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シナリオ詳細

砂漠鉄道ハイジャック

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●世界のために悪を成せ
 ラサ傭兵連合――から身を隠した岩窟の奥深くに、その秘密酒場は存在している。
 連合を追われた傭兵。指名手配された盗賊。出禁をくらった商人。そんな彼らが『非協力的なコミュニティ』として築いたそこは、『岩窟組合』と呼ばれていた。
 ひょんなことからそこを訪れたあなた、そしてその誘いをうけたイレギュラーズ。
 彼らは岩窟組合である噂を耳にした。

 ――『砂漠鉄道で大量のハーモニア奴隷が輸送される』、という噂だ。

 金で、女で、男の魅力で、おのおのの才能を使って情報をつなぎ合わせた所、彼らはついに噂の真相を突き止める。
「傭兵連合でもかなり顔の利く商人がいるんだが、こいつが鉄道会社を抱き込んで奴隷輸送に噛んでいたらしい」
「といっても、一時的なモンだ。管理担当者を一時的にすげ替えて、今だけ鉄道会社を傀儡化してんだ。だから周りも気づきづらい」
「しかも商人のルールにはうまいこと抵触せずに動いているようですからね。摘発もできません。彼らは合法的に奴隷を国外に流しているというわけです」
「正義感の強い傭兵団が防止に動いたらしいんだけど、みんなまとめて連合から謹慎処分をうけちゃったんだって」
「2~3人で列車に乗り込んだらしいけど……翌日には重罪人扱いで逆さに吊るされてたわしいわよ」
「内部に顔が利く上に護衛の戦力もあるとなると、やりづらいでしょうねえ」
「あのさ……」
 情報を集めたなかの一人が、ぽつりと言った。
「じゃあ、連合にも所属してないうちらが純粋に悪事としてハイジャックしちゃえば、解決じゃない?」
 流れる沈黙。
 そして注目。
 それらしい気配を察した酒場のスタッフが、そっと一枚の依頼書をテーブルにすべらせつつ通り過ぎていった。
 手に取ってみれば、それは確かにハイジャック依頼。
 鉄道会社をよく思わない商人。ハーモニア奴隷の輸出を快く思わない者。例の大物商人に打撃をくらわせたいライバル商人。そういった黒い需要が、この依頼書にけっこうな金額を刻ませていた。
 昨今頻発するハーモニア拉致事件。
 それに連動しておこった今回の大量輸出。
 この機会にがっぽり設けようとしている公正な皮を被った外道に、悪の顔面パンチを食らわせようというのである。

●鉄道ハイジャック計画
 あくまで秘密裏に、そして堂々と行なわねばならない。
 各自顔を隠すマスクが配られ、列車が通行する予定の線路上に石満載の馬車を放置。
 激突を防ぐために止まった列車に、砂漠明細シートによって身を隠していた各メンバーが列車の各車両へ突入する。
 まず肝心なのは機関室へ突入して運転手を制圧する作業。
 次に肝心なのが護衛戦力の撃滅と制圧である。
 2~3人の戦力では撃退されてしまうが、こちらはその倍以上。充分に渡り合うことができるだろう。
 列車は奴隷たちを三分割して詰め込み、それぞれの車両に護衛がついている。これらを同時に襲撃し、制圧するのだ。
「大義のために悪を成せってか? へへ、違うな。金儲けに大義名分がついてきただけよ」
 あくどく笑うイレギュラーズ。
 世界はこうして、回っていく。

GMコメント

●注意事項
 この依頼は『悪属性依頼』です。
 成功した場合、『ラサ(傭兵連合)』における名声がマイナスされます。
 又、失敗した場合の名声値の減少は0となります。

■依頼内容
 砂漠鉄道のハイジャック
 手順はOPに示した通りです。
 石詰め馬車や迷彩シートは既に用意できているものとします。スキルやアイテムで補う必要がありません。

 今回の作戦遂行のために、まずはチーム分けを行なってください。

・機関室制圧係:1名
 列車がとまったら速攻で乗り込み、機関室を制圧します。
 運転手は二人組ですが戦闘力はさほどないため、脅して黙らせるもよし殴って気絶させるもよしです。最悪殺しても構いませんが、後で走らせるときちょっと面倒かもしれません。
 戦闘力をあまり必要としないポジションです。

・各車両制圧係:各3名ずつ
 列車がとまったら速攻で乗り込み、各車両を制圧します。
 大型車両ではありますが、車両内で戦闘するには狭いためレンジ至~中のものに限定するとよいでしょう。(実際的には至レンジ戦闘ばかりになると思われます)
 どうしても遠~長でしか戦えない場合は列車の外から窓越しに撃つことになりますが、ちょっと当てづらいかもしれません。
 また、狭いため機動力や前後衛分けが活かせない場面が多いでしょう。
 バランス良くメンバーを配分してください。

  • 砂漠鉄道ハイジャック完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常(悪)
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年09月02日 22時40分
  • 参加人数10/10人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)
共にあれ
ロジャーズ=L=ナイア(p3p000569)
不遜の魔王
グドルフ・ボイデル(p3p000694)
極楽院 ことほぎ(p3p002087)
悪しき魔女
マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)
記憶に刻め
ヴェルフェゴア・リュネット・フルール(p3p004861)
《月(ムーン)》
ペッカート・D・パッツィーア(p3p005201)
極夜
黒・白(p3p005407)
如月=紅牙=咲耶(p3p006128)
夜砕き
茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)
音呂木の蛇巫女

リプレイ

●砂のゆくさき
 広い広い砂漠の、岩がむき出しになったエリア。
 岩場を削り取るように伸びた線路の枕木だけを踏んで、『戦神』茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)はぴょんぴょんと小さくとぶように歩いて行く。
「そうよねぇ……列車って、襲撃するものよねぇ」
 枕木のひとつに足を揃えて立つと、そばの岩場に姿を眩ませられる幕とそれを押さえるためのポールが立っていた。
 ここに身を隠し、列車が横転馬車によって止まったところで襲撃をしかけようという計画である。
「刺激があるのはいいわね私も好きよ」
 ストライカーと接続した二連鞘から刀を抜いて、人を斬るさまを想像する。
 そんな様子を眺めていた、『瓦礫の魔女』極楽院 ことほぎ(p3p002087)。
 片膝を立てた姿勢で地べたに座り、紙巻き煙草をくわえていた。フィンガースナップによるマジックライターで火をつけ、煙を吸い込む。
「殺人放火窃盗誘拐盗み食い……まあ色々やってきたけど、そろそろデカいことやりてーなーと思ってたトコだ。ハイジャックなんてもってこいじゃん。渡りに船ってヤツ?」
 来たのは列車だけどな、と煙を空に吐き出した。
 腰にさげていたマジカルステッキをとり黒いボタンを押し込むと、ことほぎの衣装が黒いアサシンスタイルへと変化する。口元を布で隠し、目元をベールで覆った姿。
「名も顔もさらせねえが、裏社会にゃあ名が売れる。せーぜーオレの糧になってくれよ、奴隷商人」
 一方。依頼人から借りたヒジャブめいた覆面を暑そうにぱたぱたとあおぐリアナル・マギサ・メーヴィン(p3p002906)。
「覆面邪魔すぎる。外しちゃだめ?」
「ダメだろう、そりゃあ」
 隣で、黒・白(p3p005407)が腕組み姿勢のまま岩に寄りかかっていた。
 そっかーといって大人しく布を頭に巻いていく。
 その過程で目から表情が消え、顔から熱がさめていった。
 今から人を轢くトラックのような冷たい目をして、やっと呟く。
「そういえば、解放した奴隷たちはどうするんじゃ? 保護する依頼なんかうけとらんし、他に売りさばく?」
「さあなあ……『解放』だけを依頼されたってことは、その後どうするかはもう決めてるんだろ」
 現状において、ハーモニア奴隷商売で利益を得ている大物商人を潰したいと考えるなら、この事実を一旦隠してカードとして保持しつつ、ハーモニアたちは『なんかしらんけど帰ってきた』という風に見せかけるのがベターだろう。
 ついでに自衛の武器でも売りつければいい利益になりそうだ。
 いつの世も、善人の皮を被った悪人が大もうけをする。
 そしてそういった善悪を超越した、ないしは逸脱したところに、『《月(ムーン)》』ヴェルフェゴア・リュネット・フルール(p3p004861)のような者たちはいる。
「素晴らしいですわ。此度もまた何人かの魂がイーゼラー様のもとに還られる事でしょう……」
 手を合わせ、己の神に祈るヴェルフェゴア。
 この依頼はいわゆる、陰謀と陰謀の間に生まれた軋轢。エアポケット。
 『必殺仕事忍』如月=紅牙=咲耶(p3p006128)にとってはそれがいかなる背景であってもよかった。
「他の者の意図はどうであれ、そこに苦しむ者がいるならば捨てて置く事は出来ぬ。
 ……元より名声は求めておらぬ身。結果、人々を救うのならば拙者は幾らでも悪事に手を染めよう」
 それこそが……と言いかけて、咲耶はマフラーで口元を隠すように覆った。言うまでも、あるまい。

「久方振りに染まるべきだ。我等『物語』には刺激が必要不可欠故。派手な色彩も時には愉快に『魅せる』だろう。Nyahahahaha――奪取だ。強く。荒く。狂おしいような。美しい結末を保障しよう」
 うぞうぞと不思議なうごきを見せる『果ての絶壁』オラボナ=ヒールド=テゴス(p3p000569)。
 何を考えているのか、そもそもこれが何者なのか、理解できるものはそういないし、しようとしていない。
 彼もしくは彼女もしくはアレがおぞましく頑丈であるという事実と、それが味方であるという事実さえ分かれば、『山賊』グドルフ・ボイデル(p3p000694)にも充分であった。
「ハッ、あんなチンケな列車にゃあ奪えるモンなんざ無ェ──チャッチャと終わらせて、タップリと報酬を戴くぜえ!」
 仕事をこなして金が手に入れば、世はことも無しである。
「はっはー、違いねぇ。けどほら、奴隷は沢山積んでるんだろ? 一個くらい貰って……あーウソウソ」
 『極夜』ペッカート・D・パッツィーア(p3p005201)は両手を翳して半笑いをした。
「こんな世の中じゃスマートスピーカーの代わりにしかならねえしな」
 そう言って、手に持っていたスマホをいじりはじめた。
「ま、せーぜー楽しくハイジャックしようじゃねえか。な?」
「そうじゃ! 妾たちはホニーとグライドなのじゃー!」
「それ銀行強盗な」
「じゃあ、あの、あーハイジャック犯なのじゃー!
 身ぐるみ置いてけなのじゃー」
 『大いなる者』デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)はピエロのような仮面をかぶり、水鉄砲をくるくると回した。
 そして、あらかじめ馬にひかせておいた馬車めがけて、トリガーをひく。
 噴出された水の魔力が爆発し、岩を砕いて馬車を横転させた。
「今宵の妾はわる故、容赦はしないのじゃ」

●奪うのは利益だけ
 横転した馬車と転がる大小の岩に、列車は急ブレーキをかけた。
「一体誰だ、こんなところに」
「馬車だな。どける準備をしておけ。俺は客室の様子を見てくる」
 機関車両を管理していた運転手たちはブレーキレバーを正しくひけたことに安堵しつつ、客室の様子を見に行こうと運転室を出た……その時。
「ハローハロー。これが分かるか?」
 運転手の首に白黒の鎌がかかった。
「ご想像の通りハイジャックだ。『積荷』を頂きに来たぜ」
「積荷? し、知らない。客が何を運んでるかなんて……探るなっていわれてるんだ! たのむ!」
 両手を上げて『殺さないでくれ』と叫ぶ運転手。
 白黒は目を細め、もう一人の運転手に顔を向けた。
 同じく両手をあげ、『知らない』というジェスチャーをする運転手。
「良かったな。お前は痛くない方だ」
 最初に脅しつけたほうを殴りつけて気絶させると、白黒はもう一人に縄で拘束するように命令しはじめた。

 列車のブレーキに驚いた護衛の男が、座席のバーを掴んでよろめいていた。
「なんて運転しやがる。ちょっと文句言ってくるか」
「いちいちこんなことで文句を言うな」
 座席に座っていた男がナイフの表面を眺めながら呟いた。
 ちらちらと動かしたナイフの面に、窓の外の風景がうつる。
 その一つにいかつい山賊の顔が映り、男は慌てて立ち上がった。
「襲げ――」
 その時には既に窓ガラスが斧でかち割られ、室内にガラスの破片が飛び散った。
 外側から強制的にこじ開けられた扉が、ひしゃげるように開いていく。
 グドルフは山賊刀を突き出し、ぬっと車両のなかへと這い上がってきた。
「さあ、こいつぁ一体何を運んでるんだ? カネか? 宝石か? ゲハハハッ──答えなくていいぜ。列車ごと頂くからねェ!」
 こういう連中が現われるのを、決して想定していなかったわけではない。むしろ想定していたからこそ護衛が配置されたのだ。
 ナイフの男は立ち上がった姿勢から素早くナイフを投擲。
 グドルフはそれを斧で無理矢理たたき落とすと、猛烈なショルダータックルで男を付近の座席ごと吹き飛ばした。
 グドルフが侵入したほうとは反対側の窓がかち割られ、メーヴィンが飛び込んでくる。
 運転手のいる機関車両へ向かおうとしていた男が振り返り、拳銃を抜く――より早く、メーヴィンの木槌は男の腹を打った。
 更にハンマーを振り上げ、頭めがけて叩き付けるメーヴィン。
 男は両手を翳して防御するが、後からするりと車両に侵入したペッカートが右手でスマホをいじりながら、左手をポケットに入れたまま振り返った。
 車両の後部には拘束されて意識がもうろうとしているハーモニアがのせられ、意識の戻った一部の者がこちらをおそるおそる覗いていた。
「Stick 'em up high, Jack――ほら動くんじゃねぇよ。おまえらが自分の中身をぶちまけたいっていうなら構わねぇけど」
 ペッカートから伸びた影が男の腹や足に絡みついていく。
 それでも抵抗しようと男は銃を撃ったが、ペッカートはまるで動じなかった。
 スマホを二度タップしただけ。銃弾はペッカートの眼前で、見えない壁にめりこむように止まった。
「ぶちまけていいとさ」
「なら、まず頭じゃな」
 メーヴィンの木槌が男の頭を粉砕した。
 一方で、グドルフはナイフ使いの男にマウントをとって一方的に顔面をズタズタに切り裂いていた。
「フウ……なんだ、もう終わりか?」

「さて。我等『物語』の耐久性を再確認する機会だ。奇怪なものに悪の『花』を捧げたならば、世界は遍く滑稽に映るだろうよ。Nyahaha!!!」
 走行。跳躍。ゆがみ、ねじれ、窓をフレームごと破壊して車両内へ。
「此処は『我々』が乗っ取った。愉快痛快に貴様等は総てを投げ出し消え去るが良い。楽園か奈落か。行先程度は選択を赦す。さあ。蹂躙と哄笑の幕開けだ。襲撃劇に観客は存在しない」
 両手を掲げ赤い口だけで笑ってみせるオラボナ。
 護衛の男はショットガンをとりオラボナめがけて至近距離で発砲。
 常人なら脇腹が丸ごとなくなるような衝撃が走ったしオラボナの脇腹も一瞬ちゃんと無くなったように見えたが、なぜだかすぐに元通りになっていた。
 あげた両手を、男の両肩にとんと置く。そして、つかむ。
 男は本能的に叫び声をあげ、ショットガンを撃ちまくったが……。
 オラボナの姿勢すら、変えることはできなかった。
「さあ――来る者は拒まないが去る者は決して逃がさない。収奪劇の幕開けだ」
 車両の左右。両側の扉が同時に破壊された。
 ハンドポケット姿勢からのマジカルケンカキックによって扉を無理矢理破壊したことほぎと、ストライカーによるブーストダッシュからの二刀交差斬りで扉を切り裂いた秋奈。
 二人が同時に車両へと転がり込んだのだ。
「こ、殺せ!」
 いわゆる半貨物車両状態であったらしく、車両後部には動物用の檻が並んでいた。
 秋奈はそちらをチラ見してから、片眉だけ小さくあげて――。
「戦神が一騎、茶屋ヶ坂アキナ! 有象無象が赦しても、私の緋剣は赦しはしないわ!」
 あえて堂々と名乗りを上げると、刀を抜いた護衛の男へと斬りかかった。
 男は剣を翳して防御しようとしたが、秋奈は剣を打ち付けた直後にもう二振りの刀を抜いて斬撃。
 男の腰周りをゼロセンチにスリムアップしてやった。
「要らないわよねぇ、余計な感情なんか! それで勝てるって言うんならさ!」
「おー、そーだそーだ」
 ことほぎはポケットに手を入れたまま煙草をくわえ、腕が鋼になった巨漢の護衛が殴りかかってくるのを面倒くさそうに見上げた。
 顔面めがけてのパンチを足運びだけで回避し、スピンからの後ろ回し蹴りを叩き込む。
 脇腹にめり込んだブーツからマジカル浸食がおこり、男の内臓器官をめちゃくちゃにねじれさせた。
 足をめりこませたまま、やっと左手をポケットから出したかと思うと、ことほぎは加えていた煙草を薬指と小指だけでつまんでとった。
 吹き付けた煙が、そのままマジカル呪殺となり男の脳をマジカルディゾリューションした。
 要するに、男は鼻と耳からなんともいえない色の半液体を噴出して死んだのである。
「おう、そっちはどうだ。終わったか?」
「Nyahahahaha」
 オラボナは発狂したように弾切れのショットガンのトリガーをひきつづける男の肩を抱き、左手に持った真っ黒なケーキを顔にねりねりと押しつけていた。
「ある意味終わってんな」
「楽にしてやりましょ」
 ヒュン、と刀をふって血をはらう秋奈。
「でーあーふたーでー……」
 鼻歌を口ずさみながらゆっくりと歩み寄り、男の首へと刀をかける。
「お、後で運転手に暗示かけて別の目的地まで送ってやるか。事後処理もカンペキとかオレってデキる女……!」
 壊れたスプリンクラーのように血を吹き上げるのを背景に、ことほぎはからからと笑った。

 開いた窓から飛び込む鳩。
 急ブレーキの直後におこった珍事に顔をしかめるが、この業界において不自然に現われる小動物は大体敵の使役動物だというのが常識である。
 ガンマン風の男は素早く拳銃を抜き、一発で鳩を銃殺した。
 が、その直後。
「やぁやぁ、我こそは通りすがりの強盗忍者! 随分と貧弱な護衛共でござるな! この列車の積荷、全て拙者等一党が貰い受ける!」
 窓を切り裂いて素早く飛び込んできた咲耶が、他の護衛二名を相手に小太刀を逆手に握って構えた。
 剣を抜き、棍棒を抜き、それぞれ殴りかかる男たち。
「お前ら――!」
 敵を引きつけようとする者にそのまま向かっていくのは愚策。だが分かっていても向かっていってしまうのが、戦いのセオリーでもあった。
 咲耶は繰り出された剣を小太刀で受けると、押しつけた籠手から幻影棒手裏剣を射出。相手の身体に打ち込むと、くるりと相手を捻るようにして背後に回り込んだ。
 ガンマンはそんな彼女に狙いをつけよう――としたその時。
「列車強盗なのじゃー! 床に伏せて大人しくするのじゃ!
 窓をクロスアームでかちわって飛び込んできたデイジーが、むきゅうといいながら床を転がった。
 今更ではあるが、ラサを走る列車は蒸し暑くなるのをさけるため窓が大きく設計されている。位置こそ高いが、がんばればかち割って飛び込むことも可能なのだ。
 と、場面を戻って。
 デイジーは転がった直後のタコ足立姿勢から水鉄砲を構えた。
「くーっふっふっふ、みっともなく命乞いをすれば助けてやらんこともな――嘘じゃよ!」
 射撃。
 によって発生する黒いキューブ。
 ガンマンは直撃を受けてよろめき、反撃をしそこなった。
 さらなる射撃によって発生する青い月。
 またさらなる射撃によってそれらが一体となり、ガンマンの肉体を水風船のように破裂させた。
「おっとお? やりすぎてしまったかのー?」
「いいえ、とてもよい行ないでした!」
 わざわざ扉をあけて入ってくるヴェルフェゴア。
「どうも皆様ごきげんよう!
 ええ、こんなご立派な列車の護衛を務めるあなた方の魂はさぞかし素晴らしいモノでしょう?
 胸を張りイーゼラー様のもとに還られて下さいませ」
 咲耶と打ち合っていた男に後ろから歩み寄り、漆黒の闇を手に纏って後頭部を掴んだ。
 男は『ガッ』とだけ言ってけいれんし、ヴェルフェゴアは男の口にもう片方の手を指先から突っ込んで祈りを捧げた。
「ああ、ごらんなさい。わたくしの祈りが通じたのです」
 男は口の奥からどろどろとした黒いよくわからないものを吐き出し、目や鼻からも同じようなものを吹き出しながら崩れ落ちた。
「神を信じぬこの者も、きっとイーゼラー様のもとに還ることができたでしょう。あなたの! 血肉は! 生きる! 魂に! 還元せねば! ……なりませんの」
 倒れた男の腹を素手でめちゃくちゃにさばいて、中に手を突っ込むヴェルフェゴア。
 その穏やかな顔つきに、残る一人の男は青ざめた。
「……案ずるな、貴様はあのように苦しませはせぬ」
 咲耶の小太刀が男の首に刺さり、引き抜かれる。吹き上がる血が、窓を真っ赤に染めていった。

 止まった列車が、再び走り出す。
 馬車も岩も撤去され、どうやら予定していた場所とは違う駅へと向かうようだ。
 列車が止まってから動き出すまでの短い間に何が起こったのかは……公的な記録には残っていない。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete!

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