体はこっちがひきつける――が、アンタら程腕の立つ奴は、こっちにはジェシカ位だ。出来れば早い所合流してほしい」
「了解よ――いろんな意味で時間との勝負ね。余裕があれば、ゴーレムのスケッチでもしたかったけど。まさか神話生物をこの目で見られるなんてね」
 些か肩を落としつつ、『斜陽』ルチア・アフラニア(p3p006865)が言う。副官の男は笑った。
「悪いな。俺も戦いの様子をかっこよく描いてもらいたかったが」
「古来より、物語としては定番ですよね。守護者、ゴーレム――今回は、石像ではなく泥の塊のようですが、そこはそれ。くふふ、楽しい物語が描けたでしょうね」
 『カーマインの抱擁』鶫 四音(p3p000375)はにこにこと笑いながら、そう告げる。
「楽しい物語、か……でも、ゴーレムと戦い、囚われの人々を解放する。解りやすく正しい事だよね。変に人と戦うより、気が楽だ」
 『正義を愛する騎士』ドロシー・エメラルド(p3p007375)が告げた。混迷を極める今回の戦場において、確かにこの戦いは、ストレートに善行である事は間違いないだろう。
「ギルティ……」
 『壺焼きにすると美味そう』矢都花 リリー(p3p006541)が呟いた。
「誰か知んないけど、ゴーレム作った人ギルティ……」
 やどかりはキレた。いきなりキレた。
 こんな熱い砂漠で泥人形で泥遊びをする神経が、やどかりには解せなかった。
 そもそもこのような水が貴重な場所で泥人形を作り上げることも、やどかりには理解できなかったし、そもそもその泥人形と戦ったりしたら服が汚れるじゃないか。そうなったら誰が服を洗濯をするのか。おこである。おこである。めっちゃおこである。
「傭兵の人達もそう思うっしょ……?」
 リリーの、じとり、と音がしそうな視線が、傭兵たちを貫いた。
「えっ、あ、うん、そ、そうね! 許せないよね! ギルティ!」
 急に振られた話題にどうにかこうにかついていくジェシカである。
「そ、それはさておき! そろそろ始めようか!」
 ジェシカの言葉に、傭兵たち、そしてイレギュラーズ達は頷いた。些か和やかさもあった空気が、一気にピンと張りつめた。
「それじゃ、ジェスちゃん、この子をお願い」
 ニーニアが言うのへ、ジェシカは振り向いた。その肩に、小鳥が止まり、ぴぴ、と鳴いた。
「ピンチになったら、この子に声をかけて。そうすれば、僕に伝わるから」
「誰かが倒れそうになったら、すぐに声をかけてくださいね。すぐに駆けつけますから。どうせなら、皆立って仕事を終らせたいじゃないですか。ふふふふ」
 四音が続けるのへ、ジェシカは頷いた。
「同感。ニア達も気を付けてね! それじゃあ……行こう、皆!」
 ジェシカの言葉に、傭兵たちが声をあげる。
「さて、じゃ、俺たちもいくか」
 ウィリアムが声をあげ、イレギュラーズ達も返事の声をあげた。
 そして二つのチームは一気に、それぞれの敵へと向けて駆けだしたのであった。

●泥の舞踏
「先手必勝! 行くのですよ!」
 この時、誰よりも素早く動いたのは、メイである。ゴーレムはその速度に対応することができない。ゴーレムの反応力は最低ラインであったが、仮にこれが十人並みの反応力を持っていたとしても、メイの足元に遠く及ばないだろう。
 メイはその速度を乗せた手甲による一撃を、ゴーレムに叩きつけた。ばん、という音と共に、鮮血のように泥がまき散らされる。その服に、ほほに泥をかぶりながらも、メイの表情はキリッ、と、ゴーレムを見据える。
「ジェスちゃんと合流するためにも、さっさと片付けるよ!」
 ニーニアが放った、高速で回転する往復はがきが、ぴょん、と飛んだメイの脇をすり抜けて、ゴーレムの泥の腕を切り裂いた。
 途端、巻き起こる、豪炎。焔が、そして同時に発生した毒が、ゴーレムの身体を打ちと外から焼いた。
 一方ではがきは、往復の名の通り、空中で方向を変えると、ニーニアのもとへと戻る。泥の鮮血に端を濡らしながら、舞い戻るはがきを、ニーニアは二つの指でキャッチしてみせた。
「援護するわ! 一気に片付けましょう!」
「了解だ! まずは手早く決めてあげよう!」
 ルチアの援護術式を受けながら、ドロシーが刹那の疑似生命を生み出し、けしかける。
「此方もゴーレムと行こうか! 幻想種達の為、我々の信じる正義の為、このくらいで負けてはいられない!」
 ドロシーの言葉通り、近くの砂と瓦礫から生み出された小型のゴーレムたちが、泥のゴーレムの身体にしっかりと纏わりつく。
「Voooovovovo!」
 泥のゴーレムが、まとわりついた小型ゴーレム達を振り払うように身をよじる。
「ギルティ……ゴーレムの弱点と言えばぁ……」
 むむむ、と知識を思い出すように、リリーが言うのへ、啓は楽し気にその口角を釣り上げた。
「精霊使役か、あるいは魔法生物か……触媒がある可能性もあるな! 実に興味深い……奴はどのタイプか」
 戦場に飛ばしたファミリアーにより、戦場を、そしてゴーレムを俯瞰してみる啓。その観察眼が、そしてリリーの知識がゴーレムの種別をはじき出すのに、時間はかからなかった。
「たぶん、触媒タイプだねぇ……」
「だろうな。ならば触媒を狙えば……いや、だが、回収してサンプルとしたい所でもある」
「えー……めんどくさいから、とりあえずバールぶん投げるよぉ」
 言葉とは裏腹に、全力で投擲されたバールが、泥のゴーレムの身体を貫通する。VOOO! ゴーレムが雄たけびを上げたところへ、啓の放つ魔術の銃弾が突き刺さる。泥のゴーレムは大きく体勢を崩した。
「なに、可能な限り、だ。依頼の成功が第一とは心得ている……来るぞ、奴のターンだ」
 泥のゴーレムは身体を震わせ、VOOOO! 雄たけびを上げた! その身体から巨大な泥の塊が打ち出され、イレギュラーズ目がけて落着する!
「ちっ、威力は充分か!」
 泥のゴーレムを足止めしていたウィリアムが叫ぶ。その身を包む軍服が、泥に汚れた。
「お前ら、俺の後ろにいろよ! 攻撃は俺が抑えてやらぁ!」
「ならば、皆さんが負った傷は、私が回復しますので。安心して戦ってください」
 ふふふふ、と笑いながら、四音の放つ回復の輝きが、ウィリアムを包み、その傷を癒していく。
 幾度かの攻撃の応酬が、戦場を泥と汚した。
「ゴーレムさん、覚悟なのです!」
 速度を乗せた、メイの突撃がゴーレムの足を貫く。徐々にその傷口をふさぐべく泥が集まるが、イレギュラーズ達の猛攻の前には焼け石に水だ。
「一気に爆発させるよ!」
 ニーニアが手をかざすと、黒いキューブ状の物体が中空へと現れた。それが泥のゴーレムを包み込むと、内部に蓄積されたありとあらゆる苦痛が、泥のゴーレムの体内で爆発した!
「Vooooo!」
 その衝撃に、ゴーレムの泥があたりに散らばる。爆散した泥の中から、ちょうどゴーレムの顔の位置に、触媒と思わしき首輪の破片らしきものが見えた。
「あった……あれが、弱点!?」
 仲間達へと回復術式を飛ばしながら、ルチアが叫ぶ。
「だったら……さっさと壊しちゃおうかぁ……」
 リリーが勢いよくぶん投げたバールが、頭部の泥を弾き飛ばす。とうとうあらわになった首輪の欠片が、陽光を受けて鈍く輝いていた。
「これでフィニッシュだ!」
 ドロシーの放つ悪意の術式が、首輪の欠片を捉え、粉々に粉砕する。途端、泥のゴーレムが雄たけびを上げるや、その身体を元の泥へと戻し始めた。やがて少しの間に、砂漠の砂の上に、泥のたまりが生まれたのであった。

「皆、まだ大丈夫よね……!」
 泥の砲弾を回避しながら、ジェシカが叫ぶ。
 傭兵たちと泥のゴーレムの戦いも、未だ続いていた。傭兵たちは良く戦線を維持していたが、しかしその身体には多くの傷が見える。
「まだまだやれるぜ!」
 傭兵たちが虚勢を張るように声をあげる。彼らの言葉通り、まだもう少し、持たせることは出来るだろう。だが、そのラインを越えれば……。
 傭兵たちの脳裏に些かの弱気が浮かんだ時――突如泥のゴーレムの腕がはじけた。
 羊毛の塊の弾丸が、ゴーレムの腕を吹き飛ばしたのだ! 羊毛――羊の毛皮を翻し、中から現れたのは、メイだ!
「お待たせしましたのですよ!」
 同時に、傭兵たちの身体に回復の術式が次々と放たれ、その身体に活力が満ちていく!
「ふふふ、よく耐えてくれましたね」
 回復術式の主は、四音、
「ここから反撃よ! 一気に決めましょ!」
 そして、ルチアだ!
「イレギュラーズの皆……!」
 ジェシカが声をあげるのへ、
「ジェスちゃん、お待たせ! ここからの戦況は僕達が有利に整えるよ! ジェスちゃん達も一気に攻めて行こう!」
「ニア!」
 ニーニアが笑いかけた、
「もう、泥だらけになるのは勘弁だよぉ……」
 バールを放り投げて応戦するリリー。
「此奴の弱点は中身の触媒だ! 一気に削って破壊するよ!」
 ドロシーの放つゴーレムが、再び泥のゴーレムにまとわりつく。
「興味深い相手だったが、観察は充分だ。次は解体してみるとしようか」
 啓が放つ魔力の銃弾が、泥のゴーレムの泥を次々とはぎ取っていく。
 腕を振るい、反撃を試みる泥のゴーレム。しかしそれを、ウィリアムは受け止めて見せた。
「さぁ、こい! 最後まで粘って見せるぜ!」
「俺たちもイレギュラーズ達に負けるな! 根性みせろ!」
「おう!」
 イレギュラーズ達の奮戦に心突き動かされた傭兵たちが、一斉に攻撃を仕掛け始める。次々と繰り出される攻撃が、少しずつ、泥のゴーレムの身体をはぎ取っていく。
「ジェスちゃん、僕たちも!」
 ニーニアが、叫ぶ。
「おっけー、ニア!」
 ニーニアの放つハガキのブーメランが放たれるのに合わせて、ジェシカが駆けた。
 槍と、ハガキ。二つの斬撃が、交差するように泥のゴーレムに繰り出された。
 斬撃が泥をはぎ取り、中の触媒を抉りだす。
「泥んこ遊びはこれで、おしまい、なのです!」
 メイの突撃が、えぐり出された触媒を吹き飛ばした。触媒が粉々に砕けると同時に、泥のゴーレムが断末魔の雄たけびを上げた。次の瞬間、泥のゴーレムはばしゃり、と泥の塊になって、地に落下した。泥しぶきが、イレギュラーズ達を、傭兵たちを、汚した。

●泥だらけの終わり
「あ゛ー……あ゛ー……もう……」
 泥だらけになった身体を見ながら、不機嫌そうにリリーが声をあげる。
「皆泥だらけなのです!」
 仕事の終わった開放感からか、メイがにこにこと笑いながら、そう言った。
「ふ……ふふ、確かに、みんな、酷い格好」
 ルチアもくすくすと笑った。
「おいおい、俺は泥遊びなんて歳じゃねぇぞ」
 ウィリアムは泥だらけになった軍服を見ながら、肩をすくめる。
「くふふ、まぁ、こういう物語も悪くはないです」
 四音が笑うのへ、
「はぁ……これ、汚れとれるのかな……?」
 苦笑するドロシー。
「どうだろうな? 一度は魔術触媒に汚染された泥だ……ああ、一応サンプルとして回収しておくか」
 懐から小瓶を取り出して、身体に付着した泥を、丁寧にこそぎ落として回収していく啓である。
「だが……助かったぜ、イレギュラーズさん達。これで、幻想種たちの救出ルートを確保できた」
 同様に泥だらけになりながら、傭兵の男が声をかけた。
「それは……よかったねぇ……」
 ぶぅ、と不機嫌そうに、リリーは言った。
「でもでも、これでお仕事は完了なのですよ!」
 わーい、と両手をあげるメイ。楽しそうに泥をはね上げる。
「これからすぐに、幻想種たちの救出に向かうのかね?」
 啓が尋ねるのへ、傭兵は頭を振った。
「いや、これから救出チームに連絡を入れる。なに、そっちの方はイレギュラーズさん達の力を借りなくても大丈夫だ。任せてくれ」
「そう……なら、一安心、かな」
 ドロシーはほっと胸をなでおろすのであった。
「なら、とりあえずは帰って、風呂だな……宿に入れてもらえるかな、これで」
 ウィリアムが言うのへ、
「最悪、外で水浴びだけでもさせてもらいましょ」
 ルチアが微笑む。
「今度は人同士の感情のぶつかり合いも見たいですね……ああ、楽しみだなあ。くふふふふ」
 泥に汚れながら、四音は笑った。
「無事に終わったね……」
 ニーニアは、そう呟いた。ジェシカは泥だらけのニーニアの顔を見て、思わず、噴き出した。
「ニア、酷いかっこ」
「何それ! ジェスちゃんだって相当だよ」
 そう言い合って、二人は笑った。
「お疲れ様。ありがと、ニア」
「こっちこそ、ありがと。お疲れ様、ジェスちゃん」
 二人はにっこりと笑うと、ハイタッチした。
 その音は、砂漠の廃墟に、小気味よく響き渡った。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ご参加ありがとうございました。
 皆様の活躍により、幻想種たちの救出ルートは確保されました。
 程なく、救出チームによる作戦が決行され、無事に幻想種たちは救出されたそうです。

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