シナリオ詳細
愛しい家族との対面
オープニング
●禁忌とされる黄泉帰り
現在、天義では大きな事件が起こっている。
一つは、常世の呪いによる事件。
そしてもう一つは、黄泉帰りによる事件だ。
現状、天義の聖騎士達も国中を駆け回り、それらの解決に追われている。
後者の事件においては当初、首都フォン・ルーベルグで噂として流れていた。
――親しい誰かが在りし日の姿のままで、自身の元に戻ってくるというものだ。
心情的には否定しがたいことではあるが、天義としては大いなる禁忌とされている。
徐々に、表沙汰となってきている事件。
少しずつ聖騎士団も実態調査は進行しているものの、全容を把握するには至っていない。
というのも、天義首脳もお膝元での強権的な解決は望んでいないということも理由として挙げられている。
この解決の為、中立的な立ち位置であるローレットへと穏便に解決するよう依頼が寄せられている。
●愛しい家族の黄泉帰り
天義の聖騎士の中にも、この事件における直接の当事者となった者がいる。
ある日、黄泉帰りの事件に当たっていた聖騎士ルーシー。
「…………はぁ」
彼女の担当する事件は別に黄泉帰り関連ばかりではないが、黄泉帰りの事件は総じて、気分のいいものではない。
内容としては、当事者を納得させて蘇った相手を天に還すというもの。
その後の相手の姿を見れば、いい気などするはずもないのだ。
事件を解決してやるせない思いを抱いていた彼女は、子供の頃住んでいた自宅跡へと何気なく足を運ぶ。
そこは10数年前に起こった火事が元で焼失し、現在も建物跡が残ったままの状況となっている。
ルーシーは亡き家族に救いを求めていたのだろう。
だが、それが逆に彼女を苦しめることとなってしまう。
その地に、もう姿を見ることのないはずの姿を、彼女は認めてしまったのだ。
「お父さん、お母さん、ロイ……」
まさか、自分が当事者になるなんて。
『ルーシー、大きくなったな』
『良かった。あなたは無事だったのね……』
『お姉ちゃん……』
その目から流れる涙は、嬉しさと、そして、どうしようもない悲しみと。
複雑な思いを抱き、彼女は茫然としてしまう。
「私はどうすればいいの……?」
聖騎士としての自らの立場であれば、家族を斬らねばならない。
だが、それはあまりに酷なことだ。自分に家族を斬ることができるはずもない。
ルーシーは答えを出すことができず、煩悶と思い悩み続ける。
それをあざ笑うかのように、浮かび上がる3体のどす黒い怨霊達。
だが、それらは黄泉帰りの家族やルーシーを襲う様子はない。
むしろ、この状況を守るべく周囲を蠢き、第三者が邪魔しに来るのを阻止しようとしているようにも見えた。
●自宅跡に留まる女聖騎士
幻想、ローレットへと届いた黄泉帰り事件の依頼。
それを説明する『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)はギフトの為に淡々と説明を行うが、表情は険しい。
「……では、本題に入りますね」
事情を知らぬイレギュラーズへと黄泉帰りの関連事件について説明したアクアベルは、自身の依頼について語り始める。
場所は例に漏れず、天義の首都フォン・ルーベルグ。
とある聖騎士団の団員が戻ってこないこともあり、その事件は発覚した。
「どうやら、その女性団員が亡くした家族が揃って黄泉帰りして彼女の前に現れたようです」
女性団員ルーシーは子供の頃、家事で両親と弟を亡くしている。
それらを目にしてしまった彼女は、どうするべきかと戸惑う間に、家族に囚われそうになりながらも自らの手で討伐せねばと煩悶としている。
「それだけではないようですね。どうやら、その場には怨霊が蠢いていて、その状況を邪魔しようとする第三者を襲ってくるようです」
この怨霊がどういう意図でこの場に放置されたのかは不明だが、黒幕が当事者を苦しめる為に放置したものと思われる。余計な邪魔が入らないように……と。
猟兵として、やるべきことは2つ。
人に害をなす怨霊達の撃破。
そして、黄泉帰りしたルーシーの家族3人を元通り安らかに眠らせること。
「ただ、後者はルーシーさんが納得いく形で行うことがベストだと思います」
自分の手で浄化させるか、それとも、むりやりでもイレギュラーズが浄化させてしまうか……。
ある程度方針を定めてから、対応に当たるとスムーズに事は運ぶだろう。
「以上です。難しい状況ですが、どうか慈悲ある対応を」
よろしくお願いしますと、アクアベルは頭を下げるのだった。
- 愛しい家族との対面完了
- GM名なちゅい
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2019年04月28日 22時25分
- 参加人数8/8人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●黄泉帰り事件の解決へ
天義の首都フォン・ルーベルグで起こっている黄泉帰り事件。
今回、ローレットのイレギュラーズ達もそのうちの事件の1つの解決を依頼され、現場へと向かう。
「死んだ家族が目の前に……か」
まだあどけなさも残す少年騎士、『正なる騎士を目指して』シャルティエ・F・クラリウス(p3p006902)も、数年前に母を亡くしている。
「殺せなんて、簡単に言われても無理……だよね」
仮に、シャルティエの前に母上が現れたなら、きっと彼は……。
「死者が生き返る事は無い。……俺の妹も故人だから、葛藤は分からんでもないがな」
煙管を愛用する男装の医者、『死を呼ぶドクター』レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)も、さらりと自らの過去を流すように語りつつ、被害者や仲間に理解を示す。
「黄泉帰りの事件は、いつも気が重くなりますね」
足まで届くポニーテールの黒髪を持つ『銀月の舞姫』津久見・弥恵(p3p005208)が素直な心情を吐露するが、彼女は毅然と言葉を続ける。
「でも、やはり生きる者として、向き合い、送り出さねばなりません」
「モウ一度、と願ってしまうココロに漬け込むやり口は気に入らないね」
弥恵に続き、鍛え上げた筋肉を持つ元拳闘士の『無影拳』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)も本音を語る。
そんなイグナートは、一つの推論を立てていた。
「オレたちはオンリョウがルーシーのカゾクの魂なんてセンもあるんじゃないかと、疑ってるんだ」
霊魂疎通で情報を探るメンバーの助けになるようにと、イグナートは事前に騎士団を訪れ、彼女の近しい人からルーシーの家族について話を聞こうとしていた。
だが現状、事件対応で手いっぱいでタイミングが合わず、情報を集めることはかなわなかったとのことだ。
せめて、ルーシーの家族の墓の場所だけでも分かれば、ティア、レイチェルがそこで、霊魂疎通もできたのだが……。
「……ふむ。初めて、この一連の事態の根源に繋がる手掛かりが見えたか」
灰色の短髪に眼鏡着用の『『知識』の魔剣』シグ・ローデッド(p3p000483)は、事件の解決に意欲を見せる。
「……ならば、情報を集める為にも、色々努力するとしよう」
シグは仲間に続いて、対象から情報を集められるようにと準備を整えていたようだ。
「また死者が相手なんだね」
『正確には違うだろうがな』
銀髪に2対の黒翼を持つ『穢翼の回復術師』ティア・マヤ・ラグレン(p3p000593)が語るは、胸元にある十字架に宿る神様だ。
「ご家族を亡くされる悲しみはとっても辛いよね」
『怨霊が家族の可能性はあるが、違う可能性もある』
「……うん、ルーシーには決断してもらわないと」
冷静な視点での立ち位置の神の言葉を聞きつつも、ティア自身は本心から当事者となる聖騎士の救済の為に依頼に臨む。
「……。……ルーシーさん、早く助けてあげなきゃ」
シャルティエもそれに同意見だ。
「大切な家族に苦しめられるなんて、そんな悲しい事。早く終わらせなきゃだもんね!」
その聖騎士を葛藤から助け出したい。それがイレギュラーズ達の総意だ。
程なくして、イレギュラーズ達の視界に現場である聖騎士の実家跡が見えてくる。
そして、そこに佇むルーシーの姿をメンバー達は確認した。
彼女は黄泉帰りした家族3人と対面しており、それを邪魔されぬようにと3体の怨霊が周囲を漂っている。
「作戦の確認だよ」
念の為にと、『ハム男』主人=公(p3p000578)が仲間達に確認を促す。男女のアバターを使い分ける公は今回、男性の姿をとっていたようだ。
作戦は、黄泉帰りしたルーシーの家族3人を偽物、怨霊こそが本当の家族の魂ではないかと想定して当たる。
6人が怨霊を倒さず抑え、2名がルーシーの説得、怨霊の素性が発覚地点で本格対処開始。
もし、ルーシーと戦闘になれば、やむなく不殺スキルで戦闘不能に。できれば避けたい事態だが……。
「できる限り、ルーシー様を説得したいです」
迷う聖騎士が辛い現実から目を背けず、家族に向き合ってほしいから。
だからこそ、弥恵も本心から呼びかけたいと考えていたようだ。
作戦確認の間に、イグナートは現場を漂う怨霊の能力を大雑把に感知する。
「……悪意のカタマリにみえるね」
そのどす黒い塊はどう好意的に解釈しても、イグナートにはルーシーの家族に見えない。
「まぁ、直接聞くまでだ」
怨霊の正体が家族なのでは。
その可能性がある以上、レイチェルは直接、霊魂疎通をはかるつもりだ。
また、突入の前に、メンバーは人払いに当たる。
シャルティエがカリスマを生かして人々に危険を知らせ、『赤鬼の引き付け役』サンディ・カルタ(p3p000438)もまた通行人に避難を促す。
「聖戦士としての彼女の今の姿は今後のためにも見せられねぇし、彼女自身が本音を語るのに邪魔になりそうだからな」
状況を整えたメンバー達は頷き合い、現場へと飛び込んでいくのである。
●黄泉帰り人は本物なのか
現場に駆け込むイレギュラーズ達には、聖騎士ルーシーもすぐに気づいたようだ。
「そう、よね……」
この状況を解決する為に一行は駆け付けたのだと、ルーシーもすぐ察する。
それでも、彼女は目の前の家族の姿に温かさを感じ、それに包まれたい、ここにありたいと感じてしまっていた。
「その姿はルーシー様の家族のようですが……」
弥恵はそれが本当に家族で間違いないのか、見極めようとする。
『ルーシー、どうした?』
『怖がらなくてもいいのよ。さあ、おいで』
『お姉ちゃん、一緒に遊ぼう』
そんな家族の言葉は、聖騎士を迷わせる。それだけの力を、黄泉帰り人が有しているのは間違いない。
だが、邪魔はさせないと、イレギュラーズの前にどす黒い顔のような霊体が間に割り込んでくる。
「……さて、先ずは足止め……ではあるな」
仲間が説得できるようにすべく、シグは交戦しながら怨霊より情報を引き出すべく最善と尽くそうとする。
彼はまず、球のような物体……過冷却集電弾を手前に飛ばし、怨霊どもの動きを止めようとした。
「仕掛けるよ」
仲間へと注意を促したティアは前方へと殺傷の霧を展開し、怨霊どもの体を所々裂いて苦痛を与えていく。
事前情報で、敵には物理攻撃が効かないことが分かっている。
この為、弥恵も得意のダンスで戦場を舞い躍る。
リズムを刻む彼女は肢体に髪を振り乱し、見えない糸を放って怨霊の体を絡めとり自由を奪わんとしていく。
オオオオオォオオオォオォオオォオ……!
怨霊どもも奇怪な声を上げ、イレギュラーズ達の体を竦ませようとしてくる。
さらに、声にならぬ冷ややかな呼びかけが戦うメンバー達の脳裏に響く。
「うっ……」
それを耳にした公。精神汚染から身を守るすべがなければ、おぞましい怨霊の声に惑わされていたかもしれない。
反撃にと公は高圧水流を発し、相手の動きを止める。
とにかく、ルーシー説得のための時間を稼ぎたいところ。
サンディはエスプリの力を生かして神秘攻撃ができる仲間の盾となり、彼らが怨霊の攻撃にさらされぬように動いていた。
一時的に、金銀妖瞳を持つ銀狼の姿をとるレイチェルは魔力を帯びた衝撃波を咆哮として発する。
そうして仲間達が怨霊を抑えている間に、イグナート、シャルティエは回り込むようにルーシーへと接近していく。
●聖騎士に決断を
戦場となる聖騎士の実家跡地は放火事件後、手つかずのまま放置されている。
それは、1人残されたルーシーが時折訪れることを知っていた周囲の人々の恩情もあったのだろうか。
犯人はおそらく、この状況を嗅ぎ取ったのだろう。
『ルーシー……』
黄泉帰りの家族達は優しげな言葉を、彼女へとかける。
しかし、それだけだ。その姿は第三者であるイレギュラーズからすれば、どこか無機的な感があった。
「どこか不自然だよね」
「私の気のせいではないようですね」
自身の感覚を強く働かせる公がそんな印象を抱くと、なんとなく
感じ取っていた弥恵も同意を示す。
戦場を舞い、汗と血が作り上げる舞台を彩りながらも、彼女は離れたルーシーへと呼びかける。
「家族であれば、真摯に向き合いませんと」
不幸であったこれからを踏み出す為にも、大切な者達に誇れる自分であってほしいと、弥恵はルーシーを励ます。
だが、聖騎士は小さく首を横に振った。
「……ダメなの。抑えていた想いが、とめどなく溢れて」
目の前の家族を見るだけで、ルーシーは戸惑いを見せる。
「誰かが語り掛けてくるの。『欲望を解き放て、それが正しい」って……」
同様の事件の顛末を知っている聖騎士ですら逡巡させる力を、目の前の黄泉帰り人は発してくるらしい。
だが、イグナートはそれに抗う力を、聖騎士に持ってほしいと告げる。
「死んだカゾクが大切なら、マボロシを振り払うユウキを持って欲しい」
黄泉帰り人が泥になって崩れる状況に、イグナートは以前立ち会っている。同じ事件解決に当たるルーシーもまた、それを見ていることだろう。
「魂のあるニンゲンは泥になんかならない。ニセモノだってことは分かっているハズだろう?」
目の前の存在が彼女を惑わせている。シャルティエもそれを察して。
(……正しい事は分かってても、簡単に割り切れるものじゃない。その迷いは間違ってなんかない筈だ)
だから、ルーシーを否定することなく、シャルティエはこう告げる。
「亡くなったご家族は、自分達と同じ姿が大切な人を苦しめてるこの状況を悲しんでる。……そう思うんだ」
これほどに苦しむくらいにルーシーにとっては大切な存在なのだから、ご家族もまた同じはずだとシャルティエは主張して。
「だからこそ、救う為に決断が必要じゃないか」
「…………」
答えはきっと彼女の中で出ている。後は、その背中を押すだけだ。
その間、他のメンバー達は怨霊の相手を続ける。
(本当にルーシーの家族であったなら……)
依然として、それらが本当の家族の魂である可能性を拭えぬレイチェルだ。
黄泉帰りが倒れて、怨霊がどうなるかがわかるまではこの状態を維持させたいところ。
仲間達が盾になってくれていることもあり、レイチェルは自らの血で象った鞭で敵を叩きつけ、締め付けていく。
そこで、彼女は意思の疎通を試みるのだが。
「まるで反応がねぇな」
仲間達の情報も合わせ、怨霊が家族という仮説が間違いだったと、レイチェルも考え始めていた様子だ。
敵の足止め。そして、弱らせながらもとどめを刺さぬようにと注意を払うメンバー達。
シグもこの場はまず怨霊の相手に注力し、自らの体を剣と変え、刀身に宿した炎を象った破壊エネルギーを敵陣へと一閃させていく。
しばらく、怨霊を抑え続けねばならぬ状況もあり、序盤は攻撃を行っていたティアは回復に手数を費やすこととなる。
「怨嗟の声に負けないで」
柔らかな癒やしの光『シェルピア』を使うティアは前線に立つ仲間達を癒やし、不浄を振り払っていく。
(レディとは殴り合わずにいきてーな)
前線で盾となりつつ、己の生命力と引き換えに仲間へと力を与えるサンディが主に、その癒やしを受けることとなる。
「……なあ、レディ。俺は持ったこともねーが、家族が大切なことはよく分かった。そこは、それでいい」
彼は戦いの合間に持参したエーヴェルヴァインの蜃気楼に黄泉帰りの家族の姿を記録し、ルーシーに呼びかけた。
「というか、むしろ普通に心優しいよな」
「あ、ありがとう……」
とっさに礼を返す彼女へ、サンディは怨霊を気にかけながらさらに言葉を続けて。
「でさ。孤児となったレディは、その後なんで聖戦士を目指したんだ?」
放火犯に思うことがあり、教会に身を寄せたからこそ、人を守れるようになりたいと考えて聖騎士になったルーシーだ。
そこに嘘はないはずだと、サンディは語気を強める。
「聖戦士をやめるなら、それもいいさ。俺の免罪符の効くうちに幻想に来い」
「…………」
どちらにしても、レディの仲間と告げるサンディ。
ルーシーは両親の形見の指輪を携帯しており、それを握りしめていた。
「黄泉がえりを匿っている現状が間違っていることは、自分でもわかっているはず」
敵の牽制を続ける公も、その合間にルーシーへと家族の思い出を思い浮かべるよう呼びかける。
「その思い出を、今の状況で上塗りしてしまって後悔はしない?」
立派な天義の騎士となった貴方の姿を、家族に見せてあげられないかと、公は主張を続けて。
「直接、手を下すのがためらわれるなら、決断だけしてくれればいいよ。後はボク達が片付けるから」
――だから、選択してほしい。貴方はどうしたい?
ここにきて、他人がこの状況を崩す可能性を察したルーシーが黄泉帰りの家族達へと目を見開く。
その間、黄泉帰りの家族を調べていたイグナート。
「一連の事件のハンニンは死者を、そしてカレらと生者との大切なキズナを冒涜してる」
戦闘能力がないこと以上の情報は確認できず、イグナートはさらにルーシーに呼びかけを続ける。
ルーシー自身とその家族の為に、今一度正しいことを、と。
「天義の聖騎士にならそれが出来る! と、オレは信じたいな」
「……僕は信じます。貴女の意思と……きっと貴女を想っている、ご家族の遺志を」
さらに、シャルティエがどうすべきかと、彼女に決断を促す。
レイチェルもその状況を見守り、自分自身では無理だと判断した場合にせめて一撃で葬るべく、大弓を手に取っていた。
「お父さん、お母さん、ロイ、ごめん…………!」
意を決したルーシーは剣を抜き、目の前の家族へと刃を振るった。
すると、家族の像は崩れ、黒い泥と化して地に還ってしまう。
迷いを振り払ったルーシーは、毅然とした表情を向ける。
「……お手数かけました」
聖騎士として丁寧口調となった彼女は、改めて周囲に漂う怨霊へと構えをとるのだった。
●迷いを振り払って
聖騎士ルーシーは怨霊達に迷いなく剣を向ける。
「これが、私の愛しい家族のはずがありません」
「無関係であるなら、この怨霊どもは……」
ルーシーの迷いない言葉を受け、シグは怨霊どもがどのように考えてこの場に存在しているのかを探る。
「強欲の……魔種……」
僅かにそれを垣間見たシグは、そいつがこの場へと無関係な怨霊を配して去っていたことを知った。
「魔種……」
レイチェルは狂気の影響を考え、それを注意深く見守っていた。
しかしながら、旅人は狂気の影響を受けないことをレイチェルは思い出す。
大切な人が危機に晒される危険性ばかりにレイチェルは気を捕われ、失念していたのかもしれない。
また、怨霊からは魔種の力は感じない。
オオオォォオオオォオオォオオオ……。
依然として、おぞましい声を上げるそれらは、真犯人が状況を見て巧妙に残した工作といったところか。
「いずれにせよ、ルーシーの家族とは無関係だ」
「なら、後は倒すだけだな」
シグがそう断定したこともあり、サンディは見世物用の簡易魔法花火を飛ばし、火力の援護を行う。
主たる役目を終えたシャルティエも、せめて名乗りを上げて仲間の盾になろうとする。
「ある程度、気を引くくらいはしないとね……!」
怨霊どもの攻撃はどれも、鳥肌が立つほどの寒気を感じさせる。
彼もこれくらいはと、仲間を守るべく堪えていた。
仲間が傷つくなら、ティアは癒やしの光を発していく。
戦いは長く続いていることもあり、メンバー達もかなり消耗してきていたのは間違いない。
「皆様の義に、心からの感謝を」
そう告げるルーシーは、聖騎士としての力を存分に発揮する。
彼女の放つ光は怨霊へと絶大な力を発揮し、1体を完全に消滅して天に還してしまった。
イレギュラーズ達も負けてはいない。
公も神秘の力を込めた盾での一撃を食らわせ、続けざまに強欲の名を持つ武器を剣状にして、魔力を纏わせた刃で怨霊の体を切り裂いていく。
「人の思い出を弄ぶ輩に対して、一歩も引く気はありません」
そして、弥恵もこの場の怨霊へと全力で対し、強烈な運気を呼び寄せて。
「未来はこれから死にゆく私達が作るもの。高き死を贈るはヴァルキュリアの舞、どうぞ堪能くださいませ」
華麗に舞い踊る彼女は、見えない糸で残る怨霊を逃げられぬように雁字搦めにして、その体を完全に断ち切ったのだった。
怨霊が情報を握っているのではと思ったイレギュラーズ一行だったが、どうやら、真犯人が惑わす為に仕掛けたデコイのようなものだったらしい。
「外れだったようだな」
シグも狂気に捕らわれることなく、特に問題はなさそうだ。
サンディが視線を向けると、ルーシーが家族に祈りを捧げていた。
「次の世界では誰よりも幸せに」
仲間達の傷の手当てをしていたティアも一緒になり、亡くなってまで利用されたその魂に対し、しばし黙祷する。
祈りを終えたルーシーにサンディが近づくと、ルーシーは彼へと思い出は優しすぎるからと映像を返す。
「大丈夫。ありがとう」
――それでは、行ってきます。
家族に新たな誓いを立てた彼女は改めて、聖騎士としての道を踏み出し始める。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
リプレイ、公開です。
説得するメンバー達が聖騎士に現状の再認識させた前提があってこそですが、
最初に自分達が黄泉帰りした家族を倒す可能性を示した
あなたへMVPをお送りします。
当シナリオに参加していただき、ありがとうございました。
GMコメント
イレギュラーズの皆様、こんにちは。なちゅいです。
天義首都で起きている黄泉帰りによる事件の1つです。
こちらの事件の解決を願います。
●敵
◯怨霊……3体
どす黒い顔のような形をした霊体です。
黄泉帰りを行った犯人が残し、敷地内へと部外者が入ろうとしたときに襲い掛かってくるようです。
黒幕が残したモノと思われますが、関係者以外を襲う理由は不明です。
・エナジードレイン……(A)神遠単・HP吸収
・怨嗟の叫び……(A)神遠範・不吉・麻痺
・死への誘い……(A)神遠単・魅了
・幽体……(P)物無
●NPC
◯ルーシー……22歳、聖騎士団団員。
火事によって、10年余り前に両親と弟を亡くしており、
一人残された彼女は教会に保護を受けて育ち、聖騎士団となっています。
今回、亡くなった家族と黄泉帰りによって対面した彼女は自らには倒せず、また、他の者に手もかけられずと煩悶としているようです。
場合によっては、家族を守ろうと敵対する為、我を取り戻すよう説得する必要があります。
・レジストクラッシュ……(A)物至単・足止・崩れ
・ピューピルシール……(A)神遠単・封印
・ハイ・ヒール……(A)神中単
・ターンアンデッド……(A)神遠単・アンデッドに必殺
◯黄泉帰りの家族
ルーシーの両親と弟の3人。
ルーシーが10歳の時に、放火による火事で亡くなっています。
なお、犯人はすでに捕まっており、連続放火の罪で服役中です。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
それでは、よろしくお願いいたします。
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