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シナリオ詳細

夏でも繰り出せ、グラモス温泉!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ヤマカシみたび
「幾千の奇跡よりも罪深き邂逅。我と汝を運命の鎖が――」
「あッらァローレットちゃん久しぶりィ!」
「えっ」
 モーゼル二丁拳銃をスタイリッシュに構えるドーベルマン獣種を遮るように、山羊獣種の男が投げキスをした。
「元気してたァ!? やだぁもうここ暑い! 照り焼き山羊になっちゃう! けどそんな時こそ、温泉よね! ン~~マッ!」

 ラサ傭兵連合より、もとい連合所属の傭兵団『ヤマカシ』より増援の依頼を受けたイレギュラーズは、ラサに存在するオアシス温泉街へとやってきていた。
 割ったゆで卵のような香りと共に高く湯気の立つ岩の城。
 磨かれた黒い石ブロックで囲まれた開放的な露天風呂に、大きな人工滝が流れ込み、聳え立つ細い塔のようなエリアは地熱と湯気によるタジン鍋的構造によって石のサウナとなっていた。
 扉を抜け内風呂へ入れば、昼間の日差しが差し込む水晶洞窟のような美しさが広がっている。
 ここはラサのドリドガン温泉街の一角、グラモス温泉である。
 併設された宿は涼やかな白い石の城めいたつくりになっており、スイートルームに宿泊すれば一日限りの女王様気分を味わえること請け合いだ。
 ――という紹介を、ヤマカシ傭兵団の解説担当ロバ獣種がしてくれた。
「このあたりは観光地ではありますが統治者が傭兵に金をかけた結果治安が急速に回復し、とても安全でリラックスできる観光地になったのです。そういうとこですよ」
 まるで自分のことのように胸を張るロバ獣種。
 そばには棒キャンディなめながらうんうんと頷くポメ獣種。フシューしかいわないトカゲ獣種。紙袋いっぱいのチキンを食ってる熊獣種。美女の黒羊獣種はひとり毛皮の手入れをしていた。
 腕組みしていたシカ獣種が目を開ける。
「しかし昨今、周辺砂漠地帯にこれまでになかった魔物が出没するようになったのでござる。
 やってきた観光客に襲いかかることもあり、危険なウワサが広まれば売り上げ激減間違いなし。よって拙者らフリーの傭兵団にお呼びがかかったのでござるよ」
「フシュー」
「けど募集は15~16人。私たちは8人グループだから、もう8人見つけないといけないのよねェ」
 毛皮の手入れをしていた黒羊獣種が、ゆるく腕を組んで立てた指を色っぽくくるくるやった。
「信頼できて、仲良く出来て、ついでに温泉も一緒に楽しめそうな人たちがいいじゃない? だ、か、ら……」
「アタシたちと一緒に、お仕事よ! お仕事しましょ!」
 最後を、山羊獣種がもってった。

●砂の魔物
「古の伝説が魔のものを呼び寄せた。罪深き煙霞の物語。魔女の恋心は――」
「砂漠には砂でできた魔物が沢山出てくるんですよ。そういうとこですよ」
 ポージングするドーベルマン獣種を押しのけて、眼鏡をちゃきっとやったロバ獣種が資料を手際よく広げていく。
「出没しているとみられるエリアは三箇所ありまして、得意分野とチームの性質をみて3グループに分かれてあたるのがベストかと思います。
 情報はまとまっているので、こちらをご覧ください」
 ロバ獣種が差し出してくる三枚のシート。

 エリアA:砂狼の砂丘
 なだらかな砂の丘。高低差が激しく広い砂地に、砂でできた狼が出没するという。
 人間が近づくとそれを感知しているのか大地から飛び出すように現われ、奇襲を仕掛けてくる。
 噛みつきやひっかき、砂の弾丸を飛ばすといった攻撃方法をとる。
 これを1チームおよそ20体以上倒せば依頼完了だ。

 エリアB:巨大砂蜥蜴の谷
 岩で囲まれたやや広めの谷に、巨大な蜥蜴型の砂魔物が発生している。
 よその傭兵隊によって追い込みが完了しているので、その場で待ち構えて戦闘に持ち込もう。
 とにかく巨大でくっそ強いが、いくつかの部位破壊によって能力を落としたり隙を作ったりすることが可能だ。
 連係プレイで倒そう。

 エリアC:砂の蠍群生地
 硬くひからびた荒野には足がはまるほどの穴が沢山あいている。そこから砂でできた大サソリが出てくるという。
 サイズは大型犬程度。
 大きな音を立てるとびっくりして飛び出し、戦闘状態となる。
 ダメージ毒や麻痺毒といったバッドステータスを多く含んでいるため、回復能力があるととてもいい。

「メンバーは……そうですねえ。そちらが先に決めてください。
 その穴を埋める形で我々がフォローにあたりましょう。
 ローレットはその時々でメンバーが異なるといいますからね。その方が自由に戦える筈です。では皆さ――」
「ホラ見てよ温泉組合からチケットもらっちゃったのよ!
 お仕事終わったら一緒に温泉入りましょ! 入りましょ! ん~まっ」

GMコメント


■成功条件
・エリアAの攻略
・エリアBの攻略
・エリアCの攻略

 それぞれ別々のチームを組んでトライします。
 二つ以上は選択できず、めっちゃ疲れるため終わったあとに手伝いに行くのもナシとします。
 あと、終わったあとに温泉にはいって行けます。いきましょう。

 皆さんはヤマカシ傭兵団とミックスして5~6人チームを組みます。
 なんとなく『自分このエリアに行きたい』『むいてそう』『○○ちゃんと一緒にいきたい』みたいなライトな選び方でOKです。
 ヤマカシはバランスのいいチームなので、そのフォローも結構できます。

■エリアA:砂狼の砂丘
 砂丘で砂狼と戦います。
 狼は奇襲を行なうため、超反射神経や『くるね!』てわかるスキルなんかがあると対応できるようになるでしょう。
 20体がノルマですが、それ以上討伐してもOKです。単純に喜ばれます。

■エリアB:巨大砂蜥蜴の谷
 巨大な砂でできた蜥蜴と戦います。
 砂蜥蜴は熱砂のブレスをはき、トゲ鉄球状のしっぽを振り回し、四足歩行で激しく走り回ります。
 また、翼のようなものを生やして大きく飛び上がることもできるようです。(飛行ってほど高くは飛ばないので、ジャンプ能力程度に考えてください)
 攻撃力が高く耐久力も高く自己再生しBSの治癒もできる上『怒り無効』がついています。
 5~6人がかりでガチるくらいクソ強いですが、部位破壊をすることで弱体化が可能です。

・しっぽ:強烈なハンマー攻撃(自域)ができなくなる。
・頬のひらひら:ブレス攻撃(超貫)ができなくなる。
・つの:『怒り無効』が解除される
・脇腹:防御力が地味に落ちる

 破壊した部位は少しすると再生してしまうので、破壊効果はどれも一時的だと思ってください。
 また、範囲攻撃で狙えるのは一つの部位だけです。全部収めて全部攻撃ってわけにはいかないようです。

■エリアC:砂の蠍群生地
 荒野に繰り出して砂蠍の群れを倒しましょう。
 なんか語感がキングスコルピオンに似てますが一切関係はございません。
 彼らの攻撃は個体ごとに異なり、毒、出血、麻痺、恍惚、必殺という種類があります。エネミースキャンがあるとその違いがわかるものとします。
 砂蠍自体専門家もみたことねー種類らしく、モンスター知識だとちょっと微妙です。
 出てくる個体を全部倒せばクリアです。

■温泉
 冒頭で出たグラモス温泉の当日チケットが手元にあります。
 温泉が宗教上無理ってわけでもない限りは、折角なので楽しんでいきましょう。
 一般的な温泉街と一緒で色んな温泉設備があります。
 湯以外だとサウナや砂風呂、マッサージなどがあり、
 名物としてグラモス牛乳とグラモス饅頭があります。
 コクの強いコーヒー牛乳と黒糖まんじゅうです。

■獣種傭兵団『ヤマカシ』
 ラサに限らず全国を行脚するフリーの傭兵団。8人組。
 ローレットに温泉の魅力を教わって以来の温泉マニアで各国の温泉地や秘湯を巡っている。おかげで仕事が偏った。
 何か理由があるらしく、地味に本名を明かさない。

・ドーベルマン獣種:傭兵団の実質的リーダー。中二病的ワードで喋りスタイリッシュに構えるだけの人。攻撃力皆無だが囮能力が高いが耐久力は低い。
・山羊獣種:身体は男、心は乙女。パワー系のプロレス技で戦う。口癖は『嫌いじゃ無いわ!』
・ポメラニアン獣種:無邪気系の少年系。ピンク主体のカワイイファッションを好む。魔法銃の使い手。
・トカゲ獣種:フシューしか言わない。実は女。口から謎の煙をはく。デバフとヒール係。
・シカ獣種:拙者ござる口調の刀士。実はミーハーで口調はファッション。口癖は『タイマンを申し込むでござる』。
・ロバ獣種:C.A.Rシステム使い。冷静でめざとい。口癖は『そういうとこですよ』
・熊獣種:鋼鎧をまとい重火器を肩に担いで戦うパワー系砲手。脳筋。
・黒羊獣種:スタイルのいい美女。(毛皮を)脱ぐとすごい鉄の簪や櫛でたたかうアサシン。

・基本陣形と性質
 囮:ドーベルマン(高命中名乗ラー)
 前衛:山羊(タンク)、シカ(高命中高威力)、黒羊(高CT、防無その他)
 中衛:トカゲ(デバフとヒール係)
 後衛:ポメ(高EXA)、ロバ(バランス型。非戦向き)、熊(高威力極振り)

■■■アドリブ度■■■
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用ください。

  • 夏でも繰り出せ、グラモス温泉!完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年09月01日 22時25分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)
灰雪に舞う翼
善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)
レジーナ・カームバンクル
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク
ヴォルペ(p3p007135)
満月の緋狐
ハンナ・シャロン(p3p007137)
風のテルメンディル
エルス・ティーネ(p3p007325)
祝福(グリュック)
ピリム・リオト・エーディ(p3p007348)
復讐者
ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)
私の航海誌

リプレイ


「ごらん! ください!」
 一拍子二アクションで巨大テーブルナイフを振りかざしてみせる『ハッピーエンドを紡ぐ女』ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)。
「ほー、こりゃいいナイフだ」
「刃がないのに高度な切断魔術がパッシブされてるー。おもしろー」
 熊獣種とポメ獣種がウィズィニャラァムのまわりをぐるぐるまわりながらナイフを観察していた。
「そうでしょうそうでしょう。遠くから投げますよ、これを」
「えー、投げるのは無理でしょー。近接武器だもんこれー」
「そう思うでしょうそう思うでしょう」
「なんだ、もう馴染んでんのかい。ぶっはっはっ」
 『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)は豪快に笑いながら温泉街のウェルカムゲートを潜った。
 横を歩く『レジーナ・カームバンクル』善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)。
「しかし、意外ね。汝(あなた)存在感ありすぎて初めてという気がしないのだわ」
「ン、そうか?」
 温泉街自体も随分と賑やかで、モンスターが出るというのに観光客が随分といるように見えた。
「しっかし、つくづくオメェさんらとも縁があるなあ。ヤマカシ!」
「ホントねぇ。どう、アタシらの傭兵団、入っちゃう?」
 何かを狙う目をしてゴリョウをこづく山羊獣種。
 言っていることは半分本気というか、実際ヤマカシ傭兵団にはタンク役とヒーラー役が不足しており、互いの才能をうまいこと連結してバランスをとっているようだった。
 だからこその、合同作戦なのである。
「温泉……んー、心が躍るね。おにーさん、そういうの好きだよ」
 ゴリョウたちの後ろ。前髪をかき上げる『満月の緋狐』ヴォルペ(p3p007135)。
 『猫さんと宝探し』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)も両手をばさばさして見せて、『ね、楽しみだよね!』とテンションを上げていた。
 黒羊獣種はくわえ煙草をしたまま黙っているし、トカゲ獣種に至ってはフシューって言いながら煙吐くだけなので、人数のわりに静かなメンバーである。
「すみませんね。どうも無口な奴らで……そういうとこですよ二人とも」
 間を取り持とうとするロバ獣種だけがちょっと忙しそうだった。
「まあまあ。両手にレディ……楽しい仕事になりそうじゃない?」
「…………」
 一方で、下の方を向いて歩く『《戦車(チャリオット)》』ピリム・リオト・エーディ(p3p007348)。
 無口で引っ込み思案なのかなと思ったが、どうやら周りの足ばかりをじっと観察しているらしい。
 触れない方が良さそうだと察して声をかけるのをやめておくシカ獣種。
 そんな集団最後尾。ハンナ・シャロン(p3p007137)は不思議な装飾のなされた魔剣の柄をトンと叩き、意気揚々と歩いていた。
「温泉って、確か地中から湧き出す温かい水で出来た泉でしたよね?
 私、温泉は見るのも入るのも初めてです!」
「そういえば……私も温泉って入ったこと無いわ」
 ぽつりと呟く『氷結』Erstine・Winstein(p3p007325)。
「『初めて同志』ですね! 私、とても楽しみです!」
「まぁ、そうね……」
 フウ、と息をついてErstineは自分の手首を見下ろした。
「仕事が終わってからのお楽しみにとっておきましょ!」

●砂狼の砂丘
 なだらかな砂の丘。一部の者にとって、こうした丘は危険が少なく通りやすいとされ観光客が通ることも多いという。
「そんな場所にモンスターが出れば観光地は大打撃! 行きましょう、温泉を守るために!」
 うおーといって剣を抜き、天高く掲げてみせるハンナ。
 彼女の横で、モーゼル自動拳銃を二丁、十字に交差して構えるドーベルマン獣種。
「千一夜の月が昇る国。砂礫の牙よ、無垢なる旅人を食らうべから――あっ」
 四方から同時に飛び出してくる砂狼。
 噂に聞いたとおり、全身が砂で出来た狼型の魔物である。
 牙を剥きだしにしてドーベルマン獣種に食らいつこうとした、その時。
「ローリンッ!」
 ドーベルマン獣種の周りを豪速でターンして走る山羊獣種が、狼たちの牙をはねのけうち二体に至っては自分の腕を噛ませて受け止めた。
「今よハンナちゃん! 薙ぎ払って!」
「はい――奔って『Fate of ruin』!」
 ハンナの繰り出す斬撃が狼たちにまっすぐな線を引くように切り裂き、パチンと黒いスパークだけを残して狼を消し去った。
「敵との相性も悪くないです! 狼の十や二十、叩き斬ってみせましょう!」
「――ッ」
 ドーベルマン獣種の射程外から接近し、砂面から飛び出して奇襲をしかけてくる砂狼。
 ピリムはそれを敏感に察知すると、握っていた『霊樹の大剣』を振り向きざまに叩き付けた。
 粉砕される胴体。
 そのシルエットを目視して、ピリムはハッと目を見開いた。
「四本脚! それも沢山っ! いやーいけませんねーコレは全て回収しなければいけませんねー」
 変なところにやる気スイッチがついている。らしい。
 Erstineは仕方ないわねといった様子で肩をすくめると、ポケットにさしていた一輪の造花を抜いた。鋼でできた造花を宙に放り投げると、大きな鎌へと変形。握り込むと、Erstineの手首から指先にかけて赤く血の筋が光った。
 新たに飛び出す砂狼。
 山羊獣種がそれを両手でがしりと掴み取ると、Erstineへ目で合図を送ってくる。
「攻撃を極力受け止めてもらうのは恐縮だけれど、あなた方を信頼してこそ、なので、どうか……」
「女の子が遠慮しないの! けど見かけによらずしおらしいの……嫌いじゃないわ!」
 身体をのけぞらせて砂狼を放り投げてくる。
 Erstineは回転しながら飛んできた砂狼へと踏み込んだ。
 鎌にErstineの血が巡り、真っ赤な鎌へと変化していく。
 一瞬の斬撃。虚空に赤い奇跡をひくと、砂狼は十字に切り裂かれ崩れ落ちていた。
「奇襲を仕掛けられる側というのも、嫌なものね」

 ピリム、Erstine、ハンナ、ドーベル、山羊の五人メンバーは砂狼の奇襲に対して高い迎撃能力を持っていた。
 だがその一方で、長期戦に対するスタミナの維持が課題であった。
「漆黒の闇に目覚め血に狂う狼たちよ、砂塵……いや、幻想……ううむ……!」
 ドーベルマン獣種は中二ワードとポーズのレパートリーが尽きてきたし、山羊獣種の体力もなかなかしんどくなってきたようだ。
「大丈夫ですか?」
「まだまだイケるわ。けど、ノルマを達成したら帰りましょうね」
 出来るところまでやる。単純なことだが、傭兵の鉄則だ。
 ピリムはというと、ある程度戦ったら気分が落ち着いてきたようで。
「イーゼラー様にも魂を捧げておきましょーか。明らかに穢れた魂ですからねー」
 といった具合に調子を戻して砂狼を蹴りつけていた。
「これで18。あと2体がノルマですよー」
 構えるピリムたち。
 それを前後から挟み撃ちにするように、二体の砂狼が全く同時に飛びかかってきた。
「――」
 Erstineが素早く振り返り、持っていた鎌を投擲。
 飛びかかる最中の狼に命中させると、素早く繰り出した血の糸で砂狼を輪切りにした。
「砂にかえって、眠りなさいな」
 一方でハンナは魔剣を握って砂狼に飛びかかり、高速回転からの連続斬りを繰り出した。
 着地を軽くミスって砂地を転がったが、狼のほうはめちゃくちゃに破壊され、砂になって散っていく。
「やりました!」
「さ、急いで引き上げるわよ! 温泉が待ってるわ!」
 ハリアップと叫ぶ山羊獣種にせかされて、ハンナたちは温泉街めざして走り出した。

●巨大砂蜥蜴の谷
 モンスターが住み着きやすい谷は周辺の者でも滅多に立ち入ることはない。
 しかし温泉の脈が通っているらしく、どうしても警備を怠れない場所なのだそうだ。
「温泉のために怪物退治たぁ腕がなるぜ!」
「ぶははっ! 違いねぇ!」
 行くぜ! と言いながら同時に突撃していく熊獣種とゴリョウ。
 砂の装甲に覆われた巨大トカゲは、彼らを威嚇するよに吠えると頬のひらひらを広げた。
「うお、やな予感」
 一瞬だけデフォルメされるゴリョウ。
 直後に熱砂のブレスがはき出され、ゴリョウはライオットシールドを展開しながら突き進んだ。
「まずは角だ! 角からぶっ壊せ!」
「おう!」
「まかして!」
 熊獣種とポメ獣種の射撃が大蜥蜴の角に集中。直線攻撃がひきにくいように扇状に広がるのも勿論忘れていない。
 そんな彼らをはねのけようと歩き出す大蜥蜴に、ゴリョウががしりとしがみついた。
「おっと、行かせねえ」
「そのままおさえておいてね」
 レジーナは空間に無数の剣や槍を召喚すると、それらを次々に大蜥蜴めがけて発射していった。
「喰っっらえりゃあああっっ!!」
 巨大ナイフを振り上げ、飛びかかるウィズィニャラァム。
 皆の攻撃が集中する大蜥蜴の角へと叩き付けると、大きな角がばきりとへし折れた。
「折った! 折った! 折りました! あと頼みます!」
 うおーと言いながら猛烈な速度で攻撃射程外まで走って逃げていくウィズィニャラァム。
「よっしゃあ!」
 ゴリョウはここぞとばかりに突撃――を待って、まず大地に手甲で覆った拳を打ち付けた。
「むっ、ありゃあ……」
 相撲の構えに似たそれに、熊獣種が敏感に意図を察した。
「手数だ! 手数を稼いで動きを鈍らせろ! ゴリョウの旦那が当てる『隙』を作るんだ!」
「まっかせてー!」
 熊獣種とポメ獣種はそれぞれ大蜥蜴の両側面に移動すると、機関銃による射撃と二丁拳銃による連射を叩き込みまくった。
「……なるほど、読めたわ」
 レジーナは僅かに浮き上がり、新たに召喚した無数の武器を連続発射。
 集中砲火を浴びた大蜥蜴に、ウィズィがここぞとばかりに突撃していく。
 頬のえらに巨大ナイフを突き立て、飛び上がって逃げようとした大蜥蜴の動きをほんの一瞬だけ封じた。
「今です!」
「念(ぬん)ッ!」
 ゴリョウは両目を大きく見開いた。黒い眼球に赤い眼が光る。
 その眼ににらまれた大蜥蜴は思わずびくりと身体をふるわせ、狂ったようにゴリョウめがけてモーニングハンマーめいた尻尾を叩き付けにかかった。
「かかった……!」
 特殊棍棒とライオットシールドを交差させた硬い防御姿勢で打撃を受け止めると、そのまましっぽを掴んで身体ごと捻った。
「粉(ふん)ッ!」
 ねじりが身体全体に伝わり、思わず転倒する大蜥蜴。
 崩れた姿勢。乱れた思考。
 好機であり、勝機である。
「しっぽの振り回しに気をつけて! 一気に行きますよ!」
 ウィズィは巨大ナイフを槍投げのようなフォームで構え、大蜥蜴のすぐそばまで迫った。
 3メートル距離。豪快なフォームでの投擲。
 ナイフはざっくりとエラに突き刺さり、血のかわりに激しく砂を吹き上げさせた。
「おもしろそうね。乗らせて貰うわ」
 レジーナは反対側に回り込み、大量の巨大フォークや巨大バターナイフを召喚。大蜥蜴の反対側のエラへと突き立てた。
 しっぽを振り回し、暴れ回る大蜥蜴。
 ゴリョウはそれを受け流し、反撃を繰り出した。
「トドメだ!」
「応!」
 熊獣種とポメ獣種が加わり、徹底射撃で動きを鈍らせていく。
 ゴリョウはそこへ猛烈なタックルを浴びせ、こともあろうに大蜥蜴をはじき飛ばしてしまった。
 大きな岩に激突し、砕け散る大蜥蜴。
 ゴリョウはブシューと熱い鼻息を吹き、目を瞑った。
「一丁上がりだ」

●砂の蠍群生地
「ふうむ、なかなかおぞましい光景ですね……」
 拳銃を水平に構えるロバ獣種。
 彼らの眼下には荒野が広がり、砂でできた大蠍が群れを成していた。
 蠍がのぼってこれないような高い岩場ではあるが……。
「今にも一斉に飛びかかってきそうだね。身体がぞわぞわする!」
 両手で自分の肩をさすってぶるぶると震えるアクセル。
「なあに、大丈夫大丈夫」
 ヴォルペは二本指を額にピッと立てると、アクセルたちにウィンクをした。
「おにーさんが守ってあげる。こう見えて鍛えてるから」
「あら素敵」
「フシュー」
「ではヴォルペ殿に防御を任せて、拙者たちは」
「うん、思い切って飛び込もう!」
 六人は助走をつけ、高所から勢いよくジャンプした。
 その堂々とした気配を察知した砂蠍たちが顔をあげしっぽのトゲを振りかざす。
「――ッ」
 ヴォルペはギラリと赤い目を光らせると、あえてその中心へと降り立った。
 蠍の尻尾を革靴で踏みつけ、バウンドするように着地。
 四方八方から一斉に蠍のトゲが突き刺さる。
 眼鏡のブリッジを押さえるロバ獣種。
「あれは……! 毒、出血、麻痺、恍惚、必殺……五種全てのトゲが刺さっています!」
「わかるの?」
「すみません半分ほど当てずっぽうです!」
「だめじゃん!」
 ばさばさと翼をうごかして落下にブレーキをかけるアクセル。蠍たちは案外遠くまで攻撃できないらしく、治癒に専念する限りは高所飛行を続けていた方が安全らしいとわかったためである。
 しかし事情によっては……。
「じゃあ今すぐそばにおりてブレイクフィアーを……!」
「いいえ、その必要はないでしょう」
 大量にトゲに刺され、様々な種類の毒を流し込まれたヴォルペ。
 しかし。
「んー、お転婆姫は今日も元気だ」
 『満月の桃兎』のダメージとトゲのダメージだけを受けて、ヴォルペは爽やかそうに前髪をかき上げていた。
 着地し、銃撃を開始するロバ獣種。
「彼の抵抗力と耐性をもってすれば」
「サソリの群れとて恐るるに足らず!」
「台詞とらないでください、そういうとこですよ!」
 追って着地したシカ獣種と黒羊獣種が、ヴォルペに群がったサソリたちに斬りかかった。
 トカゲたちは反撃を試みるが、そのたびに素早く回り込んでヴォルペに阻まれまるで攻撃が通らなかった。
「フシュー」
 トカゲ獣種がアクセルに合図を送ってくる。
「あっ、そうだね! 回復は任せて!」
 ヴォルペがシカ獣種とトカゲ獣種を庇うことで殆どのダメージを軽減していく。
 それでも彼の『回避率の低さ(懐の広さ)』ゆえに直撃の割合が増え体力がごりごりと削られていくが、アクセルがひたすらメガヒールを打ち込み続けることでそれもだいぶ軽減されていた。
 トカゲ獣種はその埋め合わせを行ないつつ、自力である程度攻撃を防げる黒羊とロバを主に治癒するだけですんだ。
 いわゆる、個性パズルによるバランスである。
「あー、ヤバイ……」
 胸元に手を当てるヴォルペ。
 ここまで結構な数の攻撃をうけてきた彼である。流石に限界なのだろうか。「大丈夫!? いまもっと回復を……!」
 アクセルがメガヒールの勢いを強めようとしたのに対して。
「楽しくなってきた!」
 ヴォルペは早き替えならぬ早脱ぎによってコートと上半身の衣服を脱ぎ捨てた。
「おお」
「あらぁ」
「なかなか」
「フシュー」
 傷だらけだが綺麗に鍛えられた細マッチョ系のボディが露わになり、四方八方から引き続き繰り出されるトゲの攻撃を片っ端から引き受けていた。
 連続の蹴りによってサソリをはじき飛ばし、繰り出されるトゲを両手で掴み取る。
 背後から迫るトゲが次々と突き刺さるが、ヴォルペはギラつくように笑って唇の端から血を流した。
「し……仕上げだよ、みんな離れて!」
 アクセルは空中に無数の光の球を発生させると、その全てをサソリたちへと発射。
 次々に怒る光の爆発が、あたりを覆った。

●温泉!
「…………」
 ウィズィニャラァムはサウナベンチに腰掛け、じっと斜め下を見つめていた。
 向かいには黒羊獣種とトカゲ獣種。
 鍛えられた肉体を匠みたいな目で観察し、ゆっくりと二度頷く。
 ……とかしていたら、ピリムがウィズィニャラァムの脚を撫でていた。
「……あの」
「お気になさらずー」
「えっと」
「あ、よければ内ももとふくらはぎもー」
「モロだ! この人モロのやつだ!」

 みゃーん! という声が遠くから聞こえた気がしたが、レジーナはスルーした。
「温泉なんて久しぶりだから嬉しいわね」
「初体験……気持ち良いですね……」
 蕩れ~っとした顔で温泉に方までつかるハンナ。
 Erstineもゆっくりと浸かってみたが、その心地よさにほふうと息をついた。
「温泉という文化には初めて触れるけれど……なかなかに癒されるわね。たまにはこう言うのも、悪くないわ……」



 そんな具合に、互いを労いあいながら温泉を楽しむErstineたちとヤマカシたち。
 外ではアクセルと山羊獣種が並んで足湯につかり、グラモス饅頭をもふもふ食べていた。
「おいしい。皆は温泉楽しんでるかな」
「そうねぇ。男湯は盛況なんじゃないかしら」

 件の、男湯。
「待ってたぜ、この時を……ッ」
 全裸で露天風呂の前に立つヴォルペ。
「見せて恥ずかしい身体は作ってないんでね。おっと、おにーさんは洗って貰うより洗う方が好きだなあ。ここはひとつ……」
「「おう、頼むぜ!!」」
 どかっと流しの前に腰を下ろすゴリョウと熊獣種。
 ロバ獣種が『そういうとこですよ』と呟いた。

 身体を流し、みんなで温泉にどっぷりつかる。
「暑い所でも寒い所でもやっぱ温泉は最高だな!」
 これぞ、醍醐味。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete!

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