PandoraPartyProject

シナリオ詳細

盗賊達の歌

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

⚫魅せる美学
「さぁ、お前さん。アタイらで、やってやろうじゃないか」
 その者達は、夜の闇を愛する。
「おうよ。ワシ達がやらにゃ誰がやる」
 かの者達は、力無き存在を助ける。
「準備はいいか野郎共!」
 彼らは、国に巣食う愚者を制裁する。
「この腐った国と貴族を煙に巻いてやろうじゃないか……!」
 人は、彼らをこう呼ぶのだ。
 世直し盗賊団、と。

⚫許しません
 「私を差し置いてそんな目立つとか許せなくない? はい許せませんね、だから先生、盗賊に挑戦しようと思うんです。ね、良い考えでしょ!」
 この人毎回何なの?
 そんな表情を浮かべるイレギュラーズ達を前に、椅子を台にして立つ貴族の青年は声高に言った。
「だって人のものを盗んで英雄視されてるんだよ? そんなのいいの? 悪いことは悪いこととして悪いって言わなきゃ、あ、はいすいません椅子は台じゃないです、はい、はい……降ります……はい、以後気を付けますので何卒……」
 ノリノリの所を店員に怒られ、お説教を受ける彼は放置しておき、
「さて、理由はともかく、件の盗賊を野放しにするわけにもいかない」
 と、『黒猫の』ショウ(p3n000005)は言う。
 実際、彼らを捕まえろとの声はいくつか被害者から上がっている。たとえ今言われずとも、そのうち別の依頼となって舞い込んだであろう。と、そういうのだ。
「盗賊の次の狙いは、コイツの屋敷にある宝石箱だ」
 盗みに相当の自信があるらしく、盗賊は貴族の挑戦を飲んだらしい。
 日付と時刻の記された予告状が届いたと、現物を見せてくれた。
「大胆不敵な奴等だね。調子に乗っている、ともとれるけど」
 それもここまでだ。
 そう続けて、真四角の看板に貼り付けられた見取り図を立て掛ける。
「被害に遭った人達からの証言で、盗賊団のメンバーはリーダー格2人を含めて12人だと判明している。手口は、二手に別れて侵入し、一方が警備を掻き乱す隙にもう一方が盗み出すというものだが……」
 ここを逃せばまた別の手口に変える可能性が高く、対策を打てるのは今回だけだ。
 だから、
「そこでこの私の出番がバンバンバンというわけだばんばん!」
 そう謝罪を済ませた青年は看板の前に躍り出る。
「奴等はね? 侵入する際、必ず一方を裏口から寄越すんだ。あいにくもう一方は毎回どこから来るかわからない」
 なので、と一つ区切りを入れ、
「なので、君たちは裏口から来る盗賊団を待ち構えて叩いてほしい。その間、どこから来るかわからない一方は私の私兵が食い止めて置くよ!」
「食い止めるといっても、ただの時間稼ぎが精々だと思ってくれ。皆は裏口からの侵入者を倒したら、すぐに宝石のある部屋へ行ってもう一方を叩く。ハードな連戦になるね」
 裏口の迎撃にあまり時間をかけてしまうと、盗賊団は盗みを終えて逃げてしまうだろう。初戦は迅速に済ます必要がある。
「盗賊団は、武器を使わない肉弾戦を仕掛けてくる。人を傷つけず、目的だけを盗み出すというポリシーらしいが、そのおかげでリーダー格の2人以外は、戦闘行為そのものは得意じゃなさそうだ」
「その点みんなは斬った撃ったはお得意だもんね! でも可能なら今回は生け捕りをお願いしたいなーと思うよ! 可能ならね!」
 理由はどうあれ悪いことは悪いのだが、人を殺めているわけでもないので、恩情くらいは、と思っているらしい。
「どうやら最近は、盗賊達の動きも活発な様でね。ローレットとしても、少し調べたいので、生け捕りには賛成だ」
 話が聞ければ、なにか進展があるかもしれない。
 そう締め括って、ショウと青年はイレギュラーズを送り出すのだった。

GMコメント

『マスターコメント』
 ユズキです。
 連戦しましょう連戦。戦闘大好き。

●依頼達成条件
・盗賊の撃破&生け捕り

●情報確度
 Aです。つまり想定外の事態(オープニングとこの補足情報に記されていない事)は絶対に起きません。

●目標敵
 12人の盗賊で、リーダー格は2人。

 部下10人:
 殴る、蹴る等の近接格闘しか出来ません。

 リーダー格2人:
 格闘の心得がある男女。どうやら夫婦っぽく、戦い慣れた雰囲気があり、豪快な性格。

●ポイント
 皆さんは屋敷の内部を事前に知り尽くしています。勉強しました。
 裏口での待ち伏せから始まります。
 敵は6人と6人に別れて行動しており、裏口からはリーダー格は来ません。

  • 盗賊達の歌完了
  • GM名ユズキ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年02月24日 21時00分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

マグナ=レッドシザーズ(p3p000240)
緋色の鉄槌
ルアミィ・フアネーレ(p3p000321)
神秘を恋う波
アリシス・シーアルジア(p3p000397)
黒のミスティリオン
銀城 黒羽(p3p000505)
エスタ=リーナ(p3p000705)
銀河烈風
ルウ・ジャガーノート(p3p000937)
暴風
冠月・紫乃(p3p002038)
結果をコミットする小悪魔系妹
アイリス(p3p004232)
呪歌謡い

リプレイ

⚫ちゃんと準備しましょうね
「はいじゃあ僕はここで時間稼ぎの指揮をとりまーす来たら逃げるけどとりあえずこの部屋は誰も通さあれちょっとまってノブないよノッブ! 開かないノッブ無い!」
 裏口の広々とした風徐室で陣取るイレギュラーズの元に、邸宅内から賑やかな声が聞こえて来ていた。
「なんだか騒がしいけど、ノブってなんだ?」
 物陰に隠れて予告時間を待つ『暴猛たる巨牛』ルウ・ジャガーノート(p3p000937)が、首をコキリと鳴らしながら邸宅を見上げる。
「んーなんだろう。リーナたんわかんない」
 同じく物陰でごそごそとロープの細工をしていた『銀河烈風』エスタ=リーナ(p3p000705)が目を向けながら答えた。
 というかあんなに騒いでいていいのだろうか。と、そんな疑問はおいておいて。
「罠の具合はどうですか?」
 事前の迎撃策として罠を細工している『バーニングウィザード』マグナ=レッドシザーズ(p3p000240)へ、『流浪楽師』アイリス(p3p004232) は声をかけた。
「自動で網を落とすのは、無理そうだ」
 と、そう答えたマグナは天井を見上げる。ツルツルの大理石で出来た一面は、張り付くのも難しそうだ。
 敵が侵入したら投げる、程度のものになるだろう。
「罠は、それだけか。手伝いが要必要ねぇなら、静かに待たせてもらうぜ」
 存外にも、仕掛ける罠は少なかったようだ。『暇人』銀城 黒羽(p3p000505)は、隅の壁に身体を寄せると、ドアが開いた時に影となる部分へ身を隠す。
 そこには、『黒のミスティリオン』アリシス・シーアルジア(p3p000397)が先に身を潜めていた。
「仕掛けるタイミングは一斉に、奇襲ということでしょうか」
 まあ、気づかれたなら普通に仕掛けても問題無いでしょう。そう自答は済んでいるが、確認は大事だろう。
「はい、皆さんにあわせて、ルアミィも後衛から援護するのです」
 答えたのは、『神秘を恋う波』ルアミィ・フアネーレ(p3p000321)だった。
 杖を手に持つ彼女は、得意の間合いである距離を位置取れる、高そうな壺の側にいる。
 指定された時間まで、あと少し。
 緊張感の中、がちゃり、と、ドアの開く音が響いた。
 ピリッとする空気だが、しかし。
 開いたドアは、邸宅からの方向で、
「ふふんふーんふーんとりはずせドアノブー」
「さっきのはお前か……!?」
 丸い取っ手のドアノブ片手に来たのは『結果をコミットすふ小悪魔系』冠月・紫乃(p3p002038)だった。宝石部屋のノブを先んじて外し、侵入者を地味に嫌がらせするつもりだったらしい。
 総突っ込みにも紫乃は涼しい顔で隠れ場所へ滑り込む。
 そして、がちゃり。
 外からの扉が開いた。

⚫戦力差は明白です
 盗賊達が最初に行ったのは、飛び込みによる散会だった。
 撹乱を主とする誘導役の6人は、戦いに関してはずぶが付く程の素人だ。だが、だからこそ役割に特化した動きをしてくる。
「ちぃっ」
 ぶわっと宙に広がる網は、マグナが放ったものだ。大きい範囲をカバーするものだが、それで動きを阻害出来たのは後から入ってきた2人程だけだった。
「はっ、楽しい喧嘩になりそーだ。オレは手加減出来ないぜ!」
 自由に動く残り四人は、バラバラの速度、角度から、ただ一つしかない風徐室の出口へ駆けていく。
「盗賊盗賊盗賊、最近ずいぶんと多いな」
 だが、その入り口の前には黒羽が自然体な構えで突っ立っていた。
「殺しはしねぇ。が、罰はしっかり受けてもらわねぇとな」
 高い身長でそこに立っている。それがこれほど威圧的に感じるとは、盗賊達は思わなかったであろう。しかし、だからと言って引くことはしない。
 握り込んだ拳を振りかぶって、黒羽の分厚い胸板を叩いた。
「なんかしたか?」
 何もしていないようでその実、彼は十全な体勢でそこに居る。生半可な攻撃では、動かすことなど出来はしないだろう。
「というか! 盗みは悪いこと!」
 予想外の壁に怯む盗賊へ、リーナが言う。
 お立ち台の様な踏み台に乗って声高に叫ぶのは、糾弾する言葉だ。
「そういう認識が足りない!」
「そしてなにより――美少女が足りないの!!」
「いやなにが!?」
 便乗した紫乃が、リーナに目を向けていた盗賊の後頭部に思いきり爪先をぶちこむ。
 たまらず膝をついて頭を押さえるそれに向かい、
「とにかく! そんな盗人は、このリーナたんが許さないぞ!」
 お立ち台からふわりと飛び降りて、沈み込む様に下げた姿勢も一瞬。沸き上がる力を足に込め、一足で飛び込んでリーナが行く。
「リーナたん必殺、乱刺!」
 ランス、と読むその技は、言ってしまえばただの蹴りだ。
 クルリと回した身体の遠心力を加えた足刀が顔面を捉え、ボールの様に身体を弾ませて男が飛んでいった。
「おいマジかよ……」
 信じられないと言いたげな盗賊の一言。
 だが安心してほしい、これでも生きている。
 生きているが、ショッキングな光景なのは間違いない。
 それでも戦意を無くさないのは、プロ根性なのか意地なのか。
「はん、活きがいいねぇ。俺とも拳を交わそうじゃねぇか!」
 手近な所にいた盗賊へ身体を向けるルウ。黒羽以上の体躯を持つ彼女に、好んで殴り掛かる物好きはいるはずもない。
 いや、そもそも侵入者の6人――今はもう5人だが――は、時間稼ぎの役割なのだ。
 ならば、撹乱目当てに一度外へ……。
「どこへ行かれるのですか?」
 そう考えて回れ右をした盗賊の退路は、既にアリシスが断っていた。
 振り返った目の前にいたソレに驚き、一瞬の硬直を見せた隙を逃すほど、目の前のアリシスはもちろん甘くない。
「依頼人の要望にはお応えします」
 スラリと抜いたレイピアが、線を量産していく。それは、呼吸すらも許さない怒濤の攻撃だ。
 殺す心算はない。そのつもりだが、削る分は削らなければならない。
「アイリスさん、手分けです!」
「ええ、いけますよ」
 浅い傷を多量に刻まれた盗賊へ、肩を並べたルアミィとアイリスが鏡写しのように手をかざす。
 広がる二つの術式陣は力を蓄え、同時に発光する。
 そうして打ち出されるのは、非殺傷を目的とした光弾だ。
「うご」
 吸い込まれる様に着弾した盗賊は、間抜けな声を漏らして安らかに倒れ付した。

⚫無理でした
 網の下敷きに居た盗賊は、一連の流れを見ていた。
 見ていた上で思うことはひとつ。
 ははぁん、さてはこれ、死ぬな? だ。
「オラオラ! もう俺に挑もうって奴はいやがらねぇのか! だったら、コイツと同じにならないうちに大人しくしてな!」
 白目を剥いた大の大人を、玩具の様に片手で振り回すルウを見れば、それも仕方の無いことだろう。
 しかもテンションが高いのが、笑顔である。
「やべぇチビりそう」
 というか多分少し出た。と思う。
「寛大にも依頼人からは、生け捕りにして欲しいと要望でしたが、全員は面倒ですね」
 そう言いながらアリシスは、意識を残した盗賊を見回す。
「これ以上続けて頭目達諸共死ぬか、投降して生きるか――好きな方を選びなさい」
 本隊殲滅する気だこの女……!
 背筋をゾクリと冷やす宣告に、五体無事に立っていた1人が動いた。
「ふえぇ!!」
 それは逃亡の動きだったが、そもそも退路はアリシスが封じているし、入り口には黒羽が仁王立ちしているしで、既に行き先は詰んでいる。
 なので、結局は入り口と出口を交互に見て「ううう」と唸ることしか出来はしなかった。
「クルダ流……」
 投降しないなら最早容赦しない、とばかりに、リーナは跳躍する。
 真上からの振り下ろしで打ち込む踵落としは、
「破魔!」
 全てを破壊する鎚の様な衝撃で、盗賊を大地へ眠らせた。
「で」
 眠らせた盗賊を、輪にしたロープで縛り上げるその最中。
 残るは間抜けにも網の下に残る2人で、8人の視線がそこに注がれる。
「投降、するか?」
 見下ろしたマグナが問いかけ、ロープを両手に持つアイリスが首を傾けて答えを待つ。盗賊の次の台詞はもちろん、イエスしかなかった。
「義賊気取っても、捕獲されちゃった後に待ってるのは同じ結末なんだから、もっとまっとうに働け大人達なの」

⚫本命はそれ
 マグナとアイリスに捕縛を任せて、イレギュラーズは邸宅内を駆ける。
 宝石のある部屋は、エントランスホールにある大階段を上った先の正面、両開きドアを抜けて、右手の部屋だ。
 到着した6人がそこに辿り着いて見たのは、ノブが無いために哀れにも蹴破られてひしゃげたドアと、それを掛け布団に眠る依頼人。
 それから、今まさに宝石を盗もうとしている盗賊達の姿だった。裏口の陽動に手間取ってあと少し遅ければ、逃げられていただろう。
 足止めしていた筈の私兵の姿は無いが、気にしてはいられない。
「おう、このお宝はいただいていくぜ!」
「道を開けなァお前達!」
 集まる6人の盗賊。その中でも、一際がたいの良い、恐らく盗賊のリーダーである2人が勇ましく声を上げる。
 しかし、開けろと言われて開けるようでは、ここに居る意味はない。
「例え人を傷つけなくとも、盗みは良くないのです!」
 だから、ルアミィは杖を構えて、入り口を塞ぐ様に盗賊の前に立った。
 同じように、アリシスが隙間を埋めるように移動する。
 ……頭目2人は逃す訳にはいきません。
「なら、しょうがねぇな」
 逃がす気は一切無いという事を理解したリーダーの男は、ガリガリっと頭を掻いて、一息。
「無理矢理通してもらうとすっかなぁ……!」
 予備動作も無く動いた。
 素早く前に行くステップを踏み、短い溜めから打ち出す拳が狙うのは、ルアミィだ。
「通すかよ」
 そこへ割って入ったのは、黒羽だった。腰を落とし、腕を交差させ、どしっと構えた身体へと拳が打ち込まれる。
「ぐ、ぉ」
 それは、陽動で受けた拳とは比べるまでも無い一撃。防御などお構い無しのダメージが、黒羽の足を震わせる。
「隙有りだゾ!」
 攻撃後の硬直を狙ったリーナは、相手の横側に回り込んで行く。
 放つのは、魔力で作り出した弾丸だ。
「おいおい、アタイも混ぜとくれよ」
 それを、もう一人のリーダー格が片腕を盾にして受け止めて防ぐ。そこへ、
「なら、私も混ざりましょう」
 アリシスが掌底をぶちこんだ。
 横から打ち抜く様に、腹部へ目掛けて当てたそれは、息の詰まる衝撃を与える。
「ッは!いいねぇ……!」
 思わずたたらを踏む程の威力を受けて、なお笑う女は、下がる足を軸に利用して身体を回す。
 ターンを決める様に回って放つ横薙ぎの蹴りは、アリシスを吹き飛ばした。
「どうしたどうしたなのお前達!」
 入れ替わるようにして駆ける紫乃は、飛んだアリシスの後ろから飛び出る様に動く。
 そのまま女に向かうかと思いきや、男の方へ方向転換。したかと思えば黒羽の裏に回って、大きく壁の方へ跳躍する。
「鬼さんこちら手の鳴る方へなのー!」
 壁を蹴って山なりに浮かび、リーダー格2人を越えて行くのは、他の盗賊達のところだった。
「迎え討つぞ!」
「おうよ、ガキに何が出来――ぶへぇ!?」
 紫乃に目を奪われ上を向いていた盗賊の顎を、岩の様なルウの拳が殴り抜いた。
「俺を忘れんじゃねぇぞ!」
 衝撃にぐわんと回ったその身体は、その場で宙を一回転してうつ伏せに落ちる。
「紫乃の出番取られたなのー!?」
 そして、懸命に起き上がろうとした背中を、着地するように踏み抜いた紫乃が止めを刺した。
「……おい、目的忘れんなよお前ら!」
「お宝持って、さっさと行きな!」
 一連の流れを見た頭目夫妻は、即座に方針を改める事を決めた。
 一喝する言葉に打たれた3人の盗賊は、宝石の納められた箱を一人に託して走り出す。
「行かせな……!?」
「こっちの台詞だよなぁ、それはよ!」
 入り口の前で退路を塞いでいたアリシスは、先の蹴り飛ばしで立ち位置が変動していた。抑えに向かおうとする動きも、別の盗賊に遮られる。
「それなら……!」
 と、ルアミィが術式を開く。遠い間合いをカバー出来る、遠距離用の攻撃式だ。しかし、
「やらせん!」
 割り込んだ盗賊が庇い、逃走を担う箱を持った盗賊が入り口を抜けた。
「よし、よし!これで――」
 勝った。しまった。
 そんな思考がその場を支配する、その瞬間。
「これで、詰みです」
 声が聞こえる。
 同時に起こる淡い光と共に、入り口を抜けた筈の男が転がりながら戻ってきた。
「すみません、遅くなりました」
 それは、捕縛を完了させて駆けつけたアイリスによる、攻撃の成果だ。
「主役は遅れてやってくる、ってな!」
 唖然とする空気をぶち壊すように叫び、続くマグナも部屋の敷居を跨ぐと、凄烈な気迫を込める様にニィッと笑う。
 燃える様な闘気が、ギフトと呼応し、彼を赤く染め上げていった。
「燃えろ魂、始まりの赤! さぁ、ここからは全力で行くぜ!!」

⚫降服勧告
 開口部から出てきた敵を、アイリスが吹き飛ばす様を後ろから見ていたマグナは、おおよそ正しく状況を理解していた。
 イークイップ・レッド。
 自分にもたらされたそのギフトを使い、身体の奥から沸き上がる闘志を漲らせて突撃する。
「ちぃっ、コイツら張っ倒して逃げるしかねぇようだぜ!」
「しょうがないねぇ、やるしかないかい!」
 部屋の空間内、マグナは、見慣れた仲間以外の4人を視認し、声を荒げた2人をリーダー格だと認識した。
 だから、行く。
 杖の末端を、槍の石突きの様に構え、リーダーの夫の方へ向かった。
「させるか!」
 それを妨害しようとする動きがある。盗賊の一人、ルアミィからの攻撃をガードした者だ。
「こっちの台詞だ」
 が、その前に立ちはだかる壁がある。
 黒羽だ。
 夫の前に居た自分の立ち位置を、マグナと交換するように入れ替わる。
 行く。
「近術解放……!」
 先端へ魔力を集中させ、踏み込みと同時に放つそれは、
「スティンガー!」
「ぬぉお!?」
 夫の胴を打ち抜き、膝を付かせた。
「なんで貴族の味方なんかする!」
 感情のままに盗賊が振るってくる拳を手のひらで掴んだ黒羽は、その言葉に小さく息を吐くと、あのなぁ、と前置きする。
「義賊気取りで貴族が嫌いなのは大いに結構。だが貴族にだって家族もいれば養わにゃならん奴もいる」
 結局のところ盗賊は、嫌いな貴族と同じ、他者からの搾取をしているのだ。それを理解できていないのならば。
「それで正義の味方だと思ってんなら、笑っちまうぜ」
「そう言うこと!」
 賛同の声をあげながら、リーナが動きを止めた盗賊へ迫る。
「悪いことしたら反省だって、リーナたんが教えてあげる! 心しなさい!」
「おぉ……って、リーナたんなぞに……?」
 あれなんでこんな呼び方を……? と思う間に、彼は顔面にリーナの靴痕を刻まれる。
 気絶した彼が知ることはないが、不思議なその現象は彼女のギフトによるものだった。
「くっ、そ、よくもアタイの仲間を……許さないよ!」
「まあまあ落ち着けなのオバサン」
 倒れていく盗賊達の姿を見た妻は、怒りを顔に湛える。その激昂に答えた紫乃は、正面から走り寄った。
「退きなチビちゃん、怪我するよ!」
 そうする相手へ妻が取る行動は、蹴り上げによる迎撃だ。
 下から上へのフルスイングが紫乃を捉え、大きく宙へと小さな身体を吹き飛ばす。
「――手玉なの」
「なに!?」
 だが、紫乃はそれを利用する。
 天井に足を付け、一気に床へ跳躍。屈伸する様に膝を曲げて着地し狙うのは、リーダー以外に残った盗賊の一人だ。
 足を伸ばす動きで反動を付け、サマーソルトの要領で顎を弾き飛ばした。
「残るは2人。投稿するなら全員の命は保証しますが……続けますか?」
 8人に囲まれ、仲間の命をちらつかされたリーダー夫妻は、アリシスからの降服勧告に頷くしかなかった。

⚫終わりのその前に
「わりぃが、同業の事はあんま知らねぇな」
 縄に巻かれた計12人の盗賊を連行するまでの間。
 最近、特に活発な盗賊事情を聞くアイリスは、思うような情報は得られなかった。ただ、
「ただ、どっかの地方で暴れてたナントカって大物が幻想に来たとかは聞いたな。その影響かもしれねぇ」
「そう、ですか」
 もしそうなら、いずれ、事件になるかもしれない。
「大丈夫です? これに懲りたら、しっかり罪は償っていただきたいのですっ」
 自分達がボコボコにした盗賊に回復の奇蹟を与えながら、ルアミィは念押ししていた。
 そして、傷だらけなのは人だけではない。
「あー。なんか変形してるけど、中身はあるし、大丈夫だよな?」
 乾いた笑みのルウは、凹み歪んだ宝石箱を摘まみながらそっと台座に戻す。そこ以外に盗まれた物はなさそうだ。壊れた物は多いが。
「後始末はちゃんとしますなの。紫乃はそれなりに良い子だからね!」
 最初に取り外したドアノブの再施工を完了させた紫乃は、満足そうに一つ頷く。まあ盗賊がぶち壊してしまってノブ所ではないだろうが、それはそれ。
 かくして、義賊気取りの盗賊団は、ここに捕らえられた。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

冒険終了です。
連戦、楽しんでいただけたらなと思います。

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