PandoraPartyProject

シナリオ詳細

練達ミッション・インポッシブル

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●だってアレがいいんだもん
 研究所の床に転がって手足をばたばたさせてるおっさんがいた。
「いやじゃいやじゃ!!!」
「聞き分けて下さいよ、チーフ! 今はどこも在庫切れで手に入らないんですって!」
「だっていやじゃもん! アレじゃないと嫌のヤじゃもん!! 滅びよ需要ッ!」
 白衣のおっさんは手をバッ、てやると若者に諭されてもお構いなしに駄々をこねる。
 だってアレじゃないとヤだもん。
「このハイパースーパーデリシャスでゴールドマティックな武器を完成させるには、何としてもあの金属が必要なんじゃ!」
 おっさんの視線の先、テーブルの上には作りかけの銃器のようなものが横たわっている。
 デリシャスは美味いとかいってはいけない。老人に横文字は鬼門なのだ。
 とりあえずたくさん並べればいいとかそのくらいの認識です。
「そもそも、奴らが買い占めなぞしていなければ……!」
 おっさん目当ての金属。魔鋼石と呼ばれるそれは、練達のとある人物によって買い占めが行われていた。そのせいで値段が高騰するどころか、何処へいっても手に入らないのが現状だ。
「うーむ……」
 おっさんは思案する。馬鹿ではないのだ。どうしても無いのなら、他に手に入れる手段を模索するまでのこと。
 頭からケトルのように湯気をあげながら考えた末、老人の目は何かに気づいたようにきらりと鋭く光る。
「いや、待てよ。そもそも買い占めってどうなんじゃ? 悪くない? ワルいよね――」
「ちょ、チーフ……!」

●ちょっと行って取ってきて
「ビルの最上階に保存されている”モノ”を取ってきて欲しいのです!」
 『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)は指をバッ、と練達(探求都市国家アデプト)の写真へと向ける。
 指の先にあるのは、練達郊外のビル街。並び立つ高層ビルのひとつだ。
「依頼人は早急に、そーーーーーーーーーきゅうにそこにある物を欲しがっています。なので、騒ぎになる前に素早く盗m……拝借するのですよ!」
 わわわっと何か言いかけた口元を抑え、言い直すユリーカ。
 とにかく早くとってきて! ってことらしい。納期等の書類は特にない。デジタル化が進んでいるとはいえ、いいのか練達。
「とにかく、ちゃっといってささっと取って依頼解決、練達いんぽっしぶるなのです! ででんでんででん!!」

GMコメント

 スタイリッシュにブツを奪取するのが目的です。証拠隠滅にビルを爆破しようが警備ロボを破損させようが、人的被害がなければ練達ではビルなんてすぐに立つでしょうし大丈夫。やっちゃえイレギュラーズ。負けるなイレギュラーズ。
 ちなみに買い占めは犯罪なので文句は言われません。

●成功条件
 ビル最上階にある金属を取ってくること

●敵
・監視カメラ
 廊下や部屋の天井についてる丸いやつ。
 半球型に監視しているので死角などない、すごいぞ練達!

・警備ロボU-20
 不規則に廊下や部屋を歩き回る警備ロボ。熱源感知とかしてくるやばいの。
 侵入者を排除する役割は担っているものの、対象は一般人なのでそこまで強くはない。

・警備ロボA-2000
 強盗が押し入った時のための戦闘(つまみだす)用ロボ。
 なんかメカいアームとかを伸ばして攻撃してくる。飛び道具は無し。

・迎撃装置
 最上階の手前では、重火器とかレーザーとか丸太とかがびゅんびゅん飛んでくるよ。大事なものは守らなきゃね。全自動迎撃装置。

●補足
 この依頼では「いかにかっこよくスタイリッシュに依頼を達成するか」がそれなりに重要視されます。
 依頼の目的を損なわない範囲で皆様のカッコイイと思う名場面を作り出しましょう。

●アドリブについて
 依頼の仕様上、皆様のプレイングの雰囲気や勢いがアドリブと化して火の粉の如く降りかかることが予想されます。
 イヤチョットソレハという方は、ステータスシートやプレイング内にて、アドリブNGや控えめ表記をお願い致します。それに準じて対応させていただきます。

  • 練達ミッション・インポッシブル完了
  • GM名
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年04月02日 21時35分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

エマ(p3p000257)
こそどろ
日向 葵(p3p000366)
紅眼のエースストライカー
ノワ・リェーヴル(p3p001798)
怪盗ラビット・フット
ニーニア・リーカー(p3p002058)
辻ポストガール
赤羽・大地(p3p004151)
彼岸と此岸の魔術師
風巻・威降(p3p004719)
気は心、優しさは風
ミルヴィ=カーソン(p3p005047)
剣閃飛鳥
リリアーヌ・リヴェラ(p3p006284)
勝利の足音

リプレイ

●ででんでんででん
 夜の闇と静寂に沈んだ都市。そこに8人の足音がコツリ、コツリと響き渡る。
 彼、彼女らの瞳は、作戦目標のビルを見据えていた。
「さしずめ、今夜限りの怪盗団ってところですね。えひひひ!」
 『女三賊同盟第一の刺客』エマ(p3p000257)はそう嗤う。
 盗賊である彼女にとって盗みは慣れた仕事ではあるが、練達は初めての仕事場であり、今回は依頼で複数人でここに来ているのだ。さしずめ8人の怪盗団である。
 ででんでんででん。
「ででんでんででんはインポッシブルじゃねぇよな……や、それは野暮っスか」
 そうぼやくのは『紅眼のエースストライカー』日向 葵(p3p000366)。確かにででんでんででんからインポッシブルな感じはしない。しかし、これに関しては雰囲気の問題なのだ。
 依頼内容に気乗りしなさそうな葵ではあるが、仕事ならば仕方ないと溜息と共に頭をリセットした。
 視線はビル入り口へと。超視力により、彼は仕掛けられたカメラをいち早く発見する。

 路上に映る、頷き合う8人の影。

 今宵ここに在るのは一世一代の晴れ(?)舞台。パクるのに合法という練達初の依頼を達成するため、彼等は動き出したのだ。

●潜入! 真夜中の高層ビルの内部事情を探れ(新番組)
 暗視装置でビルの閉じられた自動ドアを映すレンズに、異様な光景が映り込んでいる。

 電源は切れているのに勝手に開きだす自動ドア。
 小さく床を叩く足音。

 明らかに何者かがそこにいる――しかし、その姿だけは一向に映らない。
 それもそのはず。エマと『麗黒なる盗兎』ノワ・リェーヴル(p3p001798)がスペクターで身を隠し、侵入作業を行っているのだ。
「随分と入り口が手薄じゃないかい?」
 ノワーーいや、怪盗ラビット・フットの手から飛び出した一枚のトランプが空を切り、カメラのレンズを真っ二つにして無力化する。
 トランプって刺さるんだ。
「怪盗だからね」
 怪盗のトランプは刺さるらしい。本人が言うからには間違いないだろう。
 怪盗を目指す皆さん、ここテストに出ます。
「もう一個、奥にもあるっスね」
 葵の報告から一瞬のラグを挟み、ナイフとトランプが一団を映すはずのレンズを破壊する。
 階層を駆け上がる怪盗団ではあるが、少し進めばカメラ、またカメラ。
 対処自体は余裕であり、足を止める必要はない。ただ、死角を縫って楽に進めるほどビル内部の警戒網は甘くないらしい。
「角を曲がった先にもあるよー」
「おっけー、そっちは私に任せといて!」
 曲がり角で見えないカメラの周囲に展開されるのは、実物そっくりの静止画像。
 『寄り添う風』ミルヴィ=カーソン(p3p005047)は銀製のマジックカードを片手にニヤリと笑みを浮かべてみせた。
「それ、便利なカードだね」
「でしょー? あげないよっ」
「それは残念だ」
 怪盗マスクの奥の瞳を興味深そうに細めるノ……ラビット・フット。自身も持つスキルを改良したのであろうその道具に、ちょっとだけ興味津々である。
 怪盗とは自身の研鑽を怠らないものなのだ。

●フラグ建築in練達
「また来るよ、右奥から左に動いてる」
「OK」
 壁の手前。狭いその場所に、天井壁際と思い思いに身を隠す怪盗団の面々。
 ちょうど死角になったその場所を映さない位置を、警備ロボットの赤い瞳がゆっくりと通過し――刹那、ナイフにコア部分を刺し貫かれ、その活動を停止した。
 『雪だるま交渉人』ニーニア・リーカー(p3p002058)のエコーロケーションは見えない敵を捜索するのに長けている。そして引き抜いたナイフを弄ぶのは、独特の笑みを浮かべるエマだ。
「えひひ! 余裕、余裕ですね」
「にしても、警備が手薄だなぁ、カメラの性能はいいみたいだけど。練達ってこんなものなんですかね?」
 旅人『瞬風駘蕩』風巻・威降(p3p004719)は歩みを再開しつつも不思議そうに首をかしげる。
 超化学を有する練達のことだ、もっとスゴいの(超高性能人型ロボ)とか、スゴいの(米粒くらいの監視カメラ)とか、スゴいの(迫るレーザー網)が来ると思っていた彼は、少し拍子抜けしたように髪を掻いた。
「……それハ、フラグじゃないのカ?」
 『D1』赤羽・大地(p3p004151)は威降の言葉に苦言を呈する。
 このような余裕のある場面や、後のない場面において、立てたフラグというのはしっかりと回収されるのがお約束である。
 だからこそ、安易に不利になりそうなことを口にするのは――。
「ストップ」
 ニーニアの言葉にぴたりと静止する怪盗団。葵は黒と赤の瞳を細め、そして納得したように頷いた。
「この先、吹き抜けっスね」
「うん。警備もたくさん居るみたい」
「……誰かノせいダナ」
「俺ですか!?」
「……冗談ダ」
 軽口を叩き合う男性陣2人の傍で、ノワは小さく口の端に笑みを浮かべる。
 それは窓からの月光に微かに照らされ――すぐに影へと飲み込まれた。
「ここからが本番だね」
「あれ、やる?」
 暗がりの中、ニーニアと視線ノワは顔を見合わせる。
 怪盗ラビット・フットのマスクの奥の瞳は楽し気に細められ、対するニーニアの金色の目の奥には状況に対する期待、そして淡い興奮がありありと浮かんでいた。
 不謹慎だけれど、ちょっぴりワクワクもするものだ。その気持ちを何よりも理解できるノワは嬉しそうに笑みを浮かべて見せた。

●囮作戦
『『ピピピピピッ!』』
 警告音をあげ移動する複数の巡視ロボ。
 カメラに映った人型と、それに沿って移動する熱源。そしてあるロボは小さな鼠を愚直にプログラムに従い追跡する。
 吹き抜けになった円型階層のうちの1つ。その各所で同じような光景が繰り広げられ、そしてよく見れば警備ロボたちは一つの部屋へと向けて誘導されていた。
『ピピッ』
 次々と部屋へと吸い込まれていく警備ロボたち。そして熱源を掴もうと伸ばしたアームは、次々に空を切る。
 各人が展開したエーベルヴァインの蜃気楼。そこにニーニアと威降のファミリアに持たせた囮の熱源(カンテラ)を重ね、まるでロボにそこに侵入者がいるかのように錯覚させているのだ。
「ピピッ……?」
 誘導されてきた最後尾のロボは、部屋の外でその異変に気が付くとぐるりとカメラを回す。
 回したレンズの中央に、今まさに部屋の中のファミリアを操作する2人の姿が映――
「させません」
 ――らなかった。

 吹き抜けになったフロアの中央。
 ジェットパックを使い加速した『特異運命座標』リリアーヌ・リヴェラ(p3p006284)がそこから現れ、速度を乗せた回し蹴りでロボットを部屋に叩き込んだのだ。

 誘導された最後のロボが部屋へと入ったのを確認し、ノワは扉を施錠しカギを壊す。
 閉じ込められたロボットたちは、今しばらくこの部屋から出てくることはないだろう。囮作戦は見事に功を奏し、1/3ほどの警備ロボたちを隔離することに成功したのだった。

●高層階にて
 壁面の巨大なガラスが砕け散り、2機の戦闘ロボがビープ音と共に落下する。
「余裕ではなかったケド、案外楽に行くものだね」
 遥か下の地面でバラバラになるロボたちを割れたガラスから不憫そうに見つめるミルヴィ。
 彼女の起こした惨劇なのだが、盗賊である彼女は「あのロボいくらくらいかかってるのカナ?」などと製作費の方を心配する。目の付け所が”らしい”。
「通路側、今の音で2機来るよ!」
「全ク、仕事熱心な事ダ」
『『ビビビッ!』』
 2ミリほど浮いた状態で接近してくる戦闘ロボたち。ホバークラフトの原理なのか、しかし移動スピードは驚くほどに速い。
「お任せを」
 リリアーヌはそのうちの1機へと駆け寄り、堂に入った動作で拳をコンパクトに振り上げる。
 目にも止まらぬ移動速度と、その速度を力へと還元する体術。このふたつが組み合わさり、彼女の拳はロボの装甲を鈍い音をたてて凹ませた。
 その音と同時、もう1機のロボットへと深く踏み込む威降。鞘から引き抜かれた刀身は暗闇の中に妖しく光り、その姿を露わにする。
 しかし、ロボたちがその姿を見ることは叶わなかった。彼の刀はそれほどまでに素早く戦闘ロボを両断したのだ。
(今の、覚えておこう……)
 刀を収めた威降は内心独り言ちる。
 今の一撃は自分のなかでも完璧に近い動作であり、いいイメージを定着させることは、更なる技量の向上に繋がると彼は知っている。
「しっかし、よく出くわすっスね」
「最上階も目の前だしね。そろそろ見えてくるんじゃないかい?」
「だといいんですがね。ひひひっ」
 道中で無数の戦闘ロボを隠れてやりすごし、戦闘になれば葵やリリアーヌが囮になって各個撃破。ファミリアによる攪乱作戦まで使い果たし、ついに最上階手前まで登ってきたのだ。
「ロボットは近くにはいない、かな……」
 近くにはいない。それは朗報であるはずなのに、ニーニアは眉を顰めて見せる。
「どうかしたカ?」
「いや、ロボットは居ない。居ないんだけど……この先、例のデッドゾーンだね」
「ほう」
 ノワは指を口に当て、やっとかと小さく笑う。
「し、死ぬんですか!? 違いますよね!?」
「しにゃしないっスよ、当たらなければだけど」
「確かに、当たったら痛いカナ?」
 事前に得た情報を考えると、当たると痛いのは確定である。
「ま、そこは任せて! 上手くいくか分からないケド、いい考えがあるんだよね」
「いい考え?」
 ミルヴィは、その手にファミリアーの鼠であるカットを乗せ、にししっと笑みを浮かべて見せた。

●お宝を奪い取れ!
 長大な廊下、突き当りに金庫。
 シンプルなつくりのフロアにミルヴィが足を踏み入れた瞬間、その身に複数の殺意が突き刺さった。
「おおっと」
 左へ半歩。身体を逸らし手を引く。彼女の元居た位置を高温のレーザーが照射し穿った。
 目を閉じたミルヴィの視界に映るのは、部屋の上、ダクトの孔から俯瞰するカットの視点。
 全体を見渡せる上に効率がよく、迎撃装置の数々の銃口の向きを一気に把握することができる。
(いける――!)
 彼女はそのまま数歩前に出る。手に構えるのは彼女が友人から貰ったアンティークギター。
 這わせた指が、5つの弦を震わせた。その独特の音色は周囲の空気を支配し、リズムを形作る。
 浮き沈みの激しくない、陽気な曲。テンポは速すぎもせず遅すぎもしない。そしてその音色とリズムが伝えるのは――装置の攻撃のタイミング。
「それはいいナ、実にイイ」
 ある音階が奏でられた瞬間、レーザーの発射光がビル内を照らす。
 大地の放った朱音色の恨詩が寸分違わずレーザー光を射抜き相殺。
 そこに出来た空白の空間に、葵は身体を滑りこませた。
「あぶっ…!?」
 しかし、また別の音階と共にその空白を埋めるよう放たれる実弾。
 葵バウアー(命名)でそれを交わすと、赤いエネルギー弾を即座に放ち銃口を沈黙させる。
「アブねぇ! 動体視力のトレーニングでもこんなエグいのねぇぞ!」
「ですが、こんなものでしょう」
 壁を蹴り空中でジェットパックを使い一瞬の浮遊、床へ。
 立体的な機動で弾丸を交わしつつ前進するリリアーヌではあるが、その歩みは遅々としたものだ。
「でも、避けないと命に関わりますからね!」
「その通り。これは避けては通れない道だ」
 葵は一瞬目を見張る。
 威降とノワは、音色と共に放たれる攻撃をまるで見切ったかのように回避していた。
 前進を続けながら、時に飛び越え、時に身を逸らし、時に弾き、更にはバク宙を挟んで避ける、避ける、避ける。
「音色、よく聞いてみるといいよ」
「音色っスか?」
 彼はギターの音に耳を澄ます。
 音階が何の攻撃が飛んでくるのかを表しているのは確かだ。それで曲になっているのが不思議だが。
(いや、それだけじゃないっスね……和音?)
「低い順に左から、覚えて!」
「!」
 タイムラグゼロで放たれたレーザーを葵は見事に回避してのけた。
 和音の音階がどの銃口から攻撃が飛んでくるのかを表していたのだ。それを説明する暇は確かになかったが。
「……いけるっス」

 銃口を壊し、できた隙間に仲間が滑り込み、そこを狙う装置をまた破壊する。
 それを繰り返した時間は無限にも思えたが――実際は2分程度の出来事である。
 その頃には回避も手慣れたもので、まるでスパイ映画にでもあるかのように放たれたレーザーと実弾を回避し、バズーカ弾をはじき返して前進を続けられていた。
 長い通路ももう終わり。もう8,9歩も歩けば、置かれた金庫に手が届くだろう。
 しかし――。

「「「!?」」」

 一同の顔が一斉に引き攣ったものに変化した。

「正気ですかこれ」
 金庫のすぐ隣。侵入者が近づいたと見るや、そこから出てきた一本のレーザー照射用の銃口が金庫へと向いたのだ。
 それが示すメッセージはつまり――”奪われるくらいなら消し飛ばしちまえ”。

 危うし、貴金属! すわ依頼失敗か!?
 と思われたが、突如として伸びたアームから出ていたチャージ光は鳴りを潜めていた。

 同時に停止する迎撃装置の群れ。
 不思議そうに周囲を見渡す怪盗たちの視線は、ダクトから落ちミルヴィの手の中へと吸い込まれた一匹の鼠へ集約する。
 その前歯には――装置の電気供給減であるケーブルの残骸が咥えられていた。
「「「ナイス、カット――!」」」
『『『『『ビビビビビビビッ!!!』』』』』
「「「!?」」」
 お宝を手に取りさあ帰ろうかという怪盗一団の前に立ち塞がるのは、ビル中全ての戦闘ロボが集まってきたのではないかと思えるほどのロボの大群。
「えっ、これどうやって地上まで降りるんですか?」
「……ビルから飛ぶしかないんじゃねぇっスか?」
「フライするしかないね! ひひひひっ」
「まあ、仕方ないめ。屋上から帰るとしようか」
「た、高くない…?」
「怖がっている場合でもありません。どうしてもというのなら、私が抱えて飛び降りますが」
「ひっ!?」
「じゃあ私は自分で飛ぼうカナ。アイキャンフラーイ!」
「ああっ抜けがけですよおおぉぉぉ……(遠くなる声)」
「ではお先にどうぞ」
「ひあぁあっ!?(屋上からぶん投げられる被害者の声)」
「あはは。たまにはこういうのもいいね」
「……あまり味わいタくはないが、ナ」
「違いない! えひひひひっ――」
 地上まで小さな点になって落ちる彼らを大量のビープ音が見送る。
 夜闇に紛れた今夜限りの怪盗団の仕事は、これにて終了したのだった。

●テストに出ます、怪盗にはサービス精神も大切
「いたぞ、捕らえろ!」
 渦巻く風と共にビル屋上へと響くローター音。
 科学と魔法を組み合わせ、超短時間だけであるが空を飛べるヘリコプター(というよりも巨大ドローン)は、屋上へと照明を向ける。
 そこに立つのは立ち尽くす8人の男女。
「逃げ場はない、大人しくするんだ!」
 ヘリの機械によって拡大された巨大な音声がビル屋上へと降りかかる。
 しかし――。
「……き、消えたっ!?」
 ひとつ、瞬きをする間。普通の人間であれば、微かに指一本を動かせる程度の時間。
 その合間に、屋上にいた8人もの賊は綺麗にその姿を消していた。
「探せ、動いていないはずだ! まだ屋上に……」
「い、居ませんっ! 消えました――!」
 やったことといえば、エーデルヴァインの蜃気楼で虚像を映している間に、すたこらさっさと逃げ出しただけのことである。
 しかし理解が追いつかない故に、彼らの目には怪盗たちが手品のように消え去ったとしか思えないのであった。

●結末
「できた、できたぞ!!」
「やりましたね、チーフ!」
 依頼主の研究所では、完成品を目の前に諸手を挙げて謎の踊りが繰り広げられていた。
 おっさん2人の奇怪で面妖なダンスである。
「しかしよかったんですか、チーフ? 彼等の報酬を少なめに見積もるんなんて」
 向けられる心配そうな視線。
 おっさんはそれを一蹴し、高笑いさえしてみせる。
「かーっかっかっか!! どうせバレんじゃろ!!」
「え、えぇ……」
「ほら見ろ、報酬を渋ったおかげでまだ研究資金もこんなに――」
 ガチャリと開いた金庫。
 しかし、そこにあるはずの大量の金の輝きはなく――あるのは少量の金と、一枚の小さな紙のみ。
「な、なななななん――!?」
 目を見開いたおっさん。
 紙を乱暴に掴みとり、書かれた内容に目を通す。
『余分なものは取っていないはずだから、よく見ておいてね。
 あと――怪盗と盗賊を甘くみないことだ。じゃあ、また縁があれば。
 今回は必要な分だけ、いただいていくよ。

 怪盗ラビット・フット』
 研究所内に響き渡ったおっさんの人目も憚らぬ叫び声は、まるでマンドラゴラを引き抜いた時のように強烈なものだったという――。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 大変お待たせいたしました。練達ミッションインポッシブル、閉幕です。
 イレギュラーズとは科学の敵足りえる存在だということを、依頼を通して痛感しております。
 次回また彼からの依頼があれば、警備はもっとグレードアップしていることでしょう。

 少しでも楽しんでいただければ嬉しく思います。
 多忙故に間が開くかもしれませんが、またどこかでお会いしましょう。

 よい混沌の旅を。

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