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シナリオ詳細

春の恵みを求めて

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●食の恵み、目の保養、邪魔するゴブリン
 村から続く山道を一歩一歩上っていくと、丘のようにささやかな、小さな山がある。
 そこにはとてもきれいな小さな滝があって、男の人たちはそこで釣りを楽しむ。
 春になれば山菜が取れるし、秋には茸が取れる。
 山菜取りの前に、頂上の花畑に行くのが私の日課だった。
 春の花がそっと風に揺れて、なんだかうれしくなる気分にしてくれる、綺麗な、綺麗な小さな野の庭のようで。
 今日は山菜を摘んだ後に行って、花冠を作ろうか。そんなことを思っていた。
 白い大皿が家にあったはず。真っ白な地に一条、星空のような柄が入ったその大皿に水を張って花冠を浮かべればきっと綺麗だ。あぁ、とても楽しみ。
 今日食べる分、明日食べる分、来年の実りを待つ分。そう計算して摘みすぎないように山菜を摘んでいそいそと花畑に向かうと。
 ――そこには醜悪なゴブリンがいた。
 薄汚いぼろ布をまとい、こん棒や錆びた剣や斧や槍を持っている。
「ニンゲンだ」
「コロしてやろうか」
「若イ娘だ」
「捕まえテ連れて帰ろうか」
 二十体ほどいるゴブリンたちはにやにやといやらしい笑い声をあげながら怯えさせるように近づいてくる。
 私は山菜を摘んだ籠を取り落としたことにも気づかず大慌てでむらへと逃げ帰ったのだった。

●ゴブリン退治
「春の花は、園芸種も野に咲くのも美しいものなのですが……残念なお知らせなのですよ」
『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)はなんだか苦いものでも飲んだような顔でそう告げた。
「山菜の恵みがたくさんある小さな、登りやすい山の花畑にゴブリンが出たのです。しかも二十体も」
 ゴブリンたちはこん棒や錆びた剣や斧や槍を持っているという。弓を持っているものがいないから、遠距離からの射撃は気にしなくていいだろう。
「見かけたのが山菜取りと花冠を作りに遊びに行った女の子なので、詳しい情報ははっきりとしないのです。どの武器が何体、とかですね。二十体というのもぱっとみて数えてそれくらいだった、らしいのです」
 とりあえず数は多いみたいですが、ゴブリンなのでそこまで強くはないと思うのです、とユリーカは告げる。
「女の子はショックで寝込んでしまっているし、村人たちはゴブリンを警戒して山に入ることができずにいるのです。迷惑なゴブリン退治と……できれば、村の人が安心できるような証拠を持ち帰ってあげてほしいのです。女の子が作ろうとした花冠とか、野草や山菜の類とか。ゴブリンの死体はショッキングなので始末をお願いしたいのですよ」
 ゴブリン退治より後半のほうが大変かもしれないけれど、どうかお願いしますなのです、とユリーカは少女の心の傷を慮るように表情を曇らせたまま頭を下げたのだった。

GMコメント

成功条件:ゴブリン二十体の討伐と、安全の保障。
こん棒や錆びた剣や斧や槍を持っているゴブリンたち、推定二十体です。
武器の内訳の詳細などはわかっていません。
ゴブリンの強さですがごく一般的、数が多いのが一番厄介な点です。
山の山頂にある小さな花畑に昼頃現れます。

村人たちへのアフターケア
ゴブリンたちが拠点にしている花畑の花を摘んだり、道中にある山菜や食べられる野草を摘んだり、花畑の近くにある渓流で魚を持っていくなど、山が安全だとアピールしてください。
とくに発見者の少女はショックを受けているので、見ていて心が和むものをお見舞いに持っていくと喜ばれると思います。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

■ □ ■ □
MSより。
秋月雅哉です。今の時期はどうしても春のネタを書きたくなりますね。
地元ではまだ桜が咲いていないので、咲いたら桜のシナリオも出したいところです。
復帰したてで手間取ることも多いかもしれませんがどうぞまたよろしくお願いします。

  • 春の恵みを求めて完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年05月11日 22時00分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

アルテミア・フィルティス(p3p001981)
銀青の戦乙女
藤野 蛍(p3p003861)
比翼連理・護
レスト・リゾート(p3p003959)
にゃんこツアーコンダクター
シラス(p3p004421)
超える者
桜咲 珠緒(p3p004426)
比翼連理・攻
華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)
ココロの大好きな人
クラウジア=ジュエリア=ペトロヴァー(p3p006508)
宝石の魔女
フィーア・プレイアディ(p3p006980)
CS-AZ0410

リプレイ

●ゴブリンってなんだっけ
 土につきたつシャベル。
 『その歌声は響かせない』レスト・リゾート(p3p003959)は意気揚々と穴を掘っては土を投げまた掘ってはなげを繰り返していた。
 そうして腰より深い程度の、ガーデニングには深すぎる穴を掘っては横に掘り進めていく。
 なぜそんなことをしているのかといえば……。
「ゴブリンをやっつけて、村の人も女の子も、安心させてあげましょうね~」
「野放しには出来ないし、なによりショックで寝込んじゃっている女の子の為にも解決してあげないとね」
 投げた土を目立たない場所へと運んでいく『青き戦士』アルテミア・フィルティス(p3p001981)。
 小柄なゴブリンといえど何体も罠にかけるとなれば結構な大きさの穴を掘らねばならず、そのためには土を沢山捨てねばならない。近くに盛ってあれば丸わかりなので、その辺りも含めてかなりの重労働だった。
「勿論。困ってる人がいたら助けてあげるのは当たり前よね!」
 そんな重労働も世のため人のため。『学級委員の方』藤野 蛍(p3p003861)はお手伝いロボットの手も借りつつ土をどしどし運んでいった。
「そういえば、今回のゴブリンってどの程度知恵があるのかしら。落とし穴を作るにも、ある程度は偽装しないとよね」
「…………」
 黙って落とし穴の準備を手伝って居『CS-0410』フィーア・プレイアディ(p3p006980)。ふと思い立ったようにあちこちの草を集めると、簡単な網にふわふわと乗せて穴の上に敷いていった。
「なるほど?」
 こくこくと頷く蛍。
 その一方で、『宝石の魔女』クラウジア=ジュエリア=ペトロヴァー(p3p006508)は上空から敵……主にゴブリンの接近を警戒していた。
 茶色い小鳥が空をくるくると旋回飛行し、遠くからでもゴブリンが来れば皆に知らせるのが役目だ。
「ゴブリンのう……害獣というものはいつの世にもどこにでもいるものじゃなあ。こういうのは駆逐して埋めるとか、そういう対応しかとでんのじゃろうなあ」
 木の枝に腰掛け、共有した視界越しに偵察を続けるクラウジア。
 分かりやすいようにと片目を手で覆うようにしていた。
 その下を、土をつめた籠を手に通りかかる『鳶指』シラス(p3p004421)。
「どこから沸いてくるんだろうね。はは、実は俺らみたいに召喚されてたりして」
「召喚……」
 異世界から召喚されたゴブリンをまあまあ知ってる『要救護者』桜咲 珠緒(p3p004426)は斜め上を見て顔を曇らせた。
「この世には様々なゴブリンがいました。砲台を乗っ取ったり自爆したり……きっと今回のゴブリンもなにか一癖あるに違いありません。火を噴くとか飛ぶとか」
「そうとは限らないのだわ」
 『お節介焼き』華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)が土を木の回りに捨てつつ、腰をとんとんと叩いて背筋を伸ばした。
「土地によって細かい違いはあっても、一般的なゴブリンはやっぱり一般的な体系化がなされているのだわ」
 指を立てて、華蓮はちょっとした解説を始めた。
「情報によれば、ゴブリンは知性があり会話をし道具を利用する。若い人間の女性をみつけると連れ帰ろうとする。このことからきわめて一般的なゴブリンだと推定できるのだわ。
 くわえて、元々ゴブリンの出ない山に集団で出てきたってことは、別の場所からより強力なモンスターに追い出される形で移ってきたとみていいのだわ。ゴブリンは基本定住する生き物だから。
 しかも生活基盤や住処の決定を終えてない段階のはずなのだわ。この段階のゴブリンは群れ全員で動き回って適切な住居を探したり作ったりするのだわ。だから今回の群れを全滅させることで、山の安全は守れるはずなのだわ」
「詳しいね……」
 ばっちりな解説に目を丸くするシラス。
 華蓮ははった胸を叩いて見せた。
「伊達に秘書さんをしてないのだわ!」
 と、そこで、片目を覆っていたクラウジアが強く指笛を吹いた。
「ゴブリンどもがやってくるぞ。全員配置につくんじゃ!」

●二重作戦
「ニンゲンだ」
「若イ娘だ」
「またイタぞ」
 棍棒やさびた剣を手に、無数のゴブリンたちが花咲く草原を踏み荒らすように駆けてくる。
「ひゃあ! ごぶりん! どうしてここにごぶりんが!?」
 レストは花かごを手に困惑した様子で走り出した。
 ゴブリン集団の後方にいた少し大柄なゴブリンが『ガウガウ』と叫ぶようにレストを指さすと、周囲についていた10体ほどのゴブリンがレストを追いかけて走り出した。
 恐らく傷付けずにとらえろという命令だろう。
 一方で、ぴたりと立ち止まるレスト。
「で、でも、ゴブリンって冒険小説だと噛ませだし、ドラゴンのおやつだし……実は大した事ない、のかも?」
 小首を傾げるレストに、大柄なゴブリンがひときわ大きな声で叫んだ。
 残る大勢のゴブリンたちがレストへと襲いかかる。
「ひゃあ! 誰か助けてぇ!」
 頭を抱えてかがみ込むレスト。
 棍棒を振り上げ、跳躍するゴブリン――の側頭部を、魔術弾が打ち抜いた。
「――ッ!?」
 声にならぬ声をあげ、顔から落ちるゴブリン。
 射撃の方向へと一斉に振り返るゴブリンたち……その全く逆の方向からアルテミアが飛び出した。
 燃え上がらせた蒼い魔力が鋭く二本の刀を覆い、交差した点でぎらりと光った。
 奇襲を察したゴブリンが剣で防御を試みるが、もう遅い。
「無駄よ!」
 アズライト・アルター。凝縮した魔力を波の如く放出し、相手の防御もろとも切断していくアルテミアの必殺技である。
 剣で防御したゴブリンも、その後ろにいたゴブリンも、まとめて薙ぎ払っていくアルテミア。
 未だ剣に残る青白い魔力の刃をもって、残るゴブリンへと斬りかかっていく。「ラッキーなのだわ。リーダーが孤立してる状態。狙い目なのだわ!」
 華蓮は隠れていた即席ギリースーツを脱ぎ捨てると、後方に取り残されたゴブリンのリーダーめいた個体に霊力弾を連射した。
「グッ……!」
 棍棒を翳し防御するゴブリン。
 威嚇のように叫ぼうとしたその一瞬をついて、シラスがぱんと手拍子を打ち鳴らした。
 意志あるすべてのものに共通する思考のリズム。それを意図的に崩されたゴブリンは思考を中断させられ、その空白を埋めるかのごとく本能的にシラスへと襲いかかった。
 繰り出される棍棒。それを受けたのは蛍であった。
 ゴブリンの手首を横から弾くようにつかみ、脇の付け根を握って引っこ抜くように投げ飛ばす。
 投げ転がされたゴブリンは、すぐに起き上がってシラスと蛍をにらみ付けた。
「まずいわ。一旦引きましょ!」
 シラスの手を掴み、走り出す蛍。
 ゴブリンのリーダーは仲間を呼び寄せ、蛍を追いかけるように命じ自分もまた走り出した。
 振り返り、小さく笑う蛍。
 ぴょんと大きく跳躍し、短節詠唱によって跳躍距離を引き延ばす。
 手を引かれたシラスは振り返り、そして。
「悪いね。知恵はこっちが上だったらしい」
 その瞬間、リーダーの足場が崩れ、深い穴へと転げ落ちてしまった。
 突いてきていた数人のゴブリンも同じように転げ落ちる。
 早く引っ張り上げろと命令するリーダーと周囲のゴブリンたち。
 あとに続いたゴブリンは命令どおりに落ちたリーダーの腕を掴むが……。
「せいっ」
 珠緒の殴りつけた棍棒(ロッド)によってもろとも穴へ転げ落ちていった。
 周囲のゴブリンたちが身構える。
 対してロッドを構える珠緒。
 先端にはなんかデカいアリの首がついていた。
「この毒蟻の首、なんと死後も動いて噛みつくのです。せいっ」
 ゴブリンの頭めがけてロッドを振り下ろすと、噛みついた女王蟻の首から毒が流し込まれた。
 多分直接叩き付けて使うものではないとは思うが、見た目のエグさからゴブリンたちを軽く恐怖させた。
 たまに人間や家畜動物の首を翳して恐怖を煽るゴブリンシャーマン的な存在がいるが、その逆バージョンだと思っていい。珠緒シャーマンである。
「恐れおののくがいいのでごっふう!?」
 そして激しく吐血した。
 珠緒シャーマンスプラッシュである。
 語呂がジャーマンスープレックスに似てるのはさておき、あまりのわけのわからなさにゴブリンたちは精神的にも物理的にも混乱した。
 そこへ突撃するフィーア。
 混乱したゴブリンのリーダーが自分だけは助かろうと落とし穴からはいあがってき所を狙い、トンファーの先端を叩き付けた。
 顔面にめりこむ先端部。そこからフィーアは直接魔力弾を発射。ゴブリンリーダーのあたまがはじけ飛び、眼下のゴブリンたちへと浴びせられた。
 混乱し、かつ統率力を失った集団がどうなるかなど……明らかだった。

●隙を穿つ
 三方向から取り囲むように並ぶゴブリンたち。
 まず正面の個体が威嚇するように声をあげ、斜め後ろの個体がナイフや手斧を持ってバラバラに飛びかかる。
 対するアルテミアは、飛びかかる個体の動きを察知して、反転。振り向く動作で一人斬り、反動でもう一人を蹴りつけ、完璧なコンビネーションアタックだと信じて飛び込んできた正面の個体を剣で貫いた。
 青い魔力がゴブリンの肉体を貫き、そして振り払う。
 蹴り飛ばされたゴブリンが体勢を立て直すよりも早く、アルテミアは剣をゴブリンの腹に突き立てた。
 一人に三体、と考えると多いように思えるが、20体のうちたった3体だけがばらけて行動していると考えるとなかなかに統率のとれていない行動であった。
 別の場所で戦っていたゴブリンがそれに今更気づいて飛びかかるが、横から割り込んだフィーアのトンファーによって打ち返される。
 人間であればあばらを何本かへし折られるような水平打ちを食らったゴブリンは樹幹に激突。
 フィーアはトンファーを回し、後方から迫るゴブリンを振り払った。
 そんなフィーアにできた小さな切り傷に、華蓮が手を当てて治療する。
 暖かい治癒の力が流れ込み、傷口を修復していった。
「このままガンガンいけば勝ちなのだわ」
 華蓮は魔力の串を作り出すと、振り返るようにして投擲。
 駆け寄ろうとするゴブリンの額に突き刺さり、ゴブリンはもんどりうって倒れた。

 一方で、蛍と珠緒、そしてシラスはゴブリン五体に囲まれていた。
 囲まれていたというよりは、あえて囲ませたと言った方が正しいだろうか。
 統率を喪ったゴブリンは彼我の力量差がわからず、いい加減な戦術をくんで挑みかかってきてきていた。
 背中を預け合い、アイコンタクトをとる珠緒たち三人。
 ゴブリンは声を上げ、同時に襲いかかる。
 珠緒はロッドで攻撃を受け、その隙に蛍の手刀がゴブリンの首を打つ。
 打ち払われたゴブリンがぶつかって突撃をしそこなった個体めがけ、シラスがすかさずゴブリンの顔面を鷲づかみにした。
 すう、と目を細めれば、シラスの手の甲に怪しい紋様が浮かび上がる。
 掴んだまま振り上げ、振り回すようにして頭からたたき落とす。
 すると顔面に刻まれたのろいの紋様がゴブリンの顔面を中心に破壊を広げていった。
 一方では襲いかかるゴブリンと鍔迫り合いになった珠緒が至近距離で吐血し、吐きつけられた血が勝手に動いて呪印へ変わり、ゴブリンを内側から爆発四散させる。
「えっと……」
 蛍はそんな有様を横目に、すごいチームに入ってしまったと眼鏡を直した。
 ゴブリンの頭をえいっと踏みつけながら。

 一方こちらはレスト&クラウジア。
 年齢と外見があってないコンビ。もとい森の魔女コンビ。
 二人は背をあわせたまま、集まるゴブリンたちを目測で数えた。
「一気に蹴散らすぞ」
「そうね~、おばさんも頑張るわ~」
 斧を振り上げ突撃するゴブリン。
 対してクラウジアは腕を一振りして念波を飛ばし、ゴブリンの頭に直接破壊を実行。念は弾丸となってゴブリンに打ち込まれ、ゴブリンは派手に爆発した。
 レストはパラソルステッキを開くと、くるくると回して見せる。
 表面のなんてことのない可愛らしい模様が、なぜかゴブリンの意識を狂わせ始めた。
 レストは傘を閉じると、ゴブリンの頭をこつんとつついた。
 それだけでゴブリンは反射的に飛び退き、吹き飛んだように地面を転がり、そしてかたんと動かなくなってしまった。

 そんなこんなで、あれだけいたゴブリンはたちまちのうちに壊滅し、最後の一体がフィーアの打撃によって倒された。
「……」
 これをどうする? といった風に振り返るフィーアに、クラウジアとアルテミア、そして珠緒が手を上げた。
「後は任せてください。綺麗にお片付けしてきますから」

●心のおはなし
 シャベルをつきたて、穴を掘る。
 今度は罠をしかけるためではない。
 倒したゴブリンをかるく解体して放り込み、植物油と火を使って燃やし、そうして埋めるためだ。
「かなり臭いゴブリンどもも燃やして埋めれば臭いもでないわけじゃな。
 しかしどうしてこうも悪臭を放つのかのう」
 燃やし尽くすために穴に燃料を透過し続けるクラウジア。
 アルテミアはゴブリンたちの死体を運ぶために使った馬車の清掃を行なっていた。
「確かに。独特のツンとした臭いがあるわね。縄張りの主張とか、そういうものなのかしら」
「えらくばっちい話ですね。しっかり掃除しておかないと」
 死体が殆ど燃えたのを確認すると、珠緒は土をかぶせていった。
 土葬や火葬はそもそも、死体を土へ返しひいては自然へと還すことを目的としている。こうして細かく分解された死体はやがて花になり鳥になり海になり山になるという。いわゆる自然転生説というやつだ。
「心は消え、魂は消え去り、心はここにあり……」
 般若心経の一部である。珠緒は手を合わせ、ゴブリンもまた世界の一部になりますようにと祈った。
「……さて、と。そろそろあっちの皆が村についたころですね」
「そうね。渡した花冠も届いたかしら」
 アルテミアとクラウジアも一緒に、村のあるほうを振り返った。

 一方村では。
「おお……」
 山菜を植物油で上げた天麩羅を前に、フィーアが思わず声を上げていた。
 揚げたてを囓ってみる。
 何とも言えない油のすっきりとした香りと、食感と、そして僅かにきいた塩。山菜のちょっとした苦みと合わさって、それはもう美味しい天麩羅であった。
 その横で蛍は釣ってきた川魚を揚げていた。
「このくらいでいいわね。どんどん食べて。今日はサービスしちゃうから」
 横には沢山揚げられた魚や山菜が積み上がり、村の人々の注目を集めている。
「今回のゴブリンは群れで動く種類なのだわ。今回の討伐で群れごと消すことができたから、もう山は安全なのだわ」
 一方で、集めた村人に対して華蓮が山の安全を説いていた。
 大人たちには山の幸を。子供たちには作った花冠を配り、山の安全が確保されたことを伝えていく。
「そうだ。ゴブリンの被害にあったっていう子のところ、お見舞いに行ってもいいかな」
 シラスのそんな提案に、是非にと両親らしき大人たちが家へ案内してくれた。
 アルテミアやシラスたちの作った花冠のひとつを、その女の子が落としていったという籠に入れて持って行く。
「あなたたちは……?」
「悪いゴブリンをやっつけたお知らせをしにきたのよ~」
 レストは山の絵を広げて、ベッドから起き上がった女の子へと手渡した。
「もう、大丈夫なの?」
「ああ、保証する。ゴブリンはもう出ない」
 シラスの言葉と、そして美しい絵に、女の子はほっとしたように息をついた。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 代筆を担当しました黒筆墨汁でございます。
 リプレイを大変お待たせしてしまったことを、前担当者に代わってお詫び申し上げます。

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