シナリオ詳細
<YcarnationS>Confused Desert
オープニング
●『砂の都』付近、早暁
「せっかく仕入れた奴隷を奪っていくばかりか、砂の都の護りに使わせるたぁな……」
遠眼鏡を覗きながら、忌々しそうに奴隷商人は吐き捨てた。
ザントマンことオラクル・ベルベーグルスの派閥に属する彼は、ディルク派による掃討作戦は免れた。しかし、掃討作戦の最中突如姿を現した『砂の魔女』カノンによって『グリムルート』の効力を上書きされてしまい、商品である幻想種の奴隷達を『砂の都』へ連れて行かれてしまったのだ。
当然、商品を奪われたオラクル派は激怒。ディルク派やローレットの攻撃を免れた者達は集結して砂の都を目指す。この商人も、その一人と言うわけだ。
「……しかし、厄介だな」
商人が双眼鏡で見ているのは、グリムルートを通じてカノンに支配され狂気に陥った幻想種の少女達十人ばかり。奴隷を取り戻すにしても、まずは彼女達を突破しなくてはならない。
(だが、やるしかねぇ。数はこっちが上なんだ。力攻めで圧し潰してやる!)
商人は覚悟を決めた表情で、背後の部下や傭兵達を振り返る。二十人近くが、曲刀やクロスボウなど各々の得物を手にして、商人に付き従っている。
商人は遠眼鏡をしまうと、幻想種達に向けて行軍を再開した。まだ幻想種達に発見される距離ではないが、彼女達との戦いの時は迫っていた――。
●連戦か、乱戦か
ディルク派から、引き続き大規模な依頼がローレットに舞い込んだ。強力な魔手が確認されいる上に、オラクル派攻撃の後始末に人手を割かざるを得ないからだ。
ローレットとしても、オラクル以上の魔種の狂気を放置していては『砂の都』に大量の魔手が生まれかねず、滅びのアークが加速するかもしれない状況を放置することは出来ない。かくして、全力を挙げて事態の解決に協力するに至った。
「今回、皆にはここにいる幻想種の少女達と、彼女達を攻撃しようとしている奴隷商人達を攻撃してほしいのです」
そういう事情から再び様々な依頼に対応することになり、忙しくててんやわんや、と言った様子の『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)が、テーブルに広げた砂の都周辺図の一点を指差す。『砂の都』を護るようにカノンの狂気に支配された幻想種の少女が十名ほどそこにはいて、奴隷商人達は二十名ほどでそれを攻撃しようとしていると言う。
「今からなら、奴隷商人達が幻想種の少女達と接触するまでに追いつくことが出来るのです。その後すぐ奴隷商人達を攻撃するか、両方が交戦するまで追ってから乱入するかは、皆さんの判断に任せるのです」
奴隷商人達をすぐに攻撃した場合、その後に無傷の幻想種の少女達との連戦となる。しかし、幻想種の少女達を無事に保護したいなら、こちらの方が確実であろう。一方、双方の開戦後に乱入する場合は三つ巴の戦闘となって、奴隷商人達によって幻想種の少女達が命を落とすかもしれない。
「……事態が事態なので、最悪、幻想種の少女達が死んでしまってもそれは仕方ないのです。それよりも、幻想種の少女達の保護に気を取られて依頼を失敗したりすることがないように、自分達の実力も踏まえて決めて欲しいのです」
ユリーカの声が絞り出すかのように聞こえたのは、気のせいだろうか。ともかく、どちらの方針を採るか、イレギュラーズ達は決めなくてはならなかった。
- <YcarnationS>Confused Desert完了
- GM名緑城雄山
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2019年11月03日 22時40分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●イレギュラーズ達の選択
(ヒーローって、こういうのなのかな……目がいいだけの人間には、眩しいわ)
『砂の都』に向かうイレギュラーズ達の一団。その最後尾で、同行するメンバー達の姿を眺めながら、『見敵必殺』美咲・マクスウェル(p3p005192) は内心で独り言ちる。
自分達の損耗を抑え依頼の達成を確実にするために、幻想種の少女達と奴隷商人達が戦端を開いたところに乱入するか。それとも、幻想種の少女達を死なせずに保護するために、奴隷商人達と幻想種の少女達と、各個に戦うか。
この選択に対してイレギュラーズ達は多少の温度差はあれども後者を採り、作戦を立てるとともに、各々準備を整えてきた。迫る戦闘を前にして、美咲はその姿を思い起こしたのだ。
(双方を打倒するに足る力があるかは断言できない。だが、やると決めた以上、結果を以て証明するだけだ)
美咲の視線が、強面の下で意気を高めている『絶海武闘』ジョージ・キングマン(p3p007332)に止まる 。普段はアルデバランでいることが多いジョージだが、幻想種の少女達を死なせないようにするために、今回はクラスをデュエリストに変えて臨んでいた。
ジョージから『雷精』ソア(p3p007025)に、美咲の視線が移る。
「操られてる女の子たちを見殺しにするなんて、嫌だよ!」
依頼に参加するメンバーが決まり、方針について話し合う際、真っ先に叫んだのがソアだった。それは、多かれ少なかれ、他のメンバー達も感じているところではあったろう。
「敵に操られた上、悪の商人にまで狙われるとは何と悲痛な……不運にも憑りついた闇は、この愛の力で、綺麗に払拭して差し上げましょう」
ソアに賛同するように口を開いたのは、『魔法少女インフィニティハートD』無限乃 愛(p3p004443)。正義と愛の名のもとに悪を滅する魔法少女としては、ソアの言葉に異を唱える理由などあるはずがなかった。
そうして話し合いが一通り終わったところで、『軍医』ウィリアム・ウォーラム(p3p007502)がぼそりとぼやいた。
「……面倒なことになっちまったもんだ。俺のプランでは、もっと楽に報酬が手に入る予定だったんだがなぁ……。ま、こうなっちまったもんは仕方がねェ。精々、気張るとしますかね!」
奴隷商人も幻想種も敵であり、しかもその双方と各個に戦う――確かに、面倒には違いない。だが、美咲にはウィリアムが言うほど面倒には感じてはいないように思われた。それが正しいかどうかは、ウィリアムのみが知るところだが――。
「奴隷商人達が見えたぞ!」
狙撃手たる『『知識』の魔剣』シグ・ローデッド(p3p000483) の目が、奴隷商人達を捉える。その声に、美咲の意識は回想から現実に引き戻された。
●vs奴隷商人
「ちっ、ディルク派の追手か! 先にあっちから蹴散らすぞ!」
後方から接近するイレギュラーズ達に気付いた奴隷商人が、迎え撃つべく隊列を整え始める。
「楽しく殴り合いして、全員ぶっ潰せばいーんだよね!」
「彼らにはそれでもいいけど、幻想種の少女達は死なせちゃダメよ、ヒィロ?」
「えっ……? だ、だいじょぶ、ボクわかってるよ!」
奴隷商人が隊列を整えたところで、その前衛左翼に『楽しく殴り合い』ヒィロ=エヒト(p3p002503)が砂に足を取られつつも猛然と駆け寄って接近する。ヒィロを援護するかのように、美咲は釘を刺しつつもヒィロが接した敵を中心に腐食結界を展開。さらに、シグがナイトメアバレットを叩き込む。
突出したヒィロに対し、奴隷商人達の一部が攻撃を集中。半数は回避に成功するものの、半数は捌ききれずにヒィロは負傷する。
「奴隷商人か……そうか、奴隷商人か。なら、何をしてもいいよね」
無法者には無法を尽くしても構わないと言わんばかりに、 黒・白(p3p005407)がつぶやきながら動く。シグの魔弾に傷ついた敵に、遠術で追い撃ちを重ねた。
「俺はジョージ・キングマン! お前達を殴り飛ばしにきた!」
ジョージがバサリ、と背中の黒い翼を羽ばたかせて商人の前十メートルまで飛び、名乗り口上を上げて挑発する。
「何だとぉ! この野郎!」
奴隷商人達の前衛の大半が、ジョージの口上に憤った。何人かが突出し斬りかかるが、ジョージに当たることなく空を切る。
その間に奴隷商人と後衛の一部がヒィロを狙ったが、これも難なく回避された。
「狩りをするなら、逆に狩られる時もあるというのを忘れてない? ねえ? ねえ? ねえ?」
白は前に出て、後衛に向けて『同胞』による平手打ちを浴びせる。
「うわあっ、何だこれは!?」
「ぎゃああっ!」
突如襲いかかってきた灰色の幽霊のような腕に、次々と張り倒されていく後衛達。
「魔砲 type.D……行きます!」
愛は追い撃ちの好機とばかりに、張り倒され混乱する後衛達に向けて魔砲を撃つ。後衛達は半死半生にまで追い込まれたため、愛は追撃でもう一発魔砲を撃つか迷ったが、少なからずダメージを受けているヒィロをメガ・ヒールで療した。
「ありがとう、愛さん! かかっておいでよ、ボクが相手だよ!」
愛による回復を受けたヒィロは、奴隷商人達の後衛に突っ込むと迸る闘気を叩き付ける。それに触発された後衛達は、一人を除いてクロスボウを捨て、ショートソードを抜いた。
「馬鹿が! 変な気に当てられやがって! そんな小刀抜いて、どうする気だ! クロスボウを拾え!」
奴隷商人が叫ぶが、その言葉は後衛達の耳には届かなかった。
美咲はこの後ヒィロが集中攻撃を受けるであろうことを見越して、さらにメガ・ヒールで癒やす。ヒィロの受けているダメージは、これで全て消失した。
ショートソードを手にした後衛が、ヒィロの闘志に当てられた前衛が、次々とヒィロに突きかかり斬りかかる。だが、ヒィロはそのことごとくを回避して見せた。
「あれだけ攻撃されても全部避けちまうなんてな」
ウィリアムはヒィロは放っておいても大丈夫と判断し、後衛の中でも最も耐久力が低そうな白を庇いに入る。果たして、唯一クロスボウを捨てていない後衛が白を狙ったが、庇いに入ったウィリアムを微かに傷つけただけだった。
「まとめて、蹴り飛ばす!」
「ボクの爪は、いったいぞーっ!」
ジョージが自身の周囲に集まった敵に対し、回し蹴りによる戦鬼暴風陣を放つ。さらに、ソアが駆け寄ってH・ブランディッシュで追い打ちをかけた。
白は自身が狙われたこともあって後ろに下がりつつ、ジョージに集まっている敵のうち最もダメージが大きい者を遠術で仕留めた。
その間にヒィロは集中攻撃を受けるも、美咲のメガ・ヒールを受け、さらに自身で深呼吸を行いほぼ全快に至る。
愛はヒィロに集中する敵を目掛けて、魔砲を続けざまに浴びせる。既にダメージを受けている敵後衛のうち三人が、この攻撃で倒れた。
白が下がったので、ウィリアムは集中攻撃を受けているヒィロを庇いに入り、早速前衛の曲刀を身代わりとなって受け止めた。
ソアはジョージの周辺の敵に向けて再びH・ブランディッシュ。迸る爪は三人を戦闘不能に追い込んだ。
さらにヒィロがアデプトアクションで、白が遠術でヒィロの周辺にいる敵のうち満身創痍の者をそれぞれ狙い、倒していく。
同時に、ジョージの海鳴とソアの爪が、ジョージの前にいる敵前衛を昏倒させる。
その流れを、愛の魔砲が一気に加速した。魔砲による会心の一撃が、ヒィロに集っている敵を襲う。既に幾度もダメージを受けている奴隷商人達の七人を一気に戦闘不能に陥れた。
残り二人では、もう戦局は覆せない。一人はシグの狙撃によって倒れ、もう一人は愛のマジカルスパーク、白の遠術、ソアの雷電を立て続けに受けて気絶。こうして、奴隷商人達との戦闘は終わった。
●戦いの合間
(誰も死なせたくはなかったけれど……)
奴隷商人達の中には、やはり戦闘中に死亡した者が何人か出た。幻想種の少女達が守る場所へ歩みながら、ソアはそのことに悔しさを滲ませる。この後、幻想種の少女達を殺さずに戦わなければならない状況で、奴隷商人達に対してまで手加減をする余裕はなかったのだ。
「……奴らが死んだのは自業自得さ。気に病んでる場合じゃねェぞ。ここからが本番だからな」
ウィリアムはソアに声をかけつつ、 アウェイニングでスキルを使うための気力を賦活する。
「うん、ありがとう……ところで、今、それ使っても大丈夫なのかな?」
「大丈夫よ。幻想種の少女達と接触するまで、まだ時間はあるわ」
ソアの疑問に、他の仲間を緑色の輝きに包みながら、美咲が答える。砂に足を取られるため、幻想種の少女達との接触までは時間を要した。また、幻想種の少女達は『砂の都』を『守る』側であるため、何時戦闘を開始するかのイニシアティブは『攻める』イレギュラーズ達にあった。
故に、時間があれば自然と気力が回復するウィリアムと美咲が他のメンバーの気力を回復した後、二人の気力の回復を待つことで、イレギュラーズ達は心身共にほぼ万全の状態で少女達との戦いに臨むことが出来た。
「……無事に救助できるといいもんだな」
気力が十分に満ちたところで、ウィリアムは煙草に火を付けて一服しつつ、独り言ちた。
●大魔法を止めろ!
「万物に滅びをもたらす禁忌の光よ……」
幻想種の少女達は、イレギュラーズを確認すると戦闘態勢に入った。その後衛、盾を構えたやや大柄な少女の影に隠れるようにしている、見た目十歳になっているかいないかのような少女が、機械的な口調で呪文を紡ぐ。
「えい、飛んでけ!」
詠唱の完成を阻止すべく、まずはソアが動いた。後衛にいる盾を構えた少女を雷光の衝撃で弾き飛ばそうとする。だが、衝撃は盾で防がれてしまい、弾き飛ばすには至らない。
「せめて、盾の子をどうにかすれば……ボクと、殴り合おうよ!」
ヒィロは少女達に向かって突進しつつ、後衛の盾の少女を誘うように狐火を放つ。ソアの雷光を防いだ隙を衝かれ、盾の少女の意識はヒィロに囚われた。さらにヒィロは前進し、二手に分かれている前衛の中間で闘志を迸らせる。結果、ダガーを持った小柄な少女三人と、呪文を詠唱していた少女の意識がヒィロに向いた。
「俺が、ジョージ・キングマンだ! 戦場に立つなら、手加減はしない!」
ジョージはヒィロの後方十メートルに飛行し、名乗り口上を上げる。前衛のヒィロの闘志に耐えた小柄な少女と、後衛の杖を持った少女達の注意がジョージに向いた。
愛は後衛の盾の少女を弾き飛ばそうとマジカルスパークを放つ。弾き飛ばすには至らなかったものの、ダメージは与えた。
ウィリアムはディフェンドオーダーで守りを固めつつ、ヒィロとジョージのどちらが危なくなってもフォローに入れるよう前進する。
幻想種の少女達はヒィロ、あるいはジョージに接近してレッドニードルやスタッフで攻撃するが、二人とも一度だけ軽いダメージを受けただけであった。
「少しだけ……眠ってて」
呪文の詠唱を中断した少女が、前に出て素手でヒィロに殴りかかる。その攻撃をヒィロが回避したところを狙い、ソアは雷電を当てて気絶させた。
(私的には……この者たちの生死にあまり関心はない。だが……其の生を望む者がいるのならば、協力するのもやぶさかではない)
少女達を殺めないように注意を払いつつ、シグは液体金属の鎖をスタッフを持った少女に撃ち込んでいく。そこに追い打つように、ジョージが戦鬼暴風陣を放った。まだ倒れはしないものの、耐久力を削られていく少女達。
白はシグに攻撃された少女に攻撃し、ダメージを重ねる。
愛はダメージの重なりつつあるヒィロにメガ・ヒールを使い、軽微と言えるところまでダメージを消し去った。
「ぐっ!」
ヒィロを庇いに入ったウィリアムが、レッドニードルに深々と貫かれる。咄嗟に美咲がメガ・ヒールで癒やすが、それでもまだ傷は深い。傷口からの出血は、ウィリアムが自身で抑えた。ほぼ同時に、ジョージもスタッフの一撃を受ける。ヒィロも、レッドニードルの餌食になった。
これに対し、愛がウィリアムを、美咲がヒィロを癒やす。二人とも、ダメージは軽微と言えるレベルまで回復する。
ソアの雷光が、ジョージに接近している少女達を庇っている盾の少女を弾き飛ばす。ジョージはここが好機とばかりに回し蹴りを放ち、スタッフの少女二人を昏倒させた。さらにシグが剣に変身して唯一ジョージの前に残るダガーの少女へと飛来し、その身を斬りつけていく。
ヒィロは闘志を放ち、少女達の意識を再び自身へと集中させる。しかし、すぐさまレッドニードルの直撃を受けた。さらに別の少女がレッドニードルで追撃せんとするが、これはウィリアムに身を挺して受け止められる。
●固き盾を貫きて
残るは盾の少女三人とダガーの少女四人であるが、ここで戦況が膠着する。
盾の少女はヒィロの闘志やジョージの名乗りにも、ソアの雷光弾きにも耐え、ダガーの少女達への攻撃を受け止め続ける。そして、ダガーの少女達のレッドニードルはジョージやヒィロ、二人を適宜守りに入っているウィリアムにじわじわとダメージを重ねていく。愛や美咲は懸命にメガ・ヒールで三人を癒やしていくが、次第に回復が追いつかなくなっていた。
「……これで、倒れて!」
盾の少女を倒さないと、じりじりと追い詰められてしまう。焦りを感じつつも放ったソアの雷電二発が、立て続けに盾の少女二人に直撃。ここでようやく、戦いの流れは変わり始める。
「はああああっ!!」
裂帛の咆哮とともにジョージが海鳴の連撃を叩き込み、残る盾の少女も気絶。しかしその瞬間を狙って、ダガーの少女達はジョージにレッドニードルを直撃させる。
ジョージが危険な状態と判断し、愛と美咲はメガ・ヒールをジョージに集中させる。ウィリアムはレッドニードルの傷口から流れ出る血を止めた。
ジョージに痛撃を与え、ヒィロやウィリアムに猛攻をかけるダガーの少女達だが、守り手も癒やし手もいない状況では攻勢も長くは続けられなかった。
既に手負いの一人が、ソアの雷電を受けて倒れる。
別の少女は、シグによる異想狂論「流星滅望剣」とナイトメアバレットの連続攻撃を受けたところで、さらにジョージの海鳴とソアの雷電に追撃されて戦闘不能に追い込まれた。
「……この一件が片付いたら、また静かに暮らすのも冒険するのも自由なのです」
ソアの雷電が直撃した少女に、白は畳みかけるように手加減しながら攻撃し、死なせることなく昏倒させる。
「これで、決める!」
最後の一人となった少女も、レッドニードルで果敢に攻撃を仕掛けていたが、シグのL・L『フローブリンガー』による連続した「遠投」に捕まったところに、ジョージの海鳴の直撃を叩き込まれて気絶した。
●戦い終わりて、砂漠に日が昇る
「しんどい……こんなにメガ・ヒールを使うことになるなんて……」
「ひたすら回復するしかなかったですからね……」
緊張から解放された美咲は、大きくため息をついてぼやく。愛が微笑みながら応じた。幻想種の少女達を誰一人死なせることなく、また、イレギュラーズ達が誰一人重傷や戦闘不能に陥ることなく戦闘を終えられたのは、二人の必死の回復があってこそだった。
「可哀想な子達を助けられたし、万々歳! だね!」
「ああ、そうだな。早く祝杯を挙げてェぜ」
快活な笑顔で、ヒィロは少女達の無事を喜ぶ。ウィリアムも嬉しそうな笑みを浮かべつつ、煙草に火を付ける。美咲や愛の回復に支えられながら、盾役として幾度も攻撃を受け続けた甲斐があった、と言うところだろう。
「お疲れ様、白さん」
「お疲れ様、ソアさん」
ソアと白は、互いの労を労い合いつつ、パン! と掌をハイタッチ。その様子を遠巻きに眺めていたジョージとシグは、無言のまま軽く微笑み、拳をコツン、と合わせた。少女達を死なせないように攻撃しなければならないと言う難題に苦慮しつつ、彼らは無事に成功させた。その達成感は、如何ばかりだろうか。
――この後、奴隷商人達と少女達はディルク派の人員に回収された。奴隷商人達の中で死んだ者は埋葬され、生き残った者は裁かれることになる。そして少女達はグリムルートを外された上で、丁重に深緑に送られた。
半月後、ローレット宛に少女達からの礼状が届く。そこには、カノンの支配から自分達を救ってくれたイレギュラーズ達への感謝が述べられていた。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
シナリオへのご参加、どうもありがとうございました。
幻想種の少女達を死なせないために連戦と言う茨の道を選んだ上で、誰一人死なせることなく倒れることなくの依頼達成、本当にお見事でした。役割分担がきっちり機能しており、盾役、回復役、火力役のバランスも上手く取れていたと思います。
MVPについては、奴隷商人戦では魔砲による範囲攻撃で決着を早め、幻想種の少女戦ではメガ・ヒールで盾役を支え続けた愛さんにお送りします。
本当に、お疲れ様でした。
GMコメント
こんにちは、緑城雄山です。
今回は、先の全体に続く全体シナリオのうちの一本をお送りします。
難易度については、幻想種の少女達の生死を考えずに、双方の戦闘が始まった後に乱入した場合について想定しています。
幻想種の少女達を保護するために双方と各個に戦った場合には、それだけ厳しい戦いになりますのでご注意下さい。
●成功条件
幻想種の少女10名、商人とその手勢20名の戦闘不能。
いずれも生死は問いません。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
●『砂の都』付近の砂漠
今回の戦場です。時間は早朝。奴隷商人達に先に仕掛ける場合も、開戦後に乱入する場合も、場所は異なれどフィールドデータとしては同じとします。
平坦であり、遮蔽になるようなものは存在しません。砂に足を取られるため、機動力は半減されます。
命中回避については双方の条件が同じとして、修正なしで判定します。
飛行もしくは何らかの砂に足を取られない手段があれば、その内容に応じて機動力へのペナルティーを軽減し、命中回避にプラス修正を入れます。
●幻想種の少女達 ✕10
年の頃十代から二十代に見える少女達です。
経験こそ多くないものの、武術や魔術に対してそれぞれ素養を持っています。
全体的に、命中・回避・反応は高く、HP・防御・抵抗は低めです。
グリムルートを通じてカノンのもたらした狂気に支配されており、説得などは受け付けることなく、ただ『砂の都』に侵入するものを排除しようとするかのように戦います。
また、BS【混乱】【狂気】【魅了】については無効となります。
・前衛盾役 ✕2
大きめの盾を構えている、見るからに盾役の少女です。
少女達の中ではHP・防御・抵抗が高くなっています。
シールドバッシュ(アクティブ) 物至単
ハイ・ヒール(アクティブ) 神中単 【治癒】
決死の盾(パッシブ)
ハルバード(通常攻撃) 物至単
・前衛攻撃役 ✕4
ダガーを持った、小柄の素早そうな少女達です。
レッドニードル(アクティブ) 神至単 【弱点】【出血】
パイロキネシス(アクティブ) 神近単 【火炎】【業炎】
ダガー(通常攻撃) 物至単
・後衛盾役 ✕1
大きめの盾を構えている、見るからに盾役の少女です。
少女達の中ではHP・防御・抵抗が高くなっています。
シールドバッシュ(アクティブ) 物至単
ハイ・ヒール(アクティブ) 神中単 【治癒】
魔弾(アクティブ) 神中単
決死の盾(パッシブ)
ハルバード(通常攻撃) 物至単
・後衛火力役 ✕2
杖を持ちローブを身に纏った、見るからに術士然とした少女です。
火力が高い代わりに、回避・HP・防御については劣ります。
ソーンバインド(アクティブ) 神中単 【足止】【流血】
衝撃の青(アクティブ)神遠単 【飛】
スタッフ(通常攻撃) 物至単
・後衛大火力役 ✕1
少女達の中でも最も小柄な少女です。
威力の絶大な大魔法を撃つことに特化しています。
命中が著しく高く、回避・HP・防御については著しく劣ります。
エクスティンクション・レイ(アクティブ) 神遠域
【万能】【識別】【溜2】【高速詠唱1】【防無】【飛】【ブレイク】【呪殺】
●奴隷商人、及びその配下と傭兵達 ✕20
如何にも悪党な雰囲気の男達です。実力は幻想種の少女達より一段落ちます。
能力としては基本的に高くないレベルでのバランス型です。
奴隷商人が激昂しているため、幻想種の少女達の生死はお構いなしに戦います。
幻想種の少女達を攻撃することで頭がいっぱいのため、イレギュラーズ達が戦闘を仕掛けるか、余程変に目立つようなことをしたりしない限りは、幻想種の少女達と開戦するまで見つからずに追跡することが出来ます。
・前衛 ✕12
特に目立った能力はありません。多少耐久力が高く、しぶといぐらいです。
奴隷商人もこの中に含まれています。
攻撃手段は以下の通りです。
曲刀(通常攻撃) 物至単
・後衛 ✕8
前衛に比べれば命中に優れていますが、その分回避が落ちます。
攻撃手段は以下の通りです。
クロスボウ(通常攻撃) 物遠単
ショートソード(通常攻撃) 物至単
●初期戦闘配置
・連戦時、対奴隷商人戦
敵前衛は二列横隊で展開しており、イレギュラーズ達とは50メートル離れています。
敵後衛も二列横隊で展開しており、敵前衛から10メートル離れています。
・連戦時、対幻想種戦
前衛盾役✕1、前衛攻撃役✕2で固まっているグループが2つ前衛にいます。
敵前衛とイレギュラーズ達の距離は50メートル離れています。
後衛盾役✕1、後衛火力役✕2、後衛大火力役✕1で固まっているグループが1つ後衛にいます。
敵後衛は、敵前衛から10メートル離れています。
・開戦直後に乱入する時
幻想種の少女達、奴隷商人達、双方の布陣については連戦時と変わりません。
ただし、幻想種の少女達と奴隷商人達の前衛同士が、互いに向き合う形になります。その距離は50メートル。
そして、奴隷商人達の後衛とイレギュラーズ達との距離が50メートルとなります。
●グリムルート
金色に輝く首輪です。
カノンに効力を上書きされてしまい、カノンの狂気を伝播する道具となりました。
壊すか、装着者を戦闘不能に追い込むまで、装着者はカノンに支配され続けます。
しかしとても固く、イレギュラーズの攻撃1~2回程度では壊れません。
グリムルートの破壊を狙う場合、装着場所が装着場所ですので、命中に大幅なペナルティーを受けるものとします。
●生死判定
このシナリオにおいて幻想種の少女達もしくは奴隷商人達が戦闘不能になった場合、その攻撃が【不殺】でない限り、死亡したかどうかの判定を行います。
この時、幻想種の少女達は高い確率で、奴隷商人達は五分五分の確率で死亡します。
・手加減
【不殺】のない攻撃であっても相手を殺さないよう加減することは出来ます。
ただし、命中に多少のペナルティーを受ける上に、攻撃力が半減します。
●開戦後について
幻想種の少女達と奴隷商人達が開戦しても、敢えて乱入しないで共倒れを狙うことも可能です。
その場合、1ターンの間に幻想種の少女達は1D10÷4人、奴隷商人達は1D10÷2人がランダムに戦闘不能になります(端数切り上げ)。この処理で戦闘不能になった場合も、先述の生死判定の対象となります。
この処理は、片方が全滅するまで行われます。
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