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シナリオ詳細

Rインダストリーズと死の商人
Rインダストリーズと死の商人

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ある紳士の調査記録
「マンダリン観光事務所へようこそ。観光ですか? 登録ですか?」
 白いカウンターテーブル。端に並ぶ旅行パンフレット。
 清潔なオフィス内の時計には小さくRの文字が刻まれている。
 カウンター越しに立った男はステッキ傘をつき、眼鏡を中指で押しあげるようにして述べた。
「海沿いの町を時計回りに三週回りたい。息子と娘にお土産を三つずつ買えるように。三日後に出発する便はありますか?」
「……こちらへどうぞ」
 受付嬢は手元の小さなボタンを押すと、奥から別の男を呼び出した。
 長身の男だ。黒い革のジャケットとパンツを纏ったスキンヘッドの男はクチャクチャとガムを噛みながら、サングラスを光らせた。

「ザムエル・リッチモンドがこの世界にコネクションを広げている」
 両手を組み、低い声で語る紳士。名を新田 寛治。
「あなたの専門はマジックアイテムの横流しだ。その中に……このメーカーの商品が混じっていました」
 寛治が突きだしたのは、練達で作られたと思しきマジックライフル。
 信頼性が高く最近では幻想や鉄帝、海洋でも広く流通している品である。メーカーのロゴに『R』の字が大きく入っているのが特徴だった。
「アール・インダストリーズ。
 世界的にも有名になりつつある兵器メーカーです。
 特に魔法の電子処理に優れていて、組み込まれているチップは並の技術者とはかけはなれたセンスがある……」
 続いて取り出した親指の爪ほどの情報チップ。
「私はこのセンスに、とても覚えがある」
「………………」
 サングラスにスキンヘッドの男は暫く黙っていたが、深く腕組みをして、ゆっくりと息を吐いた。
「『連中』を探るのはよした方がいいっすわ」
 『だから帰ってくれ』という言葉が、寛治が三つ目に取り出した金貨によって止まった。
「……本気すか」
「ええ、勿論。彼は危険な男です。野放しにすれば、きっと『世界人口の適正化』を謀るはず」
 男はサングラスを外すと、そのフレームの中に巧妙に隠されたマイクロフィルムを引き抜いた。
「簡単にはいかないすよ」
「それでも、やらなければなりません」
 二人の間で、金と情報が交換された。

●Rインダストリーズ
 『黒猫の』ショウ(p3n000005)はマイクロフィルムの解析データを開いて、酒場のテーブルに広げていた。
 まわりには数人のイレギュラーズ。
「アール・インダストリーズはごく一般的な兵器メーカーだよ。社長も普通の商人さ。……表向きには、ね。
 特殊な訓練をうけたエージェントが命がけで調査を行なって、やっとつきとめたところによると……その裏の支配者は『ザムエル・リッチモンド』。
 混沌世界の人類が争いをやめず、多くの自然環境が失われていることを思い、戦争機構そのものを破壊し、更に人類が大規模戦争を行なえないレベルにまで減少させることで環境を保護しようと考えた……いわゆる狂人さ。
 『天才で狂人』ってところが、厄介なんだけどね」
 ショウの話すところによれば。
 ザムエルはアール・インダストリーズという安定した兵器メーカーを世に広め流通を支配し始めているという。
「けど兵器にはどうしても金がかかる。
 そこできわめて安価なコピー品をわざと市場に流して広めさせて、仕込んで置いた魔術暴走システムを一斉に起爆しようと企んでいるらしい」
 マイクロフィルムの解析データを指でつつくショウ。
「これはコピー品の流通を担っている商人のリストだ。
 彼らから情報を獲得すれば、取引の現場を押さえることができるはず。
 勿論そんな場所にザムエル本人が出向くとは思えないけど……計画の一つを確実に潰すチャンスではある」
 ローレットは、そしてイレギュラーズは決して正義の味方でも慈善団体というわけではない。が、世界の破滅を防ぐという大目的を前に人口が激減するなどという事態はやはり避けたい。
「どう? 行ってくれるかな?」

GMコメント

 このシナリオは【情報収集パート】と【戦闘パート】の二つに分かれます。
 情報収集パートでは『取引を完全に止められるかどうか』が、戦闘パートではシナリオが成功するかどうかが決定します。

 情報が十全に集まれば最初の取引を潰し、後の強い牽制になる。(仮にこっそりやろうとしても証拠を持ち込まれた幻想の警備組織がかなり有効に動いてくれる)
 たとえ情報収集がいくらか失敗しても、コピー品の裏取引をあとから一つでも潰すことで牽制にはなる、ということを指します。
 
【情報収集パート】
 マイクロフィルムに記録されたリストの人物をあたり、『Rインダストリーズのコピー品を取引する場所と時間』という情報を引き出します。
 方法は自由。ただしトライできるのは『一組につき一人まで』とします。

情報を引き出すプレイングによって『情報ポイント』が1~3ポイント入り
 合計で6ポイント以上獲得することが出来れば、取引完全阻止フラグが獲得できます。

●調査チームの分担
 今回の参加PCを2~3人ずつでチーム分けしてください。
 3:3:2の三組でも、2:2:2:2の四組でも構いません。
 組み分けが決まったら、以下のリストのうちから調査対象を『一組につき一人だけ』選び、情報収集プレイングをかけてください。
 複数の対象へのプレイングや、別の組への手伝いプレイングは空振り扱いになるおそれがありますので注意してください。

●調査対象
・大酒飲みのヴェック
 いつも同じバーで目撃されている。
 酒が好きで、特に高い酒には目が無い。
 ただしRに関する情報は『漏らせば死ぬ』と分かっているので、直接聞き出すにはもうひと工夫が必要。

・ずる賢いエトウ
 大小の商人を抹殺、支配することで商売を広げている悪徳商人。
 Rの危険性は理解しているが、自分の利益をあげるためなら裏切りもするだろう。
 紹介状があるため接触することは可能だが、常に護衛が多く交渉ごとに対して非常にずるがしこいため簡単に情報を引き出すことができない。
 
・小心者のパージ
 臆病で滅多に人前に姿を見せない男。
 武力で脅せば情報を吐くとは思うが、見つけるのがかなり難しい。
 存在することは確かだが執拗なまでに誰かに見つかるのを恐れ、隠れて生活している。
 物理的な捜索手段は勿論、有効な人脈や情報収集、その他工夫を積み重ねる必要がある。

・成り金ゴルドバ
 スラム出身だが武器商売で大金持ちになった男。
 女遊びが激しく、よく娼館通りで目撃されている。
 色仕掛けが有効そうだがちゃんとした所からしか娼婦をとらないため、キャッチは難しい。
 いっそちゃんとした娼婦になってみるのも手か。

・鉛歯のジージェイ
 武闘派武器商人。
 銃弾を前歯で噛んで受け止めたことからこう呼ばれた。
 彼について調べようとすると十中八九命を狙われるので、いっそ正面からアジトへカチコミをかけてはき出させるのがよい。
 用心棒や部下が配置されており戦闘難易度がやや高め。

【戦闘パート】
 メタ情報になりますが、真相究明段階に至ると戦闘が発生します。
 自分の得意な、そしてメンバーと連携しやすい戦闘方法を書いておきましょう。

 湾岸倉庫にて行なわれる取引現場に突入し、商人およびその護衛、そして取引相手とその部下全員を相手に戦闘を行ないます。
 対人戦。敵の数は合計で8人程度。武装は不明ですがマジックライフルをはじめとするやや良質な兵器を保有しています。
 ですが、若干の内輪もめが行なわれているためガンガン攻めるとわりとスムーズに事が運ぶでしょう。
 ただし相手も必死なので、PCはパンドラ減少リスクを負う可能性があります。

【アドリブ度(高め)】
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 特に情報収集パートはアドリブを多く用いる可能性があります。

  • Rインダストリーズと死の商人完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年05月21日 22時35分
  • 参加人数 8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ラノール・メルカノワ(p3p000045)
濃紺に煌めく星
シルヴィア・テスタメント(p3p000058)
Jaeger Maid
サイズ(p3p000319)
隠名の妖精鎌
橘 零(p3p002765)
ひつまぶし
十六女 綾女(p3p003203)
毎夜の蝶
新田 寛治(p3p005073)
ファンドマネージャ
村昌 美弥妃(p3p005148)
不運な幸運
エル・ウッドランド(p3p006713)
イカダ漂流チート第二の刺客

リプレイ

●Rインダストリーズ
「ようやく……ですか」
 マンダリンの川辺に並ぶカフェレストランRomanesque。外に向けて鏡対象になったロゴを背にして、窓際のソファ席に『ファンドマネージャ』新田 寛治(p3p005073)は座っていた。
 ナプキンで口元をぬぐうと、チップとサンドイッチの料金を重ねてテーブルの端へ置いた。
「ようやく、『奴』を止める手がかりがつかめました」
「戦争を止めるために戦争をする……それ自体は理解できる思想であるはずなのに、道筋が違えばこうまで敵対的になるものなのか……」
 ソーセージと蒸しジャガイモのセットにフォークを刺しつつ、『濃紺に煌めく星』ラノール・メルカノワ(p3p000045)はやりきれない顔で目を細めた。
「『奴』の戦争は滅亡のための戦争です。魔種に脅かされているこの世界で人口の大幅減少など起こせば人類の滅亡すら起こしかねません」
「もしかしたら、そのザムエルって男も魔種の狂気にあてられてしまったのかもしれないな」
「元々狂人ではありましたが、ね」
「ヒヒ……」
 コーヒーカップの縁を指でなぞる『Jaeger Maid』シルヴィア・テスタメント(p3p000058)。
 ギザ歯を見せて笑い、椅子に深くもたれかかった。
「なんだっけ? 戦争はいつもインテリが始めるもんだとか、そういうやつ」
「戦争は交渉の一手段、のほうじゃなくてか」
 フォークの側面をじっと見つめ、反射する曲面を観察する『隠名の妖精鎌』サイズ(p3p000319)。
「まあ似たようなモンだろ。よくある話だ」
 ひとしきりフォークの『ゆるいとがり具合』を確認したあと、ハンバーグへと突き立てる。
 コーヒーの中身を熱いまま煽って、シルヴィアはカップを皿に置いた。
「よくある話だが……効率的ってのがちょいと気になるね」
「…………」
 隣に座っていた『イカダ漂流チート第二の刺客』エル・ウッドランド(p3p006713)がちらりとシルヴィアのほうを見た。
「効率で大衆を殺そうとする人は大衆を操作できるから、厄介なのよね」
 いわんとすることを訳すように、『毎夜の蝶』十六女 綾女(p3p003203)が低めの声で呟いた。
 料理には手をつけず、自分の爪を見つめている。
 人を意図的に誘惑しようとするとき、先端に気を遣う。
 指の爪、つま先、頭髪の毛先、睫、眼球の表面。剣における刃の鋭さを研ぐように、綾女は女の武器をいつも研いでいる。
「それにしても、随分な仕事ね。女の武器を使って情報を抜いてくる……か」
「武器は使い方が大事、デスよねぇ」
 同じように爪の手入れをしながら、『不運な幸運』村昌 美弥妃(p3p005148)が風俗情報誌をめくった。
 どういうアンテナにひっかかったのかは分からないが、気づいた場所に付箋とペンの印をつけていた。
「ま、なにはともあれ……」
 皿にのったハンバーガーを手づかみでかじり、ストローからコーラをすする『ひつまぶし』橘 零(p3p002765)。
「情報収集なら得意分野ッスから、今回はがんばるッスよ。足を使うのはアレッスけど……まあこの辺知り合いもいるんで」
 さいごのひとかけを口に放り込んで、ナプキンで乱暴に指をぬぐう零。
「じゃ、そろそろいくッスかね」
 立ち上がろうとする零に、寛治がカードを一枚滑らせた。
 それをさりげなく受け取り、サイズに目配せをして立ち上がる。
 合図を受けてサイズもまた、彼女のあとについて店を出て行った。
「じゃ、アタシもそろそろ」
 同じように滑らせたカードを手に取り、ラノールの襟をひっぱって店を出て行くシルヴィア。
 四人が店を出たのを確認して、綾女と美弥妃も顔を見合わせた。
「じゃあ、私たちも行動を開始するわね。集めた情報はまたこの場所で交換しましょ」
「お互い頑張りましょうねぇ」
 とろんと蜜のように微笑み、手を振って店を出て行く二人。
 残されたエルは、おそるおそる寛治の方を見た。
「あの、この店の会計って……」
「はい」
 寛治は眼鏡を中指で押した。
「どうやら私の払いになったようです」
 このあと寛治は『領収書をください。ギルド・ローレットで』と言って長財布を取り出した。

●小心者のパージ
「安価なコピー品の流通か……鍛冶屋としてちょっと許せないな。武器は質のいいのを流さないといけないのに」
 マンダリンの空を飛行しながら、サイズはあちこちの武器店で聞き込みをした。
 ほとんど町中の(地図に載っている程度の)武器屋を回った後で、ベーグル片手に公園のベンチへと降り立つ。
「そっちはどうッスか」
 先にベンチに腰掛けベーグルサンドをかじっていた零が手を翳した。
 肩をすくめてみせるサイズ。
「こっちは空振りだな。まあ、普通に聞き込みをして見つかる程度の奴じゃあないってのは分かった」
「闇の武器商人ッスからねえ。そう簡単に情報を配って歩いちゃいないッスよ。むしろ、情報を隠すために金を払って回ってる可能性すらあるッス」
「かもな……話の通り、そうとう用心深いやつらしい」
「けど、この世から消えたり土に埋まったりできるわけじゃあないッスから」
 零はベーグルサンドの紙袋をサイズに押しつけた。
 なんだくれるのか? と紙袋の中身を見ると、ナプキンだけが入っている。
 ゴミじゃ無いかとくしゃくしゃにしようとして、ナプキン表面に走り書きされた文字列に目をとめた。
「これって……」
「26進数の暗号ッス。ネット仲間で、そういうの好きな奴がいるッスよ」
 ベーグルサンドを頬張って、零は町の地図を広げて見せた。
「ん? ああ……座標か」
「そういうことッス。飲食店を中心に情報を集めてみたんッスよ。パージは自分につながる情報を執拗に隠蔽して回ってたッスけど、パンやチーズを買う店まで口止めして回らなかったみたいッス。そこまで金と時間がなかったんスね」
「で、これはその購入記録がある店、ってわけか」
「焦点は絞れたッスね」

 それから暫く。
「くそっ、見失った!」
 サイズは空からきょろきょろと地上を見回し、歯噛みして叫んだ。
 見晴らしのよい場所から手を翳す零。
「惜しかったッスね……活動エリアを絞り込んで張り込みするまでは良かったッスけど、物理的に見つけて捕まえるまでのフィニッシャーが足りなかった感じッス」
「だな……張り込みを続けるか?」
「この手の奴は一度追われたらもう同じ場所に出てこないッスよ。ネズミみたいなもんッス」
「そうか……」
 零のそばに着陸するサイズ。
「これからどうする?」
「情報量的には手ぶらってわけでもないッスから。一度皆と合流して手に入れた情報を報告しとかないッスか?」
「だな。そうしよう」
 二人はパージを取り逃してしまったが、役に立つ情報を得ることはできたようだ。

●成り金ゴルドバ
「おい、新しいコが入ったらしいな」
 マンダリン裏通りの酒場にて、小太りな男が入って早々そんなことを店主に言った。
 店主は少し嫌そうな顔をしたが、すぐに揉み手と笑顔を作って見せた。
「ええええ。どうぞ」
 皆まで言わずに番号のついた部屋の鍵をカウンターに置く。ゴルドバは鍵をひったくるように奪うと、酒場二階に通じる階段を見た。
 ここは酒場兼宿屋として経営されており、酔いつぶれた客がそのまま宿に泊まれるようになっている……というのが表向きの体面である。
 酒場は裏通りにひっそりとたっており、宿をとらねばならないほどの客が来ることはまずない。
 この店の宿スペースは、『偶然』相部屋になった男女が『偶然』一夜限りの関係を持ち『偶然』店主に多くチップを払った後に『偶然』女性が一日限りの清掃バイトを高額で請け負うという形で使われていた。
 いわゆるギリギリ合法的な『いかがわしいお店』である。

「あら、いらっしゃい」
 部屋のベッドに腰掛け、ゆっくりと足を組む綾女。
 ゴルドバはその仕草と声色で、多くを悟り多くを言外に受け取った。
「ねえ、二人っきりでお話しない?」
 綾女の誘いに、ゴルドバは趣味の悪いネクタイを緩めた。
 斜め後ろについていた巨漢のボディガードが顔をしかめる。
「旦那……」
「もう、独り占めはだめデスよぉ」
 甘い声を出してシャワールームから出てくる美弥妃。
 ゴルドバとボディガードを見比べ、美弥妃はボディガードの方へと歩み寄った。
 首に手を回し、小指から順にジッパーでも閉じるように手を組む。
 そうしてぶら下がるようにボディガードに身体を密着させると、『シャワーはいかがデスかぁ』と囁きかけた。
 その様子を見てニチャリと笑うゴルドバ。
「いいじゃあないか。丁度ツーペアだ。隣に部屋をとってもいいぞ」
「…………身体検査はさせて貰いますよ」
 警戒心の強い目で綾女を見るボディガード。
 綾女はパチンとウィンクをして、着ていたコートを肩から滑るように脱いで見せた。
「どうぞ?」

 翌朝。
 すやすやと眠るゴルドバの枕元に一枚の名刺が置かれていた。
 赤いルージュのキスマークと、『楽しい夜をありがとう』という筆記体でのメッセージ。
 ゴルドバもボディーガードも特別危害を加えられることなく、そして金を取られるようなこともなかったために、ただただ一晩いい思いをしただけ……だと、彼らは思っていることだろう。
「さてと、必要な情報は手に入ったし、ここにはおさらばしましょ。ナイスフォローだったわ、美弥妃」
「いえいえぇ。ピンチはチャンス、デスよぉ」
 美弥妃と綾女はにっこりと笑い合って、酒場をあとにした。

●ずる賢いエトウ
 船舶観光の途中にある土産物屋。その奥へ入っていくと、大きなガレージがある。
 船舶やそのパーツを置いておくためのスペースに見えるが、コンテナを開けばいくつものマジックライフルや弾薬のコピー品が詰まっている。
「どうやってオレのところまでたどり着いたのかはしらねえが……」
 ガムを噛みながら、スキンヘッドの男エトウは顔を左右非対称に歪めた。
 一分も噛まぬまま床にガムを吐き捨て、新しく板状のチューインガムを開いて口に放り込む。
 ガムを噛むたびに、こめかみ付近に掘られたマムシの入れ墨が歪んだ。
「取引に噛ませて欲しいたぁ、どういう理屈だ。あ?」
「言葉の通りです」
 寛治は折り目正しく頭をさげ、両手で名刺を突きだしていた。
 両サイドに立つ、パンク趣味のジャケットを着た男が名刺をひったくって戻り、マムシタトゥーの男へと手渡した。
 受け取った名刺を、目を細めて見る。
「アラ、タ……?」
「新田(ニッタ)、でござります。エトウ様。
 あなたの下部組織として、取引に加えて頂きたいのです。対価として利益の三割を上納する形で相談したいのですが――」
 名刺から顔を上げたマムシタトゥーの男、エトウの表情が一層険しくなった。
 それを目で察した寛治は、頭を上げて胸をはる。
「今は信用の無い状況です。まずは五割でいかがでしょうか?」
「八割だ」
 名刺を床に放り投げるエトウ。
 その上にガムを吐きつけて、新しいガムを取り出した。
「八割ならルートを一本譲ってやる」
「…………」
 落ちた名刺を見て眉をわずかに動かす寛治。
 が、寛治は呼吸を整えて話を続けた。
「私には独自の武器流通コネクションがあります。エトウ様の資金力と合わされば、シェアの拡大は確実なものとなるでしょう」
「そのコネクションとやらを俺によこせばハナシは早い」
「手渡しできるものではございません」
 おわかりでしょう? と首を20度ほど傾げて見せると、エトウは初めて口の方端だけをあげて笑った。
「いい度胸だ気に入った」
 数歩あるき、寛治の前まで来ると、新しいガムを一枚寛治へと差し出した。
 何気なくそれを受け取ろうと手を伸ばした寛治――のネクタイを掴み、引き寄せるエトウ。
「テメェの流通とやらが口先だけじゃねえって証明はできるんだろうな?」
「ええ……」
 表情を変えぬまま、斜め後ろへと目をやる。
 ひかえていたエルが二度頷いた。
 これは『全員が自分たちに敵意を持っている』の隠しサインである。
「彼女は護衛兼デモンストレーターです。武器の性能を最大限に引き出し、その価値をアピールすることもできるでしょう」
「そうかい。じゃあこういうのはどうだ」
 エトウがパチンと指を鳴らすと、周囲を固めていた男たちが拳銃をエルへと向けた。素早くブルー・インパクトを抜いて構えるエル。
 が、まだ撃ち合わない。指示を仰ぐ目でエルは寛治を見た。
 そこは自分で考えてくれという目を返したが……そうも行かないようで寛治は咳払いをした。
「ご冗談を」
「ヘッ……」
 寛治を突き飛ばし、エトウはガムを横に吐き捨てた。
「ルートはやれねえな。信用ができねえ。けど営業マンとしては使ってやってもいいぜ」
「……仕方ありませんね」
 寛治は降参だという風に手を翳してみせた。

 この後、二人は無事に帰されたが肝心の情報を得ることはできなかった。
 だが今回得た小さな情報を他と組み合わせることで、きっと重要な手がかりになることだろう。

●鉛歯のジージェイ
 裏通りの真ん中を歩くラノールとシルヴィア。
 むき出しの日本刀を肩に担いだシルヴィアの笑顔に、通り正面の事務所に立っていたアロハシャツの男が慌てた様子で懐に手を入れた。
「よう、『遊び』に来たぜぇ……!」
 懐から銃を抜くよりも早く走り、相手の腕を切りつけるシルヴィア。
「やっぱこっちの方が性に合うよなぁ」
「まあ、違いない」
 ラノールは助走をつけて跳躍すると、積み上げられた木箱を駆け上がり事務所の窓淵にマトックを引っかけ、両足で蹴り破るようにして突入した。
「うおっ……なんだてめえ!」
 武器商人の事務所である。武器は文字通り売るほどある。麻雀遊びに興じていたジージェイは雀卓を蹴り倒してバリケード化すると、足下に置いていたサブマシンガンを乱射した。
 狭い部屋の中を走るラノール。
 銃弾がまるでよけて通っているかのごとく、ラノールに一発たりとも当たらない。
 一方のシルヴィアはメイド服の下から手榴弾を取り出し、歯でピンを抜くと事務所の中へと連続して放り込んだ。
「おい!」
「得意だろ? よけれくれや」
 にやりと笑うシルヴィアに、ラノールは苦笑してマントを振った。
 爆風をかわし、どさくさに紛れてバリケードを飛び越える。
 一方外ではシルヴィアがアロハシャツの男に刀を突き立てて足蹴にしていた。
「どうだ? もっとクラッカー鳴らすか?」
「いいや」
 崩れた窓ガラスの中を、ラノールがジージェイを引きずって現われる。
 シルヴィアの前に放り出すと、シルヴィアは手榴弾を彼の口にくわえさせた。
 そうして、ピンの輪っかにそっと小指を通す。
「ジージェイ君さぁ、武器商人するにしても仁義ってもんがあるんじゃないかい?
 売り物を売る人間がいなくなったらオタクだって困るよなぁ?」
「Rインダストリーズのマジックライフルを大量に買い付ける予定があった筈だ。日時と場所を言え」
 猿ぐつわを噛まされたように唸るジージェイ。
 口にはまった手榴弾を外してやると、つばを吐き捨てて叫んだ。
「ああ、わかった! 言うよ! くそったれ! それでいいんだろ!」
「賢明だねぇ。長生きするよジージェイ君ー」
 シルヴィアは彼の頬をぺちぺちと叩いて笑った。
 ここで殺してしまわないのは、情報の裏付けがとれないからだ。
 情報が確たるものだとわかるまで、ジージェイは生かしておく必要がある。そしてジージェイも情報が生命線だと分かっているので、情報を小出しにして伝えた。
 あとから駆けつけてくるジージェイの部下たち。
 シルヴィアとラノールは顔を見合わせ、そしてその場から素早く撤退した。

●Rの足取り
 かくして。
「どういうことだ! 話と違うぞ!」
「取引は中止だクソッタレめ!」
 パージ、エトウ、そしてゴルドバの部下たちがそれぞれ銃を突きつけ合って口汚くののしり合っていた。
「じゃ、後はまかせるッス」
「援護します」
「ここは負けられねえな」
 零の付与効果を受けて、エルとサイズが銃撃を開始。
 それによって何人かがもんどりうって倒れたが、防弾ジャケットのおかげで立ち上がる。
「くそ、話は後だ。こいつらをぶち殺す!」
「新田ァ! テメェはクビだ! 殺す!」
 怒りも露わにハンドガンを乱射してくるエトウ。
 更にその部下やゴルドバのボディガードたちが銃撃を加えてくる。
 そんな中で、エトウがパージの持ち込んだマジックミサイルランチャーなる物品をひったくり、物陰へ逃げる零たちめがけて発射した。
「うおっ!?」
「やべ!」
 大爆発が起こり、寛治たちは爆風を抜けて突撃をしかけた。
 ラノールのマトックがボディガードを、シルヴィアの弓がエトウの部下を、そして美弥妃と綾女の回復を受けた寛治が、ゴルドバを傘で殴り倒した。
「取引は止められたが……」
 ラノールとシルヴィアが顔をしかめて周りを見回した。
 戦闘のドサクサでパージとエトウを取り逃がしてしまったようだ。
「武器商人のエトウと流通を繋いでいるパージを逃がしたのは痛いですが……ひとまず今回の依頼は成功、ということでいいでしょう」
「そうね」
 ゴルドバを拘束して引き起こす綾女。
 美弥妃はそのポケットをまさぐり、手帳を取り出した。
「Rインダストリーズ……これからも、追っかけていけそうデスぅ」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

サイズ(p3p000319) [重傷]
隠名の妖精鎌
エル・ウッドランド(p3p006713) [重傷]
イカダ漂流チート第二の刺客

あとがき

 取引の完全阻止には至りませんでしたが、取引の一つを潰しRインダストリーズへの少なくない牽制を行なうことが出来ました。
 加えて今回の殲滅対象から情報を入手し、Rインダストリーズのおこしている『意図的な戦争』の手がかりを掴むことができたようです。
 幻想対鉄帝の長きにわたる戦争地帯。中でも指折りに泥沼化した、『永久戦争地帯』と呼ばれる場所に、Rインダストリーズの痕跡を見つけました。

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