シナリオ詳細
<YcarnationS>砂塵の魔女
オープニング
●
「……砂の都、こんな所にあったなんて……」
ラウラ・イーグルトンはたまらず息を呑んだ。
ザントマンによる一連の事件について、独自の捜査を続けていたラウラは、突如として出現したカノン一派の本拠地へと迫る。
そこは、『砂の都』――伝説に歌われし、奴隷売買により栄えた悪徳の都。
今は廃墟が残る砂漠の一角。それこそが、カノンを名乗る魔種たちの本拠地であったのだ。
ラウラは意を決し、内部へと侵入する。廃墟たちならぶその地は、今は生命の気配に満ち満ちている――それは、内部に敵が潜んでいるという事の証左であった。
身を隠しながら、道なき道を行く。内部には、オラクル派より寝返った――というよりは、他に行く当てのなかったのだろう――商人や傭兵たちの姿が見えた。
(「確定ね……一度退散して、イレギュラーズの子たちに……」)
情報を伝達しなければ。そう思った瞬間である。
ラウラは背後に、何者かの気配を感じた。とっさにふりかえると、幻想種の少女の姿があった。敵か、味方か――一瞬の逡巡。ラウラはその末に、少女の首元を見た。
「グリムルート……!」
取り付けられたものを操る悪魔の首輪。であれば、少女は敵である。が、同時に、救うべき対象でもあった。
ラウラは走った。魔法は使えない。自分の居場所を宣伝するようなものであり、同時に目の前の少女の命の保証もできない。
ラウラは少女の脇を通り抜けると、そのまま走り抜け――ようとして、立ち止まった。
ラウラの前には、さらに複数の幻想種たち――すべてグリムルートを取り付けられている――の姿があった。囲まれた! 内心舌打ちをするラウラの背後から、
「お姉さんも、仲間よね」
幻想種の少女の声が、響いた。
狂気に汚染された、澱んだ声であった。
「大丈夫。怖くないよ」
少女の手には、悪魔の首輪があった――。
●
「少々まずい事になった」
と、イレギュラーズ達へとそう告げるのは、ディルク派の商人である。
ザントマン事件は、イレギュラーズ達の活躍により解決の兆しを見せ始めていた。だが、ここにきてカノンを名乗る『新たなザントマン』がその姿を現したのである。
カノン一派はグリムルートを使用し、オラクル派が捕らえていた幻想種たちを強奪。魔種たるカノンの呼び声をグリムルートより発信し、狂気の伝染源としている。
魔種たるカノンを放置していては、滅びのアークの増加は免れない……それ以前に、誘拐された幻想種たちの身の安全もまた、危うい。
ディルク派はイレギュラーズ達へと再度の協力を要請し、カノン一味の討伐を行う事となったのだ。
「ラウラ・イーグルトン……魔女としても名高き彼女が、敵に捕まった。いや、捕まっただけならまだいい。グリムルート……悪魔の首輪をつけられ、今は俺たちの敵として、立ちはだかっている」
グリムルートは原罪の呼び声のスピーカーと化している。狂気に当てられ、操られたラウラは、同様に操られた四人の幻想種たちと共に、砂の都の防衛の一端を担っているという事の様だ。
「グリムルートの影響下から解放するには、カノンを倒すか、装着者の意識を失わせるか、グリムルートを直接破壊するしかない。情けない話だが、カノンを倒すことはもちろん、あのラウラを相手に、俺たちではそのどちらも、無理だ。君たちに頼むしかない」
カノンそのものを倒せばグリムルートの機能は停止するだろう。だが、カノンを倒すためには砂の都へと侵入せねばならず、そのためにはラウラの存在は無視できないものとなる。
そして何より、長らく狂気にさらされた彼女が、魔種へと変貌しない保証もないのだ……こうなっては、一刻の猶予もない。
「ラウラが警備をしている地点はこちらで把握している。速やかに向かって、彼女を救出してほしい。最悪の場合は」
と、男は一瞬、言い淀んでから、頭を振った。
「いや、なんでもない、とにかく、対処してくれ。それでは、よろしく頼む」
そう言って、男はイレギュラーズ達へと頭を下げた。
- <YcarnationS>砂塵の魔女完了
- GM名洗井落雲
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2019年11月04日 22時40分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●砂塵
砂の廃墟を、イレギュラーズ達は行く。
その足取りは、決して軽くはない。
誰もが一様に、沈痛な面持ちをしていた。中でもとりわけ、『絵本の外の大冒険』アルメリア・イーグルトン(p3p006810)のそれは、非常に深刻なものであったと言える。
アルメリアの眼は、前髪に隠れて見えない。だが、きつく結んだ唇が、アルメリアの心情を物語っていた。
「アルちゃん……!」
『繋ぐ命』フラン・ヴィラネル(p3p006816)が、心配げに声をかけた。アルメリアはゆっくりと頷いてから、答える。
「大丈夫……ホントはまだ、見間違いじゃないかな、とも思ってるけど」
アルメリアは言う。情報によれば、今回の作戦の敵は、敵に操られたアルメリアの母、ラウラ・イーグルトンであるのだという。
母が捕まった――あまつさえ、敵に操られている。その情報は、アルメリア達にとってはにわかに信じられぬものであった。
だが、情報は確かだ。ラウラは一人、敵地へと潜入し、敵の手に落ちた。そして今は、砂塵の魔女として我々の前に立ちはだかっているという。
一行は意を決し、歩を進める。砂の廃墟を、かつての悪徳の都を奥へ。やがて開けた場所に出れば、そこには5つの人影があった。その内の四人は、少女や少年の幻想種たちである。そしてのこる一人は、確かに、アルメリアにとっては信じたくない顔であった。
「お母さん……」
アルメリアが呟く。
「あのひとが、アルメリアさんのお母様……?」
声をあげる『守護の勇者』ルアナ・テルフォード(p3p000291)。ショックに固まるアルメリアに変わり、頷いたのは『主無き侍従』オフェリア(p3p000641)だった。
「ラウラ女史……間違いありません」
「ああ……くそ、マジで捕まってたとはな」
続く『黒狼』ルカ・ガンビーノ(p3p007268)。二人は以前、ラウラからの依頼で共同戦線を張った間柄だ。
「加えて……マジで操られてるらしいな。雰囲気が違う」
ルカが言う。かつてはどこか、妖艶さの中に包み込むような優しさを感じたものであるが、今はザラりとした異質な感覚を抱いていた。
「グリムルートを介して呼び声を伝播……カノン・フル・フォーレの魔力の汚染、という所ですか……」
たいしたものですね、と、『黒のミスティリオン』アリシス・シーアルジア(p3p000397)が呟く。
「グリムルート……今はカノンの魔力もあり、さらに恐ろしいアイテムなっているようですね」
オフェリアが言うのへ、ルアナはその視線を、ラウラ、そして幻想種たちの首元へとやった。
悪魔の首輪が、そこに在った。
「……外してあげなきゃね。……痛い思いをさせちゃう。怖い思いもさせちゃう。けれど絶対絶対、助けるから」
ルアナは、深呼吸を一つ。剣を両手で握りしめた。あまりにも痛々しい幻想種たちの姿は、直視するに忍びない。だが、視線をそらすことは出来ない。そらせば、彼女たちを救うことは出来ないだろうから。
「行こう……ラウラさんも、皆も……助けるんだ」
『疾風蒼嵐』シャルレィス・スクァリオ(p3p000332)が言うのへ、仲間達は頷いた。
「必ず……全員、助けましょう」
ネーヴェ(p3p007199)がそう言った。仲間たちの思いは、今は一つ。
救うべく手を差し伸べた優しい人を、必ず救い出すのだ。
一行は武器を構えると、一気に戦場へと飛び出した。
●砂塵の魔女
「お母さん……!」
一同は、砂漠の廃墟にて相対した。アルメリアの悲痛な叫びが、砂の都にこだました。
「あら、アルメリア」
妖艶に――ラウラは笑った。
冷たい笑みだった。
「まさか、あなたが来るなんてね。どうしたの? お母さんが恋しくなっちゃった?」
口調は穏やかに。しかしその言葉にのせたザラザラとした砂のような感覚に、一行の皮膚が粟立つ。
そのたたずまいはまさに魔女――砂の都を守る、もう一人の砂塵の魔女であった。
「……最初は、信じられなかった。お母さんが捕まるなんて。でも」
アルメリアは、その前髪の隙間から覗く眼で、強く、母を見据えた。
「私が、私たちが助けるッ! お母さんを! 皆を!」
その言葉を合図に、仲間たちは一斉に構えた。明確な攻撃の意志を向けられてなお、魔女はくすくすと笑う。
「子供ね……何でもできると思ってる」
ザラザラと、魔女の背後に砂塵が舞う。ひどく冷たい砂であった。
「あなた達は可能性の塊なんでしょう? ……妬ましかったわ、アルメリア。貴方はきっと、私なんかより強くなれる。それが、気に入らない」
「言うまでもないと思いますが、本心ではありませんよ。原罪の呼び声に引っ張られているだけです」
オフェリアが声をあげる。大元である魔種、その性質は嫉妬――なれば、ささやかに羨ましい、と思ったそれですら、強烈な嫉妬の炎へと変貌させられてしまうだろう。
「わかってるよ。アルちゃんのお母さんは、そんな情けない人じゃない」
フランの言葉に、アルメリアは頷いた。母はきっと、アルメリアが自分を超えることを望んでくれているだろう。それを喜びこそすれ、妬むことなどは決してない。
「貴女はもっと大きかったぜ……色々とな。だから、許せねぇ。貴方を小さくまとめちまったその首輪がな」
魔女は笑う。
「あら、助けてくれるのよね? あなた達が――やってごらんなさい」
砂塵が巻き起こる。嵐のごとくイレギュラーズ達へと叩きつけられる、無数の砂礫。それは攻撃ではなく、逆巻く魔力の奔流により生み出された副次効果に過ぎない。
「装着したものの魔力にも干渉し、変質させる、と言った所ですか。今まさに彼女は砂塵の魔女であるのでしょう」
砂風にスカートのすそをはためかせ、アリシスが言う。
「こんな冷たい砂なんかに負けない……! 私の剣は、誰かを守るための、助けるための剣だからっ!」
シャルレィスが刃を掲げ、叫んだ。
「わたし達で、絶対に助ける!」
ルアナは、勇者は高らかに宣言した。
「参りましょう、アルメリアさん」
ネーヴェが声をかけるのへ、アルメリアは頷いた。深く深呼吸を一つ。
「きっと助けるからね、お母さん……。フラン、皆。お願い、力を貸して!」
応! 仲間たちは声をあげ、一機に砂塵の中を駆けだした。
「うふふ、いらっしゃい、お馬鹿さんたち」
ラウラがその手を掲げると、渦巻く砂塵が刃となって、イレギュラーズ達へと叩きつけられた。まとわりつく砂礫は刃と化してその身を切り裂き、砂は意志持つようにイレギュラーズ達の口元を叩きつける。
「くっ……なんて冷たい魔法なの……」
アルメリアが叫んだ。
「こんな魔法、お母さんの魔法じゃない! お母さんの魔法はもっと、あったかい魔法だもの!」
「あらあら、これが私よ、アルちゃん?」
「少し痛むかもしれませんが、ご容赦くださいね」
オフェリアはラウラの背後へと回り込み、威嚇術式を撃ち放つ。ラウラの砂塵の魔法障壁がそれを受け止め、
「お久しぶり、オフェリアちゃん。加減してくれるのね? 優しいわ」
「痛い思いをさせちゃうけどッ!」
続いて突っ込んできたのは、シャルレィスだ。繰り出される五月雨の如き無数の突き/斬撃が、魔法障壁と衝突し、激しい火花と砂塵を散らす。
「あら、痛い思いをするのはそっちよ」
「少しの間、わたしとあそぼ?」
ルアナが切り込んだ。斬撃が砂塵の魔法障壁を切り裂く。ラウラは素早く身を引いてそれをかわすと、お返しとばかりに近接術式を叩き込んだ。
ルアナは大剣でそれを受け止める。ざりざりとした砂が、ルアナの大剣を削った。
一方、ネーヴェは四人の幻想種たちを相手に、大立ち回りを演じていた。
「さあ、さあ……兎は、逃げるもの。兎は、追いかけられるもの。暫しの追いかけっこを、致しましょう!」
幻想種たちから繰り出される錆びたナイフを寸前で躱し、飛び、距離をとる。
ネーヴェの役割は、ラウラを無力化するまで、四人の幻想種たちを抑える事であった。ひきつけた幻想種たちが、ネーヴェへと追いすがる。
「兎は身軽なのです。わたくしを捕まえられる、でしょうか?」
ぴょん、ぴょん、とネーヴェは飛び跳ねる――本人の言葉通り、ウサギのように。今は追われる立場に甘んじる。それこそが、仲間達への最大の援護となるのだから。
「ほら、こちら。そちらには、いませんよ」
ネーヴェは実際に、上手く幻想種たちを翻弄していた。
「予定通り……お願いします、ネーヴェ様。可能な限りの援護はしますので」
闇の月を輝かせ、アリシスは言う。闇の月は妖しく輝き、暗き運命を照らし出す。照らし出されるは不運と災厄。運命は物理的な圧力となって、ラウラたちを襲った。
「ラウラさん! フランだよ、目を覚まして!」
叫びながら奏でる福音の音色が、辺りに響き渡った。それは仲間たちを奮い立たせる活力となる。
「フランちゃんね……! あなたもこっちに来ない?」
笑うラウラに、フランはそれでも必死に声をかけた。
「お願い、目を覚まして……あたしたちの声を聴いて!」
「お母さん……今は、加減はしないっ!」
アルメリアが続いた。大地より突き上げられた土くれの拳が、高く、高く、ラウラを打ち上げた。
「やるじゃない、アルちゃん? ならば、私の魔法でお返ししなくちゃ……違う、ダメよアルメリア……!」
空中でもがくように、ラウラは叫んだ。体勢を崩し、地へ叩きつけられる――よろよろと、苦し気に、ラウラは立ち上がり、叫んだ。
「逃げて……いいえ、私の事は気にしなくていいわ……! やりなさい、アルメリア……!」
もがきながら振るわれた腕が、アルメリアへと泥の波を放つ。だが、苦痛にもがくように、その魔法は明後日の方向へとそれていった。
「お母さん……正気に……!?」
「ダメ、長くはもたない……だから、アルちゃん、私を……!」
苦しげにうめき、と息を吐くラウラ。わずかに訪れた呼び声の間隙が、ほんのわずかな正気を彼女へともたらしたのだろう。
「いや……! 嫌! 絶対、助けるんだからっ!」
「そう言うこった! ちぃと手荒になるが、勘弁してくれや!」
ルカがラウラを掴んだ。ラウラは衝撃に気を吐きながら、再度地に叩きつけられる。
「バカな子たち……」
しかし、その言葉は嬉しそうに……そして呼び声は再び、ラウラの心を汚染し始めた。ラウラは飛び跳ねるように起き上がると、
「じゃあ、此処で全員、死んでいくのね」
妖艶に笑い、術式で作り上げた泥の腕が、ゆっくりと鎌首をもたげた。
●優しき勇者たち
「させ……ないっ!」
ルアナは泥の腕の前へと立ちはだかった。叩きつけられる拳を、ルアナは大剣を掲げて受け止める。
「皆を守る……あなたも!」
「ならば潰れなさい!」
ラウラは叫び、泥の拳へと魔力を込めた。ルアナは力いっぱいに大剣を振るって、泥の拳を受け流して見せる!
「ここであなたを食い止めて……皆で帰ります!」
オフェリアが放つ衝撃術式が、ラウラへと叩きつけられた。それは魔術障壁を突き破り、ラウラの腕へと衝撃を打ち付ける。
「アルメリアさんの所に、一緒に帰ろう!」
シャルレィスの蹴りの一撃が、ラウラの身体へと突き刺さった。痛みに意識を失いかけたラウラが、しかし呼び声に汚染された精神を凌駕させ、再び四肢に力をみなぎらせる。
「いいえ……わたしの居場所は、ここ……! 砂の都よ……!」
「違いますよ。貴方のあるべきは、このような地ではありません」
アリシスの放った聖なる術式が、ラウラを貫いた。その聖性に、呼び声がかき消され、
「もう少しよ、皆……!」
再びわずかな間、本来のラウラが姿を現す!
「アルちゃん!」
フランの叫びに、アルメリアは頷いた。
「お母さん……これで、助けるッ!」
放たれた術式のポールの一撃が、ラウラの腹部へと突き刺さった。がふ、と息を吐いて、ラウラの身体がくの字に折れる。
「よく……頑張ったわね……」
苦痛に眉を歪めながらも、しかしその口元は笑顔に彩られていた。ラウラはそのまま意識を手放し、地へと倒れ伏したのである。
「やった……が、まだ一息つくに早いぜ!」
ルカが叫ぶ。視線の先には、未だ一人、幻想種たちの攻撃を一手に引き受け続けるネーヴェの姿があった。
「いったん退いてくれ! あとは任せろ」
ルカの叫びに、ネーヴェは頷いた。
「お願い、します……!」
傷だらけの身体を引きずって、ネーヴェが身を引く。追いすがるようにやってきた幻想種たちが口々にがなり立てながら、イレギュラーズ達へと襲い掛かる!
「邪魔しないで!」
「私たちは、此処が居場所なの……!」
振るわれる錆びたナイフを受け止めながら、ルカは吠えた。
「違う! お前たちの居場所は、こんな場所じゃない!」
「少しだけ、耐えてください……!」
オフェリアが衝撃術式を撃ち放つ。食らった幻想種の少女がもんどりうって倒れるが、すぐに立ち上がり、襲い掛かってくる。
「貴方たちが守るべき、いるべきなのはこんな所じゃないはずだよ!!」
シャルレィスの蹴りの一撃が、襲い掛からんとした少女に突き刺さった。少女は意識を手放し、地に倒れ伏した。
「必ず、連れて帰るから……!」
ルアナは突撃。幻想種の少年に身体ごと体当りをし、そのまま引き倒す。少年はなおも立ち上がり、抵抗していたが、
「今は、ちょっとだけ、おやすみなさい」
ネーヴェが掴み、組み伏せた。そのまま意識を失う少年。
一方、残る少女へと向けて、アリシスの放つ聖なる術式が突き刺さった。不殺の術式は少女の意識を奪ったが、命を奪う事はしない。
「残り、一人です」
アリシスが告げるのへ、ルカが頷いた。
「おう、じゃあこの子で最後だ!」
ルカが少女の意識を失わせた。それを最後に、辺りに静寂が訪れた。
「皆様……ラウラ様や、幻想種の皆様も……ご無事でしょうか?」
ネーヴェが尋ねるのへ、頷いたのはフランである。
「うん、皆生きてる……作戦、完全成功だよ!」
倒れたラウラ、そして幻想種たちの生存を確認したフラン。イレギュラーズ達も相応に傷を負ったが、得たものは大きい。
「グリムルート……だっけ。壊しちゃおうか」
シャルレィスの提案に、仲間達は頷いた。肌を傷つけないように、首輪だけを破壊する。首輪は見た目以上に強固であり、破壊には些か手間取ったが、無事にすべてを破壊することができた。これを戦闘中に行おうとしていたならば、また違った難しさがあっただろう。
「傷の手当とかもしないとね……よかった。この子たちも、おうちに帰れるんだね」
ルアナが言う。
「では、回復術式を使いましょう。ルアナ様は、術式でカバーしきれぬ分のお手伝いをお願いします」
アリシスの言葉に、ルアナは頷いた。
「安心しな。このルカ様がお仲間も全員助けて深緑に送ってやる」
未だ眠る幻想種たちへ、ルカは静かに決意を語る。
「これで借りは返しましたよ、ラウラさん」
オフェリアは、幻想種たちの様子を見ながら、そう呟いた。
「お母さん……」
ラウラを胸に抱きながら、アルメリアは呟く。戦いは激しいものであったから、お互い、相応に傷は深い。そのため、ラウラもすぐには目覚めないだろう。
ただ、それでも、母が目覚めるまで、アルメリアは母を抱きしめ続けるつもりだった。
母が目を覚ました時に、言いたい言葉は決まっている。
その言葉を胸に抱きながら、アルメリアはラウラの頬に優しく手を当てるのであった。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
ご参加ありがとうございました。
皆様のご活躍により、ラウラさん以下すべての幻想種たちは無事に生還することができました。
意識を取り戻した時には、皆さんにお礼の言葉を告げたはずです。
GMコメント
お世話になっております。洗井落雲です。
ラウラ・イーグルトンが敵の手に落ち、操られてしまっています。
ラウラたちを無力化し、可能なら救出してあげてください。
●すべての敵の無力化(生死を問わず)。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
●状況
『砂の都』の一部区画を、グリムルートによって操られたラウラと、幻想種たちが防衛しています。
イレギュラーズの皆さんは、此処に向かい、ラウラ、そして幻想種たちを無力化してください。
操られた敵は、『意識を失わせる』か、『グリムルートを破壊する』事で、洗脳状態から解くことができます。
ただし、グリムルートを破壊することは、相手の首筋を的確に、何度か攻撃しなければならないため、難しい条件となるでしょう。
なお、成功条件的には、敵の生死は問いません。
周囲は、廃墟と化した建物と砂漠だけが存在する場所です。
●エネミーデータ
ラウラ・イーグルトン
特徴:
アルメリア・イーグルトン(p3p006810)さんの母親。取られられ、操られてしまっています。
原罪の呼び声の影響により、使用する魔術は砂や泥に特化したものとなっています。その様はさながら砂塵の魔女と言った所です。
主に中距離~超遠距離をカバーする神秘攻撃を使用。『窒息』『泥沼』を付与してきます。
なお、魔種化はしていません。グリムルートを破壊するか、戦闘不能に追い込むことができれば、正気に戻る事でしょう。
幻想種 ×4
特徴
グリムルートに操られた幻想種たち。原罪の呼び声の影響下にあり、正気を失っています。
至近~近距離の物理攻撃を使用してきます。EXFがやや高めで、少々倒れにくいです。
魔種化はしていません。グリムルートを破壊するか、戦闘不能に追い込むことで、正気に戻すことができます。
以上となります。
それでは、皆様のご参加をお待ちしております。
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