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シナリオ詳細

冬を進む足は凍てついて

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●凍てつく雪の書
 ざくざくと、踏みしめる雪は足をとり。
 びゅうびゅうと、吹きすさぶ風は行く手を阻む。
 手の感覚はとうに失い、最初は痛みを訴えていたそれは今ではもう、なにも感じないほどに凍えている。
 それでもこの小さい影は、進むのをやめなかった。
 一体なにが彼、もしくは彼女をそこまで突き動かすのか。読み手(イレギュラーズ)にそれを知る術は、今はない。
「……――――、」
 あぁ、今に影は――倒れこみ、雪に埋もれて逝ってしまうだろう。

●『図書館』
「ここにひとつの物語(ライブノベル)がある」
 青い装丁のハードカバーを手に、『ホライゾンシーカー』カストル・ジェミニは語り始めた。
 凍てつくような青の本は、周囲まで凍らせるかのような冷気を放ってただ、そこに在った。
「物語の主人公は小さな子供。彼……、もしくは彼女は探し物をするために吹雪の野原を歩いている」
 何のために? 誰のために? 疑問は尽きないが、そのままこの子供を放っておけば、この子は雪の中で凍え死んでしまうだろう。
 一先ず子供を保護すればいい、とカストルは語った。
 どうやら近くには山小屋があるようで、そこに逃げ込めば吹雪は凌げるようで、暖炉もあるようだ。
 ……暖炉が使えるかどうかは、別問題だが。  
 「さぁ、君たちの最初の仕事だよ。この子供の運命を変えてきておくれ」
 この物語は、ここから始まるのだから。

NMコメント

ライブノベルでははじめまして、ノベルマスターの樹志岐と申します。
先ずはオープニングを見てくださり、ありがとうございます!
一生懸命頑張りますので宜しくお願いいたします。

【目標】
『子供』の避難と無事に朝を迎える

【現場】
5メートル先も見えないほどの吹雪が吹きすさぶ雪山です。
すぐ近くにはどうやら山小屋があるようで、中には机、椅子、薄い布切れだけの固いベッド、暖炉等があります。
ただし、暖炉には燃やすものも火種になるものもないようです……。

朝がくれば吹雪は止むでしょう。
ですが、暖をとるだけでは子供は助けられないようです。

貴方は子供をどうやって救いますか?
皆様の選択をお聞かせください。

  • 冬を進む足は凍てついて完了
  • NM名樹志岐
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2019年10月24日 23時35分
  • 参加人数4/4人
  • 相談10日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

ウェール=ナイトボート(p3p000561)
永炎勇狼
アルテミア・フィルティス(p3p001981)
銀青の戦乙女
錫蘭 ルフナ(p3p004350)
澱の森の仔
ペッカート・D・パッツィーア(p3p005201)
極夜

リプレイ

●吹雪の中を進め
 さむい。いたい。でもすすまなきゃ。
 影は一歩、また一歩と進む。その道を。大切なそれを探すために。
 探しても探しても、見つからなかった。だからこんなところまで来てしまったけれど。だいじょうぶ、誰も心配なんてしていない。
 だから、進む。もう帰る場所なんてないから。
 あぁ、でも――もうあるけないや。
 ぐらりと世界が反転する。倒れ込んだ雪の布団はふわふわしていて、冷たいけれどとてもよく眠れそうな気がした。
 ――いきてあいたかった、な
 出来る事なら死にたくなかった。生きて、さがしだして、またその温もりに包まれる。そんなありきたりで幸せな夢を……
「よぉ、こんなところで野垂れ死か?」
 そのとき、あきらめていたわたしは、『天使』のこえをきいた。
 ……たぶん、きっと。

●命を掬うもの
(例え異世界の事なのだとしても、私はこの手が届く限りその命を守りたい……)
 だから、どうかお願い。『生きたい』と願って。その声は必ず掬い上げるから。
 雪原の中心で目を閉じ、意識を集中させる。声なき感情(こえ)は強風でたなびくクロースの耳障りな音を無視して感情探知を始めた『Righteous Blade』アルテミア・フィルティス(p3p001981)の耳に届く筈だ。
「んー、こっち側にそれらしいヤツはいないな。そっちはどうよ?」
 自身に降りかかった雪をパタパタとはたき落としながら『極夜』ペッカート・D・パッツィーア(p3p005201)が山小屋の方面から近づいてくる。
 寒さ対策をしている彼女らは子供――話から察するに、きっと少女だろう――を探すために外に出てきていた。
「まだね。彼女が近づいてきていないのか、私たちが見当違いのところを探してるのかわからないけど」
 ふぅ、と息を吐いて答える。まだしばらくは大丈夫そうだがあまり長い時間吹雪に当てられてはこちらも凍傷を負ってしまいそうだ。
 ともあれ、山小屋を背にした半径100m圏内にはいないらしい。探知を続けながら場所を移動した方がよさそうだ。
 柔い砂の上を歩くように歩きにくい道なき道を今度は東に進んでいく。
 手遅れになってしまったら。そんな焦燥感が2人の心に影を落とす。
「……あ」
 小さく漏らした声。感情を拾い上げる網の中に意思ある何かがかかった。
「この先だな? 行って来らァ!」
 それをペッカートも察したようでアルテミアと視線が交わった瞬間に駆け出していく。
 はやくはやく。掬い上げなくては、と。

●命を救うもの
 時間はイレギュラーズがこの地にやってきたばかりに遡る。
「全く、雪山でたった一人で探し物とは無茶すぎるな」
 ため息混じりに『守護する獣』ウェール=ナイトボート(p3p000561)は呟いた。
 大人か、せめて友人に頼るなどすればよかったものを。子を持つ親としては、この子の無謀な勇気は称賛できるものではない。
「まぁまぁ。チビに必要なのは説教じゃなくて休息だよ」
 そんな彼を宥めながら『猫派』錫蘭 ルフナ(p3p004350)は小屋を見渡す。
 埃をかぶってはいるものの、山小屋自体は隙間が空いてる様子は見られない。
 季節さえ違えば、現在も現役で機能しているようで持ち主の忘れ物か幾らかの薪と調理器具の類も確認できた。
 火種となりそうな枯れ葉に、ルフナの持ち込んだカンテラから火を分けてもらい、暖炉に火を入れる。
 炎というものは子育てのようであることをウェールは知っている。
 薪をくべるタイミングを間違えると途端に火は弱まってしまう。子供も言葉掛けの一つでやる気をなくしてしまうものだ。
 炎が安定して燃え続くようになるまで気を緩めてはいけない。
 一方でルフナは持ち主の置き忘れていった鍋の類のチェックを始めた。
 湯を沸かすだけならば問題ないだろうが、それを口にするのは小屋に入った時の埃っぽさから察するにあまり適さないだろう。一度雪を溶かして濯ぐなどしなくてはなるまい。
「……ん、火が安定してきたな」
 中腰だった体勢をようやく崩し、伸びを一つ。彼女らが戻って来る頃にはきっと暖かな室内で出迎えることができるだろう。
 ほら、もう少し。風の唸り声と共に探し者は現れるだろう。

●至る経緯
 あたたかなおうち。やさしい『     』。
 思い出の中のあの場所に似た景色。
 これはゆめ? ここはてんごく?
 あぁ、だれかがよんでる。目を覚さなきゃ。

「お、目ぇ覚ました?」
 視界に入ってきたカフェオレのような肌の人間に瞬きを数回。状況が飲み込めずに周囲をみわたす子供のそばには鉢割れ模様の猫が寄り添っていた。
「え、っと……おにーさんたちは」
 誰だろう。自分は確か、『     』を探しにでて、それで――、
 記憶を辿る子供にイレギュラーズは各々自己紹介をし、今度はこちらから問いかけた。
 ――キミの名前は?
 最初こそ不審者を見るような目で警戒していたが、自己紹介を受けて、少なくとも悪人ではないとわかってくれたようでうつむきながらも小さく『ミハル』と答えた。
 どうしよう。誰かはわからないけどきっと探しにきた人たちだ。怒られて、連れ戻されるに違いない。
 被せられた毛布の端をぎゅうと掴む。心臓が高鳴って、息が少し苦しい。怒られるのはいやだ。痛くされるから、こわいから嫌だ。
 怒髪天を衝くというのだろうか。とにかく激しい怒りの叱責を覚悟していた彼女を待ち受けていたのは、
暖かいミルクにふわふわの猫。空から落ちてきた星のような不思議な砂糖菓子だった。
 想定外の出来事にミハルは再びまばたきをして不思議そうにイレギュラーズを見上げた。
「……おこらないの?」
「なんで? 俺らは他人だぜ? 叱るなら然るべき人物が居るだろう」
 寒さにいくら耐性があるとはいえ、雪の中で少女の捜索をしていたペッカートは暖炉に近い場所を陣取り手をヒラヒラとひらめく。
「でも理由くらいは聞かせてほしいもんだな。なんでそんな無謀をした?」
 ウェールが一番気にしているのはその事だった。『自分の子供がもし、同じようなことをしたら』と考えているのだろう。
 他人の子供である以上あまり強くは言えないが、それくらいは聞かせてもらわなくては。
 びくりと肩を震わせた。それを訊ねられるのは怒られるのと同等におそろしいことだったのだろう。
 自然と少女の手はアルテミアの服の袖をぎゅ、と握りしめていた。
「大丈夫」
 少女の心を解きほぐすようにルフナが言葉をかけ、アルテミアは少女の頭を優しく撫でる。
 ウェールは少女が語り始めるのをただ黙って待ち、ペッカートはその理由次第ではまた吹きすさぶ風が雪を巻き上げる外へと繰り出そうと準備を始めていた。
(このひとたちなら、きっとだいじょうぶ。かも)
 少女は言うか言わまいかをほんのすこし、少女の時間にしたらかなり長い時間だったかもしれないが、間をあけて語り始めた。
「さがしものをしてたの。あたたかくて、やさしくて、だいすきだったひと。とつぜんいなくなっちゃって、さがしてもみつからなくて」
 その探し物……否、捜し者の名は――
 ――『おかあさん』

●冬を進む影は踵を反して
 その後、4人は火の番とミハルの見守りを交代しながら一夜を明かした。
 明け方頃には事前の情報通りに吹雪はおとなしくなり、日が上る頃には風はすっかり止んで太陽の光が雪をキラキラと反射している。
 ミハルいわく、この地域(世界)は基本的に雪が溶けきって土色の地面が見えることは珍しいらしく、雪には慣れているらしい。
 それでも雪と、風とが合わさると大人でも身動きが取れなくなってしまうのだと。
 ミハルが出発したときにはただどんよりとした冬空だったのが、時間が進んで行くにつれ雪が降り始め、風が吹き、にっちもさっちもいかなくなってしまったらしい。
「でも、もうおかあさんさがしはあきらめる」
 少女なりに悩んだ末の結論なのだろう。名残惜しそうな表情はまだ諦めきれてない証なのかもしれない。
「なにも完全に諦めろとは言っていないさ」
 ウェールの言葉の真意がわからないようで、ミハルは首をかしげた。
「自分の納得の行くように、探せばいい。だが今度からは大人を頼るんだ。大人に頼れないならいつでも俺たちを呼べ」
「そうそう、こう見えて場数は踏んでるからね、まかせてよ」
 ルフナがぐっと親指を立ててみせる。彼の数少ない親友(親猫)の『こま』がそれに合わせて「みゃあ」と鳴いた。
「俺はー、まぁ、最終的に楽しければ? それでいいし? みたいな」
 ペッカートはがしがしと頭をかく。終わりが良ければ悪魔的にはオッケーなのだ。そのためならここでいただきますをするよりもう少し熟成をさせた方がいいかもしれない。
「もう私たちは『知らない誰か』じゃないんだから、いっぱい頼ってよ。困ってるときに助け合うのが友達、でしょう?」
 小さな手を両手で包み込むように握りながら、視線を合わせてアルテミアが語りかける。ひそかに、その手に星の欠片を握らせて。
「……うん、ありがとう」
 少女が山を降りていく。足を新雪に埋めながら、時折足をとられながらもゆっくり、ゆっくりとくだっていく。
 しかし、その背は探し求めていたものを得られなかった悲しみに染まってはおらず、足取りも軽やかなように感じられた。

 何事にも変えがたい宝物を得た少女の話は、これで終わらない。

成否

成功

状態異常

なし

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