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シナリオ詳細

魁メタリカ女学園 悪しきギャル派の復権

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●命短し恋せよ乙女。燃える炎は天まで焦がし、不滅不屈の乙女道。見晒せ、これぞ、乙女の生き様……!
「ごきげんよう――」
「ごきげんよう――」
 百合の花咲く庭を抜け、女子高生服を纏った乙女たちがゆく。
 私立メタリカ女学園。黒髪の乙女たちが通うここは鉄帝にたつ由緒正しき学園のひとつである。
 そんななか、乙女たちが思わず足を止めて振り返った。
「まあご覧になって、月見草さまですわ」
「月見草マツヨさま……『生徒会長』になってますますお麗しい」
 華やぐ声の中とごきげんようの嵐の中を、長い黒髪を靡かせた乙女月見草マツヨは優雅に、そして壮絶に歩んでゆく。
 そんな彼女へ、白銀のトマホークが回転飛来した。
 顔を狙った刃を二本の指で停止させる。刀身には鉄帝ゴシック体で『ごきげんよう』の文字が彫り込まれていた。
 これは挨拶にすぎないということ。つまり――。
「「ごめんあそばせっ!!!!」」
 人混みの中から一斉に飛び上がる金髪の乙女たち。
 ロールをかけた髪を払い、八方向から同時にきりもみキックを繰り出した。
「スクールカースト覇王拳――」
「「黄金陰祭(ゴールデン・ネガティブキャンペーン)!」」
 逃げ場の無い悪意の渦は対象を完膚なきまでに引き裂き堕落させるという、スクールカースト覇王拳の必殺技である!
 しかし!!!!
「清楚委員長拳――」
 月見草は残像と化した。獲ったと確信した金髪乙女たちはただお互いの靴底を蹴り合ったに過ぎない。
 そのことに気づいた時には、月見草は彼女たちの頭上へと跳躍し、振り上げる拳に乙女心を集中させた。
 乙女心。
 皆も知っての通り乙女心とは力の代名詞。
 三千世界を貫き時空と次元を打ち砕く世界最強ともうたわれる力の名前である。
「決定拳!!」
 大地に打ち込まれた拳はその拳圧だけで嵐を起こし、金髪乙女たちを風に舞う枯れ葉のごとく吹き飛ばしてしまった。
「「ひぎゃあ!?」」
 金髪乙女……否、ただの金髪女は花壇に突っ込み悲鳴をあげた。
 道行く乙女たちは一瞥すらせず通り過ぎていく。
 そう、乙女らしき振る舞いを忘れひぎゃあなどという悲鳴をあげた者に、この学園にいる資格は無くなったのだ!
 着地し、乙女から白いハンカチーフを受け取る月見草。汗一つかかずに微笑み返すと、学園へと再び歩き出した。
「滅ぼした筈のギャル派勢力が拡大している……? これは、再び乙女八拳将を結成する必要がありますわね」
 風が、戦乱の風が、学園を吹き抜ける……!

●イロモノだと思ったか? 気を抜けば、死ぬぞ!
 ローレットにかかった緊急オーダー。
 鉄帝国内の学園近くを丁度訪れていたイレギュラーズたちは集められ、そして麗しき用務員室へと通された。
 その中にいたのがそう、あなたである。
「待って居ましたわ乙女八拳将。この学園に再び蔓延し始めたギャル派のリーダーたちを倒し、学園の平和を守ってください」
 そういって月見草マツヨが並べた道具がこちら。
 お清楚な女子高生制服!
 お清楚なウィッグ!
 お清楚な化粧道具!
「私立メタリカ女学園は乙女の園なのです」
 その横に体育座りで並べられた『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)がにっこり笑った。
「みなさん乙女の装いと振る舞いになって、学園に潜入するのです。……男女とわずです!」
 そう、再びあの時がやってきたのだ。
 『これが……わたし……?』の時が!

 やるべきことはまたもシンプル。
「ここに記された八人の乙女と接触し、乙女心をもって倒すのです」
 シンプルって言ったのにいきなり意味分かんないこと言われたかもしれないが気にするな、君にはもう素質がある。
 だって。
「もう分かっているようですわね。あなたからは凄まじく高い乙女心を感じます。まるで歴代生徒会長のようですわ」
 とか月見草さん言ってるし。
 だから自信をもってくれ。たのむ。
「彼女たちはギャル派……といっても昨年度のうちに全て倒し尽くし、学園にギャル派は残っていないはずなのですけれど……なぜでしょう、再び生まれ、そして瞬く間に勢力を拡大しているのです。
 ギャル派勢力は清楚派の乙女が陥落することで発生するいわば狂気の乙女。
 しかも新入生を迎えリフレッシュした部活動の部長連合の中から何名ものギャル派部長が誕生してしまったのです。
 これは学園としてもゆゆしき事態ですわ。一刻も早くギャル派の浸食を食い止めなければ、学園の歴史に傷が付くだけでなく勇猛果敢なメタ女卒業生たちのつく鉄帝の未来までもが脅かされてしまいます。
 ですがわくしたち生徒会が直接手を下すことは生徒会協定によって阻まれているのです。ですからあなたが……いいえ、『学園の窮地に現われる謎の生徒』こと乙女八拳将であるあなたが、手を下すのです!」

GMコメント

 このシナリオは!
 乙女シナリオである!
 全参加者は!
 強制的に!
 乙女と化すのだ!

■■■オーダー■■■
 ギャル派乙女を3組以上乙女的に倒すこと

■■■乙女潜入■■■
 皆さんはメタリカ女子学園へ潜入し、指定された八人のギャル派乙女を(乙女的に)抹殺する任を任されました。
 JK制服とウィッグ、そしてスーパー化粧により何でか知らんけど皆さんはびっくりするくらい美少女です。
 元から美少女の方もJKバージョンとなり、元からJKだった人は実家のような安心感に包まれます。
 ここではできるだけ乙女らしさを演技しておきましょう。
 具体的にはできるだけ上品なことばを使い、折角なら名前の語尾に『子』をつけましょう。

■■■乙女抹殺■■■
 ターゲットはそれぞれ名のある部長乙女たちです。
 練習試合中などに堂々と突入し、名乗り、そして勝負を挑みましょう。
 探し出したり周りへの配慮をしたりなんだりというプレイングは一切必要ありません。そういうリソースは名乗りや登場シーンに割いてください。乙女らしく。

 潜入中は2人一組のペアに分かれ、学園のあちこちに点在しているギャル派に接触。勝負を挑み、そして倒すことになります。
 乙女決闘によって倒された乙女の多くはその乙女らしさを喪い、この学園での立場を失うのです。

■■■ターゲット■■■

・阿南&牟岐
 乙女サバゲー部の部長と副部長。
 元は清楚派閥の実行部隊を率い委員長の手足として乙女心なき悪を打ち倒してきました。
 しかしあるときから突然髪を茶色のソバージュにし禍々しい花飾りをつけ肌は浅黒く唇は白く染まった。
 かつての清楚さは喪われ自堕落かつ暴力的に過ごし、その方針に従わぬ者は寮まで強襲して乙女的に抹殺しはじめたという。
 メタ女裏のうっそうとした密林ぽい地帯で普段から訓練をこなしている。
 戦闘フィールドも恐らくこの密林ぽい地帯になるだろう。
 武装は主にアサルトライフルや拳銃、コンバットナイフなどだ。
 バランス良く、敵の能力をダウンさせるタイプのBSや機動力を活かした戦闘を得意とする。

・阪野&三本松
 乙女騎士道部のパラディンたち。
 騎士道部は乙女の清らかなる心を育成する敬虔なる部として学園でも誉れ高かったがいつしか彼女たちはレイダー活動を始めるようになり、抹殺した乙女の髪を編んで首から提げたりもぎ取った学生証を鎧にしたりとおぞましい蛮族へと変貌していった。
 今では穢れに満ちた乙女剣と暗黒にまみれた鎧を纏い小規模な部活を襲撃しては略奪の限りを尽くしている。
 姫騎士クラスを持ち基本的に堅牢。
 防御タイプの松野とスピードタイプの三本松という構成。

・志度&屋島
 乙女オクラホマミキサー部のメインミキサーとフロントミキサー。
 オクラホマミキサーの音楽に合わせて相手を完膚なきまでに蹴り殺すという伝統乙女スポーツをたしなむきわめて乙女心の深き生徒たちで、その爽やかな笑顔は何人たりとも蹴り転がせると評判であったが、あるときからギャル化し常に険しい表情をし続けるようになった。
 しかしオクラホマミキサー殺法の腕は衰えておらず、他のダンス系サークルに乱入しては次々と乙女を蹴り転がしては高笑いをしている。
 回避や命中が高い俊敏なタイプで、このペアと戦うにはある程度以上戦闘に慣れたペアがあたる方がよいだろう。

・鬼畜魔道栗林
 乙女鬼瓦爆砕研究会の会長。
 彼女のチョップはコンクリートの壁をプリンの如く粉砕し、乗用車をなんかのボーナスステージのようにボコボコにしてしまうという。
 彼女はそのゴリラ的強さと両立した品行方正な乙女であったが、あるときから鬼神のごとく変貌し触れるものみな爆砕しなければ気が済まない暴力衝動にとりつかれてしまった。
 人間らしさは失われ、ほぼ魔物である。残っているのは乙女らしい言葉遣いや優雅さ、そしてあの鬼のような強さだけだった。
 あまりに強いため彼女に関しては二人がかりでぶつかろう。
 純粋に強く、BS等に頼らない実ダメージのでかさとタフネスで攻めてくる。搦め手はほぼ通用しないだろう。
 上級者向けと言える。

■■■アドリブ度(ハイ乙女)■■■
 このシナリオでは盛大なアドリブが入ります。
 アドリブが苦手、ないしはされたくない事情がある方はプレイングに『アドリブなし』とお書きください。
 むしろ逆に覚悟がきまっちゃってる剛の者もとい剛の乙女はアドリブ歓迎ないしは乙女歓迎と書く暴挙にでてください。

  • 魁メタリカ女学園 悪しきギャル派の復権完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年06月14日 21時45分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

四矢・らむね(p3p000399)
永遠の17歳
シエラ・バレスティ(p3p000604)
バレスティ流剣士
咲花・百合子(p3p001385)
白百合清楚殺戮拳
シュリエ(p3p004298)
リグレットドール
アルム・シュタール(p3p004375)
鋼鉄冥土
村昌 美弥妃(p3p005148)
不運な幸運
クロエ(p3p005161)
アイリス・アベリア・ソードゥサロモン(p3p006749)
<不正義>を知る者

リプレイ

●乙女心と秋の空(乙女は常に戦火に晒されておりいつ血の雨がふるか分からないという意味の鉄帝ことわざ)
「郷に入っては――」
 髪をかき上げる麗しい乙女……否、美少女がいた。
 『美少女』という種族の乙女が、いた。
「郷に従え」
 かき上げた手でそのまま髪をはらい、飛び立つ鳥のごとくシルエットを広げる『白百合清楚殺戮拳』咲花・百合子(p3p001385)。
「一夜漬け(常に走り続けなくては沈む泥沼で一晩立ち続ける乙女修行をさす)で乙女言葉をマスターした吾は――まさにメタリカの乙女であるですわ!」
 覇王カラーの覇気を放ち、目を見開く百合子。
「百合子さま。覇気がこぼれていましてヨ」
 普段の口調と乙女言葉が合体して斬新な口調になりつつある『堅牢なる楯-Servitor of steel-』アルム・シュタール(p3p004375)。
「然り――郷に入っては郷に従え。よく言ったものでございますわネ」
 乙女たるもの常に盾と剣を携え、しかし戦の時を除いてはみだりに抜かぬもの。
「『美少女』はつらいですね! ですわね!」
 両足を肩幅に広げ両手で横ピースという時代を感じさせるポーズで現われる『永遠の17歳』四矢・らむね(p3p000399)。
「超絶現役JK17歳美少女の私には女学園の潜入などお手の物! 実家のような安心か――いま実写映画って言った奴出てこい! まつげむしってやるですわよ!」
 キシャーと叫んで周囲を威嚇するらむね。
 乙女には外に出れば八人の敵がいるということわざもあるとおり、らむねは常に見えない敵と戦っているのだ。尚一番戦ってるのは自分自身とである。
 そんな彼女たちの耳に流れてくるオクラホマミキサーの勇ましきミュージック。
「タッタッタ――Hey!!」
 『輝きのシリウス・グリーン』シエラ バレスティ(p3p000604)は片手持ちした巨大な斧で積み上げた瓦を粉砕すると、優雅にスカートの裾をつまんで礼をした。
「予習完了……この神に選ばれしシエラ子が輝く為に過去・現在・未来のアカシックレコードは全て動いていると言う事を証明するのですわぁ!!」
 世界を獲らんとぎらぎら光るこの目こそ乙女の目。
 今回はローレット史上初、乙女八拳将全員女性という記録を果たしたわけだが、いつにもましてメンバーがどうかしていた。
 敵も敵でどうかしているので、まさに『毒をもって毒を制す(ばけもんにはばけもんをぶつけんだよ)』である。
「ええと……優雅に、上品に、可憐に……なんとか、してみます……わ」
 『黒鴉の花姫』アイリス・アベリア・ソードゥサロモン(p3p006749)がおろおろするのも無理からぬ話であろう。ちがうと思うならお前をこの中に放り込んでやろうかい!
 そんな彼女の肩に飛び乗る黒猫。もといクロエ(p3p005161)。
「乙女を演じるなど容易い事。伊達に長生きはしてません事よ」
 クロエはお上品に座ってみせると、乙女らしく手をなめて顔を洗って見せた。
 表からはよく見えてないけどメタリカ女学園にはゴリラとかトドとか電柱とか郵便ポストとかがいるので、今更黒猫が増えたくらいで誰も奇異の目を向けたりしない。混沌のいいところである。であるか?
「ウフフ、元々の制服とは違いマスけれど、こういう格好は懐かしく感じマスねぇ♪」
 その一方、唯一のリアル17歳である『不運な幸運』村昌 美弥妃(p3p005148)はうっとりとした顔で女学園の制服を見下ろ――うわっらむね子さまがこっち見てる! 恐っ!
「そもそも『美弥妃=雅=乙女』なのでは? ワタシと言う存在がすでに乙女なのでは?? 一人称も今日だけワタクシに変えてみましょう。名前も今日だけ美弥妃子デスわ!」
 乙女になる最初の一歩は自らを乙女と定義することである。
 ゴリラもトドも郵便ポストもはじめは己を乙女と定義するところから始まったという。その点において美弥妃子さまは乙女の素質を十全に備えていた。
 そんな乙女猛者たちの中で、『見せられないにゃ!』シュリエ(p3p004298)はチャッと身構えて見せた。
「この学園に圧倒的大和撫子力を見せつけてやりますにゃんですわ!
 みなさま、いきますわよにゃん!」
 口調がどうかしちゃったシュリエ子さまは、なんだかエキセントリックな礼をして眼前の風景をにらみ付けた。
 聳え立つ校舎。メタリカ女学園。
 百鬼夜行の跳梁跋扈。人外魔境の地獄道。
 ご覧あれ、これぞ!
 乙女の、園!!

●乙女泥沼戦場
 針葉樹の生い茂る森の中を、野戦迷彩を纏ったギャル乙女が歩いて行く。
 頬に塗りつけたタナの樹液からとった白い塗料を三本髭のごとく頬に塗りつけ、浅黒い肌にヤマンバめいたメイクを施したギャル二名は、茂みの向こうに異なる気配を察知して足を止める。
 今も尚部より離反しようとした乙女を森に追い詰め狩りとる所であったが、見つけた気配は追い詰められた獣のそれではなかった。
 いや、獣ではあったけど。
「ごきげんよう、お二方」
 木の枝に立つ黒猫。クロエ子さまである。
「少しばかりおいたが過ぎましてよ。不肖、このクロエ子が躾け直して差し上げますわ」
「ハァ? しつけですって?」
「マジムカつきますわ。身の程をわきまえるがよろしいですわ!」
 歪んだ乙女口調で挑発を行なう阿南(アナン)&牟岐(ムギ)コンビ。
「うふふふふ……言葉遣いがあらくってよニュービー17歳!」
 茂みの中から飛びだす影。
 そう、阿南たちが感じていた異様な乙女気配は、彼女のものである。
「板についた17歳! 百戦錬磨の17歳! 超高校生級の17歳!」
 空中を回転し、華麗に着地するベテラン17歳は大地に拳を打ち付けたまま顔を上げた。
「スーパー学園アイドル! 四矢ァ――らむねっ!!」
 名乗りだけで爆発がおきた。
 正しき乙女心を持つものであれば名乗りひとつで爆発を起こすことなど容易。阿南たちはらむね子さまの乙女力に戦慄した。
「さあクロエ子さま、やってしまいますですわよ!」

●騎士道は我にあり
 メタリカ女学園騎士道部は天義の教会からも一目置かれるほどの清廉かつ誠実な乙女騎士たちで知られていた。
 だが彼女たちは今やレイダーとなり、今日も乙女百人一首部から力尽くで略奪した羽織りや鋼鉄カルタプレートを袋いっぱいに詰めて部室の礼拝堂へと帰っていた。
 騎士道部は祈りに始まり祈りに終わる。小さな礼拝堂はそのための部室であり、活動はもっぱら花咲く庭で行なわれた。
 むろんその影はもはやなく、礼拝堂は杭とトゲだらけのおぞましきマッド空間と化し、汚れた乙女心に侵食された部員たちは髪を剃り顔を白く染めV8をたたえていた。
「お邪魔致しマスぅ、こちらが『元』乙女騎士道部でよろしいでしょうかぁ?」
 そんな部室に、鈴を転がしたような乙女声が飛び込んだ。
 一斉に振り返るレイダー乙女部員たち。
 清楚な足取りで部室へと踏みいった美弥妃子さまと、その後ろで顔を伏せるアイ子さま。
「確かに乙女とはいえ、そもそも女性とは言い難い見た目デスねぇ?」
「ナニィ!?」
「死にたいらしいな!」
「「ハーッハッハー!!」」
 槍を振り上げ笑うレイダー乙女たち。
 刀をすらりと抜く美弥妃子さま。
 そして『聖業人形・マグダラの罪十字』を展開するアイ子さま。
 二人の戦闘態勢に、レイダー乙女たちは目を血走らせ、大きく見開いた。
「下がってなァ……こいつらはアタイが引き受けるよォ」
「ぼうぼう」
 モヒカンヘアーにトゲのついた肩パットを装着した騎士道部元パラディン阪野。おなじくギャグボールをくわえ黒い目隠しをした半裸の巨女、三本松。
 坂野は剣を、三本松はハルバートを掴み上げ、アイ子たちをにらみ付けた。
「どうやら命が惜しくないようだねェ」
「そちらが(元)騎士道ならこちらは武士道。一切手加減なしの真剣勝負と致しましょう!!」
 レイダー乙女の手から鋼鉄カルタプレートが転げ落ち、床にはねたその瞬間。
 二人は同時に飛び出した。

●リズムに乗ってゆけ
 たらたらたらたん、たらたらたらたん。たらたったったらたらったったった。
 もはや常識とすら言えるリズムに合わせて、踊り狂う乙女たち。
 全身を真っ黒に塗りたくった乙女たちは骨で編んだタスキをかけ血に濡れた腰蓑をゆらすその姿は蛮族そのものであったが、しかしオクラホマミキサー道の洗練された動きと乙女力だけは本物だった。
 その証明として、ブレイクダンス研究会やはないちもんめ部、かごめかごめ部やコサックダンス部などの乙女たちからむしり取った衣装がボロボロの状態で十字丸太に掲げられ、燃える炎の茜色に照らされているではないか。
 突然。オクラホマミキサーの音楽が途切れ丸太の一本が切り落とされた。
「まぁまぁ、小汚いお部屋だこと!
 ワタクシに乙女を奪われるだなんて光栄な事と知りなさい。
 ていうかアナタ達……洗って無い野良犬の臭いがするのですわ、この惰犬ども!!」
「アーハーン?」
 顔をしかめ振り返るオクラホマミキサー部メインミキサー志度、フロントミキサー屋島。
 下唇に黒皿をはめ込んだその顔はこれ以上ない威圧を放っていたが、シエラ子さまは引き下がらなかった。
「シュリエ子!」
「はいでございますにゃ!」
 両手を振りかざし、指関節(?)をごきりごきりと鳴らすシュリエ子さま。
 手のひらにあいた穴から飛び出させたボールを器用にジャグリングしながら笑って見せた。
「シエラ子さまは駄犬たちと違ってとっても輝いておいでですわ。
 路傍の石ころとは違うにゃんだふるがーるですの。え、狼だからわんだふるですにゃー?」
「アババドゥンガ!」
「「アババドゥンガー!」」
 暗黒乙女語で『無礼者に死を』または『全ての唐揚げにシークワーサーを絞れ』を意味する言葉を叫ぶと、オクラホマミキサー部の暗黒乙女たちはコンガ太鼓を叩き鳴らしながらホラ貝を吹き鳴らした。
 戦いの合図である。
 流れ出すオクラホマミキサーのミュージック。
 血で血を洗う決闘の、始まりである!

●鬼畜外道栗林
 乙女鬼瓦爆砕研究会には十二人の乙女がいた。
 鬼瓦砕きし乙女たちは互いの技と力を競い合い、蝶の舞う美しい花園で日夜美しい鬼瓦お茶会を開いていた。
 だがもう、あの美しい花園はない。
 燃えさかる炎の中心に、砕かれた乙女たちのネームプレートだけが飾られ、中央には両手を合わせ殺意の乙女波動をたぎらせる乙女がひとり、立つのみである。
 乙女の背に燃え上がる『鬼』の文字。
 彼女こそが――。
「鬼畜外道栗林……と、お見受けするですわ」
 炎の中に立ち、上着を投げ捨てる百合子。
 『犯怒螺上等・美少女永遠』と乙女ゴシック体で書かれたはちまきを締めると、麗しきレベル20の美少女力をわき上がらせた。
「グヌウ……」
 閉じていた目を開く鬼畜外道栗林。
 百合子さまの隣に立ったアルム子さまは、エアスカートの姿勢で頭を垂れた。
「ご機嫌よウ。ワタクシ、アルム子と申しまス」
「貴公が如何にして心を失ったか最早聞くまい、ですわ。
 せめて乙女としての形があるうちに葬って――さしあげるですわッ!」
 岩ッ! という音と共に落ちた鉄板を踏みしめ、飛び上がる三者。
 暗雲渦巻く天空で、互いの乙女力が交差した。

●乙女の弾丸
「この一閃、見切れまして?」
 木の陰から吹き抜けた風。
 その正体は体長40センチ程度の黒猫であった。
 減速方法を忘れたゴムボールのごとく、樹幹をジグザグにはねまわるクロエ子さま。
 阿南はホルダーから抜いたナイフを振り、幾度も繰り出されるクロエ子さまの爪を弾いていた。
 あちこちであがるちいさな火花。
「なんという乙女力……マジヤバいですわ」
「チョベリバですわね!」
 牟岐がアサルトライフルを乱射して牽制を仕掛けると、阿南と共に茂る木々の向こうへと消えていく。
 こう何度も隠れられては面倒だ。
 奇襲を仕掛け続ければクロエ子さまとて無事ではすむまい。
「こういう時は……」
「17歳力(せぶんてぃーんぢから)の出番ですわね!」
 らむねは『党争』と書かれたハチマキをしめ、両手に松明を持って叫んだ。
「幾度も茂みに隠れてイモるなんて不乙女が過ぎますわ! しかしそんな中でも活路を見いだせるのがこの私! 伊達に何年も17歳やっていません! わ!」
 オラァといいながら森に松明をはなつと、一斗缶の蓋を開いて森にガソリンをぶちまきはじめた。(17歳的アタックオーダーの使用風景となっております)
「燃えろォ! 隠れる森が無ければ野戦乙女などただの焼け残った肉ですわァ!」
「な、なんということを!」
「MK5ですわ!」
「無理してベテラン17歳単語を使うんじゃねーですわこの偽コギャルぅ!」
 らむね子さまはきしゃーといいながら蟷螂拳の構えで跳躍すると、あふれんばかりの17歳力を放射した。(メガ・ヒールの使用風景となっております)
 光を受けたクロエ子さまが黒き疾風となって飛びかかる。
 焼ける森に、コギャル乙女の断末魔があがった。

●剣の乙女
 幾度となく打ち込まれる剣。乙女から略奪したというケータイストラップが玉のように連なった柄頭をじゃらりと鳴らし、乙女騎士道部元パラディン坂野は笑った。
「防戦一方だねェ! アタイの剣が首を切り落とすのが先か! アンタの回復がつきるのが先かァ! 見物だねェェェェ!」
「……っ」
 刀で剣を受け止め、ぐいと押し込まれる美弥妃子さま。
 額に浮かぶ玉の汗。
 その一方では、アイ子さまが三本松と猛烈な打撃戦を繰り広げていた。
「ぶぼぼ! ぼぼう!」
 ハルバートを豪快に振り込む三本松。そのパワーを『聖業人形・マグダラの罪十字』で受け止めるが、受けきれないパワーによってアイ子さまごと吹き飛ばされた。
 トゲだらけの礼拝堂ベンチに突っ込むアイ子さま。
「ふふ……清楚で可憐、しかして邪悪……その正体は謎の転校生、アイ子……なんて、ね」
「ぶぼ?」
 首をひねる三本松。
 アイ子さまはむくりと起き上がると、『聖業人形・マグダラの罪十字』の機能を用いて『再演、墓守の見た五死』を実演した。
 三本松を襲う炎、氷、毒、そして刃。恐ろしい死の災厄が降りかかり、三本松は半狂乱になりながらアイ子さまへと突進した。
 衝突し、壁際に飾られた略奪品の塔が崩れていく。
 崩れる先は美弥妃子さま――ではなく、今まさに剣を打ち合わせていた松野であった。
「――『巻き込まれた大災害』」
 剣を振り払い、飛び退き、背を向ける美弥妃子さま。
 塔に潰された松野は燃え移った炎に包まれ、乙女ならぬ叫びをあげた。

●おまえもミキサーにかけてやろうか!
「あうっ! や、やめてぇ! も、もう調子に乗りませんから、ごめんなさぃごめんなさぃ!」
 頭を抱えてうずくまるシエラ子さま。
「「ブラガンガー!」」
 『絶滅せよ』または『ウェディングドレスを醤油にひたせ』の意味をもつ暗黒乙女語を叫ぶオクラホマミキサー部の志度と屋島。
 彼女たちの猛烈なオクラホマミキサーキックによって全方向から蹴り転がされるシエラ子さま。
「まずいですにゃ! このままではシエラ子さまがミキサーブレイクされてしまいますにゃ!」
 やめるにゃーといって飛びかかるシュリエ子さま。しかし猛烈な台風のごときミキサーに割り込むのは至難の業。はじかれたシュリエ子さまは丸太に激突して転がった。
「こうなったら……リズムを乱すのですわにゃ!」
 ハイッと言って振り上げた両手。それはジャパニーズに伝わるボンオドリの構えである。仏教の伝統儀式から流れをくむ独特な民族舞踊はオクラホマミキサーのリズムを著しく狂わせる!
「アバ!?」
「いまですにゃ!」
「オラァ! 何してくれてやがるんじゃワレぇ! 死んでから楽になれると思うんじゃねぇぞ!」
 完全に調子を取り戻したシエラ子さまのシエラディストラクションが炸裂。
 オクラホマミキサーの脳内リズムに併せて志度をボコ殴りにした。
「アババ!?」
「そなたの相手はわらわですわにゃ!」
 シュリエ子さまの獄式『災禍』が炸裂。魂のパワーそのものを肉体に打ち込まれた屋島は、歪んだ叫びをあげて吹き飛んだ。

●乙女の道は鬼の道
 掴まれ振り回されるアルム子さま。
 豪快に投げられた身体は石煉瓦の壁を突き破り、乙女噴水広場へと転がり出た。
 重すぎる一撃。まともにくらえばただでは済まない……が、アルム子さまは己が胸の内からあふれ出る白銀の乙女心を身体の隅々まで行き渡らせることで、痛みを取り払い傷をなきものとした。
「受けよ――吾が美少女概念ッッ!」
 蛮ッ! という音と共に打ち込まれた百合子さまの拳が、振り返る鬼畜外道栗林の拳と激突した。
 修羅のごとき乙女力と、今の百合子さまの美少女力はほぼ互角。
 しかし。
 覚悟は別だ!
「ですですですですですですですですですです!! ですわーーっ!!」
 猛烈なラッシュが鬼畜外道栗林へと浴びせられる。
「百合子様。アレをやりますワ!」
「応――ですわ!」
 ラッシュにくらりとかたむく鬼畜外道栗林。
 その僅かな隙を、二人の乙女は見逃さない。
 同時に飛び上がった乙女は
「――超絶(スーパー)」
「――電撃(ボルテック)」
「「怒濤恋愛乙女道(アタック)!!」」
 鬼畜外道栗林を両サイドから打ち抜く乙女蹴り。
「グ、グオオオオオオオオオオオオ!!」
 獣の断末魔が、乙女の園へこだました。

 かくして、乙女八拳将は学園にはびこったギャル派部長たちを倒し、学園は再び清楚なる乙女の園への清浄化がはかられることとなった。
 だが、彼女たちは既に感じていた。
 これが、いつか始まるであろう暗黒の乙女たちとの戦いへ至る序曲である……と。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――魁メタリカ女学園、閉幕!
 ――戦乱の世は、続く!

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