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シナリオ詳細

<冥刻のエクリプス>月光の下、密やかに舞うは

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●死人曰く、月の光こそが我らを生き永らえさせる
 月光人形は、一連の事件で聖都内外への被害を拡大させた。それらの被害が最小限で食い止められたのは、イレギュラーズの尽力あってのことだ。
 その一件を経て彷徨う幾つかの村の者達が聖都を目指した結果、合流し、聖都内に難民キャンプを形成したのは必然と言えただろう。……尤も、いっときの安堵は聖都内の混乱とベアトリーチェの侵攻によって瓦解したのだが。
 本格的な戦闘と前後し、難民となった者達への救護にあたる事になったイレギュラーズ。
 順調に回復へと向かう人々を見ながら、事が落ち着いたらそろそろ村へ戻そうと話し合っていた。
 その夜半に現れたのは、招かれざる客であった。

●静かなる戦いは街の中で
 彼らを発見したのは、夜でも視界に問題の無い者達。まだ距離のある場所を規則正しい足取りで進んでくるのが見えた、と。
 騎士のようななりをしていたそれらは、数がざっと三十ほど。彼らの殿には隊長と思われる、鎧の異なる者が一人。
 暴徒か、はたまた月光人形か。
 判断がつきかねるイレギュラーズ。だが、どのみち、倒さねばこのキャンプが襲われる。
 そして、現在の時刻は夜半。薄い三日月も真上に登っている時間帯。
 今ここで大々的に騒げば、村人達に恐怖を与える事は想像に難くない。
 彼らが安心して村に戻れるように、なるべく騒がずに倒すのが良いだろう。
 各々の武器を構え、狙いを定める。
 市街の中での静かな戦いが始まろうとしていた。

●補足
・時刻:真夜中
・場所:市街地の中でも特に密集している。二階建ての一軒家が多く、家の間の道は細い。路地裏も細く、潜むには適さない。
・課題:キャンプに居る難民達に気付かれぬように騎士達を倒す事

GMコメント

 ●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

 ●敵人数
 通常兵士×三十ほど
 隊長格兵士×一名
 武器について:剣ないしは斧を装備しています。弓矢の類は見られません。

 お久しぶりです。
 今回は夜における市街戦となります。
 ただし、気付かれぬよう密やかに、速やかに倒すことが望ましいです。
 立地条件はやや不利となりますが、皆様の全力プレイングを楽しみにお待ちしております。

  • <冥刻のエクリプス>月光の下、密やかに舞うは完了
  • GM名古里兎 握
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年07月12日 22時00分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

エマ(p3p000257)
こそどろ
セララ(p3p000273)
魔法騎士
巡離 リンネ(p3p000412)
魂の牧童
ハイデマリー・フォン・ヴァイセンブルク(p3p000497)
キミと、手を繋ぐ
ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)
黄昏夢廸
マルク・シリング(p3p001309)
軍師
エリザベス=桔梗院=ラブクラフト(p3p001774)
特異運命座標
彼岸会 空観(p3p007169)

リプレイ

●灯りは心もとなく、仲間は心強く
 規則正しい足音がする。
 訓練された動きに加えて、身を包んだ鎧が、賊ではない事を教えてくれる。――いや、彼らが暴徒の可能性も捨てきれないから、断言は出来ないけれど。
 さておき、イレギュラーズは近くの難民キャンプを守るべく、月明かりや夜目を補う道具を頼りに動き出す。
 多少の物音はあるだろうが、それでも音を控えめにしなければならない。
 音に注意を払いながら、イレギュラーズは位置につく。
 迎撃の準備を整え終えるのと、視界に入ってきたのはほぼ同時だった。
 さあ、早く来いとばかりな表情で待ち構えている少女――『魔法騎士』セララ(p3p000273)は、自らを鼓舞する為に口を開く。傍らに立つ『悩める魔法少女』ハイデマリー・フォン・ヴァイセンブルク(p3p000497)を肘でつつき、せーのっと、共に口上を名乗らせる。
「闇夜に紛れ、悪を狩る正義のヒーロー。魔法騎士セララ&マリー参上!」
「闇夜に紛れ、悪を狩る正義のヒーロー。魔法騎士セララ&マリー参上……だそうで」
 かたや笑顔、かたやどこか不満顔、という対極な二人。だがその口上はシンクロ率が高く、双子のようだった。
 セララが拳を突き上げ、そして自分の胸元へと下ろす。
「ここから先へは進ませない。天義の平和はボク達が守る!」
「正直、天義の平和に興味ないんですがね……あと、隠密ですよセララ」
「あっ、そうだった。しーっ、だね」
 ハイデマリーにたしなめられて、セララは口元に人差し指を当てて笑う。
 セララは興奮気味だが、ハイデマリーとしては、本当に、心の底から、天義の平和などどうでもいいのだが、彼女がそうしたいのならと付き合う形でここに来た。
 あとは、ちゃんと隠密が出来るかどうかを祈るだけだ。
 そんな二人を呼ぶ声がして、振り向くと、『黄昏夢廸』ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)がやってきて、集まるようにと伝えてきた。
 見れば、それぞれの役割を持つことにした仲間達が一箇所に集まっている。ランドウェラが呼んだからだ。
「少しでも皆の助けとなればいいなぁ」
 呟いた彼の手からイレギュラーズに贈られるのは、イレギュラーズにとって助けとなるもの。
 彼らの鼓動が高鳴り、興奮状態を導く。赤い彩りが彼らを包む。
「いつもどおり楽しくやろうか」
 そう言って微笑んだ彼を怖いと思うのは、何も知らない子供ぐらいのものだろう。
 イレギュラーズは、自分達にかかっているものが、自分達の能力を向上させていると実感すると、それぞれの役割を果たしに散開するのだった。

●浮かぶ三日月は笑みの形
 月明かりの下で、鎧を着た集団が歩いている。夜半ゆえ、顔まで覆うような兜は着用していないようだ。
 狭い道は鎧を着た者が三人分程しか通れないような道である。二人の列になって歩いているのは、いざという時動きやすいようにという事なのだろう。その判断はしっかり出来ているらしい。
 隊長格と思われる兵士は列の殿を務めているようで、最後列にて斧を持っていた。風格が違うのが、にじみ出る雰囲気からわかる。
 薄い三日月が照らす地上は暗く、よく兵士達も足並み乱さず歩けるものだと、屋根の上から見ている者達は感心する。
 ――と、先頭を歩く兵士の足が止まった。彼に倣うように、足音が止む。
 耳に届くバイオリンの音色。それは厳かに、しかして控えめな音量で奏でられる。
 彼らの目に映ったのは、一人の女性。バイオリンの奏者ではなさそうな出で立ちをしていた。戦う為の服を着た美女の手元にバイオリンは無く、代わりに両手で持つ長剣があった。
 今もなお音色は続く。音の方向は彼女の方角だ。奏者は彼女の後ろに居るのだろう。
 兵士達の予想通り、彼女の後ろには『魂の牧童』巡離 リンネ(p3p000412)が居た。彼女が奏でるのは、魔神黙示録。
 仲間の戦いをサポートする為に奏でる音。その音が届く範囲に居るイレギュラーズへと力をくれる。
 その女性は、口元を三日月に裂いて、兵士達を見ていた。ゴーグルを使用しているせいか、不気味に映る。
 女――――『天義の希望』彼岸会 無量(p3p007169)は、高揚している気分を隠そうともせずに笑い、そして呟く。
「さあ、屍山血河を開きましょう」
 踏み込まれた小さな音が、合図となった。それは戦いの合図であり、仲間への合図でもある。
 愚直に進んでは来ない筈、と判断して警戒していた兵士達の予想を裏切り、ただ真っ直ぐに、無量は前列の懐へと入り込んだ。もっと言うならば、一列目に立つ二人の間に、だ。
 どちらに斬りつけるのか、とっさに判断が出来なかった兵士達を責める声はまだ無い。
 彼らの間近でまたも不気味に笑ってみせた無量。姿形が怪しげなところにこの笑みだ。引き気味になるのも無理はないと言えよう。
 彼女が両手に持った剣が踊る。斬りつけるのは、彼女から見て右側の兵士。
 鎧の隙間に銀色の光が走り、首と胴体をこの世からさよならさせた。
「ひっ……!」
 間近で見た一撃の技に、兵士の喉から短い悲鳴が上がる。
 鮮血を浴びてもなお笑みを崩さぬ無量にも怯えているのかもしれないが。
 無量は興奮した面持ちとは裏腹に、静かな声で問う。
「貴方達は、『何』ですか?」
「?」
 質問の意図が測りかねたようで、兵士が訝しむ目をした。
 その隙を逃さぬと、後ろから現れた別の兵士が彼女に斬りかかる。
 無量の窮地を救ったのは、セララが放った剣の斬撃だ。聖剣ラグナロクと名付けられているそれが、列から外れた兵士を切り裂いた。
「一人じゃないのか!」
 兵士が低く唸る声がした。セララを狙おうとする兵士達を、肉眼で捉えきれぬ何かが射抜いた。ハイデマリーの魔弾だ。
 セララに害意ある者へ撃ち込むと決めている彼女の魔弾は、正確に兵士達を捉えた。直線上に居る敵、約二名を屠る。
 屋根の上からの狙撃。十分、彼女の技の範囲内だ。
 それ以上騒がれては迷惑だと、無量はもう一度剣を振るう。
 笑う女は彼女以外にも居た。
「ひひひ、えひひひ」
 笑い声にしては不自然な調子の、女の声。
 耳に届いた兵士達に届く、何かの衝撃。兜を通じて頭へ与えた衝撃に、兵士がよろめく。
 屋根の上から降り立った、『こそどろ』エマ(p3p000257)の足だ。
 彼女はひきつった笑みを彼らに向ける。
 屈強な兵士達を前にして、彼女は恐怖に支配されそうになる心を抑え込む。
(怖い、怖い、だけど)
 そんな自分を利用して、彼女は振るう。己の武器を。
 投げるはナイフ。普通に鎧に当てても弾かれて終わり。
 兵士も、小さな物が投げられたと思う程度だっただろう。だが警戒心があったからこそ、慢心せず、斧でそれを叩き落とした。
 投げナイフと斧が触れ合った瞬間、ナイフが爆ぜた。小規模であり、大きく響く程ではないものの、周囲の兵士達に届くには十分な程。
 爆発音と僅かな閃光、それから煤けた煙。
 斧を当てた兵士は、目をやられ、暫く斧を振るう事が出来なくなった。
 他の兵士がエマを捕まえようとする前に、彼女は近くの路地裏へ入り込む。
「待て!」
 一人の兵士が追いかけてくる。他の兵士から「よせ!」という声が聞こえないのは、そんなに強そうに思えない彼女にこのような攻撃をされた事に腹を立てているのか。
 しかし、それこそ彼女の思うツボ。
 彼が誘い込まれた事に気付いたのは、斧が振るえないとわかってからだ。
「ひっひひひ」
 笑う彼女が近づく。
 斧が使えないと知った今、彼は無手に切り替える。
 大丈夫。この体格差だ、彼女一人だけなら――――

●月の影、走り、踊るは
 セララや無量と応戦していた最中、二人を抜けて走り始めた兵士達が現れた。
 彼らの行く手を阻むように、路地裏から兵士が勢いよく出てきた。何かに押されたようなような形で。
 倒れている彼の鎧に空いている穴。心臓を貫いている事が一目で分かる。
 絶命した直後、勢いをつけたエマの蹴りが兵士を路地裏から追い出したのだ。
 当のエマの姿は見えない。彼女は既に屋根の上へと跳躍していた。
 屋根の上を走る彼女の横には、『特異運命座標』エリザベス=桔梗院=ラブクラフト(p3p001774)の姿。
 先程兵士を撃ち抜いたのは彼女の武器、エリザベス砲によるものだ。正式名称はネオアームなんとかエリザベス砲と言うらしいが、長いのでエリザベス砲と表記する。
 エリザベスは、一発撃ち終えるとすぐにエマと共に屋根の上を走った。
「あ、ありがとう、ございます。助かりました」
「いいえ、どういたしまして」
「それじゃ、私は、ここで……」
 エマは口早にそう言うと、その勢いを殺さずに屋根から飛びおりた。彼女の勢いはそのまま武器となり、兵士の一人に足から突っ込んだ。
 様子を見ていたエリザベスは、彼女なら大丈夫ですね、と根拠の無い自信で頷くと走行を続けた。
 次の狙撃ポイントを狙うべく疾走する彼女。
 もう一発打ったら、彼に回復を頼もうと考えるエリザベス。
 回復役として名乗り出ているマルク・シリング(p3p001309)はといえば、建物と建物の間にひっそりと佇んでいる。
 皆の回復が必要な場所として、屋根の上より地上の方が仲間の回復する場所として近かったので、ここに居るのだ。
 前に出て戦う無量やセララ、それから撹乱の為に動いているエマへ、遠くから回復の力を送る。
 屋根の上から一筋の光が見えた。その後、しばらくしてエリザベスが降りてきた。エリザベス砲はかなり魔力を食うと聞く。彼女が再び戦えるように、マルクは胸の前で手を組むと、声に出して応援を送った。
「エリザベスさん、頑張ってください」
 気持ちを十分以上に込めた声援を送られた事で、エリザベスの内に力が籠もる。
「ありがとうございます。頑張ってまいりますわね」
 笑顔を向けて、彼女は再び屋根の上を目指していく。
 最後まで見送ることはせず、すぐに別の仲間へと視線を戻した。
 他の仲間達はどうだろうか。
 ふと上を見上げれば、何度目かの飛行から降り立ったランドウェラの姿がある。移動しつつ、呪いを与えているのだろう。
 彼の持つ紅目は、その瞳に映す対象へ不幸を届ける。程度の大きさはランダムではあるが、しかし、不幸が訪れる事に変わりはない。使用者である彼が気をつける事といえば、使いすぎと、視界に仲間が入らないようにするぐらいだ。
 ある兵士は無量の剣をまともに受けて絶命。
 ある兵士はセララへ攻撃しようとして避けられ、その勢いのまま地面に激突して頭を強く打った。その隙を逃さずに仲間達が攻撃を加えていく。
 順調に兵士の数は削られており、今では約半数程まで減ってきた。隊長格と思われる兵士が時折兵士達に指示を出している。そこまで大きな声を出していないのは、向こうも夜襲と悟られないように動くという意図があるという事なのか。
 どんな意図であろうが、ここでイレギュラーズに倒されてもらう事になるのだが。
 最初はバイオリンの奏者として動いていたリンネも、今は精神力の弾丸を放つ事に切り替えている。列から逸れて出てきた兵士が突っ込んでくるのを正確に撃ち抜き、確実にダメージを与えていく。
 ハイデマリーは相変わらず、セララが戦う相手中心に狙撃をしている。時には屋根の上を移動しつつ、狙いは正確に定めて。放たれる弾丸は、時に直線上の兵士達を複数撃ち抜いた。
 兵士が前に出ようとして図らずも密集してしまった場所が出た時は、瞬速の青白い光が彼らを射抜いた。ランドウェラの手のひらから放たれた雷だ。
 倒しきれなかった分へ無量が肉薄し、剣を敵の喉元に突き立てる。
 少なくなっていく兵士達の数。普通なら不利と見て隊長格辺りが逃げ出しそうなものだが、そうしない辺り、責任感が強いのか。
 そして彼が後方で構えているからか、それとも隊長格への尊敬なのか、並の兵士達も逃げ出す様子が無い。
 そんな兵士達の様子を見て、楽しそうに笑うのは、無量とランドウェラ。
「最早流れる血すら己の物とも分からぬこのいくさ場。愉悦に浴してしまいそうです」
 三日月な唇を隠そうともせず、ひたすらに剣を振るい、相手の命を奪う事に集中する無量。
 返り値を浴びながらも笑う様は、誰の目から見ても「怖い」と怯えさせるに十分すぎる程。
 エマは撹乱の為に屋根の上と地上を行ったり来たりを繰り返し、時には爆発物を当てていく。彼女の隙をフォローするように、エリザベスのエリザベス砲がエマを狙った兵士を撃ち抜いた。
 マルクは物陰から物陰に移動しつつ、回復が必要そうな仲間へ回復する事の合図を送っていく。こうした地道なフォローも大事な事だ。
 セララの斬撃が少し離れた所の兵士に届く。トドメの一撃をハイデマリーより受けてその生命を終えた。
 前線に立つ無量とセララの方が怪我をする事が多く、マルクはその都度治しに向かう。
 兵士の数が残り三名、隊長格一名、という人数にまで減った頃、安全であることを確認し、マルクは物陰から表に姿を現す。
 敵の残り数を見て、セララは後ろに降り立ったハイデマリーに声をかけた。
「あとこれだけなんだね。マリー、平和の為に頑張ろうっ!」
「……そうね。早く終わらせて戻りたいし」
 敢えて明言は避け、曖昧に相づちを打つ。構えられた銃口は兵士を狙い、過たずに撃った。一人。
 セララとつばぜり合いをする兵士に向かって助走をつけて走るエマは、相手が動かない事を確認して、地面を蹴った。勢いのまま繰り出された蹴りは、兵士のバランスを崩すには十分。
「ありがとう!」
 機を逃さず、セララは畳み掛ける。横に薙いだ剣は首に当たり、致命傷を負わせる。二人。
 状況に余裕が出てきた。範囲内に全員がおさまりそうなところまで移動し、バイオリンを奏でる。
 生まれる音が、仲間に再度の強化を与えていく。
 エリザベスが腕を構える。エリザベス砲を撃ち込む為、残りの兵士に狙いを定める。
 狙いから外れようとする兵士だが、不幸にも倒れ伏していた他の兵士の足に躓き、倒れてしまう。その姿を少し前から紅い目が捉えていた事を、兵士は知らない。
 慈悲もなく放たれたエリザベス砲は、最後の並の兵士を倒す事となった。
 残るは隊長格一名。
 一対八。
 人数的には圧倒的不利。だが、一向に逃げ出す気配はない。それどころか、武器を構え直してイレギュラーズに向き合う。騎士道精神に則っているとしたら、立派なものだ。
 彼の前に進み出たのは無量。「斬る」という事に執着している彼女は、斧を携えた男と戦ってみたくて仕方なかった。
 じっくり楽しみたい気持ちはあれど、今日はそんな時間はない。ただ本能に任せて走り出す。
 斧を構え、カウンターのように繰り出そうとする動きが見えた。しかし、速度は仲間のサポートを受けた彼女の方が上であった。
 斧が振るわれるよりも先に無量の両手剣が閃く。首と胴体が離れる。
 目の錯覚だろうか。離れた首から上、つまり顔が「よくやった」とでも言いたげな笑顔をしたように見えた。
 討ちもらしは無いか、エリザベスがファミリアーで近くの動物を介して確認する。
「大丈夫そうですわね。キャンプの方も特に騒いでる様子は見られません」
 彼女の答えに胸をなでおろす大半の者達。
 マリクは仲間達に回復を施しながら、キャンプの方へ思いを馳せる。
「安眠妨害にならなくて良かった」
 剣についた血を拭い、鞘に収める無量。
 返り血だらけの彼女を見て、リンネが困ったように首を傾ける。
「無量だけはキャンプに戻る前にその格好をどうにかした方がいいよねー?」
「それもそうだな。どこかで洗わせてもらおう。そういうわけで、どっかで借りてからキャンプに向かう」
 宣言した無量はすぐにその場から離れた。どこでその血を落とすのかは知らないが、ちゃんと綺麗にして戻ってくると思われた。
「さて、帰ろうか」
 誰が言い出したか、その一言で皆は歩き出す。自分達が先程まで戦っていた兵士達は、朝になってから纏めて弔う事になるだろう。
 薄く笑う三日月が、地面に伏す兵士達の姿を照らしていた。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

お疲れ様でした。
人数としては多めでしたが、皆さんの動きが不利をものともしない事となりました。

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