PandoraPartyProject

シナリオ詳細

底知れた脳髄

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ぶぅぅぅぅん
 ノイズが酷い――だが。世界に不幸などの負の感情は存在しなかった。
 上を向いても下を向いても右を向いても左を向いても。
 底の知れた円筒の中身が、ゆっくりと己の『思考』に耽る。
 ある男は幸せな家庭を築き、素敵な素敵な生涯を繰り返す。
 ある女は美しい自らを鏡に写し、半永久的に己を視続ける。
 ある少年は勇者となり、世界の平和を取り戻しループする。
 ある少女はお姫様となり、王子様のキスを無限に咀嚼する。
 ある老人は若い時の自分を取り戻し、自身の生き甲斐を。
 そう。この世界には地獄なんて存在しないのだ。
 そして。とある人物が此処を管理している。
 彼の外見は酷く醜悪だったが、誰にも見られないので問題なかった。姿形を常々変え、数多に伸びる触手で住民(水槽)を点検する。何度も何度も行う内に、彼は世界の歯車と化したのだ。たった一個の回転が、総ての幸福を支えている。
 とても素敵な事じゃあないか――薄れ行く自己が反芻される。人間のカタチだって忘れてしまえば問題ないのさ。彼等(水槽)の皆が『喜んで』いるなら構わない。ああ。ああ――しかし。新しい水槽の中身が欲しいなぁ。

●理想郷
「ねえねえ。みんなは自分の夢を叶えたいって思ったことはない? ふとした瞬間に浮かんだことは? わたしはそんな素敵を叶える『世界』知っているんだ」
 イレギュラーズ達を前にして楽しそうに話し始める『ホライゾンシーカー』ポルックス・ジェミニ。宝石を思わせる青色の瞳が、周囲の人々を引き寄せるだろう。
「なんでもその世界ではみんながみんな水槽の中に入っていて、其処ではどんな夢でも『見る』ことができるんだって。そこのあなた、ほんとうの理想郷って気にならない? わたしはいっぱいのケーキを太らず食べたいな」
 無邪気な笑顔で言葉を手繰る境界案内人だが、どうにも裏がありそうな話だ。イレギュラーズの一人が質問を投げる。その世界の住人はどうしているのか。
 その世界の『住人』は水槽に『どのような状態』で入っているのか。
「ちょっと怖いことだけれど。頭の中っていえばわかるかしら? 水槽の中身はそれね。わたしにはよくわからないけれど。それでも幸せは幸せらしいの。そうそう。今回の案内ではその世界の『管理人』さんには会えないらしいわ。残念ね――やってほしいのは。あなたたちの夢や幸せを『水槽の中で叶える』ことよ」
 たとえば。元の世界に帰りたい。闘技場で優勝した。滅亡を回避して世界に平和が訪れた――等々。望みのままに。
「じゃあ。夢を叶える旅に行きますよ。大丈夫。きっと戻ってこれますから」

NMコメント

 にゃあらです。
 ノベルマスターとして初のライブノベル。
 頑張りたいと思います。

 頭の中身だけを水槽に入れて、自分の夢を叶えてしまいましょう。
 世界は仮の名前として理想郷。
 管理人さんとはまだ会えません。
 イレギュラーズの皆様の『望み』を水槽は待っています。

 それ以外に特記すべきことはありません。
 楽しんでいただけたら幸いです。

  • 底知れた脳髄完了
  • NM名にゃあら
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2019年10月12日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談4日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

ジョセフ・ハイマン(p3p002258)
異端審問官
赤羽・大地(p3p004151)
彼岸と此岸の魔術師
沁入 礼拝(p3p005251)
足女
シャルロッテ=チェシャ(p3p006490)
ロクデナシ車椅子探偵

リプレイ

● ぶぅぅぅぅん
 境界を越えたのは何時だったのか。『彼岸に根差す』赤羽・大地(p3p004151)には。否。大地に襲い掛かる在り方への否定は、一種の『当たり前』のような錯乱だった。暗黒と称する事も生温い、真の『無』か。自らの思考だけを大海に落とすような感覚――待て、確かに夢が叶うとは言ったけど――そういう輪郭(カタチ)で叶うのか、理解していなかった。こういう形なのか。嫌だ。嫌だ。嫌だ……生きてるって言えない。活きている故に人は価値を見出せる。暗い。昏い。眩い。管理者は何者なんだ。理由も時間も何も教えられていない。声は届かない。聞こえない。一個の音すらも死んでいる。誰か教えて、誰か助けて。叫ぶ。ノイズが酷くて『それ』もわからない。誰か俺をここから出してありえないありえない此れは……! ぶつん、と、自分が消失する。人間が幸福な所以は、総ての事柄を『繋げられない』生身で在る現だろうか――ぶぅぅぅぅん。
 全ク、凡人の大地じゃダメみてぇだナ。浮上したのは赤羽だ。灰色の皺々に刻まれたのは一に在らず、二で在った事を『証明』せねば成らない。元々ただの本の虫ではパニックに陥るのも無理はない。仕方がない普通だ。寧ろ、イレギュラーなんてのが存在する時点で奇怪――兎角。どんな状況になろうとモ、いい夢を見るのだけハ、人間に残された権利ってやつだロ――ケラケラと脳髄として歓びながら想いを巡らせる。器……大地が『権利』を放棄するならば、魂に幸福が渡される。甘い汁を吸ってきてやるカ――決まっている。望むものは『召喚された時』から、決まっているようなものだ。生きる。生き延びる。消えてたまるものか消えたくない。
 この赤羽が望むのハ、永遠の生命ダ。器を転々と生きて、活きた魂だが。混沌世界に召喚されてから『死ねば死』が待っている。死にたくない思い(大地)と思い(赤羽)が粘着し、今の赤羽・大地が成り立っているのだ。混沌の世界でハ、器の死は俺の死に直結するだろウ――パンドラの尽きた時、禁忌じみた『己』どもは消滅するのだ。きっと今までのよう二、死に往く身体だけを残しテ、俺だけ逃れるということは出来なイ――その点。この『理想郷』は如何だ。脳味噌一個保管したら、永遠の幸福が。永久の命が約束される。優秀な神サマガ、この世界の皆を守ってくれてるんだからナ。どんなに脆い中身でも、物語の規則(ルール)は絶対だ。だから。総て上手くいく。
 まァ、常人が見たら確かにグロテスクな所もあるかもしんねぇけド――生き物の『カタチ』なんてのは些末な問題だ。此れが幸せでも悪くないだろウ【赤羽・大地】ヨ。

●ぶぅぅぅぅん
 さて。はて。どうしよう。望み、願い、理想。『異端審問官』ジョセフ・ハイマン(p3p002258)の脳髄は考える。自分が混沌世界で何を得、何を失ったのか、思考に思考を重ねて練り尽くす。私はこの世界に喚ばれるまで多くを望まなかった。苦痛。愉悦。それから承認――誰かの悲鳴と誰かの称賛が今でも脆弱な皺に流れている。そもそも。その頃は何を望むべきかも理解出来なかった。脳髄だけと成った現よりも缶詰だったのかもしれない。そして――僕はこの世界に喚ばれてから多くのものを得てきた。友愛、慈愛、恋愛。熱湯を飲まされるような思いや、甘い食物を齧るような想い。壁の向こう側に首を突っ込んで、視た事も無い『新鮮』を味わうような……それら。どう求めればよいのかも知らなかった、が。随分と変わってしまったものだ。欲深く、傲慢になった。
 此の理想郷を『改めて』視よう。ジョセフ自身の故郷を思わせる、忌々しいほどの懐かしさ。皆決められた器(水槽)に収められ、その外側の世界を知らない。知りたくない。知ろうとしない。此れでは表紙だけで満足してしまう可哀想な者だ。そう思うとなんだか……抗いたくなってくる。素直に従えば、僕はまた、人間ではなくなってしまう。人間と『成る』為に。拒絶と決別を――まさか、まさか。水槽の中の脳味噌。此れを拒む筈が無い。変えようのない法則に冗長を加える筈が無い。少なくとも今回は。ただ、ただ、過ごそう。
 これが僕の望みだ。仮初は要らない。手も脚も失い神経が剥き出しの無防備な『脳』として時を貪るのだ。調整は必要ない。漂う為の浮き輪も要らないのだ。末端の神経が一本断ち切られただけで人間は痛みを覚える。では。総ての『それ』を取り除き、根幹のみ残されたら? 悲鳴も無い。苦痛も無い。悦びも無い。愛も無い。無い。ない――なのに切り離された肉の全てが痛む。心が軋む。外側から見ればただ漂っているだけだが、容器の内側には地獄が渦巻いているのだ。懺悔するが好い――底の知れた『苦痛』と『愉悦』だろう!
 はち切れんばかりの!
 笑い声は届かない。嗤う声も届かない。知れた事を掬う。掬う。巣食う。

●ぶぅぅぅぅん
 ぷぅか。ぷぅか。浮いている。その美しさの根底が、浮かんでいる。
 頭の中だけ、なんて生まれたばかりの頃を思い出します――『足女』沁入 礼拝(p3p005251)はつぎはぎ。襤褸人形ではない。肉体と心は健全な『商品』なのだ。故に。バイオロイドはおそれない。だって。水槽の中から自分のボディができる様子を観察したこともあるのですよ――笑顔は可愛らしかっただろう。微笑みは他者の心を癒しただろう。だが。今現在はただの塊。被造物たる私の楽園とは人に永遠に傅くこと。商品としての在り方も浮かぶ。ぷぅか。ぷぅか。でも、でも、私は私の欲望を知っています――それは『物』としての大罪。『者』としての当たり前。内なる襞、混ざり切らぬ女の本能。蠢き嘲るような、自らの深淵。ああ――私が全ての人を救えたならばどんなに幸せなことでしょう。総ての人を慰められたら、どんなに幸福なことでしょう。
 私の瞳が私を見つめる人の理想を映し、それが現実とすり替わるならば。ああ。それは緑のような優しくて温かい色が好ましい。太陽のような純粋と、泥に思える底無しが。
 私の指先が私の手を求める人を温め、流れ出る血が止まるならば。ああ。願わくば。それは葡萄酒のような酩酊で、痛みを和らげる馥郁が好ましい。
 私の足が私に許しを請う人を解き、永久の安らぎとなるのならば。ああ。ああ。それは例えようのない。グロテスクと呼ばれようと『夢』を想わせるまくらに。
 私に接続することで人が幸せになれるなら。『礼拝』は幸せだ。
 私が全ての人と溶け合えるのなら。幸せだろう。
 この世の色彩はすべて私。運命の色もすべて礼拝。風も花も、時には水底に凝る醜穢な汚泥でさえも私の一部。匂いや臭いが混ざっても、礼拝の『脳髄』に変わりはない。母として愛し、衣服として包み、食物として排泄される――つぎはぎだからこそ、なににでも『成れる』のだ。海の底よりも深く。底知れた脳髄よりも広く。捨てられることなど、どうでもいいのです。
 逃げた先には愛が在る。逃れた其処には『私』がいる。腕の中こそが、真の安堵なのだから。私は私でない方を満たしたいのです――混沌(私)で満たされた貴方を感じたい。その為ならば容易く世界を犯してみせましょう。私は。沁入 礼拝は。世界になりたい。
 貴方も貴女もあなたも幸せに。抱かれながら抱いてください。他でもなく私の手によって――そうです。そこのあなた――も。それで私はやっと、満足できる気がするのです。

●ぶぅぅぅぅん
 そう。これはまさに。幸福の、理想郷の、世界の完成形。さて――とも呟かずに『ロクデナシ車椅子探偵』シャルロッテ=チェシャ(p3p006490)が言の葉を紡ぐ。少なくともその可能性の一つであることは間違いないだろう! 安楽椅子(水槽)が反響し、思考が凹凸する。まるで檻から解放された獅子だ。囚われの王が旗を揮う瞬間だ。永遠に幸せな夢を見続ける、支配者の玉座に相応しい。されど『そのような』滑稽は詰まらない。そう、不要な物を、余分な物を一切捨てて、永遠に謎と向き合いそれを解き続ける時間に浸れるのだ! は、は、と哄笑して真の謎まで滅ぼして魅せよう。密室殺人、遠隔殺人、不可能犯罪、アリバイ工作、入れ替わり、叙述トリックでも良い! ボクの曝け出された脳髄に見合った『もの』を用意するのだ。謎は事件だけとは限らないさ、好き放題に推理させてほしい。戦場でのパズル。化学の複雑さ。哲学ならば如何だ。勝手に謎が膨れ上がる。いっそボクが『謎』そのものでも構わない。はんすうするにも根源が不可欠だろう――人の心なんて謎で謎で仕方がない! ああ。浸っていたい。永遠にでもこのまま謎解きに浸っていたい!
 だが。どうだ。この『謎』は何処から来る。何処から与えられる。『管理人』によってボクの脳に直接与えられるのだろうか。ご苦労な事だ。うんうんと唸っている脳髄は管理人も含まれるらしい。満足する謎を与え続ける限りここは楽園だ。素晴らしいじゃないか。されど。それは本当に可能なのか。可能だとしたら『管理人』は神に等しい。それもとびきりの『超越者』だ。
 ボクの楽園は本当に永遠なのか。無数の脳髄を『管理』する者が、一個の要求に応え続けるとは考え難い。もしかして謎はボク自身の中から勝手に生まれるのかもしれない。書棚から勝手に文字列がこぼれるような心地だ。所詮ボク自身の中から生まれた謎であり、初めからボク自身の中に答えがあるものだ。酷くつまらない『幸福』だろう。こんな場所に居ても、居なくても世界は動かない。理想郷は既に、色褪せてしまったのだ。謎の供給が絶えた水槽など、金魚のフンだけを泳がせた透明だ。そうなれば?
 どうやって帰るか。それが次の解くべき謎になるだけだ。

●ぶぅぅぅぅん
 ぶつん。望みは。
 ぶちん。望みは。
 ぶちり。望みは叶えられ。
 がちゃり。望みは解放された。
 君達に幸……ノイズ。

成否

成功

状態異常

なし

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