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シナリオ詳細

砂漠のアングラー

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●砂漠に跋扈する
 ラサ、そのとある砂漠にて――。
 商人たちが、汗を拭きながら砂漠を行く。まだ夏の陽気にはまだ一歩、遠いが、しかし砂漠の気温は充分以上に高く、適切に水分を補給しなければ命は無いだろう。
 彼らは前方、小休止可能なオアシスを目指し、足を速めていた。一刻も早く、休息をとりたい。そんな思いが、自然、彼らの足を速める。
「休憩! 休憩だ!」
 ようやくオアシスに到着し、商人たちはわずかな草地へと腰を下ろした。冷えたオアシスの水に涼をとりながら、商人たちの内一人の男が、ふと、何かを見つけた。
「おお、水サボテンの実があるのか」
 水サボテンとは、この地方に生えるサボテンの一種だ。ひょろりとした茎に大ぶりの実をつけ、その実は甘く、多くの水分を湛える。砂漠に生きる多くの生物にとって、生命をつなぐ水であるともいえた。
 男はその実へと手を伸ばした。脳裏に、甘露とでもいうべき水サボテンの実の味を思い浮かべつつ……しかし、途端、その右手に激痛が走った。
 何かに噛みつかれたかのような痛み――男は目を見開いた。自身の手に、巨大な、醜い、魚のようなものが食いついていることに気づいたのだ。
「サ……くそっ、サンドアングラーだ!」
 男が悲鳴を上げる。慌てて殴りつけると、醜い魚類……『サンドアングラー』は男の手から離れ、再度砂地へと潜る。
 と、次の瞬間、男の眼には無数の『水サボテンの実』が目についた。
「お、おい……まさかこれ全部、サンドアングラーじゃねぇだろうな」
 サンドアングラーは、砂地に生息する怪物である。額から、水サボテンの茎と実によく似た疑似餌をつけ、砂の中に潜み、近寄ってきた獲物を捕食する。
 それは人も例外ではなく、このように手を齧られたり、集団で襲われた際には死亡するケースは稀ではない。
 それが、オアシスに大量に存在するようだ。
「刺激すんな! 一斉にかかられたら全滅するぞ!」
 慌てた仲間たちが声をあげる。かくして休憩もそこそこに、商人たちは一斉にオアシスから逃げ出したのであった。

●あんこう釣り
「あっちー……」
 うんざりするような様子で、『小さな守銭奴』ファーリナ(p3n000013)は言った。
 ラサは砂漠の入り口に集まったイレギュラーズたちもまた、同様の感想を抱いたかもしれない。
「あー、すみません。えーと、あれですネ。依頼の確認ですね」
 汗を拭きつつ、ファーリナは懐から紙と、何やら紙に包まれた丸い塊を取り出した。
「えーと、まず。ラサの砂漠のオアシスに、サンドアングラーと言う怪物の類が大量発生してしまったようです。疑似餌を利用した狩りを行うのですが、その疑似餌につられて手を出してしまえば、よくて大怪我、悪くて命を落とす……と言うわけで。砂漠の往来が多いラサとしては、休憩地でもあるオアシスを占拠されると困ってしまうわけです」
 そこで、イレギュラーズ達には、このサンドアングラーたちを撃退してほしいのだという。
 サンドアングラーの総数は不明だが、大体20匹前後は居るだろう……との事。問題は、サンドアングラーの疑似餌は、相応の知識がなければ水サボテンの実とほぼ見分けがつかないため、釣りだしに時間がかかるだろうという所だ。
 時間がかかれば、それだけ砂漠の熱気により体力が奪われていくだろう。オアシスで適宜休憩をとってもよいが、時間をかけ過ぎた故にサンドアングラーたちが異常を察知し、逃げられてしまってはそれも問題である。
「そこで、まぁ、最後の手段ではあるのですが。この小型の……音波爆弾? って言うんですかね? これは地中に埋めて数秒すると、地中内に振動と音を響かせるらしいんですよ」
 これを使えば、砂中のサンドアングラーたちは一斉に地上へと飛び出してくるのだという。
「ただ、これを使うと、一斉にサンドアングラーたちは皆さんの方へと向かってくるでしょう。一匹一匹やっつけるのは簡単でしょうけど、一気に囲まれたらさすがにマズい……と言うわけで、ある程度数を減らしてからとか、全部倒せたか確認するためとか……そう言う用途につかうのをお勧めしますよ」
 と、ファーリナはイレギュラーズたちへ、『音波爆弾』を手渡した。
「あ、それは一個しかないので、取り扱いには気を付けてくださいな。んでは、しっかり働いて、がっぽりと儲けてきてください! 私は涼しい所で皆さんの凱旋をお待ちしておりますので~」
 そう言ってふらふらと日陰へと隠れつつ、ファーリナはイレギュラーズ達を送り出したのであった。

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 砂漠に潜む、あんこう(アングラー)。
 これを撃退してください。

●成功条件
 すべてのサンドアングラーの撃退

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●状況
 ラサはとある砂漠にあるオアシスが舞台となります。
 オアシスのサイズは、おおむね直径500mほど。いくつかの小さな湖がぽつぽつと点在しており、そこには多くの『水サボテン』と、水サボテン風の疑似餌を垂らした『サンドアングラー』が存在します。このサンドアングラーを見つけ出し、すべて撃退することが皆さんの任務です。
 サンドアングラーは、基本的に、疑似餌に触れることで砂から飛び出してきます。
 水サボテンが疑似餌か否かは、専門知識を持ち合わせていなければ、判別は困難でしょう。持っていたとしても、一目でわかる……と言うものでもありません。
 最終手段として、水サボテンを片っ端から焼き払う、と言うのも手かもしれませんが、水サボテンは砂漠を行くすべての生命の命の水であり、ついでに水分豊富な水サボテンは燃えにくいため、あんまり推奨はされません。
 また、砂漠は非常に高温であり、対策がなければ、時間がたてばたつほど、HPとAPがじりじりと少しずつ減っていきます。これは、ギフトやスキルで何らかの対策が施されていたり、定期的にオアシスで休憩をとることで防止できますが、あまり休憩ばかりしていると、異変を感じたサンドアングラーたちが逃げ出してしまうかもしれません。
 なお、皆さんには『音波爆弾』が一つ、渡されています。
 これを使うと、地中にいるすべてのサンドアングラーたちが、例外なく一斉に飛び出し、皆さんに向かってきます。
 初手で使用するのも一つの手ですが、そうなると20体近いすべてのサンドアングラーを相手取る必要があり、苦戦は免れないでしょう。使用するタイミングが重要になるかと思います。
 なお、今回のシナリオに関しては、『戦闘中に発生したBSや減少したHP、APなどのステータスは回復せず、次の戦闘でも継続する』ものとします。

●登場エネミー
 サンドアングラー ×20体前後
 特徴
  砂漠に潜むあんこう。総数は20体前後と思われますが、正確な数は不明です。
  パラメーター的には、イレギュラーズより格下の相手です。1~2匹が相手なら、余裕を持って戦えるでしょう。
  基本的には近接物理攻撃を主体に行動します。
  その他、中距離単体を射程とし、『乱れ』を付与する『砂かけ』や、
  近距離単体を射程とし、『出血』を付与する『噛みつき』を使用します。


 以上となります。
 それでは、皆様のご参加をお待ちしております。

  • 砂漠のアングラー完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年06月29日 22時20分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ラダ・ジグリ(p3p000271)
灼けつく太陽
ヨハン=レーム(p3p001117)
おチビの理解者
グリムペイン・ダカタール(p3p002887)
わるいおおかみさん
ルフト=Y=アルゼンタム(p3p004511)
ミラーカ・マギノ(p3p005124)
森よりの刺客
リナリナ(p3p006258)
ラナーダ・ラ・ニーニア(p3p007205)
必殺の上目遣い系観光客
サクラ・アースクレイドル(p3p007248)
平穏を祈る者

リプレイ

●灼熱の砂漠で
 暑い――いや、熱い。
 砂漠に足を踏み入れたイレギュラーズ達は、すぐさまそう感じたかもしれない。茹だる様な暑さ、と言う言葉もあるが、これは茹だるを通り越して、遠火で焼かれているかのような暑さだ。
「なるほど。こいつは準備なしじゃあ自殺志願ものだな」
 『寂滅の剣』ヨハン=レーム(p3p001117)が、呆れたようにぼやいた。過酷な場所における耐性を所持しているヨハンであったが、それでも休憩なしでは、長い事は耐えられまい。ましてや、そうでない仲間たちは……言うまでもないだろう。
「なにも、こんな熱い所で待ち伏せなんてしなくたっていいのに、もう!」
 フードを深くかぶり、太陽光から身を隠すのは、『ツンデレ魔女』ミラーカ・マギノ(p3p005124)である。肌を隠すのは、吸血鬼の血をひくと自称するが故……と言うわけではなく、こうも強い太陽光線を浴び続けていれば、よくて重度の日焼け、悪くて火傷にまで発展しかねないからだ。
「暑いだけなら大丈夫! でも、砂漠のお日様は、肌を焼く! 火傷! 危ない!」
 さすがの『原始力』リナリナ(p3p006258)も、直射日光対策は行っているようである。原始時代的な世界からやってきた、と言うリナリナの言である。近代よりは過酷な世界からやってきたであろうと言う説得力がある。
「可能なら、夜に動くのも手だったかもね。ただ、相手が夜まで待っていてくれるかはわからないからね」
 『わるいおおかみさん』グリムペイン・ダカタール(p3p002887)は肩をすくめた。アラビアンナイトの世界、と言えば聞こえはいいが、実際に来てみれば、やはりそこには厳しい現実と言う物があるものだ。胸中で、ダカタールは嘆息する。
「夜は夜で、厄介だ。気温は一気に下がり、寒さを感じるほどになる。活動しやすくなった分、毒を持つ生物も動き始める……一長一短。砂漠での活動は、難しいものだよ」
 『静謐なる射手』ラダ・ジグリ(p3p000271)が言った。ラサの交易商人一家の出身と語るラダである。行商により、様々な場所へと移動するためか、その言葉には実感があった。
「……まさに命がけで、商人たちは砂漠を渡り、物資を運んでいるわけだな……」
 小さく呟くように、ルフト=Y=アルゼンタム(p3p004511)が言った。その足元には、すでに召喚された式神たちが、せめてもと葉っぱで仰いで、ルフトへと風を送っている。
「砂漠で生きる、か……サンドアングラーも生きるため……だけど、ボクらも、ただ黙って食べられてやるわけにはいかないからね」
 『鞄はまだ空っぽ』ラナーダ・ラ・ニーニア(p3p007205)の言葉に、イレギュラーズ達は頷く。いうなれば、これも生存競争だろう。生活のためのルートが出来上がっている以上、そこを害されたとなれば、人は生きるためにも戦わなければならないのだ。
「そうですね……ワタシたちにも、彼らにも、事情はある……穏便に解決できないのは残念ですが、ワタシも微力ながら、頑張るのです」
 『平穏を祈る者』サクラ・アースクレイドル(p3p007248)が、決意を新たに、そう言った。今はこうして、衝突することしかできぬ以上、砂漠を行く多くの人々の為、力を奮うしかあるまい。
 さて、イレギュラーズ達は、まず中心にあるオアシスへと到着した。砂漠でありながら、水があるせいだろうか、些かの涼しさと、群生する木の影もあり、多少は過ごしやすい。休息をとるなら、ここでとるのが一番だろう。
 イレギュラーズ達は、まずここに休憩設備を設営した。テントの設営には、ラナーダのアイテムなどが重宝している。ここを拠点として、アングラーの探索に赴く予定だ。
「さて、では、予定通りに行こうか」
 ラダが声をあげるのへ、仲間たちは頷く。イレギュラーズ達の作戦だが、まずこの地点を中心に、エリアを北東・北西・南東・南西の四つに分けた。そして、4人ずつの二班に分かれ、それぞれ東側と西側のエリアを探索。最終的に中央で合流し、音波爆弾を使用した仕上げにかかる、と言う物だ。
 二手に分かれることによるリスクはあったが、それよりもタイムリミット――主に強烈な日差しによるダメージ――がある。合間に休憩をはさみつつ探索する手段としては、有効な作戦と言えただろう。
「アングラー退治だな! ……ところで! アングラー、食べられるか!?」
 リナリナがわくわくとした様子で声をあげるのへ、ダカタールは肩をすくめて、首を振って見せた。
「おそらく、生態的にはチョウチンアンコウに近いのだろうね。チョウチンアンコウは、食用には適さないそうだよ」
 うえー、と残念気に唸るリナリナ。
「そうでなくても、人を襲って食べるような生き物、食べたいとは思わないわよ……」
 ミラーカがぼやくのへ、ヨハンが答えた。
「まぁ……その辺は、魔物を食うような文化もあるからさておいて」
 咳払いなど一つ、続ける。
「なんにせよ、お互い、無茶はするなよ。俺でもきつい砂漠だからな」
 ヨハンの言葉に、ルフトはゆっくりと頷く。声をあげたのは、サクラだ。
「はい。くれぐれも、油断はしないのです」
「依頼に出て、こっちが行き倒れ……なんてのは、冗談じゃないからね」
 ラナーダが、言った。
「では、行こうか、皆」
 ラダの言葉を合図に、かくしてイレギュラーズ達による、アングラー釣りが幕をあげたのであった。

●Aチームの熱闘
「サクラ、きちんと水分はとっているかい?」
「は、はい! 大丈夫なのです」
 北東エリアを探索する一行。ラダの言葉に、サクラはこくこくと頷いた。その表情は、熱気により些か赤みがさしているようだ。
「無理する、メッ! だぞ!」
 リナリナが言うのへサクラは苦笑する。
「ほんとに、大丈夫ですよ。水サボテンもいただいていますし……」
 そう言って、幾つかいただいていた水サボテンの実を、取り出した。その実をナイフで傷つければ、甘く、しかしさっぱりとした水が染み出して、それを口に含めば、体温を静め、のどを潤してくれる。
 このメンバーの中では、酷暑に対して慣れがないのは、おそらくサクラであっただろう。
「今回は、アングラーとの根競べだからな。こっちが先にネをあげたら、意味がない」
 言いつつ、ヨハンは額の汗をぬぐった。太陽は確実に、イレギュラーズ達の体力を奪っていく。
「そうだな……ふむ、この辺りに水サボテンの群生地があるようだ」
 手にした地図を確認しつつ、ラダは声をあげた。果たしてそこには、大ぶりな水サボテンと、その実がいくつも実っているように見える。この内のいくつかが、サンドアングラーなのだろうか?
「それじゃあ、確認してみますね……水サボテンさん、あなた達の近くに、見覚えのない……突然現れた仲間はいませんか?」
 サクラは声をあげて、水サボテンたちへと問いかける。水サボテンの実に擬態するサンドアングラーである。見分けることは難しいが、水サボテンに直接、心当たりを聞いてみるのが手っ取り早いだろう。やみくもに触れて、水サボテンを傷つける危険性も避けられると言う物だ。
「ある」
「となり」
「へんなの」
 断片的なものであるが、多くの水サボテンから返答が返ってくる。サクラは頷き、例を告げると、異常が見受けられたポイントを、仲間たちへと告げる。
「わかったぞ! 行け、変な声のロバ!」
 と、リナリナは変な声のロバ……メカ子ロリババアを、怪しい水サボテンの実へとけしかけた。メカ子ロリババアは、奇怪な鳴き声をあげなら、水サボテンの実に突撃する。これは、サンドアングラーを釣りだす囮である。
 と――、がきん、と言う音と共に、メカ子ロリババアに何かがかみついた。見れば、それは大口を開いた、まさにアンコウのような生き物だ。それは、しばらくガジガジとメカ子ロリババアに噛みついていたが、それが食えない物体だとわかると、唐突に興味をなくしたようだった。齧られたメカ子ロリババアが横転する。
「出ました……!」
 サクラが声をあげる。それに合わせたかのように、付近に潜伏していた二体のサンドアングラーが姿を現した。びちびちと、砂のを上を泳ぐように身体をくねらせたサンドアングラーは、イレギュラーズ達を獲物と見定め、こちらへと突撃してくる。
「釣り上げ成功……! さぁ、次は駆除だな! かかってきな!」
 ヨハンが叫び、前へ出る。挑発されたサンドアングラーたちは、ヨハン目がけて殺到する。
「あんぐらー、食べられないのに迷惑だな! やっつける!」
 リナリナが手にした『掘り出し物 』――そう言う名前の武器なのだ、何せ掘り出し物なので――を振るう。何もない空間を殴りつけたはずであったが、どういうわけか、一体のサンドアングラーがまるで殴られたかのようにその身を蠢かせた。原理は不明でであるが、リナリナがそう言うことができるのだから、まぁしょうがない!
「援護します! 祈りを……マーチにのせて!」
 高らかに歌い上げる勇壮なるマーチが、イレギュラーズ達の心と体を鼓舞し、その動きを軽やかに加速する。
 ガチリガチリと歯を鳴らして襲い掛かってくるサンドアングラーを、支援を受けたヨハンはその手にした大剣、『月明かりの剣』で受け、そして薙ぎ払った。日中に輝く月光の如き刃が、サンドアングラーたちを次々と切り裂いていく。
「ヨハン、信頼してくれ。下手に動くなよ」
 と、ヨハン――そしてサンドアングラーの方へ、ラダは銃口を向ける。ヨハンはその言葉通りに、動かなかった。途端、放たれた無数の銃弾は、ヨハンの身体を的確にさけ、ヨハンがひきつけていたサンドアングラーたちをまとめて撃ち貫いた。ぎゃぎゃ、とか細い悲鳴を上げて、サンドアングラーたちが次々と砂の上にその死体をさらす。
「……ふぅ。疑ってるわけじゃないが、あんまり味わいたくないスリルだな」
 苦笑しつつ、ヨハンは笑った。ラダの腕をもってすれば、弾丸の驟雨を敵にのみ命中させることなど容易い事だろう。
「必要な時には大盤振る舞い……商売と同じさ。損害が出ないようにするのもな」
 くすりと笑みつつ、ラダが答える。
「あんぐらー、まだいるな! 次、行くぞ!」
 リナリナが、おーっ、と声をあげる。その言葉に応じて立ち去ろうとするイレギュラーズ達。その背中に、水サボテンたちから「がんばれ」と声がかけられたのを、サクラは聞いていた。

●Bチームの激闘
「……さぁ、来い。お前たちの狩猟、成功できるものとは思うな」
 静かに――しかしよく通る声をあげる、ルフト。その声につられるように、2匹のサンドアングラーが、激しく砂を泳ぎながら襲い掛かる。
「ほら、逃げなさい! 巻き込まれるわよ!」
 魔弾を放ちつつ、ミラーカが叫んだ。逃げ惑うように、『ほうき』を媒介に作り上げた練達上位式が、わたわたとした様子で走り去る。放たれた魔弾が、サンドアングラーに直撃する。ぎゅ、と言うような声をあげて身をよじらせる。
「まったく、見ていて可愛らしいものではないわね……!」
 むぅ、と口をとがらせるミラーカ。
「まぁ、同感ではあるね。あまり触りたくないものだが……」
 残るもう一匹のサンドアングラーに、ダカタールは手を触れた。そこから、サンドアングラーの身体へと注ぎ込まれるのは、ダカタールの魔力である。注ぎ込まれた魔力は生命活動を逆転させ、暴走させる。ぎゃあぎゃあと、暴走する生命力に苦しむように、サンドアングラーはのたうち回った。魔力を注がれた接触点が、黄金色に輝く。
「連戦続きだからね……回復、行くよ!」
 ラナーダは、懐より取り出したポーション瓶のふたを開けると、一気に仲間たちへと向けて振りまいて見せた。中の薬液が傷口に触れるや、瞬く間にその傷をいやしていく。
「……助かる」
 呟くように言うルフトに、未だ息のあるサンドアングラーが襲い掛かる。寸での所でその攻撃を受け止めるや、がちがちと鋭い歯を、ルフトの眼前で打ち鳴らした。
「……『雑魚』め……!」
 手にした短刀で、サンドアングラーを切り裂いた。身に纏う『「銀空の騎士」と「黒衣の軍師」』、その裾とフードがふわりと風にたなびき、その隙間から、ルフトの顔を垣間見せた。斬りつけられたサンドアングラーは、ぎっ、と断末魔を残し、砂の上に死体を横たえる。
 軽く息を付きながら、ルフトは、乱れたフードを深くかぶりなおした。
「これで……7体目かしら」
 ミラーカが言った。現在、南西エリアを捜索中のBチームは、数度の戦闘を経て、総計7体のサンドアングラーを討伐している。
「首尾は上々、と言った所だね。そろそろ休憩もかねて、合流した方がいいかもしれない」
 ダカタールが声をあげるのへ、ミラーカが頷いた。
「了解よ。向こうにも伝えておくわ」
 と、テレパスとファミリアを利用し、Aチームへと連絡を取るミラーカ。
「それにしても……連戦となると、きついね」
 慎重に水サボテンの実をとりながら、ラナーダは言う。実際、数回の戦闘と、そして照り付ける日差しは、確実に、イレギュラーズ達の身体から、体力を奪っていった。
「移動の前に、簡単に傷の手当と……水分をとっておこう」
「そうだな。渇きを覚える前に、水分はとっておくべきだろう」
 ラナーダの言葉に、ルフトが頷いた。差し出された水サボテンの実、その皮をナイフで切り裂いて、湛えられた水分を飲み干す。
「いやぁ、やはり、砂漠と言う物はつらいものだね」
 水分補給をしつつ、ダカタールは肩をすくめた。
「ええ、まったく……水じゃなくて、乙女の血が飲みた……いいえいいえ! なんでもないわ!?」
 と、つい漏れ出る血液嗜好症を振り払うミラーカである。そんな様子に、仲間たちは苦笑を浮かべて見せるのであった。

●最後の大狩猟
「ふぅ……生き返るね……」
 オアシスの水で顔を洗いながら、ラナーダが言った。オアシス、そしてテント内では、イレギュラーズ達が休憩をとっている。
 あらかたの探索を終えたイレギュラーズ達は、中央オアシスへと帰還し、合流。休憩を取りつつ、お互いの戦果を報告していた。
「トータル、15匹か。予定通りだね」
 ダカタールの言葉に、ルフトは頷く。
「となると、残りは5匹前後、って所か。少なければいいんだが……」
 ヨハンが言う。確か、依頼書によれば、20匹前後のサンドアングラーが砂地に潜んでいるはずだ。
「食えない奴だから、多くてもうれしくないな! この実だったら、沢山ほしいけど!」
 リナリナが、水サボテンの実を齧りつつ言う。食えるか食えないかがリナリナの判断基準であるが、実際、これ以上戦う数は、少ないにこしたことは無い。
「でも、もう一息なのです」
 サクラの言葉に、イレギュラーズ達は頷く。ここからが最後の仕上げにして正念場だ。
「あたしたちの方も、万全とはいいがたいものね。ここで終わらせておきたいわ」
 ミラーカが言う。イレギュラーズ達の消耗も、決して軽いものではないのだ。
「いずれにしても、これが最後だ。さっさと決めてしまおう」
 そう言って、ラダが取り出したものは、音響爆弾と呼ばれるものだ。爆発すると、超音波のような振動を発し、砂の中にいるサンドアングラーたちを刺激、一斉に飛び出させるという。
「それじゃあ、仕掛けよう。気を付けて」
 ラダは、足元の砂を掘ると、中に音響爆弾を仕込んだ。爆発の仕掛けを作動させ、手早く埋め込み、距離をとる。
 しばしの後に、ぼん、と言う音が響いた。人の耳には聞こえないようだが、大きな振動が、砂の中を駆け巡ったようで、現にオアシスの湖面には、細かい波が立っている。
 武器を構えて、数秒、待つ。と、遠くより、こちらに向けて地を泳ぎ走ってくる、サンドアングラーの姿が見える!
「4匹か! 少ない方で助かったな!」
 ヨハンは武器を振るい、大声をあげた。自らを盾に、サンドアングラーたちを引き付ける。
「あんぐらー、やっつける!」
 リナリナの謎の一撃が、駆け寄るサンドアングラーに突き刺さる。
「さぁ、これで最後だ、アンコウども!」
 気合と共に、挑発の声をあげるルフト。ルフトへと襲い掛かるサンドアングラーを、ルフトは短刀を使って叩き落す。
「これで最後よ! 撃ち落とすわ!」
 叩き落されたサンドアングラーに、ミラーカの魔弾が突き刺さった。それがトドメとなって、サンドアングラーが動きを止める。
「こちらもそろそろ限界なのでね、少し楽をさせてもらおうかな」
 ダカタールは、生み出した疑似生命――砂漠の砂で作り上げたサンドゴーレムをけしかける。殴り掛かられたサンドアングラーは、そのままもんどりうって絶命する。
「残り2……これで、1!」
 ラダが放つ銃弾が、残るサンドアングラーの内一体、その頭を撃ち抜いた。ぎゅう、と息を吐いて、サンドアングラーが脱力する。
「もう少し……皆さん、頑張ってください!」
「あと一息だよ!」
 サクラ、そしてラナーダの懸命の回復スキルが戦場を飛び交い、イレギュラーズ達の最後の踏ん張りの力となった。
「お前で、ラストだ!」
 振りぬかれた、ヨハンの月光の刃が、サンドアングラーを切り捨てる。ぎょば、と声をあげて、サンドアングラーが地へと叩きつけられた。

 そして砂漠には静寂が戻った。
 だが今は、地の底に潜む悪意は存在しないのだ。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ご参加ありがとうございました。
 皆様のおかげで、砂漠は再び、あるべき姿を取り戻すことができました。
 商人たち、そして砂漠に生きるもの……水サボテンもまた、皆さんに感謝を抱いていることでしょう。

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