シナリオ詳細
<冥刻のエクリプス>欲深き者達に規律ある裁きを
オープニング
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月光人形事件から派生した大規模騒乱『クレール・ドゥ・リュヌ』。
何者かが月光劇場と名付けたそれは、フォン・ルーベルグを中心に民心と政情、平穏をこの上なく破壊した。
ローレットの活躍もあり、辛うじて一次的な危険水域を脱出した天義ではあったが、多くの者が知っていた通り、それは始まりに過ぎなかった。
王宮執政官エルベルトによる『コンフィズリーの不正義』が明らかにされつつある一方で、姿を隠す事を辞めた枢機卿アストリアの不穏が動きが垣間見える。国外脱出を図ったエルベルトと連携し動き出した彼女の目論見は、天義自体の政変。
『味方ならぬ味方』となった月光劇場の仕掛け人、七罪ベアトリーチェ・ラ・レーテの登壇はすぐそこだった。
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幻想、ローレット内。
天義で起こる大規模事件を受けてたくさんの依頼が並び、情報屋やイレギュラーズ達が忙しなく動き回っている。
「かなり、大変な状況になっているのは間違いありません」
こんな状況でも、『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)が落ち着いているのは、彼女のギフト『大海の心』の効力によるところが大きい。
そんな彼女がイレギュラーズ達へ、今回の騒乱に関して事情を話していく。
今回、探偵サントノーレとイレギュラーズの調査で様々な事が分かった。
「この一連の事件は、大いなる魔種ベアトリーチェによる仕業だと判明しました」
ベアトリーチェに人間的な支配欲があるかまでは、分からない。
ただ、無数の死者や雑霊を従えた彼女の勢力、軍団がフォン・ルーベルグを制圧せんと動き出したのは間違いない。
「一方の天義サイドは、少なくとも現在、1枚岩で事に当たれてはいないようですね」
ローレットの活躍もあり、敵性勢力の扇動の効果は限定的に終わった。
月光事件に惑わされた民衆は幾らか希望を抱き、国是として魔種に立ち向かう気持ちを高めているが、全快・平静とは言えない状態であるのも事実だ。
「……と言いますのも、天義中枢に魔種へと与する、或いは魔種を利用して我欲を叶えようとする強い勢力が存在しているからです」
フォン・ルーベルグ内部には、大教会に籠城するアストリア枢機卿の戦力がネメシス王宮を牽制する動きを見せている。
城壁外からは、王宮執政官エルベルト側と思われる戦力が彼女を救援する構えを見せている。獅子身中の虫が非常に邪魔といった状況だ。
とはいえ、イレギュラーズの強烈過ぎる活躍により、アストリアの私兵『天義聖銃士(セイクリッド・マスケティア)』は半壊状態。
彼女が拠点である『サン・サヴァラン大聖堂』にて、籠城を余儀なくされているのはその辺りに起因する。
「私達、ローレットとしては、大国である天義が魔種の手に落ち、『滅びのアーク』が激増する事態を何としても防がねばなりません」
天義聖騎士団と連携し、なんとしてもこの事態を打破したい。
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ここまでは天義全体における状況であるが、ここからがアクアベル個別の依頼となる。
「フォン・ルーベルグ攻略を目指すベアトリーチェ配下の遊撃部隊の討伐をお願いしたいのです」
ベアトリーチェの狙いは、滅茶苦茶にした聖都の陥落だ。
この為、彼女は自らの部下を多数、首都フォン・ルーベルグへと攻め込ませようとしている。
アクアベルの依頼としてはそのうち、アニトラなる魔種の女性が率いる小隊を撃破してもらいたいというものだ。
「数は30程度。魔種アニトラ以下は全て、アンデッドですね」
アンデッドの中には、リッチ、スケルトンウォーリアーといった上位種も紛れてはいるが、基本的には下位種の集まりらしい。
「アニトラという女性は鞭を操り、皆様の体力気力を奪うなどしてきます」
強欲の手先らしく、立ち回ることも多い敵だ。
使うスキルもある程度推測の上で、対処方法を考えることができるだろう。
「情報が十全でない状況なのは、非常に申し訳ないところですが……」
できるなら、万全な情報をとアクアベルも最善を尽くしたが、魔種の力が大きく働き、多少の予知程度の能力では視えないことも多かったのだとか。
とはいえ、状況的にこちらへと有利に働く状況もある。
まず、戦闘場所は首都の入り口外。比較的広い平原での交戦となる。この為、直接的な人々への被害を考えずに戦うことができる。
敵を街に入れぬようにする立ち回りこそ必要だが、基本的には純戦バトルといった形で臨める状況なのはやりやすい状況と言える。
「あと、以前の月光人形依頼で、皆様が救った聖騎士のルーシーさんが小隊を率いて協力してくれます」
数はルーシー含め20人程度。
これなら、アンデッドとも引けを取らぬ戦いができるはず。場合によっては、イレギュラーズ達は魔種との戦いに専念できるだろう。
説明を終え、アクアベルはこう続ける。
「私が今回案内しましたのは、一つの戦場ですが……、小さな綻びが大きな事態を招く可能性も否定できません」
だからこそ、たかが小隊とは思わず、丁寧に対処して敵を潰していきたい。
「以上ですね。皆様のご検討をお祈りしております……!」
アクアベルは依頼に当たるイレギュラーズ達を激励し、説明を締めくくったのだった。
- <冥刻のエクリプス>欲深き者達に規律ある裁きを完了
- GM名なちゅい
- 種別通常
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2019年07月09日 23時15分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
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首都フォン・ルーベルグの手前入口付近。
この地に、ローレットイレギュラーズ、及び天義聖騎士小隊が展開している。
「フム……、今予想外のことで揺れてる天義を一気に叩こうとしているのか……」
可愛らしくもスタイルの良い体つきをした『Spica's Satellite』ニーナ・ヘルヘイム(p3p006782)は無表情のまま、前方から攻め来る敵を見る。
魔種の女が率いるアンデッド集団。それは聖騎士達ですら脅威に覚える相手だ。
「魔種め……。膠着状態に決定打を放とうって気かしら」
自分達がいる限りそう簡単に行くわけがないことは相手も承知済みのはずだろうにと、夢魔と人間の血を引く半魔の『雨宿りの』雨宮 利香(p3p001254)は自身ありげに語る。
「あれだけの戦力の上で別動隊と、面倒をかけてくれますね」
「小隊……ね。ぶっ殺してもぶっ殺しても、起き上がってくるような奴らだ。面倒な仕事だ」
多少の手勢を率いて現れる敵に、スレンダーな黒く長い髪を三つ編みにした女性、『自称・旅人』ヘイゼル・ゴルトブーツ(p3p000149)は些か辟易とする。小柄な水色の髪の少年『天義の希望』ヨハン=レーム(p3p001117)もまた鼻を鳴らし、同意していた。
「アンデッドなら、気持ちは楽かな」
しかし、虎の精霊であるソア(p3p007025)は、正気をなくした人間をやっつけるよりずっと気が楽だと考えていて。
「むしろ、ボク達が悪いネクロマンサーの支配から解き放ってやろう」
前向きな態度で、ソアはこの戦いに臨む。
「お願いライラ……私に力を貸して」
素顔を隠した小柄な金髪女性『恩師の死を乗り越えて』暁蕾(p3p000647)は、亡き恩師に祈りを捧げる。
これ以上、悲劇は繰り返させたくない。魔種の犠牲者を増やすわけにはいかない……と。
聖騎士達もまた小隊長であるルーシーを始め、イレギュラーズ達に加護をと祈ってくれている。
「今回は協力たのム」
「はい、よろしくお願いします」
首に傷跡のある長い黒髪の青年といった外見をした『D1』赤羽・大地(p3p004151)の一言に、ルーシーは部下と共に丁寧に頭を下げる。
この小隊と、大地、ソア、暁蕾が直接、協力体制をとる。
「あなたの名前は?」
暁蕾は小隊員の名前を聞き、一丸となって動くようにと聖騎士達へと依頼を行う。
まず、回復支援。今回のイレギュラーズのチームは些か回復の手に不安があるのだ。
「これの突破を許してしまえば、先の月光人形以上の悲劇を、混乱を起こしてしまう」
もう1つ、大地が言うように、街へと魔種はもちろん、アンデッドを1体たりとも通すわけにはいかない。
小隊長ルーシーも、ローレットに月光人形の1件を解決してもらった恩がある。任務もあるだろうが、彼女も気合は十分だ。
「だかラ、共に戦っテ。そしテ、生きて帰ってくレ」
「「はい!」」
大地は鼓舞すると、聖騎士達は揃って返事してくれていた
「クハッ! 負けられぬ戦いであるか! よいぞぉ! 血が滾る!」
白セーラー服を纏う長くストレートな黒髪の『白百合清楚殺戮拳』咲花・百合子(p3p001385)は近づいてくる敵に闘志を燃やす。
近づいてくる集団、それは魔種ベアトリーチェ麾下の小隊だ。
「あら、大層なお出迎えね」
鞭をしならせるは、強欲の魔種アニトラ。この小隊の長である。
上司の命に従い、彼女はこの天義の首都を攻め落とすつもりだ。
その後ろに、ゾンビ、スケルトン、ゴーストと、アンデッドの集団を従えている。中には、一回り強い力を持つ2刀流のスケルトンウォーリアーと、魔導士の成れの果てリッチの姿もあった。
「アンデッドだろうが魔種だろうが、死は平等に訪れるという事を思い知らせてやる」
「月光人形を生み出したものの手先という事なら、私も手加減をする必要はないな?」
にやりと笑う敵へヨハンが淡々と剣を抜き、同じく、盾を構えたニーナも告げる。
「我が『ヘルヘイム』の名において誓おう……貴様らを裁こう」
「その前に、あんたらを地獄に落としてやるわ」
死を語るヨハン、地獄の名を語るニーナへ、アニトラが妖艶に笑う。
「地獄なら渡りなれておる故、吾が先導になろうぞ。続けぇ!」
力を漲らせる百合子が仲間達や聖騎士達へと吠えた声がこの戦いを始まりとなるのだった。
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襲い来るアンデッド集団。
イレギュラーズ、聖騎士隊はまず突破口を開くべく立ち回ろうとするが、接敵される前にとヨハンが前に出て。
「まずは、リッチを早急にどうにかしたいが……」
高火力、広範囲の魔法を放つと思われるリッチは、アンデッドの後方に陣取っていた。
それを確認した彼はできる限り多くの敵を捉え、抜いた『月明かりの剣』を突き付けてから呼びかける。
「この剣で、貴様らを浄化してやろう!」
さらに、乱戦なら私の出番だと、利香も自信ありげに微笑んで。
「さあ、来なさい……美味しそうな魂達♪」
アンデッド達が浄化という言葉に反応するのはわかるが、命も感情の亡くなったはずの彼らは利香の誘惑にも負けていたようである。
ある程度、固まって群がってくるアンデッド達。
仲間が引きつけているうちにと、ニーナはすっと息を吸って歌い始める。
「彷徨える魂達よ、我が鎮魂歌を聞き、安寧を持って眠れ」
ニーナが口ずさむのは、絶望の海を歌った歌。
冷たい呪いを帯びた旋律は、アンデッドですらも呪いに侵す。
ちらりと百合子が強アンデッドの様子を窺うと、リッチはこちらとの間合いをはかっており、ウォーリアーは前進して刃を振りかざし、挑発した2人に向かっていたようだ。
ならばこそ、百合子もそいつを含めるように、全身の力を魔力に変換して発射する。
それによって、先頭のウォーリアーが撃ち抜かれ、さらに後ろのゾンビやスケルトンを撃ち抜き、弱らせていく。
仲間達の攻撃に続き、攻める大地。
一旦、聖騎士達には回復支援をメインとした立ち回りを頼み、大地は内なる悪意を殺傷の霧に変えて展開し、敵陣を傷つけていく。
攻め来るアンデッドは横に広がろうと動き、それぞれの手段で攻撃してくる。
ゾンビは毒を伴うひっかきと、食らいつきでの体力回復。
スケルトンは己の骨での叩きつけ、足元へと縋りついての足止め。
そして、ゴーストは憑りつき、呪いといった手段で襲ってくる。
強アンデッド2体を別とすれば、隊員となるアンデッドどもは多少腕のある者なら丁寧に対処すれば対処できる相手だ。
その敵陣目掛けてソアは特攻し、雷を帯びた虎爪を真横に薙ぎ払う。
ソアの爪は前線のスケルトン共の体を引き裂き、その体を崩していく。
「人々を守るためにも、魔種にここを抜かせるわけにはいかない」
暁蕾も改めて聖騎士達へとこの戦いの意義を再確認しつつ、神秘的な力を扱う自らの『本能』を覚醒させる。
そして、彼女は魔導書『旧世界』を手にし、雷撃を放ってアンデッド達を焼き払っていく。
そんな中、アンデッド達の中から進み出てくる女魔種の姿を、ヘイゼルは見逃さない。
「申し訳ありませんが、此処を通す訳には参りません」
「目ざといわね」
クスリと笑うアニトラは鞭を手に、見下すような視線を向けてくる。
魔種となった彼女はない胸を大きく強調するように、ふんぞり返りつつ高笑いして。
「私のモノにしてあげるわ、覚悟なさい」
混沌の住人はその笑いを見るだけで、背筋に寒気が走る。それは、原罪の呼び声によるところだろう。
しかし、旅人のヘイゼルにはそれは通用しない。
「強欲などと申しましても……。所詮は私のようなか弱い乙女一人捕まえることも出来ないのですよ」
伸ばした赤い糸で、アニトラを捕えるヘイゼル。
詐胸だという彼女だが、それ抜きでもぺったんこの相手よりは大きいと胸を張り返して見せる。
「私より平坦な成人女性とか、出会ったこと無いのですよ」
「……よほど、地獄に落ちたいようね」
ヘイゼルの煽りに、アニトラは額に青筋を立てて鞭を叩きつけてくるのだった。
●
猟兵、聖騎士両隊は、攻め来るアンデッドの数を少しずつ減らしていく。
ヘイゼルがアニトラと接触、交戦を始め、ヨハン、利香が他アンデッドの引きつけに当たる。
ヨハンはスケルトンウォーリアーと接敵していた。
二刀流の敵は近接メイン型。時に近場の相手へと飛ぶ斬撃で薙ぎ払ってくるが、基本的には目先の相手へと2本の刀を振りかざすごり押しタイプだ。
雷撃を伴う連撃をヨハンは防御集中しつつ耐え、状況の好転を待つ。
同じ引きつけ役ではあるが、利香は逆に敵陣突破の為、アンデッドの群れへと突入する。
チャームでアンデッドを惑わし続ける彼女は、敵前線のゾンビやスケルトンは斬りかかってきた反射攻撃で少しずつ蹴散らす。
しかしながら、後方のゴーストが厄介な相手。
毒や麻痺などを与えてくるアンデッドが多い中、振り撒く呪いは致命的な効果を及ぼしかねない。
ただ、イレギュラーズで他者向けのBS回復ができるのはヘイゼル、暁蕾の2人。
ヘイゼルはアニトラの抑えに当たり、回復も難しい。
「回復、頼むわね」
この為、利香は後方の暁蕾や聖騎士達に異常回復を任せ、攻め込み続ける。
出来るだけ早く、敵を殲滅したいところ。
「我が『氷結』の権能よ。悪しき魂達を凍てつかせ、破壊せよ」
敵は前衛陣が引きつけてくれている。ならばこそ、ニーナも手早くアンデッドを纏めて倒すべく、破壊のルーンを描く。
天から降り注ぐ不可避の雹がアンデッドどもを強く打ち付け、その体を崩壊、または霧散させていく。
ニーナはさらに、敵の殲滅の為にと範囲攻撃を仕掛けていった。
利香が深く敵陣へと突っ込んでいることで、徐々にリッチを捉えられるようになれば、メンバーの攻撃は集中する。
何をしてくるか分からない。だからこそ、暁蕾もそいつを優先的に狙う。
そのリッチ、序盤は遠術を使って肩鳴らししていたが、ある程度エンジンがかかってくるとその強力な魔力を放出してきた。
「来る……。攻撃に備えて!」
魔力の高まりを感じた暁蕾が仲間達へと呼びかける。
「フレアバースト……」
戦場に巻き起こす魔法エネルギーの大爆発。
まともに浴びれば、体を吹っ飛ばされかねない威力だ。
体力を削がれながらも、耐えるメンバー達。
暁蕾もまた堪えつつ、雷撃を駆け巡らせてリッチの体を焼き払う。
さらに、敵が詠唱するのは、射程こそ短いものの相手を強力に縛り付ける呪いの言葉だ。
状態異常の直撃はできるだけ避けたいところだが、リッチはさほど体力がないのが弱点。
だからこそ、一気にその撃破を目指し、大地が攻め込む。
まだ、気力に余裕があると踏んだ大地が再度、ロベリアの花を敵陣へと展開する。
包まれるだけでその身を切り裂かれる霧の中、リッチは早くもその身を崩してしまう。
「このまま、魔種へと攻めこむゾ」
大地はヘイゼルが抑える魔種へと向かうが、彼女はすでに苦しい状況。
「ほらほら、いいのは威勢だけかい?」
アニトラは力で圧倒してくるが、お仕置きと称した鞭と合わせた格闘技は相手に流血、苦鳴を与えてくる。
消耗が思った以上に激しく、ヘイゼルはパンドラの力に縋ることとなってしまう。
魔種の力は強大だが、そいつの引き連れるアンデッドにはメンバー達も対策ができており、一気に攻め込む。
アンデッドの数が半数を切ったことで、百合子も攻撃対象をウォーリアーに移す。
リッチが思いの外早く倒れたこともあるが、それ以上にウォーリアーの火力が脅威だったこともある。
魔力を纏わせた拳で、百合子はウォーリアーの体を殴りつけていく。
相手は至近距離からヨハンへと竜の力を伴う刃の乱舞を浴びせかけてくる。
「くく、アンデッドって程じゃねえが、面白い物を見せてやるぜ!」
全身から血を流すヨハンは、不滅のごとく自らの傷を塞ぎ、さらに仲間の援護が入ったこともあって反撃に転じる。
巨大な刀身を十字に振るった彼は、ウォーリアーの体勢を崩してしまう。
「よし、一斉に叩いて押し切ろう!」
アンデッド達が総崩れと判断したソアが聖騎士達へと呼びかけた。
ある程度敵の数が減れば、街へと攻め込まれる危険も減る。
それもあって、ソアは一斉にアンデッド達へと攻撃を仕掛けていく。
敵はゾンビ、ゴーストが多く残る中、聖騎士達はメイスで殴り掛かる。
「ターンアンデッド!」
小隊の指揮を執るルーシーも、聖なる光でアンデッド達を土へと還していた。
交戦の最中、ソアは2本の刃を振るうウォーリアーへと格闘戦を仕掛けていて。
「いけえええ!」
ウォーリアーの刃で体を裂かれながらも、ソアは全身のバネを使い、強烈な回し蹴りを敵の首筋へと叩きこむ。
スケルトンウォーリアーの空虚な瞳から光が消え、そいつはボロボロと体を崩してしまったのだった。
●
気づけば、アンデッドの数も減り、イレギュラーズ達はアンデッドの相手を聖騎士達へと託し、魔種アニトラの対応に集中していく。
魔種へと接敵した利香は自らの豊満な体をアピールし、チャームを使って。
「ふふ……、かわいい子……一杯かわいがってアゲル♪」
自らの体をアピールする利香。
だが、ここにきて冷静になっていたアニトラはくすりと笑い声を上げる。
「そっくりそのまま、返してあげるわよ?」
怪しげな笑いがまた、混沌の住人達を惑わせてしまう。
そこで、前に立つ百合子が聖騎士達へと大声で呼びかけて。
「吾をみよ! 吾は美少女なり! 貴殿らは何者であるか! 人であるならば、人たる義務を果たせ!」
「「は、はい……!」」
我を強く持つ聖騎士達。
ヘイゼルから気を逸らした敵は素早く百合子へと飛びかかり、彼女を一度地面に這わせてしまう。
百合子が運命の力に頼り、再び立ち上がろうとする間に、聖騎士達の治癒術で持ち直したヘイゼルが再び赤い糸を飛ばし、相手を抑えようとした。
「大分、動きが見えてきましたよ」
相手を煽りつつ、ヘイゼルは敵の攻撃を回避しようと距離を取りつつ回避に注力していく。
残るアンデッドから少し離れつつ、街を背にするイレギュラーズ達。後はアニトラを囲み、一気に攻め崩すのみだ。
「全ては私のものになるのよ、いずれね」
「それだけ強欲なら、受け取りなさい。自らの破滅を!」
暁蕾はアニトラ目掛け、ライトニングを撃ち込み続ける。
痺れは効くはずではあるが、アニトラもかなり抵抗力が高く、なかなか動きを止めてはくれない。
「ほらほら……!」
鞭の乱打はやすやすと近づけぬほどの壁となりながらも、苛烈にメンバー達を打ち付ける。
しかしながら、仲間の盾とならんと、ヨハンが飛び出す。
敵の鞭をその身に受けようとも、彼は毅然と立ち塞がって。
「これが俺の生き方……何度倒れようとも、俺は絶対に仲間を守り通す!!」
見る見るうちに体力を削がれるのを感じながらも、彼は身を張り続け、パンドラの力を持って立ち上がる。
その上で、彼は素早く十字に大剣を振るい、アニトラのスレンダーな体を切りつけていく。
「……ふむ、ぺったんこであるが、気にするな。胸などなくても魅力など指して変わらない」
ニーナは煽るよりはむしろ、元気づけるような物言いでアニトラへと告げ、氷の鎖を伸ばして敵の体を縛り付けようとする。
「だから、これからも挫けずに生きていてほしい」
「ご親切にどうもありがとう……!」
再び、お仕置きとばかりに、鞭を織り交ぜた格闘術でニーナを攻め立てようとするアニトラ。
そこで、ニーナを庇い、利香が飛び出す。
豊満な彼女の体にアニトラもやや苛立っていたのか、鞭を持つ手を強め、その体を強く打ち付ける。
気を失いかける利香も、運命の力に縋りつつこの場に立って。
「全てが欲しいなら、もっと刃をくれてあげるわ」
目にも止まらぬ速さで『夜魔剣グラム』の斬撃を浴びせかけ、跳躍の勢いでアニトラを切り上げる。
アニトラを相手にするメンバーは、パンドラを使ってボロボロだ。
聖騎士達と共に交戦していた大地は、死者の怨念を一条に束ねて放ち、魔種の血を吸い尽くそうとしていく。
さらに、ソアも敵の注意を引くように飛びかかり、雷を纏わせた虎の爪で相手へと浴びせかけた。
「ううっ……」
パワフルなソアの一撃に、アニトラが呻く。
立て続けに攻撃を受ければ、如何に魔種とて苦しみを見せていた。
一方、こちらは聖騎士小隊の援護を受け、やや前のめりに攻めても回復支援の手がある。
そこで、百合子が自らの美少女力を高めて。
刹那、百合の花を背負った彼女は、渾身の力で魔力を纏わせた一撃を打ち込んでいく。
「これで、終わりとさせてもらおう!」
力に任せ、アニトラを殴り倒す百合子。
地面へと沈む強欲の魔種はようやく、その力の全てを使い果たしたようだ。
「ベアトリーチェ様……力及ば……ず……」
その体は見る見るうちに萎れて白骨化してしまい、もろくも崩れ去ってしまう。
ほぼ同じタイミング、聖騎士達も最後のゴーストを霧散化して。
「……終わりました。我々の勝利です……!」
無事に、フォン・ルーベルグの街を魔種から守ることができた。
ルーシーの勝鬨の声に合わせ、歓喜の声を上げる聖騎士達。
イレギュラーズ達もボロボロになりながらも、その喜びを彼らと共に分かち合うのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
リプレイ、公開です。
MVPは迷いましたが、
前線に立って攻め立てつつ、
聖騎士達を鼓舞していたあなたへ。
首都フォン・ルーベルグの防衛お疲れさまでした。
ゆっくりお休みくださいませ。
今回はご参加ありがとうございました!
GMコメント
イレギュラーズの皆様、こんにちは。
GMのなちゅいと申します。
<冥刻のエクリプス>のシナリオをお送りします。
以下、詳細です。
●注意
この依頼に参加する純種は『原罪の呼び声』の影響を受け、反転する危険性があります。
●目的
ベアトリーチェ麾下アニトラ小隊撃破。
●敵……ベアトリーチェ麾下アニトラ小隊
◎指揮官……アニトラ
20歳位の女性の姿をした強欲の魔種。
何もかもを我が物にと目論みます。
胸がないぺったん……スレンダー体形で、鞭を操ります。
スキルが一部しか判明しておりません。
・私のものにしてあげる……(A)神中単・HA吸収
・逃がさないわよ……(A)神遠貫・氷結
・ぶれない強欲……(P)精神無効
◎アンデッド……アニトラ小隊員
〇リッチ……1体
高い魔術を使いこなす魔導士のなれの果て。
様々な魔術を使うようですが、詳細は不明です。
○スケルトンウォーリアー×1
2本の剣を操る剣士。
技量の高い剣術を使いますが、詳細は不明です。
○小隊員……30人
いずれも下級アンデッド。
ゾンビ、スケルトン、ゴースト。それぞれ10体ずつ
・ゾンビ……毒、HP吸収使用、
・スケルトン……麻痺、足止使用、再生持ち
・ゴースト……神秘攻撃メイン。呪い、不吉、AP吸収使用
●NPC
◎天義聖騎士小隊……21人、いずれも人間種。
◯ルーシー……22歳、聖騎士団小隊長
亡くした両親と弟を月光人形にされた過去を持つ女性です。
今回の騒乱に当たり、自ら体を率いてローレットの助力を申し出てくれています。
騎士剣を所持。使用スキルは以下の通り。
・レジストクラッシュ……(A)物至単・足止・崩れ
・ピューピルシール……(A)神遠単・封印
・ハイ・ヒール……(A)神中単
・ターンアンデッド……(A)神遠単・アンデッドに必殺
拙作「愛しい家族との対面」に登場。
今作の参加に当たっては読む必要はありません。
◎隊員……20人
10代後半から20歳くらい聖騎士の男女
主にメイス、錫杖。
斧槍、弓を使う者が4人ずつ。
全員が回復支援、神秘系魔法を使用。
小隊長ルーシーの指揮で動きますが、
希望があれば、ローレット勢にも助力します。
●状況
天義の首都フォン・ルーベルグへと攻め入ってくる
ベアトリーチェ麾下アニトラ小隊との交戦です。
街の入り口手前で迎え撃つことができ、
基本的に純戦バトルといった形での戦いです。
この場を抜かれ、首都内へと敵を逃がしてしまうと、
失敗扱いとなりますので、くれぐれもご注意を。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
それでは、よろしくお願いいたします。
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