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シナリオ詳細

怨念を宿せし氷鋼の巨人

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●傭兵、オアシス付近の地下洞窟
 やたらと厚着をした盗賊の一団が地下洞窟の奥深くに入っていた。砂漠地帯であるにもかかわらず肌を刺すように冷え込む中、一団は奥に辿り着く。
「やった! あったぞ!」
 静謐なる氷に覆われた最奥の部屋、その中央に存在するは、貴人に礼を尽くすように跪いた鎧騎士を思わせる、蒼いメタルゴーレム。その背には、砲口が四角になっている砲塔が二門、備え付けられている。盗賊の頭目は、喜び勇んでゴーレムに駆け寄ると、脇腹にあたる部分にある小さなボタンを発見し、操作する。
 すると、プシューッと言う音と共に、胸部の装甲が開く。中には人一人座れる座席と、その左右にボタンのついたレバーがあり、いわゆる操縦席の態をなしていた。
 頭目は座席に座ると、ボタンやレバーをデタラメに操作する。すると、胸部の装甲が閉じて、ゴーレムは立ち上がった。
「動く……こいつ、動くぞ! これなら、そこいらの兵士どもなんか目じゃねえ!」
 だが、リーダーの歓喜はそこまでだった。
「山賊が儂の傑作を嗅ぎつけてきたか……もっとマシな者であればよかったが、贅沢は言ってられんな。貴様の身体、儂のために使わせてもらうぞ……!」
「な、何を言って……うわああああああっ!」
 突如頭の中に響いた声に問うも、次の瞬間にはリーダーは操縦席内に現われた老人の霊体に憑依され、自我を失った。
「お……お頭?」
「有象無象共が、消え失せい!」
 心配そうにする手下達に対し、頭目――正確には憑依した老人――が怒鳴る。すると、ゴーレムの背中の砲塔が左右の肩の上にマウントし、そこから猛烈な吹雪が放たれる。哀れ、盗賊達は瞬時に氷漬けにされてしまった。
「フハハハハ! このゴーレムを認めなかった報い、思い知らせてくれるわ!」
 操縦席に老人の声が響く。同時に、蒼いメタルゴーレムは外に向けて歩き出した。

●ギルド・ローレット
「傭兵にあるオアシス、コドーカからの依頼なのです。コドーカに迫ってくる『フロストメタルゴーレム』を撃退して欲しいのです」
 『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)が、目の前のイレギュラーズ達に向けて依頼について告げた。
 フロストメタルゴーレムは突如コドーカ付近の地下洞窟から現われ、様子を見に来た兵士達に問答無用で吹雪を浴びせかけたと言う。幸いにして兵士達は上手く避けて帰還したものの、コドーカにはこれを如何にか出来そうなほどの戦力は無いと言う事情から、ローレットに依頼が舞い込むことになった。
「このゴーレムですが、過去にある魔術師が防衛戦力としてコドーカに売り込みに来たものらしいのです。その交渉の際にトラブルがあって暴れたので、近くの地下洞窟に封印されていたものを盗賊達が目覚めさせてしまったようなのです」
 ただ、真っ当な神経の持ち主なら絶対に戦力として採用することは無かっただろう、とユリーカは続ける。何故なら、このゴーレムは搭乗者の生命力と精神力を動力とするからだ。
「何でそんな仕様にしたのかボクには理解出来ないですが、とにかく、戦ってダメージを与えていけばこのゴーレムの動力は削れていくので、上手く動力切れに追い込んで欲しいのです」
 そうして、ユリーカはゴーレムの仕様について説明していく。ひととおりの説明が終わると、ユリーカはイレギュラーズ達に笑顔を向けてさらっと告げた。
「完全破壊しろと言うわけではないので、難しい依頼では無いと思うのです。だから、よろしくお願いするのです」

GMコメント

 こんにちは、緑城雄山です。
 今回のシナリオは、ロボっぽい氷属性のメタルゴーレムとの戦闘です。

●成功条件
 フロストメタルゴーレムの動力(HP)を0にする。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●フロストメタルゴーレム
 冷気を放つ金属「フロストメタル」で造られたゴーレムです。全高約10m。
 山賊の頭目の生命力と、かつて共に封印された老魔術師の精神力が動力(HP)となっています。今回は先に山賊の頭目の生命力が、次に老魔術師の精神力が動力として消費されます。
 操縦は搭乗者(老魔術師)の思念によって行われます。レバーとボタンはそんな形をしているだけであって、実は搭乗者の生命力と精神力を動力に変える変換器です。
 絶大な攻撃力と防御力を誇りますが、その重量故に動きは鈍く、操縦する魔術師の能力もあって命中と回避については低くなっています。
 また、一部の例外を除いて基本的にBSは無効です。
 なお、動力を0にしたフロストメタルゴーレムについては、基本的にはコドーカで処理されますが、イレギュラーズ達の希望があればそれを優先してくれます。ただし、自分達で乗ったり誰かを乗せたりするのはNGです。

・攻撃手段
 吹雪放射(アクティブスキル) 神遠域 万能・氷漬・足止
 氷の弾丸(アクティブスキル) 物遠単 万能・弱点・崩れ
 パンチ(通常攻撃) 物至単 防無・体勢不利・氷漬

 ダメージは氷の弾丸>通常攻撃>吹雪放射の順に大きくなっています。

・無効にならないBS
 足止、泥沼、停滞、不吉、不運、魔凶、呪い、封印

●コドーカ付近の砂漠
 今回の戦場です。平坦であり、遮蔽になるようなものは存在しません。砂に足を取られるため、機動力は半減されます。
 なお、命中回避については双方の条件が同じとして、修正なしで判定します。
 飛行もしくは何らかの砂に足を取られない手段があれば、その内容に応じて機動力へのペナルティーを軽減し、命中回避にプラス修正を入れます。

●老魔術師
 フロストメタルゴーレムを売り込みに行った際、トラブルから暴れたためにゴーレムと共に封印されました。
 肉体は朽ちてコドーカへの怨念だけが残っていましたが、山賊の頭目に憑依して恨みを晴らす機会を得ました。
 フロストメタルゴーレムのHPを0にすれば消滅します。

●山賊の頭目
 動力についての情報は知らずにフロストメタルゴーレムを探しに来ましたが、老魔術師に憑依されてしまいました。
 フロストメタルゴーレムのHPを0にする=彼の生命力を使い果たすと言うことですので、戦闘が終わっても助かりません。

●フロストメタル
 周囲に冷気を放つ性質を持つ金属です。下手に触ると凍り付いてしまいます。
 堅さは鍛えた鉄と同じくらいです。

 それでは、皆様のご参加をお待ちしております。

  • 怨念を宿せし氷鋼の巨人完了
  • GM名緑城雄山
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年10月22日 22時45分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ラダ・ジグリ(p3p000271)
剣砕きの
ニーニア・リーカー(p3p002058)
辻ポストガール
レスト・リゾート(p3p003959)
魔法仕掛けの旅行者
ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)
氷雪の歌姫
スィフィー=C=シェイル(p3p007015)
君への子守唄
橘花 芽衣(p3p007119)
鈍き鋼拳
鹿ノ子(p3p007279)
黒犬短刃
ジョージ・キングマン(p3p007332)
絶海武闘

リプレイ

●褒めて、貶す
 ザッザッと砂を踏み固め、遅い速度ながらもコドーカに迫ろうとする、蒼い騎士のような姿のフロストメタルゴーレム。その姿を見て、『堕天使ハ舞イ降リタ』ニーニア・リーカー(p3p002058)はため息をつきながらつぶやいた。
「操縦者の生命力を奪うような危険な物じゃなければ、ちゃんと防衛力になれたと思うんだけどなぁ……」
「そうですわねー……認められず、諸共に封印されてしまったことには同情しますけれどー……」
 『氷雪の歌姫』ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)がニーニアに応じる。もっとも、ユゥリアリアは同情こそすれども、コドーカに被害をもたらそうとする以上は戦って倒すしかないと割り切っている。
(叶った願いの影には、たくさんの叶わなかった願いがあるものだわ。この冷たいお人形は、誰にも認めて貰えなかった悲しい願いの名残……かしらね)
 二人の会話を聞きながら、『夢色観光旅行』レスト・リゾート(p3p003959)は内心で物思いに耽る。そんな「お人形」を誰からも愛される様に変えるアイデアがレストにはあったが、その前にまずは老魔術師の怨念のままに動くこのゴーレムを止めなければならなかった。

 間もなくして、戦闘が始まった。
 ユゥリアリアが祝歌を謡う。それは、聞く仲間を英雄たらしめんとする、旧き詩歌。ユゥリアリアにとって、英雄は何処かにいるものではなく、「作り出す」ものなのだ。
 その歌をBGMに、バサリ、と背中に黒い翼を生やした『絶海武闘』ジョージ・キングマン(p3p007332)が、低空飛行で瞬く間にフロストメタルゴーレムとの距離を詰める。
「ご老人に問う! フロストメタルとこのゴーレムは、ご老人の作品か? 実に見事なものだが」
「ふわっははは! フロストメタルは儂が見つけただけだが、このゴーレムは如何にも儂の作品よ!」
「……なるほど。見事なだけに、残念だ。操舵手を使い捨てる、『欠陥品』だとは。それだけの木偶の坊を動かす動力を、他に見つけられなかったのだろう?」
「……何ィ!? この儂の傑作を、事もあろうに『欠陥品』じゃとおっ!? 許さぬ、許さぬぞおっ!!」
 さらに、フロストメタルゴーレムを一度褒めた上で『欠陥品』と貶し、挑発を試みる。その言葉に、老魔術師の逆鱗は見事に抉られた。
「ふむ。いくら自分の才能が認められなかったからって、逆恨みとはいけないねぇ……? 往生際が悪いったらありゃしないよ。これで、消えてもらおうね……さぁ、前奏曲だ。始めようか」
 『空の天蓋』スィフィー=C=シェイル(p3p007015)は、老魔術師の在り様に半ば呆れながらも、ユゥリアリアの歌に合わせて勇壮な曲を奏でていく。その旋律は、イレギュラーズ達の心を大いに勇気づけ、奮い立たせた。
「貴様……死ねえっ!!」
 挑発によって激怒している老魔術師は、ジョージに零距離砲撃を試みる。だがジョージは悠々と回避し、弾丸が着弾した地点の砂が大きく爆ぜるのみだった。
「狙いが雑だ。所詮は『欠陥品』か」
「お、おのれえええっ!」
 挑発を重ねるジョージに、老魔術師はさらに激昂した。
(ゴーレム、ね……そのまま眠っていればよかったのに……)
 その攻防の間に、『鈍き鋼拳』橘花 芽衣(p3p007119) がフロストメタルゴーレムの後方に回り込む。
「足を止めるよ!」
 そして、ジョージと挟み込むようにして、フロストメタルゴーレムの移動を完全に封じ込めた。

●失われた、膝
(頭にあるのは確実なのだが……)
 後方からそれまでの攻防を見ていた『静謐なる射手』ラダ・ジグリ(p3p000271)は、フロストメタルゴーレムの頭部に相手の動きを察知するカメラなりセンサーなりがあることを看破していた。普通の人間と同じように、相手の動きに応じて頭部を向けていたからだ。
 しかし、その頭部はフルヘルムのような装甲にほぼ完全に覆われており、微かに目の部分にスリットがあるだけだった。
(……仕方ない。膝を狙うか)
 スリットの隙間を狙ってセンサーを破壊するのは困難と判断したラダは、フロストメタルゴーレムの左側面に回り込み、膝の裏側を狙う。
 大口径ライフル『Schadenfreude』による狙撃手の狙い澄ました一撃は、関節の結合部の最も脆い部分をズドンと直撃した。膝から下がガクガクと不安定にぶれる。
「砂漠で足を取られるのはどうしようもないッスけど、僕の幸運の前には些細な問題ッス! 凍気への耐性もばっちりッスから、気合い入れて行くッスよ!」
 そこに、『花紅柳緑』鹿ノ子(p3p007279)が足場の悪さに悪戦苦闘しながらも駆け寄ってくる。
「躱せるものなら躱してみろッス! 僕の幸運は伊達じゃないッスよ!」
 太刀『秘想霏霏蒼天』を手に、舞うような連続攻撃を繰り出す鹿ノ子。太刀が三度閃き、破壊されかかっている結合部を斬り刻む。そうして左膝から下を喪ったフロストメタルゴーレムは、ぐらり、と左によろけて倒れた。
「やった! 畳みかけるよ!」
 今が好機とばかりに、鉄機鋼外殻(ヘカトンケイル)に覆われた拳で、芽衣はフロストメタルゴーレムを殴りつける。固い金属同士がぶつかり合う音が、戦場に響く。
 さらに、装甲の薄い部分を狙ったジョージの重い拳が、フロストメタルゴーレムの身体をズン! と揺さぶった。直接触れれば張り付いたり凍傷に陥ったりしかねないためにグローブ越しではあるが、その威力が落ちた様子は見受けられない。
「この茨からは、逃がさないよ」
 スィフィーの指先から、茨が伸びる。茨は瞬く間に、倒れたフロストメタルゴーレムの身体を雁字搦めに絡め取った。
「おのれ、小癪な!」
 老魔術師は吼えたが、イレギュラーズ達の攻勢は止まらない。フロストメタルゴーレムが茨に束縛された隙に、ユゥリアリアは影解きの氷面鏡をフロストメタルゴーレムに向けて掲げ、動力と共に老魔術師の気力を奪う。
「今回のことは、完全に自分勝手な逆恨みだよね? そんな我儘で人に迷惑かけちゃダメだよ!」
 老魔術師を叱るように叫びつつ、ニーニアは赤い手紙の心剣士を召喚して攻撃させる。その一撃で、フロストメタルゴーレムは呪詛に囚われた。
 さらにラダの射撃とレストのピューピルシールが命中する。だが、ピューピルシールの封印には老魔術師が必死になって耐えた。

●吹雪と反撃と
「貴様等……儂の傑作をこんなにしおって! 絶対に、許さんぞ!!」
 操縦席で、老魔術師が吼える。束縛する茨を強引に引き千切りながら、フロストメタルゴーレムの上半身を左腕で起こす。
「……吹雪が来るぞ!」
 砲塔に冷気が集う音を捉えたラダは、接近戦を行っている仲間達に警告を放つ。フロストメタルゴーレムの砲塔から、鹿ノ子に向けて、吹雪が放たれる。
「……しまったッス!」
 回避を、と思ったその瞬間、鹿ノ子は運悪く砂に足を取られてしまう。幸運の反動が、ここで出てしまった。直撃を受けた鹿ノ子は氷に覆われこそしなかったものの、半死半生にまで追い込まれた。もう一撃、耐えられるかどうかさえ怪しい。
 鹿ノ子の受けたダメージの大きさに、ニーニアは自身の前に郵便ポストを召喚。
「郵便妖精ちゃん、お願い!」
 ポストから飛び出した郵便妖精が、吹雪を受けてしまった鹿ノ子とユゥリアリアのダメージを癒やしていく。
 さらに、ユゥリアリアもブレイクフィアーで自身と鹿ノ子を癒やす。
「その砲撃、危ないわね~。おばさん、今度こそ決めるわよ~」
 レストは再度、ピューピルシールでフロストメタルゴーレムの能力の封印を試みる。今度は老魔術師も抵抗しきれず、砲撃は封じられた。
「これはお返しッスよー!」
 大ダメージのお返しとばかりに、軽やかにして艶やかな、熱狂的な剣舞で鹿ノ子はフロストメタルゴーレムを攻め立てる。そのダンスは、フロストメタルゴーレムの運命を狂わせ不幸に落とした。
 芽衣は再びショットガンブロウを、それとほぼ同時にラダが『Schadenfreude』による射撃を、フロストメタルゴーレムに叩き付ける。
「硬い……な。だが、幾ら硬かろうと、無敵ではない! 倒れるまで攻め続けるだけだ!」
「そうだね……それに、どれだけ硬くても死者の怨念には意味が無いよ」
 立て続けに浴びせられる攻撃を耐え、左足こそ喪ったもののなお平然と動き続けるフロストメタルゴーレムの姿に、ジョージは舌を巻いた。その一方で、叫びを上げて気合いを入れ直し、再び装甲の薄そうな部分を狙って拳を叩き付ける。
 スィフィーはジョージの叫びに同意を示しつつ、死霊弓を放つ。放たれた死者の怨念は、スィフィーの言葉どおり、装甲など存在しないかのようにフロストメタルゴーレムの全身にまとわりつき、動力を奪い取っていった。

●猛攻と猛攻
「ちッ……まぁ、よく保った方か。だが、こうなった以上は此奴らをとっとと蹴散らさねば……何故だ!? 何故、撃てん!?」
 ジョージとスィフィーの攻撃を受けた時点で、山賊の頭目の生命力は尽きた。老魔術師は舌打ちしつつ、早期に決着を付けるため、再び鹿ノ子を中心に吹雪を浴びせようとする。だが、砲塔が作動しない。狼狽する、老魔術師。
 しかし、それならばと老魔術師は鹿ノ子を殴りにかかる。ここで再び不運が鹿ノ子を襲ってしまい、フロストメタルゴーレムの拳は鹿ノ子に直撃した。
「やったぞ! ふはははははは!」
「……誰をやったって言うッスか?」
「……馬鹿な! 何故立っていられる!?」
 鹿ノ子を倒したと確信した老魔術師は、操縦席の中で高笑いを上げる。しかし、パンドラを費やして戦闘不能から回復し、よろめきながらも立ち上がってきた鹿ノ子の姿に、老魔術師の高笑いは驚愕に変わった。
「鹿ノ子ちゃん、大丈夫?」
 芽衣が、すかさず鹿ノ子を庇いに入る。フロストメタルゴーレムの歩行はほぼ不可能となっており足止めの必要性が薄れた一方で、鹿ノ子がもう一度戦闘不能に陥れば今度は復活することが出来ないから――と言う理屈の前に、正義のヒーローとして身体が自然に動いていた。
 さらに、ユゥリアリアのブレイクフィアー、ニーニアのフェアリーポスト、そしてレストのミリアドハーモニクスが鹿ノ子を癒やす。
「みんな、ありがとうッス! その腕、叩っ斬るッス!」
 禍福は糾える縄の如し、と言うべきか。今度は、鹿ノ子に幸運が巡る番だった。ダメージが完全に消えた勢いで、フロストメタルゴーレムの右肩を狙い、『秘想霏霏蒼天』を二度閃かせ、深々と斬り裂く。この攻撃だけでは右腕を完全に切断するには至らなかったものの、ジョージの海鳴が斬り裂かれた場所に追い撃ちをかけて、フロストメタルゴーレムの右腕を肩から千切り飛ばした。
 スィフィーは再び死霊弓を放ち、装甲の隙間に直撃させる。突き刺さった死者の怨念はフロストメタルゴーレムの全身を覆うと、装甲をすり抜けるように内部に浸透していき、老魔術師の精神力を着実に削っていった。
「老魔術師よ、撃つ前に聞きたい。フロストメタルを別の形でも活用したくはないか? 望みはないか?」
 商人として、良い品は良い買い手へと渡したい、問題があれば解決し、あるいはより良い形へと変えて渡したいと、ラダは考える。フロストメタルゴーレムの人命を消耗する点は確かに問題ではあるが、それを以てフロストメタルの特性も、訓練せずに操縦出来るゴーレムも、全否定する気にはなれなかった。
「望みだと!? そんなもの、コドーカの連中にこの儂の傑作で報いを与える他にないわ!」
 だが、老魔術師は肉体が滅びてまでも怨念として世界に残り続けた存在である。その妄執は頑なであり、別の可能性を考える柔軟さはとうの昔に失われていた。
「……そうか、残念だ」
 この回答をある程度は予想していたのか、言葉ほどには残念そうに感じられない口調で独り言ちながら、ラダは静かに『Schadenfreude』の引金を引いた。フロストメタルゴーレムの上半身を支える左腕の肩を、弾丸が貫く。
「くっ……おのれえええええっ!」
 もう後がなくなった老魔術師は、右腕を曲げてから一気に伸ばし、フロストメタルゴーレムの上半身を跳ね上げて浮かせる。そして、自由になった右腕を鹿ノ子に叩き付けんとする。しかし、芽衣が鹿ノ子を庇い、フロストメタルゴーレムの拳をその身に受けた。
 老魔術師の最後の意地を乗せた一撃は芽衣に直撃。重すぎる衝撃に芽衣は戦闘不能に陥り、パンドラを費やしてようやく立ち上がる。だが、それがフロストメタルゴーレムの最後の攻撃となった。
 支えを失ったフロストメタルゴーレムの上半身が、ズシン、と砂漠に倒れる。こうなっては、ただイレギュラーズ達の攻撃を受ける的となるのみ。
「これで、終わらせるよ……! ……恨まないでよ? 極光崩『黎明』!」
「ぐああああああっ! 無念……っ!」
 ニーニアのフェアリーポスト、レストのミリアドハーモニクスを受けて回復した芽衣が、フロストメタルゴーレムから距離を取り、手を前に突きだして極太の光線を浴びせる。その一撃を最後に、フロストメタルゴーレムは沈黙し、老魔術師はこの世界から消滅した。

●決着の後、それぞれの……
「……さて、このお人形をどうするかだけど~」
「どうするかは任せるけど、先に操縦出来ないようにはしておきたいね」
「そうだな。では、操縦席のレバー類は壊しておくか」
 戦闘が終わって、イレギュラーズ達はコドーカの人々の手を借りて、フロストメタルゴーレムをコドーカに運び込んだ。そしてこれを如何するかとレストが話題に乗せたところで、ニーニアが意見を述べる。それはもっともだと、操縦出来ないようにジョージが早速レバーやボタンをハンマーを振るって叩き壊しにかかった。
「それで、このお人形を建物で覆って、避暑地にしてみるのはどうかしら~?」
「悪くないアイデアだな」
「そうだね、きっといい観光地になるよ」
 レストの提案に、ラダもスィフィーも賛同の意を示す。
「しかし、避暑地と言っても私達にはノウハウが……」
「あら、心配しないで? おばさんにはコネクションがあるのよ~」
「私にも、コネクションがある。相応の形になるよう、協力しよう」
 考えもしなかった提案にコドーカの代表は困惑するが、レストはホテルや旅館を経営している両親から助力を得られるから大丈夫と説き、ラダも自身のコネクションを用いようと申し出る。
 さらにジョージの冷蔵施設も作ってはどうかと言うアイデアも容れられ、「コドーカ避暑地化プロジェクト」は動き始めた。
「ふふ、楽しみだね」
 プロジェクトが上手く進めば、コドーカは砂漠で涼める観光地として発展するだろう。その時には、依頼ではなくプライベートで再びこの地を訪れよう。何時になるかはわからないが、スィフィーはその時に想いを馳せ、微笑んだ。

「うーん……わからないですわねー……」
 ユゥリアリアはコドーカの資料室に通してもらい、フロストメタルや動力の変換器について調査を行っていた。だが、老魔術師はそもそもコドーカ出身というわけではなく、この地にはフロストメタルゴーレムを売り込みに来たに過ぎないだけに、満足いく情報は得られなかった。
 それでも、当時の記録から老魔術師は何らかの組織に属している様子はなかったこと、また、生命力や精神力を動力に変換するシステムはおそらく老魔術師独自の技術であることは判明した。
「……ひとまずは、これで良しとしましょうかー」
 少なくとも、この技術が誰かに用いられて事件になる可能性は限りなく低い、と判断したところで、ユゥリアリアは調査を打ち切った。

 何重にも布で包まれたフロストメタルゴーレムの左足を乗せた荷車を、ホクホク顔で芽衣は引いている。これを素材に手甲を強化するのが、楽しみでならないのだ。
「……鹿ノ子ちゃん、どうしたの?」
 その最中、簡素な墓石を前にして沈痛な雰囲気の鹿ノ子を見つけて、芽衣は声をかける。
「芽衣さん……」
 鹿ノ子は、目の前の墓石が操縦席に乗っていた山賊の頭目の墓であること、いくらフロストメタルゴーレムの封印を暴こうとしたにせよ、老魔術師にされるがままに命を失ってしまったのは可哀想だと芽衣に語った。
「そう……」
 確かに、盗賊の頭目にも非があるのは否定出来ない。しかし、それが命を失うほどの罪かと言えば、芽衣にはそうは思えなかった。
(……歪んだ怨念の故に命を失った彼の魂に、安らぎがあらんことを)
(……せめて、安らかに眠って下さいッス)
 墓石を前に、山賊の頭目の冥福を祈る二人だった――。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 シナリオへのご参加、大変ありがとうございました。いやはや、今回はクリティカルの威力とファンブルの怖さを痛感しました。
 危機が去り、「避暑地化プロジェクト」が動き出したコドーカの今後についてはまた別の話となりますが、何時か別のシナリオでプロジェクトが進んだコドーカの姿を描く機会があればと思います。
 お疲れ様でした!

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