シナリオ詳細
終焉神龍
オープニング
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――長らく眠っていたものが、目覚めた。
それは『終焉』と呼ばれた。一度眠りから目覚めれば――、
国は焼かれ、
人々は蹂躙され、
大地は揺れ、
天は光を閉ざすという。
その予兆の通りに、世界では地震が多発しているのだ。
故に、人々は不審な揺れを感知してから、ずっと、噂をしていた。
もしかしたら終焉が近いのかもしれない、と。
あの時は、どこからの世界から救世主が降りてきて、終焉を地下深くに閉じ込めて眠らせたのだという伝説はある。
されど、眠るというのは、いつか目が覚めるという事だ。
あの救世主は何故、終焉を殺してくれなかったのだろうか。
あの救世主は、今どこへ行ってしまったのだろうか。
人々は世界の揺れに怯えながら、ひっそりと救世主の訪れを祈っていた。
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境界案内人は説明をする。
「混沌のような剣と魔法の世界があるのですが、そこで大地を焼き、人々の生活を狂わし、生態系を崩壊させてしまう龍が目覚めたのを感知しました。
今回は、それの討伐を行っていただきたいと思っております!
その世界には多くの人々が存在しておりますが、今回その人たちと接触はできません。つまり顔も知らぬ世界の人たちを、気づかれない場所で救うというものです。
なんといっても、その巨体は圧倒的ですよ! ちょっと倒すのは大変そうですが、まあ、皆さんなら大丈夫かとも思います!」
その世界は混沌の世界より、遥かに格下の世界だ。
故に、イレギュラーズたちの力は十分に通じる事であろう。
「でもその世界にとっては、その龍は神様に近いものです。暴君にして制御は聞かない。以前、救世主があの世界にいたのですが、自分の命を犠牲に龍を封印するまでに至ったよです。ただ、倒すことは出来なかった。
故に、今回こそは皆様のお力でなんとか終焉を終焉させてください!」
境界案内人は頭を下げながら、旅立つイレギュラーズを後にした。
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何故、己は存在しているのだろうか。
そこに応えは見出せないものの、腹は減る。それに常に機嫌は悪い。
此の世界の全てを破壊したからといって、此の世界に己以外の命がひとつもなくなったとして、それでも、きっと己は存在し続けられる。
嗚呼、何故こんなにも腹が減るのだろうか、それが満たされることは無いというのに。
- 終焉神龍完了
- NM名桜
- 種別ライブノベル
- 難易度-
- 冒険終了日時2019年10月28日 22時25分
- 参加人数4/4人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 4 人
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参加者一覧(4人)
リプレイ
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生暖かい風がふいていた。
それは龍の吐息であり、気圧を換え、風を起こし、大地を吹き飛ばす事だって出来る呼吸。
存在しているだけで世界を脅かすと言われれば頷ける。
今この龍が此の塔から飛び立ち、気ままに欠伸でもすれば喉から零れた僅かな炎で森は焼け野原へと成るに違いは無いのだから。
今日この日、神たる龍の命が尽きる日だとは、この世界の誰も思ってはいないだろう。
今しがた、世界の全ての生命は終焉へ向かい最期の晩餐の献立を考えているのだから。
されど、世界は世界に味方した。
遥か上位の世界より舞い降りた四人のイレギュラーズが、境界を越えて世界の枠を超えて討伐にやってきたのだから。
――身体が軽い。
『月の旅人』ロゼット=テイ(p3p004150)は龍が抱き着いている塔の螺旋階段を上がっていく。混沌の世界とは違い、まるで己の身体――いや、足に羽が生えているのかと思える程に駆ける事ができる世界であった。この世界ならなんでも出来てしまいそうな、そんな気分にさえ思えるように。
ロゼットに追従してくるイレギュラーズはいない。
既に全員が戦闘に入っているのだろうが、半ば個人戦のようなものだ。
示し合わせてきた正しい作戦や討伐方法は簡単、ただひたすらに攻撃を与える、のみ。
塔の窓から飛び出したロゼットは刃を構える。塔にめり込む爪のついた腕へと飛び込み刃を横へスライド。ロゼットの身体半分ほどに大きな鱗が太陽に輝きながら剥がれて落ちていった。
それが開幕の合図のように、龍は轟音の喉を鳴らす。大地が揺れ、塔が悲鳴をあげた。
「――るっせ」
『ド根性ヒューマン』銀城 黒羽(p3p000505)は眉間にシワを寄せながら、片耳を押えた。
彼がいる場所は塔のてっぺんだ。ゆらりゆらりと動き始めた龍の紅玉の瞳が、黒羽を映す。刹那、龍は黒羽を目掛けて巨大な頭を塔へとぶつけてきた。
「――!」
『守護天鬼』鬼桜 雪之丞(p3p002312)が衝撃に、顔を上げた。今のは一体――訳も解らないところであったが、塔のてっぺんから落ちてくる瓦礫を俊敏に避けつつ、雪之丞は龍の背を高速で駆けた。
成程、龍が塔にぶつかったか。時間が経てばこの塔も足場としては使い物にならなくなるに違いない。雪之丞は素早く攻撃へと移る。
すると、塔の上層で瓦礫と壁をどかしながら、かすり傷だけをつけた黒羽が立ち上がった。
「ふう、龍とか言ったか。俺らが強すぎるのか、大した事無いか?」
「いえ、塔は崩れそうです」
「やべえな」
龍としては、けろりと立ち上がった黒羽にはぎょっとした事だろうが、つかの間。黒羽は溢れ出る闘気を武器に構えた。
雪之丞が龍の頭の上に来た頃、黒羽が拳を大きく振りかぶって龍の顎へと右ストレートを当てる。
思わず雪之丞が龍の鬣に捕まる程に、龍の頭は大きく反った。成程、下位の世界ーーしかし、黒羽としては残念な気持ちもあった。
「龍は男としちゃロマンだが……しっかし、此の世界が弱いのか俺たちが異常なのか」
恐らくはどっちもなのであろう。
しかし龍はたったそれだけで倒れるような体力はしていないようだ。頭をもとの位置に戻した龍は、なんともない表情で再び吼えた。
刹那、大地は震動し、厚い雲に覆われ空が真っ暗へ染まっていく。これは世界を震わす龍の力か――。
「怒ったのかしら」
『呪刀持ちの唄歌い』紅楼夢・紫月(p3p007611)は降り注ぐ雷鳴に顔を上げた。
どうやらその通りで、龍の取り巻いていた雰囲気が少し前のものとはあからさまに変わっているのだ。宙に浮いているはずの紫月の肌にも響く大地の鳴動が、此の世界の神を怒らせたのだと――。
「まあ、でも寝起きをたたき起こされたんじゃ誰だって怒りますわなあ」
それはまるで子供の癇癪のようで。
本来一般人なら慌てて布団の中にもぐってガタガタ震えるような状況を、紫月は楽しんでいた。
雷神を絵にかけばこのようになるものだろうか。
緑に輝く背の鱗の上を、視認できるほどの紫電が駆けまわっていた。思わず雪之丞が龍の背から飛び退いて、塔へと足場を変える。
「首――」
雪之丞の狙いもまた、黒羽と同じ首だ。
しかし標的は巨大であるものの、故にあの首を落とすにはかなりの力がいるに違いない。
少しずつ傷を広げて、柔らかい部分を露出させて抉っていくべきだ――、雪之丞が塔に足を乗せていたのは一瞬。龍の前足の爪が引き裂くように雪之丞の足場を抉り、寸前で雪之丞は再び跳躍した。
刀を横に。
居合の要領だ。
だがこれは数度やっていくと、龍も学ぶようで上手くはいかない。
龍が頭を鞭のように唸らせて雪之丞にぶつかったのだ。
勢いに負けて塔へと押しつぶされる彼女だが、寸前の所で刃を凪いで龍の首に斬り込みを入れたのだ。雪之丞の背中は塔に、しかし僅かな隙間で龍と刀は擦れ合い雪之丞は潰されまいと耐えている。
龍と雪之丞が押し合いをしていた時に、黒羽は次の攻撃の準備へと移った。
闘気を練り上げた彼は、氷結の鎖を作り上げる。自律した蛇のように動くそれを瞬く間に龍の身体を縛り上げて、黒羽は懇親の力で引き上げる。まるで魚釣りのように、絡まった鎖に頭を引き上げさせられた龍は、そして鎖の中でもがくのだ。
「長くは持たないだろうが――」
「十分やわあ」
龍の周囲を自由に旋回して飛んでいった紫月。
龍殺しなんて面白い――そんな経験、混沌ではできないもの!
紫月は面白そうに口を歪めながら、刃を抜いた。一閃――切って紫月は相手の硬さを学習する。
斬れない相手ではない。そう分かればコワイものなど無かった。
雷鳴が轟き、紫月の元にも否応なしに電撃の槍は降り注いだ。それをすれすれの所で避けながら飛び、空で一度大きくUターンしてから龍へと構えた。
「ほな、いっちょやらせてもらおか」
空を滑るスピードを上げる。
遥か上空から一気に滑空し、地面に滑り込むようにして着地した。
振ったのは一回に見えた。だが龍に傷は複数の痕が残っていた。時間が経ってから傷口が一斉に開き、血が雨のように吹き飛ぶ。
鮮血の雨に打たれながら、紫月は頬垂れる雨を舌で掬った。
激痛に悶えたのだろう、一層大きく身体を震わした龍。その頃、ロゼットは龍の首まで登りながらその表情を負のものに変えていた。
生まれてきた意味とは。
此の世に必要とされず。
その存在の意味とは。
龍の立ち位置に、ロゼットは小さな胸を切なくしていた。
まるで似たような境遇でもあったロゼットは、龍と己を重ねてしまう。でもそれが、龍を討伐しない理由にはならないし、なれないのだ。
世界を滅ぼすことが出来る龍を、見逃すなどと――己に課した罰を自ら放棄するようなものだ。
向かい合え、そして受け止めて。だからこそ殺す。顔も知らぬ誰かの、明日を繋ぐために。
手に包帯と一緒に巻き付けた、その身を焦がす刃を再度強く握った。上を見れば、黒羽が再度闘気の鎖をくみ上げていた。千切れた鎖を首に巻き付けながら、暴れる龍が咆哮する。
そして――、炎が塔を飲み込んだ。濁流のようなそれに、紫月も雪之丞も流されるようだ。
どこにそんな余力があったというのか、龍は紅玉の瞳を今や怒りそのものの色へと変えているではないか。
「こうじゃなくては」
しかしこの状況こそ、黒羽は楽しんでいた。
龍を退治しに来たのだ――それなりのスケールとスリルはあって当然だ。何も簡単な依頼だからとはいえ、一方的な殺戮に満足するような男ではない。
あくまで楽しみながらであったが、黒羽は炎の中からその身を投げ出し鎖を放つ。
先程よりも丁寧に練られた魔力の鎖――それは龍を巻き取る蛇のようにその身体を拘束していく。
「今だ!!」
黒羽の言葉に、ロゼットが立ち上がった。雪之丞が刀を抜いた。紫月が刃を掲げた。
狙うのは、その首。
長ったらしいその首を落とす事で、息絶えない生き物はない。
紫月が妖刀を振りかざし、再び龍の身体に無数の傷跡をつけていく。それによって、龍の焦点は紫月へと向かった。
身体から放電する雷撃が紫月を追い、そして龍は一度鎖からもがきながら地響きの咆哮を放った。
身体がビリビリと痺れ、黒羽はそれでも龍と繋がる鎖を離そうとはしなかった。だがいつまでも龍と相撲し続けられる訳ではない。鎖の一部が千切れて解けそうになるが――。
その時には、右からロゼッタが。左から雪之丞が。黒羽を追い越すように駆け抜けていった。
「拙は右を」
「では此の者は左」
二人は一斉に跳躍し、同じようなモーションで刃を構えた。
龍は一層大きくもがくが、ここで黒羽の鎖が千切れた――が、千切れた部分を再び黒羽が握り、そして留まる。
「悪しき龍よ」
「悲しき龍よ」
「貴方に来世があるのなら、次は信仰される存在に生まれ変わると良いですね」
「永久に眠れ」
ロゼッタと雪之丞が刃を横に凪ぐ。すると――龍の首が胴体から切り離されて落ちていく。
頭が地面についてから、僅かな後に、胴体が切り離されたトカゲのしっぽのように、もがいていた動きをやめて地面へと落ちていった。
暫くは指がびくびくと動いていた龍であったが、やがてその動きも止まり――紫月は龍の沈黙を認める。
「終わったかえ」
ふと――息をついた黒羽が空をみた。そこには、雲が静かに晴れて太陽が戻ってきている。
ひとつの世界が終焉を迎える事を止めたのだ。
もうこの世界にイレギュラーズたちが居る意味は無い――けども、次第に空の様を見れば、此の世界の人々は救われた事を知るだろう。龍の遺骸が見つかるのも、そう遅いことではない。
「帰るか」
黒羽の声に、雪之丞は頷いた。
ロゼットは振り返り、光の灯さない龍の瞳を見つめた。
ね、悲しき龍よ。
満たされぬまま死んでしまったのだろうか。
その答えは、ギフトで触れた黒羽だけが心の中に仕舞った。
成否
成功
状態異常
なし
NMコメント
4度目まして、桜です! 今回は巨大な生物と戦う純戦です!
●成功条件『ドラゴンの討伐』
●世界観
昔ながらの剣と魔法の世界です。混沌ではありません。
住人や他の生物も存在はしますが、今回は龍しか出てきません!
●敵『ドラゴン(リプレイでは、文字数の関係で龍と表記します)』
巨大なドラゴン。緑色で、龍の髭がながーい。胴体も蛇のようで、ながーい大きい。
塔に巻き付いていても更に尺があるくらいに大きいです。
とにかくでかい。
攻撃方法は、炎を吐いてくるもの、その爪や牙で攻撃してくるもの。
また、身体の鱗を使って電撃を迸らせるもの。咆哮でPCに状態異常を付与するもの。
となっております。
総じて、攻撃力は高いですが、難度はもちろんイージー相当です。
●フィールド『龍の住む塔』
天に伸びる塔です。
形は円錐。高さは、リアル世界で首都にある赤い電波塔くらい。
中には螺旋階段が壁に沿う形であり、各階に降りられます。
各階には窓があるので、そこから攻撃は可能ですし、龍に飛び乗る事も可能です。
もちろん、飛行戦闘の可能です。
●特殊ルール
飛行ペナルティは存在しないものとします(気軽に飛行戦闘してください!)
いつもの戦闘ルールに乗っ取ります。
詳細は以上です。
皆様のかっこいいプレイングをお待ちしております!
文字数が余ったら、かっこいい必殺技とか、戦い方を詳細に書いて下さると嬉しいです!
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