PandoraPartyProject

シナリオ詳細

魔女との共同作戦

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●闇夜に蠢く
 深夜、傭兵(ラサ傭兵商会連合)――その、とある豪奢な屋敷。その裏口へと、大きな馬車が人目を忍んでやってきていた。
 御者があたりを確認しながら、連れの男に目配せをする。ボロをかけられた荷台へと、男が消えていく。しばしの後に、男は手首をロープで縛られた、麗しき幻想種(ハーモニア)の男女たちを、ロープで引っ張り出した。
 幻想種たちの視線は、ひと所に定まらない。というより、どこかぼーっとしていて、あまりにも現実感を欠いて見えた。夢心地のような……そのような感じだ。
 現に、実に乱暴に、男に引っ張られても、幻想種たちは抵抗も、反応も、示さない。
「人形みたいだな」
 男がうすら寒い想いを抱きながら、ぼやく。
「例の砂のおかげだろう。静かなのは良いが、気味が悪い」
 御者が頭を振って、男へと告げる。
「さっさと納品しちまえ。金さえもらえれば、あとは知ったことか」
 御者の男へと頷いて、男は屋敷の裏口に立つ見張りへと話をつけた。
 ややあって、屋敷内より許可が下りると、男は幻想種たちを受け渡し始める。
 しばしの時間をかけて、すべての幻想種たちが、屋敷の中へと聞経ていった。
 その様子を、陰から見つめる、一人の魔女の姿があった――。

●ともに屋敷へ
「と、いうことで。皆には、私と一緒に、この屋敷に行ってほしいのよねぇ」
 と、ほほに手を当てて告げるのは、今回の依頼者――ラウラ・イーグルトンだった。
 話によれば、近頃、深緑の幻想種たちが誘拐され、傭兵に奴隷として売り飛ばされているという話を知ったラウラは、独自に調査を開始。
 そのルートの一部を解明し、捕らえられた幻想種たちが、『納品』されているのを確認したのだという。
「あ、この子たちには、しっかりお仕置きしておいたから大丈夫よ?」
 妖艶に、くすりと笑むラウラの足元には、縄で縛りつけられた二人の男――深緑より、幻想種たちを運んできた業者らしい――が転がっている。
「その時直接手を下さなかったのは、相手の戦力が少し未知数だったから。それに、幻想種の子たちもその場にいたから、万が一にも傷つけちゃいけないと思ったの」
 故に、その場はいったん撤退し、後日、こうして調査の末にイレギュラーズ達へと依頼を出したのだという。
「私も同行する……けれど、作戦の主役は、あくまでも皆よ。どうか、幻想種の子たちを無事に助け出して頂戴ね?」
 ラウラが艶やかに頭を下げるのへ、イレギュラーズ達は頷くのであった――。

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 ラウラ・イーグルトンから、作戦への協力依頼が出ています。
 ラウラと協力し、さらわれた幻想種たちを助け出してください。

●成功条件
 さらわれた幻想種たちの救出

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●状況
 ラウラ・イーグルトンと共に、ラサにあるとある富豪の屋敷へと向かってください。
 皆さんには、裏口で待機してもらい、ラウラが正面入り口で騒動を起こした隙に内部へと侵入。
 屋敷内に残る富豪と護衛戦力を撃退し、閉じ込められている幻想種たちを救出してもらうプランとなっています。
 屋敷内の地図は、ラウラが用意してくれていますので、内部で迷うことは無いでしょう。

●エネミーデータ
 使用人 ×20
  特徴
   さほど強くはないが、それなりに鍛えられた一般人。
   ですが、そのほとんどはラウラの起こした騒動の為、正面入り口の方へと出向いています。
   よほどもたもたしなければ、遭遇することは無いでしょう。

 護衛戦力 ×6
  特徴
   それなりの腕を持つ傭兵です。富豪の部屋で、富豪を護衛しています。
   近~中距離レンジの物理攻撃を使用し、BSとして出血、麻痺を付与します。

 富豪 ×1
  特徴
   イレギュラーズ達よりは格下の相手です。富豪の部屋にて待ち構えています。
   中~遠距離レンジの神秘攻撃を使用し、BSとして火炎を付与します。
   また、軽微ですが回復スキルも使用します。

●NPCデータ
 幻想種たち ×6
  特徴
   奴隷としてさらわれてしまった幻想種たちです。
   現在は、『奇妙な砂』の効果で、ぼんやりとした状態に陥っています。
   全員が富豪の部屋の檻の中に閉じ込められています。

 ラウラ・イーグルトン
  特徴
   妖艶にして強力な神秘アタッカー。
   今回は、正面入り口で陽動を担当してくれているため、直接ともに戦う事はありません。
   作戦開始前や終了時に、会話などを行うタイミングはあるでしょう。

 以上となります。
 それでは、皆様のご参加をお待ちしております。

  • 魔女との共同作戦完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年09月09日 20時55分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

オフェリア(p3p000641)
主無き侍従
メートヒェン・メヒャーニク(p3p000917)
メイドロボ騎士
七鳥・天十里(p3p001668)
アルム・シュタール(p3p004375)
鋼鉄冥土
ミラーカ・マギノ(p3p005124)
森よりの刺客
アルメリア・イーグルトン(p3p006810)
緑雷の魔女
シリル=エンフィールド(p3p006919)
緑の癒し手
ルカ・ガンビーノ(p3p007268)
運命砕き

リプレイ

●悪徳富豪の屋敷へ
 月があたりを照らすころ、ラサのとある富豪の屋敷へ、イレギュラーズ達は向かっていた。
「人を奴隷にして売り買いするなんて……許せないっ」
 道中で、『夜天の光』ミラーカ・マギノ(p3p005124)は呟く。金さえ払えば何でもそろう……とはラサの特色ではあるが、そうは言っても超えてはいけないラインと言う物があるだろう。
「まったくだぜ。筋ってもんを知らねぇのか、目先の利益にとらわれやがって」
 ルカ・ガンビーノ(p3p007268)が同意する。ラサ出身のルカとしては、故郷でこのような蛮行が行われていることに、思う所もあるだろう。
「リスクのある商売をしたのです。なれば、そのリスクが如何ほどのものか、教えて差し上げるのが私たちの仕事です」
 『主無き侍従』オフェリア(p3p000641)が言うのへ、皆は頷いた。敵にはこれから、その報いをたっぷりと受けてもらう必要がある。
「御屋敷だけを見れば、働き甲斐のありそうな立派なものだけど……」
 依頼主であるラウラ・イーグルトンから渡された屋敷の地図を確認しながら、『メイドロボ騎士』メートヒェン・メヒャーニク(p3p000917)が言う。その表情は些か複雑そうであった。地図に記載された屋敷は大きなもので、メートヒェンの脳裏には、そこで如何にして業務を果たすか、というシミュレーションがざっと行われていた。正直、職場の構造だけ見れば、やりがいのある楽しい仕事ができそうではあった。が。
「……こんな人物には、使えたくないものだね……」
 はぁ、とため息をつく。何せ相手は、奴隷の売り買いを平然と行う相手である。とてもではないが、主従の関係を結びたいとは思えない。
「同感でございまス」
 ほう、とため息をつきながら、『堅牢なる楯-Servitor of steel-』アルム・シュタール(p3p004375)も頷いた。アルムもメイドであるが、メイドとしては仕える相手を選ぶ権利と言う物がある。そしてそれは、メイドとしてのプライドでもあるのだ。
「とはいエ、ゴミ掃除でしたらワタクシの……いいえ、メイドの領分ですわネ」
 違いない。これより行われるのは、屋敷の大掃除だ。となれば、それはまさに、二人の仕事に間違いないだろう。
「わっかりやすい悪者なのは、容赦しなくていいから好きだけどね。悪者は大嫌いだけど」
 『ガンスリンガー』七鳥・天十里(p3p001668)が言った。相手は分りやすく立派な悪徳富豪である。加減してやる義理も無いだろう。
「ううん、まさか依頼主がお母さんだったなんて……!」
 『絵本の外の大冒険』アルメリア・イーグルトン(p3p006810)がぼやいた。依頼主であるラウラは、アルメリアの母であるのだ。そしてラウラは、今回の作戦にて陽動を担当している。具体的には、正面玄関で騒ぎを起こし、内部の敵をある程度ひきつけてから撤退する……という役目だ。
「心配……ですか……?」
 シリル=エンフィールド(p3p006919)が尋ねるのへ、アルメリアが頷いた。
「むしろ、やりすぎないか……ね」
 苦笑してみせる。
 さて、一行は屋敷の裏口へと到着した。見張りと思わしき男が二名ほどいたが、ラウラの行動を待って、ひとまず辺りに身をひそめる。
 確認してみれば、作戦実行時刻まであとわずか……そして、時計の針が時刻を示した瞬間、屋敷の玄関の方から、猛烈な爆発音が響いた!
 それは、一度ではなく二度、三度と連続して放たれる、魔力による爆発! なるほど騒ぎを起こす、とはまさにその通りであったのだが……。
「お母さん、やり過ぎよ……!」
 アルメリアが頭を抱えた。爆発は未だに断続的に続き、何事かと悲鳴を上げながら、見張りの男たちも正面へと消えていく。
「あはは……凄いですね……」
 シリルも苦笑して見せた。中々派手な陽動ではあったが、建物そのものへはダメージを与えぬよう考慮しているようだ。そしてこれだけ派手に動けば、しばらくは見張りや、中にいる使用人とやらも、屋敷へは戻っては来ないだろう。
「すごいお母さんね……でも、これなら突入するのも簡単ね!」
 ミラーカの言葉に、仲間たちは頷いた。突入するなら今だ。
「さあ、悪者を倒しに行こう!」
 天十里の声を合図に、一行は屋敷へと侵入したのである。

●VS悪徳富豪たち
 豪奢な廊下を行く。足元に敷かれたじゅうたんの感覚と、所々に置かれた調度品は、素人目に見ても高価なものであることを訴えていた。
「ああ、もう! 本当に、掃除しがいがあるなぁ……!」
 メートヒェンが思わず声をあげた。とはいえ、これから行うのは別の大掃除である。誘惑をぐっとこらえて、メートヒェンは走る。
 裏口から入り、一階を抜けて二階へ。記憶した地図の通りなら、二階に存在する大きな部屋が、富豪の私室であるようだった。そこを目指し、ひた走る。
 外では、魔術による爆発の回数が、徐々に抑えられていった。
「ぼちぼち外も撤退に入ったころか……?」
 ルカが言うのへ、答えたのはアルメリアである。
「多分……! でも、お母さんの事は、心配しなくて大丈夫よ!」
 それは、絶対の信頼を置いているが故に出る言葉である。母なら――ラウラなら、必ず自分の役目を遂行し、鼻歌交じりで戻ってくる。それは確信であった。
「見つけました……! あの部屋です……!」
 シリルが指さすのは、地図に記載された富豪の部屋であった。一行が部屋の前に立ち止まると、シリルは一瞬、顔をしかめた。自らの生命力を代償に、仲間たちへと援護の術式を施したのだ。同時に、ミラーカは少しだけ扉を開いて、
「行ってらっしゃい」
 と、ファミリアー、猫を放つ。猫の視点で部屋の中を見て見れば、突如現れた猫の姿に、怪訝な表情を見せる男たち……それから、部屋の奥に隠れるようにたたずむ、でっぷりと太った男。
 素早く視線を巡らせれば、部屋の左奥に織が見えて、その中には、どこかぼんやりとした様子の幻想種――ハーモニアたちの姿が見えた。
「みつけたっ! 檻は左奥!」
 ミラーカが叫び、猫が左奥へと飛びずさる。
 途端、雷が走り、扉を破壊! 破片と爆風を、部屋の右奥方向へと吹き飛ばす!
「な、なんだ!?」
 富豪の裏返った悲鳴を聞きながら、イレギュラーズ達は一気に部屋の中へと突入した! 中を見てみれば、ミラーカの偵察通りの光景があたりに広がっている。
「なんだ、と聞かれれば、そうですね、今は正義の味方です。後ろめたい商売をしたのですから、私たちのようなものが来ることくらい、覚悟の上でしょう?」
 その指先に雷をほとばしらせ、オフェリアが言う。先ほど扉を破壊したのは、オフェリアのライトニングである。
「くそ、表の騒ぎは囮か!」
 護衛の一人が声をあげながら、すぐさま周囲の仲間へと目くばせをした。手に手に獲物を取り、すぐさま攻撃態勢に入る。そこは、ある程度訓練されたモノの動きであった。
 それに反応したかのように、天十里は高く跳躍。さらに天井を蹴って方向転換すると、檻の前へと陣取る。万が一、人質に取られでもしたらマズい。天十里が先手を取った形だ。
「さぁて、これで心おきなく悪者をやっつけられる!」
 くるり、とリボルバーを指先で回しながら、天十里が言う。ちゃき、と銃を構え、銃口を護衛たちへとポイント。
「くそ、お前ら、こいつらを追い出せ! 何のために高い金を払ってると思っているんだ!」
 富豪が喚き散らすのへ、思わずアルムは肩をすくめた。
「絵にかいたようナ……という奴でございますネ」
 とはいえ、分かりやすく悪人であるというのなら、此方の気も楽だ。一切の容赦もなく、ぼこぼこにしてやればいい。
「幻想種の人たちをさらって奴隷にするなんて、絶対に許せない……!」
 シリルの言葉を合図にしたように、両者は一気に動き出した!
「囚われてる子たちは返してもらうよ。その代わり、僕から鉛玉をプレゼントしてあげる!」
 天十里は手にした黒のリボルバー『夕暮れ.s.OA』をホルスターへとしまいつつ、同時に『チープ・ブック』を取り出し、構えた瞬間に一気にシリンダー内部の弾丸を発射する。その速度は、おそらく並みのものには『瞬きする間に拳銃が別のものに変わった』あるいは『拳銃の色が変わったマジック』のように見えただろう。いずれにせよ、放たれる銃弾は本物であり、雨あられと放たれた銃弾が護衛たちの足を止めた。
「お覚悟を」
 その隙をついたオフェリアが一息で護衛に近づくと、その拳を腹部へと叩き込んだ。が、と護衛の男が強く息を吐き、そのまま足を払い、体勢を一気に突き崩す。
「森の仲間たち、返してもらわうよ!」
 幻想種たち捕らわれた檻の前に陣取りながら、アルメリアが言った。近づいてくる護衛たちをけん制するように、魔法陣からポールを召喚し、薙ぎ払うように叩きつける。
「幻想種の皆さんには、指一本、触れさせません……!」
 『エーテルワンド』を振るい、回復の召喚を行うシリルは、幻想種たちが捕らわれている檻の中を見やる。大雑把に見た限りではあるが、ケガをしているものは居ないようだ。ある程度は丁重に扱われたのだろう……それは商品としてなのだが、怪我の功名と言った所か。
 護衛たちは刃を振りかざし、イレギュラーズ達を襲ってくる。その斬撃を、受け止めるのは二人のメイド。
「あなた達の相手は――」
「ワタクシたち、でございまス」
 メートヒェンはその拳――『メイド流戦闘術・壱の型』で以って、護衛の男の長剣を叩き落し、
 アルムはその刃――『護剣アルタキエラ』を以って、護衛の男を斬り捨てる。
「な、なにをしている! さっさと倒さんか!」
 富豪が悲鳴を上げながら、初歩的な炎の魔術を放つ。迂闊に避ければ、あらぬ方向へ跳び、檻の中の幻想種たちに被害が及びかねない。ミラーカは杖を構えながら、その焔を受け止めた。
「熱ッ……でも、初歩的って言うか、まだまだの呪文ね!」
 ほんのわずかに赤く染まった手の火傷を、ミラーカはすぐさま治療して見せる。
「往生際が悪いわよ、富豪さん?」
「ぐぬぅ……!」
 悔しげにうめく富豪。
「オラぁっ!」
 一方、護衛の男とルカが、長剣と大戦斧で切り結ぶ。
「このラサできたねえ商売やるっつーんなら、覚悟はしてるんだよなテメェ!」
 力強く振るわれる戦斧は、獣の爪牙にも似ていた。強く振るわれるそれが、護衛の剣を弾き飛ばし、その肉体を捕らえる。がは、と息を吐いて、護衛の男は倒れ伏した。
「ホットロッド! シュート!」
「合わせます!」
 天十里が放つ、焔の意志の銃弾に合わせ、オフェリアが魔力を討ち放つ。二つの銃弾に貫かれた護衛は、そのまま意識を手放した。
「護衛、あと三人よ!」
 回復の術式を展開しながら、アルメリアが叫ぶ。
「幻想種の皆は守ります……だから……!」
 同じく、回復の召喚を展開し、シリルが言った。
「了解、だよ!」
 メートヒェンが、残る護衛へ向かって駆け出した。迎撃を行う護衛の長剣を紙一重で回避し、カウンターとして鋭い蹴りを討ち放つ。銃弾よりも鋭いそれが腹部へと突き刺さり、護衛の男は強く息を吐いて、そのまま倒れ伏した。
「お掃除も終盤、でございますネ」
 『護盾アルジャン』を構え、護衛の長剣を受け止めるアルム。インパクトの瞬間、力強く盾を弾けば、護衛の持つ長剣が吹き飛ばされた。おたおたと慌てる護衛を、アルムは護剣アルタキエラにて斬り捨てる。
「残るはあいつだけ!」
 ミラーカが叫び、悪意の魔力を解き放った。最後の護衛の身体を、悪意の魔力が包み込み、激痛と悪寒がその身を駆け巡る!
「ひ……!」
 たまらず武器を取り落とし、逃げ出そうとした護衛を、捕まえたのはルカであった。
「逃げられると、思うんじゃねぇぞ!」
 振るわれる大戦斧が、護衛の男を吹き飛ばし、その意識を奪った。
「ば、馬鹿な! いくらで雇ったと思ってるんだ!?」
 その様子に、富豪が悲鳴を上げる。
「……なんか、本当にTHE・悪の富豪、っていう感じだね」
 天十里がさすがに苦笑を浮かべた。
「さて……」
 ゆっくりと、イレギュラーズ達が富豪へと迫る。富豪はわたわたと後ずさった。
「まて……まて! 金なら払う! 払うから!」
 そのあまりの見苦しさに、ため息をついたものもいたかもしれない。
「……これは忠告だけれど」
 アルメリアが、言った。
「何でもかんでも……お金で解決できる、って思わないでよね。特に、今回みたいな場合は」
 ひ、と富豪がさらに後ずさる……が、その後ろには、メートヒェンが立っていた。メートヒェンは、がしり、と富豪の身体を掴むと、にこやかに笑ってから、
「はい、命はとらないよ。でも、ものすごく痛いから、覚悟してね♪」
 と、思い切り力を込めて、富豪を締めあげた!
「ぎゃああああああ!」
 富豪の悲鳴が、屋敷内にこだまする。
 かくして数秒後には、半泣きで意識を失った富豪が、ころり、無様に転がるのであった。

●救出・完了
「すごい、富豪の子まで捕まえてきたのね!」
 イレギュラーズ達が幻想種たちを保護し、ついでに富豪の男も抱えて裏口まで戻ると、そこには馬車を用意して待っていたラウラの姿があった。どうやら表で騒ぎを起こしたのちに、此方で待機していたようだ。
 両手を合わせ、嬉しそうに微笑むラウラの姿には、可愛さと共にどこか妖艶さが感じ取れる、いずれにしても、こうなっては長居は無用だ。イレギュラーズ達は富豪、そして幻想種たちを馬車へと乗せると、すぐさまその場を離れるのであった。
 しばし離れてから、馬の休憩もかねて足を止める。
「何とか助け出せた……けれど、幻想種さん達は、大丈夫なんですか……?」
 シリルが尋ねるのへ、ラウラが頷く。
「ええ。『ザントマンの砂』の影響ね。ある程度時間がたてば効力が切れるはずよ。……皆みたいな強い子たちだったら、ある程度はココロで対抗できたりするんだけれど……」
 そうではない、一般人である幻想種たちには、効き目が切れるのを待つしかないという事だろう。
「という事は、そのザントマンだかサンドマンだかが、今回の裏にいるって事だろ?」
 ルカが尋ねる。
「何者なんだ、そいつ?」
「詳しい事は分らないの。でも、ラサの子みたい……って言うのは調べがついたわ」
「ラサの人間なのですか……よりによって」
 オフェリアは口元に手をやった。深緑とラサは、友好的な間柄であるが、ラサの人間が手を下していたとするならば、この関係もこじれてしまうかもしれない。
「となれバ、やはりザントマンについて調べる必要がございますネ」
 アルムの言葉に、皆は頷いた。ザントマンの目的は不明だが、いずれにせよ、両国の関係がこじれる前に、下手人を捕まえた方がいいだろう。
「そう言えば、富豪の人もつれてきちゃったけど、どうしようか」
 天十里が言うのへ、ラウラは笑った。
「大丈夫よ、私がしっかり、お仕置きしておいてあげるから」
 妖艶に笑うラウラであったが、先ほどの陽動での活躍を思い出してみれば、どれだけ過激なお仕置きがされるかどうか、想像に難くはない。
「なるほど。しっかりとお願いするよ」
 メートヒェンは肩をすくめて、笑った。
「……容赦ないのね、皆」
 ミラーカは苦笑するのであった。
「ねぇ、お母さん……。私、お母さんの活躍とか、皆の活躍とかを見て、やる気が出てきたのよ」
 アルメリアがゆっくりと、そう告げた。前髪からわずかにのぞくその瞳には、真剣な色がのせられている。
「もっといろいろ、教わりたいわ!  お母さんみたいになれるように……!」
「アルメリアちゃん……!」
 ラウラは胸に手を当て、感極まった様子で呟いた。それからぎゅう、とアルメリアをその胸に抱きとめる。
「たくましくなったわねぇ……かわいい子には旅をさせよっていうけど……そういうことなのね……」
 しみじみと呟くラウラ。アルメリアはアルメリアで、気恥ずかしさと息苦しさで、その頬を真っ赤に染めていた。
「分かった。折を見て、帰ってらっしゃい。その時は、お友達とも一緒にね?」
 ラウラはそう言ってアルメリアを解放すると、深々と、仲間たちへと頭を下げた。
「今回の件も、何かの縁……良かったら、今後ともアルちゃんの事、よろしくお願いね?」
「も、もう! やめてよ! 恥ずかしい、そう言うの!」
 母の態度に、わたわたと慌てるアルメリア。そんな様子を見て、仲間たちは大声で笑うのであった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ご参加ありがとうございました。
 皆様のご活躍の結果、捕らわれた幻想種たちは無事に故郷へと戻り。
 富豪は…………ものすごいお仕置きをされたそうです。

PAGETOPPAGEBOTTOM