PandoraPartyProject

シナリオ詳細

【イレクロ】鎖島の叫声

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●鎖島
 百年ほど昔の話である。
 当時、その地を治めていた国王ガウェウスは、貴族の専横を正すため、ある一つの島に正義の牢獄を建てたという。
 聖カサブランカ島刑務所と名付けられたその牢獄には、王権を不法に脅かす貴族達が次々に送られ囚われの身となった。
 確かに王権を維持するためには必要なことであったかもしれない。しかし、国王は王権の維持に拘るばかりに、次第にエスカレートし無実の貴族達が多く囚われ犠牲となったという話だ。
 結果、貴族の反発を生み出し国王はその椅子を追われることとなり、捕らわれることなる。
 送られる先は――かの聖カサブランカ島刑務所に他ならなかった。
 彼の地の最奥に繋がれた国王は一年中狂ったように叫び声を上げていたという。
 次代の王は戒めとして、何人もこの島へ上ることを禁じ、島にいる者達全てを飢餓を持って処断することとした。
 以後、誰もこの島に囚われたものの末路を知ることはなく、聖カサブランカ島刑務所は存在しない島として忘れ去られることとなる。

 一年中雨雲に覆われた孤島。
 その島の近海で漁を穫る漁師は、湿気を帯びたその島を腐り島――或いは大勢の者が繋がれた鎖島と呼んだ。
 そして、その島に近づくと誰もが海鳴りの音を耳にするという。
 その音は、どこか呻く声……そして叫び声のようにも聞こえて、耳にした者は皆口を揃えて言うのだ。

 ――今なお国王は生きながらえて、苦悶の声を上げているのだ、と。


「なるほど、それで今回は、その鎖島へ行こうと、いうことか」
 『夢終わらせる者』エクスマリア=カリブルヌス (p3p000787)の確認に『観光客』
アト・サイン(p3p001394)が頷く。
「色々情報を集めたらその島へ上陸させてくれるという漁師を見つけてね。
 閉ざされた監獄とも呼べる孤島に何があるか……見てみたいと思ったのさ」
 手にした資料を広げるアト。その資料には様々な文献から集めた鎖島の地図が描かれている。
「よく集めたものね。刑務所内部の資料まであるじゃない。
 地下三階建ての構造か……複雑な迷路じゃないけれど、それなりにダンジョンって感じね」
 『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)が資料を見ながら大まかな計画を頭の中で立てていく。不測の事態が起きなければ、探索日程自体はそう長くはならないだろうと、思った。
「繋がれたまま餓死させられたんですよね? そして島は一年中雨で濡れている……腐乱した死体がいっぱいありそうですね?」
 嬉々として語る物部・ねねこ(p3p007217)は大の死体好きである。多くの死体があると見込まれる彼の地はねねこの独壇場とも呼べるかもしれない。
「……でも確かになんかゾンビとかグールとかいっぱい居そうなイメージだよネ」
「あり得る話だねぇ。恨み積もった者達が多く囚われていたんだろう? 化けてでてもおかしくなさそうさ」
 『チアフルファイター』ミルヴィ=カーソン(p3p005047)と『闇之雲』武器商人(p3p001107)が頷き合う。強い恨みを持つ念が、なんらかの呪的エネルギーを持ち環境に影響を与えるとはこの世界ではありそうな話だ。
「それに、気になるのは最奥にいるという元国王だよね。……今なお叫んでいるなら、結構ホラーな話だけれど」
 そうあっては欲しくない物だと思う『風来の名門貴族』レイヴン・ミスト・ポルードイ(p3p000066)だが、足を踏み入れたイレギュラーズを元国王はどのように出迎えるか、期待もあった。
「何にしても準備はしっかりと、だな。どのような障害が待っていようと、わたしが盾となりみんなを守ろう」
 『背を護りたい者』レイリ―=シュタイン(p3p007270)の宣言に、仲間達は頼もしく思うのだった。

 八人の向かう鎖島には、果たして何が待ち受けるのか――

GMコメント

 こんにちは。澤見夜行(さわみ・やこう)です。
 シナリオリクエストありがとうございました。
 孤島に設けられた監獄。
 最奥に閉じ込められたという王の末路をその眼にしましょう。

●達成条件
 地下三階、一番奥まで到達して帰ってくること。

●情報確度
 このシナリオの情報精度はBです。
 情報は信用できますが、情報に無いことも発生するかもしれません。

●聖カサブランカ刑務所について
 鎖島に立てられた中規模の刑務所。
 一階は主に警備兵達の詰め所となっており、廃墟となっていますが特筆する点はありません。
 地下には囚人の成れの果てが転がっており、主にゾンビやゴーストといったアンデットなモンスター達が巣くっています。

■地下一階 
 貴族達が囚われていたと思われる牢獄があるフロアです。
 牢獄数は三十ほどあります。すべてを探索する必要はないでしょう。
 戦闘能力の低いゾンビやゴーストが闊歩しており、生者は必然的に狙われることとなります。
 地下二階への階段は適当に探索していても見つかるでしょう。

■地下二階
 特に重罪な貴族や、犯罪者が囚われていたと思われるフロアです。
 牢獄数は少なくなり、アンデットの数も減りますが、その分戦闘能力が高めです。
 地下三階への階段はしっかりと探索しないと見つからないでしょう。

■地下三階
 元国王ガウェウスが囚われていたと思われるフロアです。
 牢獄数は一つ。最奥にあるものだけです。
 ガウェウスが死体のまま眠りについているか、はたまたリッチとなっていて恨み言を漏らしながら襲いかかってくるか、どうなるかは色々想像してみてください。
 
●戦闘地域について
 廃墟となっている刑務所での戦闘となります。
 室内での戦闘になり、隊列に気をつけないと上手く戦闘高度が取れないでしょう。
 暗がりを照らす灯りがあると、戦いやすいかもしれません。

 そのほか、有用そうなスキルやアイテムには色々なボーナスがつきます。

 皆様の素晴らしいプレイングをお待ちしています。
 宜しくお願いいたします。

  • 【イレクロ】鎖島の叫声完了
  • GM名澤見夜行
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2019年09月30日 23時46分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費---RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

レイヴン・ミスト・ポルードイ(p3p000066)
騎兵隊一番翼
エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
愛娘
イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
流星の少女
武器商人(p3p001107)
闇之雲
アト・サイン(p3p001394)
観光客
ミルヴィ=カーソン(p3p005047)
剣閃飛鳥
物部・ねねこ(p3p007217)
ネクロフィリア
レイリー=シュタイン(p3p007270)
ヴァイス☆ドラッヘ

リプレイ

●上陸
「これより歌うは遥かな旅路、海の上より地の底へ。狂った王は今日も歌う~♪」
 波に揺られながらご機嫌のままに歌うのは『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)だ。
 今日という日の為に、事前準備を重ねてきた。手にした『紫苑の君の御伽噺』にはビッシリと文字が刻み込まれている。
「ご機嫌ですね。やっぱり楽しみですか?」
「それはもちろん。廃棄された島、牢獄、狂王の迷宮――未知の呪いや危険に身の毛がよだつわ!
 貴方だって楽しみでしょ、ねねこ。なんて言ったって、死体の山かもしれないわけだしね」
「そうなんですよ! 死体ですよ! 死体!
 選り取り見取り♪ 楽しみです♪」
 ルンルン気分な物部・ねねこ(p3p007217)の横で『チアフルファイター』ミルヴィ=カーソン(p3p005047)が自分の身体を抱いた。
「牢獄島カァ、ちょっと怖いかも。
 閉じ込められた王様について調べたけれど、王位に就く前は評判の良い人だったみたいなんだよネ。
 でも、玉座についてから変わってしまった。王位に就いていることで得られる物や虚栄心を満たすためにあの手この手でしがみついていたみたいだネ」
「疑心暗鬼に陥っていたということもあるだろうねぇ。信用できるのは自分だけ。欲深い人間がそうなれば、待っているのは破滅だろうさ」
 『闇之雲』武器商人(p3p001107)の言葉に、ミルヴィは頷く。
「うん……でも、それでも。王様は何かを――大切な何かを守ろうとしたに違いないんだ」
「それを知れればいいねぇ。
 おっと、どうやら見えてきたようだよ」
 武器商人が指さす。船の向かうその先に、暗雲に包まれた島が見えてきた。
「かつては牢獄。今は、墓地、か。
 なるほど、噂通りの、暗澹地帯。人を、寄せ付けぬ、雰囲気が、ある」
 『夢終わらせる者』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)が目を細め金色の髪をゆらゆらと揺らす。島に眠る死者の怨念に別段の興味はないが、迷宮探索となれば興味はつきないのだ。
「牢獄か……」
 『風来の名門貴族』レイヴン・ミスト・ポルードイ(p3p000066)が静かに呟く。
 牢獄。それはこの世の地獄でもある。否、この場合は煉獄か。
(ああ、懐かしい臭いがするな――)
「レイヴン殿、どうかされました?」
「……おっと、少しぼーっとしていたようだ。しかし狂王とはおどろおどろしい二つ名だことですとも」
 『背を護りたい者』レイリ―=シュタイン(p3p007270)に尋ねられて、レイヴンは頭を振る。
 記憶に浮かんだ銀の炎を、理性で闇に封印して。皆の前で漏れ出すことがないように。
「さぁ、上陸するわよ!」
 イーリンの号令の下、イレギュラーズ達は腐り島――鎖島の大地をその足で踏みしめた。
 パラパラと振る雨の中、苔むした荒れ果てた地を進んでいく。
 後に『観光客』アト・サイン(p3p001394)は自身の記録にこう記した。

『雨の降り続けるこの島では土壌は流れ落ち、木々は育たない。
 上陸した僕達の前にはむき出しの大岩と苔のような植物で覆われた茫々とした荒野、そしてその先に、永い雨で無残な姿となり佇む、一つの巨大な廃墟があった』

 聖カサブランカ島刑務所。
 風雨に晒され朽ちる過程にあるその廃墟は、来る者を拒まず、去る者を閉じ込める堅牢さを今も変わらず誇示していた。
「早速中へ侵入しよう。事前に手に入れた内部構造図を照らし合わせて侵入ルートを決めようじゃないか。
 それと、これを。百年の年月が過ぎたとはいえ、腐敗ガスが充満していないとも限らない。伝染病には注意しよう」
 手早く指示するアトは、仲間に特製のマスクを配る。
 ランタンに火を入れ、黒洞々たる入口を照らした。
 探索者(イレギュラーズ)達は、足を踏み入れる。
 死してなお負の感情を巡らせて、生きた屍となった者達の潜む牢獄へ。
 どこかで、発狂めいた叫声が響いた気がした。

●深潜
 地下への扉はすぐに見つかった。
 廃墟には似つかわしくない、頑強かつ重厚な金属の扉が見つかったからだ。
 なるほど、これは脱獄など考えることは難しい。地下の牢獄に繋がれれば、もう日の目を見ることはできないのだろうと言うことがわかる。
 イレギュラーズ達は警戒しながら扉の解錠を試みる。鍵自体は特殊な物ではなさそうだ。用意したピッキングツールで事足りるだろう。
 果たして、鍵は音を立てて外れた。イレギュラーズは喜ぶのも束の間すぐに扉を開きにかかる。
 金属の扉を全員で押していくと、甘く饐えた臭いが鼻を突く。同時、風に乗って劈くような金切り声のような音が響き渡る。
「いよいよ本番ってところね。
 アト、フロント任せた。殿は私」
「任されたよ。一層はそう複雑な場所じゃないはずだ。できれば迅速に二層へと下りたいところだね」
 アトを先頭に扉の先の階段を下りていく。
「うぅ……臭いがきついネ。それにすごく寒い。湿度も高めで空気が張り付くようだヨ」
「……それに、明確な物音、そして、敵意も、感じる。なるほど、生者の肉を、求める不浄が、多いようだ」
 ミルヴィが周囲の環境を感じ、エクスマリアが階下の闇を睨む。
 イレギュラーズは並んで慎重に下りていくと、広い空間に辿り着いた。
「ふふふ、雰囲気ありますね♪ それに雨水が染み漏れてるようです。湿気が腐敗を促進させてるかもしれませんね」
「動かない死体ならまだいいけどね。どうやら人の恨み辛みというのは、この世界では悪い方に働いてしまうらしい」
 アトの掲げたランタンの明かりが、室内を照らし出す。光が指すことの無かった漆黒の闇が切り裂かれると、呻くような苦悶の声が漏れ広がる。闇に浮かぶ眼球の光。崩れかけた虚ろな双眸がイレギュラーズ達を見た。
「階段の周り――全周に溜まっているわね。
 ねぇレイヴン、もし私が今襲われたらどうする?」
「イーリンが襲われたら? 飛び掛かってでも庇いますかね。ええ」
「あら素敵。けどそれで貴方もゾンビにされてしまったら大変ね。ええ、互いに後方も注意していきましょう」
 すでに階段を下りてしまっている以上、敵は全周に存在する。どこから奇襲されてもおかしくないことを警戒するようにイーリンとレイヴンは集中力を研ぎ澄ました。
「道はわかるね?」
「ええ、この道を真っ直ぐなはずです」
 アトの確認にタブレットで地図を表示したねねこが答える。それを確認すると全員に合図を送った。
「数が多い、一気に突破しよう」
 言うが早いかアトが駆け出す。アトを追うように武器商人も動き出す。
「レイヴン殿、武器商人殿と相談時に言っていた”アレ”ってどんなのですか?」
 レイリーが尋ねるとレイヴンはニヤリと口の端を吊り上げた。
「ああ、アレ? あれってのはね……」
 レイヴンが答える前に武器商人が言う。
「ポルードイの旦那と我(アタシ)が揃ったのであれば、やることは一つさシュタインの方」
 武器商人が響き渡らせる破滅の呼び声に、通路にいるゾンビ達の注意が奪われ、一斉に武器商人へと向かい歩き出す。
「問題。ゾンビと我、どっちがしぶといと思う? ……なんてね」
 群がるゾンビ達へと向けて、レイヴンの放つ破滅のルーン・H。最大出力で放たれるすべてを穿つ不可避の雹が武器商人ごとゾンビ達に叩きつけられた。
「痛みは覚えど、決してこの身体は倒れず。ヒヒヒ、これではどちらが死人かわからないねぇ」
「……うん。毎回ドキドキとしてしまうが、同士討ちに若干慣れてきた自分が蠱惑もあるが」
「うぅぅむ、安定した戦い方なのだと思うけれど、同じ盾役としては真似したくないものですね」
 合理的な戦いでありこの世界のルールが絶対の保障をしている以上、有効な戦法だとしても、自らの手で仲間を傷つけるというのは慣れる物ではないだろう。
 同じ盾役として前衛に立つレイリーは、邪魔にならないように立ち回ろうと立ち位置を変えた。
「とはいえ、油断はしないでよ。突然必殺をもったデモリッシュな奴が出てこないとも限らないんだし」
「心得ているよ、ジョーンズの方。その時はカーソンの方やシュタインの方に任せようかね」
「うんうん、任せてちょうだい! 先手必勝で倒してみせるヨ!」
 動きの遅いゾンビ達を翻弄するように、ミルヴィがしなやかに身体を回転させる。踊りで培った体術は伊達ではないのだ。
「腐敗臭が、強くなって、きたな」
 牢獄のならぶ迷宮内を進んでいると、エクスマリアが鼻を覆う。目に染みる臭いとでも言うべきか、強烈な臭いが漂っていた。
「なるほど、臭いの元はここか」
 辿り着いた通路の奥。半開きになった扉の先に二階へと通じる階段があった。
 イレギュラーズ達は階下へ進む前に、体力の回復を図るのだった。

●叫声
「まあこの臭いの中で、というのは辛いところだけれど。レイリー、休憩にしましょ。お茶会とは行かないけどね」
「そうだな、司書殿。保存食と飲み物だったらあるぞ」
 レイリーはギフトで取り出した保存食を囓る。空いていた小腹が満たされるのを感じた。
「臭いは直になれる、と思いたいが。ここから先は情報が不確かだから、慎重に進みたいね」
「さきほど、倒れている亡骸を綺麗にしてたら、漂う霊魂を見つけましてね。伝承の通り、下には大物政治家や例の王様が連れて行かれたようです。さすがに地下三階までの道はわからなかったようですけど、二階に霊魂が残っていれば、なにか情報が掴めるかもしれませんね」
 こういった特殊環境はねねこの独壇場と言えるだろう。死体が好きすぎるスペシャリストの存在は心強さしかない。
 簡単な休憩で体力を取り戻したイレギュラーズは、意を決して地下二階への階段を下りていく。
 地下一階よりも尚冷え冷えとした空間が広がる。雨水の浸水はないが、周囲の壁面にはビッシリとコケが生え、かび臭さも感じさせた。
 イレギュラーズは隊列を作り、一階と同じように慎重に迷宮を進んでいく。
 恐らく囚人達に会話をさせないためだろうか。牢獄通しの位置は離れており、地下一階と比べて数が少ない。
 一つの部屋を開けると、これまでよりも上位のアンデッドが襲ってきた。だが単体であれば対処は容易い。
「ミルヴィ殿、支援、頼りにしている」
「オッケー! それと、アト、センパイ! アシストするからヨロシク♪」
 レイリーが盾となって仲間を護り、ミルヴィが懐に潜り込んで上位種を撹乱する。その隙を突いてアトの抜き放つ剣閃が腐敗した肉を切り裂き、エクスマリアのはなつ鉄華が死後彷徨い続ける肉体を解放した。
 動かなくなった死体を、ねねこが労るように撫でる。
「こんなに傷がついてしまって……綺麗にしましょうね♪」
 エンバーミングは防腐処理を施すことを言うが、修復なども兼ねている。傷付いた死体を丁寧に洗浄し、薬剤で処理してこれ以上の損傷を防ぐ。見事な手際に仲間達も感心した。
 ねねこは独自の特性であるネクロフィリアを用いて、死体周辺を探索するが、ここには死体に関係する霊魂の類いはすでにいないようだった。
「収穫はなし、ですね。他の部屋になにかあればよいのですが」
「探してみよう」
 イレギュラーズは次の部屋へと向かう。
 一つは何も無い部屋。次は、金属の扉が破壊されていて上位種たるアンデットが複数いた。
 それらを倒し、更に次の部屋へ。一つ一つ確実に探索を繰り返す。
 そうして、フロアの最奥の部屋のアンデッドを倒した後に、ねねこが周囲を探索すると霊魂が発見された。
 彷徨う霊魂は言う。
「王を見た……アイツは……間違いなく……いる……嗚呼……呪わしい……」
「その場所まで案内してもらえますか?」
 ねねこの問いかけに、しかし霊魂は否定の反応を示した。
「わからない……いるのは……確実なのに……見つからない……」
 それだけ言い残すと霊魂の反応が揺らぎ何も答えなくなる。
「ここ、というのは恐らくこの監獄のことでしょうね」
 ねねこの言葉にイーリンが頷く。
「この監獄にいるのが確実ならば、調べた文献にもあったように地下三階になるでしょうね」
「だが、どうだ? 地下二階はくまなく探索してきたが、それらしい階段は見つからなかった……だとすると、やはり?」
 アト、そしてイーリンが押し黙り思案する。仲間達もなにか手がかりはなかったか、情報を整理していった。そして、一つのファクターを全員が気づいた。
「倒したアンデット、その数――」
「そして牢獄の数ね。牢獄が一つ多い」
「つまり、牢獄の、いずれかが、地下への階段に、なっている、と。だが、どこに――」
 エクスマリアの言葉にイーリンは頷き得意げに頷く。
「えれめんたりーまいでぃあよ、マリア」
「初歩的なこと、か。ならば、友よ。お前の判断を、信じよう」
 目星がついた一行は移動を開始する。目指すべき場所は、この二階において、なにもなかった牢獄。その場所へと。
「生活痕がまるでない。他の牢獄には、多少なりとも荒れ果てた生活痕があったが、ここにはなにもない」
「それに、他の牢獄に比べてやや狭いね。意図的にそうしてあるようだよ」
 周囲の苔を調べながら武器商人は連れてきたカピブタに探索を手伝って貰う。
 丁寧に調べていくと、壁に不自然なくぼみを見つけることができた。中央やや奥の床の前でカピブタがキュイーと鳴いた。
「ここかな」
 くぼみを調べると突起のようなものが見つかる。罠に注意しながら操作すると、重い音立てて床がスライドする。魔法仕掛けの隠し通路だ。
 中はさらに深い闇が広がっている。慎重に進もうと階下へと下りようとしたその時だった。
「――――!!」
 この世のものとは思えない、猛然轟爆のごとき叫び声が響き渡った。ビリビリと肌が震え粟立つ。
「どうやら、お待ちかねのようだね――」
 レイヴンの言葉を聞かずとも、そうであることは理解出来ていた。

●残響
 地下三階。そこは秘匿された空間だった。
 階段を下りたイレギュラーズを待っていたのは、細い通路。そして一つの扉。まさにボスが待ち構えているかのようであった。
 扉は厳重にロックされていた。やや時間を掛けながらも解錠することができた。その間も”叫び”は扉を揺らし、監獄全体を揺らすかのようだった。
 扉を開ける。
 同時、魔力によって質量を持った音波がイレギュラーズを襲う。それだけで、目の前に姿を見せた尊大な霊魂の塊が、邪悪に染まっていることを理解した。
「話を聞いてはくれないようだ。みんないくぞ。敵は王の悪霊だ。実体はないが、まあ僕らの力ならやれるさ。
 さあ、怒りを鎮め、どうか眠り給え――」
 アトを先頭に傾れ込むようにイレギュラーズが戦闘態勢を取った。
「私はレイリーシュタイン! 狂王よ! 絶対にここは通さぬぞ!」
 レイリーが気迫をもって踏み込んで、悪霊たる王の呪縛めいた攻撃を引き受ける。身体を包み込む悪霊の束縛はそれだけで生命力を奪われていくようだった。
「フォローするよシュタインの方」
 大ボスとなれば盾役が一枚では心許ないだろう。武器商人がすかさずレイリーのフォローに周りダメージを分散する。
「回復は任せて下さい。それと奥の壁、張り付けになった死体が見えます。きっとあれが王様なのでしょう」
 ねねこが指さした先、壁に四肢を張り付けにされた腐敗した死体が見える。そのほとんどは崩れ落ちているが、悪しき魔力によってだろうか、身体の形を保っていた。
「ミルヴィ、上手くいくかはわからないけれど、やるわよ。荒らしに来たんじゃないことを知らせないとね」
「うん、任せて。伝えたい事、伝えてみせるヨ!」
 二人が事前に考えていた作戦を準備する。
「王たるもの最後の時まで誇り高くあるべきなのですよ。歩んだ道がどうあれな」
 その間にレイヴンが魔砲を叩き込む。魔力帯びた霊体だ、衝撃に叫声が上がる。
「謁見というには、些か無作法に過ぎるだろうが、まあ、許せ」
 金色の髪を奮い立たせ、エクスマリアが事投げに言う。
「何故今更踏み入る者が、と思う、か? 元々関わりのない身、恨みや義憤は当然、無い。ましてや憐憫など、あるわけも」
 霊体の側面を取りながらの的確な連打。それが霊体の体力を削り取っていく。
「少なくともマリアは、単なる好奇心の物見遊山、だ。怒っても、良いぞ。火の粉は払う、が」
 エクスマリアの言葉に霊体は怒りの叫声を上げる。
 だが、それを収めるようにイーリン、そしてミルヴィの鎮魂歌が響いた。
(教えて……貴方は何のために厳しくあろうとしたの?)
 王の立脚点を思い出させるように、静かに奏でるメロディ。王の霊体は嗚咽を漏らすように鳴いて、自らの悪しき姿に叫びを上げた。
(――貴方の真実(ほんとう)を、思い出して……本当の貴方を。
 もう赦してあげて、自分自身を)
 奏でた鎮魂歌に霊体が浄化されていく。そうして最後、悲鳴を一つあげて、霊体は消滅した。

 全てが終わった後、王の亡骸をエンバーミングしたねねこは、連れ帰って葬儀を上げたいといった。
 島に波打つ音を聞きながら、武器商人とイーリンは静かに海を眺めている。
 王が狂った原因はわからないが、もしも、信頼出来る仲間がいたのだとしたら――きっと伝説は変わっていただろう。
 鎖島。
 一つの悲しき伝説の眠る島を、イレギュラーズ達は王と共に出立する。
 百年の時を経て、王の帰還がなされるのであった。

成否

成功

MVP

物部・ねねこ(p3p007217)
ネクロフィリア

状態異常

なし

あとがき

 依頼お疲れ様でした。

 MVPはねねこさんに送ります。おめでとうございます。

 リクエストありがとうございました。またよろしくお願い致します。

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