シナリオ詳細
野菜以外が食べたいとお嬢さまが言った
オープニング
●怒れるお嬢さま(庶民)
深緑と言えば自然と共に生きているイメージで、実際多くの幻想種が自然の恵みを享受し日々感謝しながら暮らしている。
それは台所事情にも通じていて、自然の恵み――野菜などのネイチャーフーズは実に豊富に食卓に並ぶ。
ファルカウ下層は中央に住むテネクさん家も、それはまあ毎日のように野菜を食卓に並べて居たわけだが、あまりにも美味しく戴いて居たらだんだんエスカレートして、遂に野菜しか食卓に並ばなくなった。
これに異議を申し立てたのはテネクさん家のユーリアちゃん(10才)である。
「毎日毎日お野菜ばかり!!
もう、一年になるじゃない!! 私はもっとお肉とかお魚とか……とにかく、もっと美味しいものが食べたいの!!」
これにテネクさん家のお母さんはまるで困った様子も見せず首を傾げる。
「あらあらまあまあ。困ったわねぇ。
深緑で取れるファルカウの恵みを受けたお野菜が飛び抜けて美味しいのに……これ以上となると国内で用意するのは難しいかしらぁ?」
実の所このお母さん、娘に激甘であることが近所の評判で、娘の我が儘にはなんでも答えようとする困ったお母さんな訳だが(そんな母親を見てユーリアちゃんが我が儘をほとんど言わず育ったのはある意味奇跡的なバランスだったかもしれない)。
「とにかく! とびきり美味しいもの、そうふるこーすよ! 世界中の美味しいものふるこーす! 私はそれを所望しますわ!
一年も我慢したのだから、今回だけは我が儘言わせてもらうわよ! ママ!!」
「あらあらまあまあ。
それじゃあ、ママも張り切っちゃおうかしら!」
何をどう張り切るつもりなのか。ユーリアちゃんはこの時、まさかパパのへそくりが消えて自分の胃袋を満たすとは思いもしなかったのである。
●
「というわけで、また妙なルートから依頼が来たけど、皆さんには混沌中から美味しいものを集めて、できるなら料理までしてもらおうかしら?」
『黒耀の夢』リリィ=クロハネ(p3n000023)が悪戯っぽく笑うと依頼書を手渡してきた。
「食材は……どこから持ってきてもいいのか?」
「ええ、一応最低限ユーリアちゃんが納得するであろう食材と料理のリストは書き込んで置いたけれど、それ以外にも自由に集めてもらって構わないわ。
ただ、そうね。ユーリアちゃんは思いの外お腹を空かせているから、余りに秘境な場所で入手するレア素材は、持って行ったときにはもう我慢の限界で食べてくれないかもしれないから注意が必要よ。ギリギリを攻めて行く感じが良いのかしら」
クスクスと笑うリリィは実に楽しそうである。
「あ、ちなみに料理が出来なくてもユーリアちゃんのママが代わりに料理してくれるそうだから心配しないで良いわよ。ただ未知の食材じゃ美味く出来るか難しいでしょうね」
詰まるところ、イレギュラーズの思う混沌最強料理を手塩に掛けて調理してお出しすればよいと言うわけだ。ご馳走である。
「ふふ、どんな料理が出来上がるか、報告楽しみにしているわね」
自分が食べるわけではないというのに、リリィは最後まで楽しそうに言葉を交わして去って行った。
さて、野菜に飽きたというお嬢さまにどんな料理を出すべきか。
イレギュラーズは思案しながらローレットを後にするのだった。
- 野菜以外が食べたいとお嬢さまが言った完了
- GM名澤見夜行
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2019年04月30日 21時40分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●集めよ食材!
テネクさん家のユーリアちゃんの稀に見るわがままはママを通してイレギュラーズへと託された。
「野菜以外が食べたいの!」
そんなお嬢さまのわがままに応えることになったイレギュラーズ。さて、どんな料理を考えて、どんな食材を集めるか。順に追っていくことにしよう。
「アタシは練達風の料理をだすかな。
海洋ホーンマグロの握り寿司に、深緑の野菜や幻想トンキン肉の入ったヴォリューム満点のサンドイッチとかもいいかもネ」
「あら、いいわね。
なら一緒にホーンマグロを取りにいきましょう。結構凶暴な相手だけれど、一度釣り上げた経験があるからね。獲れたては絶品よ」
『放課後のヴェルフェゴール』岩倉・鈴音(p3p006119)とリーリア・フィルデマージュ(p3p006942)は海洋近海の王者ホーンマグロを仕入れにいざ海洋へ。
以前漁を手伝った伝手は生きていて、漁師達も乗り気に漁へと繰り出した。
船を襲うこともある危険なホーンマグロだが、一度戦ったことのある相手だ、遅れはとらない。
「なに? タイラントデュークサーモンも欲しいって!?」
リーリアの要望に漁師達から驚きの声があがる。こいつはえらい獲物を狙ったものだぜ。
ホーンマグロと双璧をなす魚の王者はこの時期産卵の為にその凶暴さに磨きが掛かるという。
だが、もし入手できれば――ホーンマグロと共に皿を彩る一品になることだろう。
「なぜかツヨクナッタ感があるとき! アタシがそこにいるんだ。赤の熱狂!」
「ふふ、料理人として食材も手に入れる――腕が鳴るね!!」
現れたタイラントデュークサーモンとの命のやりとりが始まった。
海洋で激闘が行われている最中。
鉄帝へと向かった『疾風蒼嵐』シャルレィス・スクァリオ(p3p000332)と『絵本の外の大冒険』アルメリア・イーグルトン(p3p006810)は巨大な鉄帝マンモスとの激闘に身を躍らせていた。
「身体の半分が機械って誰によって生み出されたのか気になるけれど……今はそのお肉戴かせて貰うよ!」
鉄帝マンモスの機械化された牙から極大ビームが発射される。
それを身を捻り躱しながら、シャルレィスが蒼き風となって肉薄すれば、手にした烈風で切り刻む。
「単独じゃどうにも出来ない相手だけれど、仲間とならばなんとかなるわね。
シャルレィス! 援護はするからちゃっちゃと倒してしまいなさいな!」
「わかってるよ!」
マンモスのマンガ肉を手に入れることができれば、骨付きローストを作る心算である。マンガ肉を焼くだけでも上手いが、ローストと付けば直火で炙るなども考えられる。僅かに残る赤みに溢れる肉汁が食欲をそそるに違いない。
「じゅるり……」
思わず戦闘中に涎を啜るシャルレィス。
「あ、こら! 戦闘に集中しなさいな!」
上手くバランスのとれた(?)二人の戦いは続く。
「豚が一、二、三……と、これは多いな」
『隠名の妖精鎌』サイズ(p3p000319)は幻想トンチンの群体を前に本体である鎌で肩をトントンと叩く。
さて百体規模のこの豚をどのように料理――するのはまた後だが――するか、サイズは考え実行に移す。
「豚は飛ばない、ということでずるいかもしれないが空から一気に倒させてもらおう」
ふわりと浮いて高度を稼ぐと、呪われた陣を敷いて、業炎纏う呪われた血の鎌にて切り刻む。
「ブヒィィィイ!!」
フゴフゴ唸る豚の群れが逃げ惑い、或いは怒り狂って大地を走り回る。「飛ばない豚は只の豚だ」とは、何処かの世界の名台詞だが、幻想トンチンはただの豚ではない。
ぴょんぴょんと飛び跳ねる幻想トンチン達はやがて折り重なって、空へと登る架け橋を作る。そして九十九の支えの下、一匹の豚が駆け上り空へと飛んだ。
「オイオイ、マジか」
襲い来る豚を前に、サイズは「これは、難儀しそうだ」と鎌を構え直すのだった。
「ものごとはバランスが大事よね。
どんなにいいお野菜でも、そればかりじゃこうもなるわ」
「うん。食べることは大切。色々な味、知って欲しいな」
『見敵必殺』美咲・マクスウェル(p3p005192)の言葉にコクコクと『夜鷹』エーリカ・マルトリッツ(p3p000117)が頷く。
自身が知ることの出来た大切なことを教えてあげられる。その事に喜びの感情で満たされたエーリカはドキドキで寝付きが悪く少し寝不足だ。
とぼけ顔のパカダクラを引き連れて、二人はラサの砂漠で遊牧する人々を訪ねる。
手に入れるは家畜――牛や羊など――の肉を調達する。
「そうだ、聞いたことがあるの。
ラサの砂漠の中心で群れをなす火食い鳥の話を」
「――産みたて卵! それもとびきり珍しい奴ね。
良いじゃない、探してみましょう!」
エーリカの提案で二人は砂漠の中心へ。熱砂の移動は体力を削られ厳しい道程となったが、美味しいものを届けたいと思う二人は、その試練を耐え抜いてその場所へ辿り着いた。
「見つけた! 本当に燃えてる……不死鳥、フェニックスのようね」
「お願いしてみるね。きっと分けて貰えるはず」
心に届ける心聴は警戒心の高い傭兵火喰い鳥の対話を可能にする。
ごはんと共にお願いすれば、火喰い鳥も少しならと分けてくれた。これで食材は揃ったと喜んだのも束の間、火食い鳥の卵を狙う砂漠の狩人デザートウォーバジリスクが火食い鳥の素を囲むように現れる。
「せっかく分けて貰えたのだもの。渡すわけにはいかない」
「ふふん、現れたタイミングが悪かったわね。
蛇を食材には出来ないけれど、襲ってくるつもりなら返り討ちよ!」
手に入れた最高の食材を届ける為、二人は襲い来る敵と向かい合う。
そんな仲間達の帰りを待ちながら『レストおばさん』レスト・リゾート(p3p003959)は深緑の酪農家の家を訪ねていた。求めるは羊乳だ。
花畑で育った羊、フラワーシープを前に甘い蜜の花を手にしたレストが陽気に話しかける。
「うふふ~、美味しそうな匂いでしょう~。
少しお乳を搾らせてもらうわね~」
羊のご機嫌を取りながら、必要分の羊乳を搾っていく。酪農家も感心するくらい上手に搾れたようだった。
そうして羊乳を手に入れたレストは、残りの素材も入手しようと別の酪農家へと尋ねる。
「あらら、硬い穴あきチーズは半年もかかるのね~。
在庫はあるかしら~」
酪農家に在庫は少量あったようだ。喜び購入し、続けて向かうは野菜を育てている農家である。
お嬢さまは野菜以外が食べたいと言ったが、料理はバランスだ。肉だけではまた飽きてしまうだろうということで深緑の野菜を手にいれ、その味をしっかりと再確認してもらいたいと思っていた。
「うふふ~紹介状のおかげもあってとても良い品が集まったわ~」
沢山の素材を抱えて、レストはテネクさん家へと足を向けた。
そうして、混沌中から様々な食材が集められた。
果たしてどんな料理が出来上がるのか、そしてユーリアちゃんは満足するのか。その行方は、テネクさん家のキッチンスタジアムに立つイレギュラーズへと委ねられた!
●腕を振るった料理
「ごくり……ママ、なんだかすごいことになってないかしら?
見たことのないお肉とかお肉とかお肉ばかりよ……」
「まあまあ、ホントね~。ママも食べたことないものばかりよ~。これはすごいわぁ」
テネクさん家のユーリアちゃんとママさんが、イレギュラーズの揃えた食材を前に、息を呑む。果たしてこの食材達をどのように調理するのか、期待の籠もった眼差しで調理台を眺める。
「さあ、それじゃ始めようか――”アンテルム”!」
かけ声一つ、調理に必要な器具等々を亜空間より取り出すリーリア。それを皆に貸し出していざ調理が始まった。
「へいらっしゃい! マグロ……ご期待下さい」
「わわっ、いせいが良いのね。頭に何を巻いてるのかしら」
「捻り鉢巻きでい! テヤンデエべらぼうめえ(`_´メ)」
鈴音がユーリアちゃんをテーブルに付かせると、お茶とおしぼりをだして威勢良く格好を付ける。寿司職人的ライブ感を出すが、これがユーリアちゃんには物珍しくて好評だ。
そして目の前では、リーリアが手に入れたホーンマグロとタイライントデュークサーモンの切り身を削ぎ切りにし、オリーブオイル、レモン汁、塩、黒胡椒で味付けをし、深緑の味新玉葱の薄切りとイクラを添える。皿に飾り付けを行えば、カルパッチョの出来上がりだ。
「かるぱっちょ? 不思議な響きね。お魚ということだけど、どんな味かしら……!」
「ちゃんと玉葱と一緒に食べてね。玉葱のシャキシャキ感が良いんだから」
恐る恐るフォークで取って、口へと運ぶ。魚の味そのままに、力強い食感が口の中に広がる……!
「んんっ! 美味しい! お魚って食べたことあるような気がしたけど、そんな記憶が吹き飛ぶくらい美味しい!」
「それじゃコレはどうかな? よっほっ……!」
続けて鈴音が目の前で握り寿司を握る。調理器具を使わない握りは珍しく、ユーリアちゃんの食欲を刺激する。
出来上がった大トロ寿司。一緒にリーリアが大トロの炙りをだした。
「どっちも美味しい!! 口の中で蕩けるぅ~~!」
「お魚だけで満足してはだめよ。本番はこれから。まずは骨付きローストよ!」
アルメリアが用意した沢山の資料を見せつつ調理に入る。共に勝ち取ったシャルレィスと二人で、豪快に肉を焼き上げていく。
シャルレィスは皆の下拵えも手伝った。刃物を扱うのは得意だと、色々な材料を斬ったようだ。その度にエーリカが、「上手、上手」と褒めて、シャルレィスはえへへと笑い「ありがとう、エーリカさん♪」と返した。
アルメリアの的確な火加減と、細かな調理のお蔭で骨付きローストは見事に焼き上がる。見た目にインパクトを与えるその肉を、シャルレィスが手際よく切り分けて食べやすいサイズにする。
「おまじないもしておきましょうか」
「おまじない?」
「物事が上手くいきますようにってファルカウの若葉を地面に書くの……今日は料理だから、香草料理に添えて、美味しくなりますように……って」
そうして出来上がったローストを一切れ口に放り込めば、
「んんぅっ! すごいお肉! 肉のお汁が溢れてくるぅ!!」
噛み応えある肉から溢れる美味しさのエキスが、ユーリアちゃんを襲い魅惑する。
「ふっふっふっ! 肉はまだまだ終わらないわよ!」
美咲はママさんと一緒に大がかりな仕込みを行っていた。
杭に刺すようにして積み重ねた肉・肉・肉! 肉の柱を作り出し、それを周囲から焼き上げていく。
くるくる回転する様はアトラクションのようで珍しくユーリアちゃんの目を惹きワクワク感も上昇だ。
その肉を削ぎ落としていって、たっぷりパンに挟んで二種のソースを用意すれば完成だ。
「しつこいと思ったら野菜と一緒にね。
さあ、『ドネルケバブ』を召し上がれ!」
「どねるけばぶ! すごい名前なのだわ!! いただきまーす!」
ぱくりと口に入れれば、ローストとは違った重厚な肉の味が広がる。パンと一緒に食べることで、より一層肉の旨味を感じることが出来る。
「それじゃメインディッシュが来る前に、おばさんと一緒にこれを食べましょうか~」
レストは用意した鍋をユーリアちゃんの前に置く。
鍋には穴あきチーズと仕込みで作ったモッツァレラチーズが入っている。このモッツァレラ、深緑で入手した羊乳から作り上げたお手製だ。
「これを、どうするのかしら……?」
「火を付けて、焦がさないように混ぜていきましょ~」
レストはユーリアちゃんと一緒にチーズを混ぜていく。熱が通れば溶けていくチーズ達。そして鍋一杯に蕩けたチーズが満たされた。
「まあすごい!ユーリアちゃん上手に溶かせたわね~、よくできました~。
んふふ~、好きな物を好きなだけつけて召し上がれ~」
チーズでフォンデュするの、と言って野菜や、お肉を差し出した。早速お嬢さまはお肉を鍋の中でくるくるさせてチーズと一緒にぱくりと食べる。
「お花の匂いが広がる……! ちょっぴり甘くて……美味しい!!」
一度美味しいとわかると、横に置かれた野菜達も味が変わるのでは、と気になって――我慢が出来ずに野菜もフォンデュだ。
まるで遊ぶように食べれるチーズフォンデュは好評で、いつまでも食べていたくなる。
と、そこへサイズとリーリアがやってきて、本日のメインを提供する。
「エーリカさんに美味しい卵を取ってきて貰ったからな。
この卵を使ってオムライスを作るぞ」
サイズの利点は、調理器具の整備にある。料理は専門ではないものの、器具を整備することで、包丁を切れやすくしたり、フライパンでの焼き上がりをより良いものにした。
そして調理に取りかかる。手に入れた幻想トンチンのロース肉の割合を多くして、お肉たっぷりなオムライスに仕上げるつもりだ。
サイコロ状に切られたロース肉をしっかりと焼き上げて、そこにご飯を投入。ケチャップと調味料で味を調えたら、一度火から上げる。
次に卵を溶いて、フライパンに投入。半熟の状態で包み上げるように巻いていきオムレツを作る。
これを先ほど上げたご飯の上に置いて、真ん中に切れ目をいれれば――
「うわぁ! 半熟卵が蕩けてオムライスになった!」
「最後に、カリカリに焼いた作りたてベーコンを乗せれば完成だ」
時間的な問題もあってしっかりとスモーク出来てるわけではないが、その塩辛さが良い塩梅になるだろう。
「それじゃこっちも食べてもらおうかな! 海洋海鮮カレーだよ!」
オムライスと共にメインを張るのはリーリア特製海鮮カレーだ。ニンニクと玉葱をよく炒め、四種のスパイスを混ぜたカレーの元にカットトマト、塩、水、魚介類を加えて煮込んだ。隠し味は牡蠣油とプレーンヨーグルトだ。
リーリアの用意した海洋フルコースに、サイズのオムライスとメインは十分。我慢も出来なくなったユーリアちゃんは早速スプーンを皿へと伸ばして、
「ん~~~~!! 美味しい!! ふわふわオムライスに、ぴりぴりカレー!」
「うぅ見てたらお腹空いてきたよ……私も食べたーいっ! 皆一緒に食べよう!」
美味しい食卓の一番の秘訣はみんなの笑顔。シャルレィスの誘いに乗って、皆で食卓を囲めば、イヤになった野菜だって美味しくなるのだ。
「……えへへ。
『おいしい』って、うれしいね」
「うん!!」
エーリカに笑顔を返したユーリアちゃん。その笑顔がイレギュラーズ達の料理に満足したと告げていた。
野菜以外が食べたいとお嬢さまが言った。その望みは叶えられ、満腹になるまで料理を楽しんだのだった。
●野菜以外を食べたお嬢さまは……
在る世界の武将がこういったらしい。
馳走とは、旬の食材を用いて主人自ら腕を振るった料理であると。
今回で言えば主人の主体がどこにあるかは別として、まさにご馳走と呼べる物を振る舞えたのではないだろうか。
満足げにお腹を摩るユーリアちゃんをみれば、その答えは得られることだろう。
「それじゃ、最後。わたしからこれを」
「まだなにかあるんだ!」
エーリカが冷蔵庫から持ってきたのは、とびきりのしゅわしゅわしっとりシフォンケーキだ。
「ケーキ! ケーキは別腹だよ!」
「幻想の商店街のひとたちに教えてもらったレシピなの。
いっぱいの想いが詰まってるから、美味しいはず、だよ」
深緑で取れた果物と、横にそっと添えられたクリームは、シフォンケーキと相性抜群だ。
紅茶と共に楽しむゆったりとしたデザートタイム。
美味しい料理を食べた後に、美味しいデザートを楽しめるのは至極の贅沢だ。
そうして、ケーキを食べきったユーリアちゃんは、一息ついた。
「どう? 混沌各地の料理を食べた感想は」
「とっても美味しかったわ! 不思議な人達が来たと思ったけど、コックさんもいるし、なんだか職人さんみたいな人もいるし、とにかくとてもドキドキワクワクで! 本当に美味しかった!!」
この世にこんなに美味しいものがあるのかと、それに初めて味わった興奮冷めやらぬという感じに、美味しいを繰り返すユーリアちゃんは、大変満足した様子だった。
「でも、たまにあった深緑のお野菜も美味しかったの……お肉とかと一緒に食べると、本当に美味しかったのですわ」
「ものごとはバランスってね。同じ物ばかりじゃ飽きてしまうけれど、こうして色々な食材と混ざり合うことで美味しくなっていくのよ」
互いに足らない部分を補い合いながら、手分けして今回の依頼を行ったイレギュラーズが言うと、説得力があるという物だ。
うんうん、と頷いたユーリアちゃんは、
「ママ! わたし今日いっぱいお料理を食べてわかったの、深緑のお野菜をもっと美味しく食べたいって。
だから、これからはお野菜だけじゃなくて、色んなものと一緒に食べたいわ!」
「ええ、ええ、ママも間違っていたわ。これからは色んな料理に挑戦しましょうねぇ。せっかくレシピも色々教えてもらえたのだし」
ママさんも心を入れ替えたようだ。これにて依頼は完結。無事終了となる。
立ち去ろうとするイレギュラーズに嬉しい声が投げられた。
「ママ! わたし料理人になるわ! 今日味わったドキドキとワクワクと美味しいを色んな人に届けたいの!」
深緑を代表する料理人が生まれるのもきっとすぐのことだろうと、イレギュラーズは笑い合うのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
澤見夜行です。
リプレイ書いてたらお腹が減ってきました。とても美味しい料理の数々に、ユーリアちゃんもきっと大満足だったでしょう。
彼女に夢を与えられたのはとてもよかったですね。
MVPはまさかいるとは思わなかったコックさんへ贈ります。思う存分にその力を発揮して頂きました。三品も用意した海洋フルコースグッジョブでした。
深緑の野菜の美味しさを伝えたレストさんには称号が贈られます。
依頼お疲れ様でした! 素敵なプレイングをありがとうございました!
GMコメント
こんにちは。澤見夜行(さわみ・やこう)です。
野菜は美味しいですね。
飽きてしまったお嬢さまにスペシャリテを喰らわせてやりましょう。
●依頼達成条件
ユーリアちゃんを満足させる。
■オプション
五カ国以上のエッセンスを感じる料理を用意し、ユーリアちゃんを大満足させる。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
Aですが、提示された情報だけに頼らず、想定外のリアクションを引き出しましょう!
●最低限用意しなくてはいけない食材(戦闘有り)
・幻想トンチンのロース肉
戦闘能力を有した豚。集団(百体規模)で生活しており少数ロットの入手は中々困難でしょう。
・鉄帝マンモスのマンガ肉
一部機械化された巨大マンモス。戦闘能力はかなり高い。ビームに気をつけましょう。
・海洋ホーンマグロの大トロ
はらぺこ王女も愛した海洋近海の王者。釣り上げると襲ってきます。船が壊されるので殺られる前に殺れ!
上記食材はそれぞれ一人ずつ向かえば確保できます。向かった人は追加で食材を探しに行くこともできます。
上記の食材はママさんが料理してくれますが、自分でアレンジ料理を出してもOKです。
●その他の食材
プレイングで宣言(国と食材)すると良い感じに判定されるはずです。詳細が書かれているとポイントアップ!
状況によりけりダイスを転がしますが、あまりにも無茶そうなのであればOKでしょう。
これぞ国の代表料理だ! と言うものをお出ししましょう。
●調理について
料理スキルがなくてもプレイングが良ければ美味しいものが出来るでしょう。自信がなければママに任せても大丈夫です。
料理(悪)も場合によっては有りでしょう。ユーリアちゃんは出された物を残さず食べる良い子です。
●戦闘について
混沌全域、食材の入手に至る道程で様々な敵と戦うことでしょう。
今回は戦闘描写は少なめになるので最低限のプレイングでも大丈夫です。
パンドラ減少は参加者全員に起こりうるので、その点ご理解ください。
そのほか、有用そうなスキルやアイテムには色々なボーナスがつきます。
皆様の素晴らしいプレイングをお待ちしています。
宜しくお願いいたします。
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