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シナリオ詳細

<DyadiC>クロウズクロウの幻壊進撃

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●カラスの軍勢
 幻想南部に広がる茜空を、黒い雲が流れていく。
 畑仕事を終えた農夫がベンチに座ってそんな空を眺めていたが……ふと、違和感に気づいて目をこすった。
 黒い雲、などではない。
 茜空、などでない。
 顔をしかめ、立ち上がり、帽子を脱ぐ農夫。
 それが膨大な数のカラスの群れであることを。
 それが燃え上がる炎と陽炎の光であることを。
 『軍団』がこちらに近づくことで、思い知った。
「――ッ!」
 まるで地獄から命を徴収しにやってきた悪魔の群れに見えて、農夫は恐怖の叫びをあげた。
 だが叫びが数秒とも続かぬうちに、農夫はカラスの群れに覆われ、おぞましくも騒々しい羽音に姿も叫びもかき消されていった。
 カラスの群れは去り、後に残されたのは焼け焦げ部位のあちこちを失った『農夫だったもの』のみ。
 大きな群れの中に戻っていったカラスたち――もとい、カラスの中央を飛行するスカイウェザーの幻想兵が、同じくカラスに混じって飛ぶ黒鎧の男と目を合わせる。
「寄り道とは感心せんな」
「失礼。カラスどもが腹を空かせたようでしたので」
 兵士の言葉に、黒鎧の男――イオニアス配下の兵士長クロウズは、腰にさげた刀の柄をそっと撫でた。
「あせるな。じきにたらふく食える」

●夜明け空は真っ黒
 幻想南部で頻発した憤怒の事件を、覚えているだろうか。
 『暁と黄昏の境界線』と題されたこの事件群は、幻想貴族であり魔種でもあったイオニアスとその配下たちによってまき散らされた狂気であったことが判明した。
「濡羽烏……なんて、言えないわね」
 プルー・ビビットカラー(p3n000004)は深刻な表情で依頼書をつまみあげ、ギルド酒場のテーブルへと滑らせた。
「イオニアスの軍勢はテレーゼ領を皮切りに王都進撃を計画している、という情報が入ったわ。
 今は統率が乱れつつあるけれど、各部隊がイオニアス及び本隊の潜伏する『血の古城』に合流すれば簡単には止められなくなる。
 仮に止められたとしても、恐ろしいほどの被害が出るわ。死者もどれだけ出るかわからないわ。
 今回はこうして合流する部隊のひとつを通過予測値点で待ち伏せして、撃滅するのが依頼内容になるわ」
 依頼主は王都貴族の連名である。
 つまり、これは幻想という巨大な集合体そのものからの願いとも、とれるのだ。

「今回対応する部隊はイオニアス軍クロウズ隊……兵士長クロウズが指揮する部隊で、クロウズは呼び声のキャリアーになっているわ。勿論イオニアスへの忠誠も厚いでしょうね。
 この部隊の特徴は『カラスを使役する』という所にあるわ。
 凶暴性と肉体強度を増しすぎてモンスター化したカラスの群れを引き連れていて、兵士自体は数人の飛行種によって構成されているの」
 マップに示された迎撃ポイントは広い平野である。
 ぽつんと古びた廃墟と枯れきった畑がある他はたいした特徴のない場所だが、だからこそ人的被害を出さずに済むのだ。
「参加メンバーに飛行種や、飛行戦闘が可能なメンバーがいるなら地上班と空中班に分かれて戦うことも可能よ。
 クロウズ隊は地上の殲滅をカラスに任せ、空中戦を兵士たちだけで行なおうとする癖があるの。それを利用して分断を図ろうって作戦ね。
 勿論、全員地上で待ち構えて襲いかかってくる彼らを迎え撃つというパターンでも構わないわ。自分たちにとって得意なほうを選んで頂戴」

 プルーは最後に依頼書にあなたの名前を書き付けると、くるりと回してコピーをあなたに差し出した。
「この戦いで救われる命がいくつもあるわ。どうか、お願いね」

GMコメント

■依頼内容
・成功条件:クロウズ部隊の殲滅

 迎撃地点の平野にて戦闘を行ない、部隊を殲滅します。
 テレーゼたちの間接的な支援もあって、クロウズ部隊は皆さんをよけずに戦闘を仕掛けてくるでしょう。

■エネミーデータ
●クロウズ部隊
 3人の飛行種兵士と強化カラスの群れで構成された部隊です。
 彼らはカラスを捨て駒のように使うとされており、いざ戦闘になっても簡単に身をさらしてくれるとは思えません。

 具体的には
・カラスをけしかけて肉壁とする
・カラスが大量に襲いかかり動きをとれない所を襲う
・カラスにてこずる間にさっさと逃げる
 といった使い方が考えられます。
 ですがカラスは地上にいる敵を優先して襲うように調教されているらしく、こちらのメンバーを地上班と空中班に分けるだけの余裕があったなら、これらの問題をクリアできるかもしれません。
 仮に全員地上で戦うとしても、カラスに自分を守らせて戦う兵士をうまく倒したり、カラスを効率的に沢山倒す作戦を立てたりすることでも対応できるでしょう。

●兵士と兵士長
 それぞれ戦闘力が同じくらいの三人組です。
 近接戦闘装備をもち、主にレンジ0~2の戦闘を行ないます。
 攻撃には【弱点】タイプ、【火炎】タイプがあります。
 機動力はわかりませんが普通かちょっと上くらいだと言われています。

●カラス
 カラスの群れです。
 とても沢山いますが、システム的には数羽を『エネミー1個体』として扱います。
 カラスの攻撃には【足止】タイプ、【封印】タイプ、純ダメージタイプがあり、時には兵士をかばうなどの行動もとります。

■飛行戦闘について
 空中戦を行なう場合は必ず『飛翔』か『飛行』のスキルを用いてください。
 また飛行時の移動制限やペナルティも計算にいれるとよいでしょう。
 詳しくはマニュアルの『戦闘マニュアル(最下部)』と『アイテム・非戦スキル・ギフトの使用例(最上部)』をご覧ください。

  • <DyadiC>クロウズクロウの幻壊進撃完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年09月29日 23時00分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

透垣 政宗(p3p000156)
有色透明
サンディ・カルタ(p3p000438)
金庫破り
エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
愛娘
コラバポス 夏子(p3p000808)
八百屋の息子
咲花・百合子(p3p001385)
白百合清楚殺戮拳
海音寺 潮(p3p001498)
揺蕩う老魚
藤堂 夕(p3p006645)
小さな太陽
アウローラ=エレットローネ(p3p007207)
電子の海の精霊

リプレイ

●暮れる暁にあの日のあなたはよく似ていた
 壁に大穴のあいた廃墟と、草が生え放題の庭。折れた農具は苔むして、ここに人が暮らさなくなってどれだけ経つのかを教えてくれる。
 目の生えた切り株に腰掛けた『有色透明』透垣 政宗(p3p000156)をそよ風が撫でて、照らし行く夕暮れの茜色がシャツと頬を染め始めた。
「『最悪』だよ……あのカラス事件の裏にあるものが、こんな人たちだったなんて」
 食い散らかされた農夫の話や、ある空き地でおきた惨劇を思いだし、政宗は強く手を握る。
 庭を歩き、平野に陣取る『小さな太陽』藤堂 夕(p3p006645)。
 かつては牧場かなにかだったのだろうか。見渡す広い平野に動物らしい動物の姿はなく、虫ですら姿を隠していた。
 やがてくるカラスの群れを、魔種の狂気によって染められた悪意の塊を、まるで察知しているかのようだ。
「私、何も悪くない人が、人達が、被害に遭う事が一番嫌です。だいっきらいです」
 フシャーと身構え、沈む茜色の太陽をにらむ夕。
 陽光の中にちらつく影が、遠くからやってくるカラスの群れであることがわかるだろう。
 小指にセットされたリングマイクを口元へ翳す『電子の海の精霊』アウローラ=エレットローネ(p3p007207)。
「それにカラスさん達をけしかけてくるのもひどいよ。
 可哀想だけど全力で止めさせてもらうね!
 がんばるよー!」
「「ふしゃー!」」

 こちらが進路上に待ち伏せすることがわかっていたのだろうか。
 カラスの群れが大きく横に広がっていく。
「イナゴだとか小鳥だとか、何でも群れ過ぎは良くないよな。ウチ八百屋だったから怖さ解るよ。まあ兵隊の群れも怖かったけど……」
 『一兵卒』コラバポス 夏子(p3p000808)は担いでいた槍をとり、くるくると回してから構えた。
「なんにせよ平和を損なう外敵は削除。添削して修正ってね~」
 そんな彼らの仲間たちには、一見したところ飛行種の姿はない。
 だが翼が無ければ飛べないというような法則は、この混沌には無いのだ。
「ずるい奴らだよな。自由に空飛んでさ。カラスとか従えちゃってさ」
 『アニキ!』サンディ・カルタ(p3p000438)は複雑な幾何学魔方陣が描かれたカードを手に取り、込められた魔術を発動させた。
 ふわりと身体が宙に浮き、手足にリング状の風が装着された。戦闘が可能なほどの自由な制御を可能とする魔術である。
「今度はそっちがカラスのミンチになる時間じゃよ。
 泣かぬなら泣くまで殴る外道カラス……」
 一方で『揺蕩う老魚』海音寺 潮(p3p001498)は自らにサメのオーラを纏うと、オーラの尾びれをうって空へと泳ぎ出す。
 巻き起こった嵐と一体になって、潮はサンディと共に空へと舞い上がっていく。
「クハッ……!」
 靡く髪を押さえ、ごくわずかに点描を散らす『白百合清楚殺戮拳』咲花・百合子(p3p001385)。
「この世界に送られてよりすぐの間は可能とせなんだが……ここまで美少女力を取り戻した吾ならば、美少女飛行術も可能!」
 ギュオンと美少女力を発し、近くに転がった丸太柱を片手で担ぎ上げる百合子。
 柱を空に投げると、力強い跳躍によって柱へと横乗りした。サーフボードのごとく柱を操り、旋回飛行によって上昇していく。
 怪盗、サメ、美少女。ローレットの知られざる空挺団がいまここに結成されようとしていた。頭髪の素材を鋼のように変質させ、流線型の翼へと変形させていく『夢終わらせる者』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)。
 自らのボディを巨大な翼の中へ納め、ステルス機のようなシルエットとなったエクスマリアはエネルギー噴射と無数のスラスターによって凄まじい速さで垂直離陸。誰よりも早くカラスの兵団と同じ高度へ達すると、華麗にターンしてすぐさま戦闘姿勢へと入った。
「空は、飛行種だけの独壇場では、ない。――さあ、墜ちろ」

●もうあなたを見ることは無くなったけれど
 空を埋める黒い雲。
 こちらを包囲するように展開したカラスの群れが、アウローラたち地上部隊をにらみ付ける。
「くるよっ――!」
 リングマイクを構え、目を光らせるアウローラ。
 四方八方から一斉に飛びかかるカラスたち。
 が、その瞬間。アウローラは自らの周囲をライブ空間へと変化させた。
 青白い光の蝶が舞い上がり、カラスたちを迎撃していく。
 鳴り響く音楽とアウローラの歌声に身体を乗せて、サンディは突風の如くクロウズ部隊へと突撃。
「早い――っ!」
 カラスたちに防御を命じるも、サンディの速度の方がはるかに上である。クロウズの左右を部下であるレインという兵士が咄嗟に刀を抜いて防御姿勢をとった。
「そうくると思ったぜ」
 サンディは自らの勢いに乗せて火炎瓶を投擲。
 レインの眼前に至った所で放ったカードが火炎瓶に突き刺さり発火の魔術が発動。レインと彼を守ろうとしたカラスたちが激しい光に包まれていく。
「レイン――!」
 もう一人の部下ラヴドゥという兵士が刀をとりサンディの排除に動くも、彼らの間を斜めに横切るようにして動きを切る百合子。
 丸太でドロップターンをきめると、星見突きの構えをとる。
「『星を見よ、いつかその星を落とす為に』」
「ぐう……っ!」
 百合子は自らを流星そのものへと変え、ラヴドゥへ拳を叩き込む。
 対するラヴドゥは抜いた刀で防御。美少女力を纏った鋼の拳とラヴドゥの刃がぶつかり、激しい火花を散らした。
「フン……幻想の防衛力も伊達では無いということか。しかし正規軍にあんな兵士はいなかったはず。まさか……」
 思案を始めるクロウズ。
 そこへ天空を嵐となって泳ぐ潮が手裏剣のよう動きによって連続サメ手刀を繰り出してきた。
 切り裂くように走る無数の小さなサメオーラー。
 バレルロールと複雑な螺旋軌道によって回避するクロウズ。
 が、回避しきれなかったオーラがクロウズの羽根を小さく食いちぎっていく。
 流れた血を背に散らし、クロウズは更に高度を上げていく。
 そんなクロウズの更に上へと回り込んだエクスマリアが頭髪の翼を変形。小さな翼を背負い大砲を担いだ形態をとると、青い目を細めた。
「その繊細な動き……貴様騎空士か!」
「お前の羽根は、飛びづらそうだな」
 砲撃。
 爆発。
 クロウズは防御もままならず直撃をうけた。

 咄嗟に自己回復をはかり墜落を免れるクロウズ。
 一方で彼をフォローするように飛び回ったカラスたちが地上部隊へと襲いかかっていく。
 まずは夕たちの動きを足止めしようとむやみな突撃を仕掛けるカラスの集団。
「そうは行きません! お願いします『制約せしジーナローズ』! 『奔放なるフィーネリア』!」
 夕が両腕を広げると、現われた精霊のゲートを通じて二人の精霊が出現した。
 金髪緑瞳の精霊(巨乳)がパチンとウィンクすると足止めにかかっていたカラスたちをサンタクロースもかくやという大きな袋につめてかっさらっていく。
 一方で黒髪黒瞳の精霊(巨乳)が金の鎖をぐるぐると振り回し別のカラスたちを打ち落とし始めた。
「うふふ、いらっしゃいませ。今度も残らず打ち落としてあげるね」
 激しい反撃を受けて墜落し、地面に転がるカラスたち。
 政宗はそんなカラスたちに取り囲まれないように距離をとり、マジックネイルを塗った爪をフッと小さく吹いた。
 発動した魔術が距離を超えて効果を示し、カラスたちを紫色の空間へと引きずり込んでいく。
 政宗から見て今回のカラスたちは怒りや憎しみに支配されているように思えた。
 感情や思考を奪われ、クロウズ部隊に利用されているという構図がありありと推察できる。
 そしてだからこそ、挑発は今でも有効だった。
「およよ? どれが兵士なんだ? 全部ゴミ漁りばっかしてそうなカラスじゃん」
 夏子がわざとおどけてみせると、カラスたちが怒り狂った様子で飛びかかっていく。
「よしきた! カラスっても少し賢くありませんか~!?」
 大きく飛び退きながら槍を払う夏子。
 空間に散らされた火花が激しく炸裂し、飛びかかってきたカラスたちを次々と吹き飛ばしていく。
 それでも尚、果敢に夏子へと襲いかかってくるカラスたち。
「言って聞かなきゃおしおきだぜ。カ~ラスちゃん」

●きっと僕も暁になれただろうに
 けしかけたカラスの連続攻撃を受け自由落下をはじめる潮。
 しかし潮は腕を組み、うむと低く唸るのみ。
 サメオーラを高め自らの傷を大幅に治癒すると、すぐさま飛行能力を取り戻した。
 命中・回避能力はもとより移動力や防御技術が大幅に低下する空中戦闘ではダメージの低下が激しく、これによる墜落も起こりやすかった。
 よって防御力でしのぐ戦闘スタイルが成立しづらく、その分ヒーラーによる回復支援のもたらす効果が体力維持の他に飛行状態維持も含まれることになる。
 平たく言うと、空中戦においてヒーラーは有効なのだ。
「それを理解してわしを倒そうともくろんだようじゃが、兵力不足があだとなったのう」
 大胆に繰り出すサメ手刀。
 倒したと思った相手からのまさかの反撃に、カラスたちはおもわず直撃をうけ、そのまま墜落を始めてしまった。
「くっ……付き合っていられん! 隊長、先に本隊と合流しています!」
 クロウズの部下レインが翼を羽ばたかせ戦場からの離脱を計画。
 しかしそれを察知した百合子が回り込むように丸太をターンさせた。
「おうおう、ケダモノの大将が逃げるか」
「逃げるだと!?」
 挑発にかかりやすいのは彼らの性質ゆえだろうか。百合子は乗っていた丸太から跳躍すると、自らの美少女力を圧縮。
「見るが良い――『美少女開花・偽』!」
 十字架のごとく広げた両腕が太陽の輝きを放ち天使の翼を十二枚広げた百合子を七色の小鳥たちが戯れ空には幾本の虹がかかりなんか下りてきた天使がラッパを吹き鳴らし通りかかりの精霊たちが万歳三唱した後酒樽を割って乾杯しはじめ呑めや歌えやの宴会の後二次会のカラオケを経て三次会のオトナなお店でまったりし最後は光り輝く精霊歓楽街へと消えていった。
「…………はうあ!?」
 あまりに幻想的な光景に見せられていたレインの腹を、美しすぎる美少女百合子が手刀で肘まで貫通していた。
「ば、ばかな……!」
 転落していくレイン。
 先にも述べたように空中戦闘には墜落がつきものである。
 カラスに囲まれていたアウローラは落ちてくるレインを見つけ、マイクの音波を指向性に切り替えた。
「アウローラちゃんの唄に聴き惚れて!」
 感情を乗せて全力で歌い始めるアウローラのスピリット・カンターレ。
 あまりの感情波に身動きがとれなくなったレインはそのまま地面へと激突する――かに思われた、その時。
「リリース!」
 夕は両手を大地につけ、ランダム召喚魔方陣を急速展開。
 生まれたゲートから飛び出したのは異界に存在する三本足の巨大カラスであった。
「ぐ、ぐわ――!?」
 防御どころか回避することすらできず、夕の召喚したきわめて強力な怪鳥の攻撃を二倍の威力で受けることになった。
 当然、服のいっぺんすら残らず消える。諸行無常。
 ゲートを通って帰って行く巨大カラスにばいばーいと手を振って見送る夕とアウローラであった。

「フン、レインのやつめ。敵前逃亡など愚かなマネをするからだ。
 我は逃げぬ。どこからでもかかってくるがいい!」
 ラヴドゥは刀を構え、サンディめがけてまっすぐに飛びかかってきた。
「こっちに来るか。しかたねえな……!」
 槍を水平に構え剣をうけとめるサンディ。
 激しい連続攻撃に防御が崩されそうになるが……。
 袖から滑り出した暴風のカードを至近距離から投擲。
 ラヴドゥに付与された鋭い翼の力が失われ、がくりと体勢が崩れていく。
 その一瞬をサンディは見逃さなかった。
 素早く相手の懐へ入り、そのまま後方へと抜けていく。
 取り出したのは死神が描かれたジョーカーのカードである。
「あんたはここまでだ」
「ならば、貴様もろとも……!」
 放たれるカード。と同時にラヴドゥの命令によってカラスがサンディに群がり、彼の飛行能力を一時的に奪い去った。
 同時に墜落する二人。
 墜落地点には無数のカラスがうずをまきサンディだけを食い散らかそうと構えた……が、しかし。
「あははっ、随分愛されてるね! この子達こう言ってるよ。早く堕ちてきて、だってさ!」
 巻き起こるラメの渦。
 踊るように跳躍した政宗の爪が、ラヴドゥの首筋を一瞬だけなぞり、過ぎ去っていく。
 ただそれだけのことで、ラヴドゥはあらゆる身体の自由を失い、激痛に身をよじった。
 そのままカラスの死体だけの地面に叩き付けられ、おかしな音を立ててへし折れる。
 一方のサンディは……。
「おっと、大丈夫?」
 滑り込んだ政宗によって優しくキャッチされたのだった。

 大空を飛び回るクロウズ。
 連射されるエクスマリアの砲撃をなんとかギリギリのところで回避し続けているが、どうしても空での戦いにはエクスマリアに分があるようだ。
 全身を巨大な翼そのものに変えて飛び、腹部に作り出したエネルギーライフルで連射を続けるエクスマリア。
 直撃をなんとかさけようとビーム砲撃を刀で弾いたクロウズは、エクスマリアへと呼びかけた。
「貴様、それほどの腕があるなら我が軍隊に加われば良い! 幻想を滅ぼした暁には爵位を頂けるぞ!」
「興味は、無い。それに――」
 凄まじい移動速度によってクロウズの後方にまわり、エンジェル形態へと変化するエクスマリア。両腕をあわせ頭髪による大砲を作り出すと、クロウズへと狙いを定めた。
「前には、無理だ」
 砲撃がクロウズとその周囲にいるカラスたちをまとめて打ち抜いていく。
 墜落を始めるクロウズ。なんとか呼吸を整え、地面すれすれで飛行状態を取り戻した……が、そこへ夏子が飛びついた。
 槍をすて、両手両足でがっしりとしがみつく夏子。
「まー逃げるなって。俺ってば君のファンなんだ」
 なんてね、と左右非対称に笑うと、夏子は自らを中心に激しい花火を爆発させた。

 舞い散る黒い羽根が、廃墟の屋根に降り注ぐ。
 おびただしいカラスの死体と、その中心に生きたまま倒れたクロウズ。
 夕日はやがて沈み、夜を運んでくるだろう。
 夜に間に合わなかった彼らを置いて。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete!

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