シナリオ詳細
因習という名の蜘蛛の巣を破る
オープニング
●蜘蛛神様の因習
なんで、俺の恋人がでかい毒蜘蛛なんかに食われなきゃいけなんだよ?
先日、俺の恋人が生贄になることが村の会議で決定された。
もちろん俺は、村八分や追放も覚悟で反対したさ。
こんな因習は可笑しい、間違っているってね。
俺達の住んでいる所は『幻想』の国内でも特に古い因習がある田舎村なのだろう。
昔からあるらしい村の因習では、年度ごとに年頃の娘を生贄にしないといけないんだ。
生贄を出せば蜘蛛神様という土地の守り神がその一年、村を安泰にしてくれる。
生贄がなければ蜘蛛神様が怒り狂ってしまい、村が襲われ人が沢山食べられる。
この村社会で生活している限り、蜘蛛神様の因習から逃れられる術はない。
今年、俺の恋人が生贄に選ばれた。
俺以外に誰も反対しない、いや、できないのさ。
俺の両親も、恋人の両親も、そして恋人自身すらも。
みんな言いなりなんだ、村の古い因習の。
みんな怖いんだ、蜘蛛神様という化け物が。
手詰まりになった俺は……。
●因習という名の蜘蛛の巣を破れ!
『色彩の魔女』プルー・ビビットカラー(p3n000004)はコバルトブルーな表情でため息をついていた。ローレットのギルドには、彼女から招集をかけられたイレギュラーズのメンバーが集まっている。美人情報屋はいったい、何をそんなに気に病んでいるのだろうか。
「例えばね、あなたがスカーレットに愛する人がいるとしてね……。その愛する人がみんなの為に化け物の生贄になるなんて事態になったら、許せると思う?」
それを聞いたあなた達の中に明るい表情をする者は少ないだろう。
プルーは、それで今回の依頼はね、と続ける。
「……と、いう青年からのレッドな依頼なのよ。要するに、村の因習で神格化されている大きな毒蜘蛛をあなた達で討伐してくれないかしら? なんでこの蜘蛛が村の守り神みたいな扱いになったかの経緯までは知らないけれど、これって明らかにブラックな害獣じゃない?」
そしてプルーは締める。
「人の恋路を邪魔する魔物は馬に蹴られて死んでしまえってのが、私のホワイトな感想ね。腐った因習なんて破ってやった方が気持ちはスカイブルーでしょう?」
- 因習という名の蜘蛛の巣を破る完了
- GM名ヤガ・ガラス
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2019年05月25日 22時30分
- 参加人数8/8人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●誘き出し作戦
蜘蛛神様という魔物が祀られている祠へ向かって、イレギュラーズは山道を行軍する。道中、『紫翼の用心棒』ティスル ティル(p3p006151)達は木の枝等も拾いながら、祠前へ到着した。日中の明るい時間帯な事もあり山道もそう険しくはなかった。
ティスルは木の枝や葉を一点に集めて置き、南瓜ランタンから火を拝借し、着火する。煙がモクモクと上がった。彼女の武器である風流な扇を両手に持って仰ぎ、祠へ煙を送る。燻り出しながらもティスルはこんな事を考える。
(どうしてこんな因習が生まれたかのかな? 生贄ってのは、ちょっとねー。しかも話の通じない虫相手に)
やがて火が強くなり、送り込んだ煙も十分な量に達する。
「さーて。……これでうまくいってくれると楽なんだけどなー? てことで、虫退治と行きましょー!」
この祠には後で突入するかもしれない。あまりやり過ぎると逆効果になる事も考慮して、ティスルは適当な所で切り上げて木陰へ逃げる。
祠の出入り口周辺がやけに煙たい。
毒蜘蛛達は煙でむせ返るかのようにしてぞろぞろと外へ出てくる。
今度は入れ替わりに『学級委員の方』藤野 蛍(p3p003861)が腕を組んで仁王立ちで登場した。彼女はこの依頼に対して複雑な思いを抱いている。
(前例に抗えないって悲しい因果よね……。力ない人達に戦えって酷かもしれないけど)
そして、現れるや否や、独特の正義感のオーラを輝かせ、びしっと指さして叫ぶ。
「ちょっと蜘蛛達、真面目に戦闘しなさいよ!」
かちん、言葉は通じないけれど、委員長特有の瘴気みたいな物は通じたようだ。
蜘蛛達は蛍をめがけてぞろぞろと向かって来る。
蛍の挑発は止まらない。
今度は、冷徹なメガネをぎらりと光らせて、ふっと、笑い捨てる。
「ボクの言う事が聞けないなら……先生に言いつけるよ?」
蜘蛛達は何を言われているかはわからない。
だが、もう我慢の限界だ。
なんか委員長っぽいこの女を倒さないと気が済まなくなり、一斉にかかってくる!
蛍が蜘蛛達に追い回されると同時に、一寸の閃光が戦場前衛をよぎる。
戦乙女の加護をまとった『青き戦士』アルテミア・フィルティス(p3p001981)が突きの構えで突っ込んで来て、毒蜘蛛を1匹、刺し殺した。
(村の平穏の為に毎年誰かを犠牲にするだなんて、私は認められない。こんな因習、ここで断ち斬らせてもらうわ!)
因習に対する強い思いを秘め、戦場で刀を振るう。
刺し殺すと同時に、軽やかなステップでヒット&ウェーの如く木陰へ退場する。
彼女が一撃しか攻撃しないのは、次に猛攻が来る事がわかっているからだ。
遠くの木陰からは『静謐なる射手』ラダ・ジグリ(p3p000271)が愛銃を構えて狙撃する。
空中から鉄の大雨が降り注ぎ毒蜘蛛達を蜂の巣へ変えて行く。
敵の前衛を仕留めながらもラダは苦い表情をする。
(この手の事態は早々に傭兵や冒険者へ相談があると思っていたが。なるほど「因習」「伝統」と化すとそれも絶えるのか)
ラダとは少し角度が離れた位置の木陰には『CS-0410』フィーア・プレイアディ(p3p006980)がいる。
彼女もラダに続き、全身で魔力を集め、全力の魔力砲撃を撃ち込んだ。強烈な砲撃は前衛の残りにとどめを刺して爆撃する。
攻撃中は無言、無表情でこんな事を考えていた。
(悪しき因習をこの手で潰す、それが依頼ですから)
囮になって逃げ回る蛍やティスルを未だに追う蜘蛛達もいる。
一方で、圧倒的な実力を見せつけられて、すでに逃亡を考えている敵もいた。
そんな奴らの前に立ち塞がるのは『要救護者』桜咲 珠緒(p3p004426)だ。
「ふう、知性のない蜘蛛がカミですか……。さて、桜咲達もひとつ神殺しと参りましょう。すずきさん、こじまさん、そちらへ行きました。逃げ場を塞いでください」
珠緒には、謎技術で開発された少女型のロボットの手下達がいる。
青髪おさげのすずきさんと赤毛ツインテのこじまさんがかくんと頷き、立ち塞がる。
ついでに蛍の手下のロボである金髪ロングのゆりかさんもその場に加わっていた。
もっとも、この3体は戦闘用ロボットではない。
立ち塞ぐにも限界がある。
もちろん、そんな事は珠緒も付近に潜んでいる『天京の志士』鞍馬 征斗(p3p006903)も承知の上だ。ちょっとだけ、時間稼ぎになってくれれば、あとは征斗が……。
サイをかざして、式符を駆使し、光明の白鴉を放ち、蜘蛛を撃ち殺す。
仕留めた後、ぽつりと漏らした。
「信仰の相手が悪かった……のかな? 今回で終わってくれればいいんだけど……」
誘き出しによる奇襲は成功しているようだ。
仲間達が敵勢とどんぱちやっている最中、『暇人』銀城 黒羽(p3p000505)は祠へ向かって全力で走っていた。
(何て言うか……。こういう因習ってのは何処にでもあるもんだな。厄介極まりない。まぁ、仕方ねぇか。今回も気張っていきますか。中途半端にやって新しい蜘蛛神様が生まれても面倒だし)
敵味方共に戦闘中だった事もあり、祠内への侵入にあっさりと成功した黒羽は、そのまま蜘蛛神様を目指して突入した。
●突入
祠前にて合計6匹の蜘蛛を退治したイレギュラーズはそのまま祠内へ突入する事にした。
戦闘を歩くのは南瓜ランタンを灯し、扇を構えるティスルだ。
その後ろには感覚を研ぎ澄ましているフィーアが続く。ラダから借りたカンテラを頼りに前へ進む。
さらに蛍とアルテミアが続く。
蛍は対暗視ゴーグルを被り、ちょっと浮きながら、罠である蜘蛛の巣を解除して行く。
魔物の生態知識も予習済みなので、罠の解体はすんなりいった。
アルテミアも暗視の中でも見通せる力はあるが、罠解除の専門ではない。
目視できる範囲での蜘蛛の巣を二刀流で薙ぎ払いながら進む。
後衛にはカンテラを持った征斗とランタンを持った珠緒が続き、最後尾に暗視が利くラダが就く。
そのまま何ともなく進めたかと思ったら……。
「うわあああ!」
突然、どこからか蜘蛛の巣が発射されてティスルが躓き、毒牙に襲われる。
「!!」
すぐ近くにいたフィーアも同じ手で襲われ、そのまま倒される。
前衛から灯りが消えた。
「まずいですね……」
異常事態を察した珠緒は即座にランタンを投げ捨てて、対暗視ゴーグルを被る。
「おっと……!」
同じく征斗もカンテラを捨てようとしたが、それと同時に毒牙で襲われる。
後衛からも灯りが消える。
今、この場にいる仲間達は、暗視能力を持つか対暗視ゴーグルがある者しか、敵勢の猛攻撃がまともに見えていない。
これを機にと、毒蜘蛛がわんさかと現れて、蜘蛛の巣で獲物を絡め、次々と毒牙を放つ!
最初に毒牙によって倒されてしまったのはティスルだった。
だが、パンドラの欠片が弾け、稲妻のオーラをまとい、寸での所で起き上がる。
「えい! 負けるものっか!」
紫電の居合切りが炸裂し、襲って来た蜘蛛は退けられた。
ほぼ同時期にフィーアも毒牙によって倒れたが、パンドラの欠片を弾けさせた。
(くっ……まだまだです!)
敏捷性を魔術で補強しつつ、付近にいる蜘蛛を蹴り飛ばして払い除ける。
傷は負ったものの、倒されるまでではなかった蛍は、苦境でも分析の手を緩めない。
委員長ギフトが発動し、付近にいる仲間の状態や体調を瞬時に把握する。
「負けないで立ち上がってよね! 委員長命令よ!」
蛍を中心として周辺にいる仲間達は大号令を受けて体調を取り戻す。
アルテミアが負った傷はまだ浅い方だろう。
一度、戦線離脱して走り回り、周辺の毒蜘蛛を自分に引き付けた。
敵勢を数匹引き付けると、思い切り剣技を放つ。
蒼い炎の魔力が二刀の刀に集中し、振り落されると同時に斬撃の閃光が煌めく。
扇状に解放された魔力の刀の前に手下達はなす術を持たなかった。
(味方を巻き込まない為だったけれど、ちょっと離れ過ぎたわね……。早く戻るわよ)
後衛を狙った蜘蛛の群に征斗と珠緒は、手こずっていた。
明かりがなく暗視の手段を持たない征斗の神秘攻撃は今、当たりづらい。
一方の珠緒も元が近接戦闘向きではないからだ。
だが、悪い状態はそう長くは続かなかった。
最後尾からさらに後退していたラダが狙撃する。
「すまない、待たせた。今、何とかするからな!」
鉄の豪雨が後衛を悩ませていた蜘蛛を次々と残骸に変えて行く。
しかも識別機能付きで範囲を攻撃できる為、味方に鉄の雨が当たる事はない。
ひとまずの敵勢の撤退が確認できた所で珠緒と征斗はようやく回復を施せた。
「ららら~♪」
精巧に歌われた珠緒の天使の歌が周辺にいる仲間達を癒す。
征斗は服の上半身を脱いで、呪文で解毒した後、包帯を自身の負傷した腹部に巻く。
ちなみにサービスシーンっぽいが、征斗は男である。
***
突入した仲間達7人が奇襲を受け、敵勢と攻防していた頃……。
黒羽は蜘蛛の巣に躓いて転んだり、途中で手下達に追いかけられたりしたが、何とかして、敵陣の王座にたどり着けたようだ。
「見つけたぜ! アンタが蜘蛛神様かよ?」
巨大な毒蜘蛛は言葉を話す事はない。
だが、獲物を見つけて、口元が歪に緩んだようだ。
黒羽は突然、上半身を脱いで、筋肉をたぎらせ、マッスルポーズを取る。
「ほらほら、アンタの大好きな餌はこっちだぜ?」
肉付きが美味しそうな青年に挑発され、蜘蛛神様は、思わず涎を垂らす。
その直後、蜘蛛神様が黒羽に飛びかかる!
「うおりゃあ!」
蜘蛛神様の一撃も重かっただろう。
そんなヘビーな攻撃すらもがっしりと受け止めるのが黒羽だ。
「よっしゃあ、来いよ! こっちだぜ!」
黒羽と蜘蛛神様の鬼ごっこが始まった。
もっとも、黒羽は決して遊んでいる訳ではない。
仲間達が奇襲された事は既に察知している。
せめて蜘蛛神様を自分に引き付けてさえおけば、仲間達はこれ以上、猛撃されない。
そんな計算、いや、熱い思いが黒羽の中であったのだ。
●対蜘蛛神様
黒羽は幻惑のステップを踏みながら、蜘蛛神様の行動をブロックして封じる。
当然、蜘蛛神様はここから動けないし、手下達に指示も出せない。
もちろん、蜘蛛神様は怒り狂って黒羽を猛撃する。
蜘蛛神様の強烈な毒牙が黒羽の戦闘をもはや続行不可能にする。
だが、黒羽も黒羽で、へらへらした顔でファイトを決めて立ち上がる。
彼はもうふらふらだ。次の攻撃で倒されるかもしれない。
パンドラの欠片すらも弾けて、それでも黒羽は挑発を止めない。
「蜘蛛神様って割には対したことねぇな? 毒牙? 蜘蛛の巣? 暗闇からの奇襲? 関係ねぇ。その程度じゃ俺を殺すなんて一生かかっても無理だぜ?」
手下達の奇襲を受け、退け、イレギュラーズの仲間達が行軍する。
行軍していた前衛達は驚いた。
ぼろぼろになった黒羽が蜘蛛神様から猛攻撃を受けている最中だったからだ。
「加勢するよ!」
ティスルは華麗なダンスのステップをふわりと踏んで、扇で蜘蛛神様を連続攻撃する。
「遅くなってごめんなさい! 今、行くわ!」
アルテミアは二刀流の攻撃に全力を傾けて、蜘蛛神様を叩き切る。
(いざ殲滅です!)
フィーアは拳を構えると、飛びかかって蜘蛛神様に正拳突きを入れる。
前衛は、黒羽を除いて、全員が蜘蛛神様に何かしらの攻撃を仕掛けた。
「危ないよ! 伏せて!」
少し後ろの中衛にいた蛍が叫ぶ。
敵勢の反応速度の方がわずかに早かった。
暗闇に忍ぶ手下達は、シャー、と鋭い音と共に飛び出す。
毒蜘蛛3匹の強襲はフィーアを狙った。
蜘蛛の巣に絡められ、毒牙の攻撃を連続強打で浴びたフィーアはそのまま力尽きる。
「ウソよ! フィーアさん!」
蛍が急いで駆け寄る。回復に務めようとするが、蜘蛛が邪魔をする。
「蛍さん! 彼女を連れて逃げて! ここは私達が……!」
アルテミアが毒蜘蛛を剣技で払い除け、撤退を促す。
「ごめん、そうするね!」
防御の聖域を出した蛍がフィーアを抱えて逃げる。
***
前衛の仲間達は黒羽と蜘蛛神様の戦闘している姿が視界に入ると走り出した。
後衛にいた者達も急ぐべきだったのかもしれない。
だが、後衛という出入り口に一番近い場所にいる者の役目として門番の役目もある。
そう、逃走する手下を逃がさないように警戒しながら進んでいたのだ。
「さて……と。どうしよう、ラダさんに珠緒さん……?」
3人の中で先頭を歩いていた征斗が後方に問いかける。
「無理に追いかなくても……」
珠緒が完全に答えを返す間もなく、毒蜘蛛が至近距離で強襲に来た!
シャーっと、鋭い音を響かせ、比較的前にいた征斗と珠緒を襲う。
二人は毒牙に噛まれ、軽く悲鳴を上げながらその場で倒れる。
「やむを得まい。私が前に出よう」
ラダは最後尾から走り、飛び膝蹴りを毒蜘蛛にくらわせた。
敵に衝撃を与えると同時に、瞬時に征斗と珠緒がラダの後ろへ逃げる。
鋭い音と共に、前方からも天井からも強襲が来る。
ラダは前方からの不意打ちは避けたが、上からの毒牙に噛まれ、肩を押さえる。
「くっ。もう1匹いたか?」
ラダは、銃器を得物とした格闘の型を構え直し、再び攻撃を仕掛ける。
「とやあ! 人の恋路を邪魔する魔物は馬に蹴られて死んでしまえ、か!?」
美人情報屋のセリフをなぞりながら、毒蜘蛛に回し蹴りをかます。
「肩の毒は大丈夫……かな? 無理だけはしないでな……」
「るるる~♪」
前衛に回り敵勢と攻防するラダを征斗の回復符術と珠緒の癒しの歌で援護する。
3人の連携プレーが功を奏し、手下2匹はそう長い事なく倒された。
***
黒羽の体力はいよいよ限界だ。
だが、黒羽は不屈にも笑っていた。
いや、このままではいけない。誰かが決着をつけないといけない。
ティスルとアルテミアが同時に攻撃を仕掛け、蜘蛛神様の脚を2本飛ばす。
形勢の不利を実感した蜘蛛神様は天井へ逃げる。
「絶対に逃がさねぇよ!」
黒羽の闘気が鎖になり、蜘蛛神様を押さえつけ、天井から引きはがす。
「これで終わりよ!」
アルテミアによる裁きの蒼い炎の魔刀が蜘蛛神様の胴を真っ二つに切り裂く。
蜘蛛神様の敗北と同時に残っていた手下達は逃げ出す。
そこにティスルが立ち塞がる。
「蜘蛛は一匹も逃さないよ。後から因習が復活しても困るし!」
迷走した手下達はティスルに蹴り殺されて、この時点で敵勢は全滅した。
なお巣にあった卵も一つ残らず駆除したので、もうここには新しい因習も芽生えない事だろう。
●因習の崩壊
蜘蛛神様を討ち取った後、イレギュラーズが最初にした事は村人への報告だった。
これだけ激しい戦いを裏山でやっていたのだから、異変に気付いた村人達がやって来た。
村長を始め、村人達がぞろぞろと現れて、険悪なムードになる。
もっとも、依頼者の青年は、にやりと笑っていた。
「な、な、なんと! あんたら……あの蜘蛛神様を殺してしまったと!?」
村長は開いた口が塞がらなかった。
因習が破られてしまったからだ。
村人達は方々から声をあげて抗議した。
アルテミアがその抗議を手で制止する。
「今まで生贄を捧げれば平穏だったとしても、これからもそうだという確証はなかったはずよ? 頭の隅でわかっていても因習を止めなかったのは、どうしようもないと諦めていたからでしょう? でも、因習の元が断たれた今だからこそ、過去ではなく、未来を見据えるべきよ!」
アルテミアの反論に加えて、フィーアを介抱していた蛍が感情を訴える。
「毎年、生贄を捧げる前に、何かに頼る勇気を出せればって、思わなかったかな? ボクは依頼者さんに最大限の敬意を捧げます。こんな存在が神様って事も、それを畏れ崇める事も、どっちも認められない。多数の為に誰かを犠牲にって、ボクは絶対許せない……」
今度は別の角度から征斗が諭す。
「彼らがなんで生贄を対価に村を襲わなかったか……。まぁ、因果関係がない思い込みだと思うよ、因習なんてな……?」
それでも村長はすごい剣幕で怒る。
「し、しかし、あんたら、暴力で神様を殺すとな……」
珠緒が笑って答え返す。
「そう、暴力ですよ。暴力と恐怖で皆さまを縛っていた蜘蛛は、より大きな暴力により消し去られました。ローレットは今後も、ご依頼いただける皆さまの力となる事でしょう」
黒羽は、蜘蛛神様の切れた頭部を持ち上げる。
いきなり頭部に噛り付き、ぺっと肉片を捨てる。
「不味い。俺らに食われる程度のモノが神様とはね。笑わせてくれるぜ」
何かを探索していたラダが帰って来た。
彼女は、生贄だった者達の遺骨と遺品を村長に渡した。
「これ、大事な物なんで渡しておくな。蜘蛛がいなくなった事で、別の魔物が居つく可能性もある事は一応、注意しておく。新たな因習なんて真っ平だろう?」
村長は、そして村人達も色々とたまらなくなり泣き崩れた。
ティスルは泣き崩れる者達を笑顔で励ます。
「ともかく、悪習を破れた訳だし。破って何かあったら……その時に考えよっか!」
蜘蛛神様の因習が破れ、今後、生贄が出ないという意味では村は救われたのだろう。
因習からの解放をどう受け止めるか、後の事は村人達次第だが……。
ひとまず、めでたし、めでたし……。
了
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
シナリオ参加ありがとうございました。
何かの間違いで害虫を神格化して勝手に祀る、しかも祀られている方はなぜ祀られているのかわからず生贄を食べ続ける、というのは一種の狂気です。
そんな腐った間違っている狂気は打ち破られるべきであり、皆さんによって因習は崩壊したので、たぶん、これをハッピーエンドとでも呼ぶのでしょう……。
GMコメント
●目標
蜘蛛神様とその手下達の討伐。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
●ロケーション
『幻想』のとある地域にある田舎村の裏山の祠近辺が舞台です。
問題となる田舎村のすぐ裏が裏山です。
村から出て徒歩15分程度で蜘蛛神様の祠へ行けます。
戦闘開始(「リプレイ」の描写)は祠に着いた時点から始まります。
戦場となる場所は、この祠の『内』と『外』です。
『内』は広々とした暗い洞窟で蜘蛛神様とその手下達がわんさかいます。
明かりがない上に蜘蛛の巣だらけですので祠の中での戦闘は厳しいかもしれません。
『外』は山道となり、周辺は木々が生い茂っています。道は軽く舗装されています。
『外』での戦闘は『内』より楽だと思いますが、『外』まで敵勢を誘き出すのが難しいかもしれません。
戦闘を仕掛けに行く時間帯は皆さんの方で選ぶことができます。
●敵
今回のボスである蜘蛛神様ですが、因習では神格化されていますが、ただの大きな毒蜘蛛です。毒蜘蛛たちは蜘蛛神様の従順な手下達です。統率はそれなりに取れています。
『蜘蛛神様』×1匹
人を食べるぐらいですからそれ相応の大きさの毒蜘蛛です。
外見はタランチュラのような雰囲気の蜘蛛がかなり大きくなった感じです。
ボスですので手下達の平均サイズより一回り大きいです。
言葉は解せませんし知能も低いです。
戦闘方法は以下。
・毒牙:物理至近単体ダメージ。ランダムでBS毒です。
・蜘蛛の巣発射:物理中距離単体。ダメージなし。BS足止です。
・暗闇無効:BS暗闇が効きません。暗い中でもよく見えます。
・蜘蛛の巣無効:トラップ『蜘蛛の巣』のBS足止が無効です。
・統率:手下の毒蜘蛛達を指揮します。
『毒蜘蛛』×16匹
蜘蛛神様の手下達です。同じくタランチュラのような外見です。
人を食べますので大きな蜘蛛ですが、皆、蜘蛛神様よりは一回り以上小さいです。
強さも蜘蛛神様より1、2ランク程度弱いです。
手下達も言葉も解せず、知能も低いです。
戦闘方法は以下。
・毒牙:物理至近単体ダメージ。ランダムでBS毒です。
・蜘蛛の巣発射:物理中距離単体。ダメージなし。BS足止です。
・暗闇無効:BS暗闇が効きません。暗い中でもよく見えます。
・蜘蛛の巣無効:トラップ『蜘蛛の巣』のBS足止が無効です。
『内』で戦闘する場合
・トラップ『蜘蛛の巣』:大きくて複雑な蜘蛛の巣が所々に張り巡らされています。触れるとBS足止になりますので気を付けましょう。ダメージはありません。
・BS暗闇:祠の中は暗いので明かりがないと常時BS暗闇になります。
●GMより
今回は伝奇物テイストの魔物討伐での登場となります、ヤガ・ガラスです。
何気に私、『幻想』の古風な中世のどろどろしたお話も好きだったりします。
さて、因習の言いなりになるだけが正しい生き方でしょうか。
因習という名の蜘蛛の巣を破れば、きっと、すっきりする何かもあるでしょうね。
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