PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<グラオ・クローネ2018>甘溶けメタモルフォーゼ

完了

参加者 : 30 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 入り組んだ石畳の道の突き当りに、ひょっこりと現れるのは緑色のとんがり屋根の小さな建物であった。
 深緑の扉を開ければ、甘いチョコレイトの香りが来店者たちを歓迎し、低い天井の小さな店内が見えるであろう。
 丁寧にラッピングされた菓子達の並ぶ、天井に届きそうな程の壁際の棚、低い棚やショーケースの中の菓子達も全てキジ猫オーナーの自慢の品々。悩んでいれば、キジ猫オーナーが試食片手にあれやこれやと提案してくれる筈。
 小さな店内に設置された螺旋階段を登り二階へ行くと、店員であるにぎやかな白猫黒猫コンビが迎え入れてくれることか。チョコレイトのためにと少しばかりひんやりした、大きな窓のある明るい部屋で作る事が出来るのは、チョコレイト細工なるものであった。

●菓子店『猫の額』にて
「そういえば、王都にあるお菓子屋さんでチョコレイト細工も出来るのでした!」
 一つ、また一つと説明を終えた『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)はホットチョコレイトのカップに手を伸ばしながら思い出したようにそう口を開いた。
「チョコレイト細工?」
「はい! 粘土みたいなチョコレイトを使ってお花とか動物とかが作れるやつなのです!」
 熱を加えれば溶けて液体状になるチョコレイトであるが、加工次第では粘土状にその姿を変えるらしい。粘土状になったチョコレイトはとても溶けにくく子供でも取り扱いしやすい物となる。
「チョコレイトの王冠やバラとかクマとか作れますですし、作りたいものをお店の方に伝えれば作り方を教えてくれるみたいなのです」
 グラオ・クローネに因んだ王冠も綺麗な花や動物も大抵の物はその作り方を教えてもらえるであろうし、勿論店の者に頼らずに作っても問題はない。作ったチョコレイト細工は持ち帰った後でも美味しく食べる事が出来るという。
「そのお店はチョコレイト菓子が評判のお店なのです。商品を見て回るのも楽しいと思いますですよ!」
 少し大人な味のオランジェットに一口大のクルミ入りブラウニー。甘酸っぱい果実のソースだったり、噛めばナッツの味が広がる粒チョコレイトは、味も形も様々に。時折実験作の様に驚くような味が潜んでいるかもしれないのです、とユリーカはにこやかに話していく。
「気になった人は行ってみると良いと思うのです!」
 イレギュラー達に渡されたチラシには菓子店『猫の額』という店名と、簡単な地図が描かれていた。

GMコメント

 こんにちは。未森シキです。
とある菓子店から、チョコレイト細工のお誘いをひとつ。

●菓子店『猫の額』
 王都の片隅にある2階建ての小さな菓子店。
キジ猫オーナーに黒猫・白猫の店員、他店員も全員猫の獣種のみという。

●すごしかた
 チョコレイト細工に挑戦するのも良し、『猫の額』で買い物をするもよし。
リプレイでの描写は、チョコレイト細工or買い物のどちらか片方になります。
【1】or【2】どちらの行動をするのか明記をお願いします。

【1】チョコレイト細工
 店舗の2階でとても溶けにくく粘土状になったチョコレイトであれこれ作る事が出来ます。
 粘土状のチョコレイトは店の方で既に準備済みです。
 王冠から花に動物と何でもどうぞ。
 困った時は店員を呼んでもらえれば、なんとかなるでしょう。
 色は茶・白の2色が自由に使えます。

【2】買い物
 イートインは出来ませんが、店舗1階で様々なチョコレイト菓子の購入が可能です。
 自分用から誰かに贈る様まで対応できるかと。
 キジ猫オーナーが持ってくる他、店内には試食も置いてあるので、少しずつ試してみても良いかと。

●その他
・同行者がいる場合、【プレイング冒頭】にID+お名前か、グループ名の明記をお願いします。
・単独参加の場合、他の方との掛け合いが発生する場合があります。
 完全に単独での描写をご希望の際はプレイングに明記くださいませ。
・描写は出来る限り。白紙やオープニングに沿わないプレイング、他の方に迷惑をかけたり不快にする行動等、問題行動は描写しません。
・参加人数に上限があります。ご一緒に参加される場合等、お気を付けくださいませ。

それでは、皆様のご参加を心よりお待ちしております。 

  • <グラオ・クローネ2018>甘溶けメタモルフォーゼ完了
  • GM名未森シキ(休止中)
  • 種別イベント
  • 難易度VERYEASY
  • 冒険終了日時2018年03月06日 23時55分
  • 参加人数30/30人
  • 相談7日
  • 参加費50RC

参加者 : 30 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(30人)

竜胆・シオン(p3p000103)
木の上の白烏
Suvia=Westbury(p3p000114)
子連れ紅茶マイスター
ヘイゼル・ゴルトブーツ(p3p000149)
旅人自称者
ポテト=アークライト(p3p000294)
優心の恩寵
ウィリア・ウィスプール(p3p000384)
彷徨たる鬼火
リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣
銀城 黒羽(p3p000505)
ケント(p3p000618)
希望の結晶
ナーザ・アーガテラム(p3p000623)
白みその香り
オルクス・アケディア(p3p000744)
宿主
オクト=S=ゾディアックス(p3p001101)
紅蓮の毒蠍
琴葉・結(p3p001166)
魔剣使い
トート・T・セクト(p3p001270)
幻獣の魔物
マルク・シリング(p3p001309)
軍師
ムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619)
黒武護
ボルカノ=マルゴット(p3p001688)
ぽやぽや竜人
クロジンデ・エーベルヴァイン(p3p001736)
受付嬢(休息)
ティミ・リリナール(p3p002042)
フェアリーミード
セティア・レイス(p3p002263)
妖精騎士
ノーラ(p3p002582)
方向音痴
アニー・K・メルヴィル(p3p002602)
零のお嫁さん
弓削 鶫(p3p002685)
Tender Hound
セリス・アルベルツ(p3p002738)
ギルドの王子
ライセル(p3p002845)
Dáinsleif
アルズ(p3p003654)
探偵助手
白銀 雪(p3p004124)
銀血
シレオ・ラウルス(p3p004281)
月下
Morgux(p3p004514)
暴牛
ブローディア(p3p004657)
静寂望む蒼の牙
ルーニカ・サタナエル(p3p004713)
魔王勇者

リプレイ

●想いをこめて
 石畳を抜けた小さな菓子店『猫の額』。
その日は一年で五本指に入るくらいには忙しい日であったことに違いない。
 チョコレイト細工担当の白猫黒猫コンビは勿論、キジ猫オーナーも張り切り、ほかの猫達もその日を待っていたのだから。
 店員の白黒猫コンビの尾が動く度にアニー・メルヴィル
の手が止まる。猫好きなアニーにとっては猫の店員しかいない店内は魅力的で、花のチョコレイト細工を作る手を止めてその姿を目で追ってしまう。共に来ていたシオンも、アニーと似たような気持ちで。
「もふもふ……」
「どうしたんだ、シオン?」
 シオンの小さな声に気が付いたトートの視線はシオンとアニーの作るチョコレイト細工へとそっと向けてしまうのは仕方のないことだろう。
「……二人とも綺麗に出来てる……」
 三人で交換会をしようと言ったのはトートから、けれども あまりこの手の事が得意でないトートのカエルとヒヨコに比べると、アニーの猫もシオンの鳥もどちらも上手に出来ている。
 これを渡して良いものか、ふつりとトートの中に浮かんだ物を吹き飛ばしたのも、アニーとシオンで。
「お二人ともどうぞ。本当はお花形のチョコの予定でした。……が、全部猫の形になってしまいました!」
「アニーとトートの、帰ったら食べるんだー……」
「お二人とも可愛いチョコなので食べるのが勿体ないくらいですよね」
 どちらがどちらでしょう?
 アニーの紫の瞳がトートに向けられると、トートの顔に笑みが戻ってくる。
 交換しあったチョコレイトを食べればきっと、甘さと共に心があたたかくなるような気持になる事だろう。
 浮かび上がる簡易ナイフとピックにチョコレイト。全てはオルクスの念動力によって制御されたものであった。
 同胞達へと贈られるチョコレイトは精巧であり、少女の試行錯誤の様子を知っているオルクスであったが、動物や花とは違い心臓や胃を作ったアルケディアにオルクスは語り掛ける。
『寝るのならせめてこの状況に収拾を付け給えよ』
 アルカディアから返ってくるのは沈黙ではあったが、心なしかオルクスの声が穏やかなのは呪具である、己の姿を模したチョコレイトがある事を知っているから。
 ウォーカーであるブローディアの契約者もまた本体である儀礼用ナイフを作る一人であった。
 ブロ―ディアの契約者である少女――サラは等身大のブロ―ディアを作るために設計図から作っていく。
「おお……これは私になるのか……」
 設計図を作り、チョコレイトを捏ねて型を作っていくが、湾曲したジャンビーヤのバランスをとるのは難しく時が経つにつれ、少しずつブロ―ディアからは離れていく気がするのは、気のせいではないであろう。

●出会い結びのチョコレイト
 店員に手伝われながらも、ウィリアが作り揃えたのは花のパーツであった。
「あの、……少し前から、その……何か、おかしいですか?」
「はわ、す、すみません。違うんです」
 ウィリアがその視線に気が付いたのは少し前の事。視線はどうやら隣に座る儚げな少女からのものらしく、ウィリアが首を傾げれば視線がかち合ったティミは慌てた様に首を振る。
「その、綺麗だなと思って……つい見とれてしまいました」
 偶々隣に座った女の子が同じ年頃で、それなのにティミには無い優しくふわりとした雰囲気で。
 だから、すこし気になったのだ。
「何を作ってるんですか?」
「私……ですか? 花を。……でも、ちょっと不器用で。……だけど、好きな形だから。……貴女は?」
 ウィリアがティミの手元を覗くとそこにいるのは小鳥と思わしきチョコレイト。
 この偶然もきっと何かの縁。
「むっちゃん殿―こっち向いて欲しいのであるー!」
「うーん、じっと見つめられるとこそばゆいね」
 そんなやり取りを交わすのは、ボルカノとムスティスラーフの二人で。
 ムスティスラーフのチョコレイトがボルカノの手により少しずつ形になっていく。円らな瞳に愛嬌のある顔も角も、むっちりとした体にも気合を入れて。
「このまま食べるとちょっともったいない気がするよ。でも食べないのはもっともったいないし……」
 完成したチョコムスティスラーフを見ていたムスティスラーフがぽろりと零す。
 せっかくボルカノが作ったチョコレイト、何か良い案は、
「そうだ!」
「むっちゃん殿、どうしたあるー?」
 服を着ているムスティスラーフ像の服を食べて、ちょっと彼を誘ってみよう。
 ボルカノとムスティスラーフの間に漂う甘い空気は、これからもっと濃いものになる事だろう。
 甘い空気は王冠を作っているのは鶫とセリス所もで。
「ん……こんな感じ、でしょうか。どうですか、御主人、様?」
 茶色の王冠に白いチョコレイトの宝石をはめ込んだ鶫が顔を上げると瞳に移るのは、ぼんやりと、けれどもまっすぐに鶫を見ているセリスの姿。
「……え、あ! うん! なかなか良いと思うよ」
 見惚れていたことを隠す様に、いそいそと片付け始めたセリスの肩を鶫が叩く。
「待ってください御主人様、ふふ、お疲れ様でした。はい、あーん♪」
「ま、」
 待てなんて、言えるわけがない。柔らかな笑み、綺麗だと思っていた指と指の間に挟まれたチョコレイトはセリスの口へと運ばれようとしていて。
 誰も見ていない事を確かめてから、放り込まれたチョコレイト。顔を赤くしたセリスの口の中で、チョコレイトの甘さが広がった。
 Suviaが作るのは彫刻画風の物であった。
「柔らかいと難しいですね」
 この店の店名に因んだそれは、「猫さんのお茶会」というタイトルにしようかともぼんやりと思っていたのだが、作ってみれば思いの外難しい。
「店員様、申し訳ありませんがもう一度、尾の所をお願いできますか?」
 やや苦戦しているSuviaの隣で猫店員に猫型のチョコを習っていたのはナーザであった。店で料理を振舞うナーザであったが、この機会に菓子のデコレーションをと熱心に店員から習っていた。
「わ、その猫の形可愛いです。そういうポーズの猫もこの中に入れたいですね」
 猫店員の作る猫型チョコレイトをみたSuviaの呟きを聞いたナーザが緩やかにSuviaの方へと顔を向ける。
「それなら一緒に作りませんか?」
 形は少し違うけれども、きっと店員と共に作っていけば上手くいくであろう。
 チョコレイト細工で大作に挑戦する者がここにも一人。
 自身の神である闘争神Vain像を作るのは、Morguxはその一人であった。
 神を作るためには小さな蛇と巨大な翼をもつ大蛇が必要ではあるが、Morguxの神への思い故に、その作業は細やかなもので。鱗を彫り、小さく細い舌も牙も忘れずに作り続けていく。
「お兄さん、すごい顔だね」
「は? どう見たって余裕そうにしてるだろ」
 一度はぽろりと崩れた大蛇の翼。必死の形相で再び一羽ずつ丁寧に作るMorguxの向かいでは、ルーニカがその様子を見つめていた。
「あ、店員さん。お手が空いているなら来てほしいな」
 職人でもなく基礎も無い。それなら教えてもらいながら作ればいいとルーニカは黒猫店員を呼び止める。
「タワー的な何かって出来ないかな?」
 作りたいのはルーニカの世界で太陽の塔と呼ばれていたもの。ルーニカから大まかな形を聞いた店員は、こういうのは如何でしょう? といくつか案を告げていく。
「うぐぐ……」
 思わずアルズの口から漏れたのは、苦々しい音であった。
「……なぁ、その精神力削りそうな生き物はなんだ? カエルか?」
 何となく予想を立ててはみたけれど、アルズの向かいに座るシレオにはそれが何か見当もつかなかった。
「ち、違います! 今からここから! かわいいうさぎ様になるんですから!」
「うさぎ、ねぇ」
 粘土遊びの様で子供っぽいとは思っていたのは確かだし、簡単に丸っこいうさぎが作れると思ったアルズの様に反し、チョコレイト細工は難しくて。
「そう言うシレオ様はどうなんでしょう? ……おぉ……船ですね! 流石です!」
 シレオの手元のチョコレイトをみたアルズはきらきらとした瞳をシレオに向けた。
「……あー、そう! これが豪華客船になるんだわ。でもそうなると大作過ぎるから、本物はまた今度な」
 それが実は何とかまともに出来た月と、触れば触る程歪になっていった旗だという事実は、シレオの胸の奥に仕舞われて。
 踏み台に乗り楽し気にチョコレイトの猫を作るノーラとノーラを手伝うリゲルの向かいで王冠とティアラを作っているのはポテト。
「……パパ、どうやったらにゃんこになると思う?」
「そうだな、もう少し耳を近づけると良いと思うぞ」
 歪であったノーラの猫も、リゲルと共に作れば愛らしい白い猫へと変わっていく。
「ママの作った王冠、凄い! パパの頭にのせたーい!」
 リゲルが猫達とその家が作り終えるよりも先に作業を終えたポテトの元にノーラが近づくとその瞳を丸くさせた。
「喜んでもらえて何よりだ。ノーラにもあるんだ」
 リゲルには王冠を、そしてノーラの銀色の頭の上にポテトがティアラを乗せれば向けられるのは満面の笑み。
「パパ―! わぁー! パパのも凄ーい!」
 ポテトの作った王冠を手にノーラの笑みがまた溢れる。
「似合うかな?」
「あぁ、よく似合っているよ」
 頭に王冠を添えながらリゲルは目の前のポテトに尋ねれば、フィアンセは柔らかに答えるのであった。

●詰みあがるチョコレイト
 黒羽はふむ、とカウンターの上に詰みあがっていくチョコレイトを見る。
 親しくしている者達へは勿論の事、ギルドのメンバーに行きつけの店の店長にと、知り合い全員に配るチョコレイトを買いに来たのだが買ってみれば中々の量で。懐の心配は大丈夫であるが、これを一人で持って帰るとなるとやや不安な所。
「大丈夫だ。足はちゃんと準備している」
 念のためにと馬を連れてきたのは正解だったな、と黒羽は独り言ち。
 その隣では結もたんまりと買い込んだ商品の清算をしているところであった。
『ケケケ。こんなに買って全部自分用なんだろ?』
「そうよ。どれも素敵で美味しそうでしょう?」
 結を笑うのは魔剣ズィーガー。ズィーガーのからかいにも似た言葉を慣れたように結は聞き流す。
『体重にもそうだけどよぉ、ボッチには』
「うるさい」
 矢継ぎ早に言葉を紡ぐズィーガーに、結はその鍔に拳を振るうと聞こえていた声は止んで。
 オクトの前に、ぶち猫店員から差し出された試食はリンゴ型のチョコレイト。
 普段は不運に見舞われているけれども、今日はいつもの不運が来ていない。
「私に? それは嬉しいぞっ!」
 動くたびにふるふると揺れるオクトの胸。どれにしようか悩んだ末に小さな赤いリンゴのチョコレイトを口にすれば、甘さの次に訪れるのは灼熱の辛さで。
 どうしても食べて欲しくて我慢できなくてにゃー、とぶち猫店員にオクトは今日もいつもの同じ一日だと悟っただろう。
積みあがっていく菓子の山に内心焦るのはライセルであった。
 一人で買い物に来ていた彼であったが、見知る少女が店内で困っていそうだったから声を掛け、そうして今に至っている。
「……お菓子じゃんじゃん……いっき……いっき」
 卵とほぼ同じ大きさと形のチョコレイト菓子をいくつも抱えライセルの元に戻ってきたのはセティアで。セティアの小さな声はライセルの耳にはやや不穏に聞こえただろう。
「これでおしまい……」
 チョコレイトの土と石、きらきらと透き通る飴細工の花の咲くカップを持ってきたセティアはライセルと共にカウンターへ。
 会計をする猫にその量を驚かれながら、二人が店を出れば、すでに陽は沈みかけていて。
「ライセルさん……財布、生きてる? ちょこころね、はんぶん、いる?」
「あはは……。ありがとう。財布は大丈夫だよ」
 何て言ったって、君の笑顔が見れたのだからね。
 半分ずつにしたチョココロネはライセルの言葉の様に優しくて甘い。

●感謝と好奇心
 尾を立てて伸びをする猫のチョコレイトを口にしたヘイゼルは、おや、と眉を動かした。
「これは愛らしい姿に反し中々に苦いチョコなのですね」
「ボクのは甘かったけどお酒入りのだねー」
 金色のリボンが掛けられた黒い箱。中には猫の姿を模したチョコレイト。並べられた箱の前に置かれた試食を、ヘイゼルとクロジンデは手を伸ばしのであった。
「こういうチョコは本命用とかご褒美用寄りかな。ラッピングも他とちょっと違って豪華な感じだし、値段もちょっとお高めだねー」
 今までチョコレイトを始めとする嗜好品とは縁の薄かったヘイゼルに、クロジンデはほらねー、と他よりも高い額が書かれた値札を指さす。
「同じように見えるチョコでも色々種類や意味があるのですね」
 クロジンデが教えてくれた義理チョコと呼ばれるものから、本命チョコまで……乙女のイベントは奥深い。
 「紅茶に合うやつがほしいんだけど、お勧めはどれかな?」
 手の空いていた猫店員に尋ねたのはマルクであった。
 一匹ずつ味の違う魚の形のチョコレイト、薄く伸ばしたチョコレイトの上にナッツを乗せたものはフレーバーティーと一緒に。
 試食を重ねて選んだチョコレイトを抱えてマルクが外を出る。宿の皆と過ごす時間を思えば、自然と口元も緩んでくる。
 穏やかで楽しい時間の訪れを感じながら、まだ冬の気配の残る街中に戻るのであった。
 大人な味ですよ、キジ猫オーナーに勧められるがまま黒にも近い色のチョコレイトをケントは手にして口に含む。
「にがっ……!」
 鎧の奥から聞こえる声は驚いたもので、キジ猫店長はぱちりとウィンクして見せる。
 次に手にしたのは丸い形のチョコレイト。チョコレイトを噛むと、中には甘いナッツが潜んでいて。
「んッ、う、ん。これは……なかなかだな。友人も喜んでくれそうだ」
 友人宛にと選んだチョコレイト、けれども本当は自分宛であるのは秘密だ。
「あんまりそうは見えないけど、甘さ控えめなのは本当なんだ」
 雪は、ケントが初めに食べた物と同じ猫型のビターチョコレイトを持ってきた店員に確認する。作るのは面倒だし、買って済ませようという魂胆ではあるが、選ぶチョコに妥協をするつもりはなくて。
「それじゃ、それを貰おうかな。自分用と送る様に二つお願い」
 贈る相手はいないけれど、誰かに気紛れに渡そうか。
 ふと店の隅に激辛チョコレイトで先程まで大変な目にあっていた涙目のオクトが雪に映る。
 ――決めた。
「ハッピーグラオ・クローネ。これ、あなたにあげる」
一期一会の出会いかもしれない。けれども、こんな事をするのは一年できっと今日だけだから。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 遅くなってしまい申し訳ございませんでした。
おつかれさまでした。
良きグラオ・クローネになりましたなら幸いです。
ご参加いただき、ありがとうございました。

PAGETOPPAGEBOTTOM