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シナリオ詳細

<冥刻のエクリプス>Robber Knight
<冥刻のエクリプス>Robber Knight

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●包囲を阻止せよ
「大変なのです! もちろん、どこがどう大変か説明しきれないくらいここは大変なのですが!」
 『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)は次々と巻紙を持って飛んでくる鳩や鷹の群れに囲まれながら叫ぶ。彼女の手元には次から次へと聖都の戦況が舞い込んでいた。ユリーカは一枚手に取って広げると、しばし眺めて君達に突き出してきた。
「えーと、皆さんはこれに対応してください!」
 君達の誰かが紙を受け取り、テーブルの上に広げる。覗き込むと、聖都外に逃れたエルベルトが私兵を組織して再侵攻をかけようとしている旨が記されていた。
「エルベルトは元々領内の青年を徴兵するだけでなく、各地を練り歩く傭兵も雇って私兵を組織していたのです! 皆さんに当たっていただくのは傭兵の方! 率いているのは『鉄腕』です!」
 ユリーカはさらに紙を一枚投げ込む。右腕が鉄の義手となった、顎髭豊かな男の肖像が描かれている。
「部隊の数はおよそ30、長槍兵が10人にクロスボウ兵が10人、それから騎士が10人です! 典型的な構成ですが、相手は傭兵、奇抜な戦術を仕掛けてくるかもしれないので気を付けて欲しいのです。聖都からも対応の為に兵士が向かっているようなので、協調しながら任務に当たってください!」
 次々舞い込む鳥の群れに埋もれそうになりながら、ユリーカはぴょんと跳ねて叫んだ。
「アストリア派をほぼ撃退して、戦況は徐々に此方の優位へ進み始めているのです! この優位を保てるよう、エルベルトの手勢に好きにはさせないようにお願いですよ!」
 君達は立ち上がると、武装を手に取り戦場へと駆けだした。

●盗賊騎士ゲーツ・フォン・アイゼンアルム
 パイクを担いだ10人の兵士が先頭をばたばたと走る。その脇をクロスボウを構えた10人が固めて、その背後を10人の騎士が追いかける。皆揃って、まるで道化師のように奇抜な格好をしている。戦場で目立つだけ目立ち、その功を周囲に知らしめるためだ。
 深紅に棚引く旗を鎧に差し、ゲーツは悠々と聖都へ進軍する。聖都を襲う事の恐れなど、彼の目には一つもなかった。
「走れ野郎ども! 貴族共の溜め込んだ財宝があの都にはたんまりとあるぞ! エルベルト卿は奪い取り次第と保障した! 食いっぱぐれたくなきゃさっさと進め! そして奪え!」
 ゲーツはからからと笑いながら腕を叩く。右の『鉄腕』がガタガタと音を立てた。走りながらも、兵士達は彼の発破に応えて叫ぶ。宝の山を前に、彼らの士気はいや増していた。
 その時、空の彼方から飛んできた鷹がゲーツの腕に留まった。ゲーツは鷹を放ってにやりと笑う。
「おっと、わざわざ外までおいでなすったらしい! 構えろ!」
 ゲーツが叫んだ瞬間、兵士達は一斉に広がった。長槍兵は槍を正面に構えて横隊を作り、弓兵はその背後で弩を構える。騎士達はその脇を固めて、簡単な陣形を作り上げた。
「さあ来い! 聖騎士だかイレギュラーズだか知らねえが、そんなの俺達にとっちゃこけおどしよ!」
 君達は10人の騎士と共に、そんな傭兵達に向かい合う。敵は略奪のプロだ。聖都に通したが最後、再び街はさらなる混乱の渦に叩き込まれるだろう。決して負けてはいけない。

 どちらからともなく鬨の声が響き、君達は一斉に飛び出した。

GMコメント

●目標
 鉄腕のゲーツ以下傭兵部隊を撃破する。
 全員の討伐ないし捕縛により任務完了となります。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●ロケーション
 聖都外の平原で戦闘を行います。高低差のほぼ無い平地で、足回りは非常に良好です。

●敵
☆鉄腕のゲーツ
 各地の戦場に半ば勝手に飛び込んでは略奪を繰り返す傭兵。その所業により『盗賊騎士』と綽名されているが、嘆かわしいことにその実力を頼みに彼を雇い入れるものは後を絶たない。
→攻撃方法
(騎士の項を参照)
→性向
 遊撃重視…騎馬の機動力を生かし、敵の側面をつくような戦い方を好む。

・騎士×9
 ゲーツ麾下の騎士。軽鎧のために少々守備はおぼつかないが、足回りは軽やか。
→攻撃方法
 連携攻撃…数人で対象を囲んで攻撃。完璧に囲まれると回避は困難。
 突進…轡を揃えて突進する。その突撃をまともに受ければ地面に蹴倒される事必至。

・長槍兵×10
 ゲーツ麾下の長槍兵。槍の長さは4m以上もあるため、構えられると正面から近づくのは困難。ただしその分機動力は弱い。
→攻撃方法
 槍衾…一斉に槍を揃えて進軍。単純極まりないが、正面から打ち破るのは現実的ではない。

・弩兵×10
 ゲーツ麾下の弓兵。マスケットがあるのに弓を使っているのは理由がある。
→攻撃方法
 連装式弩…弩の下に弾倉のようなパーツがあり、そこから次の矢を素早く準備できる。
 毒矢…鏃には毒が塗られている。まともに喰らうとイレギュラーズでも昏倒しかねない。



 影絵企鵝です。飛び入り参加させて頂きました。敵の構成とか何のゲームに影響されてんだって感じですが、よろしくお願いします。

  • <冥刻のエクリプス>Robber Knight完了
  • GM名影絵 企鵝
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年07月08日 22時51分
  • 参加人数 8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ロザリエル・インヘルト(p3p000015)
至高の薔薇
アクア・サンシャイン(p3p000041)
トキシック・スパイクス
グリムペイン・ダカタール(p3p002887)
わるいおおかみさん
セリア=ファンベル(p3p004040)
灰色の魔術師
無限乃 愛(p3p004443)
魔法少女インフィニティハートD
コーデリア・ハーグリーブス(p3p006255)
信仰者
アリア・テリア(p3p007129)
幸福を知った者
ノエミ・ルネ・ルサージュ(p3p007196)
恩に報いる為に

リプレイ

●騎兵激突
 横隊を組んで武器を構える兵士達。その両脇に展開しながら、鉄腕ゲーツは叫ぶ。
「さあ、来やがったぞ! 油断はすんな、構えろ!」
 天義の騎士は横に広がり、槍を構えて横隊に対峙する。その間から風のように飛び出し、無限乃 愛(p3p004443)は華やかな光を撒き散らしながらポーズを決めた。ピンクのフリル付きワンピースがふわりと揺れる。
『非道なる悪を撃ち払う、愛と正義の閃光! 魔法少女インフィニティハート、ここに見参!』
 夜闇の中を冷たい風が吹く。馬が鼻を鳴らし、ゲーツは眉を顰めた。
「何だお前」
「……さて、行きましょうか」
 しかし彼女は眉一つ動かさない。再び背後に引っ込むと、巨大な鎌を担いで振り抜く。放たれた一撃が盗賊達へと襲い掛かる。槍兵は身を低くして攻撃を受け止めた。派手な開戦の合図。ゲーツはからから笑いながら馬の腹に拍車を当てた。
「構えろ! 纏めて撃ち抜いてやれ!」
 弩を構えた兵士達が、次々に毒矢を放つ。一発受けた馬は悲鳴を上げて仰け反った。騎士は手綱を掴んで押し留めるが、馬は既にうなだれてしまっている。一歩ずつ間合いを詰める長槍兵を前に、騎馬は進軍を渋る。槍が前では騎馬突撃もままならない。アクア・サンシャイン(p3p000041)は唸った。
「しょうもない人が、しょうもないの雇って……と思ったけど、どうやらそこそこ腕は立つようね」
 敵騎兵達は槍を構えたまま、イレギュラーズの脇へ回り込むように駆け回る。アクアは両手を構えてその掌に光を浮かべた。横槍を突こうと真っ先に飛び込んできたゲーツに、アクアは浮かべた光をぶつける。
「さあ来なさい。あなたの好きにはさせないわ」
「はっ、ガキのくせに一丁前の事を言いやがる!」
 ゲーツの騎馬は跳び上がり、アクアへと飛び掛かった。彼女は光を結んで盾を作ると、正面から一撃を受け止める。ゲーツは割り込んできた騎士の槍を払い除け、くるりと転じて再び間合いを取り直す。
 戦場が動き出した。グリムペイン・ダカタール(p3p002887)は風に毛皮を靡かせ、本をぱらぱら捲る。
「ふうむ。盗賊騎士、と。騎士とは荘厳であるか、暗き信念がなくては華が無いのだが……」
 目の前にはどちらも無い。ただの火事場泥棒。牙を剥き出して、彼はからからと笑った。
「まあ、前座が良い所だろうよ!」
「試してみるか」
 重い鎧を纏った騎士達の間をすり抜けながら、敵の軽騎兵が突っ込んで来る。グリムペインは身を逸らしてするりと躱し、一つのページを開く。
「剣ばかり持つ者に読み聞かせる本なぞないが……少しばかり言繰ってやるとしようか!」
 狼は胸いっぱいに息を吸い込むと、敵陣に一歩踏み込みながら一気に吐き出す。放たれた呼気は暴風と化し、まともに煽られた槍兵を一斉に後退りさせた。弩兵も慌てて弩を引き、咄嗟に飛び退く。その隙に、狼は傍の騎士に本から溢れる光を当てる。
「おやおや、まだ寝るには早いんじゃないかい? 今宵はここまで、というまでは起きててくれないと」
「すまない」
 気力を取り戻した騎士と騎馬は、まごつく長槍兵の懐へ飛び込もうとする。しかし、何とか弩を構えた弓兵がそんな騎士へ狙いを定めた。
 刹那、ノエミ・ルネ・ルサージュ(p3p007196)が飛び出し、バリアを張って放たれた矢を弾き返す。
「毒矢も持ち出して攻撃とは、騎士を名乗るのも烏滸がましい不義の輩ですね」
「高邁な精神も理想も、我らには関係が無い。金を貰って戦う。これが総てだ」
 ノエミは眉を寄せる。かつて天義で騎士を志した彼女にとって、目の前の盗賊騎士はまさに許されざる輩だ。祖国に巣食った悪意には思うところあれど、ひとまずはこの盗人を叩くのが先である。
「……これは、負ける訳にいきません」
 彼女は突き出された槍を受け止めると、火花を散らせながら一気に間合いを詰め、シャムシールで槍兵の顔面を殴りつけた。
 前線で騎士やノエミが押し引きしている間に、アリア・テリア(p3p007129)は騎士3人を周囲に伴い、彼女は草原を走る。騎兵は騎士達の繰り出す槍を弾きながら、彼女へ向かって突っ込んだ。アリアは盾の表面で繰り出された槍を受け流し、馬の突撃を何とか躱す。
「前線の正面を守りの堅い槍兵で押さえながら、空いた隙間に騎兵を捻じ込んでいく……堅実だねっ。そして攻撃的な作戦だよ」
 アリアが耐えたところに、騎士3人が槍を向けて後背を突こうとする。騎兵はそのままアリアの脇をすり抜け、草原の中を悠々と走り回る。その背中を目で追いかけながら、アリアは両手を広げて槍兵の列を見据える。
「けれど、身も凍るような絶望への道標……君達は果たして正気を保てるかな?」
 お腹の底から力を込めて、アリアは朗々と呪いの歌を唱え始める。音と化して響き渡る魔力に触れて、弓兵は得物を下ろし、慌てて耳を塞いだ。しかし、一人は間に合わずにその口をだらしなく緩める。
「へへ……」
 矢を番え、目の前の槍兵に狙いを定める。眼を見開いた傍の弓兵は、咄嗟に狂った仲間の横っ面を弩で殴りつけた。
「早くコイツを黙らせろ!」
 槍兵と弩兵の連携が乱れる。しかし構わず騎兵達は撤退と突撃を繰り返す。イレギュラーズの間を軽快に駆け抜けながら、その槍で小突き回す。肩を突かれたコーデリア・ハーグリーブス(p3p006255)は、仰け反りながらも銃を構えて引き金を引いた。
「盗賊騎士……ですか。火事場に乱入し、略奪を働く者など『盗賊』以外の何者でもあるものか。無辜の民を虐げるような行い、みすみす見逃しはしませんよ」
 その強い意志を魔力へ替えて、コーデリアは再び引き金を引いた。ばらばらと散らばって間合いを取り直そうとする騎兵の群れに、鋭い魔弾をぶっ放す。火花を散らせながら飛び抜け、弾丸は一頭の馬の腹を撃ち抜く。馬は悲鳴を上げながら倒れ込み、兵士もそのまま頭から草原へ突っ込んだ。ぐったりしている兵士の背中を見届けた彼女は、銃を片手でリロードしながら再び走り出した。
 軽騎兵と重騎士が入り乱れ、混沌とする戦場。セリア=ファンベル(p3p004040)は暗器を弄びながら、飛び交う矢や突っ込んで来る槍を躱していた。
「まったく……わたしだってどっちかっていうと盗む方なのに……」
 彼女は孤独なアウトサイダー。正義の国の行く末など特にどうでもよかった。しかし彼女は戦場に立っていた。目の前では、軽々と飛び跳ねた騎兵が、騎士の脇腹に槍を引っ掛けそのまま地面へ引きずり落とす。その澱みがない立ち回りを見つめ、セリアは小さく溜め息をついた。
(加減も知らない馬鹿をほっとくわけにもいかないし)
 適当に暗器の切っ先を向け、敵の隊列に魔砲を叩き込む。正面に立っていた槍兵が二人、白目を剥いてその場にひっくり返った。相変わらずアクアへの突撃を敢行し続けるゲーツ。部下を見渡し鋭く吼えた。
「ビビるな! イレギュラーズがどうした! 俺達は一体何のためにここにいる? この争いを楽しみに来たんだろ! ビビったって仕方ねえぞ!」
 ゲーツの発破に、奮い立って槍を構え直す兵士達。彼らを正面に、ロザリエル・インヘルト(p3p000015)はくすりと笑って肩を竦める。
「騎士って色々いるのねぇ、なんかみんなお堅い連中なイメージだったわ」
 桜色の髪に絡みつく蔦が僅かに揺れる。向けられる槍も構わず、彼女はその牙をぎらりと剥いた。
「お腹に入れば一緒だけど」
 突っ込んで来る騎兵。ロザリエルは茨の纏わりつく剣を構え、咄嗟に飛び退いて正面から騎兵の突進を受け止める。馬は踏ん張るが、ロザリエルは身を翻して騎兵を脇へと受け流してしまう。
「全身ぷにぷにのあなた方と違って、私はどこもかしこも堅いのよ」
 彼女の背後に立っていたセリア、愛、コーデリアが次々に魔砲を放つ。槍兵は身を固めて凌ぐのがやっとだ。愛は鎌を再び振り被り、その刃に桃色の光を宿らせる。
「騎士を僭称するような輩に渡すものは、この街にはありません。代わりに、私の愛の一撃をお見舞いして差し上げましょう」

「そのハートで愛について理解すれば、それはきっと末代まで語り継ぐ財産となるでしょう」

●雇われ騎士の望むもの
 愛は鎌を振り抜き、切っ先を地面へ突き立てる。両手で柄を握りしめて力を込めると、草原を切り裂きながら彼女は叫んだ。
「ラブリー、シュート!」
 放たれた一条の光線。草むらに土を抉り取り、深い溝を草原に作り出す。軽快に駆け抜けていた騎馬は、溝の前で慌ててブレーキをかける。目の前には愛がいる。その鎌は変わらず激しい光を放ち続けていた。兵士は慌てて手綱を引く。
「マジカル……スパーク!」
 弾けるピンクの火花。直撃を喰らった兵士は、宙へ高々吹き飛び草原の中に倒れてしまった。その光景を横目に、ゲーツはゲラゲラ笑い始めた。
「やってくれやがる! さすがはイレギュラーズだ、ひりひりするな!」
 馬上槍をぶるんと振るって、ゲーツは揚々と馬を走らせる。そんな彼の脇腹めがけて、数発の弾丸が襲い掛かる。銃を構えたコーデリアが、丸い眼を見開いてゲーツを威嚇していた。
「騎士と名乗るなら、もう少し品というものを学んできたほうが宜しいと思いますね」
 柔らかな顔立ちを引き締めて、凛とした声で挑発する。二丁の拳銃を真っ直ぐ構えて、ゲーツへ次々弾丸を叩き込んだ。
「お相手して頂きますよ、『盗賊』さん!」
「はん、言いやがる!」
 胸当てで平然と受け止めたゲーツは、馬に拍車をかけて跳び上がった。馬の体重も乗せた一撃。コーデリアはなすすべもなく吹き飛ばされ、草原の中に倒れ込む。ゲーツは歯を剥きながら見下ろした。
「どうした? その程度か?」
「まさか」
 コーデリアは歯を食いしばり、呻きながら立ち上がる。パンドラの力をその身に宿し、傷を僅かに癒して立ち上がる。二丁の銃を交差させるように構えて、素早くゲーツの懐へと潜り込む。
「貴方のような輩に、屈するつもりはありませんよ!」
 ロングスカートを翻し、高く跳び上がってゲーツに回し蹴りを叩き込む。彼が義手で受けると、そのまま彼女は身を翻し、次々に至近距離で弾丸を打ち込む。
「ぐっ……!」
 ゲーツがコーデリアに引き付けられている間に、前線でも次第にイレギュラーズ達が押し始めていた。口端に笑みを浮かべ、その身に纏う茨を揺らしながら、ロザリエルは前線へずんずんと突き進む。
「人間を襲うのって楽しいわよね……わかるわ。明日も平和な日が続いてくんだと昨日は思ってたんだろうなとか感じたり……私が来なければ家族でこの食卓を囲むはずだったのねとか思うと胸にキュンと来るわ」
 剣を振り回しながら、槍兵の列へとその身を躍らせる。鎖帷子も肉も纏めて切り裂いてしまった。倒れる兵士達を見渡し、ロザリエルはくすくすと笑ったかと思えば、不意に恍惚としたように仰け反る。
「でも、私は自分が奪う側だとか思ってる人間から奪うのがもっと好き!」
 そして再び勝気な笑みを浮かべた。茨を纏わせた掌を振り抜き、弓兵達をも切り裂く。容赦ない味方の振る舞いを後方でじっと見つめ、セリアは小さく肩を竦める。
「加減を知らないのはこっちも同じかしら……」
 相変わらず戦場を駆け巡る騎馬に、セリアはこっそり眼を向けた。心の奥で、逃げれば攻撃しないと語り掛ける。しかし騎馬の覚悟は決まっていた。愛情を込めて面倒を見てくれた兵士と共に行く。その道を違えるつもりは無いらしい。セリアは溜め息をついた。
「仕方ないわね……じゃあ、せいぜい怪我しないように気を付けて」
 暗器を向けると、上に乗る兵士に向かって魔力の塊を叩きつけた。度重なる一撃を受けて遂に限界、兵士はひっくり返って地面に落ちた。
 グリムペインは本をぱらぱらと捲りながら、足下で節を取りつつ前線の槍兵へと迫っていく。
「いいかい皆。林檎か金貨、その時選ぶのは林檎だよ」
 髪の毛をさらりと流して、唄うように唱える。周囲に子供の笑い声が響いたかと思えば、不意に周囲の草むらが縄と化し、飛び出して弓兵達の身体を縛り付ける。彼らは一斉に真っ青となり、慌てて縄を断ち切ろうとする。その隙に愛が前線へ踏み込み、鎌から放つ光の束で纏めて彼らを吹き飛ばす。
「さあ、そろそろ前座はお終いだろうか!」
 後方支援を失い怯んだ槍兵に向かって、シャムシールを抜き放ったノエミが切りかかっていく。まだまだ戦場は不慣れ。しかし何度倒されても物怖じしない正義感で彼女は歴戦の傭兵達を圧していた。
「はっ!」
 振り下ろされた刃が、遂に槍兵の一人を捉える。兜を通して脳をゆすられた兵士は、どさりとその場に倒れた。
「お得意の戦術で止めを刺された気分はどうですか? ……投降します?」
 既に優勢はイレギュラーズ側に映っていた。アリアはしたり顔を浮かべ、言ってみたかったセリフをぶつけながらゲーツへ氷の鎖を放つ。鉄の右腕を絡め取られたゲーツは、眉を寄せて歯を剥き出す。
「あん? 投降ってのは面白くねえな! まだ俺はピンピンしてるぜ!」
「いい加減にしなさいよ、まったく」
 アクアは溜め息をつくと、光の中から槍を取り出し、氷の鎖に縛られた腕に向かって放つ。風を切って飛んだ槍は、ゲーツの義手を根元から吹っ飛ばした。バランスを崩し、彼は勢いよく地面に落馬する。
「うおっ」
 義手が吹っ飛び、血が滲む頭を押さえて呻くゲーツ。冷ややかな目で彼を見下ろし、それから今なお槍や弩を構える兵士達をもぐるりと見渡す。
「もうそろそろいいでしょう? 武器を捨てて戦場の端っこにでも寝転がってなさい」
「うーむむむ……」
 ゲーツは腕をついてどうにか起き上がる。顔を顰め、アクアをじっと見上げた。彼女は呆れたように首を振る。命を奪うつもりはなかったが、これ以上戦うとなると加減しきれない。
「……まだ戦うつもり?」
 そんな含みを持たせてもう一歩詰め寄るアクア。ゲーツは口を尖らすと、胸に留めた紋章を剥がして地面に捨てる。
「仕方ねえ。ここで死んだら次の戦いが出来ねえからな。ここは降りだ」



 亡骸には筵を被せ、生き残った傭兵達は後ろ手に縛ったついでに纏めて縄でぐるぐる巻きにする。ゲーツはぐっと仰け反り、ふっと溜め息をついた。
「やれやれ、勝ったんならそのままエルベルトの奴も含めて全部やっつけてくれよ」
「そんな事おっしゃるんですか? エルベルトは雇い主でしょう?」
 ノエミは呆れて溜め息をつく。ゲーツはへらへらと笑った。
「仕事は前金で受ける主義でな。ここでお前らが負けちまったら金返せなんて言われるかもしれねえだろ? こうなった以上、皆こてんぱんにやっつけて、全部有耶無耶にしてもらわねえとな」
「まったく反省しておりませんね……」
 彼女は肩を竦めた。草むらにから小さな竜が飛び出し、ぱたぱたと羽ばたきながらノエミの肩へ留まった。その頭をそっと撫でてやりながら、ゲーツをじろりと睨みつける。
「まあ、彼の野望を挫くのも今回の任務の内ですから、言われるまでもなくやり遂げてみせますよ」
 ゲーツはそれを聞いてにやりと笑う。白けた目で見つめていたアクアだったが、ふとその視線を部下の方へと向けた。
「それだけの練度があってきっちり連携が取れてるなら、別にゲーツの下に居なくても仕事あるわよ」
「しかし国に居ちゃあ戦い以外の事もしなきゃなんねえだろ。そんなのは面倒なんだよ、俺達は」
 誰かがにべもなく応えた。彼らは生粋の傭兵、戦いが愉しくて仕方のない種族らしい。愛は溜め息をついた。
「困ったものですね。正しく愛について理解すれば、そのような事を言えなくなると思うのですが」
「別にいいけどね。今度会ったら本当に食べてあげるから」
 ロザリエルはくすりと笑う。脅しでもない、ただの本気の宣言は流石に効くらしく、彼らは慌てて縮こまる。そんな彼らを見下ろして、セリアは呆れたように口元を曲げる。
「何でもいいけど、ここは大人しくしてなさいよ」
「うむむ……」
 完全に降参したゲーツ一行。彼らを見渡したアリアは、意気込んで仲間達を見渡した。
「何とかここは収めたけれど……文字通りの内憂外患。みんな、もうひと踏ん張り、頑張ってこっ!」
「うむ、山場は越えてしまったが、話が終わるまでには間に合ったようだな。よかったよかった、助かった。さて、賊を食い散らかしてのめでたしめでたしといこうじゃないか!」
 グリムペインはぱたと手を打つ。一人の騎士は兜を上げると、ぐるりとイレギュラーズを見渡した。
「この輩の処理は我々で引き受けます。皆さんは他の戦線を支援してください」
「ええ、そうした方が良さそうね」
 アクアは頷くと、先頭を切って王都内へと走り出す。その背中を追いかけ、他のメンバーも戦場を走り去るのだった。



 おわり

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

今回はご参加いただきありがとうございました。
ひとまず成功です。ゲーツさんは元ネタが現実にも存在するので、もしよろしければ調べてみてください、なんて。

ではまた、ご縁がありましたら。

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