PandoraPartyProject

シナリオ詳細

どっひゃ~!白インゲンだぁ~!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●身体にイイのはいいけれど
 練達郊外。試験農場内の作業小屋にて。

「白インゲン豆を~♪でっかくでっかく品種改良して~♪」
 妙な節回しで歌う、農民姿の男が一人。こんなナリだが、れっきとした練達の学徒である。
 この男は考えた。
 白インゲン豆は、美容や健康、ダイエットに良い成分を多く含んでいる。その白インゲン豆を巨大にして売れば、利回りの良い商売になるんじゃないかと。サプリメントにすれば持ち運びやすいし、他国にも売りやすいだろう。幻想のマダムとか良い金づるになりそうだ。

 ところがぎっちょん、そうは問屋が卸さない。
 収穫せぬ豆ならぬ、捕らぬ狸の皮算用とばかりに。収穫した白インゲン豆を鞘から取り出すと……

 巨大な白インゲンが、こっちを睨んでいた。

「へ?」

 もう一度言う。巨大な白インゲンが、こっちを睨んでいた。
 更には勢いよく鞘から飛び出した白インゲンには、顔があるだけでなく!手や足まで生えていた!!
 いつ、自力で鞘から出てきたのか、男の周囲には手足の生えた白インゲンで一杯だ!

「えっ、あ、ほら。パパだよ~?みんないい子だから睨まず……え、あ、痛い痛い痛い痛い!うわ~!親不孝豆~!!ひぃ~っ!」
 脅えた男の懇願も巨大白インゲンは聞く耳持たず、男を寄ってたかってボコボコにして、作業小屋の外へ出て行ってしまった……

●デカけりゃイイ以前の問題
「……というわけで巨大白インゲン豆退治なのです」

 と、イレギュラーズに呼びかけた『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)
 何かはよく分からないが、多分練達からの依頼なんだろうなというのは薄々察せた。

 ユリーカの説明は続く。
「サプリの原料として白インゲン豆を品種改良してでっかくして、利回りを良くしようとした練達の農学者さんがいるのです。幻想とか海洋のマダムをターゲットに一儲けしたかったみたいですね。」
 白インゲン豆には、美容や健康に良い成分が豊富に含まれている。炒った粉はきな粉にも近い風味で非常に食べやすい。
 でもそんな無茶な改良した白インゲン、サプリになんてしたら絶対健康被害が出るだろ、と同席のイレギュラーズは内心ツッコむ。

「普通の巨大白インゲンを作ったはずが、突然変異で手足が生えて動き出したそうなのですよ。作った農学者さんをボコボコにして、畑を占拠しているみたいなのです」
 農学者が近寄ればスクラムを組んで行く手を塞ぎ、鳥やノウサギ、モグラといった農場周辺の生き物にもいちゃもんをつけているらしい。

「一応、火を通してない白インゲン豆って有毒植物ですし、大事件にはなるわけないのですが対処をお願いしたいのですよ」
 そう、加熱した白インゲン豆は先述のように健康に良い効果をもたらすのだが、生のままの白インゲン豆は食中毒にも似た症状を引き起こす。
 人間サイズ、あるいはより小さい者ならまずないが、巨躯の者はうっかり飲み込まないように注意が必要だろう。

「それじゃあ皆さん、気を付けて行ってきて下さいなのです!」

GMコメント

 お久しぶりです。すっかり暖かく……いえ、暑くなりましたね!
 瑠璃星です。
 此度は健康食品(?)へ対処して頂きます。よろしくお願いいたします。

◆場所
 練達郊外、試験農場
 周囲に人気はありません。試験作物が他にも生えているので、あまり踏まないほうがいいでしょう。
 足元はフカフカで栄養たっぷりの良い土です。

◆成功条件
 巨大白インゲン豆をどうにかする。
 殲滅でも構いませんし、スキルやギフトを駆使して豆を説得してもOKです。
 豆全員が、これ以上暴れないことが成功条件となります。

◆敵
 巨大白インゲン豆×30
 豆部分が30cmくらい。手足は15cmくらい。
 豆に手足がくっついたような姿で、顔があります。
 主な攻撃方法は頭突き、突進、スクラムを組んでの突撃など。
 彼らも品種改良で変化しているとはいえ、あくまで加熱していない白インゲン豆。
 口に入ると腹痛を起こします(BS【体勢不利】になります。とっても痛いです)
 うっかり豆が口に飛び込みかねない、身体の大きなイレギュラーズさんは注意が必要です。

◆情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • どっひゃ~!白インゲンだぁ~!完了
  • GM名瑠璃星らぴす
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年06月03日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

杠・修也(p3p000378)
壁を超えよ
亘理 義弘(p3p000398)
侠骨の拳
嶺渡・蘇芳(p3p000520)
お料理しましょ
イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
黒撃
王 虎(p3p007117)
雷武
ソニア・ウェスタ(p3p008193)
いつかの歌声
エルシア・クレンオータ(p3p008209)
自然を想う心
Nil・Astrum・Fine(p3p008413)
無星

リプレイ


「だから何で練達で新カイハツされたものには人格が宿ってボウソウするのさ!?」
「この世界……何でもありだな!?」
 『業壊掌』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)と、杠・修也(p3p000378)の呟きが、のどかな畑に響いた。やけにハッキリと。
 練達は本来、学究の徒が集まる真面目な国のはずなのだが……

 白い身体をレインボーが彩どっている大きな真ん丸、もとい『無星』Nil・Astrum・Fine(p3p008413)は、自分を抱えてくれる少女へと語りかける。
『人の食べ物が意識を持つって中々珍しいよね』
 見ようによって美味しそうに見えなくもないNilへ、こくこくと頷きを返す少女。
『うん、初めての任務だし、怪我しない様に気を付けようね』
 ニッコリとした表情を浮かべる真ん丸へ、少女も表情を変えないながらも穏やかな視線を向ける。

「でかくて手足も顔もある連中を、インゲン豆と言っていいのか分からねえけどな」
 『義に篤く』亘理 義弘(p3p000398)の言い分ももっともで。もうそれはインゲン豆に似た動物なのではないかと思えなくもない。

 そんなこんなで見えてきたのは試験農場。このあたりだけは練達にしては自然が豊かで、ぽつりぽつりと立っている建物がやけに現代日本に近い以外は他国とさほど変わりがない。
 その程よく整備された農道を、猛ダッシュで向かってくる影が一つ。
「ああっ、ローレットの人だ!こっち!こっちです!」
 よくいる現代的農家さんスタイルの男が、泣きそうな顔でイレギュラーズに駆け寄ってくる。彼が諸悪のこんg……じゃなかった今回の依頼人の農学者だろう。
 顔には白インゲンに殴られたのか、はたまた逃げる時に転倒したのか青アザがくっきりと浮かんでいる。

「おまえさんがローレットに話を」
「うわぁぁぁぁぁんだずげでぐださい"っ、ぼぐヴぁだだお"がねも"ヴげの"だめ"に"」
 話を持ち込んだ奴か、と義弘が言い終わる前にそれを遮るように聞き取りづらい泣き言を喚く農学者。

「学者さん、落ち着いてください。先ずは対話を試みましょう……彼らにも、きっと理由がある筈なんです」
 農学者の勢いにやや気圧されながらも、『自然を想う心』エルシア・クレンオータ(p3p008209)がマイペースに彼を落ち着かせる。
 品種改良(改造?)されているとはいえ、今暴れている白インゲン豆たちも植物である。自然会話を使えば何らかの意思疎通は取れるはずなのだ。

 『羽休め』嶺渡・蘇芳(p3p000520)もおっとりとした様子で、泣いて鼻をすする農学者の肩をポンポンと優しく叩く。
「暴れてる白インゲンちゃんも出来ればちゃんとお話聞いて、その原因を解消してあげたいわー」

「罪は憎んで豆は憎まず!アイヤ!この場合は人の欲から出た錆アルネ」
「やだお姉さん怖い!」
 ちょっと厳しい正論を言う『雷武』王 虎(p3p007117)にヘタレな農学者はヒッと一瞬震えた。すぐに誤解を解くようにまあまあという手振りで彼女は言葉を続ける。
「でもあの変異種には交渉という余地があるアル。条件次第では食品加工行きから白インゲンは静かに暮らしたいにランクアップ可能アル!」
 今は少しばかり暴れすぎではあるが……

「でもあの子達、親である僕の言うことも聞かないのに……」
 不安げな表情でベソをかき続ける農学者。そしてその白インゲンの現物であるが……

 来た。

 農学者を追いかけてきたのか、それとも大自然の勘で、見知らぬ人間を察知したのか。
 ドドドドドドドドドと土埃を巻き上げて、白インゲン豆の大群が走ってやってきた。

 何を言っているのか分からないであろう。だが、確かに白インゲン豆の大群である。
 豆柴とか豆狸とか、豆が付く動物ではなく、本当の豆である。

 デカい白インゲンには、デフォルメされたような顔。そして手足。
 マジで、ユリーカの説明通りのインゲン豆がいた。マジで。
「こ、この世界のインゲンって動くんですね?」
 思わずずり下がった眼鏡をかけ直す『新たな可能性』ソニア・ウェスタ(p3p008193)――違う、混沌でも一般インゲン豆は普通のインゲン豆だ。多分知らないうちにソニアも普通に食べているはず。
 横にいる農学者がなんやかんやしたインゲン豆だけである、動くのは。


 未知との邂逅を果たしたローレットニンゲン(?)と、動く巨大白インゲン。
 植物とはいえ顔が発生した以上はある程度個体を識別できるのだろうか。農学者ではない見慣れぬ人間たちへは飛びかかりもせず、じりじりと間合いを計っている。
 何匹かは、武器のつもりなのだろうか木の枝を手にしていた。
「ああっ!道具!武器を使うことを覚えてるぅ!」
 驚愕の表情と共に、身を縮こませるように義弘の後ろへサッと隠れる農学者。
「手があるなら物を持つのは当たり前だろ」
「サヤから出てきた時は持ってなかったんですよぉぉ……いつの間に覚えたの……」
 義弘のツッコミへ、おどおどとした口調で返す。

「彼らは、改良された挙句に食べられるのが嫌なのでしょうか?それとも……単にやんちゃをしたいだけでしょうか?」
 白インゲン豆達の内心を勝手に想像するだけでは、信頼関係は築けまい。エルシアと蘇芳がゆっくりと、白インゲン豆達の前へ歩みを進める。

 ソニアは眼鏡越しに、初めて見る練達産の白インゲンをそーっと観察する。不躾にならないように気を付けながら。
(……というかそもそも、本当にこのインゲンさん食べて大丈夫なんでしょうか……?)
 エルシアをはじめとした、植物との交渉に秀でたイレギュラーズはきっと話し合いを成功させる。そう思いたいが。
 もし交渉が決裂したとき。
 彼らの命を頂いてもいいのかと心配になったソニアが、万が一に備え絶対眼力で彼らを観察するが……第六感が【食べられないよ!】と囁いた。
 現状で食べられないのは、生の白インゲン豆の毒性から明らかだが、それ以外にも何かがひっかかる。やはり変異しているのか……?
(やっぱり大丈夫じゃありませんでした!)

「大丈夫です」
 エルシアはスカートの裾をふわりとさせながら、白インゲンへ目線を合わせるようにしゃがみ込んだ。
 義弘はそれとなく、何かあれば彼女をすぐに庇える位置に行こうとしたが……エルシアがそれをやんわりと断る。
 無論、完全に後衛タイプの彼女の場合、単なる巨大白インゲンの袋叩きであっても運が悪ければ深手を負う可能性すらある。
 しかし、誰かの後ろの隠れずに己の言葉を伝えることで、その場しのぎで交渉しようとしているのでは無いと理解してもらえる。そう信じていた。

 意思疎通の手段のない修也はこんなこともあろうかと、おもむろにペンとノートを懐から取り出す。白インゲンと話の出来る仲間の言うことを書き留める、いわば議事の記録役だ。

『白インゲンさん、私の言葉が聞こえますか?あなた達の望みは、何ですか?』
『ボクタチノコトバガワカルノカ?』
『白インゲンちゃん、私の言葉もわかるかしらー?』
『どうして暴れる様になったのかな?無理矢理品種改良されるのが嫌だったとか?どうして欲しいとかあったりするかな?』
『オマエハ……ナカマ……?』
『ウチもお話できるアルヨ!』

 これまで人間といえば言葉も分からない農学者だけだった白インゲン達だが、突如として意思の疎通の出来る人間(約一名除く)の出現に面食らっているようだ。
 特に自分たち以外に動く豆を見たことがない彼らから見ると、白い球体であるNilは完全に【親戚】にしか見えない。それが、人間の姿の者に仲良く抱えられているから軽いカルチャーショックすらおぼえる。

(流石に……インゲン以外に進化した奴はいないか)
 正面から相対する意を示したエルシアの意思を尊重し、後ろに陣取りながらも超聴覚は常に研ぎ澄ませている義弘。彼の杞憂は的中せずに済みそうだ。
 農学者が、第二、第三の品種改良を行わなければ、の話ではあるが……

『白インゲンちゃん達のお望みはー?私達に出来る事があるなら叶えてあげたいわー』
『ボクタチ、タベラレルノヤダ』
『モウ、フツウノマメデ、イラレナイ』
 豆達の主張はイレギュラーズの予想に割と近かった。
 食べられるのは嫌だ、ただの作物扱いは嫌だ、というのがおおよその主張。
 炒って粉々にしてサプリメントに、というのは豆達からすると最悪の未来に他ならない。

『……食べられて価値を知られる方が、より広められて子孫が繁栄するかもしれませんよ?』
 おずおずと、エルシアが白インゲン豆達へ話しかける。
 巨大白インゲン達の命は保証されないものの、種あるいは一族としては保護の下の繁栄を約束される。
 しかし、白インゲンの答えは変わらないもので。
『ヤダ!!ボクタチハタベラレタクナイ!』

『避けられないのであれば戦うだけだよ?』
 Nilを抱える少女が膝をかがめ、白インゲンとNilの目線を限りなく近くする。
 パチリと一瞬、空中に咲くのは彼のマジックフラワー。真ん丸い見た目から、Nilを自分たちの同族だと思い込んでいた白インゲン。
 しかし、彼ら弱点にも等しい炎を出したNilを見てどよめく。
『干し肉と一緒に柔らかく煮込んで、他にもお野菜入れて煮物とか良いわねー。煮崩してお砂糖しっかり加えて濾して、白餡も捨てがたいわー♪』
 蘇芳がにっこりと言う。白インゲン達も複雑な単語は分からないが【にこむ】という単語の恐ろしさは本能的に理解できた。
『アワワワワ、コノニンゲン、ボクタチニヒヲトオソウトシテイル……』

「白インゲン、やっぱり炎が嫌いか……」
「やっぱり植物なんですね……大きいし、食べられそうにないですけど」
 修也はこれまでの会話や通訳と共に、白インゲンの挙動や様子についても細かく書き留めていく。
 その横で、ソニアもしげしげと豆達を見つめている。

(無闇に他所へ逃がせば生態系に影響を与えかねませんし……となると)
 火を通されて美味しく頂かれてしまうかも、という恐ろしさでパニックを起こしかけている豆達。
 早めに話を付けないと危ないかもしれない。

『皆さん、ご提案があります』
 エルシアが、眦を決して切り出す。植物の声が聞こえる身、森に親しむハーモニアとしては植物との交戦は極力避けたいところ。
『皆さんの力強さを活用して、畑のお手伝いや番人をしてもらえませんか?もちろん、タダではなくて、お水のようなご飯も貰いながらです』
『どうかしら?いい案だと思わないー?』
 さっきはちょっと怖いこと言った蘇芳も加勢する。
 
 義弘は、自分の後ろに隠れている農学者の方へ振り向く。
「おまえさん、この白インゲン達を助手や警備員として雇うってのはどうだ?」
「助手……?」
 任侠の世界同様、交渉で手打ちにできればそれに越したことはない。暴力に訴えるのは最後の手段だ。
 何より、今戦闘に突入すれば位置的にもエルシアやNil、興味深く観察しているソニアといった後衛寄りの仲間が危ない。
「一案として、白インゲンが希望するならばコヨウして畑の見張りとして置いてもらうようにしたいんだよね」
 イグナートも義弘の話に乗っかる。
「生み出したものについてはソウオウのセキニンを取ってくれ。キミが親なんだし」
 巨大白インゲンにも手足があり、既に木の枝を武器に見立てて持つ知能を備えている。
 水や液肥といった食料、雨風や鳥等から身を守る家屋があれば立派な労働力になるはずなのだ。
『傭兵隊、と呼ぶのもカッコいいアル』
 王虎が通訳しつつ豆にも噛み砕いて説明する。

「い、良いけど……」
 ちょっと戸惑う農学者。彼の頭の中を過るのはお金のこと。
 ソニアの絶対眼力による鑑定結果を知らない農学者は、白インゲンはまだ売り物になると思い込んでいるのだ。
 だったら、出荷してお金儲けになった方がいいのだが……
「やってくれるよな?」
「キミならできるよね!」
 義弘とイグナートからかかる圧。

 修也とソニアの眼鏡コンビも畳みかける。
「製造物責任法って練達にもあるよな?PL法、無いとは言わせないぜ」
「この子達、変異してるので火を通しても無毒化はできないと思います……出荷して何かあったら、全部あなたの責任になると思いますが……」

「あっ、はい……」
 ギクッとする農学者。何を隠そう、彼も旅人。
 恐らくは修也と似たような文明レベルの、いわゆる現代的な世界の出身なので、PL法という単語には心当たりがありまくりだった。

 男性陣の圧やソニアの説得を横目に、エルシアの背後から顕現する契約精霊――知性持つ植物の精神体が、白インゲン一体ずつへ彼女の提案を説いて回る。
 特に熱心に話しかけていたのは世話焼き小母さん、桑のモレアーと気前が良い楡のプレテアー。
 同じ植物の精神を持つ彼女らの説明でもって、現時点でそこまで知能が高いわけでもない白インゲン達も、これから自分達がやるべき事や提案を理解できた。
『ナントカ、ワカッタ!ナントナク!』


「一件落着、いいことをすると気持ちよいアル!」
 暴れる巨大白インゲンとの和解を成し遂げたお礼として、試験農場産の【普通の作物】新鮮なトマトやジャガイモにナス、普通サイズの白インゲンを貰ってホックホクのイレギュラーズ。
「やっぱり白餡?甘納豆も捨てがたいわー。トマトはサラダで行けるわねー」
 一番上機嫌なのは、流石職業柄料理に強い蘇芳。多分、今晩「泊まり木」に行けばフレッシュサラダが出てくるだろう。
「イモ、イモか……あとナス」
 双子の片割れに替わり家事をこなす修也は、お土産の野菜を見つめてレシピの算段をつける。
 今あるものと合わせて何が作れるだろうか。
 Nilと、彼を抱える少女にもお土産の野菜。にぱっとした表情のNilだけでなく、少女も無表情ながら少し和やかな雰囲気で。

 金銭、本来なら巨大白インゲンで手に入れる筈だった儲けを気にする農学者には、ソニアの持つアルパレストとのコネクションが効いた。
 ラサ方面では高くなりがちな種類の野菜について、仕入れ交渉で力を貸すという約束が取り交わされたのだ。規格や色艶に強みを持つ練達産の新鮮野菜が、ラサの市場で流通する日もそう遠くないだろう。

「ちゃんとインゲンに水や肥料はやるんだぞ」
 義弘が睨みを効かしつつ、改めて農学者に言う。筋と仁義を違えれば、その先に待つのは抗争だ。
 そうなってしまったら、今回自分達が来た意味が無くなってしまう。

 エルシアに通訳してもらい、イグナートがあることを白インゲン達に吹き込む。
「本当に最後の最後、いざとなればゼシュテル方式で行こう!つまり殴り合いだ!」
 今後万が一、農学者が約束を違えた場合や報酬をケチった場合。そういった時にだけ、腕力に訴えるのだ。
 無論、それを回避できれば越したことは無い。エルシアの契約精霊達がよく言い聞かせたように仕事をきっちりこなして、そして報酬を受け取る。
 これが一番だ。

 この案件の解決から少し経って、ラサのマーケットには新鮮な練達産野菜が出回り始めた。
 その野菜を包む耐水紙の帯には可愛くデフォルメされた、手足の生えた白インゲンがプリントされていたとか。

成否

成功

MVP

エルシア・クレンオータ(p3p008209)
自然を想う心

状態異常

なし

あとがき

皆さん、白インゲンとの交渉お疲れさまでした。
農学者は無茶な品種改良をやめて、オーガニック農法を研究することにしました。
オーガニックって良い響きですよね。
白インゲンが労働力になったおかげでだいぶ捗っているようで、今後はラサ方面に野菜を卸すことになります。
MVPは交渉の要になったエルシアさんへ。

またご縁がありましたらよろしくお願いいたします。

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