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シナリオ詳細

<黒殺世界>千の魔手

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●『魔手』の最後

 ――或る所に、『魔手』と呼ばれる男がいた。
 その名の由来は、数々の暗器を扱う彼の手が、まるで魔法のようだった事。
 そして、彼の手に掛かった者はまるで魔王の手に掴まれたかのように、生きては帰れなかった事。

 だが、そんな彼ですら、老いには勝てず。
 偶然にして階段から落ちる事により車椅子なしでは動けない身となってしまった。
 無論、これを見逃す程、皆は甘くはない。
 身内を殺されたなどして、彼に恨みを持つ者はいうに及ばず――彼の雇い主だった筈の組織ですら、彼が知っていた組織に関する知識を永遠に葬り去るために、彼に代わる新たな殺し屋を送り込んだのだ。

 ――だが、それらの者は誰一人として帰ってこなかったのだ。
 そう、彼らの死体すらも。

「その首、もらった――」
 刀を携えた男が横から、車椅子の老人に飛び掛かる。
「……まだまだ甘いのう」
 刀が老人の頭部に届こうとした刹那。車椅子のホイールからブレードが伸び、高速回転するホイールがそのまま男の胴を切断した。
 鮮血を頭から浴びながら、老人は平然とした表情を浮かべる。まるでこれこそが日常、とでも言わんばかりに。
「ならばこれで――」
 拳銃を取り出し、狙いを定める。
 だが、トリガーを何発引いても、老人には当たらない。
「な、何故だ…」
「もっと目を鍛えんか。わしがトリガーを引く瞬間そなたの銃身に鏃を当てて逸らしているのも見えんかの? ――鍛えるつもりがないのならば、こうじゃが」
 男の目に短矢が突き刺さる。

「ふん、窓際に寄ったのが運の尽きよ」
 隣のビルの上から、スコープを覗き込む男。
 トリガーを引くとともに、弾丸が一直線に、老人の背中へと――
「……安全圏から一方的に、は正しい判断じゃが…その分対応時間を与えてくれるんじゃよ」
 車椅子の中から、布を引き出す。
 それを広げて、飛来する弾丸を包み込んだかと思えば――
 ――そのまま、投げ返した。
 
「最近の若いもんは根性がないのう。
 …わしももう長くはない。せめて昔のような、血沸き肉躍る戦いがしたいものじゃがのう…」
 彼に倒された者たちの死体が、泡を立てながら溶けていく。
 
 
●黒殺世界への案内

「お初にお目にかかります、皆様方」
 優雅に一礼したその男には…顔がなかった。
 いや、正確に言えば、その顔は白塗りののっぺらぼう、としか形容の仕方がなかった。

「私、『アッシュフェイス』と申す者でございます。ジェミニの双子には、もうお目に掛かっているものかと思いますが、私も彼、彼女と同様、『境界案内人』の一人にございます」
 顔を上げると、そののっぺらぼうが、笑うように歪んだ。そんな気がした。

「私が担当する世界は…殺し合いが絶えない名も無き世界。私は『黒殺世界』と呼んでおりますな。今回の皆さま方の役目は、この世界の強者の一人――『魔手』と呼ばれる者を殺害することに御座います」
 まるで投影されるごとくその場に映し出された画像にあったのは、車椅子に座る一人の老人。

「彼の寿命は最早長く御座いません。…目的を達成するだけならば、逃げ回るだけでも可能でしょう。…ただ、折角なので…皆様も己の強さを計ったり、彼との手合わせを通して何かしら学びたいと思う方はいるでしょう。
 ――その様な方が来ている事を、私は祈りますよ」

 のっぺらぼうのその面が、また笑った気がした。

NMコメント

剣崎と申します。
初めての方も、どこかで見知った方もいらっしゃるかと思いますが、よろしくお願いいたします。

さて、今回はご老人1人の相手。
アッシュフェイスの言う通り、勝つだけならばただ逃げ回るだけでも大いに結構。ですが、それでは面白くはないでしょう。
折角ですし、彼相手に腕試しも良し。逆に希望するならば、彼の方から何かの「指摘」もあるかもしれません。

『魔手』の能力傾向は:
・攻撃系、反応、クリティカルが全て低め。老いと後の先の戦法故に、ですね。
・逆に命中、回避、抵抗、防御等は高い。

主な攻撃は様々な投擲暗器で、物によっては【乱れ】【崩れ】【体勢不利】、また設置型の暗器は【防無】【カ近】が追加されます。
但し設置型の物は戦闘中に再設置することは不可能で、開始時に設置された物(凡そ10個)を使い切れば終わりとなります。
罠解除の非戦があれば、主行動1つを消費して確実に1個解除、副行動を消費し50%で1個解除可能です(但し50%判定に失敗した場合は即座にその設置型が発動します)

その他に以下のパッシブ、非戦を持ちます。

[パッシブ]
【魔手】全ての攻撃に【猛毒】【流血】が付与されます。
【四元甲】四回以上自分が付与するBS抵抗判定に成功された場合、次の1回の行動に【災厄】が付きます。該当行動後カウントはリセットされます。
【八方殺】八回以上自分が付与するBS抵抗判定に成功された場合、次の1回の行動に【疫病】が付きます。該当行動後カウントはリセットされます。(【四元甲】とは別カウント)
【天羅布】遠距離以上の射程の攻撃を「回避」した場合、その攻撃をそのまま反射します。
(他のパッシブスキルが乗ります)

[非戦]
暗視
透視
ハイセンス
ファーマシー

敗北する可能性はないとはいえ、どうせならかっこよく勝ちたいのが人の性。
皆さまの戦術をどうぞ、お試しください。

  • <黒殺世界>千の魔手完了
  • NM名剣崎宗二
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2019年10月17日 23時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

ノリア・ソーリア(p3p000062)
半透明の人魚
ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)
祝呪反魂
ラルフ・ザン・ネセサリー(p3p004095)
我が為に
白薊 小夜(p3p006668)
永夜

リプレイ

●意外な訪問者

「殺しの術を、教えてもらいたいですの」

 ――扉を開けた時。そこにいた少女から掛けられた言葉は、『魔手』の予想外の物であった。
 一瞬、冷やかしか、と思い…暗器に手を掛ける。然し。

「……」
 少女の真剣な瞳が、彼に何かを訴えかけたのだろう。
「……良いじゃろう。じゃが、わしの技は教える物ではない。……わしを狙う者が、これから襲来するじゃろう。その対処を見て学ぶが良い。……それが出来ぬのならば――」
 天井から、黒い影が、老人の背を狙って降下する。然し次の瞬間。無数のワイヤーが周囲から噴出され、その影を細切れにした。

「――お前さんも、弟子たる資格がなかった、と言う事じゃ」

 普通の人間ならば、ここで怖気ついて逃げる事とてあるだろう。
 だが。少女は。――ノリア・ソーリア(p3p000062)は。僅かに笑みを浮かべ、
「はいですの」
 ――とだけ、答えたのだ。


 ――何日か後。

「お疲れですの」
 魔手が、服についた血を払うその隣から、すっと差し出される湯呑。
 それを手に取り、ごくりと喉を鳴らす。
「毒はお気になされませんの?」
「……入ってたら、手に取った瞬間に気づくわい」
 返された湯呑。しかし、それを彼女は取り落した。

 パリン。
「すみません、今お掃除いたしますの」
「良い」
 箒とちりとりを持った彼女を、然し『魔手』は制止した。
 車いすから取り出した布を振ったかと思えば、一瞬にして、湯呑の欠片は消え去ったのだ。
(「……隙がないですの」)
 だが然し。この間の観察で、『魔手』が彼女に「触れさせないように」していた場所は、大まかには把握した。
 その場所に「奥の手」が隠されている、と言う事なのだろう。

 そして――彼女が待っていた「本命」が、到着した。
●襲来する刃たち

「初めまして、私は白薊小夜。本日は『魔手』と呼ばれるその手管、是非ご指南賜りたく参りました。」
 名乗りと共に、白刃を抜き放つ白薊 小夜(p3p006668)。
 初手から全速全力準備万端。放たれた無数の斬撃は、名乗りを聞いた事で準備できていた筈の魔手ですら回避しきれず、鮮血を散らす。

 ――だが、浅い。
 小夜は卓越した剣の技術により、『魔手』の防御をもすり抜けた。
 しかし、命中の直前に『魔手』は急所をずらし、致命傷を避けていたのである。
「……今までの者たちとは、違うようじゃな。危うく一撃で逝く所だったわい」
「その割には、まだまだ余裕がありそうですね」
 引いた小夜のその手の甲には、鏃が2本、突き刺さっていて。触れた血が、たちまちに色を変えた事が、その毒性を示していた。
「…っ」
 彼女には、それが来る事は分かっていた。目が見えぬ故にほかの感覚に優れるの彼女だからこその利点。
 だが、暗器は純粋に「疾かった」。攻撃に特化した彼女が回避するには、聊か困難だったと言える。

(「あの一瞬で設置したもんを発動させたってのか…!?」)
「コソコソするでない」
 放たれた矢が、門に突き刺されば。それを盾にしたレイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)が、まるで影から実体化するように出現する。
「……ほれ、忘れものじゃぞ」
 投げつけられたのは、偵察に使ったコウモリのファミリア。撃ち落されて回収されていたのだろう。その腹部には、小夜の手の甲に刺さった物と同じ類の鏃が。

「――小細工は好かないンで、こうなった方が望む所だ」
 その手から噴き出す鮮血が、身体の周りをまるで意思を持つかのように一周する。
 そしてそれは、レイチェルの眼前に、複雑な魔法陣として結実する。
「燃えろッ!」
 放たれるのは血の様に紅い炎。それは『魔手』に纏わりつき、焼き尽くさんと――
「むぅん!」
 裂帛の気合と共に、炎が、まるでに『魔手』の持つ布に吸い取られるかのように消える。
 流石に距離が足りないのか、投げ返してはこない。

 ――元より、『魔手』は回避、抵抗共に強い。暗殺業故の身のこなしと、長い年月「毒」を扱ってきたが故なのだろう。故に、その身に干渉するのは至難の業。
 だが、レイチェルの術式はその派手さもあり、十二分に『魔手』の注意を引いた。

「……!」
 機を逃す事は無く、小夜が動く。
 より疾く。より強く。己が肉体への負荷を顧みぬ高速の剣閃が、三条の光刃と化し、斜め下から『魔手』を襲う。
「む…っ!」
 車いすのホイールから刃を突き出し、回転させる。
 その刃で強引に『魔手』は小夜の刃を受け止めるが……一合の内に、ホイールは砕け散る。
 残り二条の光刃は、それぞれ魔手の左足と右脇腹を抉った。
「鉄をも断つか……成程、嬢ちゃんは相当の修羅場をくぐってきたようじゃの」
 感心したように、『魔手』が微笑む。
 対して小夜はただ、光なき目を『魔手』に向けた。
 ――その背には、もう2本の針が突き立っていて。


●『情』と『死』

 一方。まるでその戦いを見物しているように、動きを抑えていたノリアもまた。『魔手』の注意がレイチェルに引かれた瞬間に動き出した。
(「えーっと…確かここら辺…ですの」)
 記憶の中から、『魔手』が彼女に接近を禁じた場所を引き出し、そこに手を伸ばす。
「ビンゴ、ですの」
 その先にあったのは、設置されていた矢の発射装置。裏に繋がっていた糸を、引きちぎる。
「…気づかぬとでも思ったのかの?」
 その瞬間。ノリアの背中に、一本の針が突き刺さった。
 振り向く彼女に、『魔手』の冷たい目が向けられていた。

「……気づいていたのですの?」
「隠そうとしてもおらなんだからの」
 『魔手』には、ノリアもまた、彼を殺しに来た人間であると知っていた。
 今までも、彼自身の弟子を使って彼を殺そうとした組織はいたのだ。
 ――半身不随になっても尚、彼の周りには誰もいなかったのは…つまりはそう言う事なのだ。

「――余所見とは、随分嘗められたもンだぜ…!」
 接近戦。小夜が息継ぎする一瞬を埋めるように、不可視の刃を以って、レイチェルが間合いへと飛び込む。
 迎撃とばかりに放たれた刃のついた小型のブーメランが、後ろから肩へと突き刺さる。
 だが、まるで痛みはない、とばかりに、獰猛な笑みを浮かべながら、彼女は突進を続ける。
 一閃。肩口から脇腹まで、斜めに血の跡が刻まれる。
 命中と威力のバランスが取れたその一撃は、『魔手』の技術を持っても回避はできず。
「やってくれるのう…!」
 血反吐を吐きながらも、無数の鏃が、『魔手』の袖口から放たれる。
 元より火力を高める代わりに防御力を捨てたタイプであったレイチェルは、それを回避できず、まともに受ける結果となってしまう。

 入れ替わりに、小夜が前進する。
 しかし、最大速力を出せる体力は最早なく、それ故に放たれた崩しの剣も、先ほどに比べれば精彩を欠き、回避されてしまう事が大半。
 対して二人の猛攻に体力の大半を奪われたとは言え、未だに『魔手』の動きが衰えないのは老練の技故だろうか。
 設置型の罠の解除に動くノリアだが、『魔手』の牽制を受け続ける関係上集中ができず、また解除しようとしていた罠が別の物に連動する事が発覚することもあり、思うようには進まない。

「ふん…!」
「っ…!」
 車いすの背から射出された棘付き鉄球に、レイチェルが壁に叩きつけられる。
 追撃を阻むべく、小夜の剣閃が奔るが、捉えたのは車椅子のみ。純粋に「運が悪い」か。
 ――両腕の力のみで己を空中に跳ね上げた『魔手』が、無数の暗器をレイチェルの方へと向ける!
「だめですの!!」
「……!」
 大人しい彼女のどこからそのような声が出たのだろうか。
 手を広げて二人の間に割って入ったノリアが張り上げた声は――僅かながら、『魔手』の動きを鈍らせた。

「……ただで、やられるかよ…!」
 壁に縫い付けられながらも、腕を『魔手』の方へと向けるレイチェル。
 指差すような形を取ったその指先に、紅の光が集い――弾丸と化して、『魔手』を打ち抜く!
 精神力のほぼ全てを注ぎ込んだ紅の弾丸は、僅かな間だけ、『魔手』の意識を刈り取る。それでアタッカーの二人にとっては十分だった。

「これで…最後です」
 小夜が構えた剣が映し出すは、花の名を持つ殺人鬼から写し取りし凶技。

「あンた、強かったぜ」
 無理やり肉体を引きちぎるようにして、拘束から脱出するレイチェルが、再度その手に不可視の刃を具現化する。

「「せめて最後は、苦しまずに一撃で――!」」
 前後から。凶剣が。不可視の魔刃が。同時に、『魔手』の命脈を、断ち切ったのであった。


●流れし物

 剣を鞘に戻し、背を向ける小夜。
 血を振り払うように手を振るレイチェル。
 二人がその場を離れた後。残ったのは、ノリアのみ。

「これも、弱肉強食の理――ですの」

 ただ一言、そう呟き。
 彼女は窓の外の川に飛び込み、元の――人魚の姿へと戻る。
 その表情は、一種の「諦観」を含んでいるようで。

 ――かくして、『魔手』の体もまた、彼が倒した数々の殺し屋同様、泡立つ液体となり、消滅した。
 だが、この『黒殺世界』に殺戮が途絶えることはない。
 それが、この世界の、『理』なのだから――

成否

成功

状態異常

なし

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