PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<クレール・ドゥ・リュヌ>鈍色の背中

冒険中

参加者 : 8 人

冒険中です。結果をお待ちください。

オープニング


 ――ああ、神よ。どうして私にこの様な試練をお与えになるのでしょう。
 私はこの仕打を屈辱を受け入れなければならないのでしょうか。

 少女の嘆きは薄暗い部屋の中に掻き消える。
 白い肌には血が滲み、屈託のない笑顔は何処にもない。
 暗い瞳に浮かぶ涙はとうに枯れ果てた。
 助けを呼ぶ声も掠れて久しい。

 少女の世界は何の曇りもない日常だった。陽は等しく昇り、夜は静かにやってきた。
 優しい人々に囲まれ、慎ましくも過ごし。幸せを神に祈る生活。
 朝は晴れやかにやってくる。
 けれど。それが叶わぬ夢となったのは、いつかの夜のことだ。
 小さな村は山賊に襲われたのだ。為す術もなく男は皆殺しにされ女子供は連れ去られた。
 陰惨な仕打ち。言葉にすることなど憚られる行為を刻みつけられ泣き叫んだ。

 ――どうして。どうして。
 なんで。なんでなんで。
 痛い。苦しい。
 死にたくない。死にたくない。
 苦しい。苦しい。痛い。
 殺して。殺して。

 もう、殺して。

「ころして……」

 ――――
 ――

「お嬢さん、こんな夜更けにどうしたの?」
 穏やかで優しそうな老婆が一人立ち尽くす少女を心配そうに見つめた。
「どこから来たの? そんなにボロボロの服で……うちに来るかい?」
 心配そうな瞳で少女の顔を覗き込む老婆。
 少女の顔は絶望と虚無の間の枯れ果てた表情を浮かべていた。
 きっと大変なことがあったのだろう。老婆は少女の肩をそっと抱いて家に誘う。
「……して」
「え? 何だって?」
 少女の掠れた声に耳を傾ける老婆。
「ころして」
 ぽつりと少女は告げた。ぽろりと瞳から涙が溢れる。
「こ、殺してって。あんたどういう事だい? 何かあったのかい? 大丈夫。大丈夫だよ。このババアがついてるからね」
 老婆はボロボロの少女を抱きしめて背中を擦った。
「……そう、そうさ。このババアがついている。ついてるからさ。あんたは心配しなくても、いいんだよ。あんたは綺麗で若いんだから、このババアと一緒に居れば。居れば。大丈夫なのさ」
 老婆はこの可哀想な少女を守ってやらねばならないと強く思った。普段の穏やかな老婆からは発露しない強い意思。この少女と一緒に居た時間などほんの数分なのにも関わらず、彼女の心は湧き上がる情動に突き動かされていた。
「私があんたの何もかもを守ってやるよ」
 これを母性と呼ぶのだろうか。老婆にも三人の子供が居た。その子らよりもこの眼の前の少女は庇護欲を掻き立てられる。毒に冒されるように。老婆の思考が塗り替えられていく。
「全部。全部。守ってあげる。ねぇ、お爺さんもそうおもうだろう?」
「婆さん、どうしちまったんだ?」
 老婆が帰ってこない事を心配した老爺が姿を表した。自分の妻がまるで別人みたいに強い意欲に燃えているのを目の当たりにし、恐る恐る問いかける。
 少女と老婆に近づいていくに連れて、老爺の耳元で囁くような声が聞こえ始めた。
 それは、狂気へと誘う悪魔の呼び声。

 ――肯定する。思うままに。欲し奪い。雄叫びを上げるが良い。

「ひ、ひぃ! 神よ。神よ! この老いぼれに加護を。お守り下さい。我と我妻をお守り下さい。お守り下さい。守って…………自分の妻を守るのは他の誰でもない。自分自身。ああ。そうだ。ワシが守らねば。全部ぜんぶ全部まもってやる。ワシがまもってやる」
 みしり。みしりと毒が回る。

 篝火の作り出す影が薄灰色のレンガに揺らめく。空には群青が広がり金色の星が煌めいていた。
 日中の暖かい日差しが嘘のように、肌を切る風は冷気を帯びている。
 何処かで土を蹴る音がした。
 ぞろり、ぞろりと幾人もの足音がレンガに反響して霧散する。


「ああ、遠路遥々ようこそおいでくださいました。ローレットの皆さん」
 月の明かりが白い法衣を映し出す。白亜の杖を揺らし『司祭』リゴール・モルトンは柔和な笑顔をイレギュラーズに見せた。これから戦場に赴くには些か不相応な程に穏やかな微笑み。
 リゴールは聖職者である。高い治癒能力を有しているとはいえ、彼の戦闘能力は皆無と言っていい。そんな彼までもが現場に駆り出され陣頭指揮を取らねばならない状況に、イレギュラーズは気を引き締めた。

「件の黄泉返り事件のことはご存知だと思います」
 このところ、天義首都フォン・ルーベルグでは黄泉返った死者に関連する事件が多発していた。親しい誰かが在りし日の姿で戻ってくる。天義において禁忌とされる死者蘇生。紛い物とはいえど愛しき人が帰ってきたとなれば、束の間であろうとこれを維持したいと思うのは道理。調査は難航し白羽の矢が立ったのがローレットであった。
「ローレットの皆さんが居なければ今頃この国はどうなっていたかも分かりません」
 レギュラーズが尽力しなければ、全てが後手に回りフォン・ルーベルグは阿鼻叫喚の地獄と化していたかもしれない。

「今回、皆さんにお願いしたい依頼は黄泉帰った死者と取り巻く魔物を退治するというものです」
「ってことはまだ何の解決もしてねぇ、ってことか」
 リゴールはイレギュラーズの言葉に頷く。
 確かに黄泉返りの死者は倒され、泥になって消えた。
 しかし、ここにきてそれらと同調するように、魔種や暴動などが発生するに至っている。
 フォン・ルーベルグの市民は非常に規律正しい人物が多く、そういった暴動は通常ならば起きうるはずがない。
 事態はかつて<嘘吐きサーカス>が居た頃のメフ・メフィートでの事件を思わせるものだ。
 レオンがざんげに確認した所によれば、<滅びのアーク>の急激な高まりもあの時を思い出させるものだという。狂気に侵された市民達は『原罪の呼び声(クリミナル・オファー)』の影響にあると見て間違いないだろう。
 だがサーカス公演のように、に分かり易く人を集め、感染を拡大する旗印が表に出ている訳ではない。
 これに対しローレットのマスターであるレオンは一つの仮説を立てていた。

 ――立て続けに起きた二つの事件が無関係とは考えにくい。
 フォン・ルーベルグの異常性の連続性から考えて戻ってきた誰かが『アンテナ』なのさ。
 俺は魔種の能力は知らん。よって、これも推測に過ぎないがね。
 自分にとって全く関わりの無い赤の他人と、自分にとって大切な誰か――より感情を揺さぶるのがどちらかなんて、魔種がどうこう以前に分かり切ってる。
 嗚呼、ただ……きっと誰にとっても不幸なのはな。
 オマエ達の調査によれば、『黄泉返り』が別段敵対的、悪意的じゃなく、生前の記憶や記録、或いは時に人間性や知性を残していると推測されている事か――もし、連中が操り人形なら、それは尚更『冷たい』話さ。
 奴等はそれをそうと知りながら、大切な誰かを狂気に落とさなけりゃならないんだから――

 ともかくイレギュラーズはリゴールに従って現場へと急行するのだった。



 それは――どこか異様だった。
 一人の少女を囲む影。

 人、人。
 人――人人人。

 間違いなくターゲットだ。
 イレギュラーズはリゴールに目配せしようと振り返るが。
 突如、彼は肩をぶつけながら三歩ほど進む。

「カティ……?」

 眼前の少女は、彼が知るカテリーナとは似ても似つかない。
 黒髪の線が細い少女というだけの、赤の他人だ。
 だがリゴールの中にくすぶる何かが、わずか一瞬だけ見当違いをさせた。

 ――何故、今此処にカティは居ない。
 死者の魂が蘇るというならば、私達二人の前に彼女が表れないはずがない。

 リゴールはロザリオを握りしめる
 ――本当にカティは死んだのか。その死をお前は見たのか。アラン!

『もしも彼女が戻ってきたならば』

 その胸に去来する刹那の想いが、瞳を曇らせる。

 きっと何かの呼び声から耳を閉ざすように。
 きっと何かにすがるように。
 彼はイレギュラーズへと振り返る。

 ほぼ同時だったろうか。人々の瞳がイレギュラーズ達へと一斉に向けられた。

GMコメント

●目的
・黄泉返りの少女、魔物の討伐
・市民の制圧

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

●ロケーション
 天義首都フォン・ルーベルグの外れ。明かりが灯されているので戦闘に支障はありません。
 イレギュラーズが敵と遭遇した所からスタートです。
 最奥に黄泉返りの少女。その前に魔物とおかしくなった市民が居ます。

●敵
 黄泉返りの少女と魔物。
 敵とは言えないのですが原罪の呼び声を受けつつある市民が数名います。

○黄泉返りの少女「ナタリーナ」
 黒髪で優しげで素朴な村娘でした。16歳程。
 今は絶望に涙すら枯れ果て「殺して」とつぶやいています。
 生前の記憶から、見た目が荒くれ者に近しい人物に対し怯え逃げようとします。
・殴る(物至単:ダメージ極小)
・アンテナ(P):自分の意思に関わらず対峙したものに『原罪の呼び声(クリミナル・オファー)』を掛けます。

○大狼
 巨大な狼の魔物。雷を操り俊敏です。
・迅雷(神遠範:ダメージ大、BS【感電】)
・牙顎(物至単:ダメージ特大、必殺、BS【流血、失血】)
・刺撃(物遠貫:ダメージ特大)

○白蛇
 巨大な蛇の魔物。硬い鱗に覆われタフです。
・蛇目(神遠域:ダメージ大、BS【停滞】)
・蜷局(物至単:ダメージ特大、BS【苦鳴、懊悩】)
・毒霧(物中範:ダメージ特大、BS【猛毒、致死毒】)

○魔狼×10体
 狼の魔物。戦闘能力はそこそこ。
 大狼の命令で動きます。

○おかしくなった市民×5名
 呼び声の影響で狂気に染まりかけています。
 戦闘能力は皆無ですがマーク、ブロック等の妨害を行います。

●味方
○『司祭』リゴール・モルトン
 スペックは回復特化です。戦いは不得手。
 今彼は。何かに抗っています。
 そんな彼に皆さんは――

  • <クレール・ドゥ・リュヌ>鈍色の背中 冒険中
  • GM名もみじ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 出発日時2019年05月18日 23時59分
  • 参加人数 8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険中です。結果をお待ちください。

参加者一覧(8人)

如月 ユウ(p3p000205)
浄謐たるセルリアン・ブルー
鶫 四音(p3p000375)
カーマインの抱擁
レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)
死を呼ぶドクター
グドルフ・ボイデル(p3p000694)
山賊
シキ(p3p001037)
藍玉雫の守り刀
ジルーシャ・グレイ(p3p002246)
調香師
ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)
蒼ノ翼
ヤナギ(p3p006253)
撃鉄の

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