PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<クレール・ドゥ・リュヌ>歎きの君はゆるやかな毒に似て

冒険中

参加者 : 10 人

冒険中です。結果をお待ちください。

オープニング

●遥か過去
 ぎしり、と病室のベッドを軋ませる。
「もうすぐですよ」
 膨らむ腹を撫でながらエイル・ヴァークライトはにんまりと笑みを浮かべる。
「ああ。エイル、辛くはないですか?」
「誰だと思って居るんです? これ位! 辺境でモンスターの卵を奪取したときよりもへっちゃらですよ。……はやく、逢いたいですね」
 とん、とん、と腹を蹴る衝動は時折痛みを伴うものではあったが、エイルはそれさえも心地よく感じていた。
「名前を決めたんです」
「名前?」
「ええ、名前――。この産まれてくるこの子の、名前は――」


 聖ジルベール孤児院。
 聖都にその拠点を置く神の徒たちが、父母を失った幼い子を養育し、正しき信仰へ導く場所である。
 古くから聖都に拠点を置いていたこともあってか、建物は老朽化し都市部より幾許か郊外へ移されたのだが――その元孤児院に最近、子供達が出入りしているのだという。
「サントノーレ、それで?」
「頼ってくるなんて意外だったぜ、イルちゃん」
 冗談を言うな、と声を潜めながらも苛立ちを見せるイル・フロッタ。周辺の住民に怪しまれぬようにか大人しい白のワンピースを着て町娘を演じている。
 それに合わせるように落ち着いた聖職者然とした格好の探偵サントノーレ・パンデピスはポケットに手を突っ込んだまま湿気た煙草に小さく舌打ちした。
「……こりゃ黒だな」
「ふむ」
 イルが顔を上げる。彼が言う黒――それは世間を騒がせる『黄泉還り』事件の話しか。
 出入りしている子供達がそうであるのか、それとも……。
「ところで、イルちゃん。ヴァークライト家って知ってるか?」
「ヴァー……そういえば、ローレットに居ただろう? スティアという幻想種の……」
 共に仕事をしたり祭りで遊んだ相手なのだとイルは何処か思い出したようにへらりと笑う。「ががーん」と驚く様子は可愛らしかったのだとイルは胸を張った。
「その家、当主の『アシュレイ・ヴァークライト』の不正義で断罪されてるっしょ」
「……ふむ?」
「そのスティアちゃんはヴァークライト家の生き残り。騎士の叔母さんがスティアちゃんだけを護って一族を断罪したとかなんとか――まあ、そういうワケさ」
 ゴシップなら聞いていないと唇を尖らせるイル。サントノーレは「こんな時にゴシップ話すと思うかい?」と表情を曇らせる。
「ここまでの話は『この国ならよくある』事だ。そうじゃないのは――」
 僅かに開いた孤児院の隙間からきょろりと周囲を見回す子供は『まるでそれを言いつけられている』かのようだ。
「……リスティ・メイロッド。あの子、死んでるよ」
「――ッ」
 イルが顔を上げる。他の子供は生者なのだろうか、覇気がありリスティの手を引いて走り出した。
「騎士様」と呼ぶ子供の声がする。扉の向こうから顔を出した男の姿にサントノーレは手にしていたファイルをイルへと投げた。
「わ、いきなり何を――……!?」
「アシュレイ・ヴァークライト。面影はあるだろ、ありゃ、その人で――」
 彼が気遣う様に人気ない孤児院から外へと連れ出したのは美しい――スティアの面影を感じさせる――女であった。
「あれがエイル・ヴァークライト。そのスティアちゃんを『産んだ時に死んだお母様』だ」

●歎きの君
 誰もが羨む様な夫婦であったと、アシュレイ・ヴァークライトは自負している。
 美しくそれでいて物怖じすることのない――やんちゃが過ぎる所はあるが――妻は貴族としての在り方をよくよく理解してくれていた。
 エイルと呼べば綻ぶ笑みに、魔術に長け知識も豊富であった彼女の話は何時だって楽しいものであった。
「日常生活にはスパイスが必要よ」と笑う彼女の胎に新たな命が宿った時に、三人で共に歩んでいくことを夢に見た。
 しかし――しかし、彼女は運が悪いことにそれからの運命(みち)を違えてしまった。
 忘れ形見となった娘へと愛情を注ぎ、彼女を大切に、大切にと育てて来た。
 ならば、その『愛しい忘れ形見』にも似た少女を断罪することができるだろうか?
 泣き続ける幼い少女をその刃で骸に還る事など、できなかった。騎士としての道を違えたのは、娘を護ろうと妻に誓った身として間違いではなかった。
 私の正義は妻と娘のためにあった。

「どうしましたか?」
 ならば、今、目の前に或る『人形(つま)』を護るのも彼女の騎士の役目だ。
 娘と同じ年頃の月光人形たちが不正義として断罪されぬようにこの場所で共に匿おう。
 エイルもかわいいスティアの事を聞けば、そうすべきだと納得してくれた。
「スティアも8歳になっていたんですね」
「ああ、私が『死んだことになった時に』だから……もう、大人びているかもしれない」
「あら、じゃあ、今は幾つでしょうか? ええと――16歳?」
 素敵ですね、と笑う。娘をその腕で抱く事のできなかった彼女の慈愛は確かな強欲の気配を孕みながら、ゆるやかな毒の様に周囲に広がっていた。


「つまりフォン・ルーベルグにも幻想で起こった魔種の一件に似た状況が起きてる、と」
 サントノーレが表情を曇らせた。狂気に侵された人達の増加は確かな所で目に見えている。
 神託の少女『ざんげ』が<滅びのアーク>の増加を宣言し、魔種による狂気『原罪の呼び声(クリミナル・オファー)』が生じているのだそうだ。
 その発信源は、突然起こった黄泉還り事件で『還ってきた人々』ではなかろうか。
「黄泉還りの人間が――?
 それは、その……ッ、『黄泉還り』は生前の記憶を無機質になぞっていたし、確かにそこに有った。最後は、泥人形になったけれど、本当に『そこに居た』ようだった――のに」
 それこそが発信源で、操り人形であったならば、とイルが唇を噛み締める。自身の母の事を思えばこそ、イルは胸が締め付けられるかのような気持ちであった。
「ローレットが対応してなきゃ、もっとひどいことになったかもしれないぜ、イルちゃん。
 少しでもその芽を摘めてるなら上々だろ。とりあえず情報は貰ってきたから……ほら」
『原罪の呼び声』は、この聖都には無関係化と思われた魔種の手によるものだった。
 七罪『ベアトリーチェ』の月光人形(クレール・ドゥ・リュヌ)。以前のものよりもより非情な存在となって居る。生前の記憶を朧気に持ちながら、生前と同じ振る舞いをするというものだ。
「サントノーレ、その人形は『分かって』いるのか?」
「分かってるわけないだろ。分かってやってんなら『ひどすぎる』」
 その言葉に、イルはぐ、と噛み締めた。眺める孤児院より見える月光人形達を眺めた。
「――で、どうすれば、いいんだ」
「きっとアシュレイ・ヴァークライトとは衝突することになるだろうけどさ、
 エイル・ヴァークライトに手を出さなければ『ここでは難所』じゃないだろうね。
 問題は数の多い月光人形たち。それの対応をしてほしいってユリーカちゃんが」
 イルは小さく頷く。もう直ぐローレットの冒険者達が此処に辿り着くはずだ。
 幼い、まだ10にも満たない少年少女。生きている者も死んでる者もいる彼ら。
 生きて居てはいけないものを殺すのは――どうして心が、痛むのだろう。

GMコメント

 夏あかねです。

●成功条件
・月光人形数体の撃破
・アシュレイ・ヴァークライトの撃退(生存・死亡は問わず)
 また、エイル・ヴァークライトに関しては今回は成功条件に含まない事とする。

●元聖ジルベール孤児院
 聖都にある孤児院。老朽化により移転されましたが、移転前の建物はそのまま残っています。
 其処に出入りする10歳以下の少年少女たちの姿こそが『月光人形』でしょう。
 今まで、街を闊歩していた『月光人形たち』が一同に介し、身を潜めながら生前の様に普通に過ごし、狂気を伝播しています。

●アシュレイ・ヴァークライト
 魔種。亡き妻の忘れ形見であるスティアを溺愛しており、スティアと似た境遇の少女を護るために不正義とし断罪された過去を持つ。
 彼自身の戦闘能力は天義の騎士として強敵に分類される。また、最愛の妻を護る為ならばその刃を振るう事を辞さない。娘に関しては幼き頃の面影を強く抱いており、現在については識る所にない。
 呼び声を発する。その呼び声は愛情と混ざり合った怠惰。そこに幸せがあると思い込んだ罪と罰。彼の呼び声は心情的に寄り添えば寄り添う程に伝播する確率が上がる。

●エイル・ヴァークライト
 若くして亡くなったアシュレイ・ヴァークライトの妻。娘を出産した際に死亡している。
 明るく、穏やかな美人であり、魔術に長けそれなりに名のある冒険者であった過去がある。おてんばさはなりを潜めているが、慈愛に満ち、気高さを失わない。
 呼び声は狂気として広がり続け、慈愛、そして『強欲』。母への愛や、心情的に寄り添う事で呼び声に伝播する可能性が高まる。

●月光人形の子供達×10
 危険時に戦闘能力を有することとなる月光人形たち。孤児や幼くして亡くなった子供達が生前と同じ様に身を寄せ合い、街にその狂気を伝播している。
 ある孤児は『里親』を狂気に陥れた後に、ローレットの噂を聞き身をよせ、
 ある孤児は聖職者の許に身をよせ狂気に陥れた後に、ローレットの噂を聞き身を寄せました。
 エイル(月光人形)とアシュレイ(魔種)の庇護下にありますが、彼らを護るのは生者の少年たちです。

●生者の少年少女×10
 孤児じゃ事情のある者たち。狂気に触れ、狂気に堕ち掛けています。
 自身らと同じ境遇の月光人形たちを兄妹として接しており戦闘能力は低いですが彼らを護るためなら身を挺します。
 ※彼らの生死に関しては成功条件で問いません。

●呼び声
 魔種、月光人形それぞれから発されるため純種の皆さんはお気を付けください。
 慈愛に満ち、愛情に満ち、ただ、当たり前の幸せがそこにはあるのです。

●イル・フロッタ
 天義貴族の母と旅人の父を持つ騎士見習い。
 良くも悪くも『普通の少女』です。それゆえに『正義の遂行』に忌避感を覚えています。それは自身が未熟故に『正義の遂行』が出来て居ないと考えています。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

●Danger!
 当シナリオにはパンドラ残量に拠らない死亡判定が有り得ます。
 予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。

よろしくおねがいします。

  • <クレール・ドゥ・リュヌ>歎きの君はゆるやかな毒に似て Lv:7以上冒険中
  • GM名夏あかね
  • 種別EX
  • 難易度HARD
  • 出発日時2019年05月18日 23時59分
  • 参加人数 10/10人
  • 相談7日
  • 参加費150RC

参加者 : 10 人

冒険中です。結果をお待ちください。

参加者一覧(10人)

グレイシア=オルトバーン(p3p000111)
叡智のエヴァーグレイ
ルアナ・テルフォード(p3p000291)
命の重さを知る小さき勇者
シャルレィス・スクァリオ(p3p000332)
疾風蒼嵐
Lumilia=Sherwood(p3p000381)
白綾の音色
スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)
本当に守りたいものを説く少女
リジア(p3p002864)
Esc-key
サクラ(p3p005004)
神無牡丹
エリーナ(p3p005250)
フェアリィフレンド
プラック・クラケーン(p3p006804)
幸運と勇気
ルチア・アフラニア(p3p006865)
斜陽

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