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シナリオ詳細

The shortest way

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●パサジール・ルメス
「センパイ達、お疲れ様っす」
 ちょっと暑いっすねと手で自らを扇ぐ『パサジールルメスの少女』リヴィエール・ルメス(p3n000038)は窓の方を見遣る。外は見事な快晴で、残念ながらローレットの窓を開けたとしても吹き込む風は無さそうだ。
「確かにこんな陽気じゃ、急ぎたくもなるっすよね。……と、今回は友人たちのキャラバンから依頼っす。物資の運搬のために手を貸して欲しいって」
 それはこんな季節──春から夏への移り変わりを感じさせる近頃だからこそ。様々な物資を持つキャラバンとしては、それらをいち早く次の目的地まで運びたい。そうでないと足の早い、腐りやすい食材などはダメになってしまうから。
「キャラバンは海洋から鉄帝へ向けて、最短ルートを通りたいらしいっす。でも悪い人もそういうルートをよく知ってるっすから、足止めを食らう前にこちらから打って出たいと」
 つまるところ、イレギュラーズに求められているのは『通行予定のルートを先行し、キャラバンへ危害を加えかねない存在の牽制・撃退』である。キャラバンは悪者が戻ってくる前に、イレギュラーズを追いかけるようにしてそのルートを通るつもりのようだ。
 地図を広げたリヴィエールは「ここから、ここを通って……ここっす」と指で海洋から鉄帝までのルートを示す。その中でも肝となるのは船着場を出てから先──草原を突っ切り、そして鉄帝の前まで続く森だろう。
「今、情報屋の先輩たちに情報収集をお願いしてるっす。……あ、噂をすれば!」
 ぱっとローレットの入り口を見たリヴィエール。その先には疲れた顔の『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)と、黄色く潰れた物体がその足元にいた。
「こんなにドジっ子とは思わなかったのです……」
「ぴぃ……すみません……」
 黄色く潰れていたそれがもにょりと身を起こす。それは少し前からローレットでちらちら姿を見ている──かもしれない、ブラウ(p3n000090)である。
「お疲れ様っす、センパイたち! ……大丈夫っすか?」
「酷い目にあったのです。でも、ちゃんと2人……2人? で情報を持ち帰ってきたのですよ!」
 ひよこ姿のブラウを人と数えるのか、という問いは置いておいて。イレギュラーズたちは情報屋の話に耳を傾けてみることとした。

GMコメント

●成功条件
 通行予定ルートの偵察、及び撃退・牽制

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●行程
 船着場を出たところからスタート。ずっと快晴でちょっとばかり暑いです。
 森に入るまでは草原が続きます。視界良好。植物系のモンスターがいる可能性があります。
 森に入ればあとは鉄帝の町に着くまでひたすら森です。少し暗め。視界を遮るほどではありません。盗賊や獣が出てくる可能性があります。
 順調に(何にも出くわさず)行けば朝出て夕方、陽が傾く前に着くと思います。

●エネミー
・植物系モンスター
 草木に隠れていると思われます。ブラウが蠢く蔦に捕まり、すんでの所で逃げてきました。
 素早く、しかし身を守ることには長けていないようです。

・獣
 恐らく食べたことがあるのでしょう。何とは言いません。丸々したブラウよりユリーカを先に狙ってきました。
 その牙や爪は大変鋭く、獣の表皮は思っている以上に硬いとのこと。バールでも倒せなかったと悔しがっていました。

・盗賊
 ユリーカ・ブラウ共に遭遇していません。ただ、絶対森に潜んでいるという目撃証言を得ています。
 10名ほどで徒党を組んでいるそうですが、連携などはイマイチ。しかし個々の戦闘技術はあまり低くないようです。
 どの盗賊も近接武器を持っているそうです。

●ご挨拶
 愁と申します。やられる前にやってしまえ。
 それぞれのエネミーはある条件下において襲ってきやすくなります。撃退・牽制が捗るかもしれません。
 連戦になりますのでペース配分にお気をつけて。
 ご縁がございましたら、どうぞよろしくお願い致します。

  • The shortest way完了
  • GM名
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年06月17日 23時40分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

河津 下呂左衛門(p3p001569)
武者ガエル
ヨルムンガンド(p3p002370)
暴食の守護竜
グリムペイン・ダカタール(p3p002887)
わるいおおかみさん
秋空 輪廻(p3p004212)
かっこ(´・ω・`)いい
黒星 一晃(p3p004679)
黒一閃
御天道・タント(p3p006204)
きらめけ!ぼくらの
矢都花 リリー(p3p006541)
ゴールデンラバール
ノエミ・ルネ・ルサージュ(p3p007196)
恩に報いる為に

リプレイ

●キャラバンに身をやつし
 ──お友達のキャラバンの馬車の特徴、教えて貰える様に頼めないかしら?
 リヴィエールより依頼人のキャラバンの特徴を聞きだした『ナインライヴス』秋空 輪廻(p3p004212)は、自らが改造を施した馬車を見上げる。
「……こんな感じでどうかしらね? 違和感とか、無いかしら?」
「はい! どこからどう見てもキャラバンですよ!」
 力強く頷いた『恩に報いる為に』ノエミ・ルネ・ルサージュ(p3p007196)は周りにいるイレギュラーズたちを見て姿勢を正す。その瞳に宿るのは憧憬──憧れだ。
「このノエミ・ルネ・ルサージュ、憧れのローレットの皆さんと共に戦えること、光栄に思います。よろしくお願いしますね!」
 元はローレットに憧れを抱く騎士見習い。今となっては憧れていたローレットに属する特異運命座標。初めて受ける依頼に、ノエミはどこか高揚感を感じていて。そんな初々しい姿に仲間たちが応じる──その中で。
「じゃ、あたいは馬車の上で見張り的な感じで……」
 非常に気だるげな様子で改造馬車の上へ登る『壺焼きにすると美味そう』矢都花 リリー(p3p006541)。馬車の持ち主である彼女は、しかし改造・運転をするつもりはない。その点に関しては『馬車を持ってきた』だけで十分役割を果たしたんじゃないか、なんて。
(そもそも、半日とか超長いし……何でそんなメンドーなとこ通るかなぁ……)
 サクッと終わってのんびりごろごろしていたいのに──そんな思考の末、怒りの矛先が向くのは道中の敵たちである。もう邪魔をしないようにボコ殴りの刑に処して、2度とこんな依頼が舞い込まないようにしたい。
 それでも今回のキャラバン作戦を考えれば多少は楽だ、とリリーは屋根の上に寝っ転がり、本を取り出した。
「植物と、獣と、盗賊か。なんであれ、依頼されたからには成功させなければな」
「ええ。3つの敵に襲われる可能性があるけどそれでも強行したい……まぁ、私たちの腕を信じているとプラス方面に受け取って良さそうだしね」
 『墨染鴉』黒星 一晃(p3p004679)は情報屋たちが持ち帰ってきた情報を思い返しながら呟き、輪廻が同意の声を上げる。
 急がば回れという言葉があるが、兵は拙速を貴ぶとも言う。商業を生業とするパサジール・ルメスの民がより早い道を選ぶのは当然だろう。そのためにも確実に露払いしなくては。
「危険だと分かっているのに護衛を雇って突っ切ろうとは、商魂たくましいでござるな。だがそのおかげで、人々の元に物が届く」
 感謝の意を示す『武者ガエル』河津 下呂左衛門(p3p001569)は自らの連れてきたパカダクラを馬車へとつなげる。「よろしく頼むぞ」とその背を叩けば、パカダクラは了解したと言うように鳴き声を上げた。
 また、一晃の言葉に『わるいおおかみさん』グリムペイン・ダカタール(p3p002887)は小さく笑みを浮かべてみせて。
「ふふ、お肉とサラダ待っている。そして背中の荷が魚だったらコース1つの出来上がり、だねえ。ああ、でも残念。流石に依頼人の荷は食べられないか」
 そんなことをしたら怒られてしまうだろうし、何よりストーリーを破綻させることはグリムペインの本意ではない。
「魚でも、そうでなくても、食べ物を美味しい状態で届ける為なら仕方ないな……! 必ず完遂してみせようじゃないか……!」
 うんうんと自分の言葉に頷く『暴食の守護竜』ヨルムンガンド(p3p002370)。食べる事が大好きな彼女にとって、食べ物が理由として挙げられれば危険を承知で近道を、というのも致し方ないというもの。それに情報屋の2人──ユリーカと”美味しそうな”ブラウが危ない所を頑張ったというのだから、こちらもオーダークリアしないわけにはいくまい。
 今頃ローレットではひよこがくしゃみでもしているかもしれないが、それはさておいて。
「それじゃあ、私が運転しよう……!」
 よろしくなぁ、とヨルムンガンドが馬車の引き手となったパカダクラに挨拶をし、数名は警備役として馬車の周りへとつく。そして殿を務めるは──。
「オーッホッホッホッ!」
 ──そう、この高笑いの主。
「ええ、ええ! 長旅でも心配はご無用! 皆様存分に腕を振るって下さいまし!」
 軽やかな指パッチンと共にどこからともなく、幾つもの声が大合唱する。
「そう、このわたくし!

   \きらめけ!/

   \ぼくらの!/

 \\\タント様!///

 ──が! 皆様を癒しますわー!」
 本日もきらめくサニーシャイニージャーニーポーズ! 『きらめけ!ぼくらの』御天道・タント(p3p006204)へ拍手喝采が降り注ぐ。
「馬車の改造もバッチリ! どこからどう見てもキャラバンに見えますわね!
 さあ、皆様の準備ができたら出発致しましょう!」
 タントの言葉に一同が頷く。早く着いたとしても半日の道のり、スタートをあまり遅らせるわけにはいかないだろう。
 こうしてキャラバンに偽装したイレギュラーズ一行は、海洋より鉄帝へ向けて動き出した。

●草原
 ゆっくりと車輪の転がる音が響く。あたりは至って平和な草原で、日に当たっている徒歩の者や御者をしているヨルムンガンドは、ほんの少しばかりの暑さを感じていた。
「あ、ルーイ!」
 ノエミの言葉に振り返ることもせず、傍にいた小さな竜が──正確には竜らしき生き物だが──ふわふわと咲いていた花の方へ。気まぐれなルーイだが、その様子は他の脅威を感じていないとも取れるだろう。
(……至る場所で微かな音が聴こえる。この周囲に住まう動物たちか、それとも──モンスターか)
 馬車の中で耳を澄ませていた一晃は御者台のほうへと小さく顔を出し、音のことをヨルムンガンドへ話す。動物かモンスターかなど今判断できるものではないが、不意打ちを考えて念の為というやつだ。
「あっつー……まじ、メンド……」
 屋根の上でリリーはぐったりと体を投げ出していた。『ニート万歳』を読む気もだんだん失せてくる。この行程で半日とかマジ有り得ない、とリリーは耳を澄ませながらため息をついた。
 だが、だからといって全員馬車の中に隠れられないのも事実。道中の敵を見逃すわけにはいくまい。
 とはいえ、常に気を張り続けていると疲れてしまうことも、これまた事実だった。グリムペインは自らのモンスター知識で怪しい場所を指し示す。
「では、拙者が先陣を切ると致そう」
 示された茂みを見て、下呂左衛門はすらりと刀を抜いた。皆守りを固め、足に確りと重心を置いて茂みへ近づいていく。
(ブラウ殿が派手に襲われたと聞くが、件の魔物、鳥の他に蛙も獲物に入るのでござろうかな……?)
 植物系モンスターに関する見解は複数あった。動物を狙う、体の大きな──ずんぐりした体型の者を襲う、など。果たしてどれが正解か分かりかねるが、いずれにせよ排除せねばならないのは変わらない。
「──はっ!」
 短い気合と共に茂みが大きな音を立てる。後に残ったのは切られた下の部分と、ハラハラと落ちていく葉のみ。
「ここにはいなかったみたいだなぁ……よし、進んでみよう……!」
「はい。気を引き締めて行きましょう! ルーイ!」
 ヨルムンガンドの言葉に頷き、ノエミはルーイを呼び戻す。髪先をぱくりと加えられたが、軽く引っ張られるこの状況なら気付かず置いていくということにはならないかもしれない。
「それじゃあ、行きましょうか?」
 輪廻が馬車の脇を歩き、一同は再びゆっくりと進んでいく。いくつかの茂みを調べ、数回の軽い戦闘を終えた馬車は、森が見えてきたところで増えてきた茂みに1度立ち止まった。
「これは……注意して進まないといけませんね」
「ああ。これは私の知識でもわからない」
 ピリ、と小さな緊張がイレギュラーズの間を満たしていく。しかし不意に、力のない声が上からかかった。
「農薬とか、撒いてみる……?」
「農薬……? あっ、先ほどから放り投げていたアレでしょうか!」
 首を傾げたタントがぽんっと手を叩いて上を──リリーを見上げる。尚もぐったりとしていたリリーは小さく頷いた。
 1度倒したとしても、この広い草原全てのモンスターを倒せたわけではない。ならばせめて何か対策をとリリーは後ろへ向かって農薬をばらまいていたのである。殿を務めていたタントにも度々降りかかりそうになり、「ぎゃっ」などという声が聞こえていたのだ。
「あれはその声だったのかぁ……」
 死角となっていた御者台でしみじみとヨルムンガンドが呟く中、リリーがいそいそと農薬を準備し始める。
「それじゃ……いくよぉ……」
 馬車の上から、リリーが農薬を茂みへとばらまく。降りかかった箇所で何かが蠢くと同時、馬車から一晃が飛び出した!
「墨染烏、黒星一晃。一筋の光と成りて、脅威をこの手で排除する!」
 瞬く蒼き彗星の如く、その妖刀がモンスターの1体を貫く。くたりと地面に落ちたモンスターを見て──いる余裕は、ない。
「まだ来るぞ……!」
「うむ! この『井之中流』河津 下呂左衛門、正面切ってお相手致そう!」
 ヨルムンガンドの放った夜を思わせる黒炎と、下呂左衛門の朗々とした名乗り口上がモンスターたちを引きつける。群がるようにモンスターたちは2人へ巻き付き、その蔦で体を締め上げた。
「ぐっ……」
「タント、下呂左衛門を……!」
 振り返ったヨルムンガンドの体にもまた、確りと蔦が絡みついていく。
「このわたくしがきらめいている限り、皆様には思う存分戦って頂きますわ!」
 すかさずタントのきらめきが蔦をはじき、2人へわだかまりかけていた恐怖を打ち払う。そこへするりと体を滑り込ませたのは輪廻だ。
「敵の攻撃は任せて頂戴」
 頷く下呂左衛門、刀をしかと構えて敵を見据える。ノエミは一晃を庇う対象として守りの体勢に入った。
「攻撃は私が引き受けます」
「ああ」
 一晃も再び刀を向けると同時、モンスターの1体がヨルムンガンドへ向かってその蔦を伸ばそうとする。しかしそれが届くよりも、さらに言えばヨルムンガンドが回避するよりも先に、敵の体は後方へと飛ばされた。それはそう、まるで──藁の家を吹き飛ばしてしまった、あのひと息のように。
 さらにリリーが馬車の上から武器をぶん投げ、植物がぐしゃりと地に縫い止められる。続々と倒れていく同士に、それでも退かないのは元々の習性か、それともヨルムンガンドと下呂左衛門の引きつけによるものか。
「少しずつ進めながら、敵を倒していくぞ……!」
 ヨルムンガンドがパカダクラに先を促す。森まではもう少し、茂みは森の傍まで続いている。イレギュラーズたちは気を抜くことなく、馬車をゆっくり進めていった。

●森
「……いるねぇ」
 リリーがぽつりと呟く。一晃もまた、獣の唸り声が聞こえたと仲間へ共有して。ノエミの傍にいたルーイも小さく鳴き声を上げた。
「タント、大丈夫かぁ……?」
「ええ! こう見えてわたくしはタフなのですわよ!」
 任せて下さいまし、とウィンクするタント。ぱちんと小さく煌めきがはじける。御天道さまは多少齧られたり傷がついたくらいでは沈まないのだ。
「ルーイ、良い子にしていてね」
 髪を甘噛みする小さき竜へ声をかければ、ルーイはノエミを見つめた後に馬車の中へと潜んでいく。中に隠れていた下呂左衛門はルーイと入れ替わるように馬車の出入り口へ近づき、そっと顔を出した。
「まだ、姿は見えぬようでござるが……」
「息を潜めているようだ」
 一晃の言葉にグリムペインが頷く。
 1体で狩るより2体。2体より3体。多くが同時に襲えばそれだけ、成功確率も上がるというもので──。
「……来た!」
 ヨルムンガンドが声をあげ、キャラバンを止める。前方よりタント目がけて2体。更に後ろから3体か。馬車へ接近してきた後方の3体は、馬車へ辿りつく直前に転がり落ちてきた影へ視線を向ける。
「やあやあやあ! 遠からん者は音にも聞け、近くば寄って目にも見よ!!」
 退路を断つような立ち位置となった下呂左衛門の声が響く。数体の意識が彼へ向くと同時、リリーがひょいと屋根の上から飛び降りた。その先は当然地面──ただし、他の獣が近づいてきていた地点へ。強烈な床ドンによって獣が強打される。しかし、その手応えは思っていたよりもやはり薄い。
「ブラウっち狙わないのはポイント高だけど、ユリーカっちのバールで倒せないのはギルティ……」
 ゆらり、と立ち上がるリリー。その手に持っているのは血染めの──某情報屋が、違った某怪盗がないないに使ったエクスカリバールであった。
 1体の獣は一晃へと肉薄してくるが、当の一晃はまったくもって無防備な姿を晒していた。その瞼を開ける事もなく、動く様子も見られない──そこへ、白銀の髪が揺れる。
「……っ」
 硬質な音を立てて敵の攻撃を受け止めたノエミ。堅実な守りは鋭き攻撃も最低限のダメージへ抑え込む。その背後で一晃は、徐に開眼した。
「──墨染烏、黒星一晃。一筋の光と成りて、脅威をこの手で排除する!」
 本日2度目の口上と共に打ち出された薙ぎ払い。獣の悲鳴が上がった。そこへ襲い掛かるは夜色の竜──いや、それは一瞬の幻影とも呼ぶべきもの。獣が幻視したそれは、最盛期の能力まで高めたヨルムンガンドの姿。
「はぁっ!」
 竜の腕が放つ攻撃に獣がたたらを踏み、その懐へグリムペインが肉薄する。そのひと息をどうにか踏ん張った獣は、しかしノエミたちに攻撃を畳みかけられて地に伏した。
「こちらも頼むでござるよ!」
 下呂左衛門やタントが他の獣を引きつけ、そしてタントを庇うのは輪廻だ。疲弊の見える3人の元へ、イレギュラーズたちは助太刀にかかる。

 ──嗚呼、でも忘れてはいけない。この森にはまだ、脅威が残っている。

「これで終わり、でしょうか……」
 小さく息をついたノエミに、しかし一晃は「いや、」と厳しい目を周囲へ向けた。
「うわ、メンド……」
 エネミーサーチによる気配にリリーは顔を顰めて見せて。
「まあ、まあ……! そんな、困りましたわ……!」
 タントは怯えたように辺りを見渡す。
 ちらほらと姿を現す影。10の影はどれも、少なくとも友好的な様子ではない。そう──盗賊だ。
「墨染烏、黒星一晃。一筋の光となりて……3度も言うのは辛いな」
 3度目の口上──は流石に言う事無く、蒼き彗星が敵陣へと飛来する。すかさず守りを固めた下呂左衛門が名乗り口上を上げた。
「魔物や動物はまだしも、野盗の類はこの機に一掃しておきたいところでござるな」
 生活の為、娯楽の為、理由は様々だろう。けれどどんな理由があったとしても、他人の物を奪って私腹を肥やそうとは許しがたい。
「ああ……必ず仕留めてやる……!」
 再びアーリーデイズをかけたヨルムンガンドが鋭く敵を睨みつけ、夜色の黒炎を真っすぐ放つ。下呂左衛門の傍で輪廻は茨の鎧を身に纏った。その体は無傷で無いものの、まだ戦える。まだ立ち上がれる。
「あとでアジトゲロらせる……? 全員いるっぽいし、メンドいからいいか……」
 不殺を心がける、けれどやっぱり危ないバールが敵の顔すれすれを飛んでいって。しかし下呂左衛門の名乗り口上に引きつけられた盗賊達は彼へと襲い掛かって行く。ひたすら殴る、斬りかかる攻撃を回避し受け止めるのは輪廻だ。
「確実に倒していこうかね」
 冷たい呪いを帯びた声が染み渡る。ええ、と頷くノエミはその1手を担うであろう一晃の盾としてその身を前へ躍らせて。
「回復はお任せください! まだまだわたくしのきらめきは止まりませんわー!」
「タントの方へは行かせないぞぉ……!」
 タントが順に回復していく中、そちらへ矛先を向けようとする敵をヨルムンガンドが引きつける。
 1人、2人、3人。少しずつ減っていく仲間に、正気へ戻った盗賊たちがうろたえ逃げ出そうともする──が。
「逃がさないでござるよ」
「たとえ逃げたとしても、絶対に追いかけて仕留めてやるけどなぁ……!」
 立ちはだかるイレギュラーズに、逃げ出せた者は1人もいなかった──。


 ノエミがきょろきょろと辺りを見回し、暗くなってきたことを呟く。他の面々も思う事は同じようで、少しその足取りは早くなった気がした。
 草原を抜け、獣を蹴散らし、盗賊も撃退した。けれど日が暮れても森を動き続けるというのは非常に危険なこと。可能な限り早く森を抜け、目的地へ辿りつきたい。
「……音だ」
 不意に、馬車の中から一晃が顔を出した。その視線は前へ。リリーも一晃の言葉に首肯する。もう文字を辿るには暗くなってきて、すっかり面倒になったので本は仕舞ってしまったようだ。
「やっとです……仕事増やした邪魔者ズまじギルティだった……」
 2人の言葉は敵がいるというような雰囲気のそれではない。鋭い聴覚を持たぬイレギュラーズたちは顔を見合わせ、ぱっと表情を明るくした。
「さあ、さあ! もう少しですわー!」
「ああ! 目的地だ……!」
 少し馬車を走らせれば、一同にも見えただろう──目的の街に灯った、明かりが。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 お疲れさまでした。
 敵への考察や対策、拝見していてとても楽しかったです。お客様にも楽しくお読みいただければ幸いです。

 それではまたのご縁がございましたら、よろしくお願い致します。

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