シナリオ詳細
<白亜のチェス盤>反逆への萌芽
オープニング
●白亜のチェス盤
白の国と黒の国の戦争が始まった。
互いの技術の最を尽くした兵器や装備は闘争の熾烈さを加速させていった。
誰かが言った。
「この戦争は何度目なのだろう」と。
誰かが言った。
「せっかく俺達の国が勝ったのになんでやり直しになるんだ」と。
誰かが言った。
「どうして、俺は前の戦争も覚えているんだろう」と。
●闘争の因果を断ち切る為に
イレギュラーズの眼前に現れた、褐色肌の白髪の男はけたりと笑った。
「お前らが双子の言う『特定運命座標』か、初めましてだな」
君等を見て、さも愉快そうに笑う彼は、一冊の本を見せる。
「少しばかり手を借りたい世界があってな――今回はその為の『足掛かり』を作ってもらいたいのさ」
……曰く、戦争の終わらない世界。
どんな結末を迎えようとも、結末を迎えてしまえば再び『はじまり』に戻ってしまう。
「なんの気紛れか知らねぇが……無意味にも戦争を『繰り返し続ける』世界が存在してるのさ。そして……原因は分からねぇが、その無限の闘争の環が続く内に、世界には変化が起こった」
彼はその変化を『記憶保持者』、と言った。
『巻き戻った』世界の中でも、前の記憶を保持し続け、『ループ』の存在に気付いた者たち。
「けどまぁ、『気付いた』程度じゃ意味がないらしい――このままだと連中の心は度重なるループの記憶で廃人と化すだろうよ」
そこで、と境界案内人の男はニヤリと笑う。
『特定運命座標』に、介入してもらって、『ループ』を破壊したいのだと。
「双子も言ってただろ?『ハッピーエンド』の方が良いって。だから、お前らはこの世界の中にいる『記憶保持者』をまず探し出すんだ」
彼が言うには『記憶保持者』自体は世界には少なからず存在するが、彼らが互いに連携を取れた試しは一度も無いらしい――
どうやら、イレギュラーズに『彼ら』の橋渡しを担って欲しいらしいのだ。
「連中自体が世界のループに反逆する『バグ』みたいなモノだ。単なる一般市民から、軍の将校、果ては犯罪者まで。此処まで立ち位置が違っちまうと連携なんて取りづらいからな」
逆に言えば、そのような様々な人間を巧く結束させれば『ループ』を打破できる、とも言えるだろう。
ただ、彼は告げる。この介入には『期限』があると。
「期限は――そうだな、『介入した戦争がループするまで』だ。それ以上はお前らも弾き出される」
それまでにどちらかの国の軍に溶け込むも良し、市井で情報を集めるも良し。『足がかり』を作ってこい、ということらしい。
「まぁ、俺は見届けさせて貰うよ――あんたらの動きが無意味でないことをさ」
- <白亜のチェス盤>反逆への萌芽完了
- NM名逢坂灰斗
- 種別ライブノベル
- 難易度-
- 冒険終了日時2019年10月27日 22時30分
- 参加人数4/4人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 4 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(4人)
リプレイ
●戦いを『望まぬ』者達
『ファーレンハイト』夜(p3p007250) は単身、白の国で新興宗教を興す事にした。
唄う言葉は『戦争反対』。そして――『未来の記憶を持つものを信じるのです』、と。
その言葉に応じて人々は着々と夜の言の葉に耳を傾けるようになりつつあった。
多少過激ながらも、真実を穿つ言葉は、彼の不思議なカリスマを強調させ、白の国の中でも強大な存在に変じつつあったのだ。
同時に――既存の宗教の修道女が支持を集め始めている、という噂も耳に届くにはそう時間が掛からなかった。
その流れに不敵に笑みを浮かべながらも、思案を繰り返していた最中、『彼女』はやって来た。
「……同じく、不要な戦を望まぬ教えを撒く者として、貴方様に尋ねたい事がございます」
「それは、どういうことでしょうか? 『未来の記憶を持つ者』に関してですか?」
夜の胡散臭い態度にもその修道女、セレンは毅然として真っ直ぐな眼差しを向けた。
「――私が、その『未来の記憶を持つ者』だとしても、ですか」
その聖女の首元からは、『白のビショップ』の駒が下げられていた。
『ハム子』主人=公(p3p000578)は焦っていた。
『彼女』として行っていた反戦ライブは、夜が生み出した下地も含めてかなり好評で、特に白の国では熱狂的なファンが付く程の事態となっていた。
(確かに有名にはなったけど――少し危ない橋を渡りすぎたかな)
『彼』として、今は次なるライブの調整を行っている最中、ついに『白の国』の軍部から聴取を受けるように指示が下ってしまったのである。
(……可笑しいな、国は慎重に選んでいた筈なんだけど)
軍人に連れられ、冷え冷えとした戸に『取調室』と書かれた部屋に『彼』は通される。
ああ、失敗したかな、とすら感じた主人=公だった――
が、取調室に通された瞬間。その堅苦しい空気は一瞬にして解けた。
「――済まない、一応『建前』は守らないといけなくてね」
部屋で彼を迎えたのは一人の女性将校――彼女はリーゼと名乗った。
「私も君の『活動』に協力しよう。……この争いは無意味だと知っているのは、私も同じなのだから」
首から『白のクイーン』の駒を下げた彼女は、意外なことに彼女の活動を支援する、と言いだしたのだった。
●戦場を『知る』者達
『アニキ!』サンディ・カルタ(p3p000438)は黒の国の軍人として従軍し、あっと言う間に華々しい戦績を挙げつつあった。
突然に現れた不死身に近い少年兵は、黒の国の中で持て囃され、一部では『アニキ』と呼ばれる程の憧憬――或いは畏怖を受けていた。
彼が尋ねる限りでは、両国は元々険悪では無かったらしい。
曰く、白の国の女王が凶弾に撃たれた時、犯人探しが悪化してこの戦争に至った、などと言う。
実際、戦場ではこの戦いの無意味さを自覚しながらも、止まれぬ自体に嫌気が差す者も多かった。
「――なぁ、お前もこの戦争は『初めて』か?」
偶然に隣り合ったその男と拠点で語らう事になったのは、必然だったのかも知れない。
何せ、男も一兵卒の割に的確な攻撃を行うし、まるで『知っている』かのように行動しているのだ。
「こんな事言うと笑われそうだが……初めてじゃ、ない」
その言葉に、サンディは若干残念がりながらも――当たりを引いたという確信を得る。
ミカゼと名乗った黒の国の兵士は、何故か……『黒のポーン』の駒を首から下げていた。
『堕天使ハ舞イ降リタ』ニーニア・リーカー(p3p002058)は黒の国に置いて『郵便屋』として活動を行っていた。
何より大きかったのは、黒の国が彼女の腕を見込んで正式に『伝令』を命じたのだ。
機動力を見込まれたのだろう。それは彼女が噂を収集したり、喧伝するにも丁度よい立場でもあり――
彼女は戦場に関する1つの噂を得る。
そうとくれば、戦場で振る舞い続ける1人に『伝令』のついでに伝えてしまえば良い。
そうしてサンディとニーニアは互いの情報の共有に走る。
「おっと、次の伝令か――なかなか休まる暇がねぇな」
やれやれ、と溜息をつく彼に、『伝令』は本命の情報を伝える。
「あとは個人的に、なんだけど……ちょっと変な噂があるんだ」
「……変な噂ってどんなだ?」
ニーニアは彼宛の伝令を渡しながら――その噂について語りだす。
「交戦中だろうと、まるで安全な場所を『知ってる』みたいに、兵器を『盗んで』生計を立ててる人が居るんだって」
その噂は程なく実証された。伝令に応じたサンディが、ミカゼを連れて共に交戦をしている最中に――堂々とその『盗み』は行われていたのである。
「――ああ、これでもねぇ、これも違う。だけど、金にはなりそうだn」
「……何してるんだお前」
光条や弾丸の飛び交う最中、堂々と盗みに興じていたその男の首根っこをミカゼはとっ捕まえた。
首から『白のナイト』の駒を下げていたその盗賊は、後にアイゼンと名乗った。
「……一体お前は何を探してたんだ?」
戦火が一時止まり、その隙にサンディが問うと、アイゼンはやれやれ、とばかりに答える。
「――この世界を滅ぼすっていう、『終末兵器』って、知らねぇか?」
『郵便屋』の齎した噂は……とんでもない噂に繋がった。
●はじまりへもどる
リーゼの援護を受けた主人=公の反戦活動は実を結び、両国は対に和解にまで至った。
終戦から一週間程経って、両国の平和式典に向けて各地では着々と準備が進んでいて、ループなど抜けてしまったのか、とすら錯覚する程の平穏だった。
そんな最中に、夜の築いた教団の下を、修道女のセレンが訪ねてきたのだ。
「――夜様、いらっしゃいますか」
「ええ、変わりなく。今日も茶会の準備をした方が良いですか?――生憎教徒達も買い出しに出ておりまして」
その言葉に、ふるふると彼女は首を振った。
「実はお話ししきれていないことがごさいまして――」
彼女がそう話を切り出そうとした時、街中を裂くように閃光が奔った。
郵便屋の平穏は、駆け込んできた二人の姿によって終わりを告げられた。
「――『郵便屋』は此方か!?」
ニーニアは突如駆け込んできたリーゼの姿に驚愕しながらも――その傍らには『マネージャー』としての主人=公の姿もあった。
「お二人共、如何なさいましたか!?」
「いつも通り戦後の復興ライブを軍の人と掛け合ってた最中だったんだけど……兎に角今、両方の国中が滅茶苦茶な事になってるんだ」
そう『彼』が告げると、郵便屋として借りていた拠点の真横を光が焼き潰していく。
恐る恐るニーニアがその痕を覗くと――まるで、世界そのものが裂けたような空間が広がっていた。
「これは、一体……!?」
リーゼは苦虫を噛むような表情で、二人に告げた。
「……ループの『リセット』が、始まったのだ」
サンディは軍の緊急招集に交じるように、その『最前線』に居た。
「……なんだありゃ急に現れて――白の国の兵器でもねぇ筈だろ?」
その言葉に、ミカゼはこくりと頷いた。
「ああ、過去のどの戦争でも、あんな兵器はどっちの国でも見たことがねぇ――まさかあれが『終末兵器』だってのか」
二人を含めた両国の兵士が必死に牽制射撃を行うも、兵器にそれが通じる様子は無い。
抵抗虚しく無慈悲にも兵器が光を放ち、平和になった世界を、兵士達を飲み込み、斬り裂いていく。
二人の元にも光が到達しようとした時、強化外骨格を纏った男が二人を浚うようにして飛び抜けて行った。
その顔を見遣ると――どう考えても盗賊のアイゼンだった。
だが、明らかに身に纏っているのは白の国の軍部が開発していたモノだ。
「おい、お前なんで白の国の兵器を勝手に使ってるんだ?」
「『借りた』だけだ!! だが妙に馴染むんだこれが――ってそんな話をしに来たんじゃねぇよサンディのアニキ!」
盗賊だった彼はまるで最初からそうだったかのような身のこなしで、二人を抱えて離脱していく。その最中に、サンディは兵器の全容を見た。
宙に浮く天使のような『それ』は不気味な神々しさを放っていた。
まるで、存在が神の使徒であるかのように、淡々と、世界を白紙に戻していく。
けれど、確かに耳に残ったのは――『泣きじゃくるような少女』の声、だった。
「――成る程、終戦から10日経つとこの『終末の福音』と呼ぶ出来事が始まるのですか」
「はい、その通りです……戦争が如何様な結末を迎えても、必ずその『兵器』は現れるのです」
二人は街中の騒動を余所に、淡々と平穏な茶会を続ける。
いや、『大事だからこそ』平静に伝えねばならないのだ。
「私は最初――夜様の教団を疑っておりました。『終末の福音』を崇める教団が存在する、という噂を伝え聞いておりましたので」
「ほう、それは気になりますねぇ……。それは『次なる私達』への伝言と受け取っても?」
彼女はこくりと頷いた。
「私は神に仕えるもの。――平穏を勝ち取った世界でもこのような暴虐を働く存在が神の使いとは、到底思えぬのです」
部屋の窓の真横を強烈な奔流が駆け抜けていく。ティーカップを降ろしながらも夜はふふふと、楽しげに笑う。
「――『平和の為』です。それが真なる平穏に繋がるのであれば、引き受けましょう」
●
――イレギュラーズが見たこのループの結末は、境界図書館に戻ってきた4人のそれぞれの脳裏に色濃く焼き付いていた。
境界案内人が告げていたループの破壊……それに至るには、兵器の齎す『終末の福音』を阻止せねばならないのだと。
……図書館へ戻ってきたイレギュラーズを、境界案内人の男は相も変わらず、けたりと笑いながら迎えたのだった。
成否
成功
状態異常
なし
NMコメント
チェス盤の遊戯をチェスの駒の視点から眺めてみると――?
はじめまして、逢坂灰斗です。
【目標】
・『記憶保持者』を最低1名(プレイング次第では人数が変動します)発見すること。
・(オプション)戦争に関する情報をなるべく集めること
ループの解決には特定運命座標『だけ』では辿り着けず、彼らだけでも辿り着けません。
戦争に巻き込まれ続ける人々の中から解決の為の協力者を得る為のシナリオになります。
【世界観】
2つの国の間で戦争を繰り返し続ける世界。
文化は現代より近未来と行って差し支えありません。
どちらが勝利しても、あるいは両方が滅亡しても、翌日には『開戦日』に巻き戻ってしまいます。
このループのうちに『以前のループ』の記憶を保持出来るようになった人間を、『記憶保持者』と便宜上、境界案内人の彼は呼称しています。
それぞれの国は『黒の国』『白の国』と呼ばれ、それぞれが練達相応の技術力を保持しています。
【結果に関して】
1ループ分の戦争が終わるまで、が期限ですが、プレイングでは部分描写のみになります。
プレイングをしておけばだいたいその通りに動けます。
内容によって発見できる『記憶保持者』の身分や立ち位置はかなり変動します。
上手なプレイングですと1人で2人以上発見出来る可能性があります。
また、『他に調べたい事があれば』プレイングを掛けて頂けると判明することがあります。
※『境界案内人』の彼の名前はまだ不明ですので、突っつかなくても構いません。
では、お目に止まりましたら、宜しくお願いいたします。
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