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シナリオ詳細

ジェラート・バイ・シー~海ヤンキー格付けチェック~

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ジェラート屋の災難
 ユーリエ・シュトラール (p3p001160)の営む『Re:Artifact』の隣には、彼女の知人であるフロレンツィア・ツェーレ(以後フロル)がジェラート屋を営んでいる。
 ほぼ同時期に店主……もっと大げさに言えば一国一城の主となった両者が意気投合するのは無理からぬ事であり、フロルはユーリエの、イレギュラーズとしての手腕について十全の信頼をおいていた。
 そして、知る人ぞ知る、という話だが……フロルの作るジェラートは(立地的に客足が少ないのを補う程度には)好評を博していたのである。
 時期は夏。これからが稼ぎ時。ユーリエの店にフロルが駆け込んできたのは、そんなある日のことであった。
「ユーリエ……大変なことになっちゃった……」
 かなり慌てた様子の彼女の口から語られたのは、確かに『大変なこと』であった。

●YANKEE
 2日後、フロルの故郷の村からほど近い海。白い砂浜が広がり、海原はどこまでも青く続く。太陽は燦々と照りつけ、訪れたイレギュラーズを歓迎するようである。
 その地は、少なくとも一同を歓迎していたように感じられた。……その『地』は。
「海に来ようって言うから何事かと思えば、『こういう』場所でしたか……」
「フロルの頼みだから断れなったんだよ」
 恋人であるエリザベート・ヴラド・ウングレアーヌ (p3p000711)が概ね理解したとばかりに頷くと、ユーリエは少し縮こまって頭を下げる。
 因みに、エリザベートはシンプルなワンピースタイプの水着、ユーリエのものはボーダー柄のビキニだ。ここだけの話、ボーダーは視覚に膨張感を与えるとかなんとかで、ただでさえふっくらとしたおむねがさらにおむねである。
「ヘイヘイヘーイ、お嬢ちゃん達キャワウィーねぇ~~~~↑↑↑↑(裏声)」
「俺達と一緒に遊ばない? 楽しもうよォ」
 と、そんな感じで声をかけてくる連中。周囲は男女問わず、どこか浮ついた空気とイラッと来る陽気さを併せ持つ者達……所謂『ヤンキー』というやつのようだ。それが、浜辺いっぱい。頭が痛くなりそうだ。
「てめぇら、客か? そうじゃないならあっち行きな。ウチの従業員に手ぇ出すんじゃねぇよ」
 絡まれていた2人からパリピ気味のヤンキーを引き剥がしたのは、アラン・アークライト (p3p000365)。落ち着いた色の海パンにエプロン、スカーフを頭に巻いた姿は明らかに『飲食店の従業員』だ。尤も、切れ長の目は見る者によっては威圧的にも見えるだろうが……彼にその気はあんまりない。
「な、なんだよオッサン! 従業員? ンな話……」
 ヤンキーはしかし、2人がよほど魅力的に見えたらしく、食い下がろうとする。しかし、彼らの前にさらに2人の男が立ちはだかる。
「本当だよ。忙しいからあんまり構わないでやってくれないかな」
 どこか穏やかに(しかし外見の威圧感で有無を言わさぬ雰囲気を纏い)告げるクロバ=ザ=ホロウメア (p3p000145)と。
「悪ぃが、人手が足りてねぇんだ。邪魔すると……」
 値踏みするように上から下まで相手を舐め回すように眺め、鋭くガンをつけにいくプラック・クラケーン (p3p006804)である。
 クロバは黒を基調とした実用性重視の海パン、プラックのものは髪色に準じ、炎の模様が入った水着だ。どうでもいい話だが、クロバはカナヅチ(自称)である[要検証]。
 そんな2人に問い詰められ、逃げぬ者がいるだろうか? 少なくとも、そこまでの胆力があるなら魔種かなにかを疑うくらいだ。
「ユーリちゃん、エリザベートちゃんも大丈夫!?」
 逃げていく男達を横目に、赤いフリル(とひらがなの名前)が特徴的な水着をひらめかせ、シエラ バレスティ (p3p000604)がユーリエ達に駆け寄ってくる。大丈夫、と返したユーリエは、すぐ後ろの建物を振り返る。
 ……フロレンツィアのジェラート屋、その夏季出張所である。所謂『海の家』とは異なり、ジェラートのみの店であるが。
 見てのとおり、故郷の近くの浜辺は『そういう連中』の格好の居場所だったのである。
「皆、大丈夫かい? ……あの人達に怪我させてないよね?」
「いや、心配するのそっちかよ!?」
 開店準備を手伝っていたリゲル=アークライト (p3p000442)の(尤もだが調子の狂う)言葉に、アランは思わず抗議の声を上げる。こんなにおとなしそうな格好なのにと。
 なお、リゲルは涼し気な浴衣姿だ。彼の銀髪と目の色にしっかりマッチしているのがまあにくい(褒め言葉)。
「だが、彼らが顧客になることもある。心配してすぎることはないだろう」
 リゲルの言葉を補うように言葉を添えたのは、ポテト チップ (p3p000294)だ。紺色に花柄の浴衣に、常と異なり、髪をアップに纏めている。常以上に落ち着いて見えることだろう。
「皆さん、すみません……怖い人ばかりなので、ジェラートを食べに来てくれる『良い人』に楽しんでもらいたくて……」
 イレギュラーズ一同の様子に、フロルは申し訳なさそうに頭を下げる。
 ヤンキー、といっても皆が皆、誰彼構わず敵意を振りまくわけではない。単純に夏にヤラれた連中だっている。
 それらの中で、『悪い』ヤンキーだけをよりわけて撃退してほしい……らしい。
 これはなかなか厄介な依頼だ。店に入る前に判別するのか、注文する際か、はたまた受け取って食べてから難癖を付けてくるのか……。
 ともかく、イレギュラーズ一同の任務はジェラート屋に『悪いヤンキー』を入れないことだ。多少は手荒くしていいと、依頼人は告げている。
 ちゃんと仕事を終わらせればジェラートも食べられる。そう聞いた(ポテトを除く)女性陣の目がことさらに輝きを増したのは間違いなかろう。

GMコメント

 難易度はノーマルです! (ヤンキーを選り分ける難易度が)ノーマルです! 大事なことなんで2回いいました!
 あとOPの口調等おかしかったら! 許してください!

 という訳でご指名頂きありがとうございます。まさかすぎる指定に目が点になりましたが取り敢えず全力で頑張ります。
 TOP画像が寂し目なのはホント許してください! (シナリオの範疇で)なんでもしますから!

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●成功条件
 フロレンツィアのジェラート店に『悪いヤンキー』を入店させない。もし入店しても丁重にお帰り頂く。

●良いヤンキー、悪いヤンキー
 少なくとも『多少パリピでちょっとナンパしちゃったりしても』良いヤンキー(優良顧客)の可能性はあります。少しだけ目をつぶりましょう。
 ゴミを捨てる、迷惑を顧みない、値段や商品に文句を言う、その他諸々悪い要素があれば悪いヤンキーです。

●選別方法
 かなり自由にやってもらっても構いません。ただ、フロレンツィアのジェラートにケチがつく行為(試しに混ぜ者をして怒らなければセーフとか)のみNGとします。
 服装を値踏みしてもいいですし会計の際の態度を見てもいいですし、店内を汚くするならその場で注意して様子を見たほうがいいです。
 ジェラート初見で食べづらいとかの可能性もありますので。その辺りは是々非々でなんとかしてください。
 その他、自由な裁量で選り分けて下さい。方法の是非は問いません。命は奪っちゃダメだよ。

 あとOPの通り、皆さんは浴衣or水着です。(ステータスには通常装備データを反映しますが)武器でチャンチャンバラバラ、魔法でドンパチは『出来るだけ』控えて下さい。
 まあどうしても必要な時は止めませんし成否に関係しません。

 そんなカンジで、海とジェラートを楽しみつつヤンキー鑑定士になろう!

  • ジェラート・バイ・シー~海ヤンキー格付けチェック~完了
  • GM名ふみの
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2019年08月04日 21時45分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費---RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

クロバ・フユツキ(p3p000145)
深緑の守護者
ポテト=アークライト(p3p000294)
優心の恩寵
アラン・アークライト(p3p000365)
太陽の勇者
リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣
シエラ・バレスティ(p3p000604)
バレスティ流剣士
エリザベート・ヴラド・ウングレアーヌ(p3p000711)
永劫の愛
ユーリエ・シュトラール(p3p001160)
優愛の吸血種
プラック・クラケーン(p3p006804)
昔日の青年

リプレイ

●すいません、その人不在なんですよ
 空は見事に晴れ渡り、日差しが燦々と照りつける。砂浜を埋める人々は皆、どこか……率直に言ってウェイの者が群がっている。どうにもこうにも人いきれ。海水浴日和とは因果なものである。
「見事な晴天! これが太陽の勇者の力……」
 シエラは興奮と喜びに目を輝かせるが、当の『太陽の勇者』ことアランは残念ながら不在である。
 何故かって?
「まさか、前日になって階段から2階分転がり落ちて大事を取ってフロルの故郷で養生する事になるなんて……兄さんの分までフロルを応援しないといけないな!」
 リゲルが凄く説明口調で述べた通り。運命に拠らない不幸な重傷は、果たして誰が招いたものなのか。細かいことを気にしてはいけない。彼も深く突っ込んでいないので。
「そうだな、友人の友達が困っているんだ。私達に出来る限りをして助けよう」
 ポテトはリゲルの言葉に応じるように力強く頷きを返す。既に浴衣はたすき掛けをしてエプロンを羽織り、雰囲気は食事処の美人店主の趣だ。店主は依頼人なのだが。
「なに? ヤンキーをどうにかする話?」
「本当にシブいヤンキーってのは時と場合を考える。考えるまでも無くあったりめーの話よ」
 クロバは改めて依頼について確認し、話を聞いたプラックはその身構えの足りぬヤンキー達の話に対し、鼻で笑う。彼にとっては、そういう行為は「シャバい」のだとか。
「フロルがここで開こうって言ったんだし頑張るしかないですよね! 皆さん、力を貸していただけますか!」
 ユーリエの呼びかけに、一同は各々の態度でそれに応じる。元よりユーリエと交流浅からぬ者達だ。彼女の言葉に応じぬわけもなく。……わけもないのだが。
「……暑いのです」
 最もユーリエと関わりの深いはずのエリザベートはこの通り、ちょっと戦力としてのカウントが難しい状況。そもそも吸血鬼が流れ水と照りつける太陽の下にいること自体おかしいのだが、場が『混沌』であり『アンチクロスアーカード』の影響下にある彼女にとっては些末なことなのだろう。
 ……死なないだけで辛いのは変わりなさそうだが。
「な、なんだか皆さんにはお手数をおかけしますが……宜しくおねがいします!」
 フロルもユーリエに続いて深々と頭を下げた。彼女にとってもここまでの事態(ヤンキー)は予想外だったらしく、申し訳無さも数割増しだ。だが、それと同じくらいには『ティアーズ・ジェラート』をもり立てていこうという意気込みも感じる。彼女の熱意がなくば、イレギュラーズも協力する気になどならなかっただろう。
「それじゃあ、手分けして作業に取り掛かろう。シエラとポテトは飾り付け、クロバは調理、プラックと俺が見回りや接客、ユーリエとエリザベートが……呼び込み、かな? フロルはジェラートに集中してくれればいいよ。俺達に任せて」
 リゲルは素早くたすき掛けで浴衣を留めると、ここぞとばかりにリーダーシップを発揮し、仲間達の仕事を再確認する。密に相談しているだけあり、確認と動き出しの早さはやはり他とまるで違う。
「アランさんから料理教わってんだ、万が一があれば俺も料理を手伝うぜ! ……ところでヤンキーだからって俺も追い出されない?」
 プラックも根っこは善人だけあり、仲間から得た知識や技術を何かに活かせないか、と今や遅しと動き出そうとしていた。不安点があるとすれば、まさに彼の言葉通りなのだが。
「そんな、ユーリエのお友達を追い出すなんてしませんよ! お手伝い、期待してます!」
 フロルはすかさずフォローに回り、胸をなで下ろしたプラックの様子に周囲もくすりと笑みを浮かべた。
 ……ともあれ、行動開始だ。

●ティアーズ・ジェラート営業日誌
「激カワポスター作りは任せろー!」
「シエラちゃんのセンスに任せる!」
 我が意を得たり、といったふうに気合いを入れたシエラに、ユーリエはノリノリで相槌を打つ。親友同士、何が得意かは十分わかっているゆえの反応だろう。
「俺もプラカード作りを手伝うよ。張り紙とかも作らないと」
 リゲルはそんな2人の作業にすかさず手を貸し、プラカード用の切り絵やのぼりなどを着々と用意していく。生来の器用さ(テクニック)は伊達ではないらしく、2人が舌を巻くレベルで作業をこなしていった。
「ここに飾り付けをして目を引いて……自由に飲める水も用意した方がいいな」
「ポテトさん、俺も掃除、手伝いますよ!」
 ポテトはリゲルの手際の良さを目で追いつつ、店内装飾や開店前の清掃に着手していた。できるだけ視認性を高くしつつ、それでいて煩すぎない程度。店内で寛ぐのに情報量が多すぎては元も子もないのだ。
 彼女の忙しそうな様子を気遣い、プラックも清掃を進めていた。彼は彼で、その素早い動きで開店前に残っていた汚れを掃き清めていく丁寧さは、流石という他はない。
「フロルはジェラートの仕込みは大丈夫なのか?」
「はいっ! 何人来ても大丈夫です! クロバさんはお料理を?」
 クロバはキッチンに入り、フロルの横で仕込み作業に入っていた。フロルは事前に作ってきたであろうジェラートを並べ、さらには追加で作れるよう材料を刻んでいく。ジェラートを『作る』ことに関しては、彼女の腕前はなかなかのものだ。細かいところでドジを踏むこともある……というのはユーリエの言だが、幸いにして今日は給仕や接客を分担するため、そこまで大事にはならないだろう。
 全員の頑張りで開店時間になんとか間に合わせた一行は、団結してなだれ込むヤンキー達から悪い方を排除する決心をキメる。
 なんとかなるだろう。彼らは全員、それなり精鋭として鳴らしてきたのだから。

「いらっしゃいませ、ティアーズ・ジェラートはいかがですか? 料理もお出しできますよ」
「あぁぁぁ~……ヤバみ深いイケメンがいるぅ……」
 開店にあわせてリゲルが表でメニュー用を渡しつつ集客を始めると、まず最初に引っかかったのは女ヤンキー御一行様だった。彼の人当たりのいい声とゲロ甘(褒め言葉)なマスクは女性に対して特攻でも持っていたのか、話しかけただけで腰砕けにしてしまう。それと、女性は甘いものが大好きなのでジェラートに飛びつかぬはずがないのだ。
「オゥ、ニイちゃん。そのジェラートは美味いんだろうなァ? あんま美味しくなかったらコレもんよ?」
「勿論。この店のジェラートに目を付けるとは素晴らしい審美眼をお持ちのようですね。男の中の男ですね!」
 女性陣が次々と店内に入っていくのを見て何か思うところがあったか、明らかにあっち方面のヤンキー男性がリゲルに話しかけるが、彼は驚きもせず、むしろ彼らを立ててみせた。思わぬ賛辞に言葉を失った男達は、「それなら……」とばかりに店内へご案内。どこかトゲが抜けたように見えるのは、リゲルのおだて方ゆえか。
「おいしいジェラートはいかがでしょうかー!」
 ユーリエはリゲルの隣で声を張り上げ、近付いてくるヤンキー達に身振り手振りでアピールする。吸血鬼特有の銀髪姿になった彼女は、一見して近づきがたい雰囲気を見せつつも、その所作はどこか親しみやすく、引き込まれるものがある。
「そんなに美味しいのォ? ちょっと盛ってナイ?
「いえいえ……もう涙が出るほど、おいしくって……」
 大丈夫なのか、と横槍を入れてきた女性には、目元に手をやって泣く仕草を交えながら感動を伝えに行く。ユーリエにとっての真実を分かりやすく伝える。人心を的確に突きにいく手法は、それだけで集客効果を最大化するのだ。
 そんなワケで、人を引き込むのは上々の成果を上げていた。相当数の客を引き込むと、ユーリエは店内へ。言い出しっぺだ、とばかりに今日の彼女はよく働く。
「いらっしゃいませ、ジェラートはお先にお会計の上お渡ししますね。店内でお召し上がりですか?」
 店内に入れば、ポテトが立て板に水の接客でヤンキー達を捌いていた。女性ヤンキー陣も「イケメンじゃないのか」みたいな顔をしたが、流れるような接客に文句をつける余裕もない。
「本日はご来店ありがとうございまーす! お楽しみ頂けてますかー?」
「お、オウ……悪くねぇじゃねえか……」
 男性陣にジェラートを運ぶシエラはにこやかに笑顔を振りまくと、会話を弾ませ気分良く食事をさせる。『涙が出る美味しさ』を意味するティアーズ・ジェラートの出来は本物らしく、会話のさなかに涙を見せるヤンキーすら現れる。脅し半分にリゲルに声をかけた連中が一番キいているのが笑いどころか。
「クロバさん、焼きそば3つ追加です! あとはえーっと、えーっと……!」
「フロル、落ち着いて数えていいからな。ちゃんと皆に確認とって……はい、これさっきの注文」
 厨房では、フロルがジェラートを盛り付けながらテンパり気味に食事のオーダーを読み上げる。クロバは慣れたもので、かなりの混雑にも関わらず的確にオーダーを捌いていく。接客の面々が上手くやっているからだろう、昼に差し掛かっても大きなトラブルなどは起きていない。……大きなものは。
「なぁ、姉ちゃんよぉ……ちょっとフケねぇか?」
「ちょっ、嫌よ! アタシにはツレがいんの!」
 海とナンパは切り離せない。こんな人いきれの場所ではなおさらに。当然、客同士のナンパなんて珍しいことでもないのだが……。
「おう、ゴラ、他のお客さんの迷惑になるなら帰ってもらうぜ?」
 そこに割って入るのがプラックだ。肩に置いた手、その握り込む強さは手加減をしているといってもかなりのもの。嫌悪感をありありと浮かべた男に、プラックはにっこりと笑みを浮かべる。
「ナンだよ、気持ち悪ィ……客同士のやりとりに店が口をだすのかァ?」
「俺達はイレギュラーズで依頼で手伝いに来てんだ、暴れたりしたらどうなっかは分かるよな?」
 プラックの言葉には有無を言わせぬ凄みが感じられた。ナンパ男はぐ、と声をつまらせると、手元のジェラートを一気にかき込み(そしてアイスクリーム頭痛に頭を抱え)店を出ていった。
 感謝と羨望を滲ませた女性の眼差しを背に受けながら、プラックは食器を持って洗い場に戻っていく。
「……ヤンキーで一杯だと暑さに拍車がかかりますね」
 エリザベートはというと、店内の隅っこで静かにジェラートを頬張っていた。最初こそ接客に回っていたのだが、彼女に出来ることといえば魔眼でチラチラと悪意ある客を弾くくらいであり、これはむしろサクラに回ったほうがいいのでは……という結論に至ったのである。それはそれで集客に貢献しているようだが。
「……シエラは乙女ですよね……」
 何を思ったのか、エリザベートはシエラの首筋にじっと視線を向けた。水着で露わになったそこは、全く汚れのない白い肌。エリザベートが注目するのも無理はない。
「……首筋見られてる!?」
 シエラもその視線はしっかり感じたらしく咄嗟に首を隠そうとするが、無駄な気がしないでもない。
「ねェ、流石にこの値段は高くなァい?」
 客がある程度入ってくれば、まず出てくるのは金額への不満だ。例にもれずというか、女性ヤンキーの難癖めいた声にポテトは笑顔で応じる。
「とんでもない。ジェラートの材料はフロルが厳選した材料を使っていますし、私達も手伝って丁寧に作っていますので。手間と素材を考えれば安いくらいかと」
「ア? ウチのスケの目利きに文句つけちゃってんのお前? ア?」
 だが、声の小さい正論は声の大きい暴論に押し込まれる、というのは世の常か。ポテトがそんなものに押し込まれるハラではないが、ここはそれこそ、適任がいる。
「お客様、ご不満があるようなら俺と腕相撲で勝負をしましょう。俺が負けたら、望むがままに奢りますよ」
 ごねる男の肩を掴んだリゲルは、ポテトに小さくウインクを向けると、有無を言わさぬ調子で店内の一角へと男を引っ張っていく。すわ乱闘かと注目を集めるヤンキーたちの只中、素直に正対した男とリゲルは手を握り合い、腕相撲の姿勢をとる。
「では、俺が合図しよう。……ファイッ!」
 クロバの掛け声が入った直後、ダァンッ! とテーブルが割れんばかりの衝撃が走る。見れば分かるだろう。リゲルが一瞬でカタを付けたのだ。体格差的にも雰囲気的にも不利と思われた彼の勝利に、ヤンキーの殆どは湧き上がり、しかし男の一派は少々納得しきれてない模様。
 今にも周囲に当たり散らそうとする連中の前に、リゲルとともに立ちはだかったのはシエラ。ギフトにより、既に髪は白く変じている。
「……悔い改めて下さい」
「頭を冷やすことですね!」
 振り下ろされた拳を、その手首を握って素早く後ろに回ったリゲルは店から突き出す勢いで全力で押し出し、いきおい、波打ち際まで放り投げる。
 シエラはシエラで、相手の蹴りを躱してその肩に手を当て宙返りし、背後から頭部へ水面蹴りを放つ。一瞬で意識を刈り取られた悪いヤンキーは、膝から崩れ落ち、次いでリゲルに放り出された。
 この一連の騒動は、しかしティアーズ・ジェラートの出張所が治安を重視するいい店であるという評判を補強したらしく……結果、さらなる人入りを呼んだことは事実のようだ。

●報酬は涙とともに
「ンまあーーいっ!」
 そして、閉店後。ほぼ材料も在庫もカラになるまで営業を続けた店舗内で、一同はフロルのジェラートにありついていた。プラックなど真っ先に口にし、この反応である。
「そういえばプラックさん、私オクトさんと盗賊倒した事ある!」
「えっ? 糞親父と? シエラさんが一緒に? 大丈夫っすか? セクハラされなかったっすか?」
 スプーンをくわえながら口にしたシエラの言葉に、プラックは動揺を強くする。彼にとっては敬愛と敵意が相半ばする父の話。シエラから語られる武勇伝。興味がないといえば大いに嘘になるが……複雑なのは違いない。
「クロバ殿、褒美のお寿司を所望するでござる!」
「シエラ、このタイミングでお寿司なのか……!」
 続けざまに唐突な要求を向けたシエラに、ポテトは驚きに目を丸くする。クロバは悪い気がしないようで(ジェラートを食べない言い訳もできただろう)、調理場へと引っ込む。
 歓談を続けるポテトのジェラート皿、そしてリゲルのそれを見れば、お互いのジェラートが一口分載っているのが分かるだろう。表立ってあからさまに、はこの2人には必要ないのだ。
「皆さん、今日は本当にありがとうございました! やっぱりヤンキーは怖かった……です」
「大丈夫、こっちもジェラートご馳走様! また腕を上げたんじゃない?」
 フロルが頭を下げると、ユーリエは笑顔で応じ、続けざまに褒めにいく。どうやら心からの感想らしく、刻まれた笑みに偽りの色はない。
「ああ、聞いていた以上に美味しかったぞ! 片付けもきちんとして帰ろうな!」
 リゲルも満足げに頷くと、ポテトに目配せしつつ、一同へと声をかける。彼らが全力で片付けを始めれば、混雑を極めた店内ですら綺麗になるのは間違いない。
 ひと夏の思い出としても、かなり印象深いものになったようだった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

アラン・アークライト(p3p000365)[重傷]
太陽の勇者

あとがき

 お疲れ様でした。
 プレイングとリプレイと結果をご覧頂き、次に活かして頂ければ幸甚です。
 リクエストシナリオということで個別性の高いものなので、仮プレなどを確認しあって仕上げてきたなという印象もあり、概ねにおいて好感が持てました。

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