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シナリオ詳細

<果ての迷宮>ピクシーダンスダンスホール
<果ての迷宮>ピクシーダンスダンスホール

完了

参加者 : 10 人

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オープニング

●踊りと音楽の妖精
「やっほーハロハロ☆ 楽しくってスリリングなダンスホールへようこそ。
 お客さん初めて? ういういー」
 木の切り株に腰掛けて、手をぐーぱーさせる少女がいた。
 より具体的に述べておこう。
 人の手のひらに乗れるほどの小ささで、白い水仙の花に似たドレスを纏い、頭についた花のつぼみが短く束ねたポニーテールのようなシルエットを作っている。
 一部の獣や虫のように目は全面が黒く、ぱちくりと可愛らしく瞬きした。
 そんな生き物が……。
「ほわー、『果ての迷宮』にこんなのがいたとは驚きだわさ」
 迷宮探索隊の隊長、ペリカ・ロジィーアンは興味深そうにつんつんやった。

「うおーやめろー花んとこつつくなうおー」
 両手をぐるんぐるんやって抵抗する妖精。名前は無く、単に『妖精』と名乗った。
 花一輪や雲のかけらに名前がないのと同じだと述べる彼女が座っていたのは綺麗に切り取られた木の切り株。
 縮尺のせいでちょっとしたダンスホールにも見えるソレを中心に、場は広い円柱状の空間になっていた。
 触って確かめてみると、壁は木でできているらしく、継ぎ目が無いことからこれが一本の巨大な樹木の内側であることが分かるだろう。
「ここまで来たってことは、もっと先の階層に行きたいんだよね?
 そーゆーことならこのワタシを楽しませないといけませんなあ」
 によによと笑い……ながら、妖精は未だにつつくのをやめないペリカに両腕でぐいぐい抵抗していた。

●果ての迷宮
 さて、一度『ここまでのおさらい』をしておこう。
 われらのローレット・イレギュラーズと案内役のペリカは幻想王都メフ・メフィートの中心にある『果ての迷宮』の攻略を続けていた。
 迷宮攻略は幻想王家における使命であり、必然的にその役目をこなした者こそが国内で大きな発言力をもつ。
 といっても、ここでいう役目というのは迷宮攻略に出資することであり、それが誰の名義による攻略であるのかが重要だった。
 そこで活きてくるのが世界の中立ローレット。
 迷宮攻略という実績が欲しい国王フォンデルマン、フィッツバルディ、アーベントロート、バルツァーレクという四つの勢力がそれぞれローレットに出資を行ない、実際に迷宮攻略を行なうイレギュラーズ個人ごとがそのうち一つを選択する。
 つまりは、国の政治力を賭けた投票権を、今回選ばれた10人のイレギュラーズに託されたということなのだ。

●ピクシーダンス・ダンスホール
 話を一通り聞いて先の様子を確かめたペリカは、壁に図解したシートを貼り付けて説明を始めた。
「まず大事なこと。あたしらが目指すのは『下』だわさ」
 筒状のフロア。ペリカはその地面……もといそのずっと下を指さした。
 図には現在地を横から見た断面図(?)が描かれており、H状に書かれた両側面が壁、横棒が現在皆の立っている床という案配である。ついでに『あたしら』という矢印と共に棒人間も書かれていた。
「気づいてる人もいるかもしれないけどねい、この空間では物質透過能力や透視能力といった能力がキャンセルされてるんだわさ。
 下へくだる方法はただひとつ。さっき言ったように、そこにいる『妖精』を楽しませること」
 びしっと指さすペリカ。一様に振り返るイレギュラーズたち。
 切り株の上でひとりマンキーダンス踊っていた妖精が「あ、ども」といって止まった。
「『妖精』は踊りと音楽が大好きで、それが続いている限りこの床はゆっくりと下降していくんだわさ。
 周りで音楽を演奏したり、ダンスをして誘ったり、歌をうたって調子づかせたりしてやるのがベスト。ってことだねい」
 要するに、妖精と一緒に歌って踊って楽しく過ごせば次の階層に行けるということだ。
「けど、それだけじゃあだめ。ジャマが入るんだねい」

 フロアが下がっていくたびに壁から木で出来た魔物が飛び出しては踊りをやめさせようと襲いかかってくるそうだ。
 もし戦闘にかかりきりになったりすれば妖精が退屈してしまい、床が上へと戻っていってしまう。
 適度に集団戦闘をこなしつつ、そして適度に演奏をし続け、そしてできるだけ全員がすこしずつでもいいから妖精と一緒に楽しむ時間を作り続けることで次の階層へたどり着くことができるのだ。
「戦闘ならあたしもばっちり手伝うから、他のことは……がんばろう! いえー!」
「いえー!」

GMコメント

 前人未踏の摩訶不思議な巨大ダンジョン『果ての迷宮』。
 今回の階層を攻略するメンバーは、あなたです。
 ※『名代について』は重要な項目なので記入忘れにご注意ください。

 やるべきことは実際シンプル。
 妖精が楽しく踊っていられる雰囲気を作り続けること。
 そしてそれを邪魔しようと襲いかかる魔物を退治し続けることです。
 むずかしいのは全員のペース配分と『踊りと戦い』のバランス配分です。
 今回あつまったメンバーの特技をみつつ配分を決めていきましょう。

●踊りと戦い、そして妖精について
 妖精が楽しく踊っている間はフロアが進み続け、踊りがやんだりつまらなくなってしまうと戻ってしまいます。
 皆さんは(根本的には)妖精が楽しい空間を維持し続け、そして飽きが来ないようにちょこちょこ趣向を変えていく必要が出てくるでしょう。

 尚、妖精には三つの力があります
・床を進める力
・魔物に襲われない力
・すぐ近くで一緒に踊っているとHPとAPが回復する力

 この時点でお気づきかなと思いますが、結構しんどい長期戦を戦い抜くためにも、皆さんがそれなりに一緒に踊っておく必要があります。
 踊り方や曲調はどんなものでもOKですし、楽器もメンバーもその人数も自由に決めてOKです。
 折角なので皆さんの個性をぽんぽん出して楽しんでみましょう。
 人を楽しませるにはまず自分から、なんて言葉もありますしね。

●魔物とフィールド
 木で出来た魔物が途中でぽこぽこ襲ってきます。
 厳密な話をするとフロアの床が近くにこないと魔物は飛び出してこないので、すっごい上から雨のように降ってくることはないと思ってください。
 魔物の出現方法は……なんというか、壁からフワッと急に出て同時に行動を開始します。
 そのため出現位置やタイミングを予測することができず、必然的に出てきた魔物を片っ端から倒していくという受け身な動きになるでしょう。もっというと、こちらがそれ相応の工夫をしないと一箇所に団子状に固まってくれることもないと思われます。
 ダンスホールは直径100メートルの円形です。
 先述した通り妖精が魔物に直接襲われることはなく、流れ弾が妖精に当たったりすることもないと考えてください。

 魔物の戦闘方法は複数あると予測されています。
 近接攻撃専門タイプと射撃専門タイプに別れ、
 それぞれ【毒】【痺れ】【乱れ】【暗闇】【出血】【足止】【不吉】【必殺】のなかからランダムで一種類の追加効果をもっています。
 個体ごとの戦闘力は高くありませんが、自発的に一人を集中攻撃するような知能は確認されていませんが、何らかの流れで群がられると結構キツいことになるでしょう。

●最大の目的
 次の階層に進み、次なるセーブポイントを開拓することです。
 また、誰の名代として参加するかが重要になります。

※セーブについて
 幻想王家(現在はフォルデルマン)は『探索者の鍵』という果ての迷宮の攻略情報を『セーブ』し、現在階層までの転移を可能にするアイテムを持っています。これは初代の勇者王が『スターテクノクラート』と呼ばれる天才アーティファクトクリエイターに依頼して作成して貰った王家の秘宝であり、その技術は遺失級です。(但し前述の魔術師は今も存命なのですが)
 セーブという要素は果ての迷宮に挑戦出来る人間が王侯貴族が認めたきちんとした人間でなければならない一つの理由にもなっています。

※名代について
 フォルデルマン、レイガルテ、リーゼロッテ、ガブリエル、他果ての迷宮探索が可能な有力貴族等、そういったスポンサーの誰に助力するかをプレイング内一行目に【名前】という形式で記載して下さい。
 誰の名代として参加したイレギュラーズが多かったかを果ての迷宮特設ページでカウントし続け、迷宮攻略に対しての各勢力の貢献度という形で反映予定です。展開等が変わる可能性があります。

  • <果ての迷宮>ピクシーダンスダンスホール完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別EX
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年08月04日 21時35分
  • 参加人数 10/10人
  • 相談7日
  • 参加費150RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

ドラマ・ゲツク(p3p000172)
蒼剣の弟子
エマ(p3p000257)
こそどろ
デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)
大いなる者
八田 悠(p3p000687)
祖なる現身
フレイ・カミイ(p3p001369)
ムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619)
最強砲台
ニーニア・リーカー(p3p002058)
堕天使ハ舞イ降リタ
ミルヴィ=カーソン(p3p005047)
チアフルファイター
ハッピー・クラッカー(p3p006706)
爆音クイックシルバー
蟻巣虻 舞妃蓮(p3p006901)
お前のようなアリスがいるか

リプレイ

●ピクシーダンス
「よろしくフレンズよろしくあいぼー!」
「よろしくね!」
 『チアフルファイター』ミルヴィ=カーソン(p3p005047)と花の妖精がパチンとハイタッチをした。
「ダンスに演奏ときたら、アタシの出番だよねっ。早速踊ろうっ!」
「だんしーん!」
 二人は左側まんきーまんきー言いながらふりふり踊り始めた。
 二人で踊るだけでもちょっとは進むらしく、床がことこと音をたてて沈み始める。
「ペリカさんも一緒に踊ろっ! イレギュラーズダンスだよっ!」
「あたしも?」
 剣をぶんがぶんが素振りしていたペリカがハッとして振り返った。
「えっ?」
「えっ?」
 僅かな沈黙。それまで腕組みして立っていたフレイ・カミイ(p3p001369)がコキコキと首を鳴らしながら言った。
「だわさお前……もしかして踊れないのか?」
「えっ」
 高速で振り返るだわさ。じゃなくてペリカ。
「おどれるわさ! 地元じゃダンシングクイーンと呼ばれたわさ!」
「分かりやすくハッタリかましたなあおい」
 じっと表情を変えずに見つめるフレイから目をそらし、ペリカは両手の人差し指をつんつんあわせた。
「気分がのればそれなりに……それなりに?」
「プロでもなければ、誰だってそんなものだよ」
 『祖なる現身』八田 悠(p3p000687)が黒いケースのロックを親指でかちんと外すと、蓋を開いて見せた。
「僕は楽器演奏をやらせてもらおうかな。いい楽器を譲ってもらったから、ね」
 そういって取り出したのは、吹き口からラッパ状の先端にかけて白から青のグラデーションがかかった美しいトロンボーンである。
「トロンボーンはいいよ。ジャズもクラシックもできて音域も広い。おまけに立ち姿が映えるからね」
 マーチングバンドのように構えて見せる悠。が、ちょっと地面から浮いてるせいでマーチングバンドというより終末のラッパ吹きみたいになっていた。
「音楽や踊りって、どんな世界にもあるのかな。僕の世界にもあったよ」
 『月光人形に安らかな眠りを』ムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619)は大きな腹をさすさすと撫でてから、ぽこんと腹を叩いて見せた。
「世界によって踊り方も変わりそうだよね。まずは妖精さんにあわせて踊ってみようかな? 楽しむのが大事みたいだしね」
「そうそう大事大事~」
 ミルヴィとムスティスラーフ、そして妖精さんという三人でぬるぬるとしたスローなマンキーダンスをはじめてみる。
「こうしてみると……混沌って本当に不思議なところですね」
 『蒼剣の弟子』ドラマ・ゲツク(p3p000172)は付箋や書き込みでいっぱいになった『王宮図書館資料(複製)』を手に呟いた。
 種族を超えて一緒のダンスで楽しむ風景というのも、なかなかである。
「資料には妖精さんの記述もちょっぴりですが乗っていますね。ええと……『踊る妖精はドーナツのポポデンリングが好き』」
「あれ一個ずつ千切って食べるのいいよね」
「わかりますけど……」
 今知りたいのはそこじゃない。が、直接聞けばいいじゃんということにすぐ気がついた。
 切り株に腰掛け、ペンを手に問いかけてみる。
「妖精さんの好きな音楽はなんですか?」
「え、んー、なんだろ考えたこと無いな。逆に嫌いな音楽がないかも」
「えひひ……いろんな音楽を知ってるってわけでもないんですねぇ」
 反対側の切り株に腰掛けてみる『こそどろ』エマ(p3p000257)。
「というか、ずっとここに住んでるんですか?」
「住んでるっていうか、咲いてるのね。ココに」
 切り株の中心を指さす妖精。よーく目をこらしてみると、霊的な茎で切り株の中央と妖精の脊椎あたりがつながっているのが見えた。
「不思議ですねえ」
 果ての迷宮が『どういうもの』なのか。その解明は済んでいない。そんな中に存在しているこの縦に長い木の筒も、そこに咲いているという踊る妖精も、実際的には謎の生物だ。この迷宮を踏破しきった末に、それは分かるのかもしれないが……。
「『果ての迷宮』については分からんことだらけじゃが、今このときするべきことは単純明快。つまり……」
 『大いなる者』デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)は両腕を交差してぐっとうずくまると、跳躍と共に腕をY字に掲げた。最近お気に入りのポーズである。
「奏でて踊って戦うのじゃー!」
「ウエーーーーイ!」
「ウホッホウッホ!」
 全く同じポーズでジャンプする『爆音クイックシルバー』ハッピー・クラッカー(p3p006706)。
 全く同じポーズでジャンプするゴリラ。
 デイジーはマーチングバンドが装着するような太鼓を見せつけると、バチを持ってトコトコ叩き始めた。
「見よ、そのためにこのようにゴリラを召喚したのじゃ! ということで早速――」
「ん、まって?」
 ジャンプポーズまましゅごーってジェットでホバリングしていたハッピーが笑顔のまま振り返った。
「なんでゴリラいるの?」
「そりゃおぬし、妾のウィッチクラフト(ファミリアー)で召喚したに気まっとるじゃろ」
「みてみて、ここ」
 ハッピーが広げた本の一部を指でさし示した。
 『猫やカラス、カエルやヘビのような小動物を一体召喚・使役し、任意に五感を共有することが出来ます。 ――説明文より』
「「…………」」
 ゆーっくりと振り返る。
 ゴリラがデイジーと同じ太鼓をとことこ叩いていた。
「ウホ?」
 『なにか?』みたいな顔で振り返るゴリラ。
「もっというと、現地にいるやつを呼び出すタイプの召喚(直接走ってくるやつ)だからゴリラがこのへんに住んでることにならない?」
「えっしかしこいつ……」
 もっかいゆーっくりと振り返る。
 ゴリラがバナナを剥いてうまうま食べていた。
「ウホ?」
 『たべる?』みたいな顔で振り返るゴリラ。
「おぬしどっから沸いてきた!」
「えっ知らないで今まで一緒にいたの!?」
「まあいいではないかゴリラの一ゴリや二ゴリ」
 『お前のようなアリスがいるか』蟻巣虻 舞妃蓮(p3p006901)がグリーンヘアーをサッとかき上げた。
「みんな仲良く踊ればいいだろう(肉盾が増えるかもしれんしな)」
 至極真面目な顔をしながら髪色を銀に変える舞妃蓮。
「本音が顔っていうか色に出てる……」
 手元に『舞妃蓮髪色早見表』とかいうシートを持って見つめる『平原の穴掘り人』ニーニア・リーカー(p3p002058)。
「ていうか単位ってゴリなんだ?」
「私はいたいけなアリスではあるが、感情表現の類は得意とはいえないかも知れん」
「しかも話続けるんだ?」
 割と強引に話を進めた舞妃蓮。
「しかしせっかくの愉快な仕掛けだ。体力の続く限り付き合おうじゃないか」
 なあ妖精、といってゴリラの肩を叩く舞妃蓮。
「まってそっち妖精さんじゃない」
「そろそろどっかに仕舞わねえと収集つかなくなるぞ、存在が」
「もう山口さんあたりを特殊化して持っておけばよくない?」
「なにが『よくない?』なのかわからんが……」
「で、そろそろ始めるの?」
 ミルヴィがムスティスラーフとデイジーとゴリラと妖精さんとダンシングフラワーくんでそろってマンキーダンスをしていた。
「なんですかこの光景……悪夢?」
 目からハイライトをなくしてペンを置くドラマ。
 横から引きつり笑いのまま片手で小さくグーをつくってみせるエマ。
「諦めちゃだめですよ記録を! 書きましょうよ目で見たことを!」
「踊る妖精の木にゴリラが住んでるかもしれないって書くんですか?」
「それより、皆、いいのかい?」
 悠がトロンボーンを構えて片眉をあげた。
 全く一緒に小首を傾げて振り返る舞妃蓮、ハッピー、ペリカ。
 つま先でとんとんとリズムをとっていたフレイが足下を指さした。
「もう、地面進んでるぜ」
「「ほんとだ!」」
 何人かで一緒に踊ってたせいか、地面は既に下へと進み始めていた。
 壁にはぽこぽこ穴があいていて、床が丁度いいところにくるたびに魔物が飛び出してくる仕組みになっているらしい。実際、穴を通り過ぎてすぐにボール状の魔物が飛び出してきた。
 空中で身体をぱかぱかと展開し、六本足でサソリのようなしっぽにボウガンを接続させたような魔物へと変形する。
「えいっ」
 ニーニアは『エーベルヴァインの蜃気楼』を起動させると、壁や頭上の空間に星空や虹の幻影を投影しはじめた。
 サソリ型モンスターの放った矢を跳躍とスピンキックによって蹴飛ばすと、年季の入ったリュートを構える。
「ここがダンスホールなら、襲ってくる敵も舞台装置だと思っちゃえばいいよね。邪魔してくるのを利用して盛り上げちゃえ!」
 こいつ、土壇場で綺麗にまとめたな……! と、誰かが思った。

●ダンスホールは止まらない
 銀のフルートを口元に当て、ドラマはゆっくりと笛を吹き始めた。
 優しい音色から始まったドラマの演奏に、妖精がゆらゆらとした足踏みで答え始める。
 やがて曲調が跳ねるようなものへ変わり、妖精がスキップするように踊り始めた。
 人は恋をすると演奏が上達するという言い伝えがある。特に恋を恋と気づかない時がもっとも優れていると。
 悠は目を瞑り、暫く音色に気持ちを同調させていたが、やがてトロンボーンを担ぐように構えた。
「いいね。管楽器から始まる演奏会か。付き合うよ」
 ドラマの音色にかぶせて奏でたのはマーチングバンドが演奏するような行進曲であった。
 悠の髪の中を泳いでいたたい焼きめいた生物が、音楽につられたのかにゅっと顔だけ外に出る。
 そして流れる水の輪のごとく広がった悠の髪の上をするすると泳ぎ始めた。
 そんな音楽にアドリブでダンスをあわせていくミルヴィ。
 側面の壁から飛び出てきた木製の球体たちが次々に展開し、車輪のついた馬や牙の鋭い虎へとかわり演奏者を襲おうと迫る。
 ミルヴィは流れるような動きで飛来する木の矢を打ち払うと、飛びかかってくる虎へと剣を構えた。
「お客サン? 踊り子へのおさわりは厳禁デス♪」
 噛みつく虎を受け流すように掴むと、相手の力をそのまま利用して地面へと叩き付ける。
 さらなる動きで急回転をはじめ、虎のモンスターを削るように破壊していく。
 それが木靴による高速のタップになっていることに気づいたエマは、自らを狙う馬のボウガン射撃を宙返りによって回避した。
「身のこなしは得意分野ですよ、えひひ……」
 エマは斜めの宙返りを連続して馬型モンスターへ接近すると、相手の胴体を蹴りつけて勢いよく宙返りをかけた。
 下がる地面も相まって大きく飛んだエマが、空中から小さなナイフを投げはなつ。
 刺さったそばからナイフが爆発を起こし、モンスターは燃え上がって崩れていった。
 そんなエマへ、下半身が二輪で上半身が人型という変わったタイプのモンスターが右腕を剣にかえて襲いかかる。
「ステージの独り占めもよくないですねえ。お願いしますよっ」
 柔軟な動きで後方へ滑ったエマに代わり、それまでフルート演奏をしていたドラマが前へ出た。
 儀礼剣に力の刃を纏わせ、踊るように振り回す。
「あ、あまりたいしたことはできませんけど……っ」
 リズミカルな振りの後、繰り出した突きが強烈なエネルギーの波となってモンスターを粉砕していく。
「なるほど、いいね。じゃあ演奏はアタシに任せて」
 入れ替わるように切り株のそばへ飛び退いたミルヴィが、そこに立てかけていたアンティークギターを掴み上げた。
 踊りも演奏も得意分野のミルヴィである。戦いから演奏へのシフトに殆ど違和感はなく、スムーズに彼女のギター演奏が始まった。
 パチンと悠にウィンクを送るミルヴィ。
 対する悠も数歩前に出ると、モンスターめがけて低音を浴びせ、流れるように高音へと引き上げていく。ぶつかり、爆発した魔力がモンスターの木製ボディを引き裂いていく。
「次は弦楽器パートだね。入れて入れてっ!」
 フォトン・メールを配りながら周回飛行をしていたニーニアが翼を畳み、ミルヴィの隣へと着地。『エーベルヴァインの蜃気楼』の投影風景を青空と雲のものに切り替えると立てかけていたリュートを手に取った。
 ゆっくりとした演奏でギターに合流し、身体でリズムをとりながら徐々に早めていく。
「ハッピーさん、デイジーさん、一緒にやろ!」
「よいぞよいぞー」
「いえーあ!」
 戦闘を中断してぴょんと飛び込んできたデイジーが再び太鼓とスティックを装着しリズムを刻み、そばに設置していたシンバルスタンドを打ち鳴らした。
「曲調は何がいい?」
「陽気なの!」
 そうニーニアがリクエストすると――。
「よかろう、ならば――」
 デイジーとハッピーとゴリラは同時に両腕を交差してぐっと身体を丸め、同時にYの字ポーズでジャンプした。
「「サンバじゃ!!!!!!!」」
 高速で打ち鳴らすドラムにハッピーが腰を振り、コールを合わせていった。
「へいへいこっち! 私と一緒に踊ろうぜっ!!!ミ☆」
 ハッピーはラップのリズムで曲に乗っかると、モンスターたちを挑発しながら飛び回り始める。
 シンセサイザーから打ち鳴らしたような電子音が鳴り響き、曲調にユーロビートの味が加わり始めた。
「ノッてきたぞ! ここからは――」
 デイジーとゴリラとムスティスラーフが腕を交差して身体を丸め、同時にY字ポーズでジャンプしながらサンバダンサーの衣装にチェンジした。
「ヒートアップじゃ!!!!!!」
 二拍子のゆっくりリズムでドライミングするゴリラに会わせ、四拍子で腹を叩き始めるムスティスラーフ。
 これらはボディパーカションといっていわゆる原始の音楽である。
 ムスティスラーフの場合は体格が(パーカッション的に)良いため腹や胸、腕や足、頬や額などを手で叩くたびにぱちぱちと良い音が鳴り、UBサンバに非常に相性の良い打楽器と化す。
「ほう……」
 ここまでくると舞妃蓮もだいぶノリにのってきたようで、髪色をピンクに染めてリズミカルに歩き始めた。
 パチンと指を鳴らすと当時にすぐそばにいたモンスターが花火に変わってはじけ飛び、指をさした相手までもが花火に変わる。
 虹色鉱石でできた剣をマントの裏から引き抜くと……。
「アップテンポだ。派手に照らしてくれ」
「はいはーい!」
 ニーニアが『エーベルヴァインの蜃気楼』をかちりと操作して虹のミラーボールへと変えた。
 キラキラとした風景の中を走り回る舞妃蓮。次第にモンスターの数は増え、大量のモンスターが演奏者たちめがけて迫るようになっていた。
 舞妃蓮はそんなモンスターたちの間を駆け抜けながら剣でなぞるように一撃一撃すり込んで、そのたびにモンスターたちを色鮮やかな花火に変えていく。
「暖まってきたな」
「どんどん行くだわさ」
「だわさ、俺が行くからお前は踊ってろ」
「えっ」
 剣を両手でしっかり掴んで突撃しようとしてたペリカを押しのけてフレイがモンスターの集団へと走った。
「オラァ!」
 跳躍からのドロップキックで人型モンスターをなぎ倒し、飛びかかってくる虎型モンスターを起き上がりざまに殴りつける。
「こんなもんか? どんどん来いよ」
 踊るようにボウガンの射撃を回避し、後方に迫った敵へ回し蹴りを叩き込む。
 次々にモンスターが群がっていくが、そこへ剣を振りかざしたペリカが飛び込んでいった。
 モンスターの繰り出した剣の腕を受け止め、蹴りつけることで突き飛ばす。
「おいだわさ何しに来た」
「そろそろダンスのお時間だねぃ」
「そうかよ――」
 フレイとペリカは同時にぺたんと低く伏せる――と、そこへランドセルロケットを装着したハッピーが突っ込んでいった。
「とぶぜ!!!!!!!!!!」
 ロケットパンチ(自分が飛ぶやつ)でモンスターを吹き飛ばすと、燃料が空になったロケットをパージして新たなロケットを装着。ターンするとまた別のモンスターをヘッドバットで吹き飛ばした。
「かーらーのー!!!!!」
 ロケットを二台装着。円形のフロアをぐるぐる回るようにして猛烈な勢いで飛び始める。
 やがて炎を纏い始めるハッピーに任せ、フレイは切り株のそばに戻ってダンスに加わることにした。
「お客さんセンスいーねー、ういういー」
 のってこいと言わんばかりにブレイクダンスを始める妖精。
 その周りを泳ぎ回るたい焼き。腰を振るダンシングフラワー。ドライミングするゴリラ。
「なんだわさここは、動物園か」
 魔法を使いすぎてバテたらしい舞妃蓮がそのそばでちょっと変わった踊りをしていた。
「不思議だ、妖精を見ていると勝手に身体が動くかのように踊れる。疲れるどころか身体が癒やされるようだ」
 曲調が急にゆっくりとしたものに変わっていく。
 クラシック音楽だと気づいた頃には、妖精が、ひとりでワルツの振り付けをしていた。
 なるほどと頷いてダンスパートナーを探す舞妃蓮。髪を青く澄んだような色にかえ、すぐそばにいたフレイと手を組んだ。
 切り株を中心に始める美しいワルツダンスの輪を、シャンデリアとオレンジ色の光でできた幻影が照らしていく。
「ハハハ、こりゃいいぞ。踊ってるだけで気分が良くなるなんてなあ」
「ひ、ひひ……けどいいんですかねえこんな……えひ」
 ミルヴィにリードされて踊るエマが照れくさそうに笑っている。
 戦場であるというのに、まるで世界が切り離されたように気持ちがゆったりと落ち着いていった。
「よいのじゃよいのじゃ、あとは妾たちに任せておけぃ」
 デイジーがビッと親指を立て、そばで踊っていたムスティスラーフの肩を叩いた。
「ゆくぞ。ダンスパーティーを守るのじゃ」
「おもしろそう、僕もいく!」
 デイジーはダンスフロアの外周へと立つと、両手を広げて青い魔力を流し始めた。
 くるくると踊り、月の幻影を浮かべ始める。
 一方でムスティスラーフは大きく息を吸い、音楽に合わせて高らかに歌い始めた。
 そのまた一方でニーニアが沢山のプレゼントボックスを抱え、空にまき散らす。
 月の光が、歌声が、プレゼントの雨が爆発や光となってモンスターたちを打ち払っていく。
「まだまだ足りないよね、もっと盛り上げちゃおうっ!」
 ニーニアが地面を叩くと、巨大な丸形郵便ポストが地面から生えてきてぱかんと蓋が開いた。
 封筒を背負った妖精がボックスの中から次々と飛び出し、空へずらりと並ぶ。
「さぁ、君達も一緒に踊ろう!」
 ニーニアがぱっと腕を開くと、等間隔に並んだ妖精たちが一糸乱れぬ動きで同時に腕を広げ、ニーニアと一緒に踊り始めた。
 音楽に合わせてリズミカルに腰を振るムスティスラーフ。
 タコ足で巧みに高速タップを踏みながら壺を掲げて腰を振るデイジー。
「そろそろ仕上げじゃ、歌えぃ!」

●can't stop the beat
 高く鳴り響く悠のトロンボーン。
 早い小川のように流れていくドラマのフルート。
 ミルヴィのギターとニーニアのリュートの音色が互いを高め合うように弾き、デイジーの太鼓が小刻みに打ち鳴らされる。
 ソウルミュージックのテンポでハッピーのボイスが流れたなら、ボディパーカッションで踊りはじめるムスティスラーフ。
 フレイのフィンガースナップ、手拍子をあわせていくエマと舞妃蓮。
 天空を指さした妖精とペリカが、高らかに声を上げた。
「それではお主らご一緒に!」
 デイジーは皆と一緒に腕を交差して身体を丸めると、Y字のポーズで飛び上がった。
「フィーナーレじゃ!!!!!」
 ずどんと床が鳴り、全方位の壁に穴がのぞく。
 その全てから一斉にモンスターが飛び出して、中央の彼らへと襲いかかった。
 が、それがなんだというのか。
 舞い踊る郵便妖精と共に飛び回り、ニーニアが次々に便せんを投擲していく。
 突き刺さった端から爆発を起こし崩れていくモンスターたち。
 その一方では相手をおもむろに掴んだフレイが別のモンスターめがけて叩き付け、激しい破壊音を打ち鳴らしていく。
 ペリカもそこへ加わり、剣を野球のバットのように振り込んでモンスターを壁際まで吹き飛ばした。
「ガハハ! 音に合わせて戦うってのも悪くねえな!」
「おもしろくなってきた!」
「だねぃ!」
 映像投影装置から金色のきらめきが散りフロアの壁を覆っていく。
 ダンシングフラワーが腰を振りたい焼きがぴちぴちはね、ゴリラが二人(?)を手のひらにのせて腰をくるくるとひねり始める。
「のりのりだぜーい!」
 ハッピーが使い切ったロケットを全てパージし、ハッピーキック(下半身のあのうにょってしたやつをコルクオープナーみたくして相手にがりがり打ち込んでいくハッピーの必殺技である)を叩き込む。
「ヘイ!」
 両手でビッと親指を立ててみせれば、周囲から一斉に飛びかかるモンスターたち。
 フルートを吹いていたドラマが片目を閉じ、予めハッピーの背中に仕込んでいた魔術式を遠隔発動。
 突如始まった不思議の国の夢幻劇にモンスターたちがめちゃくちゃに引き裂かれていき、タフにも生き残った個体めがけて舞妃蓮が宝石剣をダブルで突き立てた。
「凶暴な夢の国か、おもしろい」
 銀色に変わった髪を指で払い、ロールしながら飛びかかってくるアルマジロ型モンスターを剣で受け止めた。
 勢いに押されそうになる……が、強くトロンボーンを吹いた悠の魔術によってモンスターと悠の世界が強制的に接続。モンスターはたった二つの概念へと強制的に切り分けられこの場から消失した。
 片眉をあげ、デイジーへとシグナルを送る。
 デイジーは高速ドラムロールの後にゴリラの構えたシンバルを派手に打ち鳴らすと、『スケフィントンの娘』をモンスターへと無理矢理に叩き込んでいった。
 黒いキューブに包まれ、めちゃくちゃに破壊されていくモンスター。
 あとに続けとばかりに並んだ無数のモンスターによる一斉射撃を、ムスティスラーフは自らの腹で受け止めた。
 息を吸い込み、グッと腹に力を込めることで矢を吹き飛ばし、ムスティスラーフの角から炎が激しくあふれ出した。
「楽しんでもらうためにもまず僕が楽しまないとね! 楽しむ事を忘れた者に誰かを楽しませる事はできないんだ。さあさあ、一緒に踊ろう!」
「よく言った、バナナ食べてよいぞ!」
「なんで?」
 そんな二人の頭上を飛び越えて、エマが時限爆発する魔術液を塗布した木矢を手に握ると、払うようなフォームで一斉に投擲した。
「戦うついでに盛り上げるくらいの気持ちでやってやろうじゃあありませんか!」
 壁から出てきてエマを撃墜しようとしていたモンスターたちに突き刺さり、次々と爆発を引き起こす。
 着地と同時に短刀を引き抜き、滑るような高速機動でモンスターの懐へと潜り込む。
 ナイフによる斬撃がモンスターを形作っていた軸部分をピンポイントで切り裂き、蹴ってへし折るようにして破壊していく。
「盛り上がってきたね! 最後のしめいっちゃおう♪」
 ミルヴィは手に持っいた麗宝剣イシュラークを宙へ放り投げ、飛来する無数の矢をくるくると踊るように回避。
 相手のそばまで接近すると、落ちてきた剣を掴んで敵を積み木の塔を壊すかのように打ち払った。
 壊れながら吹き飛び、壁にぶつかってくるくると回るモンスター。
 やがて回転力を失ったコマのように倒れ、動かなくなった。

 ジャンジャンと音楽を締めくくるリュートを鳴らすニーニア。
 フレイが振り返るとあたりは壊れたモンスターだらけ。
 そのうち一体たちりとも、動いているモンスターはいなかった。
 であると同時に、大きな両開きの扉が現われ、降下を続けていた床もぴたりと止まっている。
 切り株の上で深くお辞儀をした妖精が、頭をあげて汗をぬぐった。
「ぴゃー、踊った踊った。ひさびさー。ありがとねありがとねー」
「こちらこそ。楽しかったよ!」
 ミルヴィは妖精の出した手を指先でつかみ、小さく上下に握手した。
「どうやら、この階層は『ここまで』みたいだね」
 悠が扉の前に立つと、ゆっくりと扉が向こう側へと開いていく。
 ペリカはその様子を詳細に観察して、これ以上罠やイヤな仕掛けがないことを確認した。
「だねぃ。もう大丈夫だわさ」
「おう、おつかれ。お前もよく踊ったぜ、だわさ」
「だわさって呼ぶなわさ」
「それにしても……踊り疲れたというか、飛びつかれたというか……」
 エマがぺたんとモンスターの残骸にこしかけ、懐から取り出した布で顔や首の汗をぬぐいはじめる。
 すると、エマの座っていたモンスターがズズッと動いた。
 ひゃええと変な声を上げて飛び退くエマ。
 振り返ると、木で出来た小柄なカニみたいな何かがモンスターを掴んで引きずっていた。
「まだ生き残りがっ!」
「いや、違うらしい」
 短刀を抜こうとするエマの手を、舞妃蓮がそっと手を翳すことで止めた。
 警戒をやめたのか髪色はすっかり金髪にもどっている。
「よく見ろ。敵じゃない」
 言われたとおり観察してみると、カニめいた何かはモンスターを掴んでずりずり引きずり、壁際の穴へと運び込んでいく。
「ほあー……お掃除ロボットだ」
 めずらしーという風にまじまじと観察するニーニア。
 下半身のあれが元に戻らなくなったハッピーがバネ仕掛けのオモチャみたいに小さく上下にびよんびよんしながら腕組みした。
「あのさ、わたしさ、気づいたこといっていい?」
「なんじゃ」
 もう色々終わったつもりでツボをきゅっきゅ磨いていたデイジーが振り返る……と、ハッピーが壁際を指さした。
 ゴリラは落ちたモンスターの残骸を一通り拾い集め籠に入れると、それを壁際の穴へぽいぽい放り込んで自分もまた穴へと入っていった。
「あのゴリラ、帰るみたいだよ」
「現地ゴリラだったのか……あれ……!」
「なんですが現地ゴリラって……」
 資料に『踊る妖精の木にはゴリラが住んでる』ってほんとに書かなきゃいけなくなったドラマである。
「なにはともあれ、無事に終わってよかったね」
 ね、といってお腹を叩くムスティスラーフ。
 ペリカは置いていた荷物を再び背負うと、扉の向こうへと歩き始めた。
「さあみんな、次のフロアが待ってるわさ。さらなる冒険へ出発!」

 突き進むイレギュラーズたち。
 妖精は切り株のうえで大きく手を振った。
「まったねー!」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――階層、攻略完了!
 次の階層には一体どんな冒険が待っているのでしょうか。
 お楽しみに!

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