シナリオ詳細
≪船上街モビーディック≫アイランド・ダンジョン
オープニング
●船こそが我が故郷
「船上街モビーディックを知っていますか?
複数の大型船を連結して、住居は勿論牧場や農場、工場施設を拡張していくことで発展した自給自足の『船団の町』なのです。
このモビーディック船団は海洋王国の海を転々と回りながら海底遺跡をサルベージして、その収穫物をあちこちに売ることで大きな収入を得ていると言われています。
ボクたちローレットはこのモビーディック船団の依頼を二度ほど受けていて、これまで海底遺跡の発掘作業や幽霊島なんて呼ばれる場所へのアクセスを手伝ったりしたのです」
船上街モビーディックはある意味で実にネオフロンティア海洋王国らしいコミュニティだ。
土地に縛られず船に乗り続け、太陽と水に親しんで暮らしている。
『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)はそんなモビーディック船団の紋章がスタンプされた封筒を、頭上高く掲げて見せた。
「そして今回は……新たに探索可能になった島の遺跡を調査するために、護衛として同行して欲しいっていう依頼が舞い込んでいるのです!」
島に今、名前は無い。
この島の周囲を無数の幽霊船が守っていたことから幽霊島とは呼ばれていたが、これらが取り払われて以降新たに幽霊船が出現することはなく、今はただ『島(アイランド)』とだけ呼ばれていた。
「先遣隊の調べでは、上陸して暫く探索しても人の気配はなく無人島状態だと断定されているのです。
生活感もなくて人工物なんかも落ちてないことからこの断定がなされているのですけど、気になるものは発見できたのです。それがこの写真なのです」
ユリーカが提示した写真シートには、石でできた大きな扉が映っていた。
高さ三メートル程度の両開き扉で、表面には彫刻が施されている。
内容は骨だけになった人間がものを運んだり畑を耕したり牛を育てたりする様子で、それらを杖を掲げ冠を被った人間が椅子に座ってなにやら命令してるような様子と共に描かれている。
「彫刻から察するに、きっとこの島に存在していた古代コミュニティの名残だと思うのです。
そしてこの扉の向こうがどうなっているのか調べるのが……今回の作業なのです!」
●扉の向こう
イレギュラーズたちの仕事は探索チームのリーダー『ジャッキ』と共に扉の向こうへ侵入し、探索を行なうことだ。
「よう、兄弟! よく来てくれたな! 待ってたぜ!
一緒にお宝見つけような! きっとがっぽがっぽの大もうけだぜ!」
なんだか不安なことを言うジャッキと共に、あなたは扉へと手をかける。
未知なる冒険が、始まろうとしていた。
- ≪船上街モビーディック≫アイランド・ダンジョン完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2019年06月09日 22時20分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●冒険へ出かけよう!
いかにも探険たいですっていうあの帽子(防暑帽、またはピスヘルメットというよ)をかぶり米軍服めいたジャケットを着込んだ『魔法騎士』セララ(p3p000273)が、皮の水筒を首から提げてポージングした。
「トレジャーハンターセララ、参上! この遺跡の謎はボクが解き明かしてみせる! ――と、意気込むのであったっと」
漫画化されてもいいように自分で地の文を呟いてみるセララ。
同じく漫画化されても言いように翼をY字に広げて胸を張る『慈愛のペール・ホワイト』トリーネ=セイントバード(p3p000957)。
「探検といえば! 鶏の出番に! 決まっているわ!」
「きまってるのかな……?」
「決まっているわー!」
コケーと叫んで喉をふるわせるトリーネ。
「一体何が待っているのかわくわくしてくるわねっ」
「同感だ!」
『虚飾の戦乙女』ベリア・V・サタナエル(p3p007101)は深く頷き、そして堂々と高笑いをした。
「フハハハ! 無人島で発見された無人の遺跡の調査とは中々に冒険心を擽る依頼ではないか!
我はこういう依頼、嫌いではないぞ! むしろ大好きだ! 何せ病床の折、我が恋い焦がれたかつてないほどの大冒険ではないか!」
「苦労したんだね……」
「今日は一緒に楽しみましょうね……」
両サイドからぽんと肩(と足)を叩くセララとトリーネ。
その様子を後ろから見ていた『お節介焼き』華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)がゆるく腕を組んで首を傾げた。
「みんな好だわよねぇ、こういうの……もしかしてレオンさんも好きなのかしら? いつかのために経験しておくべきかしら……?」
婚活に向けて料理を習うみたいな感覚で古代遺跡にチャレンジしようとしている華蓮であった。
それはそれとして、レオンと二人きりでこういういかにもなダンジョンに挑み大作アクション映画のヒロインみたいになるのもそれはそれで楽しそうな話であった。(そして割とできそうな話だった)
「レイヴンの旦那ァ、来てくれたのかー! 一緒にお宝探そうな! 大金持ちになろうな!」
面識としては二度目なのにもう親友気分で接してくるジャッキ(依頼人)に、『風来の名門貴族』レイヴン・ミスト・ポルードイ(p3p000066)はややフレンドリーな苦笑で返した。
「やー、ミスタ・ジャッキ、お久しぶりだね。幽霊船団討伐の時以来かな」
「あれから調査もそこそこ進んでよー。ここが見つかったってわけよ」
話をしていると、『饗宴の悪魔』マルベート・トゥールーズ(p3p000736)と『空歌う笛の音』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)が空から翼をばさばさやって下りてきた。
「古の遺構が秘められた無人の島……何ともロマンチックだね?
歴史を感じる土地は大好きだよ。人が居ない朽ちた静かな土地もね」
「大冒険の始まり! ってわけだね! 周りに危険はなかったから、もう入って大丈夫だよ」
アクセルはそういって、石の扉へと振り返った。
王様が沢山のガイコツを使役しているかのような絵図が彫り込まれた扉だ。
「けど、誰がこんなの作ったんだろう」
「案外あのガイコツたちだったりしてね」
ローレットとモビーディック船団が幽霊船団と戦った記録を黄泉ながら、『天京の志士』鞍馬 征斗(p3p006903)はぽつりと呟いた。
スクロールを素早く巻きとり、扉へと手を添える。
「何も起こらなきゃいいけど……」
大変な予感がするなあ。
征斗は、苦笑交じりにそう言った。
●未知のダンジョン
石の扉をごとごとと開くと、意外にも中は清潔だった。
ほこりっぽさもなくどこかひんやりとしていて、現代地球で言えば綺麗な冷蔵庫を開けたときのようなにおいがした。
サイバーゴーグルをつけるレイヴン。
「皆、周囲に注意してくれ。かなり古いが魔術の痕跡がある」
「そんなこと分かるのか? 超能力?」
興味深そうに聞いてくるジャッキに、レイヴンは壁を指でなでるようにして見せた。
「壁面の処理が正確すぎる上に、通路に継ぎ目がない。元々巨大な岩を細かく掘り進んで通路に変えたんだろうね。道具を使って手動でやれることじゃない」
「へえ……やった奴が中にいるのか?」
「さあね。とっくに死んでいるか、死んだまま動いているか、かな。どのみち、ここを『綺麗に』保っている何者かはいるはずだ」
ある程度下った所で、セララが手のひらからマジックライトを浮かび上がらせた。青白い光の球が頭の高さに上り、セララを正確に追尾する。
階段通路は両手を広げて歩ける程度に広く、地下へと至った頃にはより広い空間へと出ることが出来た。
光に照らされた空間を見回すトリーネ。
「誰もいないわねー」
「いない、わけじゃなさそうだよ」
セララは壁面に掘られた二段ベッドめいた穴を指さした。
実際二段ベッドのようで、石面に鎧を纏った人間が眠っていた。
といってもずっと昔に死んだらしく、からっからの骨になって転がっているだけだが。
「ここは鶏アイの出番ね。コケッ」
目をピカッと光らせながら駆け寄っていくと、骨と鎧の様子をまじまじと至近距離から観察した。
「丁寧に弔われてるわ。ずっと昔に亡くなった人を納めるお墓だったみたい。ご冥福を祈っておきましょ」
手(翼)を併せて目を瞑るトリーネ。
むくりと起き上がるホネ。
目を開けるトリーネ。
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!」
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!」
叫ぶトリーネとホネ。
反射的にべいっと振り込んだ羽根がガイコツの頭だけを吹き飛ばし、セララの真下に転がった。仰向けに。
「ア゛」
「ひゃああああああああ!!」
スカート(?)の裾を押さえてガイコツヘッドを蹴り出すセララ。
「「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!」」
周囲のベッド(?)から骨ががばっと一斉に起き上がり、そばに納められていた黒石の剣やダガーを手に取った。
「応戦よ! 武器をとるのだわ!」
そこまでの道のりをマッピングしていた華蓮が、手刀に魔力を溜めて飛びかかる。ホネの首筋にチョップを食らわせた。
一撃でばらばらに砕け散るホネ。
「あら? 思ったより弱かったのだわ」
「雑魚モンスターなら遠慮するこたぁねえ! 蹴散らしてやるぜ!」
おりゃーと言いながら大きなレンチで殴りかかるジャッキ。
「勇士達よ、よろしく頼むぞ! 汝らに戦乙女の加護を!」
ロックバスターを発射しホネたちを端から破壊していくベリア。
マルベートは巨大テーブルフォークだけを手にとって、骨のアバラに食い込ませてくるりとひねった。
「古代の遺跡にホネのアンデッド。なかなかおもしろくなってきたじゃないか」
征斗はサイでホネの剣を受け止めると、勢いよく相手の胸を蹴り飛ばす。
「武装はしてるけど、戦士ってわけじゃない……のかな……」
蹴りつけたホネがマルベートの放り投げたホネとぶつかって砕け散り、散った骨を横目にアクセルは特別なバイオリンの弦に魔力を込め、剣のようにして襲いかかる骨を袈裟斬りに切断した。
電熱エナメル線が発泡スチロールを切り裂くがごとく、魔力を帯びた弦が骨を切り裂いていく。
全て倒し終えた所で、マルベートはホネたちの装備を拾い上げた。
黒い石でできた剣。非常に原始的で武器としての性能はノービスソードに等しいが、マルベートは柄頭に描かれた模様に興味をひかれた。
「紋章だ」
「あら、こっちにも」
トリーネが短剣を翳して同じ紋章を見せてきた。
「どうやらこれらは一つのコミュニティだったみたいだね。王様とその臣下ってところかな」
「みんなこの島で死んじゃったの?」
転がった骸骨の頭を手にとってまじまじと見つめるアクセル。
「その割にはめちゃくちゃ元気に動き回っていたのだわ」
ぶんぶんと手刀のスイングをして見せる華蓮。
「まだまだ謎、だね」
征斗はベリアに手招きをすると、隊の先頭に立った。
うなずき、使役したネコを肩に乗せて一緒に歩くベリア。
「フハハハ! 無事に役目を果たせたら、飼ってやろう!」
ネコを撫でて、五感を共有した状態で周囲を観察しはじめる。
セララの明かりを借りる形で、征斗はあちこちを観察しながらゆっくりと進み始める。
「ここからは罠が仕掛けられてるかもしれない」
「なんでそう思うんだ?」
「入ってすぐのホネたちが弱かったことと、その割に増援が来る様子がないこと……」
だよね? と振り返るとマルベートが二度頷いた。
「接近する足音は聞こえないよ」
「ってことは、このまま進んだ人を攻撃したい意図と、そうはいっても兵隊は出せない事情があるはずなんだ。そういうときは、罠を仕掛けるはず」
みんな止まって、と征斗は手を翳し、先程拾ってきた骸骨の頭を放り投げた。
床に刻まれた円形の模様に乗ったその途端、隠れていたトゲのついた網がダイナミックに飛び出してきた。
網と言うよりもはや壁の大きさで、模様の上にのった骸骨をまるで打ち払うようにはじき飛ばしていった。
自分たちの頭上を飛んでいく骸骨に、『ごめん』と手を合わせる征斗。
「それにしてもこの通路……かなりぐねぐねなのだわ」
華蓮はそこまでで正確に記録したマップを見返してみた。
「大きな岩を直接彫り進んだなら、もっと広くてざっくりしてるはずでしょう?」
「それだけ奥に進ませたくなかったんじゃないかな。けどその割には……」
アクセルは見つけた罠の痕跡を確認して唸った。
「頑張って作ってはいるけど、それなりに注意して進んでる人には見破られちゃうし……対処もしやすい罠ばっかりな気がするなあ」
●隠されたもの
「それっ!」
飛び出す槍や落ちてくる岩や落とし穴を、勢いよく駆け抜けることで回避していくアクセル。
奥のレバーを下ろし、罠の発動を停止させた。
「みんなー、もう行けるよ!」
「随分歩いたのだわ」
華蓮はマップを新たに書き記し、パタンと手帳を閉じた。
なぜなら。
「いかにも最後の扉、なのだわ」
火炎放射トラップのひいた先。
大きな紋章の刻まれた扉が、そこにはあった。
「ふむふむ……」
虫眼鏡を出して紋章の周囲円形に刻まれた文字を解読していくセララ。
ぶっちゃけ虫眼鏡はいらないけど気分で出していた。
「順番通りにこの円を回せばいいみたい」
セララが石の円環を動かして扉のロックを解除すると、石の扉は下に落ちるようにしてごとごとと開いていった。
光さす岩の洞窟。
流れる水の清らかな音と、水晶によって増幅された太陽光が広い広い空間を満たしているようだった。
空間の中央には大きく広い台座があり、黒い棺が置かれている。
棺の表面を指で撫でるマルベート。
「これまでのホネが持っていた武器と同じ材質だ。それに……」
「ああ、特に純度の高い高級な石を使っているようだね」
レイヴンは利きのいい目で石の材質を確かめた。
「なんだぁ? お宝はねーのか?」
「お墓に宝物はないものよ、ジャッキ君」
翼をぱしぱしとやるトリーネ。肩を落とすジャッキのすね辺りを叩いてなぐさめてやった。
「いや、まって。なんか嫌な予感がしてきた」
「同感だね……棺から離れて」
冷や汗を流すアクセルと征斗。
ベリアが不思議そうに首を傾げたその瞬間、棺の蓋がものすごい勢いで跳ね上がった。
内側から、全身を黒い石(らしきもの)でコーティングしたホネが起き上がる。鎧甲を装着しているが、これまでのホネとは明らかに異なる、強力なものだとわかった。
「……っ!」
華蓮は咄嗟に回復フィールドを広げる準備をした。
準備中に浴びせられる膨大な魔力の弾幕。
「鶏ばりあー!」
翼を大きく広げ、ぴょいーんとジャンプするトリーネ。
一塊になった華蓮と仲間たちは、浴びせられた弾幕のダメージを『天使の歌』によって回収し始めた。
周囲の壁面に描かれた彫刻が崩れはじめる。
戦士の姿を描いた石彫刻だったが、全く同じ装備をしたホネが飛び出し、華蓮たちへと襲いかかったのだ。
「ぴー! ジャッキさがってて!」
アクセルは武装してジャッキを引き下がらせると、突進してくるホネの攻撃を防御した。
身の丈2m近い巨漢のホネが、ハンマーを叩き込んでくる。
魔力を帯びた弦で防御するが、アクセルは勢いよく打ち出され空へと飛び上がった。
「アクセルさん……!」
「だいじょうぶー!」
アクセルは空中で翼をばさばさやって壁への激突を免れると、巨漢ホネめがけて音符型の魔力を発射した。
それに伴って征斗も印を結び、『式符・白鴉』を発動させて発射した。
「獲物は眼下に在り……舞い飛べ白鴉!」
攻撃を受け、のけぞる巨漢ホネ。ベリアがすかさずアタックオーダーによる攻撃を開始。召喚物が巨漢ホネへと襲いかかっていく。
「むむ……ここら辺にはアンデットの気配が漂っているな……では我が力を解放しようではないか!」
そうこうしている間に自分たちが入ってきた扉から大量のホネの兵士が突入してきた。
「まだこんなにいたとはね」
レイヴンは天空を撫でるように魔術を行使すると熱砂の精を呼び出した。
巨大な鷹の姿をとった精霊が、突入してきたホネたちめがけて突撃。嵐の大爆発を起こす。
「強そうな敵はこっちで引き受けるわ!」
トリーネは二刀流の剣士めいたホネの前に立つと、両手を翳して腰をくねっとやった。
「ミュージック!」
「「ぴっぴー!」」
どこからともなく現われたひよこちゃんの集団がホネを取り囲んだかと思うと、腰を左右にそしてリズミカルに降り始めた。
「「ぴっぴー、ぴよぴ」」
「コケコケコケコー!」
謎のダンスに取り囲まれ明らかにやる気を失っていく剣士ホネ。
首をぶんぶん振ってやる気を出すと、剣を振りかざしてトリーネへと襲いかかった。
「おっと、キミの相手は私だよ」
剣を巨大フォークで固定するようにして受け止めるマルベート。
もう一方の剣は彼女の肉体にざっくりと刺さっていたが、マルベートはあえてその状態を受け入れるように剣士ホネの腕を掴み取った。
「もう暫くは付き合って貰うよ。あっちが済むまで、ね」
あっち、というのは。
「ガアッ――!」
黒い剣に魔力を込め、とてつもないパワーで繰り出してくる王のホネ。
セララはそれを聖剣のパリィによって打ち払うと、もう一本の聖剣でもって王のホネを切りつけた。
魔力で保護されているであろう黒石の鎧が青白い火花を散らし、王のホネはのけぞった。
やられてばかりではいらないとばかりに魔力の弾幕を至近距離から放射。
しかしセララは魔法のキラメキを大量に散らすと、飛来する魔力弾を全て迎撃してしまった。
「つ……強い」
「ありがとう!」
セララの剣が王のホネの喉元へ迫り……そして、ピタリと止まった。
「あれ、喋った!?」
「よかろう……次の王は貴様だ。この剣をとり生涯をこの墓で過ごすがよい」
「いらないよやだよ!」
でれないのはやだよ! と剣の譲渡を拒否るセララ。
王のホネはかぶとを脱いで降参する気満々だったが、拒否られて若干へこんでいるようだった。実際鎧とか内側の骨とかへこんでいるので見た目にも分かりやすい。
「いらないのか……」
「フハハハハ、王よ!」
ベリアがバッと前に出た。
「我が力により軍門に下れ! 我が勇士になれる誉れを与えよう!」
「『お友達になりましょう。良ければ協力してください』だって」
『意訳』の部分を丁寧に同時通訳してあげるアクセル。
「ふ、む……」
王のホネは考え込むようにして腕組みをした。
それから暫くして、ベリアとその通訳(アクセル)たちは王のホネに外の現状や世界情勢を教えてあげた。
逆に王のホネはこのお墓を作った経緯や、自分の作り上げた『ホネの国』について説明してくれた。
「このお墓の中で何百年も寝てたんだね」
「想像しづらい環境だ……」
「床ずれ起こしそうなベッドなのだわ」
なんとなくのリアクションをするレイヴンや華蓮たち。
「あなた、これからもずっとここにいるの?」
トリーネがお日様浴びないと健康にわるいわよと言うと、ホネの王は深く噛みしめるように頷いた。
「余の肉体と魂の情報はこの『呪骨』に封じ込まれている。永遠の命を得ようと試みた結果がこの姿だ。だが『墳墓』から出れば余の魂はおろか、可愛い家臣(ホネ)たちの姿も保っていられぬ。こここそが、唯一安全な我が家なのだ」
『唯一安全』という言い方に、征斗は悲しみのニュアンスをくみ取った。
王……名前も思い出せないほど長い年月を過ごしたアンデッドにとって、この墳墓の外は恐い場所なのかもしれない。
アンデッドだけの王国を作って、彼はきっと、平和に暮らしていたかったのだろう。
「そう、か。それであれだけのトラップを作ったんだね……」
『外敵を恐れるがための罠』だったのだ。
「なんだよ、ホネホネしてるから悪いやつかと思ったのに。なんかすまねーな……」
申し訳なさそうにするジャッキ。マルベートはワインの瓶を取り出して見せた。
「まあ、これも冒険。楽しい経験になったよ」
「けどお宝もねーしよー」
「それなら、ほら」
セララは漫画本を取り出すと、ジャッキへと手渡した。
遺跡を探索するジャッキたちの大冒険が描かれた漫画だ。
「この冒険が一番の宝物、だよね!」
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
これにて大冒険はおしまい。
イレギュラーズたちは古代の秘密を解き明かし、ついでにホネの王様と友達になりました。
GMコメント
■■■オーダー■■■
名も無き島の名も無き遺跡を探索するべく、依頼主の護衛を行ないます。
厳密には『依頼主の護衛』ですが、依頼主には『一緒に探索を手伝って欲しい』という意図があります。
意図があるだけなので、別に「探索能力はないから、俺は戦闘で役に立つぜ!」というスタイルも歓迎されます。得意分野でせめていきましょう。
●情報精度(C-)
このシナリオの情報精度はC-です。
信用していい情報とそうでない情報を切り分けて下さい。
不測の事態を警戒して下さい。
■■■メタ情報■■■
このシナリオの情報精度はCマイナスですが、あくまでPC視点での情報精度になります。
OP情報がPCの分かっていること。このシナリオ詳細欄にあるのが『PL視点でわかっていること』です。この二つを切り離してプレイングを書いていくと探索している感じをお楽しみ頂けるのでお勧めです。
(それでも相談はメタになってしまいますが、そこはそれ、でいきましょう)
この遺跡というか島は門の様子から察する通り、古代の死霊術士が作った小さな王国でした。
生活の痕跡が全て無くなるか土に埋まるくらい昔のことなので誰も覚えてはいませんが、当時の王様は大量のアンデッドを軍隊にして島を守らせ、自分が死んだら墓の奥底に納めて誰も近づけないようにと命令を残していました。
島を守っていたのは、その命令を守っていたアンデッドやゴーストたちでした。
つまるところ遺跡は王の墓であり、地下へと続く迷宮です。
ですが王は黄金や宝石といった貴重品を特に持たなかった(持つ必要がなかった)ので持ち帰れるお宝らしいお宝はないでしょう。
あるのはドタバタの冒険と、楽しい思い出です。
迷宮にはアンデッドたちが仕掛けた物理トラップがあちこちにあり、落とし穴や飛び出し槍、ガスの噴射などがおこります。
このてのトラップがあること自体をPCは知らないので、念のため警戒しているとかこんなこともあろうかと用意している、といった具合で対応していきましょう。
また道中の部屋、ないしは広い通路などでは防衛アンデッドが起動して襲いかかってくることがあるでしょう。
起動するまでマジでただの骨なのでエネミースキャンやその他探知系能力から漏れるおそれがあります。
常に武器を構え、いつで出来てもいいように構えている……感じで行きましょう。急に起き上がったミイラに絶叫しながら殴りかかる、なんてプレイも楽しいかも知れません。(この手のプレイに特にペナルティを設けるつもりはありません)
こんな具合で、古代の王の墓を暴き、その僅かな記録や分析から歴史を読み取る……そんな探索を、依頼人『ジャッキ』と一緒に楽しみましょう。
【アドリブ度(やや高め)】
ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。
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