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シナリオ詳細

<常夜の呪い>夢の中で食べ放題!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●永遠の眠りへ……
 天義内の一角に大きな住居を構えるアルミロン一家。
 4世代11人で住む大家族で、天義の民とあって朝昼晩、神への祈りを欠かさぬ敬虔なる人々だ。
 天義の民としてはごく普通の一家なのだが、ある日、彼らはとある事件に巻き込まれてしまう。
 とある日の夜、常世の呪いと呼ばれる夜色の霧が彼らの家を覆ってしまったのだ。
 一家は眠りについたまま起きることなく、その霧の中で夢を見続けているらしい。

 その夢は、大きな円状に設置された食べ物の屋台。
 どうやら、この家の子供達のお腹いっぱい食べたいという願いを強く反映したらしく、混沌だけでなく旅人の出身となる各世界や地域の食べ物などをそれぞれの屋台で振る舞っているらしい。
「さあ、どんどん食べてってね!」
「なんでもあるよ。食べたいものを言ってね♪」
 それらを振る舞うのは、足のない筋肉隆々の上半身だけの姿をしたスリーパーが2体。
 そして、その配下である可愛らしいバク達5体だ。
 アルミロン一家は皆嬉しそうに、振る舞われる料理を食べていた。
 だが、いくら食べ物を食べても、腹が満たされることもない。夢でいくら食べてもリアルでお腹が膨れるはずもないのだ。
 スリーパー達は一家が食べ続ける姿にほくそ笑み、彼らが現実において弱っていくのをじっくりと待つのである……。

●怠惰と眠りの化身『スリーパー』
 天義において、発生している<常夜の呪い>。
 それは、建物、町といった単位で『夜色の霧に覆われてしまう』というもの。
 発生した霧の中に天義の人々が飲み込まれてしまい、捕らわれたままとなってしまう状況が頻発している。
 その中に入った人達は目覚めぬ眠りに堕ちてしまい、放置すれば餓死してしまうだろうとみられている。
 この事態を重く見た天義の各教会も、事件解決へと動いている。
 だが、その頻度が高い為に人手が足らず、ローレットにも依頼が回ってきている状況なのだ。
「他の情報屋の皆様も、同じような事件を斡旋しているかと思います」
 『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)がこの状況に心を痛めながらも、イレギュラーズ達へと事件の情報を提供する。
 天義の地にピンポイントで発生するドーム状の霧。この中は夢空間が広がっているという。
「この中の空間は、閉じ込められた人々の夢から作られているようですね」
 今回は一家の住居が丸ごと霧に覆われている。
 外からでは内部がどうなっているかはわからないが、万全の備えをした上でその空間へと突入したい。

 この夢空間に一家を閉じ込めているのは、スリーパーと呼ばれる魔物だ。
 事件によって、スリーパーの姿は様々らしいが、このスリーパーを全て倒すことで呪いは解け、人々は目を覚ますらしい。
 また、現地では、状況を見た現地の聖騎士クレメントが合流する。
 天義の教会から遣わされた彼が現場へと案内してくれるので、道中迷うことはないだろう。
「少し世間知らずな面はありますし、力量もまだまだといった騎士さんですが……、彼なりに頑張っていますので、大らかな態度で接してあげてくださいね」
 彼もまた天義の民の為にと力を尽くしてくれるので、協力の上でスイーパーを倒したい。

 一通り説明を終え、アクアベルはこう話す。
「必ずどこかに、この常夜の呪いを発生させている者の存在がいるはずなのですが……」
 現状、それは分かっていない。
 一連の事件の謎を解くカギともなるかもしれないので、頭の片隅に置いておくとよいだろう。
「どうか、天義の人々に救いを」
 最後に、アクアベルは改めて依頼の成功を願うのだった。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様、こんにちは。なちゅいです。
 常夜の呪いに捕らわれた天義の人々の救出を願います。

●状況
 天義のとある民家、とある大家族(親子と父方の祖父母、6人兄弟に、長男の嫁と娘、合わせて11名)が被害に遭っております。
 彼らを助け出すことが今回の目的です。

●敵
◎スリーパー
 怠惰と眠りの化身。犠牲者から現実を奪い永遠に眠らせることを使命とする怪物です。
 彼らを討伐することで呪いは解け、住居を覆う霧は晴れるようです。

●NPC
◎クレメント
 神に忠実である聖騎士達ですが、神の為の行いを盾にややわがままな振る舞いをすることがある温室育ちの若者です。
 正義感の強く利口な若者であり、天義の民の危機を察してその身一つで参戦してはくれますが、剣の腕は今一つといった様子です。

セリフ例)
「教会の依頼によって、参上した。よろしく頼む」
「了解した。貴公らの指示には従おう」

 『義を盾にする困り者の聖騎士達』、『わがまま聖騎士己の弱さを悟る』に登場する青年と同一人物です。
 上記シナリオは、今回の依頼において読む必要はございません。

○アルミロン一家
 祖父母、夫婦、子供6人。
 長男の嫁と娘、合わせて11人構成です。

====以下、プレイヤー情報です===========

●敵
◎スリーパー×2体
 姿形は状況によって異なるようですが、この世界においては筋肉質な上半身のみを持ち、地上1m弱のところを浮遊しており、身長2m程度といった印象を抱かせます。

・催眠波(強)(神遠扇・乱れ・物無)
・締め付け(物近単・崩れ・弱点)
・ラリアット(物中範・ブレイク)

○配下……バク×5体
 全長1.5m程度あるスリーパーに使役される魔物です。
 一般的に見るバクがデフォルメされたような姿をしています。

 以下のスキルを使用します。
・催眠波(弱)(神中扇・乱れ)
・タックル(物近単)
・夢を食う(神中列・HP吸収)

●状況
 夢世界は屋台のようなものが立ちぶ夢空間となっており、時間経過で店ごと変化。
 様々な世界、様々な地域の食べ物を食べることができますが、悲しいかないくら食べてもお腹が満たされることはありません。
 大家族ゆえに、お腹いっぱい食べたいという子供達の要望を強く反映したようです。

====以上、プレイヤー情報です===========

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • <常夜の呪い>夢の中で食べ放題!完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年03月26日 22時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ラダ・ジグリ(p3p000271)
灼けつく太陽
ポテト=アークライト(p3p000294)
優心の恩寵
レッド(p3p000395)
赤々靴
リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣
マルベート・トゥールーズ(p3p000736)
饗宴の悪魔
ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)
黄昏夢廸
スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)
天義の聖女
アマリリス(p3p004731)
倖せ者の花束

リプレイ

●天義の人々と夢
 天義へとやってきたイレギュラーズ達。
「なんだか変わった事件が起きてるなぁ」
 天義出身の貴族である『本当に守りたいものを説く少女』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)は素直な感想を口にする。
「実家を思い出すな。人数も構成も同じくらいだ」
 ラサの商売人一家出身の『静謐なる射手』ラダ・ジグリ(p3p000271)。
 確かに食事はちょっとした争いだったと、彼は今回の被害者一家の話に実家の食卓を重ねていた。
 もっとも、神に仕え、礼儀正しい天義の家だとそういう事もあまり見受けられないようだが……。
「天義……嫌いだが……、今、気にするべきはそれではないか」
 中性的な容姿をした長い黒髪の『黄昏夢廸』ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)は、私情を抑えつつも気にかけていたことをスティアが代弁する。
「眠らせて徐々に弱らせて殺す……。なんだか今までとは違った感じだね」
「お腹いっぱい食べる夢か……」
 薄茶の髪に金の瞳、『優心の恩寵』ポテト チップ(p3p000294)がそのシチュエーションを想像するが、いくら食べたとしても所詮それは夢でしかない。
「呪いを解いて、現実でお腹いっぱい食べて貰わないとな」
 ポテトの主観に、ランドウェラは少し考えてから首を横に振る。
「夢はあまり見れないから、少しうらやまし……くない」
 この状況に嫌悪感を抱く彼は、夢は普通に見たい、そして、夢はどうにかして現実のものにしたいと語る。
 中性的な子供といった容姿の『特異運命座標』レッド・ミハリル・アストルフォーン(p3p000395)は夢の世界に興味を持てども、人の生死が関わっているとあらば、黙ってはおけないようで。
「困ってる天義の人を助けてやるっす!」
「剣となり盾となりて、共に民を守りましょう。騎士の誇りにかけて!」
「そうだな。天義の民は必ず守ってみせる」
 天義の騎士『死力の聖剣』リゲル=アークライト(p3p000442)が同意を求めると、同じく天義の聖騎士クレメントも力強く語る。
 すると、スティアが彼に対してギフトを使い、避難を手伝うよう依頼する。
「守りながら戦うのって大変だし、頼りにしてるね」
「了解した」
 クレメントは神に誓ってと、約束する。
「許さない。我が祖国ネメシスを汚す不正義を」
 こちらも、天義出身の男装騎士、『天義の守護騎士』アマリリス(p3p004731)。
 彼女はここに到着するまでに、できる範囲で常世の夢魔について調べてはいたが、現状は情報に乏しい。
 魔種化した父を想うアマリリスは、魔種を追えばいつか父に逢えると疑わない。
「だから、私は魔種を追う」
 果たして、今回は何か手掛かりはつかめるだろうか。

●いくら食えども腹は満たせず
 被害者一家が霧に捕らわれてからの正確な経過時間はわからない。
 そこで、突入に当たり、被害者一家を気遣うメンバー達が用意していたのは食事の類だ。
「起きた時の為に、弱った体と胃腸に優しい料理を思ってね」
 ポテトが用意したのは、柔らかくなるまで煮た野菜のスープに卵粥、香草を練り込んだ柔らかいパン。さらに、具沢山なポトフだ。
「……作りすぎたかな」
 とはいえ、問題はその量。
 少しばかり気合を入れすぎたかとポテトは頭をかく。
「リゲルも手伝ってくれるか?」
「分かったよ」
 この為、ポテトに依頼されたリゲルが運搬の手伝いを行う。
 ちなみに、彼もまた大量のチョコレートを入れたリュックを背負っている。
 チョコレートは美味しく高カロリーで、保存も利くと優れ物。助けになるのは間違いない。
「金平糖を持ってきた……が、体に良いとかは考えてなかったな……」
 ランドウェラは子供達のことを考え、持参したものの。皆が思った以上に家族のことを考えていたのにびっくりした様子。
「準備はいいっすか? 行くっすよ」
 水筒に汁物料理を用意してきたレッドが仲間達へと確認し、皆で一緒に常世の呪いに覆われた民家へと突撃していく。
 やや暗さを感じたこともあり、ラダはカンテラを、ポテトは南瓜ランタンを転倒させ、リゲルは自らの剣をギフトで輝かせていた。
 アマリリスは怪しげな気配がないかと、スキルを駆使して今回の事件の黒幕を探す。
「どこかで見ているであろう黒幕がどの場面で、どんな感情を持つかなんてわからないからな」
 ランドウェラもまた、できる範囲内で感情探知を使い黒幕を探す。
 ただ、彼はこの空間自体にも興味があったらしく、瞬間記憶を使って目に焼き付けもしていたようだ。
「あれかな」
 嗅覚を働かせ、捜索に当たっていた悪魔を自称する旅人『饗宴の悪魔』マルベート・トゥールーズ(p3p000736)が仲間達へと前方を指し示す。
 明るくなったその空間には、大きな円状に設置された屋台があった。
 屋台からは美味しそうな匂いが漂ってくるが、マルベートはそれ以外にもその場に捕らわれたアルミロン一家の匂いも感じ取る。
 一家はこの状況に何の疑いも持たず、ひたすら変わりゆく屋台で振る舞われる様々な料理を口にしていた。
「なんだか予想してたのと違って、中が賑やかで楽しそうで美味しそうなボクも食事したくなる世界っすけど」
 レッドはそんな印象を抱くが、マルベートは料理等の匂いに交じり、嗅ぎ慣れぬ何者かの臭いも感じ取っていた。
 屋台にいる上半身のみが浮かぶ屈強なスリーパー達とその配下であるバク達の姿を捉え、レッドは捕らわれの家族を巻き込まぬよう大きく迂回して敵の引き付けに当たる。
「レッドと言うっす。相手になるっすよ!」
 同じく引き付けに当たるリゲルは、先に被害者家族に一声を、正面から近づいて。
「ここは夢の中の世界。いずれは親子共々餓死してしまいます」
 聞こえてきた声に、料理を食べていた一家の手が止まる。
「夢から覚めた後には、食べきれない程の食事をお約束致しましょう。今はどうか安全な場所に避難を!」
 そう告げたリゲルは、レッドと合流してバクどもの引き付けへと向かう。
「夢の中の食べ物? どんなに美味しそうでも、命なき糧に興味はないね」
 マルベートは正面から、スリーパーの抑えに向かう。
「イレギュラーズです! この世界は夢魔の世界で、貴方方を救いに参りました!」
 アマリリスも一家へと一声呼びかけ、マルベートに続く。
 そして、メンバー達は直接の避難はクレメントへと託す。
「天義の聖騎士クレメントだ。助けに参上した」
 教会から派遣された聖騎士とあれば、それだけで人々の信頼も大きい。被害者一家も気を許していた様子。
「大人は薄々感づいてるかもしれないが、残念ながら夢の類だ」
 ただ、一家の人数が多いこともあり、ラダも手伝いへと当たっていく。
「あまりに目覚めないから、騎士と共に助けに来た」
 ラダの説明に、相当量食べていたはずの子供達は空腹を自覚し、避難に応じてくれる。
「そういえば、あっちに美味しそうな食べ物あったよね。見た事ない物があったけどなんだろうね?」
 スティアがそう指し示すと、食欲旺盛な子供達は頭で夢と理解していても、食べてみたいとそちらに向かっていく。
 もちろん、スティアも敵との衝突から離れた場所を示しており、うまく離れるよう誘導していく。
「これを頼むよ」
 気休めかもしれないがと、ポテトは持ち込んだ料理をクレメントへと託す。
 アイテムとして持ち込んだそれらはきっと、本当の意味で腹の足しにしてくれるはずだ。
 さて、その間に、敵の気を引くメンバーが相手と対して。
「食べ放題とは、気前の良い事だけど……」
 マルベートは筋肉隆々の上半身だけを浮かばせるスリーパーへと言い放つ。
 生憎と夢の中ではあるが、ちゃんとした食べ物も用意していたと、マルベートは相手を指さす。
「スリーパー、君らの事だよ」
「…………」
 敵は黙したままで、筋肉のついた両腕を構えて見せる。
「仮にも人を宴に招いたのだ。しっかり持て成してもらおうか」
 色に対して貪欲な彼女はスリーパーすらも食らおうと、舌なめずりして向かっていくのである。

●眠りを得意とする怪物たち
 夢の中に人々を閉じ込める怪物達。
 レッド、リゲルが敵を被害者家族から引き離しにかかっており、集団で円となる屋台の端におびき寄せようとする。
 その上で、レッドはバク目掛け、『リミットブルーレプリカ』で別れの文字を刻み込んでいく。
「弱者を狙うことしかできないのか? 小物だな!」
 リゲルも数体を纏めて捉え、火球を嵐のように降らせて多くの敵の引き付けに当たる。
 バクどもは見た目こそ可愛らしいが、タックルを食らわせつつ、催眠波を発してくる。
 迂闊に食らってしまえば、眠気の為に構えが乱れてしまう。
 そこを相手はついてくる危険があるので、油断をしないようしつつ彼らは立ち回る。
 マルベート、アマリリスの2人はというと、筋肉隆々の上半身を持つスリーパーを1体ずつ分担して相手取る。
 近場で押さえつける彼女達は後方に催眠波による被害が及ばぬようにと、抑えを優先して立ち回っていた。
(手傷は負わせるに越した事はないけど、無理に倒しきる必要はない)
 マルベートはそう考えつつ、この場は自慢の魔眼と、手にするフォークとナイフを思わせる双槍で相手の体を押し留めようとしていた。
 1体を抑えるアマリリスは仲間の狙うバク目掛けて炎を飛ばそうとするが、思ったより距離があった為、スリーパーを対象としていたようだった。
 その後方から、中衛に位置するメンバーが援護に回る。
 ある程度仲間が固まっているうちにと、ランドウェラは赤い彩りによって仲間達を鼓舞する。
 そして、やや前方に位置取るスティアは回復魔法で支援に当たる。
 彼女は主に体力回復に努めるが、バクやスリーパーの催眠波が思った以上に仲間達の態勢を崩してくる為、超分析を織り交ぜ対処していた。
「ポテトチップさんはあちらの人達を」
「ああ、任せてくれ」
 ポテトもそのスティアと回復を行いながら、魔弾で仲間達の攻撃を支援していく。
 クレメントと共に一家を守るラダ。
 彼女は敵から距離を取りつつ魔弾を発し、バクを纏めて狙い撃つ。
「魔種の手先ならば、この程度朝飯前とはいくまい」
 とはいえ、面倒な相手ではあるが、バクはそれ以上ではなさそうだ。
 1体がラダに撃ち抜かれて倒れる中、抑えに当たるレッド、リゲルは引き付けながら攻撃を繰り返す。
 リゲルは仲間からは距離を保ち、自身が発した炎で身を焦がす敵目掛け、銀の剣を旋回していく。
 それに巻き込まれるバク達。1体が体を寸断され、その身を崩していく。
 防御集中しつつ、レッドは敵を自由にさせぬよう立ち回り、状況を見て刃を振るう。その度に、『蒼剣』のセリフが聞こえてくるのは気のせいではないだろう。
「遠慮なく、斬りつけてやるっす」
 流麗に舞うレッドは近場のバクを切り刻み、止めを刺していく。
 バク達は抵抗すべく、イレギュラーズ達の夢を食べて回復を図るが、メンバー達の攻撃の威力が上回る。
 ランドウェラが放つ一条の雷撃。それがバク達の体を貫き、焼き払っていく。
「威力はこれしか期待できんのだよ」
 巻き込んだうちの1体を爆ぜ飛ばしたものの、回復でしぶとく生き残ろうとする敵目掛け、ラダは狙撃する。
(口や胃のあたりが狙い目か?)
 彼女の獲物、大口径のライフル『Schadenfreude』から放たれた一撃は相手の胴体を穿ち、霧散させたのだった。

 一方、前線で、スリーパーを相手取る2人。
 マルベートが無理せず魔眼で押さえつける横、アマリリスが相手の解析を試みつつ、『マグダラの罪十字』で攻撃を仕掛ける。
「貴様らの主人はどこだ!!」
「…………」
 問いかけも行うがスリーパーに反応はなく、彼女達の首を絞めつけ、ラリアットを叩きつけようとしてくる。
 彼女達が耐えている間、ランドウェラは相手をじっと見つめて。
「食えるものなら食ってみろ」
 呪詛を込めた彼女の紅目で睨まれたバクは、意識を失って倒れてしまった。
 バクがいなくなったことで、そちらの抑えから解放されたリゲルが星凍つる剣の舞を披露する。
 敵は全て催眠波を発してきており、イレギュラーズ達は眠気を堪えながらも敵の撃破に当たっていく。
 前線で戦う仲間達の体力も減少していることを察し、スティアはポテトと効率よく回復を行う。
「頑張れ、精一杯応援しよう」
 さらに、ポテトが仲間の気力回復にと声を張り上げる。
 思った以上に、スリーパーの攻撃が強力とあって、スティアも治癒魔術を使う頻度が高めていたようだ。
「…………」
 相手はやや、力任せに襲い来る相手。
 膂力で豪腕を振るってくる敵へ、マルベートは至近からの攻撃を繰り返す。
 悪魔である彼女は獲物を見定め、獣の眼光を差し向ける。
 バクを討伐した仲間の援護が入ってきたことで、マルベートもその眼光を煌めかせて。
「そろそろ実食させてもらうよ」
 マルベートは食器のような槍を突き入れ、思いっきり切り払う。
 宙を浮いていたスリーパーは重い音を立てて地面に落ちると、彼女はその刃についた血を舐めとり、笑みを浮かべていた。
「もう逃がさないっすよ」
 残るスリーパー目掛け、レッドは攻撃集中して目の前のがっちりした相手の体を切り刻む。
 全身が傷つくスリーパーは最後まで抵抗をと、イレギュラーズを巻き込むようにラリアットを繰り出す。
 その攻撃に構え、がっちりとガードするアマリリスは相手の催眠波を封印する。
「…………!!」
 力を封じられた敵はなおもこの場のメンバーを締め付けようとするが、距離を保つラダには関係のない話。
「良い匂いもするだろう。さぁ、起きる時間だ!」
 それは、クレメントが持つポテトの料理。
 後ろの家族達もその料理を口にしていたが、それらを満足に食べてもらう為にもと、ラダは弾丸と化したスタンガンを撃ち放つ。
 最後のスリーパーは心臓を撃ち抜かれ、地面へと重い音を立てて落ちていったのだった。

 一通り敵を討伐したのを確認し、マルベートは早速スリーパーの死骸を切り分けようとしていた。
「そこで、誰か見てるっすか?」
 レッドが直感で後方へと呼びかけるが、全く反応はない。
 周囲を透視で見つめていたリゲルも、なしのつぶてと首を横に振る。
 怪しげな気配があれば、すぐにでも狙おうとしていたアマリリスもそれらしき気配は感じなかった。
 敵はメンバー達の突入を察し、早目に撤収してしまったのかもしれない。
「接触できたら、目的を聞いてみたかったんだけれどね」
 ぽつりとポテトが残念そうに呟くと、ランドウェラも一言。
「僕達にも、その夢を見させる事はできたのかな」
 彼が言うように、黒幕はイレギュラーズすらも眠らせてしまうのだろうか。
 一行がそう考えるうちに、夢の中の世界は徐々にその存在を薄れさせていくのだった。

●本当にお腹いっぱいの食事を
 霧が晴れ、次第にその空間は元のアルミロン一家宅へと戻っていく。
 スティアは眠っていた家族の状態を確認する。
 多少、空腹で弱っていたが、外傷などはほぼなかったようだ。
「何か、怪しげな物とか近くになかったかな?」
 尋ねるスティアに対し、目覚めた一家は揃って首を横に振る。
 ただ、怪しげな人影を目にする子供はちらほらといた様子。
「なんか、お耳の尖った女の子が……」
 相当不気味だったのか、思い出した子供達は少しだけ身を震わせていた。
(騎士として、いえ、聖女として天義の民に何ができるだろう)
 そんな子供達を慰める為、アマリリスは清らかな声で歌い始める。
 父によく聞かせていたその天使の歌は、子供達の心を和らげていたようだ。

 助け出された一家は皆、空腹を訴える。
「いっぱいあるから、明日以降にもしっかり食べてくれ」
 大量に料理を作ってきたポテトは、被害者家族はもちろん、戦ったイレギュラーズ達にも食べるよう促す。
 丸一日以上何も食べてない彼らの胃のことを考えて、柔らかい料理やスープなどを所持してきたポテトの行為に、一家は口々に感謝の意を示していた。
「確かに、私もお腹空いてきたな」
 手伝いをしていたラダも、それらを口にし始める。クレメントもここぞと気を抜き、相伴に預かっていたようだ。
「他にもほしい料理があったら、振る舞ってやるっすよー!」
 腕まくりするレッドが何を食べたいかと一家に尋ねると、子供達は早くも肉料理を所望していたようだ。
 さらに、食後のデザートにと、アマリリスがヨーグルトに細かく刻んだ果物を入れた一品を差し出す。
「私がよく食欲がない時に、お父様が作ってくださったの」
 ランドウェラは金平糖を、そして、リゲルも少し遅いグラオ・クローネの贈り物とチョコレートを差し出す。
「お返しは、君達が幸せに過ごしてくれたら、それで十分だ」
 リゲルの言葉に、子供達は嬉しそうに金平糖とチョコを分け合う。
 そんな彼らの様子に、ランドウェラはどう声を掛けていいのかわからず戸惑っていたのだが。
「きっと、夢の中より現実の方が楽しい」
 そんな彼の様子に子供達はくすりと笑いつつ、ありがとうと声を揃えて礼を告げていたのだった。

成否

成功

MVP

ポテト=アークライト(p3p000294)
優心の恩寵

状態異常

なし

あとがき

リプレイ完成です。
MVPは被害者のことを考え、
多量の料理を用意していただいたあなたへ。
被害者一家の救出、お疲れさまでした。
残念ながら、黒幕を捉えることはできませんでしたが、
頻出する事件の中、きっと尻尾を出すことと思います。
今回は参加していただき、本当にありがとうございました!

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